説明

樹脂製アンプル

【課題】開封操作を行ったときに破断部を容易に破断させることができ、開封操作性を向上させることができる樹脂製アンプルを提供することを目的としている。
【解決手段】内容物を収容する容器本体2と、容器本体2の口部20に破断可能な破断部5を介して連設されて口部20を密閉する頭部3と、頭部3に連結された摘み部4と、を備える樹脂製アンプル1において、頭部3は、容器本体2の内部に連通する内部空間を有する中空形状を成しており、口部20の外周面には、口部20の周方向に沿って延設された凸リブ7が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液体、粉体、顆粒体、ペーストなどの内容物を収容する樹脂製アンプルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のアンプルとしては、従来、例えば下記特許文献1に示されているような、内容物を収容する容器本体と、容器本体の口部に破断可能な破断部を介して連設されて口部を密閉する頭部と、頭部に連結された板状の摘み部と、を備える構成が知られている。上記した頭部と摘み部とは、摘み部よりも薄肉な薄肉部を介して連結されている。このような構成のアンプルでは、容器本体を把持するとともに摘み部を指等で摘み、両者を捻ったり折ったりすることにより、破断部に応力が作用して破断部が破断される。これにより、頭部が容器本体から分離され、容器本体を開封することができる。
【特許文献1】実開昭61−74529号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、樹脂製のアンプルはガラス製アンプルに比べて剛性が低いため、上記した従来の構成では、開封操作を行ったときに容器本体の口部が変形しやすい。容器本体の口部が変形すると破断部に応力が集中しにくくなるので、破断部が破断しにくくなり、開封操作性が悪くなるという問題が生じる。
特に、頭部が中空構造になっている場合、頭部が変形しやすくなるので、開封操作を行った際に容器本体の口部とともに頭部が変形する。このため、頭部が中実である場合に比べて、容器本体の口部が特に変形しやすくなり、開封操作性が更に悪くなるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、開封操作を行ったときに破断部を容易に破断させることができ、開封操作性を向上させることができる樹脂製アンプルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る樹脂製アンプルは、内容物を収容する容器本体と、該容器本体の口部に破断可能な破断部を介して連設されて前記口部を密閉する頭部と、該頭部に連結された摘み部と、を備える樹脂製アンプルにおいて、前記頭部は、前記容器本体の内部に連通する内部空間を有する中空形状を成しており、前記口部の外周面には、前記口部の周方向に沿って延設された凸リブが形成されていることを特徴としている。
【0006】
このような特徴により、凸リブによって口部の剛性が高くなり、開封操作を行ったときに、口部が変形しにくくなり、破断部に応力が集中しやすくなる。さらに、凸リブが口部の周方向に延設されているので、凸リブによって口部の径方向および周方向の双方の剛性が強化される。このため、容器本体の中心軸線回りに容器本体と摘み部とを相対的に回転させ、容器本体と頭部とを捻じって切断する際に、特に口部が変形しにくくなる。
また、凸リブが口部の周方向に延設されているので、容器本体のうち、凸リブの下側(頭部側の反対側)の部分を把持して開封操作を行うことが可能となり、凸リブが軸方向に延設されている場合に比べて、容器本体を把持しやすくなる。
【0007】
また、本発明に係る樹脂製アンプルは、前記容器本体の外周面に、該容器本体の軸線方向に沿って延在する側板部が突設されており、前記凸リブは、前記側板部に連結されていることが好ましい。
【0008】
これにより、凸リブ及び側板部の剛性が強化され、これら凸リブ及び側板部によって剛性が強化された口部は更に変形しにくくなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る樹脂製アンプルによれば、口部の剛性が高くなり、開封操作時に破断部に応力が集中しやすくなるので、開封操作を行ったときに破断部を容易に破断させることができ、開封操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る樹脂製アンプルの実施の形態について、図面に基いて説明する。
図1は本発明に係る樹脂製アンプルの一例であるアンプル1の正面図であり、図2は図1に示すアンプル1を側方からみた側面図であり、図3は複数のアンプル1を一体に成形した状態を表した正面図である。
なお、図1に示す一点鎖線Oは後述する容器本体2の中心軸線を示しており、以下、単に「軸線O」と記す。また、本実施の形態では、軸線Oに沿った方向を「軸方向」とし、軸線Oに直交する方向を「径方向」とする。また、本実施の形態では、容器本体2の口部20側(図1における上側)を「上側」とし、その反対側(図1における下側)を「下側」とする。
【0011】
図1、図2に示すように、アンプル1は、液体、粉体、顆粒体、ペースト等の内容物を密封状態で保存する樹脂製の容器であり、その概略構成としては、内容物を収容する容器本体2と、容器本体2の口部20を密閉する頭部3と、頭部3に一体に連結された摘み部4と、を備えている。これら容器本体2、頭部3及び摘み部4は、例えばブロー成形法等によって一体に成形されている。なお、アンプル1を形成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂が用いられる。
【0012】
容器本体2は、断面視円形の筒形状を成している。具体的に説明すると、容器本体2は、軸線Oに沿って延びる円筒形状の胴部21と、この胴部21の下方に設けられた底部22と、胴部21の上方に設けられた口部20と、底部22に設けられた円筒形状の注入部24と、胴部21及び口部20の外周面から径方向外側に突出した側板部25と、を備えている。上記した胴部21、底部22、口部20、注入部24は、軸線Oを共通軸にして同軸上に配設されている。
【0013】
口部20の下端は胴部21の上端よりも小径であり、胴部21と口部20とは、胴部21の上端から口部20の下端に向かうに従い漸次縮径されたテーパー部26を介して連設されている。また、口部20の上部は上方に向かうに従い漸次縮径された略半球状を成している。底部22は、胴部21の下端から下方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状を成した環状の底板部である。注入部24は、底部22の内縁から軸線Oに沿って垂下されており、注入部24の内部は、底部22の内側を介して胴部21の内部に連通されている。なお、注入部24の下端は、アンプル1の成形時においては開放されており、アンプル1の内側に内容物を注入した後に熱溶着などによって閉塞される。側板部25は、軸方向に沿って延在する板部であり、口部20の上端から胴部21の下端まで延設されている。この側板部25の先端(側端)は軸線Oと平行に形成されている。また、側板部25は、胴部21及び口部20の両側にそれぞれ形成されており、これら両側の側板部25は軸線Oを中心に対称に配設されている。すなわち、両側の側板部25は同一平面上に配設されている。
【0014】
また、上記した口部20には、口部20の周方向に延在する凸リブ7が形成されている。詳しく説明すると、凸リブ7は、口部20の略半球状の上部の外周面から径方向外側に向けて突設されたフランジ部であり、軸線Oに対して垂直に配設された板部である。この凸リブ7は、口部20の全周に亘って延設されており、平面視略円環状の形状を成している。また、凸リブ7は、後述する括れ部5(頭部3と容器本体2との境界面)から離間した位置に配設されている。また、凸リブ7は、側板部25に対して垂直に配設されており、両側の側板部25にそれぞれ一体的に連結されている。さらに、凸リブ7の外径は、両側の側板部25の先端(側端)間の間隔Dと略同一であり、凸リブ7の外周面と側板部25の先端面(側端面)とは略面一に形成されている。
【0015】
頭部3は、容器本体2の内部に連通する内部空間を有する中空形状を成しており、破断可能な括れ部5(本発明における破断部に相当する。)を介して容器本体2の口部20に連結されている。具体的に説明すると、頭部3は、平面視略円形の天壁部30と、該天壁部30の外縁から垂下された周壁部31と、を備えている。周壁部31の下部は、下方に向かうに従い漸次縮径された略半球形状を成しており、周壁部31の下端は、容器本体2の口部20の上端に連結されている。そして、上方に向かうに従い漸次縮径された容器本体2の口部20と、下方に向かうに従い漸次縮径された頭部3と、の境界部分(括れ部5)は、径方向内側に縮径された断面視略V字形状の切り込み形状となっており、容器本体2と頭部3とを捻ったり折ったりすることにより破断される。
【0016】
摘み部4は、アンプル1を開封する際に指等で摘むための部位である。具体的に説明すると、摘み部4は、上記した側板部25よりも厚い側面視略矩形の板状部である。この摘み部4は、上記した側板部25と同一平面上に配設されており、摘み部4の下端と側板部25の上端とは薄肉の弱化部27を介して連結されている。また、摘み部4の下部には、略凹形状の切り欠き部40が形成されており、この切り欠き部40の内側には、上記した頭部3が配設されている。そして、頭部3の上面及び両側面と、摘み部4の切り欠き部40の内縁とは、摘み部4よりも薄肉な薄肉部6を介して連結されている。この薄肉部6は、上記した切り欠き部40の内縁の全体に亘って延設されており、側面視において頭部3の両側及び上方を囲う門形の形状を成している。
【0017】
上記した構成からなるアンプル1は、図3に示すように、複数のアンプル1が連結された状態で製作される。詳しく説明すると、複数のアンプル1は、並列に連続して配置した状態でブロー成形法により成形される。このとき、隣り合うアンプル1の各側板部25同士及び各摘み部4同士がそれぞれ弱化部9を介して連結されている。そして、複数のアンプル1の成形が完了した後、複数のアンプル1の各注入部24から内容物をそれぞれ注入し、その後、各注入部24の下端部に閉塞用の加熱した型を押し当てることにより、注入部24の下端部の樹脂を溶融軟化させて平板状等に成形(対向面同士を熱溶着)し、注入部24の下端部を閉塞する。これにより、アンプル1の内部空間が密閉される。
【0018】
次に、上記した構成からなるアンプル1の作用について説明する。
【0019】
上記した構成からなるアンプル1を開封する際、容器本体2を把持するとともに摘み部4を指等で摘み、容器本体2と摘み部4とを軸線O回りに相対的に回転させて両者を捻ったり、或いは、容器本体2と摘み部4とを相対的に傾倒させて両者を折ったりする。このとき、凸リブ7が口部20の周方向に延設されているので、容器本体2のうち、凸リブ7の下側の部分を把持することが可能であり、容器本体2を把持しやすい。上記したような開封操作を行うことにより、括れ部5に応力が作用して括れ部5が破断され、頭部3及び摘み部4(分離片8)が容器本体2から分離され、容器本体2の口部20の上側開口端が開封される。
【0020】
このとき、凸リブ7によって口部20の剛性が強化されているので、上記した開封操作を行ったときに、口部20が変形しにくくなる。すなわち、容器本体2と摘み部4とを捻ったり折ったりしても、樹脂製の口部20の括れ部5付近が伸長せず、分離片8(頭部3)は剛体の口部20に対して相対的に回転若しくは傾倒される。これにより、括れ部5に応力が集中しやすくなり、括れ部5が破断されやすくなる。さらに、上記したアンプル1では、凸リブ7が口部20の周方向に延在されており、口部20の径方向及び周方向の双方の剛性が強化されているので、軸線O回りに容器本体2と摘み部4とを相対的に回転させ、容器本体2と頭部3とを捻じったときに、特に口部20が変形しにくく、括れ部5に応力が集中しやすい。
【0021】
また、上記したアンプル1では、凸リブ7が側板部25に連結されているので、凸リブ7及び側板部25の剛性が強化されている。したがって、これら凸リブ7及び側板部25によって剛性が強化された口部20の変形は確実に抑えられる。
また、上記したアンプル1では、凸リブ7が括れ部5から離間した位置に配設されているので、アンプル1の樹脂成形時において、括れ部5がひけ等の影響を受けにくく、括れ部5に亀裂等が生じにくい。
【0022】
上記した構成からなるアンプル1によれば、口部20の剛性が高くなり、開封操作時に括れ部5に応力が集中しやすくなるので、開封操作を行ったときに括れ部5を容易に破断させることができ、開封操作性を向上させることができる。特に、容器本体2と頭部3とを捻じることによって、括れ部5を容易に破断することができる。
【0023】
また、凸リブ7が周方向に延設されており、容器本体2のうちの凸リブ7の下方の部分を把持することができるので、容器本体2が把持しやすく、開封操作が行いやすい。なお、フランジ状の凸リブ7を把持して開封操作を行うことも可能である。
【0024】
また、摘み部4と容器本体2の側板部25とが弱化部27を介して連結されているので、容器本体2と摘み部4とが不用意に捻られたり折られたりすることを防止することができ、アンプル1内の内容物の漏出を防止することができる。
【0025】
以上、本発明に係る樹脂製アンプルの実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、容器本体2内に内容物を注入するための注入部24が、容器本体2の底部22に垂設されているが、本発明は、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、頭部3の上面に注入部が立設された構成であってもよい。
【0026】
また、上記した実施の形態では、容器本体2の外周面に側板部25が突設されており、複数のアンプル1は各々の側板部25同士が連結されることで一連綴りに連設された状態でまとめて成形されているが、本発明は、側板部25が省略された構成にすることも可能であり、アンプル1を一個ずつ成形する構成であってもよい。
【0027】
また、上記した実施の形態では、凸リブ7が側板部25に連結されているが、本発明は、凸リブ7が側板部25に連結されていない構成にすることも可能である。例えば、上記したように側板部25が無い構成や、或いは、凸リブ7が平面視略扇状に形成され、凸リブ7と側板部25とが分離された構成などが考えられる。
【0028】
また、上記した実施の形態では、摘み部4に凹状の切り欠き部40が形成されており、この切り欠き部40の内側に頭部3が配設され、頭部3の上面及び両側面が薄肉部6を介して切り欠き部40の内縁に連結されているが、本発明は、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、切り欠き部40が形成されていない板状の摘み部が頭部3の上方に配設され、この摘み部の下辺部分と頭部3の上面とが薄肉部6を介して連結されていてもよく、或いは、薄肉部6を形成しない構成とすることも可能である。さらに、本発明における摘み部は、板状のものに限定されず、例えば棒状若しくは筒状、又はその他の形状の摘み部であってもよい。
【0029】
また、上記した実施の形態では、容器本体2の口部20の上部が上方に向かうに従い漸次縮径されているとともに、頭部3の周壁部31の下部が下方に向かうに従い漸次縮径されており、容器本体2と頭部3との間には、略V字状の破断可能な括れ部5が形成されているが、本発明は、上記した構成に限定されるものではなく、例えば、容器本体の口部の上端と頭部の下端との連結部分が括れてなく、容器本体の上端と頭部の下端とが薄肉部(本発明の破断部に相当する。)を介して連結された構成であってもよい。
また、上記した実施の形態では、摘み部4の下端と側板部25の上端とが弱化部27を介して連結されているが、本発明は、上記した弱化部27を省略することも可能であり、摘み部4と側板部25とが分離されていてもよい。
また、上記した実施の形態では、板状の摘み部4が側板部25よりも肉厚になっているが、本発明は、摘み部4と側板部25の肉厚が同一肉厚であってもよく、摘み部4よりも側板部25の肉厚を厚く形成することも可能である。
【0030】
また、上記した実施の形態では、軸線Oに対して垂直に配設された板状の凸リブ7が備えられているが、本発明における凸リブの形状は適宜変更可能であり、例えば、断面視略矩形、三角形、又は半円形の凸リブが形成されていてもよい。
また、上記した実施の形態では、頭部3が、天壁部30と周壁部31とからなる筒形状を成しているが、本発明における頭部の形状は適宜変更可能であり、例えば、略円錐形状に形成された中空の頭部であってもよく、或いは、略球形状に形成された中空の頭部であってもよい。さらに、本発明は、中実の頭部を備えた樹脂製アンプルに適用することも可能である。
【0031】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態を説明するためのアンプルの正面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するためのアンプルの側面図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための複数のアンプルの正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 アンプル(樹脂製アンプル)
2 容器本体
3 頭部
4 摘み部
5 括れ部(破断部)
7 凸リブ
25 側板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、該容器本体の口部に破断可能な破断部を介して連設されて前記口部を密閉する頭部と、該頭部に連結された摘み部と、を備える樹脂製アンプルにおいて、
前記頭部は、前記容器本体の内部に連通する内部空間を有する中空形状を成しており、
前記口部の外周面には、前記口部の周方向に沿って延設された凸リブが形成されていることを特徴とする樹脂製アンプル。
【請求項2】
請求項1記載の樹脂製アンプルにおいて、
前記容器本体の外周面には、該容器本体の軸線方向に沿って延在する側板部が突設されており、
前記凸リブは、前記側板部に連結されていることを特徴とする樹脂製アンプル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−269620(P2009−269620A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119309(P2008−119309)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】