説明

樹脂製プーリの射出成形装置及び射出成形方法

【課題】簡素な構成でありながら効率的に溶融樹脂をキャビティ内に供給して、樹脂部材の成形安定性を向上させることができ、また、樹脂充填流路に充填された、製品とならないスプール及びランナー部分である捨て樹脂部材の量を低減して、生産効率を高めることができる樹脂製プーリの射出成形装置及び射出成形方法を提供する。
【解決手段】射出成形時に軸受11が内部に配置されると共に、樹脂部材20の形状に倣って形成されるキャビティ50と、キャビティ50に溶融樹脂を充填する樹脂充填流路60と、を備え、樹脂充填流路60は、溶融樹脂が供給されるスプール62と、スプール62に接続され、スプール62に供給された溶融樹脂をキャビティ50に充填するランナー63と、を有し、ランナー63は、スプール62の端部に樹脂溜まり空間64が設けられるようにスプール62の途中位置に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製プーリの射出成形装置及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の補機駆動機構には、例えば、アイドラプーリやオートテンショナプーリのような軸受の外輪に樹脂部材を射出成形した樹脂製プーリが用いられている。この種の樹脂製プーリは、内周面に外輪軌道溝を有する外輪と、外周面に内輪軌道溝を有する内輪と、この外輪軌道溝とこの内輪軌道溝との間に配置される転動体と、この転動体を回転自在に保持する保持器と、を有する転がり軸受と、転がり軸受の外輪に射出成形される樹脂部材と、を備える。
【0003】
樹脂部材は、大径環部と、小径環部と、大径環部と小径環部との間に配設される円板部と、この円板部の両平面上に放射状に配設されると共に、大径環部と小径環部とを接続する複数のリブ部と、を有する。
【0004】
ここで、外輪に樹脂部材を成形するためには、一般的にインサート成形による射出成形方法が行われている。具体的には、軸受を射出成形装置のキャビティ内に配置した後、このキャビティ内に樹脂充填流路を介して溶融樹脂を充填することにより射出成形が行われている。
【0005】
図5の従来の樹脂充填流路100に示すように、この樹脂充填流路100は、溶融樹脂が供給されるスプール102と、スプール102の下端部に接続され、スプール102に供給された溶融樹脂をキャビティに充填するランナー103と、を有する。スプール102は、図中上下方向に伸びた略ロッド状に形成される。ランナー103は、スプール102と略同心円状に接続される円盤状の第1ランナー部104と、第1ランナー部104の周縁部に周方向に略等間隔に配置されて下方に延びる複数のロッド状の第2ランナー部105と、を有する。従って、溶融樹脂は、スプール102、第1ランナー部104、及び第2ランナー部105を介してキャビティに充填される。
【0006】
そして、このキャビティ内に充填された溶融樹脂が冷却されることにより、前述の樹脂部材が軸受の外輪に成形されることになる。次いで、金型が開かれて、樹脂製プーリが取り出されるが、このとき、樹脂充填流路に充填された、余分な樹脂部材(以下、「捨て樹脂部材」とも言う。)がゲートの位置で分離除去され、最終製品となる。
【0007】
また、この射出成形を行う上で、溶融樹脂がスプール及びランナーを介してキャビティに充填される段階で、溶融樹脂が徐々に冷却され、樹脂充填流路内で部分的に固化してしまい、キャビティへの溶融樹脂の充填が均等にならなくなる可能性があり、結果的に、樹脂製プーリの性能が低下してしまう可能性があった。
【0008】
樹脂製プーリの性能は、例えば、自動車部品などのベルト案内などの用途から、真円度が高い、或いは射出成形時に形成されてしまう突起がないなど安定的な形状であること、そして、溶融樹脂が均等に充填されて材質的に均一であること、などで主に判断されることになる。
【0009】
このため、樹脂製プーリの性能を高めるため、樹脂充填流路の絞り効率を工夫することにより、キャビティ内に充填された溶融樹脂の均一な冷却を図って、局部的な溶融樹脂の収縮を抑制したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
また、軸受の外輪の周縁近傍に、環状のフィルムゲートを配置して、このフィルムゲートを通じて溶融樹脂をキャビティ内に充填することにより、溶融樹脂の安定的供給及び樹脂部材の材質的な均一を図るものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実公平02−025962号公報
【特許文献2】特開平08−142112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1では、ゲート位置がキャビティの周方向に対し等間隔に配置されていないため、樹脂部材の真円度が悪化する可能性があった。また、上記特許文献2では、軸受外輪に成形された樹脂部材に対しフィルムゲートを削り落とすという手間が増えるため、生産効率の点で最適ではなかった。即ち、上記特許文献1及び特許文献2に対して、キャビティ内への溶融樹脂の均等な供給を簡素な構成で効率的に行うという点で、まだ改善の余地があった。
【0013】
さらに、この種の射出成形工程においても、他の射出成形工程と同様に、生産コストの効率化、及び工場内の環境対応のため、樹脂充填流路に充填された、製品とならないスプール及びランナー部分である、捨て樹脂部材の量を減らすことも強く求められている。ここで、上記特許文献1では、周方向に配置されるゲート点数が従来に比べ少ない構成にして、捨て樹脂部材の量が低減されるようにしている。また、上記特許文献2では、フィルムゲートの存在により、結果的に、上記特許文献1と同様に捨て樹脂部材の低減化を図るようにしていると考えられる。
【0014】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な構成でありながら効率的に溶融樹脂をキャビティ内に充填して、樹脂部材の成形安定性を向上させることができ、また、樹脂充填流路に充填された、製品とならないスプール及びランナー部分である捨て樹脂部材の量を低減して、生産効率を高めることができる樹脂製プーリの射出成形装置及び成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)軸受の外輪に対して環状の樹脂部材を射出成形する樹脂製プーリの射出成形装置において、射出成形時に軸受が内部に配置されると共に、樹脂部材の形状に倣って形成されるキャビティと、キャビティに溶融樹脂を充填する樹脂充填流路と、を備え、樹脂充填流路は、溶融樹脂が供給されるスプールと、スプールに接続され、スプールに供給された溶融樹脂をキャビティに充填するランナーと、を有し、ランナーは、スプールの端部に樹脂溜まり空間が設けられるようにスプールの途中位置に接続されることを特徴とする樹脂製プーリの射出成形装置。
(2)ランナーは、スプールに接続される環部と、環部の周縁部に周方向に略等間隔に形成される複数の凸部と、複数の凸部の環部側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部と、を有する第1ランナー部と、第1ランナー部の複数の凸部の先端部にそれぞれ接続され、キャビティに溶融樹脂を充填するロッド状の第2ランナー部と、を備えることを特徴とする(1)に記載の樹脂製プーリの射出成形装置。
(3)ランナーは、スプールに接続される内側環部と、内側環部と同心円状に形成される外側環部と、内側環部と外側環部とを接続し、周方向に略等間隔に形成される複数のリブ部と、複数のリブ部の内側環部側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部と、を有する第1ランナー部と、第1ランナー部の外側環部に接続され、キャビティに溶融樹脂を充填する複数のロッド状の第2ランナー部と、を備えることを特徴とする(1)に記載の樹脂製プーリの射出成形装置。
(4)第2ランナー部が偶数個である場合、第1ランナー部の複数のリブ部は、第1ランナー部の外側環部の、隣り合う第2ランナー部間の中間位置に接続されることを特徴とする(3)に記載の樹脂製プーリの射出成形装置。
(5)(1)〜(4)に記載の樹脂製プーリの射出成形装置により、軸受の外輪に対して環状の樹脂部材を射出成形することを特徴とする樹脂製プーリの射出成形方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂製プーリの射出成形装置によれば、ランナーが、スプールの端部に樹脂溜まり空間が設けられるようにスプールの途中位置に接続されるため、簡素な構成でありながら効率的に溶融樹脂をキャビティ内に供給することができ、樹脂部材の成形安定性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の樹脂製プーリの射出成形装置によれば、ランナーは、スプールに接続される環部と、環部の周縁部に周方向に略等間隔に形成される複数の凸部と、複数の凸部の環部側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部と、を有する第1ランナー部と、第1ランナー部の複数の凸部の先端部にそれぞれ接続され、キャビティに溶融樹脂を充填するロッド状の第2ランナー部と、を備えるため、従来と比較してランナーの容積を減少させることができる。これにより、樹脂充填流路に充填された、製品とならないスプール及びランナー部分である捨て樹脂部材の量を低減することができるので、生産効率を高めることができ、ひいては製造コストを削減することができる。また、ゲート点数を従来と比較して減らすことがないため、射出成形の後工程において、捨て樹脂部材を樹脂部材から分離させるときに樹脂部材の真円度を損なうことがない。さらに、湾曲部の存在により、溶融樹脂を第1ランナー部から第2ランナー部へとスムーズに流すことができるので、溶融樹脂を各ゲートに均一に流すことができる。
【0018】
また、本発明の樹脂製プーリの射出成形装置によれば、ランナーは、スプールに接続される内側環部と、内側環部と同心円状に形成される外側環部と、内側環部と外側環部とを接続し、周方向に略等間隔に形成される複数のリブ部と、複数のリブ部の内側環部側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部と、を有する第1ランナー部と、第1ランナー部の外側環部に接続され、キャビティに溶融樹脂を充填する複数のロッド状の第2ランナー部と、を備えるため、従来と比較してランナーの容積を減少させることができる。これにより、樹脂充填流路に充填された、製品とならないスプール及びランナー部分である捨て樹脂部材の量を低減することができるので、生産効率を高めることができ、ひいては製造コストを削減することができる。また、ゲート点数を従来と比較して減らすことがないため、射出成形の後工程において、捨て樹脂部材を樹脂部材から分離させるときに樹脂部材の真円度を損なうことがない。さらに、湾曲部の存在により、溶融樹脂を第1ランナー部から第2ランナー部へとスムーズに流すことができるので、溶融樹脂を各ゲートに均一に流すことができる。
【0019】
また、本発明の樹脂製プーリの射出成形装置によれば、第2ランナー部が偶数個である場合、第1ランナー部の複数のリブ部が、第1ランナー部の外側環部の、隣り合う第2ランナー部間の中間位置に接続されるため、ランナーの容積を更に減少させることができる。これにより、捨て樹脂部材の量を更に低減することができるので、製造コストを更に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る樹脂製プーリの射出成形装置により製造される樹脂製プーリを説明する断面図である。
【図2】本発明に係る樹脂製プーリの射出成形装置の第1実施形態を説明する要部断面図である。
【図3】図2に示す樹脂製プーリの射出成形装置の樹脂充填流路を説明する模式図である。
【図4】本発明に係る樹脂製プーリの射出成形装置の第2実施形態の樹脂充填流路を説明する模式図である。
【図5】従来の樹脂製プーリの射出成形装置の樹脂充填流路を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る樹脂製プーリの射出成形装置の各実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、図3及び図4は、各実施形態の樹脂充填流路の理解を容易にするため、溶融樹脂が充填された状態の樹脂充填流路を表した斜視図であり、これらは捨て樹脂部材と同一形状であり、製造工程において最終的には廃棄又はリサイクルされる。
【0022】
まず、図1を参照して、本発明に係る樹脂製プーリの射出成形装置により製造される樹脂製プーリついて説明する。
【0023】
樹脂製プーリ10は、図1に示すように、内周面に外輪軌道溝12aを有する外輪12と、外周面に内輪軌道溝13aを有する内輪13と、外輪軌道溝12aと内輪軌道溝13aとの間に転動可能に配置される複数の玉(転動体)14と、複数の玉14を円周方向に略等間隔に保持する保持器15と、を有する転がり軸受11と、外輪12の外周面に固着される樹脂部材20と、を備える。
【0024】
樹脂部材20は、大径環部21と、小径環部22と、大径環部21と小径環部22との間に配設される円板部23と、円板部23の両方の平面上に放射状に配設されると共に大径環部21と小径環部22とを接続する複数のリブ部24と、有する。なお、本実施形態では、複数のリブ24は、円板部23の両方の平面上に設けられているが、これに限定されず、円板部23の片方の平面上のみに設けられていてもよい。
【0025】
(第1実施形態)
次に、図2及び図3を参照して、本発明に係る樹脂製プーリの射出成形装置の第1実施形態について説明する。
【0026】
本実施形態の樹脂製プーリ10の射出成形装置30は、図2に示すように、転がり軸受11が内部にセットされる金型40と、金型40に溶融樹脂を供給する不図示の溶融樹脂供給装置と、を備える。
【0027】
金型40は、上金型41、中金型42、及び下金型43から構成され、中金型42と下金型43との間には、転がり軸受11が配置されると共に、外輪12の外周面に樹脂部材20を成形するキャビティ50が形成される。このキャビティ50は、樹脂部材20の形状に倣って形成される。また、下金型43の中央には、転がり軸受11の内輪13に内嵌し、転がり軸受11を保持する保持ボス43aが形成されている。
【0028】
また、図2に示すように、上金型41及び中金型42には、キャビティ50に溶融樹脂を供給する樹脂充填流路60が形成されており、この樹脂充填流路60は、図3に示すように、スプール62とランナー63とを有する。スプール62は、不図示の溶融樹脂供給装置と接続されて、最初に溶融樹脂を導きランナー63に溶融樹脂を供給する。
【0029】
ランナー63は、図2及び図3に示すように、スプール62から溶融樹脂を放射状に導くように、且つスプール62の下端部に樹脂溜まり空間64が設けられるようにスプール62の途中位置で接続される。
【0030】
ランナー63は、スプール62に接続される第1ランナー部65と、第1ランナー部65に接続される第2ランナー部66と、を備える。なお、本実施形態のランナー63によれば、従来の上記樹脂充填流路100のランナー103と比較して、捨て樹脂部材の質量を約54%減らすことができる。
【0031】
第1ランナー部65は、スプール62に接続される環部67と、環部67の周縁部に周方向に略等間隔に形成される複数(本実施形態では16本)の凸部68と、複数の凸部68の環部67側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部69と、を有する。
【0032】
第2ランナー部66は、金型40の上下方向に沿うようにロッド状に形成され、その上端部が第1ランナー部65の複数の凸部68の先端部にそれぞれ接続され、その下端部がゲート61を介してキャビティ50にそれぞれ接続されている。
【0033】
このように構成された射出成形装置30を用いて、樹脂部材20を成形するには、まず、下金型43の保持ボス43aに転がり軸受11を嵌合配置した後、下金型43上に中金型42及び上金型41を載置して金型40を閉塞する。そして、不図示の溶融樹脂供給装置から樹脂充填流路60に溶融樹脂が供給されることにより、樹脂充填流路60のスプール62及びランナー63を介してキャビティ50に溶融樹脂が充填される。
【0034】
このとき、スプール62からランナー63に溶融樹脂が流れるところに樹脂溜まり空間64が設けられているため、スプール62に供給された溶融樹脂は、ランナー63へと広がる前に、この樹脂溜まり空間64内に充填される。そして、この樹脂溜まり空間64に充填された溶融樹脂の一部が冷却により固化し、この固化した樹脂に順次供給される溶融樹脂が当たることによって、溶融樹脂がスプール62からランナー63へとスムーズに流れ、キャビティ50に対して全周に亘って均等に充填される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の射出成形装置30によれば、ランナー63が、スプール62の下端部に樹脂溜まり空間64が設けられるようにスプール62の途中位置で接続されるため、簡素な構成でありながら効率的に溶融樹脂をキャビティ50内に供給することができ、樹脂部材20の成形安定性を向上させることができる。
【0036】
また、本実施形態の射出成形装置30によれば、ランナー63は、スプール62に接続される環部67と、環部67の周縁部に周方向に略等間隔に形成される複数の凸部68と、複数の凸部68の環部67側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部69と、を有する第1ランナー部65と、第1ランナー部65の複数の凸部68の先端部にそれぞれ接続され、キャビティ50に溶融樹脂を充填するロッド状の第2ランナー部66と、を備えるため、従来と比較してランナー63の容積を減少させることができる。これにより、樹脂充填流路60に充填された、製品とならないスプール62及びランナー63部分である捨て樹脂部材の量を低減することができるので、生産効率を高めることができ、ひいては製造コストを削減することができる。また、ゲート点数を従来と比較して減らすことがないため、射出成形の後工程において、捨て樹脂部材を樹脂部材20から分離させるときに樹脂部材20の真円度を損なうことがない。さらに、湾曲部69の存在により、溶融樹脂を第1ランナー部65から第2ランナー部66へとスムーズに流すことができるので、溶融樹脂を各ゲート61に均一に流すことできる。また、複数の凸部68を断面略台形にすることにより、第1ランナー部65が上金型41に引っ掛かって、各ゲート61が上金型41と分離するために、ランナーの処理が容易である。
【0037】
(第2実施形態)
次に、図4を参照して、本発明に係る樹脂製プーリの射出成形装置の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一或いは同等符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0038】
本実施形態の樹脂充填流路70は、図4に示すように、スプール62とランナー73とを有する。このランナー73は、スプール62から溶融樹脂を放射状に導くように、且つスプール62の下端部に樹脂溜まり空間64が設けられるようにスプール62の途中位置で接続される。
【0039】
ランナー73は、スプール62に接続される第1ランナー部75と、第1ランナー部75に接続される第2ランナー部76と、を備える。なお、本実施形態のランナー73によれば、従来の上記樹脂充填流路100のランナー103と比較して、捨て樹脂部材の質量を約56%減らすことができる。
【0040】
第1ランナー部75は、スプール62に接続される内側環部77と、内側環部77と同心円状に形成される外側環部78と、内側環部77と外側環部78とを径方向に接続し、周方向に略等間隔に形成される複数(本実施形態では8本)のリブ部79と、複数のリブ部79の内側環部77側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部80と、を有する。
【0041】
第2ランナー部76は、金型40の上下方向に沿うようにロッド状に複数(本実施形態では16本)形成され、その上端部が第1ランナー部75の外側環部78にそれぞれ接続され、その下端部がゲート61を介してキャビティ50にそれぞれ接続されている。
【0042】
また、本実施形態では、16本の第2ランナー部76は、外側環部78の下面に周方向に略等間隔に配置され、第1ランナー部75の8本のリブ部79は、第1ランナー部75の外側環部78の、隣り合う第2ランナー部76,76間の中間位置に1箇所置きに接続される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の射出成形装置30によれば、ランナー73は、スプール62に接続される内側環部77と、内側環部77と同心円状に形成される外側環部78と、内側環部77と外側環部78とを接続し、周方向に略等間隔に形成される複数のリブ部79と、複数のリブ部79の内側環部77側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部80と、を有する第1ランナー部75と、第1ランナー部75の外側環部78に接続され、キャビティ50に溶融樹脂を充填する複数のロッド状の第2ランナー部76と、を備えるため、従来と比較してランナー73の容積を減少させることができる。これにより、樹脂充填流路70に充填された、製品とならないスプール62及びランナー73部分である捨て樹脂部材の量を低減することができるので、生産効率を高めることができ、ひいては製造コストを削減することができる。また、ゲート点数を従来と比較して減らすことがないため、射出成形の後工程において、捨て樹脂部材を樹脂部材20から分離させるときに樹脂部材20の真円度を損なうことがない。さらに、湾曲部80の存在により、溶融樹脂を第1ランナー部75から第2ランナー部76へとスムーズに流すことができるので、溶融樹脂を各ゲート61に均一に流すことができる。
【0044】
また、本実施形態の射出成形装置30によれば、第1ランナー部75の8本のリブ部79が、第1ランナー部75の外側環部78の、隣り合う第2ランナー部76,76間の中間位置に接続されるため、ランナー73の容積を更に減少させることができる。これにより、捨て樹脂部材の量を更に低減することができるので、製造コストを更に削減することができる。
なお、その他の構成及び作用効果については、前述の第1実施形態と同様である。
【0045】
なお、本発明は前述した各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
例えば、上記各実施形態では、軸受として玉軸受を例に説明したが、これに限らず、外輪に対して樹脂部材を固着させる必要がある軸受であれば、本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 樹脂製プーリ
11 転がり軸受
12 外輪
20 樹脂部材
30 射出成形装置
40 金型
41 上金型
42 中金型
43 下金型
50 キャビティ
60 樹脂充填流路
61 ゲート
62 スプール
64 樹脂溜まり空間
63 ランナー
65 第1ランナー部
66 第2ランナー部
67 環部
68 凸部
69 湾曲部
70 樹脂充填流路
73 ランナー
75 第1ランナー部
76 第2ランナー部
77 内側環部
78 外側環部
79 リブ部
80 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受の外輪に対して環状の樹脂部材を射出成形する樹脂製プーリの射出成形装置において、
射出成形時に前記軸受が内部に配置されると共に、前記樹脂部材の形状に倣って形成されるキャビティと、
前記キャビティに溶融樹脂を充填する樹脂充填流路と、を備え、
前記樹脂充填流路は、
前記溶融樹脂が供給されるスプールと、
前記スプールに接続され、前記スプールに供給された前記溶融樹脂を前記キャビティに充填するランナーと、を有し、
前記ランナーは、前記スプールの端部に樹脂溜まり空間が設けられるように前記スプールの途中位置に接続されることを特徴とする樹脂製プーリの射出成形装置。
【請求項2】
前記ランナーは、
前記スプールに接続される環部と、前記環部の周縁部に周方向に略等間隔に形成される複数の凸部と、前記複数の凸部の前記環部側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部と、を有する第1ランナー部と、
前記第1ランナー部の前記複数の凸部の先端部にそれぞれ接続され、前記キャビティに前記溶融樹脂を充填するロッド状の第2ランナー部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製プーリの射出成形装置。
【請求項3】
前記ランナーは、
前記スプールに接続される内側環部と、前記内側環部と同心円状に形成される外側環部と、前記内側環部と前記外側環部とを接続し、周方向に略等間隔に形成される複数のリブ部と、前記複数のリブ部の前記内側環部側の接続端部間を滑らかに接続する湾曲部と、を有する第1ランナー部と、
前記第1ランナー部の前記外側環部に接続され、前記キャビティに前記溶融樹脂を充填する複数のロッド状の第2ランナー部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製プーリの射出成形装置。
【請求項4】
前記第2ランナー部が偶数個である場合、
前記第1ランナー部の前記複数のリブ部は、前記第1ランナー部の前記外側環部の、隣り合う前記第2ランナー部間の中間位置に接続されることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製プーリの射出成形装置。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の樹脂製プーリの射出成形装置により、軸受の外輪に対して環状の樹脂部材を射出成形することを特徴とする樹脂製プーリの射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245623(P2011−245623A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117529(P2010−117529)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】