樹脂製品製造システム、製造方法、樹脂成形装置、及び金型
【課題】射出成形等において、バリの無い完成品を簡単に製造できる樹脂製品製造システム、製造方法、樹脂成形装置、及び金型を提供する。
【解決手段】樹脂成形機101で中間製品を成形し、該中間製品のバリをバリ除去装置で除去して完成品を製造する樹脂製品製造システムにおいて、前記樹脂成形機101が、合わせ面153Aにオーバーフロー樹脂130Aを収容する収容部153Bを有した金型155を備え、該金型155により前記オーバーフロー樹脂130Aを一体化した中間製品を成形すると共に、前記バリ除去装置が、前記中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂130Aを前記バリと共に切除して完成品を製造する。
【解決手段】樹脂成形機101で中間製品を成形し、該中間製品のバリをバリ除去装置で除去して完成品を製造する樹脂製品製造システムにおいて、前記樹脂成形機101が、合わせ面153Aにオーバーフロー樹脂130Aを収容する収容部153Bを有した金型155を備え、該金型155により前記オーバーフロー樹脂130Aを一体化した中間製品を成形すると共に、前記バリ除去装置が、前記中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂130Aを前記バリと共に切除して完成品を製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形や、圧縮成形等により製造する樹脂製品製造システム、製造方法、樹脂成形装置、及び金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金型内に溶融した樹脂を高い圧力で射出して樹脂成形品を成形する射出成形技術が知られている。この種の射出成形技術では、金型内に溶解した樹脂を高圧で射出するので、その圧力によって例えば金型が開いて、固定金型と可動金型の合わせ面(パーティング面)に薄いバリが生じやすい。
従来、固定金型又は可動金型のパーティング面に移動部材を設け、該移動部材をパーティング面に押しつけることで、パーティング面へのバリの発生を抑制した技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、従来、バリの根元に対応した切れ刃部と、製品の面部に対応した切れ刃を構成しない倣い部とを有するカッター刃を備え、該カッター刃を振動させながら、バリの根元に沿ってカッター刃を送って、該バリを、効率よく除去するバリ取り装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、倣いガイド部材にエンドミルを貫装し、倣いガイド部材をワークに押圧し、追従させた状態で、エンドミルでバリを切除する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−241890号公報
【特許文献2】特開2008−30251号公報
【特許文献3】特開2002−239824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、樹脂の成形時に金型と移動部材とが強く接触してスライドするので、ガラス繊維、カーボン繊維等の硬い補強剤の入った樹脂を成形する場合、金型と移動部材とのスライド面での痛みが激しくなり、金型の修理間隔が著しく短くなるという問題があった。また、バリの発生を完全に除去するまでには至らず、必ず、バリ取りの二次加工が必要になっていた。これらは、上記の硬い補強剤の入らない、一般樹脂成形品であっても、同様に問題となっていた。
特許文献2,3では、製品面からのバリの突出高さが、ある程度の高さを有したときに、該バリを、効率よく除去できるものであって、仮に突出量があまりに少ないときには、バリを効率よく除去できない恐れがあった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、射出成形等において、バリの無い完成品を簡単に製造できる樹脂製品製造システム、製造方法、樹脂成形装置、及び金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリをバリ除去装置で除去して完成品を製造する樹脂製品製造システムにおいて、前記樹脂成形機が、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、該金型により前記オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形すると共に、前記バリ除去装置が、前記中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して完成品を製造する。
本明細書では、樹脂成形機で製造したバリの除去されていない段階の製品を、中間製品と定義し、バリを除去した後の製品を、完成品と定義する。
この場合、前記バリ除去装置が、オーバーフロー樹脂の根元に対応した切れ刃部と、中間製品の面部に対応した切れ刃を構成しない倣い部とを有するカッター刃を備え、カッター刃を振動させながら、オーバーフロー樹脂の根元に沿ってカッター刃を送って該中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除してもよい。
【0006】
これらの構成では、中間製品のパーティング面に、オーバーフロー樹脂の発生を許容したため、後行程のバリ取り装置が、オーバーフロー樹脂を除去することで、効率のよいバリ取りが行える。すなわち、仮にバリが発生すれば、該バリは、オーバーフロー樹脂の先端に発生するため、バリ除去装置が、オーバーフロー樹脂を、バリと共に切除することで、バリの無い完成品を容易に製造できる。
この場合、樹脂成形機としては、射出成形機等の一般成形機のほか、低圧圧縮成形機、高圧圧縮成形機、発泡成形機、炭素繊維射出成型機等であってよい。発泡成型機に適用すれば、射出発泡成形時にオーバーフロー樹脂を設けることで、このオーバーフロー樹脂と共にバリを完全に切除できるという効果が得られる。また、炭素繊維の射出成型機でオーバーフロー樹脂を設けることで、例えば超音波により振動されるカッターによってバリをオーバーフロー樹脂と共に完全に除去できるという効果が得られる。
樹脂成形機等による樹脂成形では、成形機の構造や、それに使用する金型や、樹脂成分などにばらつきがあり、特に、金型のキャビティ内への最適な樹脂量の供給が難しく、樹脂量が多くても少なくても成形が不安定となる。
この発明では、金型にオーバーフロー樹脂の収容部を形成したため、樹脂量が多いときや少ないときには、収容部内のオーバーフロー樹脂量で自動調整されるため、キャビティ内の樹脂量は安定し、安定成形できる。
【0007】
この場合に、前記オーバーフロー樹脂を縦バリの発生方向に一体化してもよい。
前記オーバーフロー樹脂を横バリの発生方向に一体化してもよい。
前記オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きしてもよい。
オーバーフロー樹脂を、縦バリ、横バリの発生方向に一体化すれば、金型は、該金型の合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を形成するだけでよく、金型の製作が容易になると共に、オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きすれば、ガス抜きによるバリの発生や、樹脂焼け等の欠損が、オーバーフロー樹脂部分から先に集中し、これをバリと共に除去することで、完成品に欠点を残すことなく、樹脂製品を製造できる。
中間製品に生じたバリは、バリ取り装置で除去することになるため、バリ取り装置の工具の届く範囲に、バリを発生させることが望ましい。
上述した中間製品に生じるバリは、予め定めた位置、例えばパーティングラインの全周囲に計画された範囲に設定され、このバリをバリ取り装置で除去するため、例えば顕微鏡等により上記計画された範囲にバリの除去跡を追認できる。
【0008】
また、樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリを除去して完成品を製造する樹脂製品製造方法において、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型により該オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形する過程と、前記中間製品と一体化した前記オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して前記完成品を製造する過程とを備えるようにしてもよい。
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置において、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、前記金型で前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としてもよい。
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置の金型であって、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有し、前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、中間製品のパーティング面に、オーバーフロー樹脂の発生を許容したため、バリ取り装置が、オーバーフロー樹脂を除去することで、バリ除去面が一定の外観形状のきれいな仕上がりで、効率のよいバリ取りが行える。すなわち、仮にバリが発生すれば、該バリは、オーバーフロー樹脂の先端に発生するため、バリ除去装置が、オーバーフロー樹脂を、バリと共に切除することで、バリの無い完成品を簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】バリ取りシステムの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】ワークのバリ取り動作を示す斜視図である。
【図3】ワーク受け治具の部分を示す斜視図である。
【図4】バリ取り前のワーク形状の一例を示す斜視図である。
【図5】バリ取り後のワーク形状の一例を示す斜視図である。
【図6】金型の断面図である。
【図7】Aは金型の一部拡大図、Bは金型を開いた状態を示す断面図である。
【図8】Aは金型の断面図、Bは同じく金型の一部拡大図、Cは同じく金型を開いた状態を示す断面図である。
【図9】Aは金型の断面図、Bは金型の合わせ面を示す平面図である。
【図10】別の実施の形態を示す金型の断面図である。
【図11】バリ取り装置の一実施の形態を示す正面図である。
【図12】カッター刃の取り付け部分を示す側面図である。
【図13】ワークのバリ取り動作を拡大して示す斜視図である。
【図14】カッター刃の先端部分の断面図である。
【図15】バリ取り装置の別実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、100は樹脂製品製造システムを示す。該樹脂製品製造システム100は、樹脂成形機101と、ワーク把持装置及びバリ取り装置をアーム先端部に有した多関節ロボット103と、バリ取り前の中間製品としてのワーク130(図4参照)を載せるワーク受け機構105と、除去されたバリ132をシステム外に排出するバリ排出コンベア107と、バリ取り後の完成品としてのワーク131(図5参照)をシステム外に排出する完成品排出コンベア109とを有する。なお、図示は省略したが、完成品排出コンベア109の代わりに、完成品を収納する収納ラックを備えても良い。
【0012】
樹脂成形機101は、基台101Gの上に、駆動機構101A、樹脂材料を貯留したホッパ部101B、樹脂供給用のスクリュー部101C、成形部101Fを有し、成形部101Fは、固定部101Dと可動部101Eを備えている。ホッパ部101B側からスクリュー部101Cを経て供給される溶融樹脂は、成形部101Fにおいて成形されて樹脂製品(後に詳述する中間製品)となる。成形部101Fでは、固定部101Dを基準として、可動部101Eが後退すると、各部101D,101Eに設けた金型(不図示)が開いて、該金型内にゲートを通じて溶融樹脂が供給される。溶融樹脂は、可動部101Eが前進して金型間で圧縮され、中間製品が成形される。
【0013】
多関節ロボット103は、関節103A〜103Fを持ち、最先端の関節103Fのアーム先端部103Gには、ワーク把持装置、及びバリ取り装置を一体化した機構部140が取り付けられている。
この機構部140は、図2に示すように、アーム先端部103Gに装着される円柱状の基部141と、この基部141に連なる略コ字形のホルダ142と、このホルダ142の第1の面に配置されたワーク把持用のハンド部143と、該ホルダ142の第2の面に配置されたワーク吸着用の吸着パッド部144とを備え、吸着パッド部144は接続ホース(図示せず)を介して真空源に接続されている。ワーク把持用のハンド部143は、エアシリンダ(図示せず)で動作する。
ホルダ142の第3の面(図中下面)にはバリ取り装置1が取り付けられ、その先端には平刃のカッター刃10が固定され、カッター刃10でワーク受け機構105上のワーク130のバリ132が除去される。
【0014】
ワーク受け機構105は、機構台110と、機構台110に複数のボルト111で連結したワーク受け治具112とを備えており、図3に示すように、ワーク受け治具112の上部のワーク載置部112Aには、例えば、ワーク130の突部を嵌合する受け溝が形成されている。該ワーク130は、実線から想像線の位置まで落とし込むようにしてワーク130の凸部を受け溝に嵌合してワーク載置部112Aに載置される。
ワーク載置部112Aには吸着用の吸気口112Bが形成され、吸気口112Bは接続ホース112Cを介して真空源に接続され、ワーク載置部112Aにワーク130が載置されると吸引によってワーク130が固定される。ワーク載置部112Aの形状は、ワーク130の凸部形状や、ワークに生じたバリ形状等に応じて決定され、少なくともワーク130に生じたバリをカッター刃10で除去可能な形状に、即ちカッター刃10によるバリ除去動作を阻害しない形状に設定されている。
ワーク載置部112Aは支持台112Dを備え、樹脂成形機101の型換え等により成形するワーク形状が変更された場合には、支持台112Dから上を一体に、ワーク形状に対応したワーク載置部112Aを備える別のワーク受け治具112に交換される。本バリ取りシステム100では、ワーク受け治具112の交換で段取り変えとなり、段取り時間の短縮が図られる。
【0015】
図6は、樹脂成形機101の断面図である。また、図7Aは、図6のワーク130の一部拡大図(圧縮完了時)であり、図7Bは、図7Aの金型を開いた状態を示す断面図(射出時)である。なお、図6および図7のワークは、図1ないし図5のワークと形態を異にするが、説明の便宜上、以下、同種形態として説明する。
上述した樹脂成形機101は、図6に示すように、固定部101D(図1参照)に設けた固定金型151と、可動部101Eに設けた可動金型153とからなる金型155を備え、可動金型153は可動部101Eを油圧による直圧式ないしトグル式の構造である駆動機構(或いはサーボモータ駆動機構)によって、固定部101Dの固定金型151に向けて移動し、ワーク130を圧縮成形する。
【0016】
本実施の形態では、図7A、図7Bに示すように、可動金型153が該金型153の合わせ面153Aに、いわゆる縦バリに対応するオーバーフロー樹脂130Aを収容する収容部153Bを備える。この収容部153Bは凹状であり、可動金型153の合わせ面153Aにおいて、ワーク130の全周囲に対応する部位に亘って形成される。その深さTは0.05mm以上、長さLは0.05mm以上が好適である。樹脂材料の性質や製品の大きさなどにより各寸法は適宜に決定される。
【0017】
樹脂成形時には、図6を参照し、パーティングラインP・Lを境に、固定金型151から所定寸法分だけ可動金型153を開方向に離し(図7B参照)、成形品空間(キャビティ)135に所定量の溶融樹脂材料を注入する。その後、該可動金型153を、固定金型151に向けて移動し、パーティングラインP・Lを合わせ、固定金型151及び可動金型153間を型締めして(図7A参照)、ワーク130を圧縮成形する。
【0018】
図7Bに示すように、金型の型開き量を「t」(例えばt=0.5mm以上)とした場合、固定金型151及び可動金型153間には、抜き勾配θ(図7A参照)に起因した隙間δが生じる。従って、固定金型151及び可動金型153による型締め行程では、各金型の傾きθ(例えば1°〜3°)のテーパ面(合わせ面)からガス抜きされる。このガス抜きは、樹脂成形時において、収容部153Bに収容したオーバーフロー樹脂130Aの樹脂部分を通して行われるため、仮に、樹脂焼け等が発生するとすれば、オーバーフロー樹脂130Aの樹脂部分に発生し、該オーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で除去されるため、完成品に対して、樹脂焼け等が残ることがない。
上記構成では、溶融樹脂材料を低い圧力で、成形品空間135に注入し、その後、固定金型151及び可動金型153間を、低い圧力で型締めしても良い。この場合、樹脂成形機101は、上記構成に限定されず、溶融樹脂を金型内に高圧注入し、高圧型締めする通常の射出成形機であっても良い。
【0019】
上述した収容部153Bで形成されるオーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で切除される部位であり、その深さT及び長さLは、上記各寸法に限定されず、樹脂材料の材質等に応じた、或いはバリ取り装置で切除に適した、適宜の深さT及び長さLに設定される。深さT及び長さLは、大き過ぎると、樹脂が無駄になり、あまり小さいと、バリ取りが困難になる。ところで、樹脂成形機101による樹脂成形では、成形機性能や、それに使用する金型や、樹脂成分などにばらつきがあり、特に、金型のキャビティ内への最適な樹脂量の供給が難しく、樹脂量が多くても少なくても成形が不安定となる。この構成では、金型にオーバーフロー樹脂の収容部153Bを形成したため、金型内に注入される樹脂量が多い方にばらついた場合、オーバーフロー樹脂が収容部153B内一杯に満たされ、少ない方にばらついた場合、オーバーフロー樹脂の収容部153Bへの進入量が少なくなり、樹脂注入量のバラツキは、オーバーフロー樹脂量で自動調整されるため、キャビティ内の樹脂量が安定し、安定成形できる。
【0020】
また、本構成では、オーバーフロー樹脂を許容しているため、成形時にバリの発生を抑制する必要がなく、上述したように、溶融樹脂材料を低圧力で成形品空間135に注入し、その後、固定金型151及び可動金型153間を低圧力で型締めする、いわば低圧圧縮成形を行った場合に、より品質の高い樹脂成形品を製造できる。
しかも、各金型151,153間を低圧力で型締めする成形機を用いれば、該成形機の所要型締め力を、従来比1/4〜1/5に抑制できる。
なお、本構成において、オーバーフロー樹脂130Aは従来のいわゆるバリに相当するものであり、バリ132と同義である。ただし、このオーバーフロー樹脂130Aを許容したことにより、その後のバリ除去がほぼ完全になり、樹脂成形品の仕上がりがきれいになり、その目的には大きな差異がある。
【0021】
図8は、樹脂成形機の別実施の形態を示す。
この樹脂成形機101は、図8Aに示すように、固定部101D(図1参照)に設けた固定金型159と、可動部101Eに設けた可動金型158および可動金型157からなる金型155を備えて構成されている。181は、可動金型157に連結された油圧シリンダのシャフトであり、シャフト181を介して、可動金型157が開かれ、または、圧縮方向に移動される。PWは、圧縮代である。本実施の形態では、図8B(圧縮完了時)、図8C(射出時)に示すように、ワーク150が、玉縁150B付き製品となっており、可動金型157が、該金型157の合わせ面157Aに、いわゆる縦バリに対応するオーバーフロー樹脂150Aを収容する収容部157Bを備える。
この収容部157Bは凹状であり、可動金型157の合わせ面157Aにおいて、ワーク150の全周囲に対応する部位に亘って形成される。その深さTは、上記の形態と同様に、例えば0.05mm以上、長さLは0.05mm以上が好適である。樹脂材料の性質や製品の大きさなどにより各寸法は適宜に決定される。
【0022】
図9は、いわゆる横バリの形態を示している。図9において、図7と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
この場合、固定金型151が、該金型151の合わせ面151Aに、いわゆる横バリに対応するオーバーフロー樹脂130Aを収容する収容部151Bを備える。この収容部151Bは凹状であり、固定金型151の合わせ面151Aにおいて、ワーク130の全周囲に対応する部位に亘って形成されている。その深さTは、例えば0.05mm以上であり、長さLは、例えば0.05mm以上である。樹脂材料の性質や、製品の大きさなどにより上記寸法は適宜に決定される。すなわち、収容部151Bで形成されるオーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で切除される部位であり、その深さT及び長さLは、上記各寸法に限定されず、バリ取り装置で切除に適した、適宜の深さT及び長さLに設定される。深さT及び長さLは、大き過ぎると、樹脂が無駄になり、あまり小さいと、バリ取りが困難になる。
【0023】
また、図9Bに示すように、固定金型151の合わせ面151Aには、収容部151Bが延びる方向に直交して複数のガス抜き孔160が形成されている。このガス抜き孔160は、キャビティ135内のガスを排出するためのガス抜き孔であり、合わせ面151Aの全面に周方向に適宜間隔で形成されている。
本実施の形態では、樹脂成形時において、収容部151Bに収容したオーバーフロー樹脂130Aを通してガス抜きされている。
従って、仮に、樹脂焼け等が発生するとすれば、オーバーフロー樹脂130Aの部位に発生し、該オーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で除去されるため、完成品に対して、樹脂焼け等が残ることがない。
この場合、図10に示すように、ワーク150が、玉縁150B付き製品となっており、可動金型153の合わせ面153Aに、横バリに対応するオーバーフロー樹脂150Aを収容する収容部153Bを備えても良い。
【0024】
この樹脂成形機101では、上述したいずれの金型155を用いても、樹脂成形時には、成形品空間(キャビティ)135に溶融樹脂材料を低圧又は高圧で注入した後、固定金型及び可動金型間が、低圧又は高圧で型締めされる。
この段階を経て、ワーク130,150が樹脂成形されると、ワーク130,150のパーティング面に対し、オーバーフロー樹脂130A,150Aが一体化された中間製品が成形される。この場合、いわゆる従来のバリは、オーバーフロー樹脂130A,150Aの先端周縁部に発生する。
【0025】
図11は、バリ取り装置1を示す。
バリ取り装置1は、上述したように、ホルダ142の第3の面(図中下面)に取り付けられている。バリ取り装置1は、第3の面に固定される支持体3を有し、支持体3にはエア駆動タイプのスライドテーブル装置4が固定されている。スライドテーブル装置4は支持体3に固定される固定部4aと、固定部4aの両端に固定される支持部4b,4cと、各支持部4b,4c間に設けた軸4dと、軸4d上を摺動自在なスライド部5とを備えている。該スライド部5は所定の直線方向(矢印X方向)に往復動自在であり、該直線方向はいわゆる平刃のカッター刃10の下面をワークに対し押し付け可能な方向である。4eはストッパである。一方の支持部4bにはエア供給口4fが設けられ、他方の支持部4cにはエア排出口4gが設けられ、エア供給口4fには供給エアの圧力を調整する圧力調整器(図示せず)が接続されている。
【0026】
スライド部5には、超音波振動子ホルダ6の一端が取り付けられる。超音波振動子ホルダ6の他端には、半環状に形成したホルダ部6aが形成され、このホルダ部6aと、別の半環状のホルダ部6bとの間に、超音波振動子7の円柱部7aが挟持され、各ホルダ部6a、6b間をボルトで連結することにより、超音波振動子ホルダ6の他端に超音波振動子7が取り付けられている。超音波振動子7の先端には、図12に示すように、カッター刃10が固定される。超音波振動子7にはコード7b(図11参照)を介して超音波ユニット(図示せず)が接続され、該超音波ユニットで駆動されて、超音波振動子7の振動に応じ、カッター刃10は、カッター刃10の送り方向(矢印B方向)とほぼ直交する方向(矢印C方向)に超音波振動する。本構成では、上記スライド部5が、常時、エア供給口4fからのエア圧力で、図11中右のストッパ4eに当接するまで右に付勢されており、カッター刃10がワークに当接し、反力による荷重が作用した場合には、その荷重の程度に応じ、上記エア圧力に抗し、スライド部5が軸4d上を図中左方に摺動することで、ワークに対しカッター刃10が浮動状態となる。摺動範囲は図中左のストッパ4eで規制される。スライドテーブル装置4はフローティング機構を構成し、バリ取り装置1先端のカッター刃10は、矢印A方向に移動自在、すなわち、後述するワーク(樹脂成形品)に対し浮動状態におかれる。
【0027】
図13は、バリ取り動作時のカッター刃10を示す。
なお、図13においては、説明の便宜のため、上記のワーク130(図2参照)とは異なる形状のワーク130を図示している。
カッター刃10は先端側にカッター刃本体部10Cを有し、このカッター刃本体部10Cは、前端面10Fおよび後端面10Rを備える。後端面10Rは、超音波振動子7の延長線とほぼ平行に延出し、前端面10Fは、送り方向Bに対して直角に交わる超音波振動子7の延長線から、後退角φで後退する。カッター刃10は超音波振動子7にロウ付け、或いはねじ止めの何れかにより固定される。
【0028】
カッター刃10は、上述した金型155等を用いて成形したワーク130,150のオーバーフロー樹脂130A,150Aを切除可能である。例えば図10であれば、カットラインL1に沿って切除し、図7であれば、カットラインL2に沿って切除し、図8であれば、カットラインL3に沿って切除等すればよい。
ワーク130である樹脂成形品は、例えば介護用ベッド部品、コピー機部品、ツールボックス、保温樹脂ボックス、自動車用エアスポイラー、自動車用バイザー、自動車用センターピラー、自動車用内装シートなど、多種多様である。カッター刃10は、例えばパーテーションライン121に形成されたオーバーフロー樹脂130A(バリ132)の基部(根元)に当接する。カッター刃10の前端面10Fには、オーバーフロー樹脂130Aの根元に対応した、例えば幅Wが数mm程度の切れ刃部10Aと、ワーク130の各面部123A,123Bに対応した切れ刃を構成しない曲面状の倣い部10Bと、を備える。切れ刃部10Aの幅Wは、0.6〜1mm程度が一般的であるが、ワークに形成されたバリの形状などに応じて適宜変更が可能である。
【0029】
図14は、カッター刃の切れ刃部10Aを含む断面図である。
この構成では、切れ刃部10A(ハッチングで示す部分。)の最先端部に形成された刃10A1の先端部が、カッター刃10の前端面10Fに形成された倣い部10BのR曲面部10B1と、カッター刃本体部10Cの下面とが交わる位置に延出して終端する。すなわち、倣い部10BのR曲面部10B1と、カッター刃本体部10Cの下面とが交わる位置まで、刃10A1の先端部が、カッター刃10の送り方向(矢印B方向)とは逆方向に後退している。本構成の切れ刃部10Aでは、刃10A1の先端部の位置が、カッター刃本体部10Cの下面と一致するため、該刃10A1の先端部が、オーバーフロー樹脂130Aの根元に深く入り、オーバーフロー樹脂130Aを根元から除去できる。
また、倣い部10Bがワークにどのように当接している状態であっても、さらに、樹脂部品のように形状が不安定な場合や、曲面形状に形成されたバリを切除する場合であっても、カッター刃10が材料に食い込みすぎることがなく、刃折れ等の不具合の発生を抑制することができる。
【0030】
切れ刃部10Aの刃10A1の下面は、カッター刃本体部10Cの下面と一致して延出し、当該下面には均し部10A2が形成されている。均し部10A2は、スライド部5におけるエア圧力のバランスに依存したほぼ一定の圧力でワーク130に接する状態とされている。これにより均し部10A2は、切れ刃部10Aにより切り残されたオーバーフロー樹脂130Aの基部をワーク130側に押しつけて、ワーク130のパーテーションライン121近傍を平滑に均すようにされている。
また、カッター刃本体部10Cの均し部10A2よりもさらに奥まった部分として構成されるカッター刃本体部10Cの下面10C1は、若干の角度θをつけられて、ワーク130から離間するようにされており、カッター刃10の後端面10Rは、ワーク130から完全に離間した状態となっている。
この結果、カッター刃10のうち、ワーク130に接触しているのは、均し部10A2に相当する部分だけとなり、切れ刃部10Aや倣い部10Bが他の部分の当たりにより浮き上がるのを防止することができる。
【0031】
次に、バリ取り加工動作について説明する。
バリ取り装置1の作動時には、例えばオペレータが実際に一度ないし数度、多関節ロボット103のアームを動かしてアームの移動経路に相当する経路情報を記憶させるダイレクトティーチングを行う。或いは、経路自動生成システムを利用して、CADシステムなどの設計システムで作成した形状情報を利用して自動的に経路情報を生成する手法等が採用される。ただし、ダイレクトティーチングあるいは経路自動生成システムにより得られる経路情報は、実際のバリ取り対象のワーク130にバラツキが大きい場合、バリ取り動作において、各ワーク130に対し必ずしも正しい経路とはならない。
これに対し、本構成のバリ取り装置1は、上記フローティング機構を有し、予定よりも少し高い押圧力でカッター刃10をワークに押しつけてバリ取りでき、かつ倣い制御を行っているため、教示位置の修正に対する作業がほとんど発生しない。したがって、実質的な加工時間の短縮が図られる。
【0032】
本構成では、図1に示すように、多関節ロボット103が、ダイレクトティーチングに従って、樹脂成形機101からバリ取り前のワーク(樹脂成形品)130を、図2に示すハンド部143を用いて取り出し、ワークをワーク受け治具105に移載する。バリ取り前の中間製品のワーク130には、オーバーフロー樹脂130Aが許容されている。ついで多関節ロボット103が、ワーク受け治具105上のワーク130のオーバーフロー樹脂130Aを、図2に示すバリ取り装置1のカッター刃10を用いて除去する。この場合、ワーク130としては、例えば、樹脂製ツールボックス、樹脂製保温ボックス、コピー機用樹脂部品、自動車用樹脂部品などが挙げられる。
このようなワークに対し、多関節ロボット103においては、オーバーフロー樹脂130Aの除去経路に沿って、アーム先端部103Gのカッター刃10の向き、駆動方向が最適となるように、6軸関節103A〜103Fの動作を制御する。
この場合において、アーム先端部103Gのスライド部5は、云うまでもなく、ワーク130に対して浮動状態である。
【0033】
本構成では、ダイレクトティーチング等により得られる経路情報に基づいてアーム先端部103Gを駆動するに際し、エア供給口4fに印可される圧力を制御し、カッター刃10が所定の圧力でワーク130に対して押し当てられている。そして、エア供給口に印可される圧力は、カッター刃10の姿勢に応じて自動切り換え可能となっており、カッター刃10の姿勢に拘わらず、常に一定である。
この状態で、超音波振動子ホルダ6に取り付けられた超音波振動子7が駆動され、カッター刃10を、例えば振幅30〜50μm程度で振動させながら、倣い部10Bをワーク130の各面部123A,123Bに沿わせて移動し、ワーク130のパーテーションラインに形成されたオーバーフロー樹脂130Aの根元に沿ってカッター刃10を送ってバリを切除し、同時に切除後の面を均す。なお、超音波に限定せず、例えば振幅10〜150μm程度の振動付与でも良い。最後に、多関節ロボット103が、オーバーフロー樹脂130Aの除去後の完成品としてのワーク131をワーク受け治具105から、図2に示す吸着パッド部144を用いて取り出し、完成品排出コンベア109上に排出し、該コンベア109を通じてシステム外に排出する。また、バリ取り装置1が除去したオーバーフロー樹脂130Aは、傾斜したホッパ133を経て、バリ排出コンベア107上に排出して、システム外に排出される。
【0034】
本構成では、バリ取り装置1において、オーバーフロー樹脂130Aの除去後に2次バリのまったく無い完成品131を作り出すことができる。
よって、従来行っていた手作業での2次バリ除去の作業が不要になり、バリ取りシステムにおける完全自動化が可能になり、成形品コスト低減が図られる。また、完全自動化を図った上で、樹脂成形機101の金型にはオーバーフロー樹脂130Aの発生が許容されることになるため、バリの発生をきつく抑制した高価な成形機が不要になり、これによっても、成形品コストを低減できる。
【0035】
この樹脂製品製造システム100では、中間製品の段階で、オーバーフロー樹脂130Aを許容し、いわゆるバリは、オーバーフロー樹脂130Aの先端に発生させ、バリ取り装置1が、オーバーフロー樹脂130Aの根元に対応した切れ刃部10Aと、中間製品の面部に対応した切れ刃を構成しない倣い部10Bとを有するカッター刃10を備え、カッター刃10を振動させながら、オーバーフロー樹脂130Aの根元に沿ってカッター刃10を送って該中間製品と一体化したオーバーフロー樹脂130Aをバリと共に切除するため、バリの無い完成品を簡単に製造できる。
【0036】
図15は、バリ取り装置1の他の実施の形態を示す。
本実施の形態では、多関節ロボット103のアーム先端部103Gに、工具保持手段THの本体215が取り付けられ、本体215には、押圧手段231が取り付けられている。押圧手段231は、エアスライドテーブル232を含み、エアスライドテーブル232の先端には、工具ホルダ200が取り付けられている。工具ホルダ200は、モータ201、支持部材210、スプリング212、支持部材209、ガイド支柱207、208、スプリング211、及びホルダ固定部材206を備え、ホルダ固定部材206には、ツールホルダ204の鍔205が固定されている。ツールホルダ204の内側には、エンドミル203が貫通し、エンドミル203は、モータ201の出力軸のチャック202に固定されている。ツールホルダ204の外周には、エンドミル203が臨むV字形状の開口204Aが形成されている。このバリ取り装置1では、多関節ロボット103に製品形態をティーチィングして、エアスライドテーブル232の動作により、ツールホルダ204をワークに押圧しながら、ツールホルダ204のV字形状の開口204Aに臨む、エンドミル203によって、該ワークのバリを除去する。この場合、ツールホルダ204は、スプリング211,212によりフローティング支持されると共に、開口204AのV字壁面は、倣い部として機能している。
【0037】
本実施の形態では、上述したように、中間製品のパーティング面に、オーバーフロー樹脂130Aが一体に形成されるため、該オーバーフロー樹脂130Aをエンドミル203で効率よく切削することができる。
【0038】
このバリ取り装置1は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、任意のバリ取り装置の適用が可能なことは云うまでもない。上記実施の形態では、切削工具をロボットのアーム先端に支持し、ワークを固定した状態で、ワークのバリ取りをおこなっているが、これに限定されず、例えばロボットのアーム先端にワークを支持して、ロボットにティーチィングをおこない、切削工具を固定した状態で、ティーチィングした通りに、ワークのバリ取りをおこなってもよい。切削工具を固定する場合、工具は、フローティング支持が望ましい。この場合、ロボットはワークを支持し、工具は、架台の一部に設けてロボットの教示どおりの加工をおこなう。
【符号の説明】
【0039】
1 バリ取り装置
10 カッター刃
100 樹脂製品製造システム
101 樹脂成形機
130,150 ワーク
130A,150A オーバーフロー樹脂
151 固定金型
153 可動金型
155 金型
151A,153A 合わせ面
151B,153B 収容部
160 ガス抜き孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形や、圧縮成形等により製造する樹脂製品製造システム、製造方法、樹脂成形装置、及び金型に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金型内に溶融した樹脂を高い圧力で射出して樹脂成形品を成形する射出成形技術が知られている。この種の射出成形技術では、金型内に溶解した樹脂を高圧で射出するので、その圧力によって例えば金型が開いて、固定金型と可動金型の合わせ面(パーティング面)に薄いバリが生じやすい。
従来、固定金型又は可動金型のパーティング面に移動部材を設け、該移動部材をパーティング面に押しつけることで、パーティング面へのバリの発生を抑制した技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、従来、バリの根元に対応した切れ刃部と、製品の面部に対応した切れ刃を構成しない倣い部とを有するカッター刃を備え、該カッター刃を振動させながら、バリの根元に沿ってカッター刃を送って、該バリを、効率よく除去するバリ取り装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、倣いガイド部材にエンドミルを貫装し、倣いガイド部材をワークに押圧し、追従させた状態で、エンドミルでバリを切除する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−241890号公報
【特許文献2】特開2008−30251号公報
【特許文献3】特開2002−239824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、樹脂の成形時に金型と移動部材とが強く接触してスライドするので、ガラス繊維、カーボン繊維等の硬い補強剤の入った樹脂を成形する場合、金型と移動部材とのスライド面での痛みが激しくなり、金型の修理間隔が著しく短くなるという問題があった。また、バリの発生を完全に除去するまでには至らず、必ず、バリ取りの二次加工が必要になっていた。これらは、上記の硬い補強剤の入らない、一般樹脂成形品であっても、同様に問題となっていた。
特許文献2,3では、製品面からのバリの突出高さが、ある程度の高さを有したときに、該バリを、効率よく除去できるものであって、仮に突出量があまりに少ないときには、バリを効率よく除去できない恐れがあった。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、射出成形等において、バリの無い完成品を簡単に製造できる樹脂製品製造システム、製造方法、樹脂成形装置、及び金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリをバリ除去装置で除去して完成品を製造する樹脂製品製造システムにおいて、前記樹脂成形機が、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、該金型により前記オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形すると共に、前記バリ除去装置が、前記中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して完成品を製造する。
本明細書では、樹脂成形機で製造したバリの除去されていない段階の製品を、中間製品と定義し、バリを除去した後の製品を、完成品と定義する。
この場合、前記バリ除去装置が、オーバーフロー樹脂の根元に対応した切れ刃部と、中間製品の面部に対応した切れ刃を構成しない倣い部とを有するカッター刃を備え、カッター刃を振動させながら、オーバーフロー樹脂の根元に沿ってカッター刃を送って該中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除してもよい。
【0006】
これらの構成では、中間製品のパーティング面に、オーバーフロー樹脂の発生を許容したため、後行程のバリ取り装置が、オーバーフロー樹脂を除去することで、効率のよいバリ取りが行える。すなわち、仮にバリが発生すれば、該バリは、オーバーフロー樹脂の先端に発生するため、バリ除去装置が、オーバーフロー樹脂を、バリと共に切除することで、バリの無い完成品を容易に製造できる。
この場合、樹脂成形機としては、射出成形機等の一般成形機のほか、低圧圧縮成形機、高圧圧縮成形機、発泡成形機、炭素繊維射出成型機等であってよい。発泡成型機に適用すれば、射出発泡成形時にオーバーフロー樹脂を設けることで、このオーバーフロー樹脂と共にバリを完全に切除できるという効果が得られる。また、炭素繊維の射出成型機でオーバーフロー樹脂を設けることで、例えば超音波により振動されるカッターによってバリをオーバーフロー樹脂と共に完全に除去できるという効果が得られる。
樹脂成形機等による樹脂成形では、成形機の構造や、それに使用する金型や、樹脂成分などにばらつきがあり、特に、金型のキャビティ内への最適な樹脂量の供給が難しく、樹脂量が多くても少なくても成形が不安定となる。
この発明では、金型にオーバーフロー樹脂の収容部を形成したため、樹脂量が多いときや少ないときには、収容部内のオーバーフロー樹脂量で自動調整されるため、キャビティ内の樹脂量は安定し、安定成形できる。
【0007】
この場合に、前記オーバーフロー樹脂を縦バリの発生方向に一体化してもよい。
前記オーバーフロー樹脂を横バリの発生方向に一体化してもよい。
前記オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きしてもよい。
オーバーフロー樹脂を、縦バリ、横バリの発生方向に一体化すれば、金型は、該金型の合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を形成するだけでよく、金型の製作が容易になると共に、オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きすれば、ガス抜きによるバリの発生や、樹脂焼け等の欠損が、オーバーフロー樹脂部分から先に集中し、これをバリと共に除去することで、完成品に欠点を残すことなく、樹脂製品を製造できる。
中間製品に生じたバリは、バリ取り装置で除去することになるため、バリ取り装置の工具の届く範囲に、バリを発生させることが望ましい。
上述した中間製品に生じるバリは、予め定めた位置、例えばパーティングラインの全周囲に計画された範囲に設定され、このバリをバリ取り装置で除去するため、例えば顕微鏡等により上記計画された範囲にバリの除去跡を追認できる。
【0008】
また、樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリを除去して完成品を製造する樹脂製品製造方法において、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型により該オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形する過程と、前記中間製品と一体化した前記オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して前記完成品を製造する過程とを備えるようにしてもよい。
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置において、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、前記金型で前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としてもよい。
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置の金型であって、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有し、前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、中間製品のパーティング面に、オーバーフロー樹脂の発生を許容したため、バリ取り装置が、オーバーフロー樹脂を除去することで、バリ除去面が一定の外観形状のきれいな仕上がりで、効率のよいバリ取りが行える。すなわち、仮にバリが発生すれば、該バリは、オーバーフロー樹脂の先端に発生するため、バリ除去装置が、オーバーフロー樹脂を、バリと共に切除することで、バリの無い完成品を簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】バリ取りシステムの一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】ワークのバリ取り動作を示す斜視図である。
【図3】ワーク受け治具の部分を示す斜視図である。
【図4】バリ取り前のワーク形状の一例を示す斜視図である。
【図5】バリ取り後のワーク形状の一例を示す斜視図である。
【図6】金型の断面図である。
【図7】Aは金型の一部拡大図、Bは金型を開いた状態を示す断面図である。
【図8】Aは金型の断面図、Bは同じく金型の一部拡大図、Cは同じく金型を開いた状態を示す断面図である。
【図9】Aは金型の断面図、Bは金型の合わせ面を示す平面図である。
【図10】別の実施の形態を示す金型の断面図である。
【図11】バリ取り装置の一実施の形態を示す正面図である。
【図12】カッター刃の取り付け部分を示す側面図である。
【図13】ワークのバリ取り動作を拡大して示す斜視図である。
【図14】カッター刃の先端部分の断面図である。
【図15】バリ取り装置の別実施の形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1において、100は樹脂製品製造システムを示す。該樹脂製品製造システム100は、樹脂成形機101と、ワーク把持装置及びバリ取り装置をアーム先端部に有した多関節ロボット103と、バリ取り前の中間製品としてのワーク130(図4参照)を載せるワーク受け機構105と、除去されたバリ132をシステム外に排出するバリ排出コンベア107と、バリ取り後の完成品としてのワーク131(図5参照)をシステム外に排出する完成品排出コンベア109とを有する。なお、図示は省略したが、完成品排出コンベア109の代わりに、完成品を収納する収納ラックを備えても良い。
【0012】
樹脂成形機101は、基台101Gの上に、駆動機構101A、樹脂材料を貯留したホッパ部101B、樹脂供給用のスクリュー部101C、成形部101Fを有し、成形部101Fは、固定部101Dと可動部101Eを備えている。ホッパ部101B側からスクリュー部101Cを経て供給される溶融樹脂は、成形部101Fにおいて成形されて樹脂製品(後に詳述する中間製品)となる。成形部101Fでは、固定部101Dを基準として、可動部101Eが後退すると、各部101D,101Eに設けた金型(不図示)が開いて、該金型内にゲートを通じて溶融樹脂が供給される。溶融樹脂は、可動部101Eが前進して金型間で圧縮され、中間製品が成形される。
【0013】
多関節ロボット103は、関節103A〜103Fを持ち、最先端の関節103Fのアーム先端部103Gには、ワーク把持装置、及びバリ取り装置を一体化した機構部140が取り付けられている。
この機構部140は、図2に示すように、アーム先端部103Gに装着される円柱状の基部141と、この基部141に連なる略コ字形のホルダ142と、このホルダ142の第1の面に配置されたワーク把持用のハンド部143と、該ホルダ142の第2の面に配置されたワーク吸着用の吸着パッド部144とを備え、吸着パッド部144は接続ホース(図示せず)を介して真空源に接続されている。ワーク把持用のハンド部143は、エアシリンダ(図示せず)で動作する。
ホルダ142の第3の面(図中下面)にはバリ取り装置1が取り付けられ、その先端には平刃のカッター刃10が固定され、カッター刃10でワーク受け機構105上のワーク130のバリ132が除去される。
【0014】
ワーク受け機構105は、機構台110と、機構台110に複数のボルト111で連結したワーク受け治具112とを備えており、図3に示すように、ワーク受け治具112の上部のワーク載置部112Aには、例えば、ワーク130の突部を嵌合する受け溝が形成されている。該ワーク130は、実線から想像線の位置まで落とし込むようにしてワーク130の凸部を受け溝に嵌合してワーク載置部112Aに載置される。
ワーク載置部112Aには吸着用の吸気口112Bが形成され、吸気口112Bは接続ホース112Cを介して真空源に接続され、ワーク載置部112Aにワーク130が載置されると吸引によってワーク130が固定される。ワーク載置部112Aの形状は、ワーク130の凸部形状や、ワークに生じたバリ形状等に応じて決定され、少なくともワーク130に生じたバリをカッター刃10で除去可能な形状に、即ちカッター刃10によるバリ除去動作を阻害しない形状に設定されている。
ワーク載置部112Aは支持台112Dを備え、樹脂成形機101の型換え等により成形するワーク形状が変更された場合には、支持台112Dから上を一体に、ワーク形状に対応したワーク載置部112Aを備える別のワーク受け治具112に交換される。本バリ取りシステム100では、ワーク受け治具112の交換で段取り変えとなり、段取り時間の短縮が図られる。
【0015】
図6は、樹脂成形機101の断面図である。また、図7Aは、図6のワーク130の一部拡大図(圧縮完了時)であり、図7Bは、図7Aの金型を開いた状態を示す断面図(射出時)である。なお、図6および図7のワークは、図1ないし図5のワークと形態を異にするが、説明の便宜上、以下、同種形態として説明する。
上述した樹脂成形機101は、図6に示すように、固定部101D(図1参照)に設けた固定金型151と、可動部101Eに設けた可動金型153とからなる金型155を備え、可動金型153は可動部101Eを油圧による直圧式ないしトグル式の構造である駆動機構(或いはサーボモータ駆動機構)によって、固定部101Dの固定金型151に向けて移動し、ワーク130を圧縮成形する。
【0016】
本実施の形態では、図7A、図7Bに示すように、可動金型153が該金型153の合わせ面153Aに、いわゆる縦バリに対応するオーバーフロー樹脂130Aを収容する収容部153Bを備える。この収容部153Bは凹状であり、可動金型153の合わせ面153Aにおいて、ワーク130の全周囲に対応する部位に亘って形成される。その深さTは0.05mm以上、長さLは0.05mm以上が好適である。樹脂材料の性質や製品の大きさなどにより各寸法は適宜に決定される。
【0017】
樹脂成形時には、図6を参照し、パーティングラインP・Lを境に、固定金型151から所定寸法分だけ可動金型153を開方向に離し(図7B参照)、成形品空間(キャビティ)135に所定量の溶融樹脂材料を注入する。その後、該可動金型153を、固定金型151に向けて移動し、パーティングラインP・Lを合わせ、固定金型151及び可動金型153間を型締めして(図7A参照)、ワーク130を圧縮成形する。
【0018】
図7Bに示すように、金型の型開き量を「t」(例えばt=0.5mm以上)とした場合、固定金型151及び可動金型153間には、抜き勾配θ(図7A参照)に起因した隙間δが生じる。従って、固定金型151及び可動金型153による型締め行程では、各金型の傾きθ(例えば1°〜3°)のテーパ面(合わせ面)からガス抜きされる。このガス抜きは、樹脂成形時において、収容部153Bに収容したオーバーフロー樹脂130Aの樹脂部分を通して行われるため、仮に、樹脂焼け等が発生するとすれば、オーバーフロー樹脂130Aの樹脂部分に発生し、該オーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で除去されるため、完成品に対して、樹脂焼け等が残ることがない。
上記構成では、溶融樹脂材料を低い圧力で、成形品空間135に注入し、その後、固定金型151及び可動金型153間を、低い圧力で型締めしても良い。この場合、樹脂成形機101は、上記構成に限定されず、溶融樹脂を金型内に高圧注入し、高圧型締めする通常の射出成形機であっても良い。
【0019】
上述した収容部153Bで形成されるオーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で切除される部位であり、その深さT及び長さLは、上記各寸法に限定されず、樹脂材料の材質等に応じた、或いはバリ取り装置で切除に適した、適宜の深さT及び長さLに設定される。深さT及び長さLは、大き過ぎると、樹脂が無駄になり、あまり小さいと、バリ取りが困難になる。ところで、樹脂成形機101による樹脂成形では、成形機性能や、それに使用する金型や、樹脂成分などにばらつきがあり、特に、金型のキャビティ内への最適な樹脂量の供給が難しく、樹脂量が多くても少なくても成形が不安定となる。この構成では、金型にオーバーフロー樹脂の収容部153Bを形成したため、金型内に注入される樹脂量が多い方にばらついた場合、オーバーフロー樹脂が収容部153B内一杯に満たされ、少ない方にばらついた場合、オーバーフロー樹脂の収容部153Bへの進入量が少なくなり、樹脂注入量のバラツキは、オーバーフロー樹脂量で自動調整されるため、キャビティ内の樹脂量が安定し、安定成形できる。
【0020】
また、本構成では、オーバーフロー樹脂を許容しているため、成形時にバリの発生を抑制する必要がなく、上述したように、溶融樹脂材料を低圧力で成形品空間135に注入し、その後、固定金型151及び可動金型153間を低圧力で型締めする、いわば低圧圧縮成形を行った場合に、より品質の高い樹脂成形品を製造できる。
しかも、各金型151,153間を低圧力で型締めする成形機を用いれば、該成形機の所要型締め力を、従来比1/4〜1/5に抑制できる。
なお、本構成において、オーバーフロー樹脂130Aは従来のいわゆるバリに相当するものであり、バリ132と同義である。ただし、このオーバーフロー樹脂130Aを許容したことにより、その後のバリ除去がほぼ完全になり、樹脂成形品の仕上がりがきれいになり、その目的には大きな差異がある。
【0021】
図8は、樹脂成形機の別実施の形態を示す。
この樹脂成形機101は、図8Aに示すように、固定部101D(図1参照)に設けた固定金型159と、可動部101Eに設けた可動金型158および可動金型157からなる金型155を備えて構成されている。181は、可動金型157に連結された油圧シリンダのシャフトであり、シャフト181を介して、可動金型157が開かれ、または、圧縮方向に移動される。PWは、圧縮代である。本実施の形態では、図8B(圧縮完了時)、図8C(射出時)に示すように、ワーク150が、玉縁150B付き製品となっており、可動金型157が、該金型157の合わせ面157Aに、いわゆる縦バリに対応するオーバーフロー樹脂150Aを収容する収容部157Bを備える。
この収容部157Bは凹状であり、可動金型157の合わせ面157Aにおいて、ワーク150の全周囲に対応する部位に亘って形成される。その深さTは、上記の形態と同様に、例えば0.05mm以上、長さLは0.05mm以上が好適である。樹脂材料の性質や製品の大きさなどにより各寸法は適宜に決定される。
【0022】
図9は、いわゆる横バリの形態を示している。図9において、図7と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
この場合、固定金型151が、該金型151の合わせ面151Aに、いわゆる横バリに対応するオーバーフロー樹脂130Aを収容する収容部151Bを備える。この収容部151Bは凹状であり、固定金型151の合わせ面151Aにおいて、ワーク130の全周囲に対応する部位に亘って形成されている。その深さTは、例えば0.05mm以上であり、長さLは、例えば0.05mm以上である。樹脂材料の性質や、製品の大きさなどにより上記寸法は適宜に決定される。すなわち、収容部151Bで形成されるオーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で切除される部位であり、その深さT及び長さLは、上記各寸法に限定されず、バリ取り装置で切除に適した、適宜の深さT及び長さLに設定される。深さT及び長さLは、大き過ぎると、樹脂が無駄になり、あまり小さいと、バリ取りが困難になる。
【0023】
また、図9Bに示すように、固定金型151の合わせ面151Aには、収容部151Bが延びる方向に直交して複数のガス抜き孔160が形成されている。このガス抜き孔160は、キャビティ135内のガスを排出するためのガス抜き孔であり、合わせ面151Aの全面に周方向に適宜間隔で形成されている。
本実施の形態では、樹脂成形時において、収容部151Bに収容したオーバーフロー樹脂130Aを通してガス抜きされている。
従って、仮に、樹脂焼け等が発生するとすれば、オーバーフロー樹脂130Aの部位に発生し、該オーバーフロー樹脂130Aは、後述のバリ取り行程で除去されるため、完成品に対して、樹脂焼け等が残ることがない。
この場合、図10に示すように、ワーク150が、玉縁150B付き製品となっており、可動金型153の合わせ面153Aに、横バリに対応するオーバーフロー樹脂150Aを収容する収容部153Bを備えても良い。
【0024】
この樹脂成形機101では、上述したいずれの金型155を用いても、樹脂成形時には、成形品空間(キャビティ)135に溶融樹脂材料を低圧又は高圧で注入した後、固定金型及び可動金型間が、低圧又は高圧で型締めされる。
この段階を経て、ワーク130,150が樹脂成形されると、ワーク130,150のパーティング面に対し、オーバーフロー樹脂130A,150Aが一体化された中間製品が成形される。この場合、いわゆる従来のバリは、オーバーフロー樹脂130A,150Aの先端周縁部に発生する。
【0025】
図11は、バリ取り装置1を示す。
バリ取り装置1は、上述したように、ホルダ142の第3の面(図中下面)に取り付けられている。バリ取り装置1は、第3の面に固定される支持体3を有し、支持体3にはエア駆動タイプのスライドテーブル装置4が固定されている。スライドテーブル装置4は支持体3に固定される固定部4aと、固定部4aの両端に固定される支持部4b,4cと、各支持部4b,4c間に設けた軸4dと、軸4d上を摺動自在なスライド部5とを備えている。該スライド部5は所定の直線方向(矢印X方向)に往復動自在であり、該直線方向はいわゆる平刃のカッター刃10の下面をワークに対し押し付け可能な方向である。4eはストッパである。一方の支持部4bにはエア供給口4fが設けられ、他方の支持部4cにはエア排出口4gが設けられ、エア供給口4fには供給エアの圧力を調整する圧力調整器(図示せず)が接続されている。
【0026】
スライド部5には、超音波振動子ホルダ6の一端が取り付けられる。超音波振動子ホルダ6の他端には、半環状に形成したホルダ部6aが形成され、このホルダ部6aと、別の半環状のホルダ部6bとの間に、超音波振動子7の円柱部7aが挟持され、各ホルダ部6a、6b間をボルトで連結することにより、超音波振動子ホルダ6の他端に超音波振動子7が取り付けられている。超音波振動子7の先端には、図12に示すように、カッター刃10が固定される。超音波振動子7にはコード7b(図11参照)を介して超音波ユニット(図示せず)が接続され、該超音波ユニットで駆動されて、超音波振動子7の振動に応じ、カッター刃10は、カッター刃10の送り方向(矢印B方向)とほぼ直交する方向(矢印C方向)に超音波振動する。本構成では、上記スライド部5が、常時、エア供給口4fからのエア圧力で、図11中右のストッパ4eに当接するまで右に付勢されており、カッター刃10がワークに当接し、反力による荷重が作用した場合には、その荷重の程度に応じ、上記エア圧力に抗し、スライド部5が軸4d上を図中左方に摺動することで、ワークに対しカッター刃10が浮動状態となる。摺動範囲は図中左のストッパ4eで規制される。スライドテーブル装置4はフローティング機構を構成し、バリ取り装置1先端のカッター刃10は、矢印A方向に移動自在、すなわち、後述するワーク(樹脂成形品)に対し浮動状態におかれる。
【0027】
図13は、バリ取り動作時のカッター刃10を示す。
なお、図13においては、説明の便宜のため、上記のワーク130(図2参照)とは異なる形状のワーク130を図示している。
カッター刃10は先端側にカッター刃本体部10Cを有し、このカッター刃本体部10Cは、前端面10Fおよび後端面10Rを備える。後端面10Rは、超音波振動子7の延長線とほぼ平行に延出し、前端面10Fは、送り方向Bに対して直角に交わる超音波振動子7の延長線から、後退角φで後退する。カッター刃10は超音波振動子7にロウ付け、或いはねじ止めの何れかにより固定される。
【0028】
カッター刃10は、上述した金型155等を用いて成形したワーク130,150のオーバーフロー樹脂130A,150Aを切除可能である。例えば図10であれば、カットラインL1に沿って切除し、図7であれば、カットラインL2に沿って切除し、図8であれば、カットラインL3に沿って切除等すればよい。
ワーク130である樹脂成形品は、例えば介護用ベッド部品、コピー機部品、ツールボックス、保温樹脂ボックス、自動車用エアスポイラー、自動車用バイザー、自動車用センターピラー、自動車用内装シートなど、多種多様である。カッター刃10は、例えばパーテーションライン121に形成されたオーバーフロー樹脂130A(バリ132)の基部(根元)に当接する。カッター刃10の前端面10Fには、オーバーフロー樹脂130Aの根元に対応した、例えば幅Wが数mm程度の切れ刃部10Aと、ワーク130の各面部123A,123Bに対応した切れ刃を構成しない曲面状の倣い部10Bと、を備える。切れ刃部10Aの幅Wは、0.6〜1mm程度が一般的であるが、ワークに形成されたバリの形状などに応じて適宜変更が可能である。
【0029】
図14は、カッター刃の切れ刃部10Aを含む断面図である。
この構成では、切れ刃部10A(ハッチングで示す部分。)の最先端部に形成された刃10A1の先端部が、カッター刃10の前端面10Fに形成された倣い部10BのR曲面部10B1と、カッター刃本体部10Cの下面とが交わる位置に延出して終端する。すなわち、倣い部10BのR曲面部10B1と、カッター刃本体部10Cの下面とが交わる位置まで、刃10A1の先端部が、カッター刃10の送り方向(矢印B方向)とは逆方向に後退している。本構成の切れ刃部10Aでは、刃10A1の先端部の位置が、カッター刃本体部10Cの下面と一致するため、該刃10A1の先端部が、オーバーフロー樹脂130Aの根元に深く入り、オーバーフロー樹脂130Aを根元から除去できる。
また、倣い部10Bがワークにどのように当接している状態であっても、さらに、樹脂部品のように形状が不安定な場合や、曲面形状に形成されたバリを切除する場合であっても、カッター刃10が材料に食い込みすぎることがなく、刃折れ等の不具合の発生を抑制することができる。
【0030】
切れ刃部10Aの刃10A1の下面は、カッター刃本体部10Cの下面と一致して延出し、当該下面には均し部10A2が形成されている。均し部10A2は、スライド部5におけるエア圧力のバランスに依存したほぼ一定の圧力でワーク130に接する状態とされている。これにより均し部10A2は、切れ刃部10Aにより切り残されたオーバーフロー樹脂130Aの基部をワーク130側に押しつけて、ワーク130のパーテーションライン121近傍を平滑に均すようにされている。
また、カッター刃本体部10Cの均し部10A2よりもさらに奥まった部分として構成されるカッター刃本体部10Cの下面10C1は、若干の角度θをつけられて、ワーク130から離間するようにされており、カッター刃10の後端面10Rは、ワーク130から完全に離間した状態となっている。
この結果、カッター刃10のうち、ワーク130に接触しているのは、均し部10A2に相当する部分だけとなり、切れ刃部10Aや倣い部10Bが他の部分の当たりにより浮き上がるのを防止することができる。
【0031】
次に、バリ取り加工動作について説明する。
バリ取り装置1の作動時には、例えばオペレータが実際に一度ないし数度、多関節ロボット103のアームを動かしてアームの移動経路に相当する経路情報を記憶させるダイレクトティーチングを行う。或いは、経路自動生成システムを利用して、CADシステムなどの設計システムで作成した形状情報を利用して自動的に経路情報を生成する手法等が採用される。ただし、ダイレクトティーチングあるいは経路自動生成システムにより得られる経路情報は、実際のバリ取り対象のワーク130にバラツキが大きい場合、バリ取り動作において、各ワーク130に対し必ずしも正しい経路とはならない。
これに対し、本構成のバリ取り装置1は、上記フローティング機構を有し、予定よりも少し高い押圧力でカッター刃10をワークに押しつけてバリ取りでき、かつ倣い制御を行っているため、教示位置の修正に対する作業がほとんど発生しない。したがって、実質的な加工時間の短縮が図られる。
【0032】
本構成では、図1に示すように、多関節ロボット103が、ダイレクトティーチングに従って、樹脂成形機101からバリ取り前のワーク(樹脂成形品)130を、図2に示すハンド部143を用いて取り出し、ワークをワーク受け治具105に移載する。バリ取り前の中間製品のワーク130には、オーバーフロー樹脂130Aが許容されている。ついで多関節ロボット103が、ワーク受け治具105上のワーク130のオーバーフロー樹脂130Aを、図2に示すバリ取り装置1のカッター刃10を用いて除去する。この場合、ワーク130としては、例えば、樹脂製ツールボックス、樹脂製保温ボックス、コピー機用樹脂部品、自動車用樹脂部品などが挙げられる。
このようなワークに対し、多関節ロボット103においては、オーバーフロー樹脂130Aの除去経路に沿って、アーム先端部103Gのカッター刃10の向き、駆動方向が最適となるように、6軸関節103A〜103Fの動作を制御する。
この場合において、アーム先端部103Gのスライド部5は、云うまでもなく、ワーク130に対して浮動状態である。
【0033】
本構成では、ダイレクトティーチング等により得られる経路情報に基づいてアーム先端部103Gを駆動するに際し、エア供給口4fに印可される圧力を制御し、カッター刃10が所定の圧力でワーク130に対して押し当てられている。そして、エア供給口に印可される圧力は、カッター刃10の姿勢に応じて自動切り換え可能となっており、カッター刃10の姿勢に拘わらず、常に一定である。
この状態で、超音波振動子ホルダ6に取り付けられた超音波振動子7が駆動され、カッター刃10を、例えば振幅30〜50μm程度で振動させながら、倣い部10Bをワーク130の各面部123A,123Bに沿わせて移動し、ワーク130のパーテーションラインに形成されたオーバーフロー樹脂130Aの根元に沿ってカッター刃10を送ってバリを切除し、同時に切除後の面を均す。なお、超音波に限定せず、例えば振幅10〜150μm程度の振動付与でも良い。最後に、多関節ロボット103が、オーバーフロー樹脂130Aの除去後の完成品としてのワーク131をワーク受け治具105から、図2に示す吸着パッド部144を用いて取り出し、完成品排出コンベア109上に排出し、該コンベア109を通じてシステム外に排出する。また、バリ取り装置1が除去したオーバーフロー樹脂130Aは、傾斜したホッパ133を経て、バリ排出コンベア107上に排出して、システム外に排出される。
【0034】
本構成では、バリ取り装置1において、オーバーフロー樹脂130Aの除去後に2次バリのまったく無い完成品131を作り出すことができる。
よって、従来行っていた手作業での2次バリ除去の作業が不要になり、バリ取りシステムにおける完全自動化が可能になり、成形品コスト低減が図られる。また、完全自動化を図った上で、樹脂成形機101の金型にはオーバーフロー樹脂130Aの発生が許容されることになるため、バリの発生をきつく抑制した高価な成形機が不要になり、これによっても、成形品コストを低減できる。
【0035】
この樹脂製品製造システム100では、中間製品の段階で、オーバーフロー樹脂130Aを許容し、いわゆるバリは、オーバーフロー樹脂130Aの先端に発生させ、バリ取り装置1が、オーバーフロー樹脂130Aの根元に対応した切れ刃部10Aと、中間製品の面部に対応した切れ刃を構成しない倣い部10Bとを有するカッター刃10を備え、カッター刃10を振動させながら、オーバーフロー樹脂130Aの根元に沿ってカッター刃10を送って該中間製品と一体化したオーバーフロー樹脂130Aをバリと共に切除するため、バリの無い完成品を簡単に製造できる。
【0036】
図15は、バリ取り装置1の他の実施の形態を示す。
本実施の形態では、多関節ロボット103のアーム先端部103Gに、工具保持手段THの本体215が取り付けられ、本体215には、押圧手段231が取り付けられている。押圧手段231は、エアスライドテーブル232を含み、エアスライドテーブル232の先端には、工具ホルダ200が取り付けられている。工具ホルダ200は、モータ201、支持部材210、スプリング212、支持部材209、ガイド支柱207、208、スプリング211、及びホルダ固定部材206を備え、ホルダ固定部材206には、ツールホルダ204の鍔205が固定されている。ツールホルダ204の内側には、エンドミル203が貫通し、エンドミル203は、モータ201の出力軸のチャック202に固定されている。ツールホルダ204の外周には、エンドミル203が臨むV字形状の開口204Aが形成されている。このバリ取り装置1では、多関節ロボット103に製品形態をティーチィングして、エアスライドテーブル232の動作により、ツールホルダ204をワークに押圧しながら、ツールホルダ204のV字形状の開口204Aに臨む、エンドミル203によって、該ワークのバリを除去する。この場合、ツールホルダ204は、スプリング211,212によりフローティング支持されると共に、開口204AのV字壁面は、倣い部として機能している。
【0037】
本実施の形態では、上述したように、中間製品のパーティング面に、オーバーフロー樹脂130Aが一体に形成されるため、該オーバーフロー樹脂130Aをエンドミル203で効率よく切削することができる。
【0038】
このバリ取り装置1は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、任意のバリ取り装置の適用が可能なことは云うまでもない。上記実施の形態では、切削工具をロボットのアーム先端に支持し、ワークを固定した状態で、ワークのバリ取りをおこなっているが、これに限定されず、例えばロボットのアーム先端にワークを支持して、ロボットにティーチィングをおこない、切削工具を固定した状態で、ティーチィングした通りに、ワークのバリ取りをおこなってもよい。切削工具を固定する場合、工具は、フローティング支持が望ましい。この場合、ロボットはワークを支持し、工具は、架台の一部に設けてロボットの教示どおりの加工をおこなう。
【符号の説明】
【0039】
1 バリ取り装置
10 カッター刃
100 樹脂製品製造システム
101 樹脂成形機
130,150 ワーク
130A,150A オーバーフロー樹脂
151 固定金型
153 可動金型
155 金型
151A,153A 合わせ面
151B,153B 収容部
160 ガス抜き孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリをバリ除去装置で除去して完成品を製造する樹脂製品製造システムにおいて、
前記樹脂成形機が、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、該金型により前記オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形すると共に、
前記バリ除去装置が、前記中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して完成品を製造する
ことを特徴とする樹脂製品製造システム。
【請求項2】
前記オーバーフロー樹脂を縦バリの発生方向に一体化したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品製造システム。
【請求項3】
前記オーバーフロー樹脂を横バリの発生方向に一体化したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品製造システム。
【請求項4】
前記オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂製品製造システム。
【請求項5】
樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリを除去して完成品を製造する樹脂製品製造方法において、
合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型により該オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形する過程と、
前記中間製品と一体化した前記オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して前記完成品を製造する過程と
を備えたことを特徴とする樹脂製品製造方法。
【請求項6】
前記オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きすることを特徴とする請求項5に記載の樹脂製品製造方法。
【請求項7】
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置において、
合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、
前記金型で前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としたことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項8】
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置の金型であって、
合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有し、
前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としたことを特徴とする樹脂成形装置の金型。
【請求項1】
樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリをバリ除去装置で除去して完成品を製造する樹脂製品製造システムにおいて、
前記樹脂成形機が、合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、該金型により前記オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形すると共に、
前記バリ除去装置が、前記中間製品と一体化した該オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して完成品を製造する
ことを特徴とする樹脂製品製造システム。
【請求項2】
前記オーバーフロー樹脂を縦バリの発生方向に一体化したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品製造システム。
【請求項3】
前記オーバーフロー樹脂を横バリの発生方向に一体化したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製品製造システム。
【請求項4】
前記オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂製品製造システム。
【請求項5】
樹脂成形機で中間製品を成形し、該中間製品のバリを除去して完成品を製造する樹脂製品製造方法において、
合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型により該オーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形する過程と、
前記中間製品と一体化した前記オーバーフロー樹脂を前記バリと共に切除して前記完成品を製造する過程と
を備えたことを特徴とする樹脂製品製造方法。
【請求項6】
前記オーバーフロー樹脂の収容部を通してガス抜きすることを特徴とする請求項5に記載の樹脂製品製造方法。
【請求項7】
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置において、
合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有した金型を備え、
前記金型で前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としたことを特徴とする樹脂成形装置。
【請求項8】
バリ除去装置で除去するバリを含む中間製品を成形する樹脂成形装置の金型であって、
合わせ面にオーバーフロー樹脂を収容する収容部を有し、
前記バリを含むオーバーフロー樹脂を一体化した中間製品を成形可能としたことを特徴とする樹脂成形装置の金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−260337(P2010−260337A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251670(P2009−251670)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2009−114728(P2009−114728)の分割
【原出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(599043585)日本省力機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2009−114728(P2009−114728)の分割
【原出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(599043585)日本省力機械株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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