説明

樹脂製容器の帯電除去方法および帯電除去装置

【課題】電子線の照射により殺菌された樹脂製容器2の外面と内面との電位差を減少させる。
【解決手段】電子線が照射された樹脂製容器2が搬入されるリンサ122に、樹脂製容器2の内面に洗浄液を噴射する内面噴射ノズル148と、外面側に洗浄液を噴射する外面噴射ノズル152とを設け、これらノズル148、152を、リンサ122の回転テーブル140、150、回転軸138、回転軸138を支持するベース154等を介して接地する。電子線照射後の樹脂製容器2の内面側と外面側の前面に万遍なく洗浄液を噴射することにより内面側の洗浄液と外面側の洗浄液とを導通させ、樹脂製容器2の内面側と外面側に付着している電荷のうち、電位の高い面に付着している電荷を電位の低い面に移動させることにより、内外面の電位差を無くす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器に電子線を照射して殺菌した際にこの樹脂製容器に帯電した電荷を除去することにより、樹脂製容器の内面側と外面側との電位差を低減する樹脂製容器の帯電除去方法および帯電除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PETボトル等の樹脂製容器に電子線を照射して殺菌を行う電子線容器殺菌装置は従来から広く用いられている。樹脂製容器に電子線を照射して殺菌すると、樹脂製容器が帯電することが従来から知られている。このように樹脂製容器が帯電すると埃や塵を引き寄せてしまうという問題が発生する。また、樹脂製容器の壁面の内部に電荷が滞留するとともに、直接電子線の照射を受ける外側の表面と、壁面を透過して内部側の表面に滞留する電荷が異なるため、内面と外面との間に大きな電位差が発生し、このことが原因で静電気が発生するという問題もあった。そこで、帯電した樹脂製容器の静電気を除去する装置が各種提案されている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−216453号公報
【特許文献2】特開2009−51517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載された帯電物の除電装置のように、除電対象物に対しイオンを吹き付ける構成や、特許文献2に記載された内容物入り容器の製造方法のように、容器内に充填される内容物に導体を挿入した構成では、樹脂製の容器等の内部(樹脂素材の内部)に帯電した電荷を完全に除去することはできないという問題があった。また、樹脂ボトルの内面と外面との電位差を低減することができないという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明に係る樹脂製容器の帯電除去方法は、前記課題を解決するために成されたもので、電子線が照射された樹脂製容器の内面側と外面側に、接地手段に接続されている液体供給手段から液体を供給することにより、内面側と外面側とを導通させ、樹脂製容器の内面と外面に帯電している電荷のうち、電位の高い面の電荷を電位の低い面に流すことにより、樹脂製容器の内面と外面との電位差を減少させることを特徴とするものである。
【0006】
また、第2の発明に係る樹脂製容器の帯電除去装置は、電子線が照射された樹脂製容器を保持する保持手段と、この保持手段によって保持される樹脂製容器の内面と外面に液体を供給する液体供給手段とを有する処理装置と、この処理装置に接続している接地手段とを備え、前記液体供給手段から樹脂製容器の内面と外面に液体を供給することにより、内面側と外面側とを導通させ、樹脂製容器の内面と外面に帯電している電荷のうち、電位の高い面の電荷を電位の低い面に流すことにより、樹脂製容器の内面と外面との電位差を減少させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の樹脂製容器の帯電除去方法および帯電除去装置は、電子線の照射を受けた樹脂製容器の内面と外面に、接地手段に接続された液体供給装置から液体を供給し、この液体を介して樹脂製容器の内面と外面とを導通させるようにしたので、樹脂製容器の壁体の内外面の電荷を大幅に低減させて、樹脂製容器の内面側と外面側の電位差を減少させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は樹脂製容器の帯電除去装置の全体の配置を簡略化して示す平面図である。(実施例1)
【図2】図2(a)は回転体のグリッパに保持された樹脂製容器を示す縦断面図、図(b)はアース電極を昇降させるガイド機構の横断面図である。
【図3】図3はリンサの縦断面図である。
【図4】図4はフィラの縦断面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0009】
電子線を照射された樹脂製容器は、その壁面の内部や外側の表面、および内側の表面に電荷が滞留している。この樹脂製容器に内面側から液体を供給する供給手段と外面側から液体を供給する供給手段を設け、これら液体供給手段をアース側に接続する。液体供給手段から内面側と外面側の全面に渡って万遍なく液体を供給することにより、樹脂製容器の内面側と外面側とを導通させ、樹脂製容器の内面と外面に滞留している電荷をアース側に流すことにより、樹脂製容器の内面側と外面側との電位差を大幅に減少させるという目的を達成する。
【実施例1】
【0010】
以下、図面に示す実施例により本発明を説明する。図1は容器を殺菌した後、液体を充填しキャッピングを行う殺菌充填装置であり(全体として符号1で示す)、図1の左側が殺菌ゾーンS、右側が洗浄、充填およびキャッピングを行うゾーンF(以下、充填ゾーンと呼ぶ)である。殺菌ゾーンSは、樹脂製容器2(図2(a)参照)に電子線を照射して殺菌する際に、電子線やX線(制動X線)が外部に漏れないように遮蔽する鉛製の壁面4によって囲まれた殺菌チャンバー6内に収容されている。この殺菌チャンバー6内には、入口側に配置された搬入ホイール8と、この搬入ホイール8から受け渡された容器2を回転搬送する搬送ホイール12が設けられている。樹脂製容器2は、この搬送ホイール12に設けられたボトル支持手段18(図2(a)参照)によって支持されて搬送される間に、電子線照射装置16の前面側を通過して電子線の照射を受ける。電子線の照射を受けた樹脂製容器2は、殺菌チャンバー6の下流側に配置された搬出ホイール34に受け渡されて、次の充填ゾーンFに送られる。
【0011】
前記殺菌ゾーンSで殺菌され、その下流側の充填ゾーンFにおいて液体等の内容物が充填される容器2は、PETボトル等の樹脂製の容器2である。この樹脂製容器2は、上部に円筒状の口部2aを備えている(図2(a)参照)。この口部2aの下部寄りにフランジ2bが形成されており、このフランジ2bの上方または下方をグリッパによって把持し、あるいはフランジ2bの下面側を前記ボトル支持手段18やその他の支持手段等によって支持して、吊り下げた状態で搬送する。
【0012】
この樹脂製容器2は、エア搬送コンベヤ29によって連続的に搬送され、図示しないインフィードスクリュー等によって所定の間隔に切り離された後、前記殺菌チャンバー6の入口側に配置された搬入ホイール8に引き渡される。搬入ホイール8には、円周方向等間隔で複数のグリッパ30が設けられており、各グリッパ30が前記樹脂製容器2のフランジ2bよりも上方側を把持して搬送する。搬入ホイール8のグリッパ30に保持されて回転搬送された樹脂製容器2は、次の搬送ホイール12に引き渡される。
【0013】
前記搬送ホイール12には、円周方向等間隔で複数のボトル支持手段18が設けられており、これら各ボトル支持手段18が樹脂製容器2のフランジ2bの下面側を支持して搬送する。前記搬入ホイール8と搬送ホイール12とは同期回転しており、供給位置Aにおいて、搬入ホイール8の各グリッパ30から搬送ホイール12の各ボトル支持手段18に樹脂製容器2が受け渡される。
【0014】
搬送ホイール12の各ボトル支持手段18に支持されて回転搬送される樹脂製容器2は、電子線照射装置16の前方を通過し、その間に上下方向の全長に亘って全体的に電子線照射装置16から電子線の照射を受けて殺菌される。殺菌された樹脂製容器2は、その下流側の搬出ホイール34に引き渡される。搬出ホイール34は外周部に円周方向等間隔で複数のグリッパ36が設けられており、これら各グリッパ36が、前記搬送ホイール12のボトル支持手段18が支持している樹脂製容器2の、フランジ2bよりも上部を把持して受け取る。搬出ホイール34も前記搬送ホイール12と同期回転しており、排出位置Bにおいて、搬送ホイール12の各ボトル支持手段18から搬出ホイール34の各グリッパ36に樹脂製容器2が受け渡される。搬出ホイール34のグリッパ36に把持された樹脂製容器2は、殺菌チャンバー6に隣接して設けられた次のチャンバー(充填ゾーンFのチャンバー38)の入口側に配置されている受け取りホイール120の容器支持手段(図示せず)に受け渡されて次の工程に送られる。
【0015】
前記殺菌チャンバー6の一方の壁面(図1の上方の壁面)に開口部4aが形成され、この開口部4aに電子線照射装置16が取り付けられている。この電子線照射装置16は、図示はしないが、樹脂製容器2に電子線を照射する真空チャンバー(加速チャンバー)を備えており、周知のように、真空チャンバー内の真空中でフィラメントを加熱して熱電子を発生させ、高電圧によって電子を加速して高速の電子線ビームにした後、照射窓16aに取り付けてあるTi等の金属製の窓箔を通して大気中に取り出して被処理物(この実施例では樹脂製容器2)に電子線を当てて殺菌等の処理を行う。
【0016】
次に、図2(a)、(b)により、搬送ホイール12に設けられているボトル支持手段18および殺菌時に樹脂製容器2内に挿入されるアース電極の構成について簡単に説明する。搬送ホイール12は、水平な円盤状のプレート40と、この円盤状プレート40の外周に固定された環状の回転プレート41と、この回転プレート41の上方に配置されて一体的に回転する環状の中間プレート42を備えている。これら回転プレート41と中間プレート42の外周部に、円周方向等間隔で、鉛直方向を向いた円筒状の回転軸44が、それぞれボールベアリング46、48を介して回転自在に支持されている。これら円筒状回転軸44の下端に水平な取付体50が固定されている。この取付体50の下方側に、一対のグリップ部材52A、52B(図2(a)の紙面の手前側と奥側に配置されている)が設けられており、円筒状回転軸44の真下の位置で樹脂製容器2が保持されるようになっている。なお、このボトル支持手段18は、詳細な説明は省略するが、特願2008−280304に開示されたボトル支持手段18と同様の構成を有しており、前記各グリップ部材52A、52Bをそれぞれ一対の板ばね54A、54Bの下端に取り付け、これら板ばね54A、54Bのばね力によって樹脂製容器2を保持するようになっている。
【0017】
ボトル支持手段18が取り付けられている円筒状回転軸44の、前記中間プレート42よりも上方へ突出している上端部にピニオンギヤ64が固定されている。また、前記円盤状プレート40の外周に固定された環状の回転プレート41と環状の中間プレート42の、円筒状回転軸44を支持している位置の半径方向内方側に、鉛直方向の中間軸66が、それぞれボールベアリング68、70を介して回転自在に支持されている。これら各中間軸66の上端の、前記回転軸44のピニオンギヤ64とほぼ同じ高さに、セクターギヤ72が取り付けられている。このセクターギヤ72の、搬送ホイール12の半径方向外方側を向いた面に歯が形成され前記ピニオンギヤ64に噛み合っている。
【0018】
一方、セクターギヤ72の、搬送ホイール12の半径方向内方側を向いた端部(図2(a)の左端)に垂直なピン74が貫通して取り付けられており、この垂直ピン74の上端にカムフォロア76が回転自在に支持されている。また、この垂直ピン74の下端と、前記中間プレート42の内周端に固定したばね受けピン78との間に引っ張りコイルばね80が介装され、セクターギヤ72の端部を搬送ホイール12の半径方向内方側に引きつけている。前記搬送ホイール12の円盤状プレート40の上方に、回転しない円形の固定プレート82が配置されており、その外周にセクターギヤ72を揺動させるカム84が固定されている。このカム84の外周面がカム面になっており、このカム面に沿って前記カムフォロア76が回転移動する。このカムフォロア76の回転移動に伴う半径方向への揺動によって、セクターギヤ72が前記中間軸66を中心に回動してピニオンギヤ64を回転させる。上端にピニオンギヤ64が固定されている円筒状回転軸44の下端に前記ボトル支持手段18が取り付けられており、セクターギヤ72の揺動によりピニオンギヤ64が回転し、樹脂製容器2の口部2aの上方に配置されている円筒状回転軸44が回転することによって、ボトル支持手段18に支持されて搬送されている樹脂製容器2がその中心軸を中心に回転する。この実施例では、セクターギヤ72の回動によってピニオンギヤ64を回転させることにより、樹脂製容器2を正逆に約180度回転させるようになっている。
【0019】
前記水平な取付体50には、前記円筒状の回転軸44の内部孔44aと上下に一致する位置に、貫通孔50aが形成されている。なお、前記搬送ホイール12の天面および外周面はカバー88によって覆われている。また、ピニオンギヤ64の上部は天面のカバー88まで達しており、カバー88との間は摺動可能に密封されている。このように構成することで、回転軸44およびその上部に固定されたピニオンギヤ64の円孔44a、64aは、円盤状プレート40とカバー88で囲まれた内部空間を上下に貫通し、無菌状態に維持される周囲の環境と円盤状プレート40とカバー88で囲まれる内部環境を遮断している。
【0020】
前記搬送ホイール12には、ボトル支持手段18によって搬送されている樹脂製容器2に電子線を照射する際に、この樹脂製容器2の内部に挿入するアース電極90が設けられている。アース電極90は直立した支持ロッド92の下端に取り付けられており、これらアース電極90および支持ロッド92が、前記円筒状回転軸44およびその上部に固定されたピニオンギヤ64の円孔44a、64a、下方の水平な取付体50の貫通孔50a等を上下に貫通して昇降できるようになっている。
【0021】
前記アース電極90を昇降させる構成について説明する。前記カバー88上の、円筒状回転軸44が配置されている位置よりも半径方向内方側に、直立したガイド機構94が設けられている。このガイド機構94は、図2(a)および(b)に示すように、直立したガイド部材96と、このガイド部材96の上下の複数箇所に取り付けられたガイドローラ98とを備えている。ガイドローラ98は、ガイド部材96の上下の適宜の箇所にそれぞれ一対配置されており、これらガイドローラ98と前記ガイド部材96とに支持されて昇降ロッド100が昇降するようになっている。この昇降ロッド100の下端に、水平な取付部材102を介して、前記支持ロッド92およびアース電極90が取り付けられており、昇降ロッド100の昇降によってアース電極90が昇降できるようになっている。なお、アース電極90の材質としては、ステンレス、アルミニウム、チタン等の金属やその他の導電性の材料を用いることができる。さらに、形状は丸棒状の他、断面が矩形や長方形、多角形であってもよく、外周面に多数の突起を設けるなど鋸刃状に形成したり、ブラシを設けるなどして電荷を誘導し易くなるよう構成してもよい。また、殺菌時に樹脂製容器2内に挿入される部材はアース電極90に限るものではなく、樹脂製容器2の口部2aから内部に挿入可能で電子を引き付ける部材であればよく、例えば、プラスの電圧をかけたプラス電極に接続された部材などであってもよい。
【0022】
前記カバー88の天面の上方に、搬送ホイール12とは独立した水平な固定体103が設置され、その外周部上に昇降カム104が取り付けられている。一方、前記昇降ロッド100には、前記取付部材102より高い位置に水平方向の昇降部材106が固定されており、この昇降部材106の先端にカムフォロア108が取り付けられている。このカムフォロア108が前記昇降カム104の上面(カム面)を回転移動し、カム形状に応じて昇降することにより前記アース電極90が昇降する。カムフォロア108が昇降カム104によって押し上げられて最も上昇したときには、アース電極90の下端が樹脂製容器2の口部2aよりも上方に位置し、最も下降したときには、図2(a)に示すように、アース電極90の下端が樹脂製容器2の底面2c近くまで挿入される。なお、この際、昇降ロッド100の下降端は、水平な取付部材102がカバー88の天面上に固定されている支持部材110に当接することにより下降を規制されるようになっており、このときには、カムフォロア108が昇降カム104のカム面に接触しない高さで停止する。この状態ではアース電極90は、それぞれ金属製の導電性の材料からなる支持ロッド92、取付部材102、支持部材110を介して金属製の導電性の材料からなるカバー88と導通可能となってアース電極90とカバー88が通電し、アース電極90からカバー88へ電荷が流れるようになる。
【0023】
前記搬送ホイール12のボトル支持手段18に支持されて搬送されている樹脂製容器2が、電子線照射装置16から電子線を照射されて殺菌された後、搬出ホイール34のグリッパ36に受け渡されて回転搬送される。前記殺菌ゾーンSの殺菌チャンバー6に隣接して、充填ゾーンFのチャンバー38が配置されており、殺菌ゾーンSの搬出ホイール34によって回転搬送された樹脂製容器2は、充填ゾーンFのチャンバー38の入口側に配置された受け取りホイール120に受け渡される。受け取りホイール120に受け渡された樹脂製容器2は、回転搬送されてリンサ122(後に説明する図3参照)に供給される。リンサ122に供給された樹脂製容器2は、このリンサ122内を回転搬送される間に内外面を洗浄される。洗浄された樹脂製容器2は、中間ホイール124を介してフィラ126に供給される。
【0024】
中間ホイール124から樹脂製容器2を受け取ったフィラ126は、この樹脂製容器2を保持して回転搬送する間に液体等の内容物の充填を行う。フィラ126において充填が終了した樹脂製容器2は、フィラ126の排出ホイールとキャッパの供給ホイールとを兼ねた中間ホイール128によって取り出され、キャッパ130に供給される。キャッパ130においてキャッピングが行われた樹脂製容器2は、キャッパ130からの排出ホイール132によって取り出されて、排出コンベヤ134によって排出され次の工程に送られる。
【0025】
リンサ122は、図3に示すように、回転中心となる中央の直立した回転軸138に回転テーブル140が取り付けられ、この回転テーブル140の外周部に、円周方向等間隔で樹脂製容器2を保持するグリッパ142が設けられている。これら各グリッパ142は、直立したスタンド144上に、この回転テーブル14の半径方向と直交する方向を向いた水平な支点ピン146を介して回転自在に支持されている。このグリッパ142は、回転テーブル140の半径方向外方側を向いた水平位置と半径方向内方側を向いた水平位置との間で180度回転する。グリッパ142は、半径方向外方を向いた位置で正立状態の樹脂製容器2のフランジ2bの下側をグリップした後、半径方向内方側へ180度反転して樹脂製容器2を倒立状態にする(図3に示す状態)。
【0026】
グリッパ142の反転によって倒立状態になった樹脂製容器2の口部2aの下方に内面噴射ノズル148が配置されている。この内面噴射ノズル148が噴射した洗浄液158aは、樹脂製容器2の口部2aから内部に入り、そのまま底面2cに当たり、この底面2cを外周側へ流れた後、内周面全体に沿って流下し(流下する洗浄液を符号158bで示す)、口部2aから外部に流れ出して回転テーブル140上に落下する。
【0027】
また、前記回転軸138の上部に第2回転テーブル150が取り付けられており、この第2回転テーブル150の下面側に、前記各内面噴射ノズル148と対応させて外面噴射ノズル152が配置されている。これら各外面噴射ノズル152は、倒立状態になった樹脂製容器2の底部外面の中央部に向けて洗浄液160aを噴射する。この洗浄液は樹脂製容器2の外周面全体に広がって流れ落ちる(流下する洗浄液を符号160bで示す)。前記内面噴射ノズル148と外面噴射ノズル152は、それぞれ下部の回転テーブル140および上方の第2回転テーブル150、中央の回転軸138、この回転軸138を回転自在に支持しているベース154等を介してアース156側に接続されている。
【0028】
以上の構成に係る殺菌充填装置1の作動について説明する。この実施例に係る殺菌充填装置1で殺菌される樹脂製容器2は、エア搬送コンベヤ29によって搬送され、所定の間隔にピッチ切りされた後、鉛製の壁面4で囲まれた殺菌チャンバー6内に搬入される。殺菌チャンバー6の入口側に配置された搬入ホイール8は、円周方向等間隔で複数のグリッパ30が設けられており、外部から搬入室10内に搬入された樹脂製容器2の円筒状口部2aの下部寄りに形成されているフランジ2bの上方側をグリップする。グリッパ30に保持された樹脂製容器2は、搬入ホイール8の回転によって回転搬送され、搬送ホイール12への供給位置Aで、搬入ホイール8のグリッパ30から搬送ホイール12に設けられたボトル支持手段18に受け渡される。
【0029】
ボトル支持手段18は、グリップ部材52A、52Bの一方を回転方向の前方に向け、他方を回転方向の後方に向けて回転移動しており、供給位置Aで、搬入ホイール8のグリッパ30に把持されている樹脂製容器2の口部2aが両グリップ部材52A、52B間に押し込まれる。両グリップ部材52A、52Bはそれぞれ板ばね54A、54Bの下端に取り付けられており、板ばね54A、54Bを強制的に押し開いて樹脂製容器2の口部2aが両グリップ部材52A、52B間に押し込まれる。その後、両板ばね54A、54Bが自らのばね力によって復帰して、図2(a)に示すように樹脂製容器2のフランジ2bの下部側を保持するとともにフランジ2bの下面を支持する。
【0030】
搬送ホイール12の回転により、ボトル支持手段18に支持されている樹脂製容器2が図1の矢印R方向に回転搬送されて電子線照射装置16の前面側に到達する。この電子線照射装置16から電子線の照射を受ける際には、アース電極90が昇降カム104によって下降されて、図2(a)に示すように、口部2aの開口部から先端(下端)が樹脂製容器2の底面2c近くに位置する高さまで挿入される。なお、この電子線の照射を受ける区間以外の区間では、アース電極90は昇降カム104によって上昇されて、先端が樹脂製容器2の口部2aよりも上方に位置している。このようにアース電極90が内部に挿入された樹脂製容器2が、電子線照射装置16の照射窓16aの前方側を移動する間に電子線の照射を受けて殺菌される。この実施例のように、電子線を照射する際に樹脂製容器2の内部にアース電極90を挿入しておくと、照射により放出されて樹脂製容器2を形成する樹脂素材を透過し、また、口部2aの開口部から樹脂製容器2内に入り込んだ電子が、アース電極90に誘導されて支持ロッド92、取付部材102、支持部材110を通じてカバー88から装置全体に流れるため、樹脂製容器2の内面および壁面の樹脂素材の内部に帯電することを抑制することができる。特に、樹脂製容器2の外面に向けて放出された電子は、電子線照射時の加速による浸透力だけでなく、樹脂製容器2の内部からアース電極90に誘導されることによっても樹脂材料を透過するよう作用され、樹脂材料の内部に滞留して帯電することが抑制される。
【0031】
なお、前記ボトル支持手段18が取り付けられている円筒状回転軸44は、上端にピニオンギヤ64が固定されてセクターギヤ72に噛み合っており、さらに、このセクターギヤ72は、上方の固定プレート82の外周に取り付けられたカム84によって揺動するようになっている。このカム84によって電子線照射装置16の前面を移動する間に、円筒状回転軸44が回転されてボトル支持手段18に支持されている樹脂製容器2が正逆に約180度回転される。このように樹脂製容器2が電子線照射装置16の照射窓16aの前面で180度回転することにより、樹脂製容器2の上下方向の全長に亘って搬送方向前後両側の内外面全体が電子線の照射を受けて殺菌される。
【0032】
電子線照射装置16の前面側を通過する間に電子線の照射を受けて殺菌された樹脂製容器2は、ボトル支持手段18に支持されて回転搬送され、次の搬出ホイール34に引き渡される。ボトル支持手段18にフランジ2bの下方側を支持されている樹脂製容器2は、排出位置Bにおいて、搬出ホイール34に設けられているグリッパ36に受け渡されてフランジ2bの上方側を把持される。搬出ホイール34のグリッパ36に保持されて回転搬送された樹脂製容器2は、次のチャンバー(充填ゾーンFのチャンバー38)の入口側に配置された受け取りホイール120に受け渡される。
【0033】
前記受け取りホイール120に保持された樹脂製容器2は、次のリンサ122に供給される。リンサ122のグリッパ142(図3参照)は、受け取りホイール120からの供給位置Cでは、半径方向外方側を向いており、正立した状態の樹脂製容器2のフランジ2bの下側を把持する。その後、グリッパ142が半径方向内方側へ反転して樹脂製容器2を倒立状態にする。この状態で下方の内面噴射ノズル148と上方の外面噴射ノズル152から樹脂製容器2の内面側と外面側に洗浄液を噴射する。内面側および外面側とも、全面に洗浄液が流れるように各噴射ノズル148、152から噴射する。内面側と外面側に噴射された洗浄液は、アース側に流れ落ちて導通する。樹脂製容器2の壁面の内部には、マイナスの電荷が滞留し、樹脂製容器2の外側の表面と内側の表面にはプラスの電荷を持つイオンが付着した状態になっている。仮に、電子線の照射を直接受けた外面側の方が内面側よりも電位が高い場合は、樹脂製容器2の内外面を導通させることにより、外面側に付着している電荷が外面側に噴射される洗浄液、回転テーブル140、内面噴射ノズル148、内面側に噴射される洗浄液を介して樹脂製容器2の内外面の電位差が無くなるまで、電位の低い内面側に移動することになる。なお、内面側の方が外面側よりも電位が高い場合は、樹脂製容器2の内外面を導通させることにより、内外面に付着している電荷が電位の低い外面側に移動することになる。
【実施例2】
【0034】
図4は第2の実施例に係る樹脂製容器の帯電除去装置を示す縦断面図であり、この実施例では、フィラ226に適用した場合を示す。なお、フィラ226以外の構成は前記第1実施例と同一でもよく、異なる構成であってもよい。フィラ226は、回転中心となる中央の直立した回転軸238に取り付けられた下部側の回転テーブル240の外周部に、円周方向等間隔で樹脂製容器2を保持するグリッパ242が設けられている。これら各グリッパ242は、直立したスタンド244上に半径方向外方側を向けて取り付けられており、各グリッパ242に樹脂製容器2が保持されて回転搬送される。各グリッパ242に保持された樹脂製容器2の上方に、それぞれ充填ノズル260が配置されている。この充填ノズル260は、前記回転テーブル(第1回転テーブル)240の上方に配置された第2回転テーブル250の外周部に取り付けられており、前記グリッパ242に保持されて回転搬送される樹脂製容器2に対し、給液管262を介して送られた導電性を有する液体の充填を行う。
【0035】
さらにこの実施例では、グリッパ242に保持されている樹脂製容器2の外面側に水や洗浄液等の導電性を有する液体を噴射する外面噴射ノズル264が設けられている。この外面噴射ノズル264は前記充填ノズル260の周囲に複数設けられており、樹脂製容器2の外周面全域に万遍なく液体を流すことができるように配置されている。前記充填ノズル260および外面噴射ノズル264は、第2回転テーブル250回転軸238およびベース254等を介してアース256側に接続されている。この実施例でも、充填ノズル260から樹脂製容器2内に充填された液体と、外面噴射ノズル264から樹脂製容器2の外面全体に供給された液体により、樹脂製容器2の内面と外面とが導通し、内面と外面との電位差を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0036】
2 樹脂製容器
148 液体供給手段(内面噴射ノズル)
152 液体供給手段(外面噴射ノズル)
156 接地手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線が照射された樹脂製容器の内面側と外面側に、接地手段に接続されている液体供給手段から液体を供給することにより、内面側と外面側とを導通させ、樹脂製容器の内面と外面に帯電している電荷のうち、電位の高い面の電荷を電位の低い面に流すことにより、樹脂製容器の内面と外面との電位差を減少させることを特徴とする樹脂製容器の帯電除去方法。
【請求項2】
電子線が照射された樹脂製容器を保持する保持手段と、この保持手段によって保持される樹脂製容器の内面と外面に液体を供給する液体供給手段とを有する処理装置と、この処理装置に接続している接地手段とを備え、
前記液体供給手段から樹脂製容器の内面と外面に液体を供給することにより、内面側と外面側とを導通させ、樹脂製容器の内面と外面に帯電している電荷のうち、電位の高い面の電荷を電位の低い面に流すことにより、樹脂製容器の内面と外面との電位差を減少させることを特徴とする樹脂製容器の帯電除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−30842(P2012−30842A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171958(P2010−171958)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(309007911)サントリーホールディングス株式会社 (307)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】