説明

樹脂製排ガスチューブ

【課題】安価で、伸縮性に優れ、軽量かつ丈夫であり、ボディーへの嵌合作業を容易、かつ確実に行える燃料電池の排ガスチューブを提供する。
【解決手段】排ガスチューブ1を樹脂で形成し、少なくとも一部に蛇腹状部分2を設け、蛇腹部分2の樹脂の板厚を、屈曲によって谷の部分も山の部分も破れることがなく、なおかつ樹脂を蛇腹状に製造な最も薄い板厚である、谷部分:0.5〜0.6mm、山部分:0.1〜0.3mmとして谷部分の板厚を山部分の板厚より厚く形成し、さらに、図1の各部寸法、角度をH:4.5mm、P:3.3mm、R1:0.5mm、R2:0.2mm、θ:28°とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池のガス排出装置用の排気チューブに関し、特に、排気チューブ端末に使用される樹脂製の排ガスチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
HV車用の電池パックに用いられる燃料電池(NiMH)は異常時に水素を発生する。その際、水素を車外に排出するのに水素排気チューブ4を使用していた(図3参照)。
図3に示す水素排気チューブは、上記燃料電池の各単位電池に接続される部分(B部、D部)と、それらの接続部分(C部)、及びボディーへ接続する端末部(E部)からなっており、端末部(E部)には従来ゴムホース5を用いていた。これは、電池パックの寸法のバラツキが±5mmあり、そのバラツキをゴムホース5の可撓性で吸収するためである。
【0003】
特許文献1には、燃料電池の単位電池が内圧の上昇によって膨張した場合でもシール性を確保できるガス排出装置について記載されており、ゴム製の排ガスチューブに単位電池の安全弁の放出口を接続して、膨張による間隔変化を吸収するガス排出装置が開示されている。
また、特許文献2には、燃料電池の単位電池に反応ガスや冷媒を供給・排出させる配管を備える燃料電池システムについて記載されており、単位電池への取り付け部の強度を管壁の肉厚を厚くして他の部分の強度より大きくし、耐衝撃性を高めた配管が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−110377号公報
【特許文献2】特開2007−42433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ゴム製の排ガスチューブは材料費が高く、製作コストが大きい。さらに、水素ガスの浸透防止のため厚肉(t=1mm程度)となり、重量が大きいだけでなく、小さい曲率半径(以下Rと記す)で曲げることが困難となり、先端のグロメットが相手側のボディーにしっかりと嵌合したかどうかの感触がつかみにくいという問題もある。また、バリが発生して嵌合作業に悪影響を及ぼすこともある。また、肉厚により強度アップを図る方式では排ガスチューブ重量が増すだけでなく、単位電池への取り付け部の可撓性が減少して取り付け作業性に問題が生じることがある。
【0006】
本発明は上記問題点を解消するために、ゴムの部分を樹脂(「樹脂」に「ゴム」は含まれないものとする。)で作り、かつゴムと同等の伸縮性を持たせるため蛇腹部分を設けることにより、より安価で、伸縮性に優れ、軽量かつ丈夫であり、上記嵌合作業を容易、かつ確実に行える樹脂製排ガスチューブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、燃料電池に用いられる排ガスチューブであって、上記排ガスチューブは樹脂で形成されており、少なくとも一部に蛇腹状部分を有し、上記蛇腹状部分は谷部分の板厚が山部分の板厚より厚く形成されることを特徴とする。これにより、伸縮性を有し、丈夫で安価な排ガスチューブとすることができる。
請求項2の発明は、さらに、上記谷部分の板厚は0.5〜0.6mmであり、上記山部分の板厚は0.1〜0.3mmであることを特徴とする。これにより、上記に加えてさらに軽量の排ガスチューブとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明の樹脂製排ガスチューブは、従来ゴムで製作されていた部分を樹脂で製作し蛇腹部分を設けることでゴムと同等の伸縮性を持ち、軽量で繰り返し伸縮させても破断しない丈夫なものとできるため、上記嵌合作業を容易、かつ確実に行うことができる排ガスチューブをより安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、図を用いて本発明の樹脂製排ガスチューブの実施形態について説明する。
図1は、本発明の樹脂製排ガスチューブの一つの実施形態を示す平面図である。符号1は樹脂製排ガスチューブ、符号2は蛇腹部分、符号3はグロメットを示す。
また、各部の寸法、角度を以下の説明のために記号で示す。Hは直管部分に対する蛇腹部分の山の高さ、Pは山と山のピッチ、R1は山の頂点のR、R2は谷部分のR、θは山と山の間の角度をそれぞれ示す。
【0010】
図2は図1の蛇腹部分2のA−A断面図であって、T1は山部分の板厚、T2は谷部分の板厚をそれぞれ示す。
図3は従来の水素排気チューブの一例を示す図であり、上述したように、ボディーへ接続する端末部(E部)は、ゴムホース5と接続用のグロメット3からなっている。
【0011】
第1の実施形態は、図1に示す形状の蛇腹部分2を有する樹脂製排ガスチューブ1であり、直管部分、曲管部分、蛇腹部分2はすべて樹脂製である。グロメット3はゴム(EPDM)製であり、従来部品の流用が可能である。なお、樹脂としてはポリエチレン系樹脂を用いたが、ポリプロピレン系樹脂(ガラス繊維入りのものも可)、ナイロン系樹脂を用いてもよい。
発明者らは多くのサンプルで試験を行った結果、上記の各部寸法、角度をH:4.5mm、P:3.3mm、R1:0.5mm、R2:0.2mm、θ:28°とし、さらに蛇腹部分2の樹脂の板厚をT2:0.5〜0.6mm、T1:0.1〜0.3mmとする条件が、蛇腹部分2の屈曲によって谷の部分も山の部分も破れることがなく、なおかつ樹脂を蛇腹状に製造可能で、樹脂製排ガスチューブ1を軽量とできる組み合わせであることを見出した。
【0012】
通常、蛇腹部分2の板厚を均一とすると、繰り返し伸縮することにより力を受ける谷の部分が破断する。このため、全体の重量軽減を図る目的で、谷の部分をより強くした上記のような寸法配分として最適条件を調査したのである。
なお、上記直管部分、曲管部分は、屈曲を受けないため、重量を最低限とし、なおかつ強度上の余裕を持たせた最低限度の板厚は1.5mmとなった。本実施形態では1.5〜2.0mmとしている。
【0013】
第2の実施形態は、上記各寸法、角度をH:4.0mm、P:3.4mm、R1:0.8mm、R2:0.2mm、θ:25.4°とし、さらに蛇腹部分2の樹脂の板厚をT2:0.5〜0.6mm、T1:0.1〜0.3mmとしたものである。
本実施形態は上記第1の実施形態の成形性の欠点の解消を目的とするものである。本実施形態の特徴としては、山の高さを4.0mmにしたことで成形性が向上したが、一般板厚が薄くならないため、第1の実施形態に比べると伸縮性が劣る点である。
【0014】
第3の実施形態は、上記各寸法、角度をH:4.0mm、P:3.4mm、R1:0.5mm、R2:0.2mm、θ:32.8°とし、さらに蛇腹部分2の樹脂の板厚をT2:0.5〜0.6mm、T1:0.1〜0.3mmとしたものである。
本実施形態は上記第1の実施形態の成形性の欠点の解消を目的とするものである。本実施形態の特徴としては、山の高さを4.0mmにしたことで成形性が向上したが、一般板厚が薄くならないため、第1の実施形態に比べると伸縮性が劣る点である。また、蛇腹部分2があまり膨らんでいないので板厚も厚いが、成形性としては実施形態の中で最も優れている。
【0015】
第4の実施形態は、上記各寸法、角度をH:4.5mm、P:3.4mm、R1:1.2mm、R2:0.2mm、θ:10.8°とし、さらに蛇腹部分2の樹脂の板厚をT2:0.5〜0.6mm、T1:0.1〜0.3mmとしたものである。
本実施形態は上記第1の実施形態の伸縮性の欠点の解消を目的とするものである。本実施形態の特徴としては、R1を大きくとったため、伸縮性は実施形態の中で最も優れているが、成形性は実施形態の中で一番劣っている点である。
【0016】
以上第1〜第4の実施形態では、いずれも山の高さHは3〜4.5mm程度で成形可能である。H:3mm程度では、蛇腹部分2の板厚は薄くせざるを得ず、成形性は比較的良いが伸縮性は悪くなる。逆に、H:4.5mm程度とすると、蛇腹部分2の板厚を厚くすることができ、成形性は比較的悪くなるが、伸縮性はかなり良くなる。
【0017】
また、以上の実施形態において、蛇腹部分2を両端の直間部分及び曲間部分から取り外し可能な取り付け方式で構成してもよい。取り付け方式としてはねじ込み等の一般的な方式が考えられ、このような構成とすれば、予めいくつかの形状、長さの異なる蛇腹部分2を用意しておけば、蛇腹部分2を取り替えるだけで、各種寸法の燃料電池に使用することが可能となる。
【0018】
以上述べた構成の樹脂製排気チューブの機能としては、蛇腹部分を設け、各部の最適な寸法形状を採用することにより、従来のゴムホースと同等の伸縮性を有し、また、繰り返し伸縮、屈曲させても破断しない丈夫な排気チューブとできる点、さらに、軽量でバリの発生のない排気チューブとできる点がある。
上記構成の樹脂製排気チューブは、燃料電池(NiMH)の排気チューブだけでなく、Liイオンの排煙チューブにも応用できる。
【0019】
上記構成の樹脂製排気チューブは、伸縮性、屈曲性に優れているため、ゴムホースに比べて細かな曲管部分を設けて位置調整を行わなくても末端のグロメットをボディーに嵌合し易い形状とすることができ、またグロメット部の自由度が大きく排気チューブ自体が軽量であるため、上記嵌合状態を正確に判断することができ組み付けが容易となる。さらに、バリの発生がないため上記取り付け作業が安全に行える。また、ゴムに比べて材料費が安価であるため、組み付け費の低減も含めて製作コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の樹脂製排気チューブの構成図であり、各部の寸法、角度を示す図である。
【図2】図1のA−A断面図であり、蛇腹部分のチューブの板厚の違いを示す図である。
【図3】従来の燃料電池の水素排気チューブを示す図である。
【符号の説明】
【0021】
1 樹脂製排気チューブ
2 蛇腹部分
3 グロメット
4 水素排気チューブ
5 ゴムホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に用いられる排ガスチューブであって、
上記排ガスチューブは樹脂で形成されており、少なくとも一部に蛇腹状部分を有し、
上記蛇腹状部分は谷部分の板厚が山部分の板厚より厚く形成される
ことを特徴とする樹脂製排ガスチューブ。
【請求項2】
上記谷部分の板厚は0.5〜0.6mmであり、上記山部分の板厚は0.1〜0.3mmである、請求項1に記載の樹脂製の排ガスチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−311070(P2008−311070A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157788(P2007−157788)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【出願人】(599024643)東和ブロー株式会社 (9)
【Fターム(参考)】