説明

樹脂製熱交換器のコア部及びそのコア部成形型並びにコア部成形方法

【課題】 コア部の成形作業が容易となり、接合部の形状の自由度を高めることができ、薄肉扁平チューブをヘッダプレートに接合してコア部を形成するなど、各種形状のコア部の成形に適応できる。
【解決手段】 本発明は、チューブ2の端部17にヘッダプレート3,4を接合して成形される樹脂製熱交換器のコア部1であって、チューブ2は押出し成形により形成され、ヘッダプレート3,4はチューブ2の端部17に樹脂を射出成形することによりチューブ2の端部17に接合されるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブの端部にヘッダプレートを接合して成る樹脂製熱交換器のコア部及びそのコア部成形型並びにコア部成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腐食性の媒体に晒される用途において、樹脂製熱交換器が使用されており、この種の樹脂製熱交換器には、複数本のチューブの端部にヘッダプレートを接合して成形されたコア部が設けられている。一般に、熱交換器は、複雑な形状を有し、内部に流体の流路を確保する必要があるため、一体成形は不可能である。そのため、コア部を成形する場合、チューブ及びヘッダプレートを押出し成形やブロー成形或いは射出成形によりそれぞれ個別に成形した後、それらの部材を接合する必要がある。しかしながら、その接合方法としては、適正な接着剤がないことから、熱溶着や振動溶着等の溶着接合がよく用いられている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−329377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記した従来の樹脂製熱交換器のコア部成形方法では、溶着接合によりチューブとヘッダプレート間の接合作業が行われていたため、コア部の成形作業に手間が掛かるといった問題があった。また、接合部の形状がある程度限定されてしまうため、例えば、流体の流路を確保しつつ、薄肉扁平チューブをヘッダプレートに接合してコア部を形成させるといったことが難しいといった問題があった。
【0004】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、コア部の成形作業が容易となり、接合部の形状の自由度を高めることができ、薄肉扁平チューブをヘッダプレートに接合してコア部を形成するなど、各種形状のコア部の成形に適応可能な樹脂製熱交換器のコア部及びそのコア部成形型並びにコア部成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、チューブの端部にヘッダプレートを接合して成形される樹脂製熱交換器のコア部であって、前記チューブは押出し成形により形成され、前記ヘッダプレートは前記チューブの端部に樹脂を射出成形することにより前記チューブの端部に接合されるように構成されていることを特徴とする。
【0006】
そして、好ましくは、前記チューブは薄肉扁平形状を成しており、該チューブには、その内部を複数の流路に分割するリブが形成されているのがよい。
【0007】
また、本発明は、樹脂製熱交換器においてチューブの端部にヘッダプレートを接合してコア部を成形させるためのコア部成形型であって、前記押出し成形されたチューブをその端部が所定長突出した状態でセット可能なチューブ挿入溝が並列に形成されたチューブセット型と、該チューブセット型の端部との間にヘッダプレート用空間を形成可能なように形成されたヘッダプレート成形型とを備えていることを特徴とする。
【0008】
そして、好ましくは、前記チューブセット型の端部には、ヘッダプレート用凹部が形成され、前記ヘッダプレート成形型は前記ヘッダプレート用凹部の開口端面を閉塞し、ヘッダプレート空間を形成可能なように可能なように形成されているのがよい。
【0009】
また、前記ヘッダプレート成形型は、前記チューブセット型にセットされたチューブの端部内に挿入可能なチューブ挿入突部を備えているのがよい。
【0010】
さらに、本発明は、樹脂製熱交換器においてチューブの端部にヘッダプレートを接合してコア部を成形させるための方法であって、前記チューブを押出し成形する過程と、前記チューブの端部にヘッダプレートを射出成形し、該ヘッダプレートを前記チューブの端部に接合する過程とを含んでいることを特徴とする。
【0011】
さらにまた、本発明は、樹脂製熱交換器においてチューブの端部にヘッダプレートを接合してコア部を成形させるための方法であって、前記チューブを押出し成形する過程と、チューブ挿入溝が並列に形成されたチューブセット型に、前記チューブ挿入溝の端部から前記チューブの端部が所定長突出するように該チューブをセットする過程と、前記チューブセット型の端部との間にヘッダプレート用空間が形成されるようにヘッダプレート成形型をセットする過程と、前記ヘッダプレート用空間に樹脂を射出してヘッダプレートを成形させると共に、該ヘッダプレートを前記チューブの端部に接合させる過程とを含んでいることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チューブを押出し成形し、ヘッダプレートを射出成形することにより、チューブの両端部にヘッダプレートを容易且つ確実に接合することができる。したがって、コア部の成形作業が簡素化され、製品の信頼性を向上させることができると共に、接合部の形状の自由度を高めることができる。さらに、薄肉扁平チューブをヘッダプレートに接合してコア部を形成するなど、各種形状のコア部の成形にも適応可能となる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
先ず、図1を参照しつつ、本発明の各実施の形態における樹脂製熱交換器のコア部の構成について説明する。ここで、図1は本実施の形態における樹脂製熱交換器のコア部を示す斜視図である。
【0015】
この樹脂製熱交換器のコア部1は、複数本の樹脂製チューブ2と、上下ヘッダ(図示せず)の構成部材である樹脂製の上下ヘッダプレート3,4とを備えている。各チューブ2は薄肉扁平な形状を成し、押出し成形により形成されるようになっており、各チューブ2には、その内部を複数の流路に分割するリブ5が形成されている。また、上下ヘッダプレート3,4は樹脂を射出成形することにより各チューブ2の両端部に接合され、これにより、コア部1が形成されるようになっている。
【0016】
次に、主に図2及び図3を参照しつつ、前記樹脂製熱交換器のコア部成形型について説明する。ここで、図2は樹脂製熱交換器のコア部成形型を示す斜視図、図3はその断面図である。
【0017】
このコア部成形型11は、複数本の樹脂製チューブ2の両端部に上下ヘッダプレート3,4を接合してコア部1を成形させるためのものであり、各チューブ2を並列にセットするためのチューブセット型12と、チューブセット型12の上下両端部にセットされる上下ヘッダプレート成形型15(図3では上側のみ示している。)とから構成されている。
【0018】
チューブセット型は、2分割されており(図2及び図3では一方のチューブセット型12のみ示している。)、いずれのチューブセット型12にも、チューブ2の設置数に対応して複数のチューブ挿入溝16が並列に形成されており、両方のチューブセット型12を重合させるとチューブ2を収容可能な孔が形成されるようになっている。そして、各チューブ挿入溝16の長さはチューブ2の長さより短くなるように設定されており、チューブ挿入溝16にチューブ2をセットすると、チューブ2の両端部17がチューブ挿入溝16の両端部からそれぞれ所定長突出するようになっている。また、チューブセット型12の両端部には、ヘッダプレート用凹部13が形成されている。
【0019】
上下ヘッダプレート成形型15は、チューブセット型12のヘッダプレート用凹部13の開口端面を閉塞可能なように形成され、上下ヘッダプレート成形型15をチューブセット型12の両端部にセットするとヘッダプレート用空間18が形成されるようになっている。また、ヘッダプレート成形型15には、各チューブ2に対応してチューブ挿入突部19が突設されており、チューブ挿入突部19はチューブセット型にセットされた各チューブ2の両端部17内に挿入可能となっている。
【0020】
次に、図2及び図3を参照しつつ、前記樹脂製熱交換器のコア部成形方法について説明する。ここで、図2は樹脂製熱交換器のコア部成形方法を示す斜視図、図3はその断面図である。
【0021】
先ず、各チューブ2を押出し成形し、薄肉扁平形状に形成させると共に、チューブ2の内部に所定数のリブ5を形成させ、所定長さに切断する。そして、チューブ挿入溝16の端部から各チューブ2の両端部17がそれぞれ所定長突出するように、一方のチューブセット型12の各チューブ挿入溝16に各チューブ2をそれぞれセットした後、他方のチューブセット型(図示せず)を一方のチューブセット型2に重合させる。
【0022】
次いで、チューブセット型12の両端部にそれぞれ上下ヘッダプレート成形型15をセットすると共に、チューブセット型12にセットされた各チューブ2の両端部17内にそれぞれチューブ挿入突部19を挿入する。そうすると、各ヘッダプレート成形型15とチューブセット型12の両端部との間にヘッダプレート用空間18が形成されるので、このヘッダプレート用空間18に樹脂を射出し、ヘッダプレート3を所定の形状に成形させると共に、ヘッダプレート3を各チューブ2の両端部17に接合させ、コア部1を成形する。
【0023】
この場合、チューブ2の内部にリブ5が形成されており、さらに、チューブ2の両端部17内にそれぞれチューブ挿入突部19が挿入されるようになっているため、上記したコア部1の一連の成形過程において、チューブ2の形状が変形するおそれはなく、所定の薄肉扁平形状のチューブ2を備えたコア部1を確実に成形することができる。
【0024】
このように、上記した実施の形態によれば、チューブ2を押出し成形し、ヘッダプレート3を射出成形することにより、チューブ12内に薄肉の流路を形成することができると共に、チューブ2の両端部17にヘッダプレート3,4を確実に接合することができる。そして、上記したコア部1を備えた樹脂製熱交換器は、耐薬品性に非常に優れているため、不純物や溶出イオンを極端に嫌うダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)用熱交換器や医薬品関連の熱交換器にも適用することが可能となる。
【0025】
なお、上記実施の形態においては、チューブセット型12にヘッダプレート用凹部13が形成されているが、上下ヘッダプレート成形型15をチューブセット型12の両端部にセットした時にヘッダプレート用空間18が形成されるように構成されていれば、ヘッダプレート用凹部13は、ヘッダプレート成形型15側、又は、チューブセット型12とヘッダプレート成形型15の両方に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係る樹脂製熱交換器のコア部を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る樹脂製熱交換器のコア部成形型及びコア部成形方法を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る樹脂製熱交換器のコア部成形型及びコア部成形方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 コア部
2 チューブ
3 ヘッダチューブ
4 ヘッダプレート
5 リブ
11 コア部成形型
12 チューブセット型
13 ヘッダプレート用凹部
15 ヘッダプレート成形型
16 チューブ挿入型
17 端部
18 ヘッダプレート用空間
19 チューブ挿入突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの端部にヘッダプレートを接合して成形される樹脂製熱交換器のコア部であって、
前記チューブは押出し成形により形成され、前記ヘッダプレートは前記チューブの端部に樹脂を射出成形することにより前記チューブの端部に接合されるように構成されていることを特徴とする樹脂製熱交換器のコア部。
【請求項2】
前記チューブは薄肉扁平形状を成しており、該チューブには、その内部を複数の流路に分割するリブが形成されている請求項1に記載の樹脂製熱交換器のコア部。
【請求項3】
樹脂製熱交換器においてチューブの端部にヘッダプレートを接合してコア部を成形させるためのコア部成形型であって、
前記押出し成形されたチューブをその端部が所定長突出した状態でセット可能なチューブ挿入溝が並列に形成されたチューブセット型と、
該チューブセット型の端部との間にヘッダプレート用空間を形成可能なように形成されたヘッダプレート成形型と、
を備えていることを特徴とする樹脂製熱交換器のコア部成形型。
【請求項4】
前記チューブセット型の端部には、ヘッダプレート用凹部が形成され、前記ヘッダプレート成形型は前記ヘッダプレート用凹部の開口端面を閉塞し、ヘッダプレート空間を形成可能なように可能なように形成されている請求項3に記載の樹脂製熱交換器のコア部成形型。
【請求項5】
前記ヘッダプレート成形型は、前記チューブセット型にセットされたチューブの端部内に挿入可能なチューブ挿入突部を備えている請求項3又は4に記載の樹脂製熱交換器のコア部成形型。
【請求項6】
樹脂製熱交換器においてチューブの端部にヘッダプレートを接合してコア部を成形させるための方法であって、
前記チューブを押出し成形する過程と、
前記チューブの端部にヘッダプレートを射出成形し、該ヘッダプレートを前記チューブの端部に接合する過程と、
を含んでいることを特徴とする樹脂製熱交換器のコア部成形方法。
【請求項7】
樹脂製熱交換器においてチューブの端部にヘッダプレートを接合してコア部を成形させるための方法であって、
前記チューブを押出し成形する過程と、
チューブ挿入溝が並列に形成されたチューブセット型に、前記チューブ挿入溝の端部から前記チューブの端部が所定長突出するように該チューブをセットする過程と、
前記チューブセット型の端部との間にヘッダプレート用空間が形成されるようにヘッダプレート成形型をセットする過程と、
前記ヘッダプレート用空間に樹脂を射出してヘッダプレートを成形させると共に、該ヘッダプレートを前記チューブの端部に接合させる過程と、
を含んでいることを特徴とする樹脂製熱交換器のコア部成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−218723(P2006−218723A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34116(P2005−34116)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【出願人】(596000659)駒沢化成株式会社 (1)
【Fターム(参考)】