説明

樹脂複合体、水処理用ろ過助剤、水処理用プレコート材及び水処理方法

【課題】 水中で析出される微細な粒子を直接固液分離できる樹脂複合体、ならびにそれを用いた水処理用ろ過助剤、水処理用プレコート材、および水処理方法を提供する。
【解決手段】 樹脂複合体は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載する実施の形態は、磁性粉とポリマーとを含む樹脂複合体(樹脂被覆磁性体)、水中に含まれる有害物や有価物を分離除去するために用いられる水処理用ろ過助剤、水処理用プレコート材、およびこれらを用いた水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、工業の発達や人口の増加により水資源の有効利用が求められている。そのためには、工業排水などの廃水の再利用が非常に重要である。これらを達成するためには水の浄化、すなわち水中から他の物質を分離することが必要である。液体からほかの物質を分離する方法としては、各種の方法が知られており、たとえば膜分離、遠心分離、活性炭吸着、オゾン処理、凝集による浮遊物質の除去などが挙げられる。このような方法によって、水に含まれるリンや窒素などの環境に影響の大きい化学物質を除去したり、水中に分散した油類、クレイなどを除去したりすることができる。
【0003】
これら各種の水処理方法のうち、膜分離法は水中の不溶物質を除去するのに最も一般的に使用されている方法のひとつであるが、膜の保護の観点や、難脱水性の物質を含む水の通水速度を上げる観点から、ろ過助剤が膜分離法に利用されている。
【0004】
一方、水中から有害物や有価物を除去する方法として、水中に溶解する物質に所定の反応を起こさせて、その物質を析出させ、固液分離する方法が知られている。従来の方法では廃液に常磁性物質の粉末を添加して藻類などの難ろ過性物質を除去している。また、他の従来の方法では水中のフッ素をフッ化カルシウムにして除去している。さらに、他の従来の方法では、水中のフッ素を析出させ、凝集ポリマーを用いて除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−327611号公報
【特許文献2】特開平06−114382号公報
【特許文献3】特開2007−275757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、炭酸カルシウムとの反応で得られるフッ化カルシウムを除去しやすくするために、得られたフッ化カルシウムの結晶の一部を反応槽に戻し、再結晶化させている。このため、排水の処理効率が低下するという問題がある。また、従来の方法では、凝集ポリマーを用いて粒子径を大きくしているが、回収物の純度が落ちてしまう問題や、廃棄する場合に汚泥量が多くなってしまう問題がある。これらを直接ろ過等で固液分離できれば工程の数は少なくなるが、粒子径が細かいため直接ろ過することが困難である。従来の方法を用いても水中から粒子を効果的に除去することが困難である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、水中で析出される微細な粒子を直接固液分離できる樹脂複合体、ならびにそれを用いた水処理用ろ過助剤、水処理用プレコート材、および水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の樹脂複合体は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る水処理方法に用いられる装置を示す構成ブロック図。
【図2】図1の装置を用いる第1実施形態の水処理方法(プレコート法)を示す工程図。
【図3】(a)は磁性体粒子が凝集した凝集体を示す断面模式図、(b)は助剤(ポリマー)で被覆された磁性体粒子を示す断面模式図。
【図4】第2の実施形態に係る水処理方法に用いられる装置を示す構成ブロック図。
【図5】図2の装置を用いる第2実施形態の水処理方法(ボディーフィード法)を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に種々の実施の形態を説明する。
【0011】
(1)実施形態の樹脂複合体は、樹脂複合体は、ポリマーにより表面が被覆された磁性粉からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にある。
【0012】
ここに記載する実施形態の樹脂複合体(樹脂被覆磁性体)は、耐久性に非常に優れており、回収して繰り返し再使用することができる。
【0013】
ここに記載する実施形態では、一次粒子の平均粒子径D1は0.5〜20μmの範囲とするが、より好ましくは径D1を0.5〜15μmの範囲とする。一次粒子の平均粒子径D1が0.5μm未満になると、粒子が緻密に凝集しすぎて粒子間の距離が小さくなりすぎ、実効的な通水量が得られにくくなる。一方、一次粒子の平均粒子径D1が20μmを超えると、粒子が粗く凝集して粒子間の距離が大きくなりすぎ、水中の微細な粒子(有価物または有害物)を通過させやすくなり、微細粒子の回収効率が大幅に低下してしまう。さらに一次粒子の平均粒子径D1を15μm以下にすると、微細粒子(析出した金属化合物粒子)の回収効率がさらに向上する。ところで、本願の発明者らは実証試験を行うことにより、一次粒子の平均粒子径D1が例えば26μmの場合は実効的な微細粒子の回収効率を達成できないという知見を得ている。このことからも一次粒子の平均粒子径D1が過大になると、微細粒子の回収効率が低下することが分かる。
【0014】
ここに記載する実施形態では、一次粒子の凝集体の平均凝集径D2はD1<D2≦20μmを満たすようにするが、より好ましくはD1<D2≦15μmを満たすようにする。凝集体の平均凝集径D2が20μmを超えると、上記と同様に水中の微細粒子を通過させやすくなり、微細粒子の回収効率が低下する。さらに平均凝集径D2を15μmにすると、上記と同様に微細粒子の回収効率がさらに向上する。
【0015】
ここに記載する実施形態では、ポリマーの平均被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmを満たすが、より好ましくは厚さtが0.01≦t≦0.15μmを満たすようにする。ポリマーの平均被覆厚さtが0.01μm未満であると、二次凝集体の強度が弱く、水中での使用に耐えられなくなり、所望の被覆効果が得られない。一方、被覆厚さtが0.25μmを超えると、一次粒子の平均粒子径D1や凝集体の平均凝集径D2が大きくなり、その結果として粒子間の空隙が狭くなり、ろ過助剤として用いたときに実効的な通水量を確保することができなくなる。さらに被覆厚さtを0.15μm以下にすると、微細粒子を捕捉する捕捉性能が高くなり、微細粒子の回収効率がさらに向上する。なお、ポリマーの被覆量の計算は光学顕微鏡やSEMなどによる観察で測定しても良いが、好ましくは無酸素状態で高温に上げ、樹脂複合体を熱分解させて重量減少量、すなわちポリマー被覆量を求め、粒子の比表面積からポリマー層の平均厚さを計算すると正確に求めることができる。
【0016】
(2)上記(1)の樹脂複合体において、磁性粒子の各々がマグネタイトであることが好ましい。マグネタイト(Fe)は、安価であるばかりでなく、水中でも磁性体として安定した機能を有し、元素としても安全であるため、水処理用の材料として適しているからである。
【0017】
(3)上記(1)の樹脂複合体において、ポリマーが、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン及びこれらの共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましい。
【0018】
ポリマーは、目的に応じて適したものを選択して用いることができるが、とくにポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、あるいはこれらの共重合体を用いることが好ましい。これらのポリマーは、マグネタイトなどの磁性粉に被覆しやすく、耐酸性および耐アルカリ性を有するからである。
【0019】
(4)上記(1)の樹脂複合体において、ポリマーがフェノール樹脂であることが好ましい。フェノール樹脂は水中での分散性に優れているからである。
【0020】
(5)上記(1)の樹脂複合体において、ポリマーがトリアルコキシシランの縮合物であることが好ましい。トリアルコキシシラン縮合物は、磁性粉と強固に接着して水中での安定性が高いからである。
【0021】
(6)実施形態の水処理用ろ過助剤は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
(a)前記ろ過助剤がプレコート層をフィルタ上に形成する場合は、
前記ろ過助剤に分散媒を混合して分散媒中に前記ろ過助剤が分散する懸濁液を提供し、この懸濁液を前記フィルタでろ過して前記フィルタ上に前記ろ過助剤のプレコート層を形成し、
金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記被処理水を前記プレコート層および前記フィルタに通過させ、これにより前記ろ過助剤に前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉させ、
剥離水を前記プレコート層に注いで前記フィルタから前記プレコート層を剥離させ、これにより前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉した前記プレコート層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
前記混合物から前記ろ過助剤を磁気的に分離する、
または、
(b)前記ろ過助剤が水不溶性の金属化合物粒子を伴なう堆積層をフィルタ上に形成する場合は、
金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記被処理水と前記ろ過助剤とを混合して前記ろ過助剤および前記水不溶性の金属化合物粒子を含む懸濁液を提供し、この懸濁液を前記フィルタに通過させ、これにより前記フィルタ上に前記ろ過助剤および前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記堆積層を形成し、これにより前記堆積層中の前記ろ過助剤に被処理水中の前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉させ、
剥離水を前記堆積層に注いで前記フィルタから前記堆積層を剥離させ、これにより前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉した前記堆積層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
前記混合物から前記ろ過助剤を磁気的に分離する。
【0022】
本実施形態のろ過助剤を用いることにより、水中から反応により析出した粒子、例えば水酸化銅のような銅化合物の粒子を吸着・捕捉して、被処理水から効率的に分離・除去することができる。
【0023】
(7)上記(6)の水処理用ろ過助剤であって、凝集体の比重が水より大きいことが好ましい。凝集体の比重が水より大きいと、例えばボディーフィード法においてろ過して得られた析出粒子/ろ過助剤の混合物を分離槽に送り、分離槽内で撹拌して磁気分離する操作において、分離槽からろ過助剤が流出しにくく、ろ過助剤の回収効率が向上するからである。
【0024】
(8)実施形態のプレコート材は、ろ過助剤を含み、前記ろ過助剤は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
前記プレコート材に分散媒を混合して分散媒中に前記プレコート材が分散する懸濁液を提供し、
前記懸濁液を前記フィルタでろ過して前記フィルタ上に前記プレコート材のプレコート層を形成し、
金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記被処理水を前記プレコート層および前記フィルタに通過させ、これにより前記プレコート材に被処理水中の前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉した前記プレコート層に剥離水を注いで、前記フィルタから前記プレコート層を剥離させ、これにより前記プレコート層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
前記混合物から前記ろ過助剤を磁気的に分離する。
【0025】
ここに記載する実施形態のプレコート材を用いることにより、水中から反応により析出した粒子、例えば水酸化銅のような銅化合物の粒子を吸着・捕捉して、被処理水から効率的に分離・除去することができる。
【0026】
(9)上記(8)のプレコート材であって、ろ過助剤の比重が水より大きいことが好ましい。ろ過助剤の比重が水より大きいと、例えばプレコート法においてろ過して得られた析出粒子/ろ過助剤の混合物を分離槽に送り、分離槽内で撹拌して磁気分離する操作において、分離槽からろ過助剤が流出しにくく、ろ過助剤の回収効率が向上するからである。
【0027】
(10)実施形態の水処理方法は、
(a)金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
(b)ろ過助剤に分散媒を混合して分散媒中に前記ろ過助剤が分散する懸濁液を提供し、前記ろ過助剤は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
(c)前記懸濁液をフィルタに通してろ過し、これにより前記フィルタ上に前記ろ過助剤および前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記堆積層を形成し、
(d)剥離水を前記堆積層に注いで前記フィルタから前記堆積層を剥離させ、これにより前記堆積層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
(e)前記混合物中に含まれるろ過助剤と水不溶性の金属化合物粒子とを磁気的に分離し、
(f)前記分離した水不溶性の金属化合物粒子を含む前記剥離水を回収する一方で、分離したろ過助剤を前記(b)工程で再使用する、ことを含む。
【0028】
ここに記載する実施形態の水処理方法は、ボディーフィード法に対応する方法であり、被処理水中から水不溶性の金属化合物粒子を析出させた後に、上記特定の数値範囲を満たすろ過助剤を被処理水中に分散させ、ろ過助剤に水不溶性の金属化合物粒子を吸着させ、このろ過助剤/水不溶性の金属化合物粒子の吸着状態にある被処理水を固液分離装置に供給し、フィルタでろ過し、フィルタ上にろ過助剤/水不溶性の金属化合物粒子の混合物からなる堆積層を形成する。次いで、フィルタ上の堆積層に向けて剥離水を側方から吹き付けて、堆積層をフィルタから剥離させ、剥離物に対してさらに剥離水を吹き付けて、剥離物をバラバラに分解した状態とする。次いで、バラバラに分解した剥離物を剥離水とともに固液分離装置から分離槽へ送り、分離槽内で剥離物を粒子状態になるまで撹拌し、水中においてろ過助剤と金属化合物粒子を均一に分散させる。次いで、水中に分散するろ過助剤を磁気分離手段(電磁石や永久磁石など)に磁気吸着させ、磁気分離手段にろ過助剤が吸着されている間に、金属化合物粒子を含む被処理水を分離槽から回収貯留槽に排出する。これにより被処理水中において析出した金属化合物粒子が回収される。一方では、ろ過助剤の磁気吸着を解除して、ろ過助剤を電磁石から脱落させ、さらに処理水や水道水などを電磁石に吹き付け、電磁石に付着したろ過助剤を洗浄し、回収する。この回収したろ過助剤は、分離槽からろ過助剤供給装置へ送り、ろ過助剤供給装置において懸濁液の作製のために再利用される。
【0029】
ここに記載する実施形態の水処理方法では、ろ過助剤が耐久性にとくに優れているので、分散→吸着→分離→回収→分散のサイクルでろ過助剤を繰り返し使用することができる。このため、運転コストやメンテナンスコストを低く抑えることができるというメリットがある。
【0030】
(11)実施形態の水処理方法は、
(i)金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
(ii)ろ過助剤を分散媒に混合して前記分散媒中に前記ろ過助剤が分散する懸濁液を提供し、前記ろ過助剤は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
(iii)前記懸濁液をフィルタに通してろ過し、これにより前記フィルタ上に前記ろ過助剤のプレコート層を形成し、
(iv)前記水不溶性の金属化合物粒子を含む被処理水を前記プレコート層および前記フィルタに通して、これにより被処理水に含まれる前記水不溶性の金属化合物粒子を前記プレコート層のろ過助剤に捕捉させ、
(v)前記プレコート層に剥離水を注いで、前記フィルタから前記プレコート層を剥離させ、これにより前記プレコート層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
(vi)前記混合物中に含まれるろ過助剤と水不溶性の金属化合物粒子とを磁気的に分離し、
(vii)前記分離した水不溶性の金属化合物粒子を含む前記剥離水を回収する一方で、分離したろ過助剤を前記(ii)工程で再使用する、ことを含む。
【0031】
ここに記載する実施形態の水処理方法は、プレコート法に対応する方法であり、上記特定の数値範囲を満たすプレコート材を水などの分散媒中に分散させ、この分散溶液を固液分離装置に供給し、フィルタ上にプレコート材を堆積させて所望のプレコート材層を形成する一方で、反応により被処理水中から水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、析出した水不溶性の金属化合物粒子を含む被処理水をプレコート材層に通水し、水不溶性の金属化合物粒子をろ過助剤に吸着・捕捉させる。次いで、フィルタ上のプレコート材層に向けて剥離水を側方から吹き付けて、プレコート材層をフィルタから剥離させ、剥離物に対してさらに剥離水を吹き付けて、剥離物をバラバラに分解した状態とする。次いで、バラバラに分解した剥離物を剥離水とともに固液分離装置から分離槽へ送り、分離槽内で剥離物を粒子状態になるまで撹拌し、水中においてろ過助剤と金属化合物粒子を均一に分散させる。次いで、水中に分散するろ過助剤を電磁石に磁気吸着させ、電磁石にろ過助剤が吸着されている間に、金属化合物粒子を含む被処理水を分離槽から回収貯留槽に排出する。これにより被処理水中において析出した金属化合物粒子が回収される。一方では、ろ過助剤の磁気吸着を解除して、ろ過助剤を電磁石から脱落させ、さらに処理水や水道水などを電磁石に吹き付け、電磁石に付着したろ過助剤を洗浄し、回収する。この回収したろ過助剤は、分離槽からろ過助剤供給装置へ送り、ろ過助剤供給装置において懸濁液の作製のために再利用される。
【0032】
ここに記載する実施形態の水処理方法では、プレコート材が耐久性にとくに優れているので、分散→吸着→分離→回収→分散のサイクルでプレコート材を繰り返し使用することができる。このため、運転コストやメンテナンスコストを低く抑えることができるというメリットがある。
【0033】
以下、添付の図面を参照して種々の好ましい実施の形態を説明する。
【0034】
以下に述べる実施の形態や実施例では、微細な固体粒子(平均粒子径0.01〜10μm)および金属イオンや非金属イオンなどの種々の溶質成分を含む被処理水に凝集剤やアルカリを投入し、固体粒子を凝集させて凝集体を生成するか、あるいは金属又は非金属の化合物塩の粒子(平均粒子径0.01〜10μm)を析出させる。凝集剤やアルカリの種類は特に問わない。これらの凝集剤やアルカリの直接投入は、凝集する凝集体あるいは析出する金属または非金属粒子の粒子径を細かくしてしまい、水中からの分離が非常に困難となる。しかし、本実施形態の樹脂複合体を用いると、これらの微細な水不溶物を連続的にまたは半連続半間欠的に除去することができるため、工程数が減少し、また装置構成が簡略化するというメリットがある。
【0035】
本実施形態の樹脂複合体を用いる水処理方法にはプレコート法とボディーフィード法の2種類の方法があるが、各方法に用いられる装置は構成が異なるところがあるので、以下それぞれについて述べる。
【0036】
(第1の実施形態)
先ず図1を参照して第1の実施形態に用いられる水処理装置を説明する。
【0037】
本実施形態の水処理装置1は、プレコート法に用いられる装置であり、特に被処理水中の水不溶物の濃度が低い場合に有効に用いられる。水処理装置1は、凝集析出槽2、固液分離装置3、分離槽4、ろ過助剤タンク5、混合槽6、図示しない原水供給源、凝集剤添加装置(またはアルカリ添加装置)および濃縮水貯留槽を有しており、これらの機器及び装置が複数の配管ラインL1〜L8により互いに接続されている。配管ラインL1〜L8には各種のポンプP1〜P9、バルブV1〜V3、図示しない計測器およびセンサが取り付けられている。これらの計測器およびセンサから図示しない制御器の入力部に検出信号が入り、当該制御器の出力部からポンプP1〜P9およびバルブV1〜V3にそれぞれ制御信号が出され、それらの動作が制御されるようになっている。このように水処理装置1の全体は図示しない制御器によって統括的にコントロールされるようになっている。
【0038】
凝集析出槽2は、被処理水を撹拌する撹拌スクリュウ21を有し、図示しない原水供給源からラインL1を介して被処理水となる工場排水が導入され、被処理水を一時的に貯留しておく間に図示しない凝集剤添加装置から適量の凝集剤が投入され、被処理水中に含まれる微細な固体粒子を凝集させるものである。また、凝集析出槽2は、図示しないアルカリ添加装置から適量のアルカリ剤が投入され、被処理水中に含まれる金属イオンまたは非金属イオンを化合物塩の粒子として析出させるものでもある。
【0039】
固液分離装置3は、内部を上部スペース31と下部スペース32とに仕切るフィルタ33を内蔵している。固液分離装置の上部スペース31は、加圧ポンプP1を有する被処理水供給ラインL2を介して凝集析出槽2に接続されている。また、上部スペース31の側部にはポンプP5を有する剥離水供給ラインL31および剥離物排出ラインL4がそれぞれ接続されている。
【0040】
一方、固液分離装置の排出スペース32は、3つの三方弁V1,V2,V3を有する処理水配水ラインL3に接続されている。第1の三方弁V1のところで被処理水配水ラインL3から上述の剥離水供給ラインL31が分岐している。第2の三方弁V2のところで被処理水配水ラインL3からポンプP2を有する処理水ラインL32が分岐している。第3の三方弁V3のところで被処理水配水ラインL3から2つのラインL33とL34がそれぞれ分岐している。一方の分岐ラインL33は、ポンプP4を有し、後述する分離槽4に接続されている。他方の分岐ラインL34は、ポンプP5を有し、後述する混合槽6に接続されている。
【0041】
分離槽4は、剥離物排出ラインL4を通って固液分離装置の上部スペース31から受け入れた洗浄排出水を撹拌するための撹拌スクリュウ41を有し、かつ析出銅化合物とろ過助剤とに分離するための電磁石42を内蔵している。電磁石42は、図示しない制御器によりオンオフ制御される電源(図示せず)に接続されている。
【0042】
分離槽4の上部には、剥離物排出ラインL4の他に、処理水配水ラインL3から分岐する分岐ラインL33が接続されており、固液分離装置のフィルタ33を透過した処理水の一部が分離槽4に供給され、分離槽4において処理水の一部が再利用されるようになっている。一方、分離槽4の下部には濃縮水排出ラインL8およびろ過助剤返送ラインL5がそれぞれ接続されている。濃縮水排出ラインL8は、ポンプP9を有し、分離槽4から図示しない貯留槽に水不溶物濃縮水を排出するための配管である。ろ過助剤返送ラインL5は、ポンプP6を有し、分離槽4から分離されたろ過助剤をろ過助剤タンク5に戻すための配管である。
【0043】
ろ過助剤タンク5は、図示しないろ過助剤供給源から新たにろ過助剤が補給されるとともに、分離槽4で分離されたろ過助剤が上述のろ過助剤返送ラインL5を通って返送されるようになっている。また、ろ過助剤タンク5は、ポンプP7を有するろ過助剤供給ラインL6を介して混合槽6に適量のろ過助剤を供給するようになっている。
【0044】
混合槽6は、水を撹拌するための撹拌スクリュウ61を有し、ろ過助剤タンク5から供給されたろ過助剤に分散媒を添加して撹拌混合し、ろ過助剤を含む混合物(懸濁液)を作製するようになっている。分散媒として水を使用するのが好ましい。混合槽6の上部には、処理水配水ラインL3から分岐する分岐ラインL34が接続され、固液分離装置のフィルタ33を透過した処理水の一部が混合槽6に供給され、混合槽6において処理水の一部が分散媒として再利用されるようになっている。
【0045】
また、混合槽6の適所にはポンプP8を有する懸濁液供給ラインL7が連通している。懸濁液供給ラインL7は、被処理水供給ラインL2の適所にて接続・合流している。懸濁液供給ラインL7からのろ過助剤を含む混合物(懸濁液)が被処理水供給ラインL2を流れる被処理水に添加されるようになっている。なお、懸濁液供給ラインL7には図示しない流量制御弁が取り付けられ、懸濁液の流量が制御器により調整されるようになっている。
【0046】
(第1実施形態の水処理方法)
次に、図2と図1を参照して上記の装置を用いる第1実施形態の水処理方法を説明する。
【0047】
プレコート法は、特に被処理水中に含まれる水不溶物の濃度が低い場合に有効である。本実施形態における水不溶物とは、有機物、無機物を特に問わない。また、水中からの析出時に結晶核を入れるなど特別な操作をして析出粒子径を大きくしたり、凝集剤などの薬品をいれて凝集させたりする必要はない。本実施形態の樹脂複合体は、水中から析出したそのままの状態の粒子を除去できるよう設計されているためである。とくに本実施形態では、水中のフッ素イオンにカルシウムイオンを反応させて析出させるフッ化カルシウムや、水中の重金属イオンの還元、酸化や、他のイオンとの塩によって析出される重金属化合物に用いるのに特に適している。これらの物質は規制濃度が厳しく、比較的低濃度の環境で析出させることが多いため、細かい粒子径で析出されることが多いからである。また、重金属の水酸化物などの難脱水性の粒子であったり、粒子以外の難脱水成分、例えば油などが入っていたりしても、樹脂複合体の構造により、容易にろ過することができる。その排水の性状によって適切にポリマーを選択するのが好ましい。
【0048】
本実施形態の水処理方法では、まず、除去したい水溶性不純物を含んでなる水に何らかの操作を行い、水溶性不純物に酸化、還元、中和等の反応を起こさせ、水不溶化する。このような操作で水不溶化した物質(水不溶物)は水中に微粒子として析出し、一部粒子同士が凝集して1ミクロン程度の粒子として水中に分散することになる。
【0049】
プレコート法においては、先ず、混合槽6内で磁性体含有ろ過助剤と分散媒とを混合し、ろ過助剤を含む懸濁液を調整する(工程S1)。ろ過助剤は磁性体粒子を含み、さらに磁性体粒子を被覆するポリマーを含むものであってもよい。分散媒は主に水を用いるが、適宜その他の分散媒を用いることができる。懸濁液中のろ過助剤濃度は以下の操作によってプレコート層、すなわち粒子堆積層が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0050】
次いで、懸濁液を固液分離装置3のフィルタ33に通水し、懸濁液中のろ過助剤をろ別して、フィルタ上に残留させ、ろ過助剤が凝集してなる粒子堆積層(プレコート材層)を形成する(工程S2)。なお、加圧ポンプP1によるフィルタ33への通水は、所定の圧力で行われる。
【0051】
フィルタ33を固液分離装置3の入口を塞ぐように取り付け、固液分離装置の3内における懸濁液の圧力の低下ができるだけ少なくなるようにして、フィルタ33による懸濁液のフィルタリングを行なうようにする。具体的には、固液分離装置3の容器壁とフィルタ33とで周囲を規定される上部スペース31を小さくし、この小容積の狭いスペース31に加圧した懸濁液を押し込むことにより、フィルタ33による固体(ろ過助剤)と液体との分離が促進される。このとき加圧ポンプP1の駆動による圧力と重力との相乗作用により、懸濁液の液体成分はフィルタ33を速やかに透過し、懸濁液の固体成分(ろ過助剤)はフィルタ33に捕捉され、その結果、フィルタ33上にろ過助剤からなるプレコート層が形成される。なお、プレコート材層の厚さは、処理する液の濃度で変わってくるが、概ね0.5〜10mm程度である。
【0052】
一方、銅イオンを含む被処理水を析出槽2内に導入し、これに水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して被処理水をアルカリ性とし、析出槽2内で被処理水中から水酸化銅の粒子(grains)を析出させる。
【0053】
水酸化銅の析出反応は下式(1)で与えられるものと推測されている。
【0054】
Cu2++2NaOH→Cu(OH)2↓(析出)+2Na+ …(1)
しかし、水溶液が酸性である場合は、上式(1)の反応で得られた水酸化銅の析出物(水酸化銅粒子)が下式(2)のように酸と反応して溶解してしまうため、水酸化銅の粒子は得られない。また、中性領域では水酸基の数が少ないため上式(1)の反応が促進されず、結果として水酸化銅の粒子が得られない。水酸化銅の粒子が析出物として水溶液中に発生するのは、水溶液のpHがアルカリ領域に入ってからである。水溶液がアルカリ性である場合は、上式(1)に従って水溶液から水酸化銅の粒子が安定して析出する。
【0055】
Cu(OH)2+H2SO4→CuSO4+2H2O …(2)
このようにして析出させた水酸化銅粒子を含む被処理水を加圧ポンプP1の駆動により析出槽2からラインL2を介して固液分離装置3に圧送し、フィルタ33及びプレコート層により被処理水をろ過する(工程S3)。このときプレコート層中のろ過助剤により被処理水中の水酸化銅粒子が捕捉される。
【0056】
フィルタ33上のプレコート層への被処理水の通水は主に加圧下で行われる。このとき、水酸化銅の粒子は、プレコート層中のろ過助剤の表面に吸着することによって被処理水から分離除去される。このとき、ろ過助剤を後述するように特殊な構成とすることにより、水酸化銅粒子を効率よく捕捉できるとともに、十分な通水速度を得ることができる。
【0057】
次いで、バルブV1を切り替え、ポンプP3を起動し、ポンプP3の駆動によりラインL3→L31を通って固液分離装置の上部スペース31に処理水の一部又は全部を戻す。この戻される処理水は、プレコート層をフィルタ33から剥離させる剥離水として用いられる。処理水(剥離水)を上部スペース31の側方からプレコート層に吹き付けてフィルタ33からプレコート層を剥離し、この剥離物にさらに処理水を吹き付けて剥離物をバラバラに分解し、ろ過助剤および水酸化銅粒子を分散媒中に分散させる(工程S4)。
【0058】
このプレコート層の剥離・分解はフィルタの設置されている容器内で行ってもよいし、他の容器でおこなってもよい。他の容器でプレコート層の剥離・分解を行う場合は、噴射ノズルなどの手段を用いてプレコート層をバラバラの分解物に分解した後に、輸送する。処理水が不足する場合は、ラインL31に他所から水を補給するようにしてもよい。プレコート層の剥離・分解には水を使用することが好ましいが、界面活性剤や有機溶媒を用いてプレコート層を剥離・分解することも可能である。
【0059】
プレコート層の分解物を含む懸濁液を上部スペース31からラインL4を通って分離槽41に送り、分離槽4内において撹拌スクリュウ41によりプレコート層の分解物を撹拌し、該分解物を粒子レベルまでさらに分解し、ろ過助剤および水酸化銅粒子を分散させる。この撹拌を十分に行なうと、懸濁液中においてろ過助剤と水酸化銅粒子がより均一に分散され、ろ過助剤の分離が容易になる。
【0060】
次いで、プレコート層の剥離・分解後の懸濁液からろ過助剤を磁気分離法を用いて回収する(工程S5)。磁気分離の方法は特に問わないが、分離槽4の容器中に永久磁石又は電磁石を投入して回収する方法や、磁石で磁化した金網などで回収して、磁場を開放することにより粒子を回収する方法などが挙げられる。具体的には、電磁石42をONにし、懸濁液中にてろ過助剤を電磁石42で吸着固定したあとに、分離槽4の容器からラインL8を介して図示しない貯留槽に銅濃縮水を排出し、次いで電磁石42をOFFにし、電磁石42からろ過助剤を脱落させ、ラインL32を介して容器内に固液分離装置3から処理水の一部を供給し、脱落したろ過助剤に処理水を加えてスラリー状または懸濁液状とし、このスラリー状または懸濁液状のろ過助剤をラインL5を介して分離槽4からろ過助剤供給装置5へ送る。あるいは、電磁石42でろ過助剤を吸着固定したあとに、電磁石42ごとろ過助剤を他の容器に移動させ、他の容器中で電磁石42をOFFにし、電磁石42からろ過助剤を脱落させ、他の容器内でろ過助剤を回収するようにしてもよい。
【0061】
その後に、回収したろ過助剤をろ過助剤供給装置5からラインL6を介して固液分離装置3の上部スペース31に供給し、プレコート層の形成に回収ろ過助剤を再使用する。このようにろ過助剤を、プレコート層の形成→銅析出物の捕捉→銅析出物からの分離→回収→プレコート層の形成のサイクルにおいて繰り返し使用することができる。
【0062】
なお、本実施形態の水処理方法では、フィルタ上に予めプレコート材層を形成しておき、その後、被処理水を通水するので、処理時間とともに、ろ過助剤の表面に吸着する水不溶物の量が増大する。その結果、特に過剰に吸着した水不溶物が、ろ過助剤の空隙を埋設してしまうようになるので、通水速度が低下してしまうようになる。したがって、上述したように、本実施形態の水処理方法は、水中の水不溶物の濃度が低い場合に有効である。
【0063】
(樹脂複合体)
次に、樹脂複合体を詳しく説明する。
【0064】
樹脂複合体は、磁性体粒子を含み、その平均粒子径が0.5〜20μmの範囲にあるものを用いる。樹脂複合体は、図3の(a)に示すように磁性粉11の表面がポリマー12で被覆された一次粒子10であってもよい。すなわち、樹脂複合体は、磁性粉11をコアとし、その表面を被覆するポリマー12の層がシェルを構成するコア/シェル構造の一次粒子10を構成している。また、樹脂複合体は、ポリマー被覆された磁性体粒子11が図3の(b)に示すように凝集した凝集体13であってもよい。すなわち、樹脂複合体は、コア/シェル構造の多数の一次粒子が凝集した2次凝集体を構成している。
【0065】
一次粒子のコアとなる磁性粉は、磁性体からなるものであれば特に限定されるものではない。用いられる磁性体は、室温領域において強磁性を示す物質であることが望ましい。しかし、磁性体はこれらのみに限定されるものではなく、強磁性物質を全般的に用いることができ、例えば鉄、および鉄を含む合金、磁鉄鉱(マグネタイト)、チタン鉄鉱、磁硫鉄鉱、マグネシアフェライト、コバルトフェライト、ニッケルフェライト、バリウムフェライト、などが挙げられる。これらのうち水中での安定性に優れたフェライト系化合物であればより効果的に水処理することができる。例えば磁鉄鉱であるマグネタイト(Fe)は安価であるだけでなく、水中でも磁性体として安定し、元素としても安全であるため、水処理に使用しやすいので好ましい。
【0066】
また、磁性粉は、球状、多面体、不定形など種々の形状を取り得るが特に限定されない。用いるに当って望ましい磁性担体の粒径や形状は、製造コストなどを鑑みて適宜選択すれば良く、特に球状または角が丸い多面体構造が好ましい。これらの磁性粉は、必要であればCuメッキ、Niメッキなど、通常のメッキ処理が施しされていてもよい。
【0067】
また、磁性粉は、平均粒子径が0.5〜20μmの範囲にあるものを使用する。ここで、平均粒子径は、レーザー回折法により測定されたものである。具体的には、株式会社島津製作所製のSALD−DS21型測定装置(商品名)などにより測定することができる。磁性粉の平均粒子径が20μmを超えると、一次粒子間の距離が大きくなりすぎて後述する水中の微細な析出物を通過させてしまう。一方、粒子径が0.5μm未満になると、一次粒子が緻密に凝集し、実効的な通水量を得ることができなくなる。
【0068】
これらの磁性粉を組み込むことにより、相対的に樹脂複合体の比重が高くなるため、重力による沈降や、サイクロンを用いた遠心力による分離を、磁気による分離と併用することが可能となるため、樹脂複合体を水から迅速に分離することができる。
【0069】
本実施形態において、磁性粉の表面を被覆し凝集させるために用いるポリマーは、目的に応じて最適の性質を有する材料を選択することができる。好ましくは、磁性粉に被覆しやすく、耐酸・アルカリ性を有するポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンやこれらの共重合体、水中での分散に優れるフェノール樹脂、磁性粉と強固に接着して水中での安定性の高いトリアルコキシシラン縮合物が好適に用いられる。このポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲に入るように磁性体粒子にポリマーを被覆する。ポリマー平均表面被覆厚さtが0.01μm未満になると、二次凝集体の強度が弱くなり水中で使用することが困難になる。一方、ポリマー平均表面被覆厚さtが0.25μmを超えると、粒子間の空隙が狭くなり、ろ過助剤として用いたときに実効的な通水量を確保することができなくなる。なお、ポリマーの被覆量の計算は光学顕微鏡やSEMなどによる観察で測定しても良いが、好ましくは無酸素状態で高温に上げ、樹脂複合体を熱分解させて重量減少量、すなわちポリマー被覆量を求め、粒子の比表面積からポリマー層の平均厚さを計算すると正確に求めることができる。
【0070】
樹脂複合体は、前記の磁性粉11が前記のポリマー12で被覆された一次粒子10が凝集した2次凝集体13を含んでなる(図3(a)(b))。この2次凝集体13は特徴的な形状を有することが好ましい。すなわち、樹脂複合体において、一次粒子10の平均粒子径をD1としたときの凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmの関係を満たす。この大きさで凝集させると、一次粒子径がきれいに球状に凝集して二次凝集体になることはなく、いびつな形として形成される。このいびつな形を有することにより、ろ過助剤またはプレコート材として用いた時に、プレコート材層中に適度な空隙を有するようになり、水中の物質をトラップすることができる。凝集体13の平均凝集径D2は、より好ましくはD1<D2≦15μmの範囲である。平均凝集径D2が15μmより大きくなると、凝集体間の空隙が大きくなり、水中の析出物をトラップしにくくなる。全く凝集させないものだと、均質なろ層になってしまい、析出物がろ層の内部に入らず、ろ層の上部に堆積してしまうため、ろ過が困難になり流速を得ることができない。
【0071】
樹脂複合体は、上述したような樹脂複合体の構造を実現できるものであれば任意の方法により製造することができる。このような方法の一例として、ポリマーを溶解し得る有機溶媒にポリマーを溶解させ、その溶液中に磁性粉を分散させた組成物を調整し、その組成物を噴霧することにより有機溶媒を除去するスプレードライ法が挙げられる。この方法によれば、スプレードライの環境温度や噴出速度などを調整することにより一次粒子が凝集した2次凝集体の平均粒子径が調整できる上、凝集した一次粒子10の間から有機溶媒が除去される際に孔が形成され、好適な多孔質構造を容易に形成させることもできる。
【0072】
一方、工業的には、ポリマーを溶解し得る溶媒にポリマーを溶解させたポリマー溶液を調製し、型などに入れられた磁性粉の表面にポリマー溶液を流し込み、さらに溶媒を除去して固化させたものを破砕したり、あるいはポリマー溶液に磁性粉を分散させた組成物から有機溶媒を除去して固化させたもの破砕したりすることによっても、樹脂複合体を形成することができる。また、ヘンシェルミキサー、ボールミル、または造粒機などに、ポリマーを溶媒に溶解した組成物を滴下し、乾燥させることで樹脂複合体を製造することができる。この時、磁性粉の表面を覆うような製造条件と、その磁性粉を凝集させるような条件の2工程を経ると、好ましい樹脂複合体を製造することができる。
【0073】
次に、製造時におけるポリマー被覆厚さの調整方法およびポリマー被覆磁性体粒子が凝集した凝集体の凝集径の調整方法について説明する。
【0074】
磁性体表面の表面被覆厚さを製造時に決定するには、ポリマーと磁性体の混合割合と、樹脂の密度、磁性体の比表面積から計算する。すなわち、添加する樹脂の重量と密度から添加する樹脂の体積を求め、磁性体の重量と比表面積から求めた磁性体の表面積で除してやると、ポリマーの平均被覆厚さtとなる。また、粒子径の制御は噴霧液の種類や噴霧方法によって異なるが、凝集体を小さくするには噴霧乾燥する液滴の液滴径を小さくすればよく、例えば噴霧ノズルの噴霧圧力を高くしたり、噴霧速度を遅くしたり、噴霧ディスクの回転を早くすると、製造される凝集体の粒子径は小さくなる。
【0075】
次に、既にできている凝集体中のポリマー被覆厚さの測定方法について説明する。
【0076】
ポリマーの被覆厚さの計算は光学顕微鏡やSEMなどによる観察で測定しても良いが、好ましくは無酸素状態で高温に上げ、樹脂複合体を熱分解させて重量減少量、すなわちポリマー被覆重量を求め、粒子の比表面積からポリマー層の平均厚さを計算すると正確に求めることができる。
【0077】
(第2の実施形態)
図4を参照して第2の実施形態の水処理方法に用いられる水処理装置1Aを説明する。なお、本実施形態が上記の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0078】
本実施形態の水処理装置1Aは、ボディーフィード法に用いられ、とくに水中の水不溶物の濃度が高い場合に有効に利用されるものである。本実施形態の装置1Aが上記第1の実施形態の装置1と異なる点は、装置1Aでは、混合槽6が無く、凝集析出槽2の代わりに混合析出槽2Aを設けている。この混合析出槽2Aは、アルカリを被処理水に添加して化合物塩を析出させる析出機能と、ろ過助剤を被処理水に添加して両者を混合させる混合機能とを兼ね備えている。すなわち、本実施形態の装置1Aでは、ろ過助剤は、混合槽を経由することなく、ろ過助剤タンク5からラインL6を介して混合析出槽2A内に直接供給されるようになっている。
【0079】
(第2の水処理方法)
次に、図5と図4を参照して上記の装置を用いる第2の水処理方法としてのボディーフィード法を説明する。
【0080】
本実施形態においても、最初にろ過助剤と分散媒とを混合し懸濁液を調整するが、この場合に使用する分散媒は、混合析出槽2A内に存在する被処理水とする。すなわち、本方法では被処理水である原水中にろ過助剤を直接投入して原水から懸濁液を調整する(工程K1)。懸濁液中のろ過助剤濃度は以下の操作によってろ過層が形成できれば特に問わないが、例えば10000〜200000mg/L程度に調整する。
【0081】
次いで、懸濁液(被処理水)をフィルタに通水し、懸濁液中のろ過助剤をろ別して、フィルタ上に残留させ、ろ過助剤が凝集してなるろ過層を形成する(工程K2)。なお、通水は加圧下で行われる。
【0082】
また、ろ過層は、上述のように外力の作用によって形成及び保持されるので、上述したフィルタリングは、例えば、上記フィルタを所定の容器の容器口を塞ぐようにして配置し、このように配置したフィルタ上にろ過助剤が残留し、配列及び積層されるようにする。この場合、上記容器の壁面からの外力及び上方に位置するろ過助剤の重さに起因した下方に向けての外力(重力)によって、上記ろ過層は形成及び保持されることになる。
【0083】
上述のようにして被処理水中の水不溶物を除去した後は、ろ過層を分散媒中に分散させ、ろ過層をろ過助剤に分解するとともに、ろ過助剤を洗浄する(工程K3)。この洗浄はフィルタ33の設置されている容器内で行ってもよく、他の容器で行ってもよい。他の容器で行う場合は、洗浄などの手段を用いてろ過層をろ過助剤に分解した後、輸送する。洗浄には水を使用するが、界面活性剤や有機溶媒を用いて洗浄することも可能である。
【0084】
次いで、洗浄後のろ過助剤を磁気分離を用いて回収する(工程K4)。磁気分離の方法は特に問わないが、容器中に永久磁石又は電磁石を投入して回収する方法や、磁石で磁化した金網などで回収して、磁場を開放することにより粒子を回収する方法などが挙げられる。
【0085】
なお、第2の水処理方法では、ろ層を構成するろ過助剤は上記被処理水、すなわちこの水を利用して調整した懸濁液中に含まれているので、除去すべき水不溶物を含む被処理水水(懸濁液)とともに、常に凝集体が供給されることになる。
【0086】
したがって、特に被処理水(懸濁液)中の水不溶物の量が多い場合においても、水不溶物の供給とろ過助剤の供給とは同時に行われることになるので、上述の第1の実施形態のように、過剰に吸着した水不溶物が、ろ過助剤の空隙を埋設してしまうことがない。このため、長時間ろ過速度を維持することができる。結果として、上述したように、第2の実施形態の水処理方法は、被処理水中の水不溶物濃度が高い場合に有効である。
【0087】
また、第1,2のいずれの水処理方法においても、回収する水不溶物の洗浄(脱塩処理)を容易におこなうことができる。すなわち、フィルタ上に堆積したろ過助剤と水不溶物に水を一定時間通水することで、水不溶物中に付着するイオン成分を除去することが可能になる。
【0088】
表1に示す実施例と比較例の各種樹脂複合体について以下に詳しく説明する。
【0089】
(樹脂複合体の製造)
(実施例;樹脂複合体A)
ポリスチレン(密度1.05g/cm)30重量部を、3リットルのテトラヒドロフラン中に溶解させて溶液とし、その溶液中に平均粒子径2μmのマグネタイト粒子300重量部(比表面積2.5m/g)を分散させて組成物を得た。この組成物を、ミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いてゆっくり噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が約8μmの樹脂複合体を作製した。ポリスチレンの密度、マグネタイトの比表面積から計算した平均被覆厚さは38nmであった。
【0090】
(実施例;樹脂複合体B)
樹脂複合体Aとは樹脂の種類をポリアクリロニトリルスチレン共重合体(密度1.05g/cm)30重量部にしたこと以外は同じにして樹脂複合体を作製した。平均凝集径が約7μmであり、平均被覆厚さは38nmであった。
【0091】
(実施例;樹脂複合体C)
樹脂複合体Aとは樹脂の種類をポリメチルメタクリレート(密度1.20g/cm)30重量部にしたこと以外は同じにして樹脂複合体を作製した。平均凝集径が約6μmであり、平均被覆厚さは33nmであった。
【0092】
(実施例;樹脂複合体D)
樹脂複合体Cとは樹脂の量を10重量部にしたこと以外は同じにして、樹脂複合体を作製した。平均凝集径が約2.4μmであり、平均被覆厚さは11nmであった。
【0093】
(実施例;樹脂複合体E)
樹脂複合体Cとは樹脂の量を50重量部にしたこと以外は同じにして、樹脂複合体を作製した。平均凝集径D2が約18μmであり、平均被覆厚さは0.055μm(C)であった。
【0094】
(実施例;樹脂複合体F)
樹脂複合体Cとは樹脂の量を220重量部にしたこと以外は同じにして、樹脂複合体を作製した。平均凝集径が約80μmであったため、粉砕機で細かくして篩い分けし、平均凝集径が約14μmの樹脂組成物を得た。平均被覆厚さは242nmであった。
【0095】
(実施例;樹脂複合体G)
レゾール型フェノール樹脂(硬化時の密度1.2g/cm3)40重量部を、3リットルの水中に溶解して溶液とし、その溶液中に平均粒子径2μm(A)のマグネタイト粒子300重量部(比表面積2.5m/g)を分散させて組成物を得た。この組成物を、ミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いてゆっくり噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径が約8μmの樹脂複合体を作製した。ポリフェノール樹脂の密度、マグネタイトの比表面積から計算した平均被覆厚さは44nmであった。
【0096】
(実施例;樹脂複合体H)
フェニルトリエトキシシラン100重量部を3000mlの水と10重量部の酢酸とに溶解させ、その溶液中に平均粒子径2μm(A)のマグネタイト粒子300重量部(比表面積2.5m/g)を分散させて溶液とした。この溶液をミニスプレードライヤー(柴田科学株式会社製、B−290型)を用いて噴霧し、球状に凝集した平均2次粒子径D2が10μmの磁性体の凝集体を作製した。計算した平均被覆厚さは25nmであった。
【0097】
(実施例;樹脂複合体I)
樹脂複合体Cとはマグネタイトを平均粒子径0.5μm(比表面積5.2m/g)を用いたこと以外は同じにして、樹脂複合体を作製した。平均凝集径D2が約5μmであり、平均被覆厚さは16nmであった。
【0098】
(実施例;樹脂複合体J)
樹脂複合体Cとはマグネタイトを平均粒子径5μm(比表面積0.7m/g)を用いたこと以外は同じにして、樹脂複合体を作製した。平均凝集径D2が約16μmであり、平均被覆厚さは119nmであった。
【0099】
(比較例:樹脂複合体K)
樹脂複合体Cとは噴霧速度を大きくして、粒子径の大きい樹脂複合体を作製した。平均凝集径が約26μmで、平均被覆厚さは33nmであった。
【表1】

【0100】
(樹脂複合体を用いた水処理)
(実施例1)
硫酸銅を1000ppm含む排水に水酸化ナトリウムを加えてpH 11に調整し、水酸化銅を析出させた。この水に対して、5000ppmとなるよう樹脂複合体Aを混合し、目開き約1μmのろ布を用いて加圧ろ過して、ボディーフィード法で水酸化銅と酸化銅を除去したところ、水中の99%以上の銅を除去できていることが確認できた。
【0101】
次いで、このろ布上に堆積した層に対し水を混合して樹脂複合体と銅析出物の混合液にして別容器に取り出し、永久磁石で樹脂複合体を取り出したところ、水中に水酸化銅と水酸化銅以外の水不溶物とが分離していることを確認することができた。この取り出した樹脂複合体を再び使用したところ、問題なく再利用できた。
【0102】
(実施例2)
硫酸銅を100ppm含む排水に水酸化ナトリウムを加えてpH 11に調整し、水酸化銅を析出させた。これとは別に、樹脂複合体Aを水に10000ppm分散させたスラリーを準備し、目開き約1μmのろ布を用いて加圧ろ過して、樹脂複合体のプレコート層を作製した。次に、排水をプレコート層に通したところ、水酸化銅と水酸化銅以外の水不溶物とが除去され、水中の99%以上の銅を除去できていることが確認できた。次にこのろ布上に堆積したプレコート層に対し水を混合して樹脂複合体と銅析出物の混合液にして別容器に取り出し、永久磁石で樹脂複合体を取り出したところ、水中に水酸化銅と水酸化銅以外の水不溶物とが分離していることが確認できた。この取り出した樹脂複合体を再び使用したところ、問題なく再利用できた。
【0103】
(実施例3〜11)
実施例1とは樹脂複合体の種類を樹脂複合体B〜Jに変更したこと以外は同様に水処理を行ったところ、水中の銅の99%以上を除去でき、問題なく再利用できることがわかった。
【0104】
(比較例1)
実施例1とは樹脂複合体の種類を比較例の樹脂複合体Kに変更したこと以外は同様に水処理を行ったところ、ろ液中に水酸化銅が流出して、水中の55%の銅しか除去することができなかった。
【0105】
(比較例2)
実施例1に樹脂複合体を混合しないで加圧ろ過したところ、すぐにろ布上に水酸化銅が詰まり、十分な通水量を得ることができなかった。
【0106】
(実施例12)
フッ化物イオンを1000ppm含む排水を炭酸カルシウム充填塔に通して、炭酸カルシウム充填物表面から剥がれ落ちたフッ化カルシウム800ppmを含む液を得た。この水に対し、5000ppmとなるよう樹脂複合体Aを混合し、目開き約1μmのろ布を用いて加圧ろ過して、ボディーフィード法でフッ化カルシウムを除去したところ、水中の99%以上のフッ化カルシウムを除去できていることが確認できた。次いで、このろ布上に堆積した層に対し水を混合して樹脂複合体とフッ化カルシウムの混合液にして別容器に取り出し、永久磁石で樹脂複合体を取り出したところ、水中にフッ化カルシウムが分離していることが確認できた。この取り出した樹脂複合体を再び使用したところ、問題なく再利用できた。
【符号の説明】
【0107】
1,1A…水処理システム、2…凝集析出槽、2A…混合析出槽、
3,3B…固液分離装置、31…導入スペース、32…透過スペース、
33…フィルタ、
4…分離槽、5…ろ過助剤タンク、6…混合槽、
10…一次粒子、11…磁性体粒子、12…被覆剤(ポリマー)、
13…二次凝集体(ろ過助剤、一次粒子の凝集体)、
P1〜P9…ポンプ、V1〜V3…バルブ、
L2…被処理水供給ライン、L3…処理水ライン、L31…洗浄ライン、L32…処理水搬出ライン、L33…処理水再利用ライン、L34…処理水再利用ライン、
L4…洗浄排出水ライン、L5…ろ過助剤返送ライン、L6…ろ過助剤供給ライン、L7…混合ライン、L8…回収成分濃縮水排出ライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、
前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあることを特徴とする樹脂複合体。
【請求項2】
前記磁性粒子の各々がマグネタイトであることを特徴とする請求項1記載の樹脂複合体。
【請求項3】
前記ポリマーが、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン及びこれらの共重合体からなる群より選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の樹脂複合体。
【請求項4】
前記ポリマーが、フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1記載の樹脂複合体。
【請求項5】
前記ポリマーが、トリアルコキシシランの縮合物であることを特徴とする請求項1記載の樹脂複合体。
【請求項6】
それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
(a)前記ろ過助剤がプレコート層をフィルタ上に形成する場合は、
前記ろ過助剤に分散媒を混合して分散媒中に前記ろ過助剤が分散する懸濁液を提供し、この懸濁液を前記フィルタでろ過して前記フィルタ上に前記ろ過助剤のプレコート層を形成し、
金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記被処理水を前記プレコート層および前記フィルタに通過させ、これにより前記ろ過助剤に前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉させ、
剥離水を前記プレコート層に注いで前記フィルタから前記プレコート層を剥離させ、これにより前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉した前記プレコート層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
前記混合物から前記ろ過助剤を磁気的に分離する、
または、
(b)前記ろ過助剤が水不溶性の金属化合物粒子を伴なう堆積層をフィルタ上に形成する場合は、
金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記被処理水と前記ろ過助剤とを混合して前記ろ過助剤および前記水不溶性の金属化合物粒子を含む懸濁液を提供し、この懸濁液を前記フィルタに通過させ、これにより前記フィルタ上に前記ろ過助剤および前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記堆積層を形成し、これにより前記堆積層中の前記ろ過助剤に被処理水中の前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉させ、
剥離水を前記堆積層に注いで前記フィルタから前記堆積層を剥離させ、これにより前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉した前記堆積層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
前記混合物から前記ろ過助剤を磁気的に分離することを特徴とする水処理用ろ過助剤。
【請求項7】
前記凝集体の比重が水より大きいことを特徴とする請求項6記載の水処理用ろ過助剤。
【請求項8】
ろ過助剤を含み、前記ろ過助剤は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
前記プレコート材に分散媒を混合して分散媒中に前記プレコート材が分散する懸濁液を提供し、
前記懸濁液を前記フィルタでろ過して前記フィルタ上に前記プレコート材のプレコート層を形成し、
金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記被処理水を前記プレコート層および前記フィルタに通過させ、これにより前記プレコート材に被処理水中の前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉させ、
前記水不溶性の金属化合物粒子を捕捉した前記プレコート層に剥離水を注いで、前記フィルタから前記プレコート層を剥離させ、これにより前記プレコート層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
前記混合物から前記ろ過助剤を磁気的に分離することを特徴とする水処理用プレコート材。
【請求項9】
前記ろ過助剤の比重が水より大きいことを特徴とする請求項8記載の水処理用プレコート材。
【請求項10】
(a)金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
(b)ろ過助剤に前記水不溶性の金属化合物粒子を含む被処理水を混合して被処理水中に前記ろ過助剤および前記水不溶性の金属化合物粒子が分散する懸濁液を提供し、前記ろ過助剤は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
(c)前記懸濁液をフィルタに通してろ過し、これにより前記フィルタ上に前記ろ過助剤および前記水不溶性の金属化合物粒子を含む前記堆積層を形成し、
(d)剥離水を前記堆積層に注いで前記フィルタから前記堆積層を剥離させ、これにより前記堆積層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
(e)前記混合物中に含まれるろ過助剤と水不溶性の金属化合物粒子とを磁気的に分離し、
(f)前記分離した水不溶性の金属化合物粒子を含む前記剥離水を回収する一方で、分離したろ過助剤を前記(b)工程で再使用する、ことを含むことを特徴とする水処理方法。
【請求項11】
(i)金属イオンを含む被処理水をアルカリ化して前記被処理水中において水不溶性の金属化合物粒子を析出させ、
(ii)ろ過助剤を分散媒に混合して前記分散媒中に前記ろ過助剤が分散する懸濁液を提供し、前記ろ過助剤は、それぞれポリマーにより表面が被覆された磁性粒子からなる一次粒子が凝集した凝集体を含み、前記一次粒子の平均粒子径D1が0.5〜20μmの範囲にあり、かつ前記凝集体の平均凝集径D2がD1<D2≦20μmを満たし、かつ前記ポリマーの平均表面被覆厚さtが0.01≦t≦0.25μmの範囲にあり、
(iii)前記懸濁液をフィルタに通してろ過し、これにより前記フィルタ上に前記ろ過助剤のプレコート層を形成し、
(iv)前記水不溶性の金属化合物粒子を含む被処理水を前記プレコート層および前記フィルタに通して、これにより被処理水に含まれる前記水不溶性の金属化合物粒子を前記プレコート層のろ過助剤に捕捉させ、
(v)前記プレコート層に剥離水を注いで、前記フィルタから前記プレコート層を剥離させ、これにより前記プレコート層の剥離物と前記剥離水との混合物を提供し、
(vi)前記混合物中に含まれるろ過助剤と水不溶性の金属化合物粒子とを磁気的に分離し、
(vii)前記分離した水不溶性の金属化合物粒子を含む前記剥離水を回収する一方で、分離したろ過助剤を前記(ii)工程で再使用する、ことを含むことを特徴とする水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−206106(P2012−206106A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198711(P2011−198711)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】