説明

橈骨遠位端骨折用鋼線

【課題】
橈骨遠位端骨折の治療法として髄内牽引固定法を発明し、実践するにあたり、牽引力と固定性を有する固定器具としての鋼線を発明した。
【解決手段】
いろいろの体型20人の橈骨のレントゲンを調査し、橈骨の長さより数センチ長く、髄空に入る程度の太さで十分な強度があり、骨折を牽引整復し橈骨遠位端より鋼線を遠位骨片を貫き髄空に近位端まで入れると、骨折部の遠位骨片の中にちょうど1個または2個の角度のついた横穴があり、骨折部をまたぎ近位に補助固定用の横穴もあり、それらの横穴に牽引力が働き、整復位の保持と短縮予防のためのストッパーとなる別の鋼線または螺子を刺入固定できるようにした橈骨遠位端骨折用固定器具としての鋼線を発明した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学分野で人間の橈骨遠位端骨折で保存療法では整復保持に難渋する症例において、手術方法として髄内牽引固定法を発明し、髄内牽引固定法の手術時に使用する固定器具である。
【背景技術】
【0002】
橈骨遠位端骨折では整復できても整復位の保持が困難な症例があり、保存的に治療した場合、短縮変形は必発で、そのような症例に対して手術時に用いるいろいろの器具が発売されております。代表的なものは創外固定法とその器具、内固定として用いるプレートです。それらの器具はどれも高価で使用に熟練を要します。
【0003】
髄内牽引固定法は従来の方法に比して低侵襲で簡便な方法として出願者が発明した手術方法ですが、髄内牽引固定法に最適の固定器具の開発が必要であった。
【0004】
髄内牽引固定法は発明した固定器具としての鋼線を橈骨の遠位端より遠位骨片を貫いて骨髄内に刺入し橈骨の近位端の骨皮質を支点にして牽引を加え遠位骨片にストッパーとなる別の鋼線または螺子をガイドを用いて刺入固定し短縮を予防し骨折部を固定する方法です。
【0005】
髄内牽引固定法については神奈川整形災害外科研究会で発表しました(H18年11月18日)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
髄内牽引固定法を実践するため固定器具として鋼線を使用しますが、まず骨折した橈骨を牽引整復し遠位端より遠位骨片を貫き鋼線を髄空内に近位端まで刺入します、短縮変形を予防するために遠位骨片の中を通っている部分に横穴をあけ、そこに牽引力が働きストッパーとなる別の鋼線または螺子を刺入します。その横穴の位置は鋼線の端より何センチぐらいが良いか、強度としての太さはどのくらいが良いか、横穴の方向はどこにするか、横穴の数は何個ぐらいが良いのか、そしてストッパーとなる鋼線を入れる横穴の位置は骨の中にあり手術時は見えません、骨内の横穴に別の鋼線または螺子を刺入できるガイドが必要です。また鋼線は直線で良いのかという6つの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いろいろの体型20人のレントゲンで橈骨近位端より遠位骨片の中の最適の位置までの距離、橈骨の太さ、髄空の大きさを調べ、橈骨の長さより数センチ長く、髄空に入る程度の太さで十分な強度があり、骨折を牽引整復し橈骨遠位端より鋼線を遠位骨片を貫き髄空に近位端まで入れると、骨折部の遠位骨片に牽引力がはたらくように遠位骨片の中にちょうど1個または2個の角度のついた横穴があり、骨折部をまたいだ近位に補助固定用の横穴もあり、それらの横穴に牽引力が働き整復位の保持と短縮予防のためのストッパーとなる別の鋼線または螺子をガイドを用いて刺入し固定できるようにした固定器具としての鋼線を発明した。
【発明の効果】
【0008】
橈骨遠位端骨折に対して整復して、髄内牽引固定法として発明の鋼線を使用して整復位を保持する手術法は患者さんにとって手術時間は短く低侵襲でギブス固定の期間も短く拘縮も少なく、入浴も創外固定法に比べて早く可能になります。骨折部も短縮変形を来たすことなく骨癒合が得られます、手術を施行する医師の負担も軽減されます。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて説明する。図1は発明鋼線側面の全体像で、D1は鋼線の端よりストッパーとなる横穴までの距離です。横穴の位置ですが、調査により遠位骨片の中にくる最適の場所は橈骨近位端より17cmより25cmのあいだにあることがわかった。通常の体型用で21cm、大きい体型用で25cmとしました。実際に使用する時はX線透視で見て横穴の位置が骨折部の遠位骨片の中にくるよう、微調整としてちょうど良い長さに切って使用します。
【0010】
鋼線の端から横穴までの長さを調節する、伸び縮む機構の鋼線を作ることは可能で、この機構もほん発明に含まれます。
【0011】
図2は横穴の位置の側面の拡大図で、D4は鋼線の太さですが、髄空に入り十分な牽引力と固定力に耐える太さとしては2.0mm〜8.0mmであるが髄空の最小値より3.0mm前後が最適値と思われるが、3mmより太くするとリーミング(髄空をけずる操作)を必要とする場合が発生するので、橈骨の髄空の大きさに合わせて太さと長さを変えた中、大のサイズを用意しています。また遠位骨片の中の横穴の部分は強度的に太くする必要があり、遠位骨片の中と近位の髄空の中で太さをかえる構造もほん発明に含まれます。
【0012】
図2のAはストッパーを入れる横穴の角度ですが、橈骨遠位端の形状は長軸方向に対して直角ではなく、radial inclinationといって、直角方向に対して平均23度の傾きがあります。この方向に沿うようにストッパーの鋼線を入れるなら、遠位骨片の中の横穴の方向は鋼線に対して直角ではなく、直角方向に対して約10度〜30度前後の角度があったほうが良い事もわかった。図2では20度ですが10度〜30度が許容範囲です。補助固定用の横穴の角度は特に限定はされないので直角にしてあります。
【0013】
横穴の数は髄内牽引固定法の基本形では遠位骨片の中に1個ですが、骨折の型に対する適応と安定性を良くするために骨折部の遠位骨片の中に2個、骨折部を跨いだ近位部に補助固定用に1箇所あけてあります。D6はストッパーを入れる横穴の距離ですが遠位骨片の大きさより3mm〜10mmの範囲で、5mm前後が最適値です。
【0014】
横穴の数をさらに増やすことも可能です。実際に使用するときは横穴すべて使用するとは限らず、手術執刀医が必要と思われる所のみ使用します。
【0015】
D3はストッパーの穴と補助固定の穴の距離で骨折部をまたぐために20mm〜70mmは必要です。
【0016】
さらに実際使用すると横穴は骨の中に埋まっており、そこに別の鋼線または螺子を通す事が出来ません。鋼線または螺子刺入ガイドを作成しました。ガイド用の横穴は骨外にありストッパーを入れる横穴よりD2離れた所に平行に横穴をあけておき、その場所にガイドをつけると、目的の骨の中の横穴にストッパーの働きをする別の鋼線または螺子を刺入することができるようになります。D2は10mm〜30mmです。D5はストッパーを入れる横穴の直径で1.2mm〜4.0mmです。ストッパーも強度的に1.2mm〜4.0mmの太さの鋼線か裸子を使用します。補助固定の穴も同じガイドで鋼線または螺子を挿入できるようになっています。ストッパーと補助固定に使用する鋼線はすでに発売されているものを使用しますが、専用の鋼線または螺子も可能です。
【0017】
6つ目の課題は髄空は直線ではなく、実例より髄空に沿うようにするには横穴の近位部より、補助固定の穴の近位部より髄空に沿うように曲げたほうが実例より安定することがわかり、手術時に鋼線を曲げて湾曲つけて使用しますが、はじめから湾曲をつけたものも発明に含まれます。湾曲をつけると左右別々のものが必要となり、多くの種類が必要となりますので曲げて使用するようにしました。
【0018】
図3は発明の鋼線の上面の全体像です。
【0019】
図4は、発明鋼線の横穴の上面の拡大図です。
【0020】
鋼線の材質は、人体に使用できるよう認可されたステンレス又はチタンです。
【実施例】
【0021】
図5はガイドを装着して目的の横穴に鋼線を挿入した図です。
【0022】
図6は髄内牽引固定法の基本形で実際に骨折した橈骨に使用した状態の図です。
【0023】
図7は補助固定用を含めすべての横穴に鋼線を刺入した状態の図です。
【産業上の利用可能性】
【0024】
橈骨遠位端骨折に本発明の固定器具としての鋼線を用いて手術を行えば、患者さんの負担、手術時間の短縮と皮膚の切開の少なさは従来の方法に比して非常に小さく、手術を行う医師の負担も少なくなります。骨折の治療結果は従来の方法と同等です。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の鋼線の全体図、横穴までの距離と位置と方向の側面図
【図2】図1の横穴の位置の拡大図と鋼線の断面図
【図3】本発明の鋼線の全体図、横穴までの距離と位置の上面図
【図4】図3の横穴の位置の上面図の拡大図と鋼線の断面図
【図5】実際にガイドを装着して骨折部に横穴を通して鋼線を挿入した図
【図6】髄内牽引固定法の基本形で手術後の状態の図
【図7】補助固定を含めすべての横穴に鋼線を刺入した状態の図
【符号の説明】
【0026】
D1:鋼線の端より横穴までの距離17cm〜25cm
D2:ガイド用の横穴とストッパーを入れる横穴までの距離10mm〜30mm
D3:ストッパーの横穴と補助固定の横穴までの距離10mm〜70mm
D4:鋼線の太さ2.0mm〜8.0mm
D5:横穴の直径1.2mm〜4.0mm
D6:ストッパーの鋼線をいれる横穴の距離3mm〜10mm
A°:横穴の鋼線の長軸より直角方向に対する角度約10°〜30°
a:発明した鋼線
b:ストッパーとなる鋼線を入れるための横穴
c:鋼線刺入ガイドを入れるための横穴
d:補助固定の鋼線を入れるための横穴
e:骨折部
B:ストッパーの鋼線
C:ガイドに使用する鋼線
D:補助固定の鋼線
F:鋼線刺入ガイド本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の橈骨遠位端骨折で徒手整復ギプス固定では整復保持に難渋する症例に対して行う手術法として髄内牽引固定法を発明し、髄内牽引固定法を実践する時に使用する鋼線で、橈骨の長さより数センチ長く、橈骨の髄空に入る程度の太さで十分な強度があり、骨折を整復し橈骨遠位端より鋼線を遠位骨片を貫き髄空に近位端まで入れると骨折部の遠位骨片に牽引力がはたらくように遠位骨片の中にちょうど1個または2個の角度のついた横穴があり、骨折部をまたいだ近位に補助固定用の横穴もあり、それらの横穴に牽引力が働き整復位の保持と短縮予防のためのストッパーとなる別の鋼線または螺子を鋼線刺入ガイドを用いて刺入し固定できるようにした橈骨遠位端骨折用固定器具としての鋼線。
【請求項2】
遠位骨片の骨内にある角度のついた横穴と補助固定の横穴に別の鋼線または螺子を刺入するため必要な鋼線または螺子刺入ガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−272146(P2008−272146A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118089(P2007−118089)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(306001507)
【Fターム(参考)】