橋梁の剛性増加方法
【課題】橋梁の桁に固定されたパネルにより橋梁の剛性を増加させる。
【解決手段】施工された橋梁1から、防音壁4の目地となる弾性体8及びこの弾性体8の両側に接する2枚の防音壁4の一部分4bを除去し、パネル間空間9を形成する。その後、このパネル間空間9に袋状部材10を設置し、袋状部材10の中に流動状態のモルタル12を充填する。その後、モルタル12を硬化させることで、隣接する防音壁4がモルタルにより固定され、桁3に固定された複数の防音壁4が一体となる。このようにして、既設の橋梁1の剛性を、桁に固定された防音壁4により増加させることができる。
【解決手段】施工された橋梁1から、防音壁4の目地となる弾性体8及びこの弾性体8の両側に接する2枚の防音壁4の一部分4bを除去し、パネル間空間9を形成する。その後、このパネル間空間9に袋状部材10を設置し、袋状部材10の中に流動状態のモルタル12を充填する。その後、モルタル12を硬化させることで、隣接する防音壁4がモルタルにより固定され、桁3に固定された複数の防音壁4が一体となる。このようにして、既設の橋梁1の剛性を、桁に固定された防音壁4により増加させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桁に複数のパネルが固定されている橋梁の剛性増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や自動車等が通る橋梁は、鉄道等から発生する音の遮断や、橋梁からの落下を防止するために、構造部材である桁の床スラブに、防音壁や高欄などのパネルが固定されている。このパネルは、コンクリート等の硬化型流動材により形成されており、1つの桁に対して複数枚のパネルが固定されている。そして、パネルを桁に固定する際に、パネルのコンクリートが硬化してひび割れるのを防止するために、隣接するパネル間はエラスタイトのような弾性体が配置されている。そのため、パネル自体は剛体であるが、隣接するパネル間の動きは許容されるため、構造解析上では非構造部材となっている。
【非特許文献1】財団法人 鉄道総合技術研究所 編,平成16年4月 鉄道構造物等設計標準・同解説−コンクリート構造物,平成16年4年20月発行,p.110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、橋梁は、構造部材の剛性に基づいて設計されている(例えば非特許文献1参照)。そのため、非構造部材と位置付けられているパネルによって橋梁の剛性を増加させることは全く考えられておらず、橋梁の施工後に橋梁の剛性を増加させたい場合は、構造部材と位置付けられている桁などに鋼板等の補強部材を取り付ける補強工事を行っているため、作業が大規模となり、迅速に橋梁の剛性を増加させることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、斯かる問題に鑑みて為されたものであり、橋梁の桁に固定されたパネルにより橋梁の剛性を増加させることができる橋梁の剛性増加方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る橋梁の剛性増加方法は、桁に複数のパネルが固定された橋梁の剛性増加方法であって、パネルの自由端部において、隣接するパネル間の動きを拘束することを特徴とする。
【0006】
この橋梁の剛性増加方法によれば、桁に固定されたパネルの自由端部が、隣接するパネル間において動きが拘束されるため、パネルは、桁と共に一体的に構成され、橋梁を構成する構造部材の一部として機能することになる。このため、桁に固定された既設のパネルにより、橋梁の剛性を増加させることが可能となる。
【0007】
更に、本発明に係る剛性増加方法は、隣接するパネルの自由端部間に硬化型流動材を充填することが好ましい。硬化型流動材とは、モルタルやコンクリートのように、流動性を有する材料であって経時変化等により硬化する材料をいう。この橋梁の剛性増加方法によれば、硬化型流動材の硬化により、隣接するパネル間の自由端部が固定され、桁に固定される全てのパネルが桁と共に一体となって、例えば、自動車や列車走行時等に、桁の変形を低減する。このように、桁に固定された既設のパネルを、その後、桁と共に構造部材として機能させることができるため、桁などの構造部材に対して補強工事を施すことなく、橋梁の剛性を向上させることが可能となる。また、硬化型流動材を充填するだけで既設の橋梁の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。
【0008】
この場合、隣接するパネルの間のパネル間空間に適合する形状の袋状部材をこのパネル間空間に設置し、その後、袋状部材に硬化型流動材を充填することが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、硬化型流動材を袋状部材に充填することで、硬化型流動材は、袋状部材によって流動域が規制され、袋状部材の形状に硬化する。このため、硬化型流動材がパネル間空間から大きくはみ出ることなく、硬化型流動材を橋梁のパネル間空間の形状に適合するように硬化させることができる。
【0009】
また、袋状部材は、パネルの一方の面側に設置される袋保持部材に保持されており、袋保持部材をパネルの一方の面側に設置することで、袋状部材をパネル間空間に設置することが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、袋状部材はパネルに設置される袋保持部材に保持されているため、袋状部材に硬化型流動材を充填する際に、袋状部材がパネル間空間から外れるのを防止することができる。更に、袋保持部材はパネルの一方の面に設置することで、袋状部材をパネル間空間に設置し、硬化型流動材を充填することができるため、パネルの一方の面側でのみ作業を行うことができる。そのため、例えば、橋梁の両端面にパネルが固定されている場合は、橋梁の内側のみで作業を行うことができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。
【0010】
また、袋状部材は、伸縮性を有し、硬化型流動材が充填されることによりパネル間空間に適合する形状になることが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、硬化型流動材を充填する前は袋状部材が収縮した状態となるため、収納性を向上させることができる。更に、硬化型流動材の充填により袋状部材がパネル間空間の形状に適合するように伸長するため、例えば、パネル間空間に凹凸等があったとしても、硬化型流動材はパネル間空間の形状に適合するように充填され、硬化型流動材とパネルとの密着性をより向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る剛性増加方法は、パネルの自由端側から、隣接するパネルを固定する固定部材をパネルに固定することが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、パネルの自由端側から固定部材をパネルにはめ込んで固定することで、隣接するパネルの自由端部が固定され、桁に固定される全てのパネルが桁と共に一体となって、例えば、自動車や列車走行時等に、桁の変形を低減する。このように、桁に固定された既設のパネルを、その後、桁と共に構造部材として機能させることができるため、桁などの構造部材に対して補強工事を施すことなく、橋梁の剛性を向上させることが可能となる。また、既設の橋梁に対して固定部材をはめ込んで固定させるだけで既設の橋梁の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。
【0012】
この場合、固定部材は、パネルを挟持する一対の側壁部と、一対の側壁部を結合する結合部とを備えることが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、固定部材を隣接するパネルにはめ込むことで、一対の側壁部がパネルを狭持して、隣接するパネルを一体的に固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、橋梁の桁に固定されたパネルにより橋梁の剛性を向上させることがき、簡易的に橋梁の剛性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明に係る橋梁の剛性増加方法が適用される橋梁の一例を示す図、図2は、図1に示す橋梁の防音壁の周辺部分を拡大した一部拡大図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、橋梁1は、地面に立設される複数の橋脚2と、この橋脚2に掛け渡されて支持される複数の桁3と、この桁3に固定される複数の防音壁(パネル)4とを備えており、桁3の上面には、例えば、鉄道や自動車などが走行する線路や道路が敷設されている。
【0016】
桁3は、コンクリートなどによって橋梁1の延設方向に延びるように形成されている。桁3は、隣接する2本の橋脚2に掛け渡される桁部5と、桁部5の上面側に位置して線路や道路が敷設される床スラブ6とを備えている。床スラブ6の両端部には、防音壁4を固定するために、上面から飛び出て上方に延びる鉄筋7が橋梁1の延設方向に沿うように設置されている。
【0017】
防音壁4は、コンクリートなどによって板状に形成されている。防音壁4は、床スラブ6の両端部において、鉄筋7が埋め込まれるように、橋梁1の延設方向に沿うように固定されている。そして、防音壁4は、1つの桁3に対して複数枚の防音壁4が固定されており、隣接する防音壁4の間には、エラスタイトなどの弾性体8が挿入されている。防音壁4の固定は、床スラブ6の両端部において、橋梁1の延設方向に沿うと共に鉄筋7を内包する型枠を設置し、この型枠にコンクリートを充填する。そして、コンクリートの硬化により、防音壁4が床スラブ6に固定される。その後、1つの桁3に固定された隣接する2枚の防音壁4の間に弾性体8を挿入する。なお、隣接する防音壁4の間に挿入された弾性体8は、防音壁4の目地となっており、例えば、1cm程度の幅となっている。
【0018】
このように施工される防音壁4は、一端面が床スラブ6に固定されており、他端面である上端面4aが隣接する防音壁4との間で伸縮可能な自由端となっている。このため、桁3の上面を鉄道や自動車が走行すると、弾性体8の伸縮により隣接する防音壁4の間が伸縮するようになっている。
【0019】
次に、このようにして施工された橋梁1に対して、第1の実施形態に係る橋梁の剛性増加方法を適用する場合について、図面を参照しながら詳細に説明する。図3は、図2の状態から目地を除去した状態を示した図。図4は、図3の状態から袋状部材を設置した状態を示した図、図5は、袋状部材の構成を示した斜視図、図6は、図4の状態において袋状部材にモルタルを充填している状態を示した図、図7は、図6の状態からモルタルが硬化して袋保持部材を取り外した状態を示した図、図8は、必要により図7の状態から防音壁に鋼板を取り付けた状態を示した図である。
【0020】
まず、図3に示すように、施工された橋梁1から(図2参照)、防音壁4の目地となる弾性体8及びこの弾性体8の両側に接する2枚の防音壁4の一部分4bを除去し、パネル間空間9を形成する。パネル間空間9の幅、つまり、除去する弾性体8及びこの弾性体8の両側に接する2枚の防音壁4の一部分4bの幅は、後述する後工程や増加させる橋梁1の剛性等に鑑みて算出されるが、本実施形態では、後工程を鑑みて、例えば、3〜10cm程度が望ましい。なお、本実施形態では弾性体8及び防音壁4の一部分4bを除去することとしたが、弾性体8のみを除去してもよく、弾性体8の一部分のみを除去してもよい。
【0021】
パネル間空間9を形成すると、図4に示すように、このパネル間空間9に袋状部材10を設置する。
【0022】
袋状部材10は、図5に示すように、パネル間空間9の形状に適合する形状に形成されており、上部が開口した袋状に形成されている。また、袋状部材10は、多少の伸縮性を有する素材により形成されている。そして、袋状部材10は、内部にモルタル等の流動物が充填されると、伸長してパネル間空間9の形状に適合するようになっている。なお、袋状部材10は特に大きな伸縮性を有する必要はなく、内部にモルタル等の流動物が充填されたときにパネル間空間9の形状に適合するものであれば、如何なる形状、材質のものであってもよい。図5では、分かりやすくするため、パネル間空間9の形状と同一の形状をした袋状部材10を示している。
【0023】
また、袋状部材10は、防音壁4に設置される袋保持部材11に保持してもよい。この袋保持部材11は、薄い板状に形成されており、パネル間空間9の幅よりも広く、パネル間空間9及び防音壁4の高さよりも僅かに高く形成されている。そして、袋保持部材11は、一方の面に袋状部材10を保持している。なお、袋保持部材11は、袋状部材10を如何なる手段によって保持しても良いが、本実施形態では、袋状部材10の一部を袋保持部材11の一方の面に固定することで、袋状部材10を保持することとしている。
【0024】
そして、図4に戻り、このように形成される袋状部材10をパネル間空間9に設置する際は、まず、防音壁4の内側から、袋状部材10がパネル間空間9に収容されるように、袋保持部材をパネル間空間9に接する一対の防音壁4及び床スラブ6に袋保持部材11を取り付ける。なお、袋保持部材11は、取り外し可能なように防音壁4及び床スラブ6に取り付けるが、袋保持部材11を橋梁に取り付けたままの状態としても良い場合は、取り外しできないように取り付けても良い。
【0025】
袋状部材10を設置すると、図6に示すように、袋状部材10の中に流動状態のモルタル12を充填する。モルタル12は、袋状部材10の開口部から注入され、袋状部材10の最下部から最上部付近まで充填させる。その際、袋状部材10に充填されるモルタル12は、袋状部材10によりその流動域が制限されながら、その自重により両側の防音壁4に密着するまで袋状部材10を伸長させる。
【0026】
そして、モルタル12が袋状部材10に充填されると、図7に示すように、モルタル12は、時間の経過と共に乾燥し、袋状部材10を介して防音壁4に密着した状態で硬化する。
【0027】
モルタル12が硬化すると、袋保持部材11を防音壁4及び床スラブ6から取り外し、更に、袋保持部材11を袋状部材10から引き剥がす。なお、接着により袋保持部材11が袋状部材10を保持している場合、袋保持部材11を袋状部材10から引き剥がすことができる。その他の手段により袋保持部材11が袋状部材10を取り外し可能に保持している場合は、袋状部材10から引き剥がすことなく袋保持部材11を取り外すことができる。
【0028】
袋保持部材11を取り外すと、図8に示すように、防音壁4自体の剛性を増加させるために、必要により防音壁4の上端面4aに鋼板13を取り付ける。この鋼板13の取り付けは、防音壁4の剛性を増加することができれば如何なる手段によって取り付けてもよく、例えば接着やボルト締めなどによって取り付けてもよい。
【0029】
このようにして、橋脚2に掛け渡された桁3の床スラブ6に複数枚の防音壁4が固定された橋梁1は、隣接する防音壁4との間には硬化したモルタル12が配置され、更に、場合によって、各防音壁4の上端面4aに鋼板13が取り付けられた構造となる。
【0030】
このように、第1の実施形態によれば、モルタル12の硬化により、隣接する防音壁4間が固定され、隣接する防音壁4に対して向き合う方向の力F(図8参照)が作用しても、隣接する防音壁4間の伸縮動作が規制される。このように、1つの桁3に固定される全ての防音壁4がこの桁3と共に一体となって桁3の変形を低減するため、非構造部材として桁3に固定された既設の防音壁4を、その後、構造部材として機能させることができ、桁3などの構造部材に対して大規模な補強工事を施すことなく、橋梁1の剛性を向上させることが可能となる。また、目地となる弾性体8を除去してモルタル12などの硬化型流動材を充填するだけで既設の橋梁1の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となり、安価となる。
【0031】
また、第1の実施形態によれば、モルタル12を袋状部材10に充填することで、モルタル12は、袋状部材10によって流動域が規制され、袋状部材10の形状に硬化する。このため、モルタル12がパネル間空間9から大きくはみ出ることなく、モルタル12をパネル間空間9の形状に適合するように硬化させることができる。
【0032】
また、第1の実施形態によれば、袋状部材10は防音壁4に設置される袋保持部材11に保持されているため、袋状部材10を容易にパネル間空間9に設置することができ、その後、袋状部材10にモルタルを充填する際に、袋状部材10がパネル間空間9から外れるのを防止することができる。更に、袋保持部材11は防音壁4の内側の面に設置するだけで、袋状部材10の設置とモルタル12の充填作業を行うことができるため、作用性を向上させることが可能となり、より簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。また、袋保持部材11は、防音壁4に設置した状態で防音壁4の上端面4aよりも僅かに上方に飛び出しているため、袋保持部材11を防音壁4及び袋状部材10から取り外しやすくなる。
【0033】
また、第1の実施形態によれば、袋状部材10は伸縮性を有することで、モルタル12を充填する前は袋状部材10が収縮した状態となるため、収納性を向上させることができる。更に、モルタル12の充填により袋状部材10はパネル間空間9の形状に適合するように伸長するため、例えば、パネル間空間9に凹凸等があったとしても、モルタル12はパネル間空間9の形状に適合するように充填され、モルタル12と防音壁4との密着性をより向上させることが可能となる。
【0034】
また、第1の実施形態によれば、隣接する防音壁4の間に形成するパネル間空間9の幅や厚さを変えたり、パネル間空間9に充填するモルタル12の量を変えたりすることで、隣接する防音壁4間の剛性が変わるため、橋梁1の剛性の増加量を調整することが可能となる。
【0035】
次に、上述した図1および図2に示す橋梁1に対して、第2の実施形態に係る橋梁の剛性増加方法を適用する場合について、図面を参照しながら詳細に説明する。図9は、図1の状態から固定部材をはめ込もうとする状態を示した図、図10は、図9の状態から固定部材をはめ込んだ状態を示した図である。
【0036】
まず、図9に示すように、施工された橋梁1において(図2参照)、防音壁4の上端面4a側から、隣接する防音壁4を固定して隣接する防音壁4間の動きを規制する固定部材15を、隣接する2枚の防音壁4を挟み込んで掛け渡されるようにはめ込む。
【0037】
固定部材15は、僅かに弾性を有する鋼材や樹脂により形成されており、防音壁4にはめ込む側が開口した断面コの字型に形成されている。そして、固定部材15は、固定部材15の両端部を形成して防音壁4を挟持する一対の側壁部15a,15bと、この一対の側壁部15a,15bを結合する結合部15cと、を備えている。この一対の側壁部15a,15bの間隔は、嵌め合いにより防音壁4を挟持できるように、防音壁4の厚さよりも僅かに狭くなっている。また、固定部材15の長さは、隣接する防音壁4を挟持できるように、隣接する防音壁4の目地となる弾性体8の幅よりも十分に長く形成されている。
【0038】
その後、図10に示すように、一対の側壁部15a,15bに挟まれる結合部15cの内面が防音壁に当接するまで、固定部材15を隣接する防音壁4にはめ込む。
【0039】
このように、第2の実施形態によれば、上端面4a側から固定部材15を防音壁4にはめ込むことにより、隣接する防音壁4間の上端面4a側の部分(自由端部)が固定され、隣接する防音壁4に対して向き合う方向の力F(図10参照)が作用しても、隣接する防音壁4間の伸縮動作が規制される。このように、1つの桁3に固定される全ての防音壁4が桁3と共に一体となって桁3の変形を低減するため、非構造部材として桁3に固定された既設の防音壁4を、その後、桁3と共に構造部材として機能させることができ、桁3などの構造部材に対して大規模な補強工事を施すことなく、橋梁1の剛性を向上させることが可能となる。また、既設の橋梁1に対して固定部材15をはめ込むだけで既設の橋梁1の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能で、安価に施工できる。
【0040】
また、第2の実施形態によれば、一対の側壁部15a,15bの間隔を防音壁4の厚さよりも僅かに短い間隔に形成することで、固定部材15を防音壁4にはめ込むと、側壁部15a,15bと各防音壁4とが嵌め合いにより固定され、隣接する防音壁4を一体的に固定することができる。更に、一対の側壁部15a,15bで防音壁4を一体的に固定しながら、結合部15cが隣接する防音壁4の上端面4aに支えられるため、固定部材15が防音壁4から落下するのを防止することが可能となる。
【0041】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1の実施形態においては、弾性体8及び防音壁4の一部分4bは防音壁4における上端面4aから床スラブ6に固定される下端面まで除去するように説明したが、要求される桁の剛性に応じて防音壁4における上端面4a側の一部分のみを除去すればよく、例えば、図11に示すように、防音壁4における上端面4aから床スラブ6側に向けて所定距離だけ、弾性体8及び防音壁4を除去しても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
また、第1の実施形態においては、弾性体8及び防音壁4を奥行方向全域に渡り除去するように説明したが、隣接する防音壁4との間がモルタルで埋められていれば良く、例えば、図12に示すように、弾性体8及び防音壁4を奥行方向α半分まで除去し、この除去した空間にモルタルを充填して硬化させるようにしても良い。
【0043】
また、第1の実施形態においては、パネル間空間9に挿入された袋状部材10にモルタル12を充填するように説明したが、必ずしも袋状部材10を設置する必要はなく、例えば、パネル間空間9を覆うように隣接する防音壁4の両面に板状の型枠を設置することで、モルタル12をパネル間空間9に充填して硬化させることができる。
【0044】
また、第2の実施形態においては、固定部材15と各防音壁4とは、嵌め合いにより固定するように説明したが、隣接する防音壁4間の伸縮を阻止することができれば如何なる手段で固定してもよく、例えば、図13に示すように、固定部材15を隣接する防音壁4にはめ込んだ後、固定部材15と各防音壁4とに対してボルトで貫通させることで、固定部材15と各防音壁4とを固定し、隣接する防音壁4間の伸縮を阻止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る橋梁の剛性増加方法が適用される橋梁の一例を示す図である。
【図2】図1に示す橋梁の防音壁の周辺部分を拡大した一部拡大図である。
【図3】図2の状態から目地を除去した状態を示した図である。
【図4】図3の状態から袋状部材を設置した状態を示した図である。
【図5】袋状部材の構成を示した斜視図である。
【図6】図3の状態において袋状部材にモルタルを充填している状態を示した図である。
【図7】図6の状態からモルタルが硬化して袋保持部材を取り外した状態を示した図である。
【図8】図7の状態から防音壁に鋼板を取り付けた状態を示した図である。
【図9】図1の状態から固定部材をはめ込もうとする状態を示した図である。
【図10】図9の状態から固定部材をはめ込んだ状態を示した図である。
【図11】弾性体を除去する他の実施形態を示した図である。
【図12】弾性体を除去する他の実施形態を示した図である。
【図13】固定部材をはめ込む他の実施形態を示した図である。
【符号の説明】
【0046】
1…橋梁、3…桁、4…防音壁(パネル)、4a…上端面(自由端)、9…パネル間空間、10…袋状部材、11…袋保持部材、12…モルタル(硬化型流動材)、15…固定部材、15a,15b…側壁部、15c…結合部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、桁に複数のパネルが固定されている橋梁の剛性増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や自動車等が通る橋梁は、鉄道等から発生する音の遮断や、橋梁からの落下を防止するために、構造部材である桁の床スラブに、防音壁や高欄などのパネルが固定されている。このパネルは、コンクリート等の硬化型流動材により形成されており、1つの桁に対して複数枚のパネルが固定されている。そして、パネルを桁に固定する際に、パネルのコンクリートが硬化してひび割れるのを防止するために、隣接するパネル間はエラスタイトのような弾性体が配置されている。そのため、パネル自体は剛体であるが、隣接するパネル間の動きは許容されるため、構造解析上では非構造部材となっている。
【非特許文献1】財団法人 鉄道総合技術研究所 編,平成16年4月 鉄道構造物等設計標準・同解説−コンクリート構造物,平成16年4年20月発行,p.110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、橋梁は、構造部材の剛性に基づいて設計されている(例えば非特許文献1参照)。そのため、非構造部材と位置付けられているパネルによって橋梁の剛性を増加させることは全く考えられておらず、橋梁の施工後に橋梁の剛性を増加させたい場合は、構造部材と位置付けられている桁などに鋼板等の補強部材を取り付ける補強工事を行っているため、作業が大規模となり、迅速に橋梁の剛性を増加させることができないという問題があった。
【0004】
本発明は、斯かる問題に鑑みて為されたものであり、橋梁の桁に固定されたパネルにより橋梁の剛性を増加させることができる橋梁の剛性増加方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る橋梁の剛性増加方法は、桁に複数のパネルが固定された橋梁の剛性増加方法であって、パネルの自由端部において、隣接するパネル間の動きを拘束することを特徴とする。
【0006】
この橋梁の剛性増加方法によれば、桁に固定されたパネルの自由端部が、隣接するパネル間において動きが拘束されるため、パネルは、桁と共に一体的に構成され、橋梁を構成する構造部材の一部として機能することになる。このため、桁に固定された既設のパネルにより、橋梁の剛性を増加させることが可能となる。
【0007】
更に、本発明に係る剛性増加方法は、隣接するパネルの自由端部間に硬化型流動材を充填することが好ましい。硬化型流動材とは、モルタルやコンクリートのように、流動性を有する材料であって経時変化等により硬化する材料をいう。この橋梁の剛性増加方法によれば、硬化型流動材の硬化により、隣接するパネル間の自由端部が固定され、桁に固定される全てのパネルが桁と共に一体となって、例えば、自動車や列車走行時等に、桁の変形を低減する。このように、桁に固定された既設のパネルを、その後、桁と共に構造部材として機能させることができるため、桁などの構造部材に対して補強工事を施すことなく、橋梁の剛性を向上させることが可能となる。また、硬化型流動材を充填するだけで既設の橋梁の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。
【0008】
この場合、隣接するパネルの間のパネル間空間に適合する形状の袋状部材をこのパネル間空間に設置し、その後、袋状部材に硬化型流動材を充填することが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、硬化型流動材を袋状部材に充填することで、硬化型流動材は、袋状部材によって流動域が規制され、袋状部材の形状に硬化する。このため、硬化型流動材がパネル間空間から大きくはみ出ることなく、硬化型流動材を橋梁のパネル間空間の形状に適合するように硬化させることができる。
【0009】
また、袋状部材は、パネルの一方の面側に設置される袋保持部材に保持されており、袋保持部材をパネルの一方の面側に設置することで、袋状部材をパネル間空間に設置することが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、袋状部材はパネルに設置される袋保持部材に保持されているため、袋状部材に硬化型流動材を充填する際に、袋状部材がパネル間空間から外れるのを防止することができる。更に、袋保持部材はパネルの一方の面に設置することで、袋状部材をパネル間空間に設置し、硬化型流動材を充填することができるため、パネルの一方の面側でのみ作業を行うことができる。そのため、例えば、橋梁の両端面にパネルが固定されている場合は、橋梁の内側のみで作業を行うことができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。
【0010】
また、袋状部材は、伸縮性を有し、硬化型流動材が充填されることによりパネル間空間に適合する形状になることが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、硬化型流動材を充填する前は袋状部材が収縮した状態となるため、収納性を向上させることができる。更に、硬化型流動材の充填により袋状部材がパネル間空間の形状に適合するように伸長するため、例えば、パネル間空間に凹凸等があったとしても、硬化型流動材はパネル間空間の形状に適合するように充填され、硬化型流動材とパネルとの密着性をより向上させることが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る剛性増加方法は、パネルの自由端側から、隣接するパネルを固定する固定部材をパネルに固定することが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、パネルの自由端側から固定部材をパネルにはめ込んで固定することで、隣接するパネルの自由端部が固定され、桁に固定される全てのパネルが桁と共に一体となって、例えば、自動車や列車走行時等に、桁の変形を低減する。このように、桁に固定された既設のパネルを、その後、桁と共に構造部材として機能させることができるため、桁などの構造部材に対して補強工事を施すことなく、橋梁の剛性を向上させることが可能となる。また、既設の橋梁に対して固定部材をはめ込んで固定させるだけで既設の橋梁の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。
【0012】
この場合、固定部材は、パネルを挟持する一対の側壁部と、一対の側壁部を結合する結合部とを備えることが好ましい。この橋梁の剛性増加方法によれば、固定部材を隣接するパネルにはめ込むことで、一対の側壁部がパネルを狭持して、隣接するパネルを一体的に固定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、橋梁の桁に固定されたパネルにより橋梁の剛性を向上させることがき、簡易的に橋梁の剛性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図1は、本発明に係る橋梁の剛性増加方法が適用される橋梁の一例を示す図、図2は、図1に示す橋梁の防音壁の周辺部分を拡大した一部拡大図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、橋梁1は、地面に立設される複数の橋脚2と、この橋脚2に掛け渡されて支持される複数の桁3と、この桁3に固定される複数の防音壁(パネル)4とを備えており、桁3の上面には、例えば、鉄道や自動車などが走行する線路や道路が敷設されている。
【0016】
桁3は、コンクリートなどによって橋梁1の延設方向に延びるように形成されている。桁3は、隣接する2本の橋脚2に掛け渡される桁部5と、桁部5の上面側に位置して線路や道路が敷設される床スラブ6とを備えている。床スラブ6の両端部には、防音壁4を固定するために、上面から飛び出て上方に延びる鉄筋7が橋梁1の延設方向に沿うように設置されている。
【0017】
防音壁4は、コンクリートなどによって板状に形成されている。防音壁4は、床スラブ6の両端部において、鉄筋7が埋め込まれるように、橋梁1の延設方向に沿うように固定されている。そして、防音壁4は、1つの桁3に対して複数枚の防音壁4が固定されており、隣接する防音壁4の間には、エラスタイトなどの弾性体8が挿入されている。防音壁4の固定は、床スラブ6の両端部において、橋梁1の延設方向に沿うと共に鉄筋7を内包する型枠を設置し、この型枠にコンクリートを充填する。そして、コンクリートの硬化により、防音壁4が床スラブ6に固定される。その後、1つの桁3に固定された隣接する2枚の防音壁4の間に弾性体8を挿入する。なお、隣接する防音壁4の間に挿入された弾性体8は、防音壁4の目地となっており、例えば、1cm程度の幅となっている。
【0018】
このように施工される防音壁4は、一端面が床スラブ6に固定されており、他端面である上端面4aが隣接する防音壁4との間で伸縮可能な自由端となっている。このため、桁3の上面を鉄道や自動車が走行すると、弾性体8の伸縮により隣接する防音壁4の間が伸縮するようになっている。
【0019】
次に、このようにして施工された橋梁1に対して、第1の実施形態に係る橋梁の剛性増加方法を適用する場合について、図面を参照しながら詳細に説明する。図3は、図2の状態から目地を除去した状態を示した図。図4は、図3の状態から袋状部材を設置した状態を示した図、図5は、袋状部材の構成を示した斜視図、図6は、図4の状態において袋状部材にモルタルを充填している状態を示した図、図7は、図6の状態からモルタルが硬化して袋保持部材を取り外した状態を示した図、図8は、必要により図7の状態から防音壁に鋼板を取り付けた状態を示した図である。
【0020】
まず、図3に示すように、施工された橋梁1から(図2参照)、防音壁4の目地となる弾性体8及びこの弾性体8の両側に接する2枚の防音壁4の一部分4bを除去し、パネル間空間9を形成する。パネル間空間9の幅、つまり、除去する弾性体8及びこの弾性体8の両側に接する2枚の防音壁4の一部分4bの幅は、後述する後工程や増加させる橋梁1の剛性等に鑑みて算出されるが、本実施形態では、後工程を鑑みて、例えば、3〜10cm程度が望ましい。なお、本実施形態では弾性体8及び防音壁4の一部分4bを除去することとしたが、弾性体8のみを除去してもよく、弾性体8の一部分のみを除去してもよい。
【0021】
パネル間空間9を形成すると、図4に示すように、このパネル間空間9に袋状部材10を設置する。
【0022】
袋状部材10は、図5に示すように、パネル間空間9の形状に適合する形状に形成されており、上部が開口した袋状に形成されている。また、袋状部材10は、多少の伸縮性を有する素材により形成されている。そして、袋状部材10は、内部にモルタル等の流動物が充填されると、伸長してパネル間空間9の形状に適合するようになっている。なお、袋状部材10は特に大きな伸縮性を有する必要はなく、内部にモルタル等の流動物が充填されたときにパネル間空間9の形状に適合するものであれば、如何なる形状、材質のものであってもよい。図5では、分かりやすくするため、パネル間空間9の形状と同一の形状をした袋状部材10を示している。
【0023】
また、袋状部材10は、防音壁4に設置される袋保持部材11に保持してもよい。この袋保持部材11は、薄い板状に形成されており、パネル間空間9の幅よりも広く、パネル間空間9及び防音壁4の高さよりも僅かに高く形成されている。そして、袋保持部材11は、一方の面に袋状部材10を保持している。なお、袋保持部材11は、袋状部材10を如何なる手段によって保持しても良いが、本実施形態では、袋状部材10の一部を袋保持部材11の一方の面に固定することで、袋状部材10を保持することとしている。
【0024】
そして、図4に戻り、このように形成される袋状部材10をパネル間空間9に設置する際は、まず、防音壁4の内側から、袋状部材10がパネル間空間9に収容されるように、袋保持部材をパネル間空間9に接する一対の防音壁4及び床スラブ6に袋保持部材11を取り付ける。なお、袋保持部材11は、取り外し可能なように防音壁4及び床スラブ6に取り付けるが、袋保持部材11を橋梁に取り付けたままの状態としても良い場合は、取り外しできないように取り付けても良い。
【0025】
袋状部材10を設置すると、図6に示すように、袋状部材10の中に流動状態のモルタル12を充填する。モルタル12は、袋状部材10の開口部から注入され、袋状部材10の最下部から最上部付近まで充填させる。その際、袋状部材10に充填されるモルタル12は、袋状部材10によりその流動域が制限されながら、その自重により両側の防音壁4に密着するまで袋状部材10を伸長させる。
【0026】
そして、モルタル12が袋状部材10に充填されると、図7に示すように、モルタル12は、時間の経過と共に乾燥し、袋状部材10を介して防音壁4に密着した状態で硬化する。
【0027】
モルタル12が硬化すると、袋保持部材11を防音壁4及び床スラブ6から取り外し、更に、袋保持部材11を袋状部材10から引き剥がす。なお、接着により袋保持部材11が袋状部材10を保持している場合、袋保持部材11を袋状部材10から引き剥がすことができる。その他の手段により袋保持部材11が袋状部材10を取り外し可能に保持している場合は、袋状部材10から引き剥がすことなく袋保持部材11を取り外すことができる。
【0028】
袋保持部材11を取り外すと、図8に示すように、防音壁4自体の剛性を増加させるために、必要により防音壁4の上端面4aに鋼板13を取り付ける。この鋼板13の取り付けは、防音壁4の剛性を増加することができれば如何なる手段によって取り付けてもよく、例えば接着やボルト締めなどによって取り付けてもよい。
【0029】
このようにして、橋脚2に掛け渡された桁3の床スラブ6に複数枚の防音壁4が固定された橋梁1は、隣接する防音壁4との間には硬化したモルタル12が配置され、更に、場合によって、各防音壁4の上端面4aに鋼板13が取り付けられた構造となる。
【0030】
このように、第1の実施形態によれば、モルタル12の硬化により、隣接する防音壁4間が固定され、隣接する防音壁4に対して向き合う方向の力F(図8参照)が作用しても、隣接する防音壁4間の伸縮動作が規制される。このように、1つの桁3に固定される全ての防音壁4がこの桁3と共に一体となって桁3の変形を低減するため、非構造部材として桁3に固定された既設の防音壁4を、その後、構造部材として機能させることができ、桁3などの構造部材に対して大規模な補強工事を施すことなく、橋梁1の剛性を向上させることが可能となる。また、目地となる弾性体8を除去してモルタル12などの硬化型流動材を充填するだけで既設の橋梁1の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となり、安価となる。
【0031】
また、第1の実施形態によれば、モルタル12を袋状部材10に充填することで、モルタル12は、袋状部材10によって流動域が規制され、袋状部材10の形状に硬化する。このため、モルタル12がパネル間空間9から大きくはみ出ることなく、モルタル12をパネル間空間9の形状に適合するように硬化させることができる。
【0032】
また、第1の実施形態によれば、袋状部材10は防音壁4に設置される袋保持部材11に保持されているため、袋状部材10を容易にパネル間空間9に設置することができ、その後、袋状部材10にモルタルを充填する際に、袋状部材10がパネル間空間9から外れるのを防止することができる。更に、袋保持部材11は防音壁4の内側の面に設置するだけで、袋状部材10の設置とモルタル12の充填作業を行うことができるため、作用性を向上させることが可能となり、より簡易且つ迅速に作業を行うことが可能となる。また、袋保持部材11は、防音壁4に設置した状態で防音壁4の上端面4aよりも僅かに上方に飛び出しているため、袋保持部材11を防音壁4及び袋状部材10から取り外しやすくなる。
【0033】
また、第1の実施形態によれば、袋状部材10は伸縮性を有することで、モルタル12を充填する前は袋状部材10が収縮した状態となるため、収納性を向上させることができる。更に、モルタル12の充填により袋状部材10はパネル間空間9の形状に適合するように伸長するため、例えば、パネル間空間9に凹凸等があったとしても、モルタル12はパネル間空間9の形状に適合するように充填され、モルタル12と防音壁4との密着性をより向上させることが可能となる。
【0034】
また、第1の実施形態によれば、隣接する防音壁4の間に形成するパネル間空間9の幅や厚さを変えたり、パネル間空間9に充填するモルタル12の量を変えたりすることで、隣接する防音壁4間の剛性が変わるため、橋梁1の剛性の増加量を調整することが可能となる。
【0035】
次に、上述した図1および図2に示す橋梁1に対して、第2の実施形態に係る橋梁の剛性増加方法を適用する場合について、図面を参照しながら詳細に説明する。図9は、図1の状態から固定部材をはめ込もうとする状態を示した図、図10は、図9の状態から固定部材をはめ込んだ状態を示した図である。
【0036】
まず、図9に示すように、施工された橋梁1において(図2参照)、防音壁4の上端面4a側から、隣接する防音壁4を固定して隣接する防音壁4間の動きを規制する固定部材15を、隣接する2枚の防音壁4を挟み込んで掛け渡されるようにはめ込む。
【0037】
固定部材15は、僅かに弾性を有する鋼材や樹脂により形成されており、防音壁4にはめ込む側が開口した断面コの字型に形成されている。そして、固定部材15は、固定部材15の両端部を形成して防音壁4を挟持する一対の側壁部15a,15bと、この一対の側壁部15a,15bを結合する結合部15cと、を備えている。この一対の側壁部15a,15bの間隔は、嵌め合いにより防音壁4を挟持できるように、防音壁4の厚さよりも僅かに狭くなっている。また、固定部材15の長さは、隣接する防音壁4を挟持できるように、隣接する防音壁4の目地となる弾性体8の幅よりも十分に長く形成されている。
【0038】
その後、図10に示すように、一対の側壁部15a,15bに挟まれる結合部15cの内面が防音壁に当接するまで、固定部材15を隣接する防音壁4にはめ込む。
【0039】
このように、第2の実施形態によれば、上端面4a側から固定部材15を防音壁4にはめ込むことにより、隣接する防音壁4間の上端面4a側の部分(自由端部)が固定され、隣接する防音壁4に対して向き合う方向の力F(図10参照)が作用しても、隣接する防音壁4間の伸縮動作が規制される。このように、1つの桁3に固定される全ての防音壁4が桁3と共に一体となって桁3の変形を低減するため、非構造部材として桁3に固定された既設の防音壁4を、その後、桁3と共に構造部材として機能させることができ、桁3などの構造部材に対して大規模な補強工事を施すことなく、橋梁1の剛性を向上させることが可能となる。また、既設の橋梁1に対して固定部材15をはめ込むだけで既設の橋梁1の剛性を増加させることができるため、作業性を向上させることができ、簡易且つ迅速に作業を行うことが可能で、安価に施工できる。
【0040】
また、第2の実施形態によれば、一対の側壁部15a,15bの間隔を防音壁4の厚さよりも僅かに短い間隔に形成することで、固定部材15を防音壁4にはめ込むと、側壁部15a,15bと各防音壁4とが嵌め合いにより固定され、隣接する防音壁4を一体的に固定することができる。更に、一対の側壁部15a,15bで防音壁4を一体的に固定しながら、結合部15cが隣接する防音壁4の上端面4aに支えられるため、固定部材15が防音壁4から落下するのを防止することが可能となる。
【0041】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1の実施形態においては、弾性体8及び防音壁4の一部分4bは防音壁4における上端面4aから床スラブ6に固定される下端面まで除去するように説明したが、要求される桁の剛性に応じて防音壁4における上端面4a側の一部分のみを除去すればよく、例えば、図11に示すように、防音壁4における上端面4aから床スラブ6側に向けて所定距離だけ、弾性体8及び防音壁4を除去しても、第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0042】
また、第1の実施形態においては、弾性体8及び防音壁4を奥行方向全域に渡り除去するように説明したが、隣接する防音壁4との間がモルタルで埋められていれば良く、例えば、図12に示すように、弾性体8及び防音壁4を奥行方向α半分まで除去し、この除去した空間にモルタルを充填して硬化させるようにしても良い。
【0043】
また、第1の実施形態においては、パネル間空間9に挿入された袋状部材10にモルタル12を充填するように説明したが、必ずしも袋状部材10を設置する必要はなく、例えば、パネル間空間9を覆うように隣接する防音壁4の両面に板状の型枠を設置することで、モルタル12をパネル間空間9に充填して硬化させることができる。
【0044】
また、第2の実施形態においては、固定部材15と各防音壁4とは、嵌め合いにより固定するように説明したが、隣接する防音壁4間の伸縮を阻止することができれば如何なる手段で固定してもよく、例えば、図13に示すように、固定部材15を隣接する防音壁4にはめ込んだ後、固定部材15と各防音壁4とに対してボルトで貫通させることで、固定部材15と各防音壁4とを固定し、隣接する防音壁4間の伸縮を阻止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る橋梁の剛性増加方法が適用される橋梁の一例を示す図である。
【図2】図1に示す橋梁の防音壁の周辺部分を拡大した一部拡大図である。
【図3】図2の状態から目地を除去した状態を示した図である。
【図4】図3の状態から袋状部材を設置した状態を示した図である。
【図5】袋状部材の構成を示した斜視図である。
【図6】図3の状態において袋状部材にモルタルを充填している状態を示した図である。
【図7】図6の状態からモルタルが硬化して袋保持部材を取り外した状態を示した図である。
【図8】図7の状態から防音壁に鋼板を取り付けた状態を示した図である。
【図9】図1の状態から固定部材をはめ込もうとする状態を示した図である。
【図10】図9の状態から固定部材をはめ込んだ状態を示した図である。
【図11】弾性体を除去する他の実施形態を示した図である。
【図12】弾性体を除去する他の実施形態を示した図である。
【図13】固定部材をはめ込む他の実施形態を示した図である。
【符号の説明】
【0046】
1…橋梁、3…桁、4…防音壁(パネル)、4a…上端面(自由端)、9…パネル間空間、10…袋状部材、11…袋保持部材、12…モルタル(硬化型流動材)、15…固定部材、15a,15b…側壁部、15c…結合部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁に複数のパネルが固定された橋梁の剛性増加方法であって、
前記パネルの自由端部において、隣接する前記パネル間の動きを拘束することを特徴とする橋梁の剛性増加方法。
【請求項2】
前記隣接するパネルの自由端部間に硬化型流動材を充填することを特徴とする請求項1に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項3】
前記隣接するパネルの間のパネル間空間に適合する形状の袋状部材を前記パネル間空間に設置し、
その後、前記袋状部材に前記硬化型流動材を充填することを特徴とする請求項2に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項4】
前記袋状部材は、前記パネルの一方の面側に設置される袋保持部材に保持されており、
前記袋保持部材を前記パネルの一方の面側に設置することで、前記袋状部材を前記パネル間空間に設置することを特徴とする請求項3に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項5】
前記袋状部材は、伸縮性を有し、前記硬化型流動材が充填されることにより前記パネル間空間に適合する形状になることを特徴とする請求項3又は4に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項6】
前記パネルの自由端側から、隣接する前記パネルを固定する固定部材を前記パネルに固定することを特徴とする請求項1に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項7】
前記固定部材は、前記パネルを挟持する一対の側壁部と、前記一対の側壁部を結合する結合部とを備えることを特徴とする請求項6に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項1】
桁に複数のパネルが固定された橋梁の剛性増加方法であって、
前記パネルの自由端部において、隣接する前記パネル間の動きを拘束することを特徴とする橋梁の剛性増加方法。
【請求項2】
前記隣接するパネルの自由端部間に硬化型流動材を充填することを特徴とする請求項1に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項3】
前記隣接するパネルの間のパネル間空間に適合する形状の袋状部材を前記パネル間空間に設置し、
その後、前記袋状部材に前記硬化型流動材を充填することを特徴とする請求項2に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項4】
前記袋状部材は、前記パネルの一方の面側に設置される袋保持部材に保持されており、
前記袋保持部材を前記パネルの一方の面側に設置することで、前記袋状部材を前記パネル間空間に設置することを特徴とする請求項3に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項5】
前記袋状部材は、伸縮性を有し、前記硬化型流動材が充填されることにより前記パネル間空間に適合する形状になることを特徴とする請求項3又は4に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項6】
前記パネルの自由端側から、隣接する前記パネルを固定する固定部材を前記パネルに固定することを特徴とする請求項1に記載の橋梁の剛性増加方法。
【請求項7】
前記固定部材は、前記パネルを挟持する一対の側壁部と、前記一対の側壁部を結合する結合部とを備えることを特徴とする請求項6に記載の橋梁の剛性増加方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−62771(P2009−62771A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232974(P2007−232974)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】
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