説明

橋梁上のレール走行車両のための固定式軌道

本発明は、橋梁上のレール走行車両のための固定式軌道に関する。当該固定式軌道は橋梁上部構造プレート(2)と、当該橋梁上部構造プレートを被覆するとともに、長手方向隆起部とストッパとを有している支持プレート(1)と、凹所を有する上部構造プレート(8)と、から構成され、当該上部構造プレート上に、レールが固定手段によって設けられている。本発明は、長手方向の補強を簡易化するとともに、型枠および製造に必要とされるコストを減らし、かつ、より長いプレートの製造を可能にする構成を提供することを課題とする。これらの課題は本発明により、以下のようにして実現される。すなわち、前記長手方向凹所(7)を有する前記支持プレート(1)は、単独のストッパ(5)を、当該ストッパの上に設けられる前記上部構造プレート(8)の中心の高さに有しており、前記支持プレート(1)の前記長手方向凹所(7)は、当該領域において、60から100cmの長さで前記ストッパ(5)よって中断されており、前記上部構造プレート(8)は、長手方向隆起部(4)を有しており、当該長手方向隆起部は当該長手方向隆起部の中心領域において、65cmから105cmの長さで凹所(6)によって中断されており、当該凹所に前記支持プレート(1)の前記ストッパ(5)が形状接続的に係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋梁上のレール走行車両のための固定式軌道に関する。当該固定式軌道は橋梁上部構造プレートと、当該橋梁上部構造プレートを被覆するとともに、長手方向隆起部とストッパとを有している支持プレートと、凹所を有する上部構造プレートと、から構成され、当該上部構造プレート上に、レールが固定手段によって設けられている。
【背景技術】
【0002】
鉄道の高速運転区間では、近年、いわゆる固定式軌道が優勢になりつつある。当該構成において、レールはバラスト道床に設けられている枕木の上に固定されているのではなく、鉄筋コンクリート製の支持プレートに載置されている。高速区間に対して固定式軌道を用いる理由は、位置の安定性が向上することと、維持期間が比較的長いために利用可能性が増大することとである。
【0003】
従来、固定式軌道を橋梁上に敷設することには問題があった。連続的に溶接されたレールを備える固定式軌道において、個々の断面は、実際にいかなる温度においても、ほとんど移動不能に静止したままであり、温度の変化は、レールにおいて応力の変化を引き起こすにすぎない。橋梁構造物において温度変化は、長さの変化を生じさせるため、固定式軌道を橋梁と組み合わせることは、解決が困難な課題となっている。
【0004】
上記の課題を解決するために、特許文献1において以下の提案がなされている。すなわち、橋梁構造物上に支持プレートを、長手方向に移動可能に配設し、それによって橋梁構造物は固定式軌道の下で移動可能となる。列車がブレーキをかける際、非常に大きくなる可能性のある力は、支持プレートにおいて受容され、かつ、伝達されるが、当該支持プレートはこの力を橋梁上部構造に放出しなければならない。橋梁と、連続するレールとに対するブレーキ力の配分を調整することは、非常に困難である。
【0005】
このような問題を回避するために、橋梁上のレール走行車両のための固定式軌道であって、「レダ」システムとして知られているものが開発された。当該システムでは、表面シールを保護するために、橋梁上部構造プレートの上に支持プレートが設けられ、当該支持プレートは、レールの領域内に、比較的大きな厚みの補強ストリップを有しており、当該補強ストリップには、長手方向に互いに離間した状態で、凹所が設けられている。これらの補強ストリップの上には、上部構造プレートが設けられており、当該上部構造プレートは当該上部構造プレートの下側の突出部によって、支持プレートの補強ストリップにおける凹所に係合し、それによって当該支持プレートと形状接続的に接続されている。このような既知の固定式軌道の製造は、時間及び経費がかかり、著しく材料を消費する必要があるので、レールの一方の側を高くする場合、重量と構造高さが大きくなりすぎる。
【0006】
既知の特許文献2では、橋梁上のレール走行車両のための固定式軌道であって、橋梁上部構造プレートと、支持プレートと、上部構造プレートと、から成るものが記載されている。当該文献において上部構造プレートは、個々の隆起部に対する凹所を有しており、当該隆起部はそれぞれ支持プレートの長手方向端部に設けられている。当該構成において、上部構造プレートの凹所は、支持プレートの隆起部を囲繞している。当該構成では、長手方向に手間のかかる補強を行う必要があり、しかも非常に精確な作業が要求される。そのため、作業と時間に関して多大なコストが必要となる。さらに、支持プレートの補強ストライプと、上部構造プレートとは、それぞれ最大で6mというわずかな長さでしか実現されない。これによって、橋梁上に多数のプレートが必要とされ、かつ、コンクリートプレートおよびストッパに対して手間のかかる型枠および補強の作業を行わなければならない。ストッパをそれぞれ、当該構成のプレートの端部に配置することによって、各プレートは二つのストッパを有さなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第2443770号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第19620731号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、長手方向の補強を簡易化するとともに、型枠および製造に必要とされるコストを減らし、かつ、より長いプレートの製造を可能にする構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題は本発明により、以下の点によって実現される。
すなわち、長手方向凹所(4)を有する支持プレート(1)は、ストッパ(5)を、当該ストッパの上に設けられる上部構造プレート(8)の中心の高さに有しており、前記支持プレート(1)の前記長手方向凹所(7)は、当該領域において、60から100cmの長さで前記ストッパ(5)によって中断されており、前記上部構造プレート(8)は、長手方向隆起部(4)を有しており、当該長手方向隆起部は当該長手方向隆起部の中心領域において、65cmから105cmの長さで凹所(6)によって中断されており、当該凹所に前記支持プレート(1)の前記ストッパ(5)が形状接続的に係合している。
【0010】
前記長手方向隆起部(4)の縁には、帯状層が設けられており、帯状エラストマーが帯状層として、前記長手方向隆起部(4)の縁に接着されている。当該帯状層は1.0から1.5cmの厚みを有している。
【0011】
支持プレート(1)の下には保護コンクリート層(3)が設けられている。当該保護コンクリート層は好適に、C25/35の最小コンクリート等級および5から11cmの厚みを有している。
【0012】
橋梁上部構造プレート(2)と、支持プレート(1)または保護コンクリート層(3)との間には、シール(11)を設けることができる。当該シールはアスファルトシートによって実現されており、橋梁上部構造プレート(2)の保護のために利用される。
【0013】
支持プレート(1)は、保護コンクリート層(3)に対向する当該支持プレートの側に、互いに300から800cmの距離を有して横断方向溝(9,10)を有しており、当該横断方向溝は8から12cmの幅を有するとともに、支持プレート(1)の全幅にわたって実現されている。
【0014】
凹所(6)を有する長手方向隆起部(4)が支持プレート(1)に設けられ、ストッパ(5)を有する長手方向凹所(7)が上部構造プレート(8)に設けられていてもよい。これによって、橋梁の個々の条件および個々の応力の負担に対して、構成を適合させる可能性を向上させることができる。
【0015】
[本発明の有利点]
橋梁上のプレートの長さを増大させ、それによって橋梁上のプレートの長さは30mにまでなり得る。
長手方向の補強として必要なのは、簡単で廉価なもののみとなり、切断および湾曲の必要が減少する。
プレートが必要とする補強は全体として少なくなる。(ストッパに対しての補強が少なくなる。)
型枠と補強およびその他の消費のためのコストがおよそ50%減少する。
支持プレートの中心にストッパを設けることによって、支持プレートごとに設けるべきストッパは一つだけで済み、上部構造プレートに凹所を設ければよい。
従来の工法においてはストッパが二つ設けられ、当該二つのストッパのそれぞれが、プレートの各端部に設けられているが、ストッパを二つでなく、一つだけ設けることによって、上部構造プレートと橋梁上部構造プレートとの間に、長さが変化した際に、拘束が生じない。
長手方向における上部構造プレートの「遊走」が避けられる。
ストッパを中央に配置することによって、上部構造プレートは、温度の作用に基づく膨張もしくは収縮を無制限に行うことができる。
上部構造プレートおよびストッパの数が、橋梁上部構造の長さに対して、著しく減少する。(例えば6mの長さのプレートに対して二つのストッパを用いる代わりに、18mの長さのプレートに対して一つのストッパを用いる。)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】固定式軌道の橋梁構造の長手方向断面図である。
【図2】プレートの端部領域における橋梁の断面図である。
【図3】プレートの中心における橋梁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態に基づいて、より詳細に説明する。
【0018】
支持プレート1は、橋梁上部構造プレート2に、保護コンクリート層3を介して載置されている。支持プレート1は長手方向凹所7を有するとともに、中央領域にストッパ5を有しており、当該ストッパは上部構造プレート8の長手方向隆起部4の中央に設けられた凹所6に係合している。支持プレート1は、互いに300から800cmの距離を有して横断方向溝9;10を有しており、当該横断方向溝はおよそ10cmの幅で実現されている。横断方向溝は橋梁上部構造プレート2の横断方向の排水に利用される。
【0019】
支持プレート1と、橋梁上部構造プレート2または保護コンクリート層3との間には、シール11が設けられている。支持プレート1は分離面12を介して、上部構造プレート8から分離されている。これによって、二つのプレートは温度の影響を受ける際に、互いに異なるように移動することができ、それによって構造物におけるクラックを回避することができる。長手方向隆起部4の縁には、帯状層が、帯状エラストマー(t≒10mm)として接着されている。
【符号の説明】
【0020】
1 支持プレート
2 橋梁上部構造プレート
3 保護コンクリート層
4 長手方向凹所、長手方向隆起部
5 ストッパ
6 凹所
7 長手方向凹所
8 上部構造プレート
9,10 横断方向溝
11 シール
12 分離面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁上のレール走行車両のための固定式軌道であって、当該固定式軌道は橋梁上部構造プレート(2)と、当該橋梁上部構造プレートを被覆するとともに、長手方向凹所とストッパとを有している支持プレート(1)と、長手方向隆起部を有する上部構造プレート(8)と、から構成され、当該上部構造プレート上に、レールが固定手段によって設けられている固定式軌道において、
前記長手方向凹所(4)を有する前記支持プレート(1)は、前記ストッパ(5)を、当該ストッパの上に設けられる前記上部構造プレート(8)の中心の高さに有しており、前記支持プレート(1)の前記長手方向凹所(7)は、当該領域において、60から100cmの長さで前記ストッパ(5)よって中断されており、前記上部構造プレート(8)は、長手方向隆起部(4)を有しており、当該長手方向隆起部は当該長手方向隆起部の中心領域において、65cmから105cmの長さで凹所(6)によって中断されており、当該凹所に前記支持プレート(1)の前記ストッパ(5)が形状接続的に係合していることを特徴とする固定式軌道。
【請求項2】
前記長手方向隆起部(4)の縁には、帯状層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。
【請求項3】
帯状エラストマーが帯状層として、前記長手方向隆起部(7)の縁に接着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の固定式軌道。
【請求項4】
前記支持プレート(1)の下には、保護コンクリート層(3)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。
【請求項5】
橋梁上部構造プレート(2)と、前記支持プレート(1)または前記保護コンクリート層(3)との間には、シール(11)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。
【請求項6】
前記支持プレート(1)には、前記ストッパ(5)に対して、互いにおよそ600から800cmの距離を有してそれぞれ横断方向溝(9;10)が設けられており、当該横断方向溝は8から12cmの幅を有するとともに、前記支持プレート(1)の全長にわたって実現されており、かつ、前記長手方向隆起部(4)を通過して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。
【請求項7】
ストッパ(5)を有する前記長手方向凹所(7)が前記上部構造プレート(8)の下側に設けられ、凹所(6)を有する前記長手方向隆起部(4)が前記支持プレート(1)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。
【請求項8】
前記ストッパ(5)は、前記上部構造プレート(8)の長さの中心に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。
【請求項9】
前記上部構造プレート(8)と前記支持プレート(1)との間に、分離層が、ウェブおよび/またはマットおよび/またはコーティングとして組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。
【請求項10】
前記上部構造プレート(8)はおよそ30mの長さまで実現されていることを特徴とする請求項1に記載の固定式軌道。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−518971(P2011−518971A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506581(P2011−506581)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001547
【国際公開番号】WO2009/135554
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(508170830)デーベー・ネッツ・アーゲー (4)
【Fターム(参考)】