橋梁用ストッパ装置
【課題】既存の鋼製ストッパ棒を使用でき、しかもこれに嵌設する鋼製筒状体を従来の設計手法で設計でき、しかも簡単な構造の橋梁用ストッパ装置を提供すること。
【解決手段】橋台または橋脚等の下部構造物1に鋼製ストッパ棒2の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒2の上部を、上部構造物3に埋め込み固定されるアンカーキャップ4に収容させるようにした橋梁用ストッパ装置5において、上部構造物3より下側の鋼製ストッパ棒中間部分6に、外径寸法を大きくした拡径部7が設けられ、かつ拡径部7の下部は下部構造物1に埋め込まれている。
【解決手段】橋台または橋脚等の下部構造物1に鋼製ストッパ棒2の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒2の上部を、上部構造物3に埋め込み固定されるアンカーキャップ4に収容させるようにした橋梁用ストッパ装置5において、上部構造物3より下側の鋼製ストッパ棒中間部分6に、外径寸法を大きくした拡径部7が設けられ、かつ拡径部7の下部は下部構造物1に埋め込まれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋台または橋脚等の下部構造物と桁等の上部構造物とにわたって設けられる橋梁用ストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁における変位制限装置(移動制限装置)や落橋防止装置として、アンカーバーすなわち垂直な鋼製ストッパ棒で、その下部を橋台または橋脚等の下部構造物(下部工)に埋め込み固定し、また桁等の上部構造体側に前記ストッパ棒の上部をアンカーキャップに僅かな間隙を介して収容する固定式構造形態のストッパ装置あるいは、鋼製ストッパ棒とアンカーキャップとの間に橋軸方向等に主桁の伸縮量程度の比較的大きな隙間を設けて収容する可動式構造形態のストッパ装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
変位制限装置(移動制限装置)や落橋防止装置におけるストッパ装置における鋼製ストッパ棒(アンカーバー)は、例えば、せん断応力度で照査され、前記非特許文献1の道路橋支承便覧によると、せん断応力度で照査した場合の耐荷重を確保するためには、上部構造物と下部構造物との間の間隙を鋼製ストッパ棒(アンカーバー)の直径寸法の1/2以下とする必要がある旨記載されている。
【0004】
その理由は、前記のように鋼製ストッパ棒(アンカーバー)の設計では、許容せん断応力度をもって設計されているが、図14に示すストッパ装置18のように、上部構造物3と下部構造物1との間のすき間間隔Lが大きくなると、鋼製ストッパ棒2における下部構造物1と上部構造物3との間の部分における鋼製ストッパ棒中間部分6の曲げスパンが増大し、鋼製ストッパ棒2の直径寸法を大きくしない場合には、地震時に上下の構造物1,3に水平力が作用した場合、鋼製ストッパ棒2の耐力が低下する。
【0005】
そのため、すき間間隔Lが大きくなった分、鋼製ストッパ棒2の直径寸法を大きくする必要が生じ、従来は鋼製ストッパ棒2の直径寸法を大きして対応したりしていた。
【0006】
また、前記のすき間間隔Lは、上下の構造物1,3間に介在される支承装置8の高さHによって決まり、また、前記のすき間間隔Lは、橋軸方向に並行して伸びるように、かつ橋軸直角方向に間隔をおいて配置される主桁9間の間隔が広く、鋼製ストッパ棒2の周りのスペースが充分ある場合には、下部構造物(下部工)1上面に鋼製ストッパ棒2を支承するコンクリート製支承部(図示を省略した)を一体に立ち上げたり、主桁9および端部横桁10等の上部構造物3の下部を打ち下ろしてコンクリート製支承部(図示を省略した)を一体に設けたりすることにより、下部構造物1と上部構造物3間のすき間間隔Lを狭くしている。
【0007】
例えば、図示を省略するが、狭い作業空間で鋼製ストッパ棒2の周りのコンクリートを打設したり、上部の型枠によりコンクリート製支承部を形成すべく下げるための凹溝を設けたりしていた。
【0008】
しかし、プレキャストホロー桁9a等の主桁9のように横方向に隣り合う主桁間隔Xが狭く、上下両端部の取付け用鋼板16の間に一体にゴム層17を有する弾性支承装置8aのようなタイプBの支承装置(特徴:上部構造物の移動量をゴム層のせん断変形に依存するため、ゴム厚寸法が大きくなり、支承高さが大きくなる傾向にある)8を用いる場合には、前記主桁9またはこれらの端部を結合する端部横桁10を含めた上部構造物3と、下部構造物1とのいずれか側にコンクリート製支承部を設けること自体が困難であるため、コンクリート製支承部を設けてアンカーバー周りをカバーすることが困難であり、コンクリート製支承部を設けない場合は、上下部構造物のすき間間隔Lが大きくなり、鋼製ストッパ棒2の直径の1/2以下にすることは難しいため、逆に鋼製ストッパ棒2の部材全長の直径の太い太径のものを使用することで対応することになる。
【0009】
また、前記のように鋼製ストッパ棒2をその全長に渡って太径の鋼棒を使用しないように改良するストッパ装置として、図11〜図13に示すようなストッパ装置18aも考えられる。このストッパ装置18aの構造は、橋台または橋脚等の下部構造物1に鋼製ストッパ棒2の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒2の上部を、上部構造物3に埋め込み固定されるアンカーキャップ4に収容させるようにした橋梁用ストッパ装置において、下部構造物1と上部構造物3との間の部分におけるストッパ棒中間部分6に鋼製筒状体7aが嵌合され、鋼製筒状体7aを下部構造物1に載置するようにした橋梁用ストッパ装置18aである。
【0010】
前記のような橋梁用ストッパ装置18aでは、鋼製筒状体7aで曲げ力を負担させるようにし、この部分では鋼製ストッパ棒2を支承して曲げ変形しないように拘束し、鋼製ストッパ棒2の曲げ力の負担を低減すると共に、鋼製筒状体7aの上端部付近の鋼製ストッパ棒2にせん断力を負担させることを期待したストッパ装置18aである。
【非特許文献1】道路橋支承便覧 平成3年7月10日 P180
【非特許文献2】道路橋示方書 V 耐震設計編 平成14年3月7日 P241、P256
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、図11に示すように、前記のように改良されたストッパ装置18aでは、地震時等に橋軸方向等に水平力が作用して、上部構造物3と下部構造物1とが相対的に水平変位した場合、鋼製筒状体7aの下部が固定されていないため、上向き力が作用すると、鋼製筒状体7aは鋼製ストッパ棒2の長手方向にずり上がる恐れのある構造であり、僅かに鋼製筒状体7aの自重のみが下向きに作用しているのみであるため、鋼製ストッパ棒2の曲げ変形を拘束できない恐れがある。
【0012】
本発明は、鋼製筒状体等の拡径部が鋼製ストッパ棒に対してずり上がることなく、しかも鋼製筒状体等の拡径部により曲げ抵抗を負担し鋼製ストッパ棒の曲げ力の負担を低減し、鋼製筒状体等の拡径部により本来期待される作用効果を確実に発揮することができ、また、前記従来のように鋼製ストッパ棒をその部材全長にわたり太径の鋼製部材を使用することなく、しかもこれに嵌設等の手段により設ける鋼製筒状体等の拡径部を従来の設計手法(曲げ応力度の照査)で設計できる簡単な構造の橋梁用ストッパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の橋梁用ストッパ装置においては、橋台または橋脚等の下部構造物に鋼製ストッパ棒の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒の上部を、上部構造物に埋め込み固定されるアンカーキャップに収容させるようにした橋梁用ストッパ装置において、上部構造物より下側の鋼製ストッパ棒中間部分に、外径寸法を大きくした拡径部が設けられ、かつ拡径部の下部は下部構造物に埋め込まれていることを特徴とする。
【0014】
また、第2発明では、第1発明の橋梁用ストッパ装置において、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に、嵌合配置、または溶接により固定、あるいはねじ接合もしくは一体に設けられるかのいずれか一つの手段により設けられることで、拡径部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、第3発明では、第1または第2発明の橋梁用ストッパ装置において、拡径部7の外径寸法Dは、下部構造物1と上部構造物3との間の間隙寸法Lを考慮した曲げ耐力を確保可能な寸法とされていることを特徴とする。
【0016】
また、第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの橋梁用ストッパ装置において、拡径部7の上端部と上部構造物3の下面との間に弾性パッキンが介在されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明によると、単に、拡径部を鋼製ストッパ棒の中間部に設けると共に、拡径部の下部を下部構造物に埋め込むだけで、鋼製ストッパ棒の中間部を拡径部により拡大して剛性を高め、さらに拡径部により地震時の曲げ力に対して抵抗できるように剛性を高めることができ、この部分での鋼製ストッパ棒に作用する曲げ力の負担(曲げ応力)を低減することができ、拡径部の上端部付近から鋼製ストッパ棒にせん断力を負担させるようにすることができる。また、単に拡径部を鋼製ストッパ棒に設けると共にその下部を下部構造物に埋め込み配置するので作業性がよく、しかも鋼製ストッパ棒の耐力を向上させることができる。また、本発明によると、例えば、既存の鋼製ストッパ棒を使用してこれに拡径部を付加すると本発明のストッパ装置に変更でき、さらに拡径部を従来の設計手法(曲げ応力度の照査)で設計でき、しかも拡径部を付加する簡単な構造の橋梁用ストッパ装置とすることができる。また、拡径部を別体とした場合でも、拡径部は下部構造物に埋め込まれているので、従来のように鋼製ストッパ棒が傾斜することはなく、拡径部が鋼製ストッパ棒に対してずり上がる恐れを排除することができる。
【0018】
第2発明によると、拡径部は、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に嵌合されて形成されているか、または、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に溶接により固定されて設けられているか、あるいは鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒にねじ接合されて設けられているか、もしくは鋼製ストッパ棒に一体に設けられるかのいずれか一つの手段により設けられているので、拡径部を設けることが容易であり、各種形態の拡径部が可能であるため自由度も高い、安価な橋梁用ストッパ装置となる。
【0019】
第3発明によると、単に拡径部7の外径寸法Dを、下部構造物と上部構造物との間隙寸法Lを考慮した曲げ耐力を確保可能な寸法とするだけで、鋼製ストッパ棒の全長に渡り太径の鋼製部材とすることなく、曲げモーメントが大きくなり剛性を高める必要のある鋼製ストッパ棒の中間部の外径寸法を間接的に大きすることができ、また、前記許容せん断応力度で設計する場合よりは、拡径部7の外径Dが間隙寸法Lの2倍以下に小さくできる場合もあるので、現場に応じて経済的な設計とすることができる。
【0020】
第4発明によると、拡径部と上部構造物との下面との間で、拡径部の上に弾性パッキンを介在させるだけで、拡径部と上部構造物とのクリアランスを確保して、上部構造物と拡径部とが干渉するのを防止することができる。そのため、例えば、上部構造物の撓み等による支承装置を支点とする回転時に、上部構造物と拡径部とが干渉するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0022】
図1〜図7は本発明の実施形態のストッパ装置5を構成するまでの施工手順を示すものであって、まず、図1および図2に示すように、橋台または橋脚等の下部構造物1上に橋軸直角方向に間隔をおいて前記と同様な弾性支承装置8a(8)が設置される。
【0023】
下部構造物1の上面には、予め、主桁9間の中央に、アンカー孔11が削孔され、弾性支承装置8が架設された後、あるいは弾性支承装置8および主桁9を架設する前に、前記アンカー孔11に、アンカーバーとして垂直に鋼製ストッパ棒2の下部が収容配置され、また、前記鋼製ストッパ棒2の中間部に嵌設された鋼製筒状体からなる筒状の拡径部7の下部が、前記アンカー孔11内に配置されて、アンカー孔11内に充填された無収縮モルタル12により立設固定されている。
【0024】
前記の拡径部7は、本発明では、鋼製ストッパ棒2の中間部にその軸方向に断面が拡大するように設けられる部分をいう。したがって、拡径部7は、鋼製ストッパ棒2と直接一体に設けたり、または鋼製ストッパ棒2とは別体のものを嵌設または嵌合固定あるいはねじ込みまたは溶接等により設ける場合も含み、後記するように各種の形態が可能である。
【0025】
鋼製筒状体からなる拡径部7とした場合の設置にあたっては、拡径部7を設置予定位置の下面レベル付近まで、無収縮モルタル12をアンカー孔11内に充填して鋼製ストッパ棒2を固定した状態で、前記拡径部7を鋼製ストッパ棒2に嵌設して、さらに前記拡径部7の下部を埋め込むように、無収縮モルタル12を拡径部7の周りに充填して、拡径部7を下部構造物1に埋め込み固定してもよい。
また、鋼製ストッパ棒2の中間部の所定の位置に拡径部7を嵌設し、拡径部7を鋼製ストッパ棒2に対し、適宜のクランプ金具により位置保持した状態で、鋼製アンカー棒2および拡径部7の下部をアンカー孔11内に配置して、無収縮モルタル12を充填して下部構造物1側に埋め込み固定してもよい。なお、拡径部7と無収縮モルタル12との付着を高めるために、拡径部7の外周面を粗面としてもよい。
【0026】
前記の拡径部7の下部を下部構造物1側に埋め込み配置または埋め込み固定することは、拡径部7の横方向の位置を固定し、地震時等において水平力が上部構造物3(または下部構造物1)に作用した場合に、拡径部7により支承して鋼製ストッパ棒2が曲げ変形を起こさないようにし、また、従来のように鋼製ストッパ棒2の曲げ変形の恐れおよび鋼製ストッパ棒2の軸方向に鋼製筒状体等の拡径部7がずり上がる恐れを排除する上で重要である。鋼製筒状体等の拡径部7を鋼製ストッパ棒2に嵌合配置する場合の形態として、拡径部7の内周面と鋼製ストッパ棒2の外周面との間隙は僅かな間隙があってもよく、前記間隙に接着剤等の充填材を充填して拡径部7を鋼製ストッパ棒2に一体に固定してもよい。
【0027】
前記の拡径部7は、ストッパ棒挿通孔を除けば、ほぼ中実状の鋼製筒状体であり、曲げ剛性およびせん断剛性を高めている。
【0028】
前記拡径部7の内径は、鋼製ストッパ棒2の外径よりも僅かに大きく設定され、かつ拡径部7の下部構造物1からの突出寸法は、下部構造物1と主桁9との間の上下方向の間隙寸法Lよりも若干短く、例えば、20mm程度短く設定されていると共に、拡径部7の外径寸法D(図8参照)は、曲げ耐力を確保可能な寸法以上に設定されている。
このことは比較として、例えば、拡径部7を、許容せん断応力度で設計した場合の耐荷力を確保するためには、前記間隙寸法Lが拡径部7の外径Dの1/2以下とする(拡径部7の外径Dが前記間隙寸法Lの2倍以上とする)必要があるが、曲げ応力度の照査で設計する場合には、前記間隙寸法Lと鋼製ストッパ棒2に作用する水平荷重Pとによる曲げモーメントMで決まるため、かならずしも、前記許容せん断応力度で設計する場合の寸法関係(拡径部7の外径Dが間隙寸法Lの2倍以上とする)によらなくてもよくなり、例えば、上部構造物3が軽量構造である場合には、想定される水平荷重Pが小さくなり、拡径部7の外径Dが間隙寸法Lの2倍以下にできる場合もあるので、現場に応じて経済的な設計とすることができる。
【0029】
図2の状態から次いで、図3に示すように、前記拡径部7の上面には、樹脂発泡体からなる弾性パッキン13が鋼製ストッパ棒2に嵌設されて載置され、また、弾性支承装置8aに、プレキャストホロー桁(プレキャストコンクリート製ホロー桁)9aからなる中空の主桁9が設置されている。
【0030】
前記弾性パッキン13は、後に、橋軸直角方向の横方向に隣り合う主桁9に渡って築造される端部横桁(弾性支承装置8aに支承される支点横桁)10の部分的な底部型枠を兼ねたパッキンでもある。前記の弾性パッキン13の平面外径寸法は、主桁9間の間隔により、適宜環状等の形状にされ、図9に示すように鋼製筒状体等の拡径部7と同外径の環状パッキンとする場合もある。
【0031】
前記の弾性パッキン13により、プレキャストホロー桁9a等の主桁9および主桁9相互を端部において一体化する端部横桁10を含む上部構造物3と鋼製筒状体等の拡径部7とのクリアランスを確保し、上部構造物3と鋼製筒状体等の拡径部7とが接触して干渉するのを防止し、上部構造物3側の撓み等による弾性支承装置8aを中心とする回転を許容している。
【0032】
また、前記弾性パッキン13は、その上部に載置される鋼製アンカーキャップ4の下面を閉塞する型枠を兼ねている。
【0033】
また、図示を省略するが、端部横桁10を築造する際には、下部構造物1と上部構造物3との間隔を確保するために、下部構造物1上に、発泡スチロールなどを、鋼製筒状体等の拡径部7を除く部分に、型枠(図示を省略)として配置する。
【0034】
次いで、図4に示すように、前記弾性パッキン13の上に、鋼製アンカーキャップ4が載置されるように配置され、その後、図5〜図7に示すように、橋軸直角方向に隣り合う主桁端部9bを連結する端部横桁10を築造すべく、適宜、型枠(図示省略)が設置されると共に、その型枠内における主桁9の端部外側あるいは主桁9間に鉄筋(図示省略)が配筋されて、主桁9端部外側および主桁端部間にコンクリート15が打設されると共に適宜主桁端部に渡って配設された横締めPC鋼材(図示省略)が横締めされて、端部横桁10が築造され、また、各主桁9および端部横桁10が一体化された上部構造物3が築造される。
【0035】
なお、拡径部7の下部構造物1からの突出寸法を、前記の間隙寸法Lよりも20mm程度小さく設定することにより、端部横桁10を含めた上部構造物3の撓み挙動を許容するようにされている。
【0036】
前記の拡径部7の材質は、鋼製ストッパ棒2の材質と同じ材質が好ましく、上部構造物3下面から下部構造物1上面間における拡径部7の突出長さ寸法は、上部構造物3と下部構造物1との隙間間隔Lから鋼製ストッパ棒2の径の1/2以下(例えば、20mm程度)の施工誤差吸収用の隙間を除いておくと望ましい。また、拡径部7の上下方向の長さ寸法は、前記の突出長さ寸法に、下部構造物1に埋め込まれる深さ寸法の和となる。
【0037】
図8には、拡径部7付近を拡大して、鋼製ストッパ棒2と拡径部7の寸法関係および拡径部7の設置位置の一形態が示されている。鋼製ストッパ棒2の直径dに対して、拡径部7の内径は、d+2〜4mm程度とし、半径方向片側1〜2mm程度の僅かな間隙で嵌合すればよく、また拡径部7の外径Dは、例えば、1.5d〜4d(鋼製ストッパ鋼棒2の直径の1.5〜4倍)または曲げ計算で決まる直径以上とすればよい。また、鋼製筒状体等の拡径部7の埋め込み深さPは、例えば、鋼製ストッパ棒2の直径dの3倍以上(3d以上)とするとよい。図8に示す形態では、鋼製筒状体等の拡径部7の突出長さ寸法L1は、例えば100mmに設定され、前記の埋め込み長さ寸法Pは、80mm程度に設定され、弾性パッキン13の厚さ寸法L3は20mm程度に設定されている。鋼製ストッパ棒2の下部構造物1側への埋め込み長さは、その直径(d)の10倍(10d)を確保するように下部構造物1に埋め込み固定される。したがって、拡径部7は、前記鋼製ストッパ棒2に一体または固定することにより、確実に下部構造物1に固定することができ、拡径部7は下部構造物1に埋め込み配置されて横方向の位置が固定されていればよく、拡径部7の埋め込み長さは適宜設定すればよい。
【0038】
前記の拡径部7の下部の埋め込み深さPは、拡径部7の外周面と無収縮モルタル12との付着が確実で、拡径部7の抜け出しを確実に防止し、拡径部7が下部構造物1の上面に抜け出して、鋼製ストッパ棒2と共に回転しないように考慮された寸法である。したがって、前記埋め込み深さ寸法P以上であればよい。なお、前記拡径部7の下端部にフランジを張り出して、フランジからなる抜け出し防止用ストッパを有する拡径部7としてもよい。
【0039】
拡径部7を設ける形態としては、前記形態のように鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒2に嵌合または嵌合固定されて形成されてもよく、この形態以外にも、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒2に溶接により固定されて拡径部7が形成されていてもよく、あるいは鋼製筒状体の内面に雌ねじを設け、かつ鋼製ストッパ棒2の中間部に雄ねじ部を設け、鋼製筒状体をねじ込んで適宜固定された拡径部7を形成されていてもよく、もしくは鋼製ストッパ棒2に一体に段付き軸状の拡径部を設けることで拡径部7を形成してもよい。
【0040】
別体とされた拡径部7が鋼製ストッパ棒2の中間部に固定されてれていると、拡径部7を設置する場合の位置決めが鋼製ストッパ棒2の設置により自動的に決まるため容易であり、鋼製ストッパ棒2と共に設置が可能であるので、橋梁用ストッパ装置の施工が容易であり、既存の鋼製ストッパ2に鋼製筒状体等の拡径部7を付加するだけでよいので、安価な橋梁用ストッパ装置となる。
【0041】
なお、本発明を実施する場合、図10に示すように、拡径部7より下側の鋼製ストッパ棒2の埋め込み長さが、鋼製ストッパ棒2の直径(d)の10倍(10d)より短くなる場合には、鋼製ストッパ棒2に引き抜き力が作用した場合に鋼製ストッパ棒2が引き抜かれるのを防止するために、鋼製ストッパ棒2の下部に、ナットあるいは鋼材等をねじ込みあるいは溶接により固定して係止突起19を設けるようにすると、無収縮モルタル12との定着効果を高めることができ、確実に鋼製ストッパ棒2の引き抜きを押さえることができる。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
【0042】
このような構造の橋梁用ストッパ装置5では、地震時等において水平力が下部構造物1または上部構造物3に作用した場合、鋼製ストッパ棒2を曲げようとする力に対しては、拡径部7により支承されて拘束され、この拡径部7で曲げ力を負担するようにされ、したがって、鋼製ストッパ棒2に対する曲げ力の負担を低減することができると共に、拡径部7の端部付近の上部構造物3に接近した位置から鋼製ストッパ棒2に、せん断力を負担させる構造となる。
【0043】
前記のように、前記実施形態では、既存の鋼製ストッパ棒2を使用でき、しかも鋼製筒状体等の拡径部7においては、従来の設計手法(曲げ応力度の照査)で設計でき、しかも簡単な構造の橋梁用ストッパ装置とすることができる。
【0044】
本発明を実施する場合、主桁9としては、プレキャストホロー桁9a以外の断面I桁、T桁等の主桁を含む上部構造物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の橋梁用ストッパ装置の施工手順を示すものであって、下部構造物上面にアンカー孔を削孔すると共に鋼製ストッパ棒の下部を埋め込み固定し、弾性支承装置を設置し、プレキャストホロー桁を2点鎖線で示した状態を示す縦断正面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す一部拡大縦断正面図である。
【図3】図1の状態から鋼製ストッパ棒に樹脂発泡体のパッキンを嵌合配置すると共にプレキャストホロー桁を設置した状態を示す縦断正面図である。
【図4】図3の状態から弾性パッキンの上に鋼製アンカーキャップを設置した状態を示す縦断正面図である。
【図5】図4の状態から端部横桁を築造した状態を示す縦断正面図である。
【図6】図5における端部横桁の全体を示す縦断正面図である。
【図7】両端部に築造された端部横桁により橋軸方向の桁を一体化した状態を示す一部縦断側面図である。
【図8】拡径部付近の寸法関係の一形態を示す一部縦断正面図である。
【図9】鋼製ストッパ棒に鋼製筒状体とパッキンとを嵌設した状態を示す斜視図である。
【図10】鋼製ストッパ棒の下部に係止突起を設ける形態を示す一部縦断正面図である。
【図11】従来の改良されたストッパ装置を備えた端部横桁の全体を示す縦断正面図である。
【図12】図10の一部を拡大して示す縦断正面図である。
【図13】図11に示す従来の改良されたストッパ装置を備え、両端部に築造された端部横桁により橋軸方向の桁を一体化した状態を示す一部縦断側面図である。
【図14】鋼製ストッパ棒に鋼製筒状体を設置しない従来のストッパ装置を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 下部構造物
2 鋼製ストッパ棒
3 上部構造物
4 アンカーキャップ
5 橋梁用ストッパ装置
6 ストッパ棒中間部分
7 拡径部
8 支承装置
8a 弾性支承装置
9 主桁
9a プレキャストホロー桁
10 端部横桁
11 アンカー孔
12 無収縮モルタル
13 弾性パッキン
15 コンクリート
16 取付用鋼板
17 ゴム層
18 ストッパ装置
18a ストッパ装置
19 係止突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋台または橋脚等の下部構造物と桁等の上部構造物とにわたって設けられる橋梁用ストッパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁における変位制限装置(移動制限装置)や落橋防止装置として、アンカーバーすなわち垂直な鋼製ストッパ棒で、その下部を橋台または橋脚等の下部構造物(下部工)に埋め込み固定し、また桁等の上部構造体側に前記ストッパ棒の上部をアンカーキャップに僅かな間隙を介して収容する固定式構造形態のストッパ装置あるいは、鋼製ストッパ棒とアンカーキャップとの間に橋軸方向等に主桁の伸縮量程度の比較的大きな隙間を設けて収容する可動式構造形態のストッパ装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
変位制限装置(移動制限装置)や落橋防止装置におけるストッパ装置における鋼製ストッパ棒(アンカーバー)は、例えば、せん断応力度で照査され、前記非特許文献1の道路橋支承便覧によると、せん断応力度で照査した場合の耐荷重を確保するためには、上部構造物と下部構造物との間の間隙を鋼製ストッパ棒(アンカーバー)の直径寸法の1/2以下とする必要がある旨記載されている。
【0004】
その理由は、前記のように鋼製ストッパ棒(アンカーバー)の設計では、許容せん断応力度をもって設計されているが、図14に示すストッパ装置18のように、上部構造物3と下部構造物1との間のすき間間隔Lが大きくなると、鋼製ストッパ棒2における下部構造物1と上部構造物3との間の部分における鋼製ストッパ棒中間部分6の曲げスパンが増大し、鋼製ストッパ棒2の直径寸法を大きくしない場合には、地震時に上下の構造物1,3に水平力が作用した場合、鋼製ストッパ棒2の耐力が低下する。
【0005】
そのため、すき間間隔Lが大きくなった分、鋼製ストッパ棒2の直径寸法を大きくする必要が生じ、従来は鋼製ストッパ棒2の直径寸法を大きして対応したりしていた。
【0006】
また、前記のすき間間隔Lは、上下の構造物1,3間に介在される支承装置8の高さHによって決まり、また、前記のすき間間隔Lは、橋軸方向に並行して伸びるように、かつ橋軸直角方向に間隔をおいて配置される主桁9間の間隔が広く、鋼製ストッパ棒2の周りのスペースが充分ある場合には、下部構造物(下部工)1上面に鋼製ストッパ棒2を支承するコンクリート製支承部(図示を省略した)を一体に立ち上げたり、主桁9および端部横桁10等の上部構造物3の下部を打ち下ろしてコンクリート製支承部(図示を省略した)を一体に設けたりすることにより、下部構造物1と上部構造物3間のすき間間隔Lを狭くしている。
【0007】
例えば、図示を省略するが、狭い作業空間で鋼製ストッパ棒2の周りのコンクリートを打設したり、上部の型枠によりコンクリート製支承部を形成すべく下げるための凹溝を設けたりしていた。
【0008】
しかし、プレキャストホロー桁9a等の主桁9のように横方向に隣り合う主桁間隔Xが狭く、上下両端部の取付け用鋼板16の間に一体にゴム層17を有する弾性支承装置8aのようなタイプBの支承装置(特徴:上部構造物の移動量をゴム層のせん断変形に依存するため、ゴム厚寸法が大きくなり、支承高さが大きくなる傾向にある)8を用いる場合には、前記主桁9またはこれらの端部を結合する端部横桁10を含めた上部構造物3と、下部構造物1とのいずれか側にコンクリート製支承部を設けること自体が困難であるため、コンクリート製支承部を設けてアンカーバー周りをカバーすることが困難であり、コンクリート製支承部を設けない場合は、上下部構造物のすき間間隔Lが大きくなり、鋼製ストッパ棒2の直径の1/2以下にすることは難しいため、逆に鋼製ストッパ棒2の部材全長の直径の太い太径のものを使用することで対応することになる。
【0009】
また、前記のように鋼製ストッパ棒2をその全長に渡って太径の鋼棒を使用しないように改良するストッパ装置として、図11〜図13に示すようなストッパ装置18aも考えられる。このストッパ装置18aの構造は、橋台または橋脚等の下部構造物1に鋼製ストッパ棒2の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒2の上部を、上部構造物3に埋め込み固定されるアンカーキャップ4に収容させるようにした橋梁用ストッパ装置において、下部構造物1と上部構造物3との間の部分におけるストッパ棒中間部分6に鋼製筒状体7aが嵌合され、鋼製筒状体7aを下部構造物1に載置するようにした橋梁用ストッパ装置18aである。
【0010】
前記のような橋梁用ストッパ装置18aでは、鋼製筒状体7aで曲げ力を負担させるようにし、この部分では鋼製ストッパ棒2を支承して曲げ変形しないように拘束し、鋼製ストッパ棒2の曲げ力の負担を低減すると共に、鋼製筒状体7aの上端部付近の鋼製ストッパ棒2にせん断力を負担させることを期待したストッパ装置18aである。
【非特許文献1】道路橋支承便覧 平成3年7月10日 P180
【非特許文献2】道路橋示方書 V 耐震設計編 平成14年3月7日 P241、P256
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、図11に示すように、前記のように改良されたストッパ装置18aでは、地震時等に橋軸方向等に水平力が作用して、上部構造物3と下部構造物1とが相対的に水平変位した場合、鋼製筒状体7aの下部が固定されていないため、上向き力が作用すると、鋼製筒状体7aは鋼製ストッパ棒2の長手方向にずり上がる恐れのある構造であり、僅かに鋼製筒状体7aの自重のみが下向きに作用しているのみであるため、鋼製ストッパ棒2の曲げ変形を拘束できない恐れがある。
【0012】
本発明は、鋼製筒状体等の拡径部が鋼製ストッパ棒に対してずり上がることなく、しかも鋼製筒状体等の拡径部により曲げ抵抗を負担し鋼製ストッパ棒の曲げ力の負担を低減し、鋼製筒状体等の拡径部により本来期待される作用効果を確実に発揮することができ、また、前記従来のように鋼製ストッパ棒をその部材全長にわたり太径の鋼製部材を使用することなく、しかもこれに嵌設等の手段により設ける鋼製筒状体等の拡径部を従来の設計手法(曲げ応力度の照査)で設計できる簡単な構造の橋梁用ストッパ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の橋梁用ストッパ装置においては、橋台または橋脚等の下部構造物に鋼製ストッパ棒の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒の上部を、上部構造物に埋め込み固定されるアンカーキャップに収容させるようにした橋梁用ストッパ装置において、上部構造物より下側の鋼製ストッパ棒中間部分に、外径寸法を大きくした拡径部が設けられ、かつ拡径部の下部は下部構造物に埋め込まれていることを特徴とする。
【0014】
また、第2発明では、第1発明の橋梁用ストッパ装置において、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に、嵌合配置、または溶接により固定、あるいはねじ接合もしくは一体に設けられるかのいずれか一つの手段により設けられることで、拡径部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、第3発明では、第1または第2発明の橋梁用ストッパ装置において、拡径部7の外径寸法Dは、下部構造物1と上部構造物3との間の間隙寸法Lを考慮した曲げ耐力を確保可能な寸法とされていることを特徴とする。
【0016】
また、第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの橋梁用ストッパ装置において、拡径部7の上端部と上部構造物3の下面との間に弾性パッキンが介在されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明によると、単に、拡径部を鋼製ストッパ棒の中間部に設けると共に、拡径部の下部を下部構造物に埋め込むだけで、鋼製ストッパ棒の中間部を拡径部により拡大して剛性を高め、さらに拡径部により地震時の曲げ力に対して抵抗できるように剛性を高めることができ、この部分での鋼製ストッパ棒に作用する曲げ力の負担(曲げ応力)を低減することができ、拡径部の上端部付近から鋼製ストッパ棒にせん断力を負担させるようにすることができる。また、単に拡径部を鋼製ストッパ棒に設けると共にその下部を下部構造物に埋め込み配置するので作業性がよく、しかも鋼製ストッパ棒の耐力を向上させることができる。また、本発明によると、例えば、既存の鋼製ストッパ棒を使用してこれに拡径部を付加すると本発明のストッパ装置に変更でき、さらに拡径部を従来の設計手法(曲げ応力度の照査)で設計でき、しかも拡径部を付加する簡単な構造の橋梁用ストッパ装置とすることができる。また、拡径部を別体とした場合でも、拡径部は下部構造物に埋め込まれているので、従来のように鋼製ストッパ棒が傾斜することはなく、拡径部が鋼製ストッパ棒に対してずり上がる恐れを排除することができる。
【0018】
第2発明によると、拡径部は、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に嵌合されて形成されているか、または、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に溶接により固定されて設けられているか、あるいは鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒にねじ接合されて設けられているか、もしくは鋼製ストッパ棒に一体に設けられるかのいずれか一つの手段により設けられているので、拡径部を設けることが容易であり、各種形態の拡径部が可能であるため自由度も高い、安価な橋梁用ストッパ装置となる。
【0019】
第3発明によると、単に拡径部7の外径寸法Dを、下部構造物と上部構造物との間隙寸法Lを考慮した曲げ耐力を確保可能な寸法とするだけで、鋼製ストッパ棒の全長に渡り太径の鋼製部材とすることなく、曲げモーメントが大きくなり剛性を高める必要のある鋼製ストッパ棒の中間部の外径寸法を間接的に大きすることができ、また、前記許容せん断応力度で設計する場合よりは、拡径部7の外径Dが間隙寸法Lの2倍以下に小さくできる場合もあるので、現場に応じて経済的な設計とすることができる。
【0020】
第4発明によると、拡径部と上部構造物との下面との間で、拡径部の上に弾性パッキンを介在させるだけで、拡径部と上部構造物とのクリアランスを確保して、上部構造物と拡径部とが干渉するのを防止することができる。そのため、例えば、上部構造物の撓み等による支承装置を支点とする回転時に、上部構造物と拡径部とが干渉するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明を図示の形態により詳細に説明する。
【0022】
図1〜図7は本発明の実施形態のストッパ装置5を構成するまでの施工手順を示すものであって、まず、図1および図2に示すように、橋台または橋脚等の下部構造物1上に橋軸直角方向に間隔をおいて前記と同様な弾性支承装置8a(8)が設置される。
【0023】
下部構造物1の上面には、予め、主桁9間の中央に、アンカー孔11が削孔され、弾性支承装置8が架設された後、あるいは弾性支承装置8および主桁9を架設する前に、前記アンカー孔11に、アンカーバーとして垂直に鋼製ストッパ棒2の下部が収容配置され、また、前記鋼製ストッパ棒2の中間部に嵌設された鋼製筒状体からなる筒状の拡径部7の下部が、前記アンカー孔11内に配置されて、アンカー孔11内に充填された無収縮モルタル12により立設固定されている。
【0024】
前記の拡径部7は、本発明では、鋼製ストッパ棒2の中間部にその軸方向に断面が拡大するように設けられる部分をいう。したがって、拡径部7は、鋼製ストッパ棒2と直接一体に設けたり、または鋼製ストッパ棒2とは別体のものを嵌設または嵌合固定あるいはねじ込みまたは溶接等により設ける場合も含み、後記するように各種の形態が可能である。
【0025】
鋼製筒状体からなる拡径部7とした場合の設置にあたっては、拡径部7を設置予定位置の下面レベル付近まで、無収縮モルタル12をアンカー孔11内に充填して鋼製ストッパ棒2を固定した状態で、前記拡径部7を鋼製ストッパ棒2に嵌設して、さらに前記拡径部7の下部を埋め込むように、無収縮モルタル12を拡径部7の周りに充填して、拡径部7を下部構造物1に埋め込み固定してもよい。
また、鋼製ストッパ棒2の中間部の所定の位置に拡径部7を嵌設し、拡径部7を鋼製ストッパ棒2に対し、適宜のクランプ金具により位置保持した状態で、鋼製アンカー棒2および拡径部7の下部をアンカー孔11内に配置して、無収縮モルタル12を充填して下部構造物1側に埋め込み固定してもよい。なお、拡径部7と無収縮モルタル12との付着を高めるために、拡径部7の外周面を粗面としてもよい。
【0026】
前記の拡径部7の下部を下部構造物1側に埋め込み配置または埋め込み固定することは、拡径部7の横方向の位置を固定し、地震時等において水平力が上部構造物3(または下部構造物1)に作用した場合に、拡径部7により支承して鋼製ストッパ棒2が曲げ変形を起こさないようにし、また、従来のように鋼製ストッパ棒2の曲げ変形の恐れおよび鋼製ストッパ棒2の軸方向に鋼製筒状体等の拡径部7がずり上がる恐れを排除する上で重要である。鋼製筒状体等の拡径部7を鋼製ストッパ棒2に嵌合配置する場合の形態として、拡径部7の内周面と鋼製ストッパ棒2の外周面との間隙は僅かな間隙があってもよく、前記間隙に接着剤等の充填材を充填して拡径部7を鋼製ストッパ棒2に一体に固定してもよい。
【0027】
前記の拡径部7は、ストッパ棒挿通孔を除けば、ほぼ中実状の鋼製筒状体であり、曲げ剛性およびせん断剛性を高めている。
【0028】
前記拡径部7の内径は、鋼製ストッパ棒2の外径よりも僅かに大きく設定され、かつ拡径部7の下部構造物1からの突出寸法は、下部構造物1と主桁9との間の上下方向の間隙寸法Lよりも若干短く、例えば、20mm程度短く設定されていると共に、拡径部7の外径寸法D(図8参照)は、曲げ耐力を確保可能な寸法以上に設定されている。
このことは比較として、例えば、拡径部7を、許容せん断応力度で設計した場合の耐荷力を確保するためには、前記間隙寸法Lが拡径部7の外径Dの1/2以下とする(拡径部7の外径Dが前記間隙寸法Lの2倍以上とする)必要があるが、曲げ応力度の照査で設計する場合には、前記間隙寸法Lと鋼製ストッパ棒2に作用する水平荷重Pとによる曲げモーメントMで決まるため、かならずしも、前記許容せん断応力度で設計する場合の寸法関係(拡径部7の外径Dが間隙寸法Lの2倍以上とする)によらなくてもよくなり、例えば、上部構造物3が軽量構造である場合には、想定される水平荷重Pが小さくなり、拡径部7の外径Dが間隙寸法Lの2倍以下にできる場合もあるので、現場に応じて経済的な設計とすることができる。
【0029】
図2の状態から次いで、図3に示すように、前記拡径部7の上面には、樹脂発泡体からなる弾性パッキン13が鋼製ストッパ棒2に嵌設されて載置され、また、弾性支承装置8aに、プレキャストホロー桁(プレキャストコンクリート製ホロー桁)9aからなる中空の主桁9が設置されている。
【0030】
前記弾性パッキン13は、後に、橋軸直角方向の横方向に隣り合う主桁9に渡って築造される端部横桁(弾性支承装置8aに支承される支点横桁)10の部分的な底部型枠を兼ねたパッキンでもある。前記の弾性パッキン13の平面外径寸法は、主桁9間の間隔により、適宜環状等の形状にされ、図9に示すように鋼製筒状体等の拡径部7と同外径の環状パッキンとする場合もある。
【0031】
前記の弾性パッキン13により、プレキャストホロー桁9a等の主桁9および主桁9相互を端部において一体化する端部横桁10を含む上部構造物3と鋼製筒状体等の拡径部7とのクリアランスを確保し、上部構造物3と鋼製筒状体等の拡径部7とが接触して干渉するのを防止し、上部構造物3側の撓み等による弾性支承装置8aを中心とする回転を許容している。
【0032】
また、前記弾性パッキン13は、その上部に載置される鋼製アンカーキャップ4の下面を閉塞する型枠を兼ねている。
【0033】
また、図示を省略するが、端部横桁10を築造する際には、下部構造物1と上部構造物3との間隔を確保するために、下部構造物1上に、発泡スチロールなどを、鋼製筒状体等の拡径部7を除く部分に、型枠(図示を省略)として配置する。
【0034】
次いで、図4に示すように、前記弾性パッキン13の上に、鋼製アンカーキャップ4が載置されるように配置され、その後、図5〜図7に示すように、橋軸直角方向に隣り合う主桁端部9bを連結する端部横桁10を築造すべく、適宜、型枠(図示省略)が設置されると共に、その型枠内における主桁9の端部外側あるいは主桁9間に鉄筋(図示省略)が配筋されて、主桁9端部外側および主桁端部間にコンクリート15が打設されると共に適宜主桁端部に渡って配設された横締めPC鋼材(図示省略)が横締めされて、端部横桁10が築造され、また、各主桁9および端部横桁10が一体化された上部構造物3が築造される。
【0035】
なお、拡径部7の下部構造物1からの突出寸法を、前記の間隙寸法Lよりも20mm程度小さく設定することにより、端部横桁10を含めた上部構造物3の撓み挙動を許容するようにされている。
【0036】
前記の拡径部7の材質は、鋼製ストッパ棒2の材質と同じ材質が好ましく、上部構造物3下面から下部構造物1上面間における拡径部7の突出長さ寸法は、上部構造物3と下部構造物1との隙間間隔Lから鋼製ストッパ棒2の径の1/2以下(例えば、20mm程度)の施工誤差吸収用の隙間を除いておくと望ましい。また、拡径部7の上下方向の長さ寸法は、前記の突出長さ寸法に、下部構造物1に埋め込まれる深さ寸法の和となる。
【0037】
図8には、拡径部7付近を拡大して、鋼製ストッパ棒2と拡径部7の寸法関係および拡径部7の設置位置の一形態が示されている。鋼製ストッパ棒2の直径dに対して、拡径部7の内径は、d+2〜4mm程度とし、半径方向片側1〜2mm程度の僅かな間隙で嵌合すればよく、また拡径部7の外径Dは、例えば、1.5d〜4d(鋼製ストッパ鋼棒2の直径の1.5〜4倍)または曲げ計算で決まる直径以上とすればよい。また、鋼製筒状体等の拡径部7の埋め込み深さPは、例えば、鋼製ストッパ棒2の直径dの3倍以上(3d以上)とするとよい。図8に示す形態では、鋼製筒状体等の拡径部7の突出長さ寸法L1は、例えば100mmに設定され、前記の埋め込み長さ寸法Pは、80mm程度に設定され、弾性パッキン13の厚さ寸法L3は20mm程度に設定されている。鋼製ストッパ棒2の下部構造物1側への埋め込み長さは、その直径(d)の10倍(10d)を確保するように下部構造物1に埋め込み固定される。したがって、拡径部7は、前記鋼製ストッパ棒2に一体または固定することにより、確実に下部構造物1に固定することができ、拡径部7は下部構造物1に埋め込み配置されて横方向の位置が固定されていればよく、拡径部7の埋め込み長さは適宜設定すればよい。
【0038】
前記の拡径部7の下部の埋め込み深さPは、拡径部7の外周面と無収縮モルタル12との付着が確実で、拡径部7の抜け出しを確実に防止し、拡径部7が下部構造物1の上面に抜け出して、鋼製ストッパ棒2と共に回転しないように考慮された寸法である。したがって、前記埋め込み深さ寸法P以上であればよい。なお、前記拡径部7の下端部にフランジを張り出して、フランジからなる抜け出し防止用ストッパを有する拡径部7としてもよい。
【0039】
拡径部7を設ける形態としては、前記形態のように鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒2に嵌合または嵌合固定されて形成されてもよく、この形態以外にも、鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒2に溶接により固定されて拡径部7が形成されていてもよく、あるいは鋼製筒状体の内面に雌ねじを設け、かつ鋼製ストッパ棒2の中間部に雄ねじ部を設け、鋼製筒状体をねじ込んで適宜固定された拡径部7を形成されていてもよく、もしくは鋼製ストッパ棒2に一体に段付き軸状の拡径部を設けることで拡径部7を形成してもよい。
【0040】
別体とされた拡径部7が鋼製ストッパ棒2の中間部に固定されてれていると、拡径部7を設置する場合の位置決めが鋼製ストッパ棒2の設置により自動的に決まるため容易であり、鋼製ストッパ棒2と共に設置が可能であるので、橋梁用ストッパ装置の施工が容易であり、既存の鋼製ストッパ2に鋼製筒状体等の拡径部7を付加するだけでよいので、安価な橋梁用ストッパ装置となる。
【0041】
なお、本発明を実施する場合、図10に示すように、拡径部7より下側の鋼製ストッパ棒2の埋め込み長さが、鋼製ストッパ棒2の直径(d)の10倍(10d)より短くなる場合には、鋼製ストッパ棒2に引き抜き力が作用した場合に鋼製ストッパ棒2が引き抜かれるのを防止するために、鋼製ストッパ棒2の下部に、ナットあるいは鋼材等をねじ込みあるいは溶接により固定して係止突起19を設けるようにすると、無収縮モルタル12との定着効果を高めることができ、確実に鋼製ストッパ棒2の引き抜きを押さえることができる。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、同様な部分には、同様な符号を付して説明を省略する。
【0042】
このような構造の橋梁用ストッパ装置5では、地震時等において水平力が下部構造物1または上部構造物3に作用した場合、鋼製ストッパ棒2を曲げようとする力に対しては、拡径部7により支承されて拘束され、この拡径部7で曲げ力を負担するようにされ、したがって、鋼製ストッパ棒2に対する曲げ力の負担を低減することができると共に、拡径部7の端部付近の上部構造物3に接近した位置から鋼製ストッパ棒2に、せん断力を負担させる構造となる。
【0043】
前記のように、前記実施形態では、既存の鋼製ストッパ棒2を使用でき、しかも鋼製筒状体等の拡径部7においては、従来の設計手法(曲げ応力度の照査)で設計でき、しかも簡単な構造の橋梁用ストッパ装置とすることができる。
【0044】
本発明を実施する場合、主桁9としては、プレキャストホロー桁9a以外の断面I桁、T桁等の主桁を含む上部構造物にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の橋梁用ストッパ装置の施工手順を示すものであって、下部構造物上面にアンカー孔を削孔すると共に鋼製ストッパ棒の下部を埋め込み固定し、弾性支承装置を設置し、プレキャストホロー桁を2点鎖線で示した状態を示す縦断正面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す一部拡大縦断正面図である。
【図3】図1の状態から鋼製ストッパ棒に樹脂発泡体のパッキンを嵌合配置すると共にプレキャストホロー桁を設置した状態を示す縦断正面図である。
【図4】図3の状態から弾性パッキンの上に鋼製アンカーキャップを設置した状態を示す縦断正面図である。
【図5】図4の状態から端部横桁を築造した状態を示す縦断正面図である。
【図6】図5における端部横桁の全体を示す縦断正面図である。
【図7】両端部に築造された端部横桁により橋軸方向の桁を一体化した状態を示す一部縦断側面図である。
【図8】拡径部付近の寸法関係の一形態を示す一部縦断正面図である。
【図9】鋼製ストッパ棒に鋼製筒状体とパッキンとを嵌設した状態を示す斜視図である。
【図10】鋼製ストッパ棒の下部に係止突起を設ける形態を示す一部縦断正面図である。
【図11】従来の改良されたストッパ装置を備えた端部横桁の全体を示す縦断正面図である。
【図12】図10の一部を拡大して示す縦断正面図である。
【図13】図11に示す従来の改良されたストッパ装置を備え、両端部に築造された端部横桁により橋軸方向の桁を一体化した状態を示す一部縦断側面図である。
【図14】鋼製ストッパ棒に鋼製筒状体を設置しない従来のストッパ装置を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 下部構造物
2 鋼製ストッパ棒
3 上部構造物
4 アンカーキャップ
5 橋梁用ストッパ装置
6 ストッパ棒中間部分
7 拡径部
8 支承装置
8a 弾性支承装置
9 主桁
9a プレキャストホロー桁
10 端部横桁
11 アンカー孔
12 無収縮モルタル
13 弾性パッキン
15 コンクリート
16 取付用鋼板
17 ゴム層
18 ストッパ装置
18a ストッパ装置
19 係止突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋台または橋脚等の下部構造物に鋼製ストッパ棒の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒の上部を、上部構造物に埋め込み固定されるアンカーキャップに収容させるようにした橋梁用ストッパ装置において、上部構造物より下側の鋼製ストッパ棒中間部分に、外径寸法を大きくした拡径部が設けられ、かつ拡径部の下部は下部構造物に埋め込まれていることを特徴とする橋梁用ストッパ装置。
【請求項2】
鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に、嵌合配置、または溶接により固定、あるいはねじ接合もしくは一体に設けられるかのいずれか一つの手段により設けられることで、拡径部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の橋梁用ストッパ装置。
【請求項3】
拡径部の外径寸法(D)は、下部構造物と上部構造物との間の間隙寸法(L)を考慮した曲げ耐力を確保可能な寸法とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁用ストッパ装置。
【請求項4】
拡径部の上端部と上部構造物の下面との間に弾性パッキンが介在されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の橋梁用ストッパ装置。
【請求項1】
橋台または橋脚等の下部構造物に鋼製ストッパ棒の下部が埋め込み固定され、その鋼製ストッパ棒の上部を、上部構造物に埋め込み固定されるアンカーキャップに収容させるようにした橋梁用ストッパ装置において、上部構造物より下側の鋼製ストッパ棒中間部分に、外径寸法を大きくした拡径部が設けられ、かつ拡径部の下部は下部構造物に埋め込まれていることを特徴とする橋梁用ストッパ装置。
【請求項2】
鋼製筒状体が鋼製ストッパ棒に、嵌合配置、または溶接により固定、あるいはねじ接合もしくは一体に設けられるかのいずれか一つの手段により設けられることで、拡径部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の橋梁用ストッパ装置。
【請求項3】
拡径部の外径寸法(D)は、下部構造物と上部構造物との間の間隙寸法(L)を考慮した曲げ耐力を確保可能な寸法とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の橋梁用ストッパ装置。
【請求項4】
拡径部の上端部と上部構造物の下面との間に弾性パッキンが介在されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の橋梁用ストッパ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−113274(P2007−113274A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−305956(P2005−305956)
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】
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