説明

橋脚用排水管の取付構造

【課題】排水管の露出部を少なくして橋脚の外観を向上させることができる橋脚用排水管の取付構造を提供する。
【解決手段】橋脚に沿って排水管を取り付ける橋脚用排水管の取付構造であって、角筒状に形成された橋脚用排水管5を取り付ける箇所に取付金具本体13を有する橋脚用金具11を固定し、前記橋脚用排水管5の裏面に排水管用金具20を固定し、この排水管用金具20と前記取付金具本体13とを互いに係合して前記橋脚用排水管5を前記橋脚に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚に沿って排水管を取り付ける橋脚用排水管の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路等の橋梁上面の雨水等を下方に排水するため、橋梁の裏側より下方に向かうとともに、橋脚に沿って排水管が設けられている。
このうち、橋脚に沿って配置される橋脚用排水管は、従来では、内部が中空とされた塩化ビニル製の円筒排水管から形成されている。この排水管を上下に複数直列配置して継ぎ合わせ、これらを橋脚に固定している。
橋脚に排水管を固定するにあたり、排水管の外周を係止する円弧状の係止部と橋脚にボルト止めするための取付片部とが一体に形成された取付金具が利用されている。
【0003】
このような排水管は円筒形に形成されているため、通常、角柱状に形成される橋脚とバランスが悪く、この橋脚全体の外観が損なわれる。
そのため、排水管を角柱状に形成し、この排水管の両側部から取付金具を橋脚表面に沿って延出し、この取付金具をボルトで橋脚に固定することが考えられる。この場合、ボルトが露出すると外観が不良となるため、ボルトを覆うカバーを排水管に取り付けることが好ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水管を角柱状にし、排水管に設けられた取付金具をボルトで橋脚に固定する構造では、円柱状の排水管を利用した場合に比べて外観が改善されているものの、排水管自体が橋脚から突出形成されているため、未だ外観の改善が十分とは言えない。
【0005】
本発明の目的は、排水管の露出部を少なくして橋脚の外観を向上させることができる橋脚用排水管の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の橋脚用排水管の取付構造は、橋脚に沿って排水管を取り付ける橋脚用排水管の取付構造であって、前記橋脚用排水管は角筒状に形成され、前記橋脚の前記橋脚用排水管を取り付ける箇所に橋脚用金具を固定し、前記橋脚用排水管の裏面に排水管用金具を固定し、この排水管用金具と橋脚用金具とを互いに係合して前記橋脚用排水管を前記橋脚に取り付けたことを特徴とする。
【0007】
橋脚用排水管と橋脚とを係合するための金具は排水管の裏面に設けられているので、橋脚用排水管に隠れて正面から見えない。しかも、排水管自体が角柱状とされるので、橋脚の正面と排水管の正面とが同じ面形状とされるため、外観がより向上する。
本件関連発明の橋脚用排水管の取付構造は、橋脚に沿って排水管を取り付ける橋脚用排水管の取付構造であって、前記橋脚の前記橋脚用排水管を取り付ける箇所に凹みを形成し、この凹みの底部に橋脚用金具を固定し、前記橋脚用排水管の裏面に排水管用金具を固定し、この排水管用金具と橋脚用金具とを互いに係合して前記橋脚用排水管を前記橋脚に取り付け、前記橋脚用排水管が前記橋脚に取り付けられた状態で前記橋脚の正面から突出しないことを特徴とする。
【0008】
この構成では、橋脚用排水管が橋脚正面から突出することがないので、配水管の露出部分が少なくなり、橋脚と橋脚用排水管とが外観上、一体となる。しかも、橋脚用排水管と橋脚とを係合するための金具は排水管の裏面に設けられているので、橋脚用排水管に隠れて正面から見えない。
従って、橋脚用排水管は橋脚の凹部にすっきりと収まった状態となり、外観が向上する。つまり、橋脚の景観が向上する。
【0009】
ここで、本発明では、前記橋脚用排水管は角筒状に形成されていることが好ましい。
この構成では、排水管自体が角柱状とされるので、橋脚の正面と排水管の正面とが同じ平面形状とされるため、外観がより向上する。
【0010】
さらに、前記橋脚用金具は前記橋脚への取付片部及びこの取付片部と一体形成され前記橋脚との間に所定のスペースが設けられるコ字状本体を備え、前記排水管用金具は前記橋脚用排水管の裏面に固定された取付片部及びこの取付片部から一体形成され前記スペースに差し込み可能な係合片部を備えた構成が好ましい。
この構成では、橋脚用排水管に金具を予め固定しておき、この金具を、予め橋脚に固定された橋脚用金具のスペースに差し込むだけで橋脚用排水管を橋脚に取り付けることができる。
そのため、橋脚用排水管の取付作業が容易となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図3には、本発明の第1実施形態が示されている。
図1は、高速道路等の1つの橋梁1の正面図である。橋梁1の橋脚2の上面は高速道路の路面3となっている。この路面3の両側には路肩3Sに垂直側壁4が設けられている。橋脚2の側面には複数のFRP製の角形排水管5が上下に複数並んで配置されている。
この橋梁1の路面3に降った雨及び雪が溶けた水が路肩3Sの一方に集まり、水は、ここから橋脚2の一方の壁面に沿って設けられた橋脚用の排水管5に沿って下方に流れ、排水管5の排出口6を通って橋脚2の下に設けられた溝7に流れるように形成されている。
【0012】
図2及び図3には排水管の取付構造の詳細な構成が示されている。
これらの図2において、橋脚2の橋脚用排水管5を取り付ける箇所に幅寸法T及び深さ寸法Dの矩形状の凹み10が上下に延びて形成されている。
この凹み10の底部には橋脚用金具11が固定されている。この橋脚用金具11は、アンカー12と、このアンカー12に係止される取付金具本体13と、この取付金具本体13をアンカー12に取り付けるボルト14とからなる。
このアンカー12は、凹み10の壁面に打ち込むと底部12Bが拡張してこのアンカー12がしっかりと凹み10の壁面に固定されるようになっている。
【0013】
取付金具本体13は、橋脚2へ取り付ける取付片部13A及び取付片部13Aと一体形成され橋脚2との間に所定のスペースdが設けられるコ字状本体である。一方の取付片部13Aにはボルト14が挿通される挿通孔15が形成され、他方の取付片部13Aにはボルト14が挿通される挿通孔16が形成されている。
この取付金具13を橋脚2の凹み10の壁面に固定する場合、まず、アンカー12を凹み10の壁面に固定し、橋脚用金具11の挿通孔15,16をアンカー12の打ち込まれた場所12C、12Dと整列させ、ボルト14を挿通孔15,16にねじ込むことによって、橋脚用金具11を凹み10の壁面に固定する。
【0014】
橋脚用排水管5は、断面長方形(例えば、200mm×100mm)の角パイプであり、その裏面には排水管用金具20が固定されている。この排水管用金具20は、排水管5の裏面に固定される取付片部21と、この取付片部21と一体形成され橋脚用金具11と係合する係止片部22と有する。係止片部21は、取付金具本体13のスペースdに遊挿可能である。
橋脚用排水管5は複数個上下に連結されているが、上下に隣接する排水管5の両端には、内側に接続用ソケット30が取り付けられており、このソケット30の先端には漏水防止を目的としてゴムパッキン(図示せず)が設けられている。
橋脚用排水管5は、その材料として、接続性、強度の側面から見てFRP(ガラス繊維強化プラスティック)が望ましい。また、排水管5は、断面正方形の角筒状に形成されている。
【0015】
排水管用金具20と橋脚用金具11との取付けにあたっては、この排水管用金具20と橋脚用金具11の係止部22とを互いに係合して橋脚用排水管5を橋脚2に取り付ける。橋脚用排水管5が橋脚1に取り付けられた状態で橋脚の正面から突出しない。取付後の状態を図3に示す。つまり、橋脚用排水管5が橋脚2に取り付けられた状態では、排水管5の凹み10の底部からの寸法は凹み10の深さ寸法Dより短く、排水管5の幅寸法は凹み10の幅寸法Tより短い。
【0016】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)橋脚用排水管5が橋脚2の正面から突出することがなく、しかも、橋脚用排水管5と橋脚2とを係合するための金具11,20は、排水管5の裏面に設けられているので、排水管5が橋脚2から露出する部分が少なくなり、橋脚用排水管5は橋脚2の凹部にすっきりと収まった状態となって外観が向上する。
(2)橋脚用排水管5が角筒状に形成されているので、橋脚用排水管5自体の外面が橋脚の正面の外面とが類似した外面形状に統一されるために、さらに外観が向上する。
【0017】
(3)橋脚用排水管5と橋脚2との係合部が排水管5の背後に位置するために風雨に直接さらされることがないため係合部に特別のカバーを設ける必要がない。
(4)排水管5をFRP(ガラス繊維強化プラスティック)製としたから、FRPの線膨張率は橋脚2を構成するコンクリートと略同等であるため、両者の伸縮に関しては不都合がない。
【0018】
(5)橋脚用金具11は橋脚2への取付片部13A及びこの取付片部13Aと一体形成され橋脚2との間に所定のスペースdが設けられるコ字状本体を備えた構成であり、かつ、排水管用金具20は橋脚用排水管5の裏面に固定された取付片部21及びこの取付片部21から一体形成されスペースdに差し込み可能な係合片部22を備えた構成であるため、橋脚用排水管5に金具を予め固定しておき、この金具を、予め橋脚2に固定された取付金具本体13のスペースdに差し込むだけで橋脚用排水管5を橋脚2に簡単に取り付けることができる。
【0019】
(6)排水管用金具20の係合片部22は、橋脚用金具13のスペースdにゆるやかに差し込み可能に、つまり、遊挿可能にされているため、排水管5と金具との間に温度変化があって一方が膨張しても、このあそび部分で膨張を吸収することができる。
【0020】
次に、図4を参照して本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は排水管5の橋脚2への取付構造が第1実施形態と異なるもので、他の構成は第1実施形態と同じである。なお、第1実施形態と同じ部品には同じ参照符号を使用して重複した説明を省略する。
橋脚2の凹み10の底部に橋脚用金具29の橋脚用取付片部30が固定される。この橋脚用取付片部30には橋脚用金具29を凹み10の壁面に固定するボルトが挿通する挿通孔13,15が設けられている。
【0021】
橋脚用金具29は、取付片部30と一体形成され橋脚2との間に所定のスペースが設けられるコ字状部31を備えている。
一方、排水管用金具32は橋脚用排水管5の裏面に固定された取付片部32A及びこの取付片部32Aから一体形成された係合片部32Bを備えている。この係合片部32Bはコ字状部31に遊挿されている。
この橋脚用取付片部30に排水管5を取り付けるには、まず、橋脚用取付片部30の挿通孔15,16をボルト穴に整列させ、ボルト14を挿通孔15,16にねじ込んで、橋脚用金具29を凹み10の壁面に固定する。
【0022】
その後、排水管5に予め形成されている排水管用金具20の係合片部32Bを橋脚用金具29のスペースに差し込むことによって橋脚用排水管5を橋脚に容易に取り付けることができる。
第2実施形態では、橋脚用金具29と排水管用金具32とは同一断面形状が上下に形成されているため、排水管5を金具29,32で支持できず、上部の排水管5を下部の排水管5で支持することになる。ただし、排水管用金具32の上端縁に橋脚用金具29を係止する係止部を設けることで、第1実施形態と同様に金具で排水管5を支持することができる。
【0023】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)から(4)(6)と同様の作用効果を奏することができる他に、次の作用効果を奏することができる。
つまり、橋脚用金具29は、排水管5の荷重を直接支持しないために、橋脚用金具29の取付け強度を増大するための特別の固定具を用いる必要がない。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形なども本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、排水管5と橋脚2の取付場所及びその個数には特に言及しなかったが、排水管5の全体の長さ、及び個々の排水管5の長さに応じて、取付場所とその数を適宜選択することができる。
また、橋脚2の凹み10の形状と、排水管5の形状は断面がほぼ矩形であるように図示したが、排水管5が橋脚2に取り付けられた状態で、橋脚の正面から突出しないかぎり、凹みの内側において、排水管5を設置する場所の種々の条件に対応して正方形、台形、多角形等の種々の形状を選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、高速道路等の橋梁に沿って排水管を取り付ける橋脚用排水管として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態における橋脚用排水管の取付構造を示す側面図。
【図2】第1実施形態における橋脚用排水管の取付構造を示す分解斜視図。
【図3】第1実施形態における橋脚用排水管の取付構造を示す平面図。
【図4】本発明の第2実施形態における橋脚用排水管の取付構造を示す平面図。
【符号の説明】
【0027】
2 橋脚
5 橋脚用排水管
11,29 橋脚用金具
14,15 ボルト
20,32 排水管用金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚に沿って排水管を取り付ける橋脚用排水管の取付構造であって、前記橋脚用排水管は角筒状に形成され、前記橋脚の前記橋脚用排水管を取り付ける箇所に橋脚用金具を固定し、前記橋脚用排水管の裏面に排水管用金具を固定し、この排水管用金具と橋脚用金具とを互いに係合して前記橋脚用排水管を前記橋脚に取り付けたことを特徴とする橋脚用排水管の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−169690(P2008−169690A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5793(P2008−5793)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2001−18556(P2001−18556)の分割
【原出願日】平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願人】(395000348)日本ホーバス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】