説明

機器の物理量のためのセンサ装置

【課題】機器の物理量を測定するためのセンサ装置の調整プロセスの安定性を向上させること。
【解決手段】センサ装置(6)のセンサ値(s)は納品状態でほぼ50%低減させた納品時スケーリング(ds)のセンサ値を有している。このセンサ値は納品状態をも表わしている。機器り取付け後、閾値(t)を越えると同時にセンサ装置(6)の初期設定調整プログラムを開始し、当該プログラムの過程で納品時スケーリング(ds)を正規の作動時スケーリング(os)に変換させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の物理量を測定するためのセンサ装置であって、出力されたセンサ信号を、物理量の実際の測定範囲に適合させるため、電子評価装置によりスケーリング可能であるセンサ装置とセンサ装置の調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車においては、たとえばフットペダルとして形成されたアクチュエータを、フットペダルの角度位置を検知するセンサと連結させることが通例になっている。フットペダルの位置信号の調整は自動車への取付け後に行う。すなわちフットペダルの係止位置において外部からの信号入力を介して補助信号を設定するか、或いはセンサ自身の位置を機械的に調整することによって行なう。このときセンサに印加される信号レベルは以後出力値として記憶され、後の作動時に減算または相殺される。この種の補正の場合、センサが最終的に調整されたか否かをセンサ信号に基づいて確実に確定させることができないのが欠点である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、調整プロセスの安定性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は請求項1の特徴部分に記載した構成、すなわち機器に取付ける前のセンサ信号が、作動可能な状態にあるセンサ装置の正規のセンサ信号とはかなり異なる特性を有し、取付けたセンサのセンサ信号をそのセンサの最初のスケーリング時に正規の特性に変換可能であることを特徴とするセンサ装置により解決される。センサ信号の変換は、必要なすべての調整ステップを実施した後に電子センサ装置自身によって行なう。これにより、調整が完了したか否かをコントロール装置はいつでも確定することができる。たとえば自動車に設けられる中央制御装置は、初期値が高すぎた場合にはスタートを阻止することができる。
【0005】
本発明の他の有利な構成は請求項2から10までに特徴づけた構成から明らかである。
【0006】
請求項2に記載の搬送周波数の変更は、センサの状態を確定するうえで簡単で確実な手段である。この場合納品時周波数は、出力された信号を中央制御装置により処理できないように設定されていてよい。
【0007】
請求項3に記載のセンサでは、変形される納品時スケーリングの下限値が最終的に取付けられ設定されたセンサ装置の最大設定下限値をはるかに上回っていてよい。たとえばパルス幅を変調したセンサ信号の正規の作動時適合スケーリングは、通常10%−90%に設定される。たとえば25%の場合、納品時スケーリングは許容限界値のはるか上方で始まる。
【0008】
請求項4に記載の他の構成により、さしあたりたとえば直線化した納品時スケーリングにより、取付けられたセンサの最高測定値と最低測定値とを測定し、この測定値を10%または90%の限界値へシフトさせることが可能である。この場合納品時スケーリングの特性は変化しないので、さらに中間値を調整する必要がない。これにより阻害的な補助測定装置を用いた補助的な比較測定を行なう必要がなくなる。
【0009】
請求項5に記載の他の構成では、作動時スケーリングを納品時スケーリングにほぼ比例するように簡単に拡張させることができる。
【0010】
請求項6に記載のセンサ装置は特に操作機構の位置測定に適しており、たとえば位置固定の機械的エンドストッパーを用いたペダルの角度測定に適している。
【0011】
請求項7に記載のコントロール装置は、たとえば調整過程全体をも自律的に監視する電子センサ装置の一部である。他のテスト装置とのリンクは必要ない。
【0012】
請求項8および請求項9に記載の方法は、センサ装置の簡単で確実な調整を可能にする。たとえば、給電を開始した後の、所定の上部閾値を上回るような最初のペダル操作は、アクチュエータの製造時のドウェル(Verweilen(休止:dwell))に関する出力値を用いて監視される。この値がその後少なくとも1回達成され保持されるならば、この値を上部ストッパー位置に割り当て、納品時スケーリングを作動時スケーリングに変換させることで、アクチュエータのデータ技術的初期設定が終了する。
【0013】
請求項10に記載の他の構成では、警告信号をたとえば自動車の方向指示器等の機器の警告装置において簡単に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の1実施形態が図面に図示されており、以下にこれを詳細に説明する。
【0015】
図1によれば、機械的に位置調整可能な部材は、操作機構として用いられるフットペダル1の形態で、自動車の足空間に取付け可能なハウジング5内でペダル軸線2のまわりに回動可能に支持されている。フットペダル1の上方には、位置固定して装着されたコイル部材3があり、コイル部材3はフットペダル1のほうへ指向する電磁交番磁界を誘導する。コイル部材3はハウジングに固定されたセンサ装置6の一部である。センサ装置6はハウジング5に固定され、コイル部材のための電子評価装置9を含んでいる。
【0016】
フットペダル1には金属部材4が装着されている。金属部材4はコイル部材とともに誘導性センサを形成しており、金属部材4とコイル部材3との間隔はフットペダル1の回動位置に依存して変化する。これはコイル部材3の誘導性リアクタンスを対応的に変化させ、コイル部材3の測定可能なパワーロスを対応的に変化させる。金属薄板を曲げて成形した金属部材4は凸カム状に湾曲しており、湾曲の度合いは、センサの出力信号がフットペダル1の角度位置にほぼ比例するように構成されている。
【0017】
フットペダルは、図示したホームポジションでは、復帰ばね7の力によってハウジング5の静止ストッパー8に当接しており、この場合静止位置を占めている。静止位置のセンサ値は対応する初期値である。金属部材4の一端はコイル部材3に密接しており、コイル部材3の電磁交番磁界に強く影響する。
【0018】
図2によれば、フットペダルは作動位置へ回動してエンドストッパー10に係止されている。作動位置ではコイル部材3に対する間隔がかなり大きくなっている。コイル部材の誘導性リアクタンス、したがって電子評価装置9から出力されるセンサ値は対応的に変化する。
【0019】
図3は、静止ストッパー8とエンドストッパー10との間にあるフットペダルの位置pに依存した、フットペダルの初期設定前後におけるセンサ信号のセンサ値sの変化を示したものである。直線状の納品時スケーリングdsはセンサ装置の製造業者により設定されたセンサ値を表わし、作動時スケーリングosは変換後のセンサ値を表わしている。納品時スケーリングにおいてまだ初期設定されていないセンサ装置の最大値は作動時スケーリングの50%程度である。
【0020】
センサをペダル装置に取付け、給電を開始した後、センサ値dlの静止ストッパー8の位置からセンサ値duのエンドストッパーまでフットペダルをいっぱいに踏み込む。この場合、センサ値duのかなり下にある閾値tを越えると同時に電子制御評価装置の調整プログラムをスタートさせ、センサ値duのドウェルをエンドストッパーに割り当て、次にセンサ値dlのドウェルを静止ストッパーに割り当てる。これらの値は、ストッパーへの到達を伴う少なくとも1回の更なる操作サイクルによって確認する必要がある。次に、電子評価装置により納品時スケーリングをほぼ2倍のセンサ値をもった操作時スケーリングに変換する。その際、静止ストッパー8のセンサ値dlをolへシフトさせ、エンドストッパー10のセンサ値olをouへシフトさせ、ペダル位置に対する線形関係を維持する。もし所定の操作サイクルを完了させなければ、納品時スケーリングは不変であり、これは後の操作段階において確実に検知でき、対応する警告信号を発生させる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】変位センサを備えた自動車のペダル装置をホームポジションで示した部分側面図である。
【図2】図1の個々の部品を他の作動位置で示した図である。
【図3】図1のペダル装置のペダル位置が変化したときのセンサ値の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1 フットペダル、2 ペダル軸線、3 コイル部材、4 金属部材、5 ハウジング、6 センサ装置、7 復帰ばね、8 静止ストッパー、9 電子評価装置、10 エンドストッパー、s センサ値、t 閾値、p 位置、os 作動時スケーリング、ds 納品時スケーリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の物理量を測定するためのセンサ装置(6)であって、出力されたセンサ信号を、物理量の実際の測定範囲に適合させるため、電子評価装置(9)によりスケーリング可能である前記センサ装置(6)において、
機器に取付ける前のセンサ信号が、作動可能な状態にあるセンサ装置の正規のセンサ信号とはかなり異なる特性を有し、取付けたセンサのセンサ信号をそのセンサの最初のスケーリング時に正規の特性に変換可能であることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
センサ信号が搬送周波数を有し、搬送周波数は、センサの最初のスケーリング時に、予め設定された納品時周波数とはかなりずれた所定の作動時周波数に変換可能であることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
機器に取付ける前のセンサ装置(6)がセンサ信号の限界値(du)を持った納品時スケーリング(ds)を有し、前記限界値(du)は最終的にスケーリングされた作動可能な状態にあるセンサ装置(6)の対応する限界値範囲(ou)のかなり外側にあることを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
納品時スケーリング(ds)が所定の曲線で物理量の値を表わしていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
納品時スケーリング(ds)のセンサ信号の最大値(du)が作動可能にスケーリングされたセンサ装置(6)のセンサ信号の最大値(ou)よりもかなり下回っていることを特徴とする請求項3または4に記載のセンサ装置。
【請求項6】
センサ装置(6)がストッパーにより調整範囲を制限されている機械的なアクチュエータの位置を検知することを特徴とする請求項3,4または5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
電子評価装置(9)が調整過程を初期設定し制御するためのコントロール装置を有していることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のセンサ装置。
【請求項8】
上記請求項のいずれか一つに記載のスケーリング可能なセンサ装置(6)を調整する方法において、
納品時スケーリング(ds)の所定の閾値(t)外のセンサ値のドウェルを、最終取り付け状態にあるアクチュエータの最終位置として評価することを特徴とする方法。
【請求項9】
センサ装置(6)の作動時スケーリング(os)または所定の作動周波数を、終端位置を繰り返し検出した後にはじめて設定することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
初期設定を行なわなかったときにコントロール装置が警告信号を発するためのコントロール信号を内部または外部の信号化要素に発生させることを特徴とする請求項8または9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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