説明

機器の評価システム及び評価方法

【課題】実機の製造前に機器の機構要素の動作範囲が設計上の動作許容範囲内であるか否かを評価できる機器の評価システム及び評価方法を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、評価対象の機器について一連の動作を規定する動作情報を読み込んで、動作情報を動作情報記憶領域に格納する入力装置と、動作情報を動作情報記憶領域から読み出し、動作情報に含まれる機器を構成する機構要素の動作範囲が予め設定された動作許容範囲内であるか否かを評価し、評価した結果を評価結果記憶領域に格納する動作評価装置と、評価結果を出力する出力装置とを備える機器の評価システムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、機構要素を有する機器の評価システム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばメカトロニクス機器などの、制御ソフトウェアによって機構要素の動作が制御される機器について、機器の動作を実機の製造前に設計段階で評価する方法として、機器に組み込まれる制御ソフトウェア、電装要素、機構要素の動作をシミュレートする動作シミュレーションソフトウェアを用いる方法がある。機器の動作シミュレーションは、一般に、メカトロニクスシミュレータなどの機器シミュレータ或いは機構シミュレーションソフトウェアなどにより実現される。
【0003】
機器の動作シミュレーションによって実機の製造前に機器の設計ミスを自動検出するには、例えば、機構要素間の干渉(衝突)をチェックする。これにより、制御ソフトウェアに記述された動作を機器が実行することによって機構要素を破壊してしまう設計ミスが、自動検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−222572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機構要素の故障、破壊などの不具合要因は機構要素間の干渉だけではない。例えば、アクチュエータの速度が機構要素の設計上の許容範囲内にないことなども、機器設計上の問題である。しかし、機構要素の動作が設計上の許容範囲内であるか否かを、制御ソフトウェア或いは機構設計情報のどちらかの評価で発見することは困難である。
【0006】
本発明は、実機の製造前に機器の機構要素の動作範囲が設計上の動作許容範囲内であるか否かを評価できる機器の評価システム及び評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、(イ)評価対象の機器について一連の動作を規定する動作情報を読み込んで、動作情報を動作情報記憶領域に格納する入力装置と、(ロ)動作情報を動作情報記憶領域から読み出し、動作情報に含まれる機器を構成する機構要素の動作範囲が予め設定された動作許容範囲内であるか否かを評価し、評価した結果を評価結果記憶領域に格納する動作評価装置と、(ハ)評価結果を出力する出力装置とを備える機器の評価システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る機器の評価システムの構成を示す模式図である。
【図2】機器に含まれるアクチュエータの構成例を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る機器の評価システムのデータベースにデータを登録する場合の入力機器の入力画面の例を示す模式図である。
【図4】第1の実施形態に係る機器の評価システムによって機器を評価する方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係る機器の評価システムが出力する評価結果の例である。
【図6】第1の実施形態に係る機器の評価システムにより抽出された機構要素の動作例を示す模式図である。
【図7】第2の実施形態に係る機器の評価システムの構成を示す模式図である。
【図8】第2の実施形態に係る機器の評価システムによって機器を評価する方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】第2の実施形態に係る機器の評価システムが出力する評価結果の例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。又、以下に示す第1及び第2の実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る機器の評価システム1は、図1に示すように、動作評価装置10、記憶装置20、入力装置30、出力装置40、データベース50を備える。記憶装置20は、動作情報記憶領域201、評価結果記憶領域202を有する。評価システム1によるの評価対象の機器は、例えばメカトロニクス機器である。
【0011】
入力装置30は、評価対象の機器について一連の動作を規定する動作情報を読み込む。入力装置30は、読み込んだ動作情報を動作情報記憶領域201に格納する。
【0012】
動作評価装置10は、動作情報を動作情報記憶領域201から読み出して、動作情報に含まれる機器を構成する機構要素の動作範囲が予め設定された動作許容範囲内であるか否かを評価する。動作評価装置10は、評価した結果を評価結果記憶領域202に格納する。
【0013】
出力装置40は、評価結果記憶領域202に格納された評価結果を出力する。出力装置40としては、評価された機構要素などを表示するディスプレイやプリンタ、或いはコンピュータ読み取り可能な記録媒体に保存する記録装置等が使用可能である。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、例えばコンピュータの外部メモリ装置、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の電子データを記録することができるような媒体等を意味する。具体的には、フレキシブルディスク、CD−ROM、MOディスク等が「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」に含まれる。
【0014】
データベース50には、種々の機器に含まれる各機構要素の動作許容範囲が登録されている。
【0015】
動作情報は、例えば、評価対象の機器の動作を記述したタイミングチャート、フローチャート、機器に組み込まれる制御ソフトウェアなどである。評価対象の機器が、例えば製品の製造工程に使用される製造装置である場合、その製造工程における機器の一連の動作が動作情報に含まれる。
【0016】
機構要素の動作範囲は、評価対象の機器の一連の動作における、例えば機構要素の速度、加速度、フレッチング破壊の発生要因である移動距離と連続して繰り返す回数、などについての範囲である。
【0017】
フレッチング破壊とは、機構要素間の接触する2面間が相対的な繰り返し微小滑りを生じ、磨耗することで破壊する現象である。ボールねじやガイドには機構的な滑り部分があるが、通常の使用では潤滑油により機構要素同士が直接接触しない。しかし、移動距離が短い動作を連続して行うと潤滑面が破れて直接接触面が生じ、機構要素の破損に至ることがあり、これをフレッチング破壊と呼んでいる。ボールねじやガイド部で、転がりのために用いられている鋼球の円周距離よりも少ない距離の移動が繰り返されると、潤滑油の供給が満足に行われずにフレッチング破壊が発生しやすいといわれている。しかし、フレッチング破壊の発生メカニズムは複雑であり、実験的或いは過去の破壊時の発生条件をベースに、動作許容範囲を定める場合も多い。いずれにしても、短い距離の移動を繰り返し行うことで発生する破壊であり、短い距離の移動を繰り返したら、長い距離の移動を行うような動作パターンを設定することで対策できる。このため、フレッチング破壊が発生する移動距離及び連続して繰り返す回数を機構要素の動作許容範囲として設定することで、フレッチング破壊が発生するか否かを評価することができる。
【0018】
動作許容範囲は、評価対象の機器を構成する機構要素の速度、加速度、移動距離、連続して繰り返す回数などの動作について、各機構要素の設計上の動作許容範囲に応じて設定される。例えば、機構要素が許容できる最大速度、最大加速度を動作許容範囲として設定する。或いは、フレッチング破壊の発生する条件である移動距離及び連続して繰り返す回数を動作許容範囲として設定する。
【0019】
なお、機構要素の動作許容範囲は、機構要素を構成する各部品の動作許容範囲を考慮して設定される。例えば、ボールねじ、サーボモータ及びガイド部を組み合わせて構成される図2に示すアクチュエータが、メカトロニクス機器で多く使用されている。ボールねじは、サーボモータの回転運動を直線運動に変換する機構要素である。図2に示したアクチュエータの動作許容範囲は、ボールねじ、サーボモータ及びガイド部のすべてが動作許容範囲内であるように設定される。ボールねじ速度=サーボモータ回転数×リードの関係があるので、この関係を考慮した上で、このアクチュエータの速度及び加速度の動作許容範囲が決定される。なお、リードは、1回転する間にボールねじが進む距離である。
【0020】
決定された動作許容範囲をデータベース50に登録することにより、実際の動作時におけるアクチュエータの速度及び加速度などが動作許容範囲内であるか否かを評価できる。
【0021】
評価対象の機器の各機構要素の動作許容範囲は、例えば図1に示す入力機器51を介して、データベース50に登録される。図3に、データベース50に機構要素の動作許容範囲を登録するための入力機器51の入力画面の例を示す。
【0022】
図3に示した入力画面において、「アクチュエータID」の項目には、動作範囲が評価されるアクチュエータのID番号を入力する。このID番号は、評価対象の機器に含まれるアクチュエータを特定するために、各アクチュエータにそれぞれ付された番号である。「速度範囲」及び「加速度範囲」の項目に、そのアクチュエータに許容される最大速度、最大加速度をそれぞれ入力する。「フレッチング」の項目に、そのアクチュエータでフレッチング破壊が発生する移動距離及び連続して繰り返す回数を入力する。
【0023】
なお、機構要素の動作許容範囲が登録されるデータベース50のデータを動作評価装置10に組み込むことも考えられる。しかし、評価システムの汎用性を考慮すると、機構要素の動作許容範囲の情報はデータベース化することが有利である。
【0024】
次に、図1に示した機器の評価システム1によって、機器を評価する方法を、図4に示したフローチャートを参照して説明する。以下では、評価対象の機器を構成する機構要素のうち、任意のアクチュエータを指定して評価する場合を例示的に説明する。
【0025】
(イ)ステップS10において、評価対象の機器の動作情報が、入力装置30を介して動作情報記憶領域201に格納される。
【0026】
(ロ)ステップS20において、評価対象の機器を構成する機構要素のうちの、動作範囲を評価したいアクチュエータを特定するアクチュエータIDが、入力装置30を介して機器の評価システム1に入力される。
【0027】
(ハ)ステップS30において、動作評価装置10が、評価対象の機器の動作情報を動作情報記憶領域201から読み出す。動作評価装置10は、読み出した動作情報から、アクチュエータIDによって指定されたアクチュエータの動作範囲を抽出する。
【0028】
(ニ)ステップS40において、動作評価装置10が、アクチュエータIDによって指定されたアクチュエータの動作許容範囲をデータベース50から読み出す。
【0029】
(ホ)ステップS50において、動作評価装置10が、動作情報から抽出したアクチュエータの動作範囲と、データベース50から読み出したアクチュエータの動作許容範囲とを比較する。アクチュエータの動作範囲が動作許容範囲内である場合には、処理を終了する。一方、アクチュエータの動作範囲が動作許容範囲外である場合には、処理はステップS60に進む。
【0030】
(ヘ)ステップS60において、動作範囲が動作許容範囲外であるアクチュエータを特定する情報、及び動作範囲が動作許容範囲外である旨の情報などの評価結果が、評価結果記憶領域202に格納される。そして、出力装置40が、評価結果記憶領域202に格納された評価結果を出力する。出力装置40の表示画面に出力された評価結果の例を、図5に示す。図5は、アクチュエータID=3のアクチュエータの動作速度が、速度の動作許容範囲Smを超える速度Saであることを表示する例である。出力装置40が評価結果を出力した後、処理を終了する。
【0031】
なお、アクチュエータの動作範囲が動作許容範囲内である場合にも、アクチュエータの動作範囲の情報、及び動作範囲が動作許容範囲内である旨の情報などの評価結果を評価結果記憶領域202に格納してもよい。更に、出力装置40が、動作範囲が動作許容範囲内であるアクチュエータの評価結果を出力してもよい。
【0032】
タイミングチャート、フローチャート、機器に組み込まれる制御ソフトウェアが動作情報として動作情報記憶領域201に格納されている場合、上記のように動作評価装置10が、これらの動作情報から機構要素の動作を抽出する。図6に、抽出された機構要素の動作の例を示す。図6は、機器の一連の動作におけるアクチュエータA1、A2、A3の各速度を示している。図6に示した破線は、アクチュエータA1、A2、A3の速度に対する動作許容範囲を定める最大値MAX及び最小値MINを示す。図6に示した例では、アクチュエータA3の速度が動作許容範囲外である。
【0033】
動作評価装置10が機構要素の動作範囲と機構要素の設定された動作許容範囲とを比較する方法としては、例えばソフトウェアの汎用開発言語を用いて比較する命令を記述する方法や、表計算ソフトなどのマクロ機能により簡易的に比較する方法などが考えられる。評価内容の複雑さに応じて、比較方法を任意に選択可能である。
【0034】
なお、動作範囲を評価する機構要素の速度、加速度、フレッチング破壊が発生する条件を、動作情報として動作情報記憶領域201に格納してもよい。この場合、動作情報から機構要素の動作範囲を容易に抽出できる。
【0035】
また、動作評価装置10は、機器の製品寿命の予測値を算出することができる。例えば、評価対象の機器の一連の動作における、それぞれの機構要素の寿命に影響を与える条件、例えば機構要素の走行距離や機構要素に加えられる負荷などを、動作情報から動作評価装置10が算出する。機器が1日で何回動作するか、1年間で何日動作するかなどの機器の一定期間における動作回数に関する稼動情報を評価システム1に入力することにより、動作評価装置10が、機構要素の走行距離や加えられる負荷について、機構要素の動作が動作許容範囲を超える日数を算出する。機構要素の動作が動作許容範囲を超える日数が、機器の製品寿命の予測値である。
【0036】
機構要素の寿命については、各機構要素ごとに研究が行われている。例えば、ボールねじについては、実動作時の寿命に大きく影響を与える条件として、ボールねじに加えられる負荷と走行距離が挙げられる。
【0037】
機器の評価システム1を使用する評価者は、算出された製品寿命の予測値が、機器の所望の寿命よりも長いか短いかを判断する。算出された製品寿命の予測値が所望の製品寿命をより短い場合には、例えば出力装置40にアラームを出力するようにしてもよい。また、予測値が機器の所望の寿命よりも短い場合には、例えば制御ソフトウェアを修正するなどして、所望の製品寿命を実現する。
【0038】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る機器の評価システム1では、機器の動作情報を用いて機器に含まれる機構要素の動作範囲が抽出され、機構要素の動作範囲と機構要素の設計上の動作許容範囲とが比較される。つまり、実機の製造前に機器の機構要素の動作範囲が設計上の動作許容範囲内であるか否かを評価できる機器の評価システム及び評価方法を実現することができる。
【0039】
実際の機器の設計工程では、機構設計者、電装設計者と制御ソフトウェア開発者は同一人ではなく、それぞれの専門性をもって設計している場合が多い。そのため、機構設計者が想定した機構要素の動作許容範囲が、制御ソフトウェア開発者に正しく伝わらない場合がある。この場合、動作許容範囲を超えた制御ソフトウェアにより機構要素が動作し、機構要素の破損などの悪影響が生じることがある。機器の構成が複雑化し、アクチュエータやセンサの数や種類や機能が増えていることからも、このような問題が発生する可能性が高まっている。このため、第1の実施形態に係る機器の評価システム1のように、制御ソフトウェアと機構要素情報を結合した状態での評価が必要である。
【0040】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る機器の評価システム1は、図7に示すように、機器シミュレータ60を更に備える点が、図1に示した機器の評価システム1と異なる。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0041】
機器シミュレータ60は、評価対象の機器に組み込まれる制御ソフトウェアによって制御される場合の機器の動作情報を生成する。機器シミュレータ60によって生成された機構要素の動作情報は、入力装置30を介して、動作情報記憶領域201に格納される。以下に、機器シミュレータ60について説明する。
【0042】
機器シミュレータ60の電装シミュレータ62は、評価対象の機器に組み込まれる制御ソフトウェア61によって制御されるモータや回路基板などの電装要素を仮想化した制御ハードウェアの仮想的なモデル(以下において、「電装モデル」という。)を用いて、制御ソフトウェア61に記述された動作パターンに従って電装モデルを動作させる電装シミュレーションを行う。電装シミュレーションにより、最終的に実機に組み込む制御ソフトウェア61による機器の制御に関して動作確認ができる。なお、制御ソフトウェア61は、図示を省略するコンピュータ上で実行され、制御ソフトウェア61に記述された命令が電装シミュレータ62に出力される。この命令に従って、電装モデルを動作させる電装シミュレーションが実行される。
【0043】
機器シミュレータ60の機構シミュレータ63は、評価対象の機器の3次元CADデータ64から仮想的な機構モデルを作成する。機構シミュレータ63は、電装シミュレーションを実行する電装シミュレータ62から送られる機器の動作情報と機構モデルとを用いて、機器の動作をシミュレートとする機構シミュレーションを実行する。つまり、機構シミュレーションによって、機器に組み込まれる制御ソフトウェア61によって機器の動作が制御された場合における機器の動作がシミュレートされる。
【0044】
機構シミュレーションの結果は、表示装置65の画面上に表示される。3次元CADデータ64を使用することで、表示装置65の画面上に機器の動作をアニメーションで表示することも可能である。
【0045】
機構シミュレーションによって機器の機構要素が動作することにより、機構要素の動作をモニタする各種センサ情報が変化する。センサ情報は、電装シミュレータ62を経由して、制御ソフトウェア61に伝えられる。これにより、制御ソフトウェア61は、電装シミュレータ62への命令が正しく実行されたか否かを判断できる。命令が正しく実行された場合には、制御ソフトウェア61が次の命令を電装シミュレータ62に出力する。
【0046】
機構シミュレータ63は、機構シミュレーションによって得られた機器の各機構要素の動作履歴を、動作情報として動作情報記録装置65に格納する。この動作情報は、制御ソフトウェア61に記述された動作パターンに従って動作する機器の動作情報である。つまり、機器シミュレータ60は、制御ソフトウェア61から評価対象の機器の動作情報を作成する。そして、図7に示した機器の評価システム1は、機器シミュレータ60によって作成された機器の動作情報を用いて、機器の機構要素の動作範囲が動作許容範囲内であるか否かを評価する。
【0047】
第2の実施形態に係る評価システム1によって機器を評価する方法の例を、図8に示す。
【0048】
図8のステップS5において、機器シミュレータ60により、評価対象の機器の動作情報が作成される。作成された動作情報は、入力装置30を介して動作情報記憶領域201に格納される。
【0049】
その後、動作評価装置10が機器シミュレータ60によって作成された動作情報を用いて、図4に示したフローチャートのステップS20〜ステップS60と同様にして、機器の動作情報に含まれる機構要素の動作範囲が予め設定された動作許容範囲内であるか否かを評価する。
【0050】
例えば、動作評価装置10が、動作情報記憶領域201から読み出した動作情報から抽出されたアクチュエータの動作範囲と、データベース50から読み出したアクチュエータの動作許容範囲とを比較する。そして、アクチュエータの動作範囲が動作許容範囲外である場合に、そのアクチュエータを特定する情報、及び動作範囲が動作許容範囲外である旨の情報などの評価結果が、評価結果記憶領域202に格納される。そして、出力装置40が、評価結果記憶領域202に格納された評価結果を出力する。評価結果は、例えば図5に示したように出力される。
【0051】
なお、アクチュエータの動作範囲が動作許容範囲内である場合にも、アクチュエータの動作範囲の情報、及び動作範囲が動作許容範囲内である旨の情報などの評価結果を評価結果記憶領域202に格納し、出力装置40が評価結果を出力してもよい。
【0052】
機構要素の動作範囲が動作許容範囲にない場合における、評価結果の他の出力例を図9に示す。図9は、3次元CADデータ64を用いて機構シミュレータ63が生成する機器の画像に、動作範囲が動作許容範囲にない機構要素をハッチングをかけて示した例である。例えば、動作範囲が動作許容範囲内にない機構要素の部分の色、濃度、模様のパターンを他の部分と変えて機器の画像を出力することにより、評価結果を分かりやすく出力することができる。
【0053】
なお、機構シミュレーションには、連続系方程式からなるダイナミクスモデルを用いて機構要素の動作をシミュレーションするダイナミクスシミュレーションと、3次元の機構モデルを用いて幾何学的な動作をシミュレーションするキネマティクスシミュレーションとがある。
【0054】
機器の製品寿命の予測値の算出については、ダイナミクスシミュレーションも含んだ機構シミュレーションを用いる場合には、機構要素の各動作ごとに機構要素に加えられる負荷を算出し、算出された負荷と走行距離から、機器が所望の寿命を満足しているか否かを評価することができる。
【0055】
また、キネマティクスシミュレーションのみの機構シミュレーションを用いる場合には、予め負荷によるトルクの代表値を決定しておくことで、走行距離により寿命の評価を行うことができる。キネマティクスシミュレーションのみの機構シミュレーションを用いる場合は、ダイナミクスシミュレーションとキネマティクスシミュレーションを含んだ機構シミュレーションの場合に比べて、理論上の算出精度が低下するが、評価システムの構成を簡単にすることができる。
【0056】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る機器の評価システム1によれば、制御ソフトウェア61に記述された動作パターンに従って機構要素を動作させる機器シミュレータ60によって、機器の動作情報を作成する。つまり、シミュレーションによって制御ソフトウェア61から機器の動作情報が抽出される。そして、制御ソフトウェア61の記述に基づく機器の機構要素の動作範囲と機構要素の設計上の動作許容範囲とを比較することで、機器の機構要素の動作範囲が設計上の動作許容範囲内であるか否かを、実機の製造前に評価できる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0057】
上記のようにいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1…機器の評価システム、10…動作評価装置、20…記憶装置、30…入力装置、40…出力装置、50…データベース、51…入力機器、60…機器シミュレータ、61…制御ソフトウェア、62…電装シミュレータ、63…機構シミュレータ、64…3次元CADデータ、65…動作情報記録装置、65…表示装置、201…動作情報記憶領域、202…評価結果記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の機器について一連の動作を規定する動作情報を読み込んで、前記動作情報を動作情報記憶領域に格納する入力装置と、
前記動作情報を前記動作情報記憶領域から読み出し、前記動作情報に含まれる前記機器を構成する機構要素の動作範囲が予め設定された動作許容範囲内であるか否かを評価し、評価した結果を評価結果記憶領域に格納する動作評価装置と、
前記評価結果を出力する出力装置と
を備えることを特徴とする機器の評価システム。
【請求項2】
前記機器に組み込まれる制御ソフトウェアによって制御される前記機器の動作を機構シミュレーションを用いてシミュレートすることにより、前記動作情報を作成する機器シミュレータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の機器の評価システム。
【請求項3】
前記動作評価装置が、前記機器の一定期間における動作回数に関する稼動情報と前記動作情報を用いて前記機器の製品寿命の予測値を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の機器の評価システム。
【請求項4】
入力装置、動作評価装置、出力装置、動作情報記憶領域及び評価結果記憶領域を備える評価システムを用いる機器の評価方法であって、
前記入力装置が、評価対象の機器について一連の動作を規定する動作情報を読み込んで、前記動作情報記憶領域に格納するステップと、
前記動作評価装置が、前記動作情報を前記動作情報記憶領域から読み出し、前記動作情報に含まれる前記機器を構成する機構要素の動作範囲が予め設定された動作許容範囲内であるか否かを評価し、評価した結果を前記評価結果記憶領域に格納するステップと、
前記出力装置が、前記評価した結果を出力するステップと
を含むことを特徴とする機器の評価方法。
【請求項5】
前記機器の評価システムが備える機器シミュレータが、前記機器に組み込まれる制御ソフトウェアによって制御される前記機器の動作を機構シミュレーションを用いてシミュレートすることにより、前記動作情報を作成することを特徴とする請求項4に記載の機器の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48368(P2012−48368A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188218(P2010−188218)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】