説明

機器挿入回収装置

【課題】掘進機に設置される発信器や各種センサ等の機器類の交換やメンテナンスを容易に行うことを可能とした機器挿入回収装置を提案する。
【解決手段】掘進機のバルクヘッドM3に形成された開口部M4の開閉を行うゲート11と、バルクヘッドM3の内側に配管されて開口部M4に通じる管路12と、管路12を開閉するボールバルブ13と、管路12に挿通可能な挿入管16と、挿入管16の前端部に配設された機器類17と、挿入管16に押出し力および引込み力を付与する押引手段18とを備える機器挿入回収装置1であって、挿入管16を開弁状態のボールバルブ13および開口部M4に挿通させることで、機器類17をバルクヘッドM3の外側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機等に設置する機器挿入回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事やボーリング工事等の地下構造物の施工では、地中での現在位置を正確に把握した上で、計画の線形に沿って施工を進行させるのが一般的である。
【0003】
地中での現在位置(計測点)を正確に検出する方法として、例えば特許文献1には、座標が既知である3または4点の受信点に対して、掘進機に設けられた発信器から弾性波を発信して、各受信点までの伝播時間を測定することにより掘進機の位置を算出する地中位置検出方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−129883号公報([0013]−[0024]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掘進機の外側に設置される発信器や各種センサ等の機器類は、振動や衝撃に弱く、掘進中に故障や破損する可能性が非常に高い。
【0005】
このような掘進機の外側に設置された機器類のメンテナンスは、バルクヘッドに設けられたマンホールから作業員がチャンバ内に入って作業を行う必要がある。しかし、土砂圧や水圧が負荷されている切羽において、バルクヘッドのマンホールを開けて作業を行うことは非常に困難であった。
【0006】
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、掘進機に設置される発信器や各種センサ等の機器類の交換やメンテナンスを容易に行うことを可能とした機器挿入回収装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明の機器挿入回収装置は、掘進機のバルクヘッドに形成された開口部の開閉を行うゲートと、前記バルクヘッドの内側に配管されて前記開口部に通じる管路と、前記管路を開閉するボールバルブと、前記管路に挿通可能な挿入管と、前記挿入管の前端部に配設された機器類と、前記挿入管に押出し力および引込み力を付与する押引手段と、を備えており、前記挿入管が開弁状態の前記ボールバルブおよび前記開口部に挿通されることで、前記機器類が前記バルクヘッドの外側に配置されることを特徴としている。
【0008】
かかる機器挿入回収装置によれば、機器類をバルクヘッドの切羽側に押出すことが可能になるとともに、押出した機器類をバルクヘッドの内側に回収することが可能となる。
そのため、機器類の挿入および撤去を繰り返し行うことが可能となり、機器類の交換やメンテナンスを容易に行うことができる。
【0009】
また、前記管路に前記バルクヘッド内外の圧力差を調整する加圧バルブが接続されていてもよい。
【0010】
また、前記管路内の土砂を排出するためのドレンバルブが当該管路に接続されていれば、装置内の流入土砂や流入水の排出が可能となる。
【0011】
また、前記管路の後端部に、止水手段が装着されていれば掘削機内に土砂等が流入することを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の機器挿入回収装置によれば、掘進機に設置される機器類の交換やメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好適な実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、説明において、同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0014】
本実施形態では、図1に示すように、シールドマシン(掘進機)Mの内側から、音波発信器等の機器類を切羽K側に配置し、シールドマシンMの地中位置検出を行う場合に使用する機器挿入回収装置1について説明する。なお、本実施形態では、機器挿入回収装置1をシールドマシンMに使用するものとしたが、例えばTBM(トンネルボーリングマシン)や推進機等に使用してもよく、本発明に適用する掘進機はシールドマシンに限定されるものではない。
【0015】
シールドマシンMは、図1に示すように、主に地山Gの掘削を行うカッタヘッドM1とカッタヘッドM1の後方に位置されていてシールドマシンMの内部の各種設備を防護するシールド部M2とから構成されている。
【0016】
シールド部M2の前部分は、バルクヘッドM3により仕切られており、カッタヘッドM1とバルクヘッドM3との間にカッタヘッドM1により掘削された土砂が一時的に堆積されるチャンバM5が形成されている。
バルクヘッドM3には、開口部M4が形成されており、シールド部M2内から機器類17を切羽K側に挿入することが可能に構成されている(図2(b)参照)。
【0017】
機器挿入回収装置1は、バルクヘッドM3に固定されていて、地中位置検出時に開口部M4から切羽K側に機器類17を挿入し、計測後回収する装置である。
機器挿入回収装置1は、図2(a)に示すように、ゲート11と、管路12と、ボールバルブ13と、加圧バルブ14と、ドレンバルブ15と、挿入管16と、機器類17と、押引手段18と、止水手段19と、を備えている。
【0018】
ゲート11は、シールドマシンMのバルクヘッドM3に形成された開口部M4の開閉を行う部材であり、バルクヘッドM3の外面に取り付けられている。通常時(機器類17を押し出していないとき)に管路12内への水や土砂の流入を防止する。
【0019】
ゲート11は、開口部M4よりも大きな面積を有した板状の扉部11aと、バルクヘッドM3に沿って配置されたレール部11bとを備えて構成されている。
扉部11aは、レール部11bに沿って摺動することで、開口部M4の開閉を行う。なお、ゲート11の構成は限定されるものではない。
【0020】
管路12は、バルクヘッドM3の内側において、開口部M4に通じるように配管された管体からなり、挿入管16を挿通可能な内径を備えている。
【0021】
管路12には、管路12を開閉するボールバルブ13と、バルクヘッドM3内外の圧力差を調整する加圧バルブ14と、管路12内の土砂を排出するためのドレンバルブ15と、が装着されている。
【0022】
管路12は、ボールバルブ13の前後に一体に形成された第一管路12aおよび第二管路12bと、第二管路12bの後端に接続された第三管路(圧力調整管)12cを備えて構成されており、第二管路12bと第三管路12cとの接続部において分割可能に構成されている。
【0023】
第一管路12aの前端、第二管路12bの後端および第三管路12cの前後端には、フランジ12dが形成されている。バルクヘッドM3への第一管路12aの固定および第二管路12bと第三管路12cとの固定は、フランジ12dを介して行う。また、第三管路12cには、後端のフランジ12dを介して止水手段19が接続されている。
【0024】
ボールバルブ13は、弁ハウジング13aと、弁体13bと、レバー13cとを備えて構成されている。
【0025】
弁ハウジング13aは、略球状に形成されており、内部には、貫通孔13dが形成された球状の弁体13bが回転自在に配設されている。貫通孔13dの内径は、管路12の内径と同等であって、挿入管16の外径よりも大きく形成されている。
【0026】
弁体13bは、弁ハウジング13aの上部に配置されたレバー13cに連結されている。レバー13cを介して弁体13bを回転させて貫通孔13dを管路部13bに一致させることで、管路12を開口し、挿入管16を押し出すことが可能となる(図2(b)参照)。
なお、ボールバルブ13の構成は限定されるものではなく、適宜公知のボールバルブ13を採用することが可能である。
【0027】
加圧バルブ14は、管路12内の圧力を調整するためのバルブである。加圧バルブ14を操作することにより、第三管路12c内の加圧または減圧を行うことで、バルクヘッドM3内外の圧力差を調整し、機器類17の押出しと引戻しが可能となる。
【0028】
ドレンバルブ15は、第三管路12cに接続されたバルブであって、管路12内に入り込んだ水や土砂を排出する。
【0029】
挿入管16は、管路12に挿通可能な鋼管であって、先端部に機器類17が配設されているとともに、後端部が押引手段18に接続されている。
挿入管16は、バルクヘッドM3の内側から切羽Kまで突出させることが可能な長さを有している。
【0030】
また、挿入管16の前端部には、図3に示すように、隔壁16aが設けられている。隔壁16aには、機器類17の配線17c用の貫通孔16bが形成されているが、貫通孔16bには、挿入管16の内部に水が浸入することを防ぐための止水加工が施されており、機器類17の配線17cが水没することが防止されている。
【0031】
挿入管16は、図2(b)に示すように、開弁状態のボールバルブ13と開口部M4を挿通し、バルクヘッドM3の外側に延設されることで、機器類17を切羽K側に配置する。
なお、挿入管16の構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0032】
機器類17は、挿入管16の前端部に配設された発信器である。
機器類17は、図3に示すように、挿入管16の前端に設置されたケース17aの内部に配設されている。
【0033】
ケース17aには、周面に複数の貫通孔17b,17b,…が形成されており、機器類17からの弾性波の発信が可能に構成されている。機器類17の配線17cは、挿入管16内を挿通して、坑口側に延設されている。なお、ケース17aの構成は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
【0034】
押引手段18は、挿入管16に押出し力および引込み力を付与する装置である。
本実施形態では、シリンダージャッキにより構成するものとする。なお、押引手段18の構成は限定されるものではなく、適宜公知の手段を採用することが可能である。
【0035】
止水手段19は、挿入管16を挿通するとともに、管路12内の水や土砂がシールド部M2内に入り込むことを防止する部材である。
止水手段19は、管路12の後端部に設置された管状部材であって、内径が挿入管16の外径よりも大きく、挿入管16の挿通が可能に構成されている。
止水手段19の内周面には、挿入管16との隙間を遮蔽する樹脂等からなるパッキングが配設されており、機器類17を切羽側に配置した際に止水を行う。
【0036】
なお、止水手段19の構成は前記の構成に限定されるものではなく、例えば、図4(a)および(b)に示すように、機器類挿入回収手段1の後部分(図4では圧力調整管14aよりも後方部分)を覆うケーシング19’を採用するなど、適宜公知の止水手段の中から選定して採用すればよい。
【0037】
次に、機器類挿入回収手段1の動作手順について説明する。
まず、シールドマシンMによる掘削を停止し、カッタヘッドM1に形成されたスリットまたは開口をバルクヘッドM3の開口部M4の位置に対応するようにカッタヘッドM1の位置を調整する。
【0038】
次に、ドレンバルブ15を閉じ、圧力調整バルブ14を操作することにより、管路12内の圧力と切羽K側の圧力差を同等にする。
【0039】
ボールバルブ13を開くとともに、ゲート11を開く。そして、押引手段18により挿入管16を切羽側に押し込むことで、機器類17を切羽K側に配置する。
【0040】
機器類17が所定の位置に配置されたら、機器類17による計測作業を実施する。
【0041】
計測後、押引手段18を操作することにより機器類17をバルクヘッドM3内に引き込み、ゲート11を閉じるとともに、ボールバルブ13を閉じる。
ドレンバルブ15を開き、管路12内の水や土砂を排出する。
【0042】
機器類17等のメンテナンスを行う場合は、第三管路12c以降を取り外し、メンテナンスを行う。
【0043】
以上、本実施形態に係る機器挿入回収手段1によれば、地中レーダ等の繊細な機器類17の切羽Kへの挿入を安全に行うことが可能となる。
また、機器類17を容易に回収することできるため、機器類17のメンテナンスや交換等を容易に行うことができる。
【0044】
また、シールドマシンMの先端部の限られたスペースへの設置が可能である。さらに、未使用時(計測時以外)は取り外すことで、スペースを有効利用することができる。
【0045】
また、特殊な機械や装置等を要することなく構成することが可能なため、製造費が安価である。
また、音波、電磁波、RI等、あらゆる機器類でも対応可能である。
【0046】
また、ゲート11により管路12内に土砂が流入することを防止するため、機器類17を押出すときに、管路12内が土砂により閉塞されることを防止する。
また、ゲート11を開くことで管路12内に水や土砂等が流入したとしても、止水手段19が止水することで管路12からシールド部M2内に水や土砂が流出することが防止されている。
【0047】
また、ボールバルブ13が配設されているため、管路12を完全に遮断できる。
ボールバルブ13以降の圧力調整管等は着脱が可能なため、必要な時以外は取り外しておくことで、作業スペースを確保することが可能となる。
【0048】
加圧バルブ14によりバルクヘッドM3の内外の圧力を調整することが可能なため、機器類17の押出し時や引込み時の負担を軽減することが可能であるとともに、ドレンバルブ15による管路12内の水や土砂の排出時に噴出することを防止することが可能となる。
【0049】
また、機器類17はケース17aにより保護されているため、掘削土砂内に挿入した際に機器類17に損傷が生じることが防止されている。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、加圧バルブを、圧力調整管(第三管路)を介して配置するものとしたが、加圧バルブの構成は前記の構成に限定されるものではない。また、加圧バルブは必要に応じて配置すればよく、省略することも可能である。
【0051】
また、ドレンバルブの設置箇所は限定されるものではなく、適宜配置すればよい。また、ドレンバルブは必要に応じて配置すればよく、省略することも可能である。同様に止水手段も必要に応じて配置すればよい。
【0052】
また、押引手段とゲートとボールバルブとを連動させることで、一つの操作によりゲートの開閉、ボールバルブの開弁・閉弁、挿入管の押出し・引込みを行うものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の好適な実施の形態に係る機器類挿入回収手段の設置状況を示す概略図である。
【図2】同機器類挿入回収手段の側面図であって(a)は回収時、(b)は挿入時を示している。
【図3】同機器類挿入回収手段の機器類の詳細を示す図であって、図2(b)のA部分の拡大図である。
【図4】図1に示す機器類挿入回収手段の変形例を示す側面図であって、(a)は回収時、(b)挿入時である。
【符号の説明】
【0054】
1 機器類挿入回収手段
11 ゲート
12 管路
13 ボールバルブ
14 加圧バルブ
15 ドレンバルブ
16 挿入管
17 機器類
18 押引手段
19 止水手段
M シールドマシン
M3 バルクヘッド
M4 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進機のバルクヘッドに形成された開口部の開閉を行うゲートと、
前記バルクヘッドの内側に配管されて前記開口部に通じる管路と、
前記管路を開閉するボールバルブと、
前記管路に挿通可能な挿入管と、
前記挿入管の前端部に配設された機器類と、
前記挿入管に押出し力および引込み力を付与する押引手段と、を備える機器挿入回収装置であって、
前記挿入管が開弁状態の前記ボールバルブおよび前記開口部に挿通されることで、前記機器類が前記バルクヘッドの外側に配置されることを特徴とする機器挿入回収装置。
【請求項2】
前記管路に前記バルクヘッド内外の圧力差を調整する加圧バルブが接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の機器挿入回収装置。
【請求項3】
前記管路内の土砂を排出するためのドレンバルブが当該管路に接続されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の機器挿入回収装置。
【請求項4】
前記管路の後端部に、止水手段が装着されていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の機器挿入回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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