説明

機器用清掃具

【課題】扁平極細繊維の有する優れた清掃性と独特な風合いを持つ繊維束からなる洗濯が容易である安価な意匠性の富む清掃具を提供する。
【解決手段】清掃具を構成し被清掃物に接触する繊維の50重量%以上が1g当り5000cm以上の表面積を有し、且つ多角形又はそれに類似の形状、扁平率が1.5以上の扁平な形状及び扁平率が1.5以上の扁平な部分を組み合わせた形状選ばれた少なくとも1種の横断面形状を有する合成繊維からなり、該合成繊維が親油性ポリマー及び親水性ポリマーからなる繊維束から形成された清掃具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細繊維の有する優れた清掃性と独特な風合いを持つ繊維束からなる機器用清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等、キーボードとディスプレー画面を備えた機器を始め、鍵、端末機のタッチパネル等、直接指で操作、触れる機会が多くなってきた。バーコード読み取り器、ディスプレー画面、キーボードが油脂、埃で汚れ画面が読み取りにくくなったり、指が触れる部分が不衛生となる。光電管の発光、受光部の埃、汚れが誤動作の原因にもなる。
【0003】
これらの汚れを掃除する為に多くの提案がなされている。極細繊維からなる基本的な清掃用布帛としては、特公昭59−30419号に記載のものが挙げられる。被清掃物と接触する面を形成する繊維の25重量%以上が5000cm/g以上の表面積を有し、且つ多角形又はそれに類似の形状、扁平率が1.5以上の扁平な形状より選ばれた少なくとも1種の横断面形状を有する合成繊維からなる布帛が提案されている。
【0004】
携帯機器に付属させるストラップに吊り下げるスクリーン面をクリーニングする全体の外観がマスコット形状のアクセサリーが特開2001−95618号公報に記載されている。
【0005】
マスコット形状の縫いぐるみでありその表面の一部に極細繊維から成る拭き取り部を有し内部に詰め物を充填した携帯電話表示面清掃具が特開2003−8721号公報に記載されている。
【0006】
他にも、携帯電気機器に付属される、意匠性の高いストラップ本体やストラップに取り付けられる清掃具に関しては、多くの特許提案がなされている。
【0007】
【特許文献1】特公昭59−30419号公報
【特許文献2】特開2001−95618号公報
【特許文献3】特開2003−8721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の如き従来技術には以下のような問題点がある。先ず、特公昭59−30419号公報記載の技術は、確かに清掃性能は優れているが、清掃するのに十分な力が必要であり、ディスプレー画面、タッチパネル画面、キーボードには好ましくない。特に、キーボードの清掃では、隙間内部の掃除には不適切である。又、携帯機器と共に携帯するには装飾性に欠ける物であり、布帛状にする為の加工コストも必要となる。
【0009】
特開2001−95618号公報公報には清掃性能については通常の眼鏡拭き布を用いるとしか記載が無く清掃性能を重視したものではない。マスコット形状であり意匠性が高くコストがかさむものである。
【0010】
特開2003−8721号公報には、清掃性能については極細繊維使いとしか記載がな
く装飾性を重視したもので、清掃性能を向上させるために縫いぐるみの内部に詰め物を充填することが提案されている。詰め物にすることによりコストが上昇すると共に清掃による付着した汚れを取る為の洗浄を困難にさせている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は清掃具を構成し被清掃物に接触する繊維の50重量%以上が1g当り5000cm以上の表面積を有し、且つ扁平率が1.5以上の多角形又はそれに類似の形状と扁平率が1.5以上の扁平な形状又は扁平率が1.5以上の扁平な部分を組み合わせた形状からなる横断面形状を有する合成繊維からなり、該合成繊維が親油性ポリマー及び親水性ポリマーからなる繊維束から形成された機器用清掃具を趣旨とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、扁平極細繊維の有する優れた清掃性と独特な風合いを持つ繊維束からなる洗濯が容易である安価な意匠性の富む機器用清掃具に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。本発明の主要な構成要件の一つは、清掃具を構成し被清掃物に接触する繊維の50重量%以上が1g当り5000cm以上の表面積を有し、且つ扁平率が1.5以上の多角形又はそれに類似の形状と扁平率が1.5以上の扁平な形状及び扁平率が1.5以上の扁平な部分を組み合わせた形状からなる横断面形状を有する合成繊維からなることである。
【0014】
特公昭59−30419号公報記載のとおり、清掃性向上には、繊維の単位重量当りの表面積が大きく、且つ横断面形状が扁平もしくは多角形であることが好ましい。単位重量当りの表面積を大きくする手段は、繊維の単糸繊度を小さくすることである。又、繊維の横断面形状を非円形、特に扁平状にすることである。更に、非円形で扁平状によりシャープエッジが得られ汚れをこそげ取る効果を生み出す。本発明の目的を達成する為には、使用する繊維の表面積は5000cm/g以上が必要であり、好ましくは7000cm/g以上、更に好ましくは10000cm/g以上、最も好ましいのは15000cm/g以上の範囲である。
【0015】
扁平率を大きくすれば、繊度を余り小さくしないでも表面積を大きくすることが出来、耐久性、強度の点から好ましい。扁平率が1.5以上でその効果が明確に現れ、5以上が好ましいが実用的には4から6が限界と考えられる。扁平率を大きくすると清掃される面に対して接触面が大きくなり、密着性が向上するためと考えられる。扁平糸と同様に扁平な部分が組み合わされた形状、扁平な枝を有する形状、例えばH型、放射型などの横断面形状を有するものも好ましい。
【0016】
繊維束を構成する該合成繊維の使用比率は100%が最も好ましいが、被清掃物に接触する繊維が50%以上該合成繊維であれば何ら清掃性に問題はない。該合成繊維が10万本以上の繊維束であれば良く、被清掃物に十分に接触すれば良好な清掃性が得られる。
【0017】
繊維束が親油性ポリマー及び親水性ポリマーからなる該合成繊維から構成されることが必要である。使用できる親油性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステルが好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)及びこれらを主成分とする共重合オレフィン等が挙げられる。ポリエステルとしては、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステルがある。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートあるいはこれらにイソフタル酸、スルホイソフタル酸、アジピン酸等の2塩基酸、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオール類を少量共重合したものが使用できる。脂肪族ポリエス
テルとしては、ポリ乳酸やポリグリコール酸のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)、又はこれらを主成分とした共重合物が挙げられる。
【0018】
親水性ポリマーとしては、各種ポリアミドが使用できる。ポリアミドとしては、例えば4ナイロン、6ナイロン(6N)、11ナイロン、12ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン及びそれらを成分とする共重合ナイロンが含まれる。
【0019】
繊維束は構成する2種類の極細繊維を混合収束してもいいが、効果的に繊維束を作製するには割繊性複合繊維を使用できる。該割繊性複合繊維を構成するポリマーは、相互親和性の乏しい2種類の繊維形成性ポリマーの組合せが好ましい。例えばポリオレフィンとしては、ポリプロピレンが耐熱性の点から好ましい。又、ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートあるいはこれらにイソフタル酸、スルホイソフタル酸、アジピン酸等の2塩基酸、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオール類を少量共重合したものが使用できる。ポリエチレンテレフタレートにスルホイソフタル酸を酸成分に共重合したポリエチレンテレフタレートが好ましく、特に紡糸、延伸操業性に対しても効果的である。スルホイソフタル酸を共重合させる場合はその量は酸成分に対して1.5モル%以内とすることが好ましい。この範囲の共重合PETは、ポリアミドと適度な接着性を有し、割繊むらが生じ難いので好ましい。
【0020】
最も好ましいポリマーの組合せとしては、PPと6N、PETと6Nである。
【0021】
該割繊性複合繊維の形態は少なくとも4個以上のセグメントが好ましい。更に好ましくは4から32個のセグメント、特に好ましくは5から17個のセグメントからなる(図1〜図3)。割繊性複合繊維のセグメント数を4個以上とすることで、割繊後のランダムさが織編物にした時良好な杢調となって現れる。また、セグメントを17程度のとどめることで、紡糸時の毛羽立ちを抑える事が出来る。
【0022】
割繊性複合繊維のポリオレフィンとポリアミドの接合比率は、セクション数や割繊後の単糸繊度により適宜決めれば良い。ポリオレフィン:ポリアミドの比率は1:1〜5:1であることが好ましい。あられる極細繊維の繊度は、0.5デシテックス(dtex)以下で0.001dtex以上が好ましい。清掃性、強度及び生産性から更により好ましくは、0.3dtex以下で0.01dtex迄である。
【0023】
該割繊性複合繊維の割繊方法としては、例えば、一方のポリマーの溶剤や分解剤による一部溶解除去、膨潤剤による膨潤収縮、加熱による変形や収縮、外力による摩擦や打撃などの方法である。溶剤を用いて割繊させる場合、構成される一方のポリマーを完全に溶解・分解させて他方のポリマーの極細セグメントを得られるものよりも、両方のポリマーが残っているものの方が、微細な空隙が多い緻密な繊維束を得やすいので好ましい。好ましくは、アルカリ性水溶液によるポリエステル減量割繊方法が処理剤の残留も少なく好ましく、ポリプロピレンと6Nから構成される極細繊維は沸騰水に浸漬することにより割繊され洗浄工程も比較的簡単でありコストの面からも非常に有利である。
【0024】
第1図に本発明に使用できる割繊性複合繊維の形態の一例を示す。aは、一種のポリマーが他のポリマーを分割する繊維横断面形態を示したものである。bは、2種類のポリマーが交互に積層し中央部に中空部を有する繊維の横断面形態を示したものである。cは、2種類のポリマーが交互に積層した繊維横断面形態を示したものである。このような複合繊維を分割すると、扁平率が1.5以上の多角形、それに類似の形状、扁平形状、扁平な部分を組合わせた形状の繊維が得られる。この形状は清掃機能が非常に高い。
【0025】
清掃具を構成し被清掃物に接触する繊維の50重量%以上が多角形極細繊維であること
が必要であるが、繊維集合束を構成するその他の繊維は限定されないが、沸水収縮率が多角形極細繊維よりも5%以上高い繊維が好ましい。繊維束からの繊維の脱落が防げ、繊維束の表面には、多角形極細繊維の密度が高くなり清掃性が向上する。
【0026】
あらゆる被清掃物を効果的に清掃できる該繊維束の形状としては、球状が好ましい。球状であれば清掃時の方向性がなく、又、毛足が長く球状であれば凹凸が有り隙間の有るキーボード等の清掃にも好都合である。また、布帛ほどの力を加えなくても汚れを綺麗にふき取ることが出来る。被清掃物の形状により毛足の長さを任意に設定できるが埃の吸着性、軽く拭き取り操作性から繊維長は20mm以上が好ましい。
【0027】
該球状繊維束は、携帯電話等のディスプレー画面、端末機等のタッチパネル画面、デジタルカメラ等のレンズや鏡、携帯電話、卓上・携帯計算器等の操作面及び、凹凸の有る鍵、キーボード、及びコピー機、スキャナー、バーコード等の読取り面、光センサー発光、受光部を清掃することに有効であり、意匠性も高い。また、適当な紐、鎖等を介してふき取る対象となる機器にアクセサリーとして付属できる清掃具である。
【実施例】
【0028】
以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものでない。
【0029】
拭取性評価は、鏡面に1mg/cmの量のグリースを手の平で強く塗り付け、30分後に試料でその面が美しくなるまで拭う回数にて評価した。◎印は10回未満、○印は10〜20回未満、△印は20〜30回未満、×印は30回以上の拭取り回数を表す。拭取り回数が30回未満であれば、眼鏡等の清掃には何ら問題は無かった。
【0030】
実施例1
30℃オルソクロロフェノール溶液の固有粘度が0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)と25℃濃硫酸での1g/100ml溶液の相対粘度が2.5の6ナイロン(6N)とを個別に溶融押出し、PET:6Nの比率2:1を図1aの如く放射状の6NがPETを8分割にしている割繊性複合繊維を通常に紡糸延伸して110dtex/50fの延伸糸を得た。
【0031】
得られた割繊性複合繊維を800本のかせ状にし一箇所を収束し、収束個所を中心に全長6cmにてカットした。得られた繊維集合束をベンジルアルコール15%水溶液に常温にて10分間浸漬し、余分なベンジルアルコール水溶液を搾り取った後、60℃の湯に10分間振動浸漬させて割繊を実施した。割繊後十分に水洗した後に割繊された極細繊維集合束を130℃にて分散染料で染色、還元洗浄を実施した。PETの扁平率は1.6であり、表面積は概算では約9000cm/gであった。球状繊維束に形成され清掃具が得られた。結果を表1に記す。
【0032】
得られた球状繊維集合束の清掃具は意匠性が高く携帯電話に吊り下げてもアクセサリーとして何ら違和感はなく、非常にソフトで毛足が長くディスプレー及びキーボードの清掃性も良好であった。清掃時には方向性が全くなく、力をいれずとも清掃は可能であった。又、球状繊維集合束からなる清掃具は洗濯が容易であり、繰り返し使用が可能である。
【0033】
実施例2
実施例1に使用した割繊性複合繊維と通常のPET単独丸断面繊維を合計繊度が110dtexになるように合糸し実施例1と同様の処理を実施して球状繊維集合束を得た。結果を表1に記す。
【0034】
比較例2
PET37島、海島繊維からPET極細丸断面繊維110dtex/888fを作製し繊維集合束を作り繊維長6cmにカットした。130℃で染色を実施するも乾燥後の形態は実施例1,2のような球状繊維束にならなかった。結果を表1に記す。
【0035】
実施例3
実施例1に使用した割繊性複合繊維のPETの代わりにMFR値(JIS−K−7110:99)20である繊維用PPを用い、繊維径が同様になるように84dtex/50fを作製した。実施例1と同様な割繊処理を実施して球状繊維束が得られた。結果を表1に記す。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
扁平極細繊維の有する優れた清掃性と独特な風合いを持つ繊維束からなる洗濯が容易である安価な意匠性の富む清掃具であり、携帯電話等のディスプレー画面、端末機等のタッチパネル画面、デジタルカメラ等のレンズや手鏡、携帯電話等の操作面及び、凹凸の有るキーボード、コピー機、スキャナー、バーコード等の読取り面、光センサー発光、受光部、各種楽器を清掃することができると共に各種携帯道具に付属させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】代表的割繊性複合繊維の横断面形態を示す。
【図2】実施例1にて得られた繊維束から作製された清掃具写真。
【符号の説明】
【0039】
A :親油成分
B :親水成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束からなる清掃具であり、繊維束を構成する繊維の少なくとも50重量%を占める繊維イが次の特徴を有する機器用清掃具。
1)親油性ポリマーと親水性ポリマーからなる繊維である。
2)断面形状は、扁平率が1.5以上の多角形又はそれに類似の形状と扁平率が1.5以上の扁平な形状又は扁平率が1.5以上の扁平な部分を組み合わせた形状、からなるものである。
3)1g当り5000cm以上の表面積を有する。
【請求項2】
該繊維イが更に次の特徴を有する請求項1記載の機器用清掃具。
4)ポリオレフィンとポリアミドが長手方向に沿って接合された割繊性複合繊維から得られる繊維である。
5)ポリオレフィンとポリアミドの接合比が1:1〜5:1である。
【請求項3】
形状が球状である請求項1または2記載の機器用清掃具。
【請求項4】
繊維束を構成する繊維の長さが20mm以上である請求項1乃至3いずれかに記載の機器用清掃具。
【請求項5】
携帯電話、PHS、パソコン、PDA、デジタルカメラ、コピー機、スキャナー、バーコード等の読み取り機のいずれかを清掃するものであることを特徴とする請求項1記載の機器用清掃具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−115907(P2006−115907A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−304203(P2004−304203)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【出願人】(000000952)カネボウ株式会社 (120)
【出願人】(596154239)カネボウ合繊株式会社 (29)
【Fターム(参考)】