説明

機器異常判定装置、及び機器異常判定方法

【課題】機器の状態を適切に異常判定へ反映させ、異常判定の誤報を減らし、より早期の異常判定を可能とし、保守員や運転員が適切な対応行動を取れるようにする。
【解決手段】正常稼働データが格納された正常範囲データベース110と、機器稼働データが入力され、機器異常度を算出する異常度算出部102と、機器異常度を格納する異常度データベース113と、機器異常度の時間変化を求める傾向算出部103と、機器異常度の変動要因について機器稼働データの変動幅が格納された変動要因データベース111と、機器稼働データの時間変化を表す変動寄与度を求め、変動寄与度と変動幅とから変動要因について類似度を求め、機器異常度の変動要因を推定する変動要因推定部104と、異常判定の結果と異常時に取る行動とが格納されている対応行動データベース112と、対応行動データベースを参照し、異常判定を行い、行動を決定する対応行動決定部105を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備を構成する機器が正常に稼働しているかどうかを判定する機器異常判定装置と機器異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器異常とは、一般に、設備を構成する機器(例えば、原子力発電所におけるポンプ)が正常に機能を果たしていない状態をいう。例えば、機器の部品等が破損して停止している状態や、設計された性能を果たしていない状態などである。機器異常になる理由は、外乱、製造時や施工時や修理時の欠陥、摩耗や材料の劣化などによる経年劣化、及び運転時の過負荷などが考えられる。機器にセンサを取り付けて稼働データを取得し、この稼働データから機器が正常に稼働しているかどうかを判定する技術を機器異常判定、(または異常判定)と呼ぶ。
【0003】
機器の稼働データは、機器に取り付けられた複数のセンサからサーバー等へ時々刻々と送られて格納される。例えば、センサ数が2つであれば、計測した各時刻での2つのセンサ値のデータがサーバーに送られ、機器稼働データとしてサーバー内に格納される。
【0004】
図2に、センサ数が2つの場合の、機器稼働データのデータ構造の例を示す。図2に示すデータ構造では、機器稼働データは、計測した各時刻202でのセンサ値203として、圧力と温度という2つのデータを持つ。
【0005】
機器に取り付けられたセンサから、時刻202でのセンサ値203(圧力と温度)のデータがサーバーに送られ、機器稼働データとしてサーバー内に格納される。センサ値203は、全てのセンサについて同時刻に同時に取得できるとは限らないが、ある時間範囲(図2では1分単位)では、1組の機器稼働データ(データレコード)201として扱うことができる。
【0006】
異常判定は、複数のセンサ値から正常と異常の2値を判定する技術である。この2値判定の前処理として、複数のセンサ値から機器異常度と呼ばれる値(機器の異常状態を数値化した値)を計算し、機器異常度が閾値を超えているかどうかで正常か異常かを判定することがある。この場合、時系列に取得した1組の機器稼働データ毎に機器異常度が計算される。
【0007】
図10A、図10Bは、機器異常度の時間変化を示すグラフの例である。機器異常度の時間変化は、図10Aと図10Bに示すように、横軸に時間、縦軸に機器異常度をとったグラフで表現できる。横軸に平行な点線は、機器異常度の閾値を示している。機器異常度が閾値を超えた場合は、異常であると判定する。従って、図10Aは、時刻tにおいて異常、図10Bは、時刻tにおいて正常と判定される。
【0008】
ところが、機器異常度が閾値を超えていても、すなわち異常と判定したとしても、機器をただちに停止するほどではない場合がある。すなわち、機器異常度が閾値を上回っていても、機器を停止するほどの異常ではない場合がある。例えば、機器の外部条件によって異常を示すケースが、このような場合である。
【0009】
一例として、機器がポンプの場合を考える。ポンプに流入する水量が異常に大きいと、センサ値は異常値を示し、機器異常度が閾値を超え、異常判定で異常と判定されるかもしれない。しかし、この場合は、ポンプ自身に異常があるとはいえない。この機器異常度は、ポンプの外部の異常によって引き起こされた偽の異常度といえる。
【0010】
このような場合、異常判定は誤報となってしまう。これは、機器の状態を機器稼働データだけから把握していることと、さらに機器異常度という値だけに機器の状態を代表させているため情報量が落ちていることに起因している。より直接的には、センサの設置数や設置箇所が適切でないことも一因として考えられる。
【0011】
逆に、機器異常度が閾値以下であっても、早めの対処が必要な場合がありうる。例えば、ポンプの軸受損傷の場合には、早期に対処しなければ急速に異常が進展し、機器を損傷させてしまうことがありうる。このような場合、閾値だけで機器異常を判定していると、異常と判定するのが遅れてしまう。早期に異常に対処できれば、部品の損傷にとどめられ、保修費用も低く抑えられる。
【0012】
機器異常度だけで判定できない場合として、閾値付近で機器異常度が振動する場合が考えられる。これに対しては、例えば、特許文献1では、異常度合いを計算した上で、その異常度が連続した場合を異常とするような工夫をしている。また、特許文献2では、機器の状態量を時間積分することで故障可能性値を算出し、異常判定をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−37194号公報
【特許文献2】特開2010−25475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、機器異常度が閾値を超えている状態が継続している場合は、異常と判定してしまう。このため、機器の状態によっては誤報となる可能性がある。逆に、機器異常度が閾値以下の場合は、異常と判定しないので、早めの対処が必要な場合であっても、機器の異常に対応できない。
【0015】
また、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、実際の現場にいる保守員や運転員へ適切な指示をして、異常時に取るべき行動を取らせることができない。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、機器の状態を適切に異常判定へ反映させ、異常判定の誤報を減らし、より早期の異常判定を可能とし、保守員や運転員が適切な対応行動を取れるようにすることが可能な機器異常判定装置及び機器異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による機器異常判定装置は、機器の正常時の稼動状態を表す正常稼働データが格納された正常範囲データベースと、計測した前記機器の稼動状態が機器稼働データとして入力され、前記機器稼働データの前記正常稼働データからの離れ度合いを数値化した機器異常度を算出する異常度算出部と、前記機器異常度を格納する異常度データベースと、前記機器稼働データを計測した時刻における前記機器異常度と、前記計測した時刻よりも予め設定された時間間隔だけ前の時刻における前記機器異常度とから、前記機器異常度の時間変化を求める傾向算出部と、前記機器異常度の変動要因のそれぞれについて、前記機器稼働データの前記正常稼働データからの変動の大きさを表す変動幅が格納された変動要因データベースと、前記機器稼働データの時間変化を表す変動寄与度を求め、前記変動寄与度と前記変動幅とから前記変動要因のそれぞれについて類似度を求め、最大の前記類似度に対する前記変動要因を、前記機器異常度の変動要因と推定する変動要因推定部と、前記機器異常度と前記機器異常度の時間変化と前記変動要因とによって定められた、異常判定の結果と異常時に取る行動とが格納されている対応行動データベースと、前記対応行動データベースを参照し、前記機器異常度と前記機器異常度の時間変化と推定した前記変動要因とから、異常判定を行い、前記行動を決定する対応行動決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、機器の状態を適切に異常判定へ反映させて、異常判定の誤報を減らすことができ、機器稼働データの変動要因に応じて従来よりも早期の異常判定が可能になる。また、保守員や運転員に対して適切な対応行動を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態例による機器異常判定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】機器稼働データのデータ構造の例である。
【図3A】機器が正常に稼働しているときの、状態空間における機器稼働データの分布の一例を示す図である。
【図3B】状態空間での正常範囲の一例を示す図である。
【図4】正常範囲DBに格納されている正常稼働データのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】変動要因DBのデータ構造の一例を示す図である。
【図6】機器異常度の変動要因を推定する計算ステップを示す処理フロー図である。
【図7】対応行動DBのデータ構造の一例を示す図である。
【図8】異常度DBのデータ構造の一例を示す図である。
【図9A】異常判定の結果や対応行動の表示例である。
【図9B】異常判定の結果や対応行動の表示例である。
【図9C】異常判定の結果や対応行動の表示例である。
【図10A】機器異常度の時間変化を示すグラフの例である。
【図10B】機器異常度の時間変化を示すグラフの例である。
【図11】本発明による機器異常判定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して下記の順序で説明する。
1.機器異常判定装置の構成
2.機器異常判定装置の処理
なお、本明細書で用いる「機器稼働データ」とは、機器の稼働中の状態を表すデータ(例えば、温度や圧力など)を含むデータである。また、「機器異常度」とは、機器の異常状態を数値化した値のことであり、入力された機器稼働データが正常範囲からどの程度離れているかという離れ度合いを表す値である。
【0021】
[1.機器異常判定装置の構成]
本発明の一実施形態の例における機器異常判定装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態例による機器異常判定装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
機器異常判定装置は、入力手段101、異常度算出手段102、傾向算出手段103、変動要因推定手段104、対応行動決定手段105、及び出力手段106を備え、データベース(DB)として、正常範囲DB110、異常度DB113、変動要因DB111、及び対応行動DB112を備える。
【0023】
入力手段101は、機器稼働データの入力を行うインターフェースであり、機器稼働データを装置外部から受け取って異常度算出手段102に送る。機器稼働データを取得するだけでなく、取得後に機器稼働データを加工してから異常度算出手段102に送ることもある。例えば、機器稼働データが振動データの場合は、周波数解析が有効なため、高速フーリエ変換をかけて周波数毎の強度に変換することがある。また異常の特徴がパルス的に出る場合は、単位時間当たりのパルス数へ変換することが有効である。例えば、エンジン等のミスファイヤや、モータや変圧器などの部分放電などが、この異常に該当する。
【0024】
異常度算出手段102は、取得した機器稼働データと、正常範囲DB110に格納されている正常時の機器稼働データとを用いて機器異常度を算出する。異常度算出手段102で行う機器異常度の算出については、後述する。
【0025】
以下では、機器が正常に稼動しているとき(正常時)の機器稼働データを「正常稼働データ」と呼ぶ。
【0026】
正常範囲DB110は、正常稼働データが記録され、適切な加工を施されて格納されているデータベースであり、予め作成しておく。正常範囲DB110のデータ構造については、図4を用いて後述する。
【0027】
異常度DB113には、算出された機器異常度が、対応する機器稼働データ(時刻とセンサ値)とともに格納される。異常度DB113には、算出した機器異常度の全てを格納しておく必要はない。傾向算出手段103と変動要因推定手段104に設定された時間間隔のうち最も小さい時間間隔についての機器異常度だけを格納すれば充分である。異常度DB113のデータ構造については、図8を用いて後述する。
【0028】
傾向算出手段103は、算出された機器異常度が入力され、入力されたこの機器異常度と、異常度DB113から取り出した過去の機器異常度から、機器異常度の傾向(時間変化)を求める。具体的には、入力された機器異常度に対応する時刻よりも、予め設定された時間間隔だけ前の時刻における機器異常度を異常度DB113から取り出し、入力された機器異常度と異常度DB113から取り出した機器異常度との差分を求めて機器異常度の傾きを計算し、傾きの大きさに応じて機器異常度に傾向ラベルをつけて分類分けする。傾向ラベルは、例えば、「上昇」、「緩やかに上昇」、「変動小」、及び「下降」とする。本実施形態では、傾向ラベルを4段階としたが、これに限定するものではない。また、設定された時間間隔が一定の場合は、機器異常度の傾きではなく、差分に応じて分類しても良い。また、単純な傾きではなく、回帰分析を行って2次関数などの高次関数や指数関数などの関数の近似線を張り、その係数を用いても良い。
【0029】
変動要因推定手段104は、算出された機器異常度が入力され、変動要因DB111を用いて、入力された機器異常度と機器稼働データから機器異常度の変動要因を推定する。具体的には、入力された機器異常度に対応する時刻における機器稼働データと、入力された機器異常度に対応する時刻よりも、予め設定された時間間隔だけ前の時刻における機器稼働データとの差分を求め、変動要因DB111を参照して、変動要因を推定する。時間間隔は、一定でも良く、時刻や温度などの環境条件または機器の状態に合わせて変更しても良い。例えば、機器異常度が比較的高い場合は、時間間隔を短くする方が良い。
【0030】
変動要因DB111は、機器異常度が変動する要因毎に、機器稼働データがどんな挙動を示すかを記録したデータベースであり、予め作成しておく。変動要因DB111については、図5を用いて後述する。
【0031】
対応行動決定手段105は、機器異常度、機器異常度の傾向(傾向ラベル)、及び推定された変動要因から、対応行動DB112を参照して、異常判定を行い、適切な対応行動を決定する。対応行動とは、異常時に保守員や運転員が取るべき行動であり、異常に対して対処する行動のことである。
【0032】
対応行動DB112は、異常判定と対応行動の決定とを行う際に参照するデータベースであり、予め作成しておく。対応行動DB112には、機器異常度、傾向ラベル、変動要因、異常判定の結果、及び対応行動が記録されており、機器異常度と傾向ラベルと変動要因に対応して、異常判定の結果と対応行動が定められている。対応行動DB112については、図7を用いて後述する。
【0033】
出力手段106は、求めた異常判定の結果や対応行動を画面上へ配置し、モニターへ出力する手段である。図9A、図9B、及び図9Cは、異常判定の結果や対応行動の出力例である。図9A〜図9Cについては、後述する。
【0034】
図11は、本発明による機器異常判定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。機器異常判定装置は、計算機1102及びモニター1103を備える。計算機1102は、上述した各手段を実行する機能と、上述した各DBを有する。モニター1103は、異常判定の結果や対応行動を表示する。計算機1102には、異常判定の対象となる機器1101が信号線で接続され、センサ値を取得する。
【0035】
なお、機器異常判定装置は、モニター1103を備えなくても良い。この場合は、別に用意したモニター(外部モニター)を機器異常判定装置に接続し、異常判定の結果や対応行動を表示する。
【0036】
[2.機器異常判定装置の処理]
本発明の一実施形態の例における機器異常判定装置の処理を説明する。異常判定の対象となる機器として、ポンプを想定する。ポンプには圧力と温度を計測するセンサが取り付けられ、図2に示したような、時刻と圧力と温度とからなる機器稼働データが得られるとする。
【0037】
まず、入力手段101は、機器稼働データを異常度算出手段102へ渡す。
【0038】
次に、異常度算出手段102は、正常稼働データと入力手段101から受け取った計測時(判定時)の機器稼働データとを比較することで、機器異常度を算出する。算出した異常度は、異常度DB113に格納する。
【0039】
ここからは、異常度算出手段102による機器異常度の算出方法について、説明する。
【0040】
異常判定の対象であるポンプの時刻tにおける圧力と温度は、時刻tでのポンプの状態を代表する値と考えられる。この値(時刻tでの圧力と温度)を、時刻tのデータレコードと呼ぶ。例えば、図2に示した機器稼働データのデータレコード201は、異常判定の対象であるポンプの時刻0:00での状態を代表すると考えられる。このデータレコード201を数学上のベクトルと考えれば、データレコード201は、センサ値203の数に対応する次元を持つ空間上の1点として表現される。この空間を状態空間と呼ぶ。図2に示した機器稼働データの場合は、データレコード201に含まれるセンサ値203の数は2つであるため、状態空間は2次元、すなわち平面である。
【0041】
異常度算出手段102は、状態空間を用いて機器異常度を算出する。以下、図3A、図3B、及び図4を用いて、機器異常度の算出方法について説明する。
【0042】
図3Aは、異常判定の対象である機器(ポンプ)が正常に稼働しているときの、状態空間における機器稼働データの分布の一例を示す図である。図3Aに示す状態空間は、温度と圧力の2次元空間である。機器が正常に稼働しているときの各時刻の機器稼働データは、状態空間へプロットすると、通常、ある範囲内に集合する。この範囲のことを「正常範囲」と呼ぶ。例えば、図3Aに示すような機器稼働データの集合が、正常範囲となる。
【0043】
しかし、機器に故障等の異常があると、機器稼働データは、正常範囲からはずれて状態空間にプロットされる。従って、正常稼働データの分布範囲(正常範囲)を予め記憶しておき、入力された機器稼働データ(判定する機器稼働データ)が正常範囲からどの程度離れているかという離れ度合いを数値化して求めると、この離れ度合いを機器異常度とみなすことができる。なお、この場合、センサ毎にスケールが異なるため、センサ毎に正規化が必要である。例えば、平均値を中心にして最大振幅を1に正規化することが考えられる。
【0044】
正常範囲は機器が正常に稼働しているときの機器稼働データの集合であるが、一つ一つの機器稼働データからある広がりを持った範囲を正常範囲とする。機器稼働データは、機器の取りうる状態の全てを表しているわけではなく、従って、機器の状態は、機器稼働データのいずれかに常に対応するとは限らないからである。
【0045】
図3Bは、状態空間での正常範囲の一例を示す図である。図3Bに示した正常範囲は、正常稼働データを、複数の円(状態空間が2次元でない場合は、その状態空間での超球)で被覆したものである。この複数の円(超球)の中心と半径は、正常稼働データを全て含むように、任意に定めることができる。
【0046】
このように機器稼働データを被覆するための円(超球)を作成するには、例えば、K−meansクラスタリングという手法を利用できる。下記に示す参考文献には、K−meansクラスタリングにより、N個のデータ集合をK個のクラスターに分ける手法が紹介されている。クラスターとは、クラスター内部の点間の距離が外部にあるデータの距離よりも小さいデータ集合である。図3Bに示すような円(超球)を作成するには、正常稼働データを参考文献におけるデータ集合とし、円の中心をクラスターの「プロトタイプ」とし、円の半径をプロトタイプから最も遠い距離にあるデータとプロトタイプとの距離とすれば良い。
【0047】
参考文献:C.M.ビショップ著、元田浩、栗田多喜夫、樋口知之、松本裕治、村田昇監訳、「パターン認識と機械学習 下 ベイズ理論による統計的予測」、シュプリンガー・ジャパン株式会社、2008年7月、p.140−144。
【0048】
図4は、正常範囲DB110に格納されている正常稼働データのデータ構造の一例を示す図である。正常稼働データは、正常範囲DB110に予め記録される。
【0049】
図4に示した正常稼働データは、複数のレコード401から構成される。1組のレコード401は、円の名前402、円の中心(X,Y)403、及び円の半径R404からなる。図4では、円の名前402をCk(kは1からn)で、円の中心403を(Xk,Yk)で、円の半径404をRkで表している。このようなレコード401で表される円の集合により、正常稼働データの分布範囲(正常範囲)を近似して表すことができる。なお、正常稼働データは、円の中心403及び円の半径404だけを持てば良く、円の名前402は必須ではない。図4に示した例では、処理上の便宜のために、円の名前402をつけた。
【0050】
図3Bを参照して、異常度算出手段102について説明する。異常度算出手段102は、入力手段101から得た機器稼働データPx(Xa,Ya)と、正常範囲DB110に格納された正常稼働データの各円の中心(Xk,Yk)との距離Dxkを求める(図3Bでは、k=2の場合を示している)。そして、式(1)に従い、距離Dxkを各円の半径Rkで除したもののうち、最も小さいものを機器異常度として算出する。
Dxk=((Xa−Xk)+(Ya−Yk)1/2
機器異常度=min(Dxk/Rk|k=1〜n) (1)
このようにして機器異常度を算出すると、閾値を1とし、機器異常度が1を超えた場合に、正常稼働データの領域(正常範囲)の外に出たと判断できる。
【0051】
以上で、異常度算出手段102による機器異常度の算出方法の説明を終了する。
【0052】
図8は、異常度DB113のデータ構造の一例を示す図である。算出した機器異常度は、異常度DB113へ、図2に示した機器稼働データのデータレコード201とともに格納される。従って、異常度DB113のデータレコードは、時刻、センサ値(圧力と温度)、及び機器異常度からなる。
【0053】
次に、傾向算出手段103は、前述したように、算出した機器異常度と、予め設定された時間間隔だけ前の時刻における機器異常度とを比較し、機器異常度の傾き(時間変化)を算出する。算出に当たっては、異常度DB113のデータレコードを使用する。例えば、図8に示すように、最新の機器異常度を算出した時刻が0:10であり、設定された時間間隔が10分の場合は、時刻0:00の機器異常度を異常度DB113から読み出す。時刻0:10の機器異常度が1.2であり、時刻0:00の機器異常度が1.0であるので、機器異常度の傾きは(1.2−1.0)/10分=0.02/分となる。
【0054】
さらに、求めた機器異常度の傾きに応じて、4つの傾向ラベル「上昇」、「緩やかに上昇」、「変動小」、及び「下降」に分類する。例えば、傾きが0.07以上の場合は「上昇」、0.025以上0.07未満の場合は「緩やかに上昇」、0以上0.025未満の場合は「変動小」、0未満の場合は「下降」とする。
【0055】
変動要因推定手段104は、傾向算出手段103で使用した異常度DB113の2つのデータレコードから、各センサ値について機器異常度の変動への寄与度を求め、この寄与度を変動要因DB111のデータと比較することで、機器異常度の変動要因を推定する。
【0056】
図5は、変動要因DB111のデータ構造の一例を示す図である。変動要因DB111は、機器異常度が変動する要因毎に、機器稼働データがどんな挙動を示すかを記録したものであり、予め作成しておく。図5に示すように、変動要因DB111は、複数の変動要因レコード501から構成され、変動要因レコード501は、変動要因名502と、機器稼働データを構成するセンサ値のデータ毎の変動幅503と、過去事例504とから構成される。
【0057】
変動要因名502は、機器異常度が変動する要因(変動要因)を表したものである。
【0058】
変動幅503は、各変動要因に対して、センサ値が正常範囲からどの程度変動するかという変動の大きさを表したものであり、図3Bに示した状態空間における正常範囲からの変位(dX,dY)で表す。変動幅503は、これをベクトルとみなした場合に大きさが1になるように正規化している。
【0059】
変動要因DB111は、実際に機器の故障が起きたときのデータを分析したり、物理的なシミュレーションをしたりして、作成できる。
【0060】
図5に示す例では、過去事例504が変動要因レコード501の項目に含まれている。過去事例504は、変動要因名502に記載された変動が過去に発生したときの、機器の様子や状態についての情報であり、変動が生じた後に機器がどのようになったかなどの、異常に対処するのに有用な情報を含めることができる。図5では、例えば入力変動については、数日後に異常度が低下したことが記載されている。過去事例504は、全ての変動要因名502について記載してもよいし、特定の変動要因名502だけについて記載してもよい。
【0061】
過去事例504は、異常判定の対象である機器そのものについての情報が望ましいが、同じ機種の機器または動作原理が同様の機器などを参考にしても良い。また、過去事例504には、1件の情報だけでなく、複数の情報を含めるとさらに有用である。この場合には、複数の過去事例を記録した過去事例データベースを実装し、これらの過去事例と関連付けてもよい。
【0062】
図6は、変動要因推定手段104が行う、機器異常度の変動要因を推定する計算ステップを示す処理フロー図である。
【0063】
ステップ601では、データレコード間の変動の大きさを計算する。例えば、上述した図8の例では、異常度DB113から時刻0:00と時刻0:10のセンサ値(圧力と温度)を読み出す。時刻0:00のセンサ値を(Xt1,Yt1)とし、時刻0:10のセンサ値を(Xt2,Yt2)とする。そして、これらのセンサ値の差分を、式(2)で計算する。
センサ値の差分=((Xt2−Xt1),(Yt2−Yt1)) (2)
なお、式(2)では、センサ値をベクトルとみなしている。
【0064】
ステップ602では、センサ値の差分の大きさDt2を式(3)で計算し、変動要因に対する各センサ値の寄与度、すなわち変動寄与度(dXt2,dYt2)を式(4)で計算する。
Dt2=((Xt2−Xt1)+(Yt2−Yt1)1/2 (3)
変動寄与度(dXt2,dYt2)=((Xt2−Xt1)/Dt2,(Yt2−Yt1)/Dt2) (4)
変動寄与度(dXt2,dYt2)は、センサ値の差分をセンサ値の差分の大きさDt2で割った値であり、各センサ値の時間変化を表す。
【0065】
ステップ603では、変動寄与度と変動要因DB111の各変動要因レコード501との類似度を計算する。類似度St2は、式(5)で計算する。類似度St2は、変動寄与度(dXt2,dYt2)と変動要因レコード501の各変動幅(dX,dY)503をベクトルとみなしたときの、内積に相当する。
類似度St2=(dXt2×dX+dYt2×dY) (5)
類似度St2は、全ての変動要因レコード501について、計算する。すなわち、式(5)において、(dX,dY)を、図5に示した(dXa,dYa)、(dXb,dYb)、(dXc,dYc)・・・の全てに置き換えて、それぞれの類似度St2を計算する。
【0066】
ステップ604では、ステップ603で計算した類似度のうち最も大きい類似度を求め、この最大類似度に対する変動要因を、機器異常度の変動要因とする。
【0067】
変動要因推定手段104は、機器異常度の変動要因を推定したら、変動要因DB111から、この変動要因に対応する過去事例504を読み出す。
【0068】
次に、対応行動決定手段105は、異常度算出手段102が算出した機器異常度と、傾向算出手段103で決定した傾向ラベルと、変動要因推定手段104で推定した変動要因を用いて、異常判定を行い、対応行動を決定する。異常判定と対応行動の決定は、対応行動DB112を参照して行う。
【0069】
図7は、対応行動DB112のデータ構造の一例を示す図である。図7に示す対応行動DB112は、機器異常度701と、傾向ラベル702と、変動要因703という3種類の項目を有し、これらの項目に応じて定められた異常判定の結果と対応行動とが格納されている。図7では、異常判定の結果と対応行動は、機器異常度701と傾向ラベル702と変動要因703とによって分類されたセル(変動要因703の各列にあるセル)に記載されている。セル内では、上段に異常判定の結果が、下段に対応行動が記載されている。対応行動については、表示する必要がない場合は、「(表示なし)」と記載されている。
【0070】
機器異常度701が閾値以上か閾値未満かによって、異常判定の結果と対応行動とを定めることができる。本実施例では、機器異常度701は、前述したように式(1)を用いて算出するので、閾値を1とすることができる。そこで、機器異常度701が1以上か否かが、異常判定の結果と対応行動とを決定する基準の1つとなる。
【0071】
傾向ラベル702は、機器異常度の傾向、すなわち機器異常度の進展度合いを表している。傾向ラベル702の値が、異常判定の結果と対応行動とを決定する基準の1つとなる。
【0072】
変動要因703は、変動要因推定手段104で推定した変動要因であり、これも異常判定の結果と対応行動とを決定する基準の1つとなる。
【0073】
対応行動決定手段105は、対応行動DB112を参照し、機器異常度701と傾向ラベル702と変動要因703とから、該当するセルに記載されている異常判定の結果と対応行動を読み出す。例えば、機器異常度701が閾値未満で、傾向ラベル702が「緩やかに上昇」で、変動要因703が「軸受損傷」の場合は、異常判定の結果は「異常」であり、対応行動は「要注意監視」である。
【0074】
次に、出力手段106は、異常判定の結果と対応行動を、モニターの画面上に表示する。
【0075】
図9A、図9B、及び図9Cは、異常判定の結果や対応行動の表示例である。画面には、異常判定の対象となっている機器の名前が対象801として表示され、機器の名前(対象801)の下部には、異常度DB113から得られた機器異常度の時間変化を表すグラフ809が表示されている。グラフ809は、横軸に時間、縦軸に機器異常度をとっており、機器異常度の閾値802を点線で表示し、異常判定の対象となる点を三角印803で示している。
【0076】
グラフ809の右には、対応行動決定手段105で取得した異常判定の結果が状態804として表示される。状態804の下部には、変動要因推定手段104で推定した機器異常度の変動要因805が表示される。変動要因805の下部には、傾向算出手段103で求めた傾向ラベルが、異常の進展傾向806として表示される。進展傾向806の下部には、対応行動決定手段105で取得した対応行動807が表示される。そして、対応行動807の下部には、変動要因推定手段104で得た過去事例808が表示される。
【0077】
なお、出力手段106は、機器異常度の時間変化を表すグラフ809と、異常判定の結果である状態804と、変動要因805と、異常の進展傾向806と、対応行動807と、過去事例808のうち、少なくとも1つを出力するようにしてもよい。
【0078】
図9Aでは、機器異常度は閾値以上であるが、変動要因805が「入力変動」であり、進展傾向806(傾向ラベル)が「上昇」であるので、図7に示した対応行動DB112に基づき、異常判定の結果である状態804は「正常」となり、対応行動807は「要注意」となる。このように、機器異常度が閾値以上であっても、異常判定の結果は「正常」となる場合もある。過去事例808は、図5に示した変動要因DB111から「数日後に異常度低下」となる。
【0079】
図9Bでは、機器異常度が閾値未満であるが、変動要因805が「軸受損傷」であり、進展傾向806(傾向ラベル)が「緩やかに上昇」であるので、図7に示した対応行動DB112に基づき、異常判定の結果である状態804は「異常」となり、対応行動807は「要注意監視」となる。このように、機器異常度が閾値未満であっても、異常判定の結果は「異常」となる場合もある。過去事例808は、図5に示した変動要因DB111から「急激に故障に至る」となる。
【0080】
図9Cでは、機器異常度は閾値以上であるが、変動要因805が「シール摩耗」であり、進展傾向806(傾向ラベル)が「緩やかに上昇」であるので、図7に示した対応行動DB112に基づき、異常判定の結果である状態804は「正常」となる。対応行動807は、対応行動DB112に「(表示なし)」と記載されているので、表示しない。過去事例808は、図5に示した変動要因DB111には記載されていないので、表示しない。このように、機器異常度が閾値以上であっても、対応行動807や過去事例808を表示しない場合もある。
【0081】
以上説明したように、本発明による機器異常判定装置は、機器異常度と、機器異常度の傾向(時間変化)と、機器異常度の変動要因に基づいて異常判定を行うので、従来の機器異常判定装置よりも誤報が少なくなる。また、機器異常度が閾値未満でも、機器異常度の傾向と変動要因に応じて異常と判定するので、異常に対して早期の対処が可能になる。本発明による機器異常判定装置は、図9Aと図9Bに示したように異常判定に基づいて対応行動を表示するので、保守員や運転員は、適切な対応行動を取ることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
101…入力手段、102…異常度算出手段、103…傾向算出手段、104…変動要因推定手段、105…対応行動決定手段、106…出力手段、110…正常範囲DB、111…変動要因DB、112…対応行動DB、113…異常度DB、201…データレコード、202…時刻、203…センサ値、401…レコード、402…円の名前、403…円の中心、404…円の半径、501…変動要因レコード、502…変動要因名、503…変動幅、504…過去事例、701…機器異常度、702…傾向ラベル、703…変動要因、801…対象(機器の名前)、802…機器異常度の閾値、803…異常判定の対象となる点を示す三角印、804…状態、805…変動要因、806…進展傾向、807…対応行動、808…過去事例、809…グラフ、1101…異常判定対象となる機器、1102…計算機、1103…モニター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の正常時の稼動状態を表す正常稼働データが格納された正常範囲データベースと、
計測した前記機器の稼動状態が機器稼働データとして入力され、前記機器稼働データの前記正常稼働データからの離れ度合いを数値化した機器異常度を算出する異常度算出部と、
前記機器異常度を格納する異常度データベースと、
前記機器稼働データを計測した時刻における前記機器異常度と、前記計測した時刻よりも予め設定された時間間隔だけ前の時刻における前記機器異常度とから、前記機器異常度の時間変化を求める傾向算出部と、
前記機器異常度の変動要因のそれぞれについて、前記機器稼働データの前記正常稼働データからの変動の大きさを表す変動幅が格納された変動要因データベースと、
前記機器稼働データの時間変化を表す変動寄与度を求め、前記変動寄与度と前記変動幅とから前記変動要因のそれぞれについて類似度を求め、最大の前記類似度に対する前記変動要因を、前記機器異常度の変動要因と推定する変動要因推定部と、
前記機器異常度と前記機器異常度の時間変化と前記変動要因とによって定められた、異常判定の結果と異常時に取る行動とが格納されている対応行動データベースと、
前記対応行動データベースを参照し、前記機器異常度と前記機器異常度の時間変化と推定した前記変動要因とから、異常判定を行い、前記行動を決定する対応行動決定部と、
を備えることを特徴とする機器異常判定装置。
【請求項2】
前記傾向算出部は、前記機器異常度を時間変化の大きさに応じて分類分けする請求項1記載の機器異常判定装置。
【請求項3】
前記変動要因データベースには、前記変動要因により過去に変動が発生したときの前記機器についての情報である過去事例が、前記機器異常度の変動要因の少なくとも1つについて格納されている請求項1記載の機器異常判定装置。
【請求項4】
前記機器異常度の時間変化と、推定した前記変動要因と、前記異常判定の結果と、前記行動のうち、少なくとも1つを出力する出力部を備える請求項1記載の機器異常判定装置。
【請求項5】
前記機器異常度の時間変化と、推定した前記変動要因と、前記異常判定の結果と、前記行動と、前記分類分けによる分類のうち、少なくとも1つを出力する出力部を備える請求項2記載の機器異常判定装置。
【請求項6】
前記機器異常度の時間変化と、推定した前記変動要因と、前記異常判定の結果と、前記行動と、前記過去事例のうち、少なくとも1つを出力する出力部を備える請求項3記載の機器異常判定装置。
【請求項7】
計算機を用い、計測した機器の稼動状態に基づいて前記機器の異常判定をする機器異常判定方法において、
前記計算機の異常度算出部が、前記機器の稼動状態を機器稼働データとして入力し、前記機器の正常時の稼動状態を表す正常稼働データが格納されている正常範囲データベースを参照し、前記正常稼働データからの、前記機器稼働データの離れ度合いを数値化した機器異常度を算出する異常度算出ステップと、
前記計算機の傾向算出部が、前記機器異常度が格納された異常度データベースを参照し、前記機器稼働データを計測した時刻における前記機器異常度と、前記計測した時刻よりも予め設定された時間間隔だけ前の時刻における前記機器異常度とから、前記機器異常度の時間変化を求める傾向算出ステップと、
前記計算機の変動要因推定部が、前記機器異常度の変動要因のそれぞれについて、前記機器稼働データの前記正常稼働データからの変動の大きさを表す変動幅が格納された変動要因データベースを参照し、前記機器稼働データの時間変化を表す変動寄与度を求め、前記変動寄与度と前記変動幅とから前記変動要因のそれぞれについて類似度を求め、最大の前記類似度に対する前記変動要因を、前記機器異常度の変動要因と推定する変動要因推定ステップと、
前記計算機の対応行動決定部が、前記機器異常度と前記機器異常度の時間変化と前記変動要因とによって定められた、異常判定の結果と異常時に取る行動とが格納されている対応行動データベースを参照し、前記機器異常度と前記機器異常度の時間変化と推定した前記変動要因とから、異常判定を行い、前記行動を決定する対応行動決定ステップと、
を備えることを特徴とする機器異常判定方法。
【請求項8】
前記傾向算出ステップでは、前記傾向算出部が、前記機器異常度を時間変化の大きさに応じて分類分けする請求項7記載の機器異常判定方法。
【請求項9】
前記変動要因推定ステップでは、前記変動要因推定部が、前記変動要因により過去に変動が発生したときの前記機器についての情報である過去事例が前記機器異常度の変動要因の少なくとも1つについて格納されている前記変動要因データベースを参照する請求項7記載の機器異常判定方法。
【請求項10】
前記計算機の出力部が、前記機器異常度の時間変化と、推定した前記変動要因と、前記異常判定の結果と、前記行動のうち、少なくとも1つを出力する出力ステップを備える請求項7記載の機器異常判定方法。
【請求項11】
前記計算機の出力部が、前記機器異常度の時間変化と、推定した前記変動要因と、前記異常判定の結果と、前記行動と、前記分類分けによる分類のうち、少なくとも1つを出力する出力ステップを備える請求項8記載の機器異常判定方法。
【請求項12】
前記計算機の出力部が、前記機器異常度の時間変化と、推定した前記変動要因と、前記異常判定の結果と、前記行動と、前記過去事例のうち、少なくとも1つを出力する出力ステップを備える請求項9記載の機器異常判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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