説明

機械室レスエレベータのガイドレール油受け装置

【課題】この発明は、油受け容器をピットに固定した格納箱内に格納し、油受け容器の不慮の転倒を防止すると共に、塵・埃などの油受け容器内に収集した油への混入を防ぐことができる機械室レスエレベータの油受け装置を得る。
【解決手段】側面に形成された給油用開口4および油受け容器2を出し入れする扉5を有する格納箱3が、ガイドレール10に近接してピットの床面12aに固定されている。油受け容器2が、給油用開口4を除いて閉塞状態に格納箱3に格納されている。導油部材6が、一端をガイドレール10の下端側に接続され、かつ他端側を給油用開口4から格納箱3内に挿入して配設され、一端の給油口8からガイドレール10を流下する油13を集めて他端の排油口9から油受け容器2内に流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械室レスエレベータのガイドレール油受け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータにおいては、かごが昇降路内に上下方向に延設されたガイドレールに案内されて昇降移動する。このとき、かごに設けられたガイドシューがガイドレール上を円滑に摺動するように、ガイドレールの上方に配設された自動給油器から油を給油している。そして、油はガイドレールを伝わって流れ落ち、ピット内のガイドレールの下方に設置された油受け装置に収集される。
【0003】
従来のエレベータのガイドレール油受け装置は、油を収集する容器本体と、この容器本体の側面に形成され、ガイドレールのガイド部に嵌合する凹部と、容器本体に設けた把手部とを備えた油受け容器を、ガイドレール下端に設けた油受けに着脱自在に設け、凹部をガイドレールのガイド部に圧着嵌合させ、凹部の先端部分にガイド部から容器本体に油を導く傾斜面を形成していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−309479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のエレベータのガイドレール油受け装置は、油受け容器がガイドレール下端に設けられた油受けに着脱自在に設けられているので、作業者がピット内での作業中に誤って足で油受け容器を転倒させてしまうという不具合があった。特に、機械室レスエレベータにおいては、本来、機械室に設置されていた巻き上げ機などの多くの機器がピット内に設置されており、作業スペースが狭く、かつエレベータの保守点検作業がピット内に集中することから、油受け容器を転倒させる危険性が大きかった。そして、油受け容器を転倒させた場合には、狭いスペースでの清掃作業となり、作業負荷がおおきくなるとともに、清掃に時間がかかってしまう。
また、油受け容器が露出しているので、塵・埃などが油受け容器に収集した油に混入してしまい、油受け容器から回収した油を再利用する際には、混入した塵・埃などを除去する必要があった。
【0006】
この発明は、上記課題を解決するためになされたもので、油受け容器をピットに固定した格納箱内に格納し、油受け容器の不慮の転倒を防止すると共に、塵・埃などの油受け容器内に収集した油への混入を防ぐことができる機械室レスエレベータの油受け装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による機械室レスエレベータの油受け装置は、機械室レスエレベータのピット内に配設され、昇降体の昇降移動を案内するガイドレールに供給される油を収集する機械室レスエレベータのガイドレール油受け装置であって、上記油を収集し、貯留する油受け容器と、側面に形成された給油用開口および上記油受け容器を出し入れする扉を有し、上記ガイドレールに近接して上記ピット内に固定され、上記油受け容器を該給油用開口を除いて閉塞状態に格納する格納箱と、一端を上記ガイドレールの下端側に接続され、かつ他端側を上記給油用開口から上記格納箱内に挿入して配設され、該一端から該ガイドレールを流下する油を集めて他端から上記油受け容器内に流す導油部材と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この発明では、油受け容器がピッチ内に固定された格納箱に格納されているので、作業者の足が油受け容器に触れて油受け容器を転倒させることが防止される。また、油受け容器が側面に形成された給油用開口を除いて閉塞状態に格納されているので、油受け容器内に収集された油への塵・埃などの混入が抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこの発明の一実施の形態に係る油受け装置の取り付け状態を示す斜視図、図2はこの発明の一実施の形態に係る油受け装置の取り付け状態を示す断面図である。
【0010】
図1および図2において、機械室エスエレベータのガイドレール油受け装置1は、油を収集し貯留する油受け容器2と、油受け容器2を内部に格納する格納箱3と、ガイドレール10を流れ落ちる油13を集めて油受け容器2に流す導油部材6と、を備えている。油受け容器2は、例えば、合成樹脂等を用いて有底箱状に作製されている。格納箱3は、例えば、合成樹脂などを用いて6面体の箱状に作製され、導油部材6の他端側が挿入される給油用開口4が一側面に穿設され、油受け容器2を出し入れするための扉5が他の一側面に開閉自在に取り付けられている。導油部材6は、一端の給油口8から他端の排油口9に向かって下り勾配に形成され、一端にガイドレール10のガイド部10aに圧着嵌合する凹部7を備えている。そして、導油部材6の一端の給油口8は、凹部7をガイド部10aに圧着嵌合すると、ガイドレール10のT字状のガイド部10aおよび基部10bの表面に密接する形状に形成されている。
【0011】
ここで、機械室レスエレベータにおいては、昇降体としてのかごの昇降を案内する一対のガイドレール10が昇降路に沿って上下方向に延設され、レールクリップ11により基部10bを昇降路の壁に固定されている。そして、ガイドレール10の下端がピット12内まで延設されている。
【0012】
つぎに、ガイドレール油受け装置1を設置するには、まず、格納箱3が、給油用開口4をガイドレール10側に向けて、ガイドレール10の下端側に近接して配置され、ピット12の床面12aに固定される。そして、導油部材6が、凹部7をガイドレール10のガイド部10aに圧着嵌合して一端側をガイドレール10に取り付けられ、他端側を給油用開口4から格納箱3内に挿入して配設される。これにより、導油部材6の一端側の給油口8がガイドレール10のガイド部10aおよび基部10bの表面に密着する。さらに、油受け容器2が、給油用開口4から挿入された導油部材6の排油口9の真下位置に位置するように、格納箱3内に格納される。
【0013】
ガイドレール10の上方に配設された自動給油器(図示せず)から給油された油13が、ガイドレール10を伝わって流れ落ちる。ガイドレール10の下端まで流れ落ちてきた油13は、給油口8から導油部材6内に流れ込み、導油部材6内を排油口9まで流れ、排油口9から油受け容器2内に滴下され、油受け容器2内に収集し、貯留される。
所定量の油13が油受け容器2内に収集されると、扉5をあけて油受け容器2を取り出し、油受け容器2内の油13を回収し、再利用に供せられる。
【0014】
このように、この発明によれば、油13を収集し、貯留する油受け容器2がピット12の床面12aに固定された格納箱3内に格納されているので、ピット12内で作業中の作業者の足が油受け容器2を触れることがない。そこで、作業スペースが狭く、かつエレベータの保守点検作業がピット12内に集中する機械室レスエレベータであっても、作業者がピット12内での作業中に誤って油受け容器2を転倒させてしまうことが防止される。その結果、作業負荷がおおきく、作業時間が長くなる油受け容器2の転倒にともなう清掃作業がなくなり、作業者の負荷が軽減される。
また、油受け容器2が給油用開口4を除いて閉塞状態に格納箱3内に格納されているので、油受け容器2に収集、貯留されている油13への塵・埃などの混入が抑えられ、油受け容器2から回収した油13を簡易な濾過作業だけで再利用することができる。
【0015】
ここで、格納箱3を透明なアクリル樹脂などで作製すれば、油受け容器2内の油13の貯留量を格納箱3の外部から目視確認できるので、油13が油受け容器2に満杯となる前に回収でき、油13が油受け容器2から溢れて、格納箱3内を汚すことがない。この場合、格納箱3の全てを透明材で作製する必要はなく、少なくとも外部から油受け容器2内の油13の貯留量を目視確認できる格納箱の部位が透明な材料で作製されていればよい。
【0016】
なお、上記実施の形態では、かご(昇降体)の昇降を移動するガイドレールに適用するものとしているが、つり合いおもり(昇降体)の昇降を案内するガイドレールに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施の形態に係る油受け装置の取り付け状態を示す斜視図である。
【図2】この発明の一実施の形態に係る油受け装置の取り付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 ガイドレール油受け装置、2 油受け容器、3 格納箱、4 給油用開口、5 扉、6 導油部材、10 ガイドレール、12 ピット、13 油。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械室レスエレベータのピット内に配設され、昇降体の昇降移動を案内するガイドレールに供給される油を収集する機械室レスエレベータのガイドレール油受け装置であって、
上記油を収集し、貯留する油受け容器と、
側面に形成された給油用開口および上記油受け容器を出し入れする扉を有し、上記ガイドレールに近接して上記ピット内に固定され、上記油受け容器を該給油用開口を除いて閉塞状態に格納する格納箱と、
一端を上記ガイドレールの下端側に接続され、かつ他端側を上記給油用開口から上記格納箱内に挿入して配設され、該一端から該ガイドレールを流下する油を集めて他端から上記油受け容器内に流す導油部材と、
を備えていることを特徴とする機械室レスエレベータのガイドレール油受け装置。
【請求項2】
上記格納箱の少なくとも一部が上記油受け容器内の油の貯留量を外部から目視確認できる透明な材料で作製されていることを特徴とする請求項1記載の機械室レスエレベータのガイドレール油受け装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−202961(P2009−202961A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44351(P2008−44351)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】