説明

機械式駐車場の車両はみ出し検出装置および方法

【課題】機械式駐車場の乗降室内で撮像された画像から車両の輪郭を正確に抽出することで、パレットに対する高精度のはみ出し検出を可能にする。
【解決手段】差分画像取得部62は、所定の間隔で撮像された二枚のフレームからフレーム間差分画像を計算する。初期輪郭設定部68は、車両の入庫開始からパレット上での停止までの間に差分画像取得部62によって計算されたフレーム間差分画像の論理和を計算し、論理和の画像の外周形状を初期輪郭とする。輪郭抽出部72は、初期輪郭をエネルギー最小化原理にしたがって内側に収束させていくことで初期輪郭に内包される物体の輪郭を抽出する動的輪郭モデルを実行して、フレーム内の車両の輪郭を抽出する。比較判定部74は、抽出された車両の輪郭と、パレット上の車両停止範囲を表すものとして予め設定されている基準枠とを比較し、車両の輪郭が基準枠内にあるか否かによって車両のはみ出しの有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車場において、パレットからの車両のはみ出しを検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、少ないスペースで多数の車両を効率的に駐車できる駐車場として、機械式駐車場が知られている。機械式駐車場の一つとして、パレットの上に車両を載置し、このパレットを前後あるいは左右にレールや溝を利用して移動させることにより、空いているパレットスペースへ運ぶ構成としたパレット式の機械式駐車場が知られている。
【0003】
パレットの面積は、乗降室における床の開口面積よりわずかに小さい程度である。このため、車両がパレット上の所定位置からずれた状態で停止していると、パレットの移動時に車両が駐車場の構成部材、例えば乗降室の床の開口のエッジに接触するおそれがある。したがって、車両がパレット上の所定位置に停止したか否かを検出して、所定位置からずれている場合にはドライバーや係員にその旨を通知する必要がある。
【0004】
特許文献1には、乗降室に入車した車両の一部を含む予め定められた領域を撮像した画像に対して画像処理を行う画像処理手段を備えた、機械式駐車設備の搬機上の車両の積載異常検出システムが開示されている。画像処理手段は、予め設定したしきい値を用いて、乗降室への車両進入から車両停止定位置までの車両のはみ出しの有無、および車両停止定位置から駐車スペースへの搬送動作開始時の車両のはみ出しの有無を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−285743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、機械式駐車場の乗降室内で撮像された画像内で車両の輪郭を認識して、パレットに対する車両のはみ出しの有無を検出する。撮像画像から車両等の移動物体の占める領域を抽出する方法として、主に背景差分法とフレーム間差分法が知られている。
【0007】
背景差分法は、移動物体が存在するときの画像と移動物体が存在しない状態の背景画像との差分から移動物体を抽出する方法である。背景差分法では、抽出すべき物体である車両と背景とが類似色である場合、車両の一部(例えばボンネットなど)が背景と誤認識され、車両が中抜き状態で検出されてしまうことがある。また、車体表面による反射光や車両の影などによる悪影響を受ける可能性が高い。このため、背景差分法によって抽出された車両の輪郭では、正確なはみ出し検出が行えない可能性が高い。
【0008】
フレーム間差分法は、異なる時点で移動物体を撮影した連続画像から二つの差分画像を求め、これら二つの差分画像の共通部分を移動物体の領域として抽出する手法である。しかしながら、そもそもフレーム間差分法は移動物体の検出方法なので、パレット上に停止した車両を撮像画像から抽出することは原理的に不可能である。
【0009】
このように、従来の背景差分法とフレーム間差分法のいずれも、パレット上に停止した車両の占める領域を撮像画像から抽出するのに適したものであるとは言えない。
【0010】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、機械式駐車場の乗降室内で撮像された画像から車両の輪郭を正確に抽出することで、パレットに対する高精度のはみ出し検出を可能にする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、機械式駐車場において車両が載置されるパレット上での車両のはみ出しを検出する車両はみ出し検出装置である。この装置は、車両およびパレットを含む予め定められた範囲を撮像するように設置される撮像手段と、撮像手段によって所定の間隔で撮像された二枚のフレームからフレーム間差分画像を計算する差分画像取得部と、車両の入庫開始からパレット上での停止までの間に差分画像取得部によって計算されたフレーム間差分画像の論理和を計算し、論理和の画像の外周形状を初期輪郭とする初期輪郭設定部と、初期輪郭をエネルギー最小化原理にしたがって内側に収束させていくことで初期輪郭に内包される物体の輪郭を抽出する動的輪郭モデルを実行して、フレーム内の車両の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、輪郭抽出部によって抽出された車両の輪郭と、パレット上の車両停止範囲を表すものとして予め設定されている基準枠とを比較し、車両の輪郭が基準枠内にあるか否かによって車両のはみ出しの有無を判定する比較判定部と、を備える。
【0012】
この態様によると、動的輪郭モデルを適用して撮像画像から車両の輪郭を抽出し、所定の基準枠との比較によってパレット上での車両のはみ出しを検出する。初期輪郭として、乗降室内を移動する車両のフレーム間差分画像の論理和の外周形状を使用する。これによって、車両と背景とが類似色であっても抽出すべき車両を確実に内包する初期輪郭を設定することができるので、正確に車両の輪郭を抽出することができる。また、初期輪郭を比較的に小さく設定できるので、収束処理に要する時間が短縮される。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機械式駐車場の乗降室内で撮像された画像から車両の輪郭を正確に抽出できるので、パレットに対する高精度のはみ出し検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】機械式駐車場の一部である乗降室を車両と共に示す図である。
【図2】(a)、(b)は、パレット上に車両が積載されていないときと積載されているときのカメラによる撮像画像の例をそれぞれ示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両はみ出し検出装置の構成を示す図である。
【図4】初期輪郭設定部による初期輪郭の設定を説明する図である。
【図5】初期輪郭の一例を示す図である。
【図6】輪郭抽出部により抽出された車両輪郭の一例を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る車両はみ出し検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態は、機械式駐車場のパレットに車両を駐車するときに、カメラによる撮像画像から車両を抽出し、パレットから車両がはみ出していないことを検出するはみ出し検出装置である。まず、機械式駐車場の一般的構成について説明し、その後本実施形態に係るはみ出し検出について説明する。
【0017】
図1は、駐車スペースを階下に構築する地下タイプのパレット式の機械式駐車場の乗降室100を示す。図1(a)は平面図、図1(b)は乗降室の奥部から出入口側を見た断面図、図1(c)は側面断面図である。
【0018】
乗降室100は、車両の出入口100aを除く周囲(側面、天井面)が壁110で囲われており、出入口100aには昇降式のゲート120が設けられている。乗降室100内の床200から地下の駐車スペースに向けて長四角形状のパレット10の昇降を可能にする長四角形状の開口200aが形成されている。パレット10は、開口200aの面積よりわずかに小さい面積を持つ鋼板などの金属製材料で作られている。
【0019】
パレット式の機械式駐車場は、パレット10の下方に配置された昇降装置(図示せず)を用いて車両20が積載された状態のパレット10を昇降させたり、または移載装置(図示せず)を使用して駐車室内でパレットを面方向に移動させたりして、駐車室に車両20を駐車させる構成になっている。
【0020】
図1は、パレット10に車両20が積載された状態を示している。車両20の入出庫時には、パレット10は乗降室100の床200とほぼ同一面の高さ位置にあるようにされる。つまり、パレット10のエッジと開口200aのエッジとの間には数cm程度の隙間が存在するが、車両20の乗り入れ、乗り出しに支障を来さないようにされる。
【0021】
乗降室100内の奥の壁110に隣接してミラー30が立設されている。このミラー30は、乗降室100内に進入してきた車両のドライバーに対して自車の進入状態を見せるためのものである。また、ミラー30の上部には、ドライバーに対して車両の進入、停止、ハンドル切り操作等を視覚的にガイドする電光掲示板のようなガイド手段や聴覚的にガイドするスピーカのようなガイド手段32が設けられる。
【0022】
機械式駐車場への入庫時、ドライバーは、車両を運転して出入口100aから乗降室100内に進入し、ミラー30を見たりガイド手段32による案内を受けたりしながら左右の位置あわせをして、パレット10上に予め設定されている車両停止位置12内に車両を停止させる。ここでガイド手段により「OK」(あるいは「下車」)等のサインが出たら、ドライバーはエンジンを切り、車両外に出る。車両がパレット10上の車両停止位置12からはみ出していると、以後の車両搬送時に、車両の一部が開口200aのエッジや駐車室内の他の装置に接触し、車両または装置を損場する可能性がある。
【0023】
したがって、乗降室100には、カメラ34による撮像画像に基づき上記のような車両のはみ出しの有無を検出するための車両はみ出し検出装置60が備えられている。車両はみ出し検出装置60の構成は、図3を参照して後述する。
【0024】
カメラ34は、パレット10の一つの長辺の延長線上に設置される。図2(a)、(b)は、パレット10上に車両20が積載されていないときと積載されているときのカメラ34による撮像画像の例をそれぞれ示す。図2(b)に示すように、カメラ34は、パレット10上に車両20が積載されているときに、車両20の全体とパレット10のうち少なくとも三つの辺を含む予め定められた領域を撮像できるように、設置位置、カメラアングル、および視野角が選択される。カメラ34は、所定のフレームレート(例えば、60fps)で動画像を撮影するデジタルカメラであることが好ましい。
【0025】
なお、カメラ34は、パレットの長辺と平行であり床200に対して垂直な面内にあり、かつ車両20の全体とパレット10のうち少なくとも三つの辺を含む範囲を撮像することができれば、乗降室100内の任意の場所に設置することができる。
【0026】
図3は、本実施形態に係る車両はみ出し検出装置60の構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0027】
車両はみ出し検出装置60は、差分画像取得部62、入庫開始判定部64、停止判定部66、初期輪郭設定部68、輪郭修正部70、輪郭抽出部72、比較判定部74および報知部76を含む。
【0028】
差分画像取得部62は、カメラ34によって所定のフレームレートで撮像される画像から二枚のフレームを取り出し、フレーム間差分画像を計算する。取り出す二枚のフレームは、カメラのフレームレートと同じであってもよいし、フレームレートよりも長い間隔(例えば一枚飛ばし)であってもよい。
【0029】
入庫開始判定部64は、差分画像取得部62によって計算されるフレーム間差分画像に基づき、車両20が乗降室100内への進入を開始したことを判定する。非入庫時に計算されるフレーム間差分画像はほぼ全ての画素値がゼロであるのに対し、入庫が開始したときに計算されるフレーム間差分画像では画素値が増加することから、この変化を検出することで車両の入庫開始を判別することができる。代替的に、入庫開始判定部64は、駐車場の係員が入庫処理のスイッチ(図示せず)を押したとき、出入口100aに設置されたレーザ(図示せず)により車両20の進入を検知したとき、またはパレットに10に設置された荷重センサ(図示せず)で車両の重量を検知したときに、入庫開始と判定してもよい。
【0030】
停止判定部66は、差分画像取得部62によって計算されるフレーム間差分画像に基づき、車両20がパレット10上で停止したことを判定する。例えば、フレーム間差分画像同士の相違が実質的になくなったときに、車両が停止していると判定できる。代替的に、停止判定部66は、駐車場の係員が入庫完了のスイッチ(図示せず)を操作したとき、または乗降室100内に設置されたレーザ(図示せず)により車両20の後端がパレット10に載ったことを検知したときに、車両停止と判定してもよい。
【0031】
初期輪郭設定部68は、乗降室100への車両の進入から車両停止位置にて停止するまでの間に差分画像取得部62によって計算されるフレーム間差分画像を利用して、輪郭抽出部72に与えるべき初期輪郭を設定する。初期輪郭設定部68の作用については、図4を参照して詳細に後述する。
【0032】
輪郭修正部70は、初期輪郭設定部68により設定された輪郭を、後述するSnakesでの処理に適した形状に修正する。例えば、初期輪郭を構成する各画素を一画素分だけ内側に移動させるか、または一画素分だけ外側に移動させる、収縮・膨張処理を実行する。この収縮と膨張とを複数回繰り返して行うことで、初期輪郭のギザギザな形状や孤立している部分を消去して滑らかな輪郭線を得ることができる。このような収縮・膨張処理も周知技術であり、例えば、「10−2−3 収縮・膨張処理」、ディジタル画像処理編集委員会、ディジタル画像処理、財団法人画像情報教育振興協会、2006年3月1日、p.179−180に記載されている。輪郭修正部70は、収縮・膨張処理によって滑らかな初期輪郭が得られた後、計算時間を短縮するために後述する制御点の数を減らす間引き処理を実行してもよい。なお、輪郭修正部70による上記の修正処理は必ずしも実行されなくてもよい。
【0033】
輪郭抽出部72は、輪郭修正部70から初期輪郭を受け取り、動的輪郭モデルとして知られるSnakesを適用して、カメラ34による撮像画像から車両20の輪郭を抽出する。Snakesは、撮像画像から車両の輪郭のような閉曲線を求める方法として特に優れた手法である。以下では、車両の輪郭抽出にSnakesを使用する場合について説明するが、初期輪郭を受け取りこれを内側に収束させていく計算方法を採用する限り、他の公知の輪郭抽出手法、または将来開発される輪郭抽出手法を本実施形態に適用することができる。
【0034】
Snakesは、抽出対象の領域(本実施形態では車両)がエッジで囲まれているときに、エッジを閉曲線として抽出する。Snakesでは、n個の制御点(頂点)CP〜CPを持つ多角形で輪郭モデルを定義する。つまり各制御点CP(i=1〜n)の位置座標を(X,Y)で表すとき、それらの集合S={(X,Y),i=1,2,...,n}が一つの輪郭モデルとなる。この輪郭モデルの各制御点の間隔がある程度密であれば、物体の輪郭としての閉曲線を表すことができる。輪郭抽出の対象となる車両20の周囲を囲む閉曲線を初期輪郭として設定し、次いで、所定のエネルギー関数を最小化するように各制御点CPの位置座標を(X,Y)を更新することで徐々に閉曲線を縮ませていき、最終的に物体の輪郭に沿って閉曲線を張り付かせる。輪郭抽出部72は、この張り付かせた閉曲線を車両の輪郭として出力する。
【0035】
このように、初期輪郭を次第に内側に収縮させていく方法をとるので、車両20の外側に適切な初期輪郭を設定することさえできれば、車両の内側の色の影響を受けにくいという利点がある。
【0036】
Snakesによる輪郭抽出手法は画像処理の当業者にとって周知であるので、本明細書ではこれ以上の詳細な説明を省略する。Snakesについては、例えば、特開平9−6969号公報、および「11−2−3 対象物と背景の間のエッジを利用した領域分割処理」、ディジタル画像処理編集委員会、ディジタル画像処理、財団法人画像情報教育振興協会、2006年3月1日、p.197−199に開示されている。
【0037】
比較判定部74は、輪郭抽出部72によって抽出された車両輪郭と、撮像範囲内でパレット10上の車両停止位置12に対応させた所定の基準枠とを比較する。カメラ34はパレット10に対して常に固定されているので、カメラの撮像範囲内で四辺形になる基準枠を予め定めることができる。比較判定部74は、車両輪郭の全ての部分が基準枠の内側に入っているか否かを判定する。基準枠の内側に入っていれば、車両20はパレット10上に適切に積載されていることになる。
【0038】
報知部76は、比較判定部74による判定結果に基づき、ガイド手段32を用いて車両20のドライバーおよび/または駐車場の係員に警報を発する。比較判定部74によって、車両輪郭の全てが基準枠の内側に入っていると判定された場合、報知部76は、ドライバーおよび/または係員に対して、所定の停止位置への駐車が完了したことを知らせる音声案内をしたり、電光掲示板にメッセージを表示したりする。比較判定部74によって、車両輪郭の一部が基準枠をはみ出していると判定された場合、報知部76は、ドライバーおよび/または係員に対して、適切な停止位置への入庫操作をやり直すように促す音声案内をしたり、電光掲示板にメッセージを表示したりする。
【0039】
なお、比較判定部74は、車両輪郭の一部が基準枠をはみ出している場合、車両の右側と左側のどちらが基準枠からはみ出しているのかを決定してもよい。この場合、報知部76は、車両のドライバーに対して、パレットのより左側またはより右側に駐車すべきことを知らせる音声案内をしたりメッセージを表示したりしてもよい。知らせるメッセージを発するようにしてもよい。
【0040】
上述したように、Snakesを実行するためには、車両を内包するような適切な初期輪郭を与える必要がある。パレット上に停車する車両には様々な形状があるので、初期輪郭を一律に設定することはできない。また、初期輪郭が大きすぎると処理時間が増大して実用性が損なわれてしまう。
【0041】
周知の背景差分法やフレーム間差分法によって移動物体である車両を検出し、その外縁を初期輪郭とすることも考えられる。しかし、既に述べたように、背景差分法やフレーム間差分法は、乗降室内のパレット上に停車している車両の抽出に適しているとは言えない。
【0042】
そこで、本実施形態では、複数のフレーム間差分画像の論理和を用いて初期輪郭を設定する。この方法について以下で説明する。
【0043】
図4は、初期輪郭設定部68による初期輪郭の設定方法を概念的に説明する図である。図中の左列は、カメラ34によって所定のフレームレートで撮像される撮像画像であり、図にはそれぞれ時刻t〜t+3に撮像された画像F〜Ft+3が示されている。なお、図4では、図を見やすくするために、車両を側面から撮像した様子を表している。
【0044】
差分画像取得部62は、時間的に連続する二枚の撮像画像の差分をとって、図中の中列に示すフレーム間差分画像D〜Dt+2を算出する。
【0045】
従来のフレーム間差分法では、時間的に連続する二枚のフレーム間差分画像の論理積(AND)を求めることによって、撮像画像から移動物体を検出する。これに対し、本実施形態では、時間的に連続する二枚のフレーム間差分画像の論理和(OR)を求める。図4の右列に、論理和画像OR、ORt+1が示されている。
【0046】
さらに、初期輪郭設定部68は、車両の入庫開始からパレット上での停止までの間に撮像された画像から求められる全ての論理和画像ORtの論理和を求め、得られた画像の外周形状を初期輪郭Cとする。結果的に、初期輪郭Cは全てのフレーム間差分画像の論理和と等価である。初期輪郭Cはフレーム毎の微小な車両移動による変化の総和であるとも言える。
【0047】
フレーム間差分画像の取得間隔が乗降室内での車両の移動速度に対して十分に短ければ、図4の右下に示すように、初期輪郭Cは、乗降室内での車両の移動軌跡の外周形状を表すようになる。
【0048】
従来のフレーム間差分法のように、フレーム間差分画像の論理積(AND)を取ることで移動物体である車両を検出しようとする場合、ある特定の時点における車両しか検出することができない。したがって、パレット上に停車する車両の初期輪郭として利用しようとする場合、停止直前の特定の時点の車両を検出するように、フレーム間差分画像の取得タイミングを設定する必要がある。これに対し、本実施形態のように、フレーム間差分画像の論理和(OR)を利用して乗降室内での車両の移動軌跡を求め、その外周形状を初期輪郭として設定することで、フレーム間差分画像の取得タイミング等の設定が不要になる。
【0049】
なお、図4の例では、時間的に連続する二枚の撮像画像からフレーム間差分画像を求めているが、一枚飛ばしまたは二枚飛ばしのように、フレーム間差分画像を求める撮像画像を間引きするようにしてもよい。この間引きの間隔は、乗降室内を移動する車両の走行速度に応じて、時間的に連続する二つのフレーム間差分画像内の車両領域に互いに重なり合う部分が存在する限り、任意に設定することができる。
【0050】
また、車両の移動軌跡の外周形状を初期輪郭とすることで、初期輪郭は必ず閉曲線になる。したがって、Snakesに与える初期輪郭として適している。
【0051】
図5は、上述の方法にしたがって初期輪郭設定部68によって撮像画像から抽出された車両軌跡を示している。図中の抽出領域の外周形状が初期輪郭Cである。好適には、初期輪郭Cのギザギザを上述の収縮・膨張処理によって除去した後に、輪郭抽出部72に与えられる。
【0052】
図6は、輪郭抽出部72によって最終的に抽出される車両の輪郭を示す。比較判定部74は、この車両の輪郭とパレット上の車両停止位置を表す基準枠とを比較することで、車両のはみ出しの有無を検出する。
【0053】
図7は、本実施形態に係るはみ出し検出方法のフローチャートである。まず、差分画像取得部62は、カメラ34によって撮像される画像から二枚のフレームを取り出し、フレーム間差分画像を計算する(S10)。入庫開始判定部64は、差分画像取得部62によって計算されるフレーム間差分画像に基づき、車両20が乗降室100内への進入を開始したか否かを判定する(S12)。
【0054】
入庫開始判定部64により車両が進入したと判定されると、初期輪郭設定部68は、フレーム間差分画像の論理和に基づき、上述した方法にしたがって初期輪郭Cを設定する(S14)。輪郭修正部70は、必要に応じて初期輪郭Cを滑らかにする修正を施す。
【0055】
停止判定部66は、差分画像取得部62によって計算されるフレーム間差分画像に基づき、車両20がパレット10上で停止したか否かを判定する(S18)。車両が停止したと判定されると、初期輪郭Cを使用して、車両が停止したと判定された以降の時点でカメラ34により撮像された(S20)画像に対して輪郭抽出部72がSnakesを適用して車両の輪郭を抽出する(S22)。比較判定部74は、輪郭抽出部72によって抽出された輪郭と所定の基準枠とを比較して、車両の輪郭の全ての部分が基準枠の内側に入っているか否かを判定する(S24)。
【0056】
車両の輪郭の全てが基準枠の内側に入っている場合(S26のY)、報知部76は所定の停止位置への駐車が完了したことをドライバーおよび/または係員に報知する(S28)。車両の輪郭の一部が基準枠をはみ出している場合(S26のN)、報知部76は適切な停止位置への入庫操作をやり直すようにドライバーおよび/または係員に報知する(S30)。後者の場合、この報知に応答して入庫操作がやり直されるとき、車両の停止判定以降の処理が繰り返される。二回目以降の入庫の場合は、改めて初期輪郭を設定する必要はなく、初回の入庫時に設定された初期輪郭を再利用することができる。これは、初回の入庫が極端にパレットから外れるものでない限り、初回と二回目以降でのパレット上での車両の位置変化はわずかであり、Snakesの初期輪郭を変更するほどの変化ではないと考えられるからである。
【0057】
なお、上記のフローのうち、初期輪郭を修正するステップ、および入庫の完了または再実行を報知するステップは省略することができる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、動的輪郭モデルであるSnakesを適用して撮像画像から車両の輪郭を抽出し、所定の基準枠との比較によってパレット上での車両のはみ出しを検出する。Snakesに与える初期輪郭として、乗降室内を移動する車両のフレーム間差分画像の論理和の外周形状を使用する。
【0059】
パレットに駐車される車両には様々な形状があるので、初期輪郭を固定にすると実際の車両よりもかなり大きく設定せざるを得ず、収束性の悪化または収束不可能になることがある。また、背景差分法を用いて初期輪郭を設定すると、背景と車両とが類似色である場合に適切な車両領域の抽出ができないことがある。これに対し、本実施形態のようにフレーム間差分画像の論理和を使用して初期輪郭を設定することで、車両と背景とが類似色であっても抽出すべき車両を確実に内包する初期輪郭をSnakesに与えることができるので、背景差分法よりも正確に車両の輪郭を抽出することができる。また、固定値よりも初期輪郭を小さくできるので、収束処理に要する時間が短縮される。
【0060】
以上、実施の形態に係る機械式駐車場について説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0061】
実施の形態では、パレット上で車両が停止したと判定されたときに、車両の輪郭を抽出することを述べた。この代わりに、車両の入庫開始からパレット上で停止するまでの間、同様の輪郭抽出を繰り返し実行するようにしてもよい。この場合、初期輪郭設定部は、時間的に連続するフレーム間差分画像の論理和を計算し続ける。そして、各時点で計算されている論理和画像に対して、輪郭抽出部が上述の輪郭抽出を実行し、比較判定部は抽出された車両の輪郭が所定の基準枠内にあるか否かを判定する。そして、車両の輪郭が基準枠内に入った時点で、車両が停止したと判定する。つまり、車両の入庫操作中に車両の輪郭抽出と基準枠との比較が連続的に行われていることになる。このような変形例では、車両の輪郭抽出結果に基づき車両の停止を判定することができるため、停止判定部が不要になる。
【0062】
実施の形態では、乗降室が昇降路の上端に位置するいわゆる地下式駐車場について説明した。しかしながら、パレットの移動により車両を収納するような構造であれば、乗降室が昇降路の下端や中間に位置する立体式駐車場についても本発明を等しく適用できる。昇降装置を備えない平面の駐車場についても同様である。また、車両をコンベアに積載して搬送するコンベア式の機械式駐車場にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 パレット、 12 車両停止位置、 20 車両、 34 カメラ、 60 車両はみ出し検出装置、 62 差分画像取得部、 64 入庫開始判定部、 66 停止判定部、 68 初期輪郭設定部、 70 輪郭修正部、 72 輪郭抽出部、 74 比較判定部、 76 報知部、 100 乗降室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式駐車場において車両が載置されるパレット上での車両のはみ出しを検出する車両はみ出し検出装置であって、
車両およびパレットを含む予め定められた範囲を撮像するように設置される撮像手段と、
前記撮像手段によって所定の間隔で撮像された二枚のフレームからフレーム間差分画像を計算する差分画像取得部と、
車両の入庫開始からパレット上での停止までの間に前記差分画像取得部によって計算されたフレーム間差分画像の論理和を計算し、該論理和の画像の外周形状を初期輪郭とする初期輪郭設定部と、
前記初期輪郭をエネルギー最小化原理にしたがって内側に収束させていくことで該初期輪郭に内包される物体の輪郭を抽出する動的輪郭モデルを実行して、フレーム内の車両の輪郭を抽出する輪郭抽出部と、
前記輪郭抽出部によって抽出された車両の輪郭と、パレット上の車両停止範囲を表すものとして予め設定されている基準枠とを比較し、前記車両の輪郭が前記基準枠内にあるか否かによって車両のはみ出しの有無を判定する比較判定部と、
を備えることを特徴とする車両はみ出し検出装置。
【請求項2】
前記所定の間隔は、乗降室内を移動する車両の走行速度に応じて、時間的に連続する二つのフレーム間差分画像内の車両領域に互いに重なり合う部分が存在するように設定されることを特徴とする請求項1に記載の車両はみ出し検出装置。
【請求項3】
前記所定の間隔は前記撮像手段のフレームレートと等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の車両はみ出し検出装置。
【請求項4】
時間的に連続する二つのフレーム間差分画像の間で領域変化が発生したときに、車両の入庫が開始されたと判定する入庫開始判定部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両はみ出し検出装置。
【請求項5】
車両の入庫が開始された後に、時間的に連続する二つのフレーム間差分画像の間で領域変化が生じなくなったときに、車両がパレット上で停止したと判定する停止判定部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両はみ出し検出装置。
【請求項6】
前記比較判定部による車両がはみ出しているとの判定に応じて車両の入庫が再実行されるときに、前記輪郭抽出部は、前回の入庫時に求められた初期輪郭をそのまま使用することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の車両はみ出し検出装置。
【請求項7】
前記輪郭抽出部は、車両の入庫開始からパレット上での停止までの間、前記フレーム間差分画像の論理和が更新される毎に、車両の輪郭の抽出を繰り返し実行し、
前記停止判定部は、前記輪郭抽出部によって連続的に抽出される二枚の輪郭の間で変化が生じなくなったときに、車両がパレット上で停止したと判定することを特徴とする請求項5に記載の車両はみ出し検出装置。
【請求項8】
機械式駐車場において車両が載置されるパレット上での車両のはみ出しを検出する車両はみ出し検出方法であって、
車両およびパレットを含む予め定められた範囲を撮像するように設置された撮像手段によって所定の間隔で撮像された二枚のフレームからフレーム間差分画像を計算し、
車両の入庫開始からパレット上での停止までの間に計算されたフレーム間差分画像の論理和を計算し、該論理和の画像の外周形状を初期輪郭とし、
前記初期輪郭をエネルギー最小化原理にしたがって内側に収束させていくことで該初期輪郭に内包される物体の輪郭を抽出する動的輪郭モデルを実行して、フレーム内の車両の輪郭を抽出し、
抽出された車両の輪郭とパレット上の車両停止範囲を表すものとして予め設定されている基準枠とを比較し、前記車両の輪郭が前記基準枠内にあるか否かによって車両のはみ出しの有無を判定する
ことを含む車両はみ出し検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−96092(P2013−96092A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237747(P2011−237747)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】