説明

機械的振動を用いてダボを固定する方法および装置

本発明に従い、構造物体(11)に固定要素(1)を固定する固定方法が提供される。物体の表面は、表面に孔、表面に構造体(たとえばアンダーカットを有するリッジの配列)、不均質な部分であって、圧力下の液体によって表面の浸透を可能にし、それにより液体によって充填される、表面より低い孔を形成し、さらにキャビティのうちの、少なくとも1つを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は建造の分野、特に建築業、木造、家具業および機械的構造物の分野にあり、構造材を含む構造物に固定要素(たとえばダボ)を固定する方法に関する。本発明はさらに対応する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
機械的振動を用いて、繊維状または多孔性の構造部材にある開口に接続要素を固定する方法は、たとえばWO 98/00109, WO 00/79137 および WO 2006/002569の公報や、たとえば国際特許出願PCT/CH 2007/000460から既知である。これらの方法によれば、接続要素が物体の予め開けられた開口内に配置され、または直接的な力によって物体の表面に押され、それにより開口を形成する。開口の軸方向に力が接続要素に作用する間、その要素は機械的振動によって励起される。接続要素は少なくとも一方の表面に熱可塑性材を含み、これがプロシージャの際に物体の材料と接触する。機械的振動のエネルギは、機械的振動によって所定の固定点の領域にある熱可塑性材を液化するよう設定され、開口の壁と接続要素との間の固定点で生じる圧力によって熱可塑性材を物体の孔または表面構造体に押込み、巨視的固定を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
本発明の目的は、固定要素を固定する改良された方法を提供することである。ここで用いられる「固定要素」の用語は、固定するのに適し、かつ固定の後、固定体を形成するまたは固定体の一部をなすものを指す。このような固定体は接続要素、たとえばダボ、リベット、釘や物体に直接固定される他の部分を含むが、これらには限定されない。この意味において、固定体はさらなる部分を構造物体に接続するのに適する、またはそれ自体がたとえば装飾といった役割を果たすものを含む。
【0004】
本発明のさらなる目的は、加工パラメータ(力、エネルギなど)を予め定めることが可能である、自動化に適する固定方法を提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、改良された固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
固定要素を固定することができる構造物体は、第1のオプションとして、多孔性のもしくは構造化された表面、または静水圧下の液体によって孔が形成される表面を有することができる。物体は木、木質複合体(たとえばチップボード、削片板、配向性ストランドボード)、厚紙、コンクリート、レンガ、しっくい、石(たとえば砂岩)、液化材を圧力下で浸透させることができる工業用発泡材、または上記のいずれかの組合せからなる複合体からなり得る。第2のオプションとして、物体は固定処理の際に液化材が中に入って、それにより固定要素を固定するキャビティを有することができる。この第2のオプションにより、構造物体の材料は、第1のオプションで言及された材料のいずれか、または他の構造/工学材であって、鋼やアルミニウムなどの金属を含むが、これらに限定されない。物体は第1および第2のオプションの両方に対応することができる。
【0007】
本発明に従い、構造物体に固定要素を固定する方法が提供され、物体の表面は:
−表面の孔、
−表面の構造体(たとえばアンダーカットを有するリッジの配列)、
−圧力を受けた液体によって表面への浸透が可能になる、不均質な部分であって、液体によって充填される、表面より低い孔を形成し(木のような硬い材料に孔を形成することは、木の繊維間のように、接続の局所破損によって引き起こされ、コア材(分離材)などのようなより軟らかい材料に孔を形成することは、軟らかい材料の局部的変位および/または圧縮による)、さらに
−キャビティ、のいずれか1つを有する。
【0008】
本方法は、
−第1の要素および第2の要素を設けるステップを備え、第1の要素は熱可塑性材を含み;
−第1の要素を前記表面および/または前記キャビティの近くに位置付け、第2の要素を第1の要素と接触するよう位置付けるステップと、
−ある力で第1の要素に荷重を与えながら第3の要素を振動させ、それにより第1の要素に機械的振動を与え、同時に第2の要素による反力で第1の要素に荷重を与えるステップと、
−機械的振動と荷重ロードとを共同で与えることにより、少なくとも1つの界面で熱可塑性材の少なくとも一部を液化し、それにより液化材を作成するステップを備え、前記少なくとも1つの界面は、第1の要素と第3の要素との間の界面、第1の要素と第2の要素との間の界面、および第1の要素の部分間の界面の少なくとも1つであり、
−第2および第3の要素からの機械的振動および荷重を共同で与えることにより、第1の要素を圧縮させ、それにより液化材を孔および/または構造体および/またはキャビティの中に流すステップと、
−第1の要素が物体内に固定されるよう、液化材を再度凝固させるステップとを備える。
【0009】
第1の要素は熱可塑性材を含み、熱可塑性材の少なくとも一部が液化される間、固定の際に圧縮される。一般に、ある力と反力との間の圧縮により、液化材は力によって規定される軸に対して横方向に、すなわち少なくとも部分的に横方向に、流れるようになる。たとえば、液化材は横方向全体に流れて、固定要素の最初の位置を囲む輪を実質的に形成する。
【0010】
本発明の方法において、第1の要素の圧縮は、熱可塑性材の液化によって可能となり、圧縮により液化材が構造体/孔/キャビティ内に(通常は横方向に)流される。固体状態にある第1の要素は、ボアまたは開口の方向によって規定される軸に沿って圧縮可能である必要はない(好ましくは圧縮可能ではない)。これはPCT/CH 2007/000460の教示とは異なる。ここでは、液化は材料面との接触に基づいており、その接触は固体状態において最も外側の表面から軸までの横方向の距離を増やす圧縮によって引き起こされる。好ましくは、固定要素はその固体状態において、「正常な」状態(すなわち、固定の際に用いられる力の大きさが大気条件において作用する場合)では、実質的な圧縮を示さない。これは、たとえば小さな残留圧縮(どの要素もある程度弾性を有し、理論的には僅かでも圧縮可能である)は、本質的に角度を保つことを意味する(固定要素を等角的な態様で変形する)。角度の変形は、たとえば3°以下であり、正常な状況下の圧縮は3%を越えない。
【0011】
第1の要素は本文では固定要素としても示される。これは固定体が必ずしも固定要素のみからなることを意味するのではなく、固定体は任意の第3および/または第2の要素を含むさらなる要素を備えることができる。
【0012】
第2の要素は、第1の要素に反力を与えるのに適する寸法的に安定した要素であり得る。1体として、または固定処理の際に互いに接続されるまたは互いに支えられている複数の部分を含み得る。第2の要素は機械的振動によって液化されない材料、たとえば金属、熱硬化材、または第1の要素の熱可塑性材よりも実質的に高いガラス遷移温度を有する熱可塑性材料からなり得る。代替的に、第2の要素は液化可能な材料を含んでもよい(しかし、多くの場合、このような材料の液化は、間接的に加熱または第1の要素による振動の伝達のみによって起こり、第2の要素は第1の要素を介した経路を除き、第3の要素に対して振動が切り離されている)。
【0013】
多くの好ましい実施の形態では、第2の要素は静止して保持され(かつ第1の要素を介して第3の要素と弱く振動結合されることによってのみ振動する)が、そうなければならないことはない。むしろ、第2の要素を積極的に振動させてもよいが、その振動は第3の要素の振動と異なる(および、たとえば反対のまたは異なる位相および/または異なる周波数など)。
【0014】
第3の要素は全体として、機械的振動発生器(これは圧電変換器を含むことができ、より一般的には機械的振動発生器は当該技術分野において周知であり、ここでは詳細に説明しない)から、第1の要素との接触面に、機械的振動を伝えるのに適するものである。このため、第3の要素は振動周波数において、第1の要素に振動を結合するべき界面が最大のまたはそれに近い振幅場所にあって振動するよう、好ましくは設計されている。たとえば、第3の要素は1体の材料からなり、実質的に一定の断面を有するのなら、振動は縦振動であり、振動周波数の振動の波長はλであり、第3の要素の長さは好ましくは約n*λ/2であり、ここでnは自然数である。
【0015】
第3の要素は一体の要素である、または互いにしっかりと固定(たとえばねじ止め、溶接、または接着による積極的な嵌合接続)されている複数の部分を含むことができる。
【0016】
第3の要素の振動は、縦振動、横振動、捩じり振動、他の種類の振動、または異なる振動モードの組合せ(重畳)であり得る。
【0017】
WO 98/00109, WO 00/79137 および WO 2006/002569や国際特許出願PCT/CH 2007/000460に記載されている方法と比べて、本発明の方法は、少なくとも第1、第2および/または第3の要素(またはその部分)間の界面、および/または第1の要素内の少なくとも1つの界面において、(外部または内部の)摩擦力による熱可塑材の液化に基づいている。これは固定要素と物体表面との間の摩擦により熱可塑性材を液化するという従来の概念と離れるものである。材料は、最初は分離している(または弱く結合されている)要素間またはその要素自身内の界面で液化される。すなわち、本発明に関わる要素は、固定要素が固定される物体がなくても、第2および第3の要素を介して第1の要素に与えられる力と機械振動とによる共同作用によって熱可塑性材が溶けるような態様で配置される。これにより、必要な力を予め定められた態様で与えることが可能となる。その結果処理の自動化はもっと容易となり、これはたとえば必要な力をロードフレーム内に与え、外部的力を前記ロードフレームに与えないことによって行なわれる。
【0018】
溶融した熱可塑性材は、孔/構造体および/または少なくとも1つのキャビティ内に流入させられる。このためには、静水圧を生成しなければならないかも知れない(固定要素の圧縮の影響による)。しかし物体が既に多孔性であるまたは(局所的に)弱い材料からなる場合には、静水圧は殆どまたは少ししか必要ない。その結果、受ける力の衝撃によって簡単に損傷を受ける物体の場合、材料に与えられる唯一の衝撃は非常に小さな静水圧のみとなる。
【0019】
(軸方向に沿った位置の関数として)一定の断面を有する固定要素では、振動する第3の要素の界面は、自然の成り行きで液化が始まる初期位置であり、これは本発明の多くの実施の形態において望ましい。しかし、液化が確実に所望の場所で行なわれるようにするために、固定要素は、一定の断面と離れて、エネルギディレクタ(エネルギ集中装置)または複数のエネルギディレクタを含むことができる。
【0020】
このようなエネルギディレクタは、以下のような構造的エネルギディレクタの少なくとも一つであり得る。
【0021】
−液化が望まれる界面に向かって、軸に沿った位置の関数として、断面積が減少する、
−広い範囲の直径内において少なくとも1個の突出部であって、その突出部は液化が望まれる界面にある。
【0022】
しかし、エネルギディレクタはさらに、または代替的に、材料の特性に依存し得る。したがって、以下を含むこともある:
−固定要素(および/または第2のおよび/または第3の要素)上に分布する不均質な材料。それにより、液化が望まれる界面に隣接する材料は、他の界面(たとえば、反対側の界面)に隣接する材料と比べて、より高い機械振動エネルギ吸収を有する。たとえば、固定要素は互いに付着する2つの部分を備え、第3の要素の界面に隣接する部分は、第2の要素の界面に隣接する部分よりも軟らかい(またはその逆)。別の例として、固定要素は、固定要素の長さなどに対して濃度勾配を有する軟化剤を含み得る。
【0023】
固定要素はたとえば第1の結合面および第1の結合面と異なる第2の結合面を含み、第3の要素を第1の結合面に押付けることにより力が固定要素に与えられ、反力は第2の要素を第2の結合面に押付けることにより、固定要素に与えられる。
【0024】
結合面は固定要素のたとえば反対側にあってもよい。結合面は力の方向によって規定される軸に対して実質的に垂直に、またはある角度を有してもよい。結合面は実質的に互いに平行であってもよい。
【0025】
ある力および反力は好ましくは同じ大きさであるが、反対の方向を有する。この条件を完全に満たす必要はない。なぜなら、固定要素は固定の際にたとえば物体の側壁に接触して、それによりさらなる力を吸収して、ある力および反力の大きさおよび/または方向における小さな不均衡を補う。
【0026】
ある力および反力は、固定の際、孔/構造体、不均質な部分/キャビティを含む表面が機械的荷重を与える必要がないものである。熱可塑性材の少なくとも一部の液化および液化材の押出し(それにより孔、構造体、またはキャビティに流れ込む)をもたらす処理はすべて、固定要素が固定される物体と独立している。前に述べたように、熱可塑性材の液化は、物体がなくても、減圧または水中でさえも、実現する。
【0027】
構造物体への接触と独立しているこの液化は、本発明により、主要な液化機構であるが、これは固定要素と物体との摩擦による付加的溶融を除外するものではない。
【0028】
本発明によるアプローチには以下の大きな利点がある:
−自動化のための適切性:第1、第2および第3の要素の所与のアセンブリについての必要なパラメータは既知であるので、必要な力は自動的に、抵抗力などについてのフィードバックがない装置でも、与えられる。構造物体の幾何学的な詳細は関係ない。構造物体の材料特性は、液化材料が孔の中に流れ込むために用いられる静水圧が材料特性に依存することについてのみ関連する。これは(容易に選択できる)材料に依存する力を与える可能性を提供することにより、またはある力および反力は比較的硬い構造の相互浸透に対して十分であることを確実にすることによって、対応できる。
【0029】
−構造物体のジオメトリからの独立:パラメータ(与えられるべき力、振動エネルギなど)は、構造物体ではなく、用いられる要素にのみ依存する。
【0030】
−構造物体の材料品質からの独立:液化するべき熱可塑性材と固定要素が固定される物体との間に摩擦が必要ないので、固定は非常に弱いおよび/または脆弱であるたとえば高い多孔性の材料(石膏ボード、厚紙、低品質の木質複合体、弱いフォームなど)のような材料でも行なうことができる。
【0031】
−材料について新たな自由度:本発明に従うアプローチにより、熱可塑性材を介して結合面から熱可塑性材が固定されるべき物体と接触する場所に振動エネルギを伝搬する必要がなくなった。むしろ、液化は第1の要素および第3の要素間の界面、第1の要素内(内部摩擦による)、または他の界面において、直接起こり得る。これにより、熱可塑性材の振動エネルギ伝搬機能は先行技術の方法においてよりも重要ではなく、その結果当業者が特定の作業に直面した場合、より多くの材料から選択できる。
【0032】
自動化された固定は、家具の製造ラインまたは予め作製された建築要素または他の物体に有用である。さらに、携帯用装置で用いることができ、たとえばプロによってまたは素人によって建築に用いることができる。その実施により、自動化装置は物体に対して押付ける必要はなく、すべての力は自動化装置のロードフレーム内に生成することができる。多くの固定体が設定されると、この処理はユーザにとって大変でなくなる。さらに、固定はユーザが物体について持っている知識やユーザの技量と独立して、うまく実現されることとなる。
【0033】
ここに記載される実施の形態の好ましい変形は、ばね要素、油圧または空気圧要素、または他の適切な機構により、固定の際に固定要素に作用する力を自動的に与えるステップを想定する。たとえば、ばね要素/油圧要素/空気圧要素は、振動発生器の非振動部分(したがって間接的に第3の要素)と対抗要素との間に十分に規定された力を与えるよう配置できる。
【0034】
好ましくは、固定要素は予め形成された孔(めくら穴または貫通孔)内に固定される。横方向への液化材料の流出は、液化材料を孔および/または開口の側壁の構造体に侵入させ得る。付加的に、または代替的に、固定は予め形成されたボアの後ろ(後ろ側)のキャビティによって行なわれる。このようなキャビティは制限されていない幅または予め形成されたボアより大きい直径を有することができ、これは軸に対して垂直方向に測定される。
【0035】
「予め形成」は、固定のためにのみボアを必ず形成しなければならないことを意味するものではない。既にある開口または空間を固定のために使用することができる。
【0036】
本文では、要素の配向は軸に対して記載されることもあり、その軸(「固定軸」)は固定処理の際に与えられる力の方向によって規定される。固定要素が予め形成されたボア内に固定される実施例では、多くの場合シャフトはボアの軸と同軸である。多くの場合、本発明の方法を実施する人または装置は、固定するべき要素およびツールに対して、一方側からしかアクセスできないまたはアクセスしないことがある(多くの場合、たとえば固定要素が「ダボ」、または固定釘、または固定ねじの場合)。本方法を実施する人または装置がツールをアクセスする側、−「前部」側−は、「前」側と呼び、要素の反対側、−物体の最も奥まで入っている側、または後ろ側に達する側−は、「後ろ」側と呼ぶ。要素を構造物体に入れる「前方」方向は,ユーザまたは装置から離れる方向(釘またはダボを物体内に推進するための「通常」の方向)であり、「後方」は反対方向であってユーザに向かう方向を示す。
【0037】
特定の好ましい原理に基づき、力はソノトロードであり得る第3の要素に引張(引張力)として結合される。本発明のこの特殊な好ましい実施の形態により、機械的振動は後ろ側から第1の要素(固定要素)に結合できる。これは振動発生装置のソノトロードであり得る第3の要素が、第1の要素を介して到達しかつ後ろから第1の要素にアクセスすることを意味し、それにより第1の要素の第1の結合面は、第3の要素の結合部分と接触する。
【0038】
この特殊な好ましい原理は先行技術に対して実質的な利点を想定する。たとえばWO98/00109に開示されている従来技術による固定方法では、熱可塑性材を溶融するために用いられる機械的振動エネルギは前側から与えられ、固定要素を通って後ろ側に伝えられなければならないが、材料は構造材料と接触して溶融し、そこに固定される。これはソノトロードを固定要素に結合することに関連して問題を引き起こすかも知れない。なぜなら、固定要素の前端部が活性化されて、振動エネルギは後ろ側に伝えられるのではなく、前端部で吸収されるからである(固定要素の「頭部溶融」)。この影響を解消するためには、ソノトロードと固定要素との間の力が比較的大きくしなければならず、それによりその間の接続は強い。本発明の特定の実施例に従うアプローチでは、機械的振動エネルギは固定要素の後ろ端部に伝えられ、後者は液化可能ではない第3の要素(「ソノトロード」/「ツール」)によって直接溶融し、「頭部溶融」効果が用いられる。さらに、熱可塑性材の溶融は、強い力を与えなくても所望の場所で起こる。
【0039】
固定要素を後ろ側からアクセスできるためには、ソノトロードは固定要素を通ってまたは固定要素の横側に沿って、その後ろ端に達するよう、十分長くかつ細い。固定要素は好ましくは中空(したがってたとえば管状またはスリーブ状)であり、ソノトロードのシャフトは固定要素の軸方向の貫通孔を通って到達する。固定要素は一体的、または各々が軸方向の貫通孔開口を有する複数の部分からなる。
【0040】
(一体的または複数の部分からなる)固定要素が、中にソノトロードのシャフトが到達する軸方向の貫通開口を有する場合、ソノトロードまたは機械振動を伝達するために装着されている部分は、外向きの外部結合面が形成されるよう、後ろ広がりを有していなければならない。外部結合面は、固定要素の第1の結合面と接触する。しかし、固定の後、このような後ろ広がりは、固定要素があるので、それ以上前側にはずすことができない。したがって、以下の基本的な可能性がある。
【0041】
−後ろ広がりはシャフトと共に、固定の後、所定位置に残り、固定体の一部をなす。たとえば、後ろ広がりおよびシャフトは一体的(たとえば金属)であって、共にソノトロードを形成し得る。これはシャフトが別の要素に接続するために用いられる場合に特に有利である。このため、シャフトはねじ切りのような構造または他の種類の嵌合の要素を任意に含むことができる。
【0042】
−後ろ広がりおよびシャフトは、固定の後、互いから分離されてもよい。この場合、後ろ広がりはベース要素、好ましくはシャフトと異なる材料で形成される。たとえば、後ろ広がりはたとえば金属であり得るシャフトの後ろ端部に嵌合される熱可塑性材からなる。熱可塑性材は固定要素と同じ、または異なるものであり得る。固定処理の間または後の、熱可塑性材の軟化または溶融により、シャフトは引き出し得る。この第2の可能性に従い、ベース要素は固定の際、固定要素に溶接され、固定の後、固定体の一部を形成する。代替として、シャフトおよびベース要素は、固定条件下では溶けない材料からなり得る(たとえば、双方は同じ材料からなり得る)、および固定の後外すことができる機械的係合(たとえばねじ切り接続または差込式固定)によって互いに接続されてもよい。
【0043】
−ソノトロードは後ろ側に移動させることができる。実務的な理由により、これは多くの場合選択されない。
【0044】
特殊な好ましい原理による実施例において、2つの結合面間に固定要素を圧縮する異なる方法がある。固定要素が反対側に2つの結合面を有するのなら、最も一般的なのは第2および第3の要素が互い方向に動かされて、固定要素が結合面間で圧縮される(結合面が互いに近づく)。
【0045】
第1の変形に従い、第2の要素(ここでは多くの場合「対抗要素」と呼ぶ)は、構造物体に対して静止して保たれる。第2の要素はたとえば構造物体の前部表面に対して支えられている表面部分を含み得る。第3の要素(ソノトロードであって、ソノトロードに接続される要素を含み得る)は、前側に引っ張られて固定要素を圧縮する。
【0046】
第2の変形により、第3の振動要素は固定した位置に保たれ、第2の要素は後ろ側方向に押されて固定要素を圧縮する。この第2の変形は、構造物体の開口の深さが制限されている場合に特に有利である。たとえば、固定要素は、最初は開口の深さよりも長くてもよい。
【0047】
固定した位置に保たれる要素による力は、物理的な意味において何の作用ももたらさない。したがって、これは能動的な力である必要はなく、それぞれの要素、またはそれに固定される部分によって引き起こされ、物体自体の最も前側の面のような、物体に対して移動可能ではない寸法的に固定したものによって支えられる。第2の変形の場合、移動可能ではないものによって支えられているのは第3の要素自体ではなく、振動発生器の非振動ケース、または振動発生器に固定される非振動部分である。
【0048】
さらに、第1の変形と第2の変形との合成も可能である。すなわち、第2および第3の要素の両方が構造物体に対して動かされる方法が可能である。
【0049】
本発明の異なる実施例において「引張力」または「後ろ方向」の原理についての代替により、機械的振動は従来どおり前側から与えられ、反力は第2の要素によって後ろ側から与えられる。第2の要素は物体の前部面に達し、そこで物体の前部面にもたせかけることにより、またはその方法を行なう人または装置により、そこで保持される。これは、構造物体内のボアが貫通ボアである、またはボアのベースにある構造材料が相対的に弱いまたは脆弱である場合好ましい。
【0050】
より強固な構造物体の代替として、「前方」固定原理の他の実施例は、固定処理の際ボアのベースに対して支えられている対抗要素を想定し得る。
【0051】
対抗要素は、複数の孔を有するスリーブおよびレセプタクル口によって形成されるレセプタクルであって、第1の要素がレセプタクル内に配置される。液化の際、液化材は開口を通って孔、構造体、および/または構造物体のキャビティ内に押込まれる。対抗要素は口の領域において横方向に突出するフランジを含むことができ、それにより対抗要素は構造物体の安定した前部面上にもたせかけることができる。代替として、スリーブを皿穴に埋められる態様で固定することができ、スリーブは固定の際構造物体のボアのベースに対して支えられる。
【0052】
対抗要素が複数の孔を有するスリーブである実施例では、液化材の流動が空間的に制限されるという付加的、場合によっては有利な、特徴を有する。これは余剰のものは固定の際に決まった位置に留まる、特徴的な流出(開口)場所でのみ起こる。
【0053】
ここでは「熱可塑性材」は、外部および/または内部摩擦による機械的振動によって液化可能である少なくとも1つの熱可塑性材成分を含む材料を記載するために用いられる。熱可塑性材は固定要素の少なくとも一部をなし、固定要素の全部を形成することもできる。熱可塑性材の他に、熱可塑性材は強化繊維、強化スプリント、充填材などのような非熱可塑性成分を含むことができる。非熱可塑性成分は熱可塑性材において均等に分散、または異なる濃度で存在し得る。固定要素はさらに熱可塑性材がない領域を含むことができる。このような領域は金属、ガラス、セラミック材、非熱可塑性材、またはベースの熱可塑性材と比べて実質的により高い温度で液化可能である熱可塑性材からなり得る。
【0054】
機械的振動の機械的周波数は、本明細書に記載される発明のすべての局面に当てはまるが、多くの場合2kHzおよび200kHzの間にあり、その振幅は約20μm、すなわち1μmおよび100μmの間にあり、特定の用途では、より高いまたはより低い。熱可塑性材が耐荷重機能を取り、所定の接触領域においてのみ液化するのなら、0.5GPaより大きい、好ましくは1GPa以上の弾性係数を有するべきである。しかし、本明細書の他の箇所で述べているように、本発明のおかげで、固定するために熱可塑性材の新たな種類を用いる可能性が与えられ、低い弾性係数を有する熱可塑性材、特別な用途においては1GPaより低い、または0.5GPaよりも低い弾性係数の熱可塑性材を含むことができる。
【0055】
建築に用いられるどのような熱可塑性材も、またはその組合せを用いることができる。熱可塑性材の例として、より硬いおよびより軟らかい重合体材の広範囲な種類、その共重合体およびその混合物を挙げることができる。実際に、注入成形できる殆どすべての重合体を用いることができる。適する材料の表は、たとえば、Grewell D.A.、 Benatar A、 Park J.B (編集)による「プラスチックおよび複合体溶接ハンドブック」("Plastics and Composites Welding Handbook"); Hanser Publishers、ミュンヘン、2003年、頁176-179、 2003年にある。
【0056】
本発明は構造材物体に固定体をもたらすための装置にも関する。本装置は上記の方法を実施するよう特に設計されており、方法の説明で示される要素を含む。本装置はたとえば以下を備える:
−熱可塑性材を含み、かつ第1および第2の結合面を含む固定要素、
−対抗要素結合面を有する対抗要素、
−第3の要素であって、第3の要素は機械的振動の発生器に結合するよう、かつ機械振動を第3の要素の外部結合面に伝搬するよう適しており、
固定要素、対抗要素、および第3の要素は、以下のために組立てられるよう適合されている:
−第3の要素の外部結合面は第1の結合面に当接し、
−対抗要素の結合面は第2の結合面に当接し、
−等しい大きさであって反対方向の力および反力で、それぞれ第3の要素および対抗要素に荷重を与えることにより、圧縮力を固定要素に与えることができ、
−力および反力の方向は、その力および反力によって規定される軸に対して、第3の要素との界面に近くで、固定要素の横側の最も外の面が熱可塑性材によって形成される。
【0057】
本発明の実施の形態は図面に関連して以下に説明される。図は概略的なものであり、寸法通りではない。図面において、同じ参照符号は同じまたは均等な要素に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1a】本発明に従う装置および方法の第1の実施例を示す図である。
【図1b】本発明に従う装置および方法の第1の実施例を示す図である。
【図2】図1aおよび図1bの装置の変形を示す図である。
【図3】本発明に従う方法および装置の代替の原理を示す図である。
【図4】本発明の方法の一実施例を実施するために、本発明に従う装置を含むアセンブリを示す図である。
【図5a】本発明に従う方法の一実施例の方法ステップを示す図である。
【図5b】本発明に従う方法の一実施例の方法ステップを示す図である。
【図5c】本発明に従う方法の一実施例の方法ステップを示す図である。
【図5d】本発明に従う方法の一実施例の方法ステップを示す図である。
【図5e】本発明に従う方法の一実施例の方法ステップを示す図である。
【図6a】本発明に従う方法および装置のさらなる実施例を示す図である。
【図6b】本発明に従う方法および装置のさらなる実施例を示す図である。
【図7a】本発明に従う方法および装置のさらに他の実施例を示す図である。
【図7b】本発明に従う方法および装置のさらに他の実施例を示す図である。
【図8a】本発明に従う方法および装置のさらに別の実施例を示す図である。
【図8b】本発明に従う方法および装置のさらに別の実施例を示す図である。
【図9a】本発明の方法のさらなる実施例の方法ステップを示す図である。
【図9b】本発明の方法のさらなる実施例の方法ステップを示す図である。
【図9c】本発明の方法のさらなる実施例の方法ステップを示す図である。
【図9d】本発明の方法のさらなる実施例の方法ステップを示す図である。
【図9e】本発明の方法のさらなる実施例の方法ステップを示す図である。
【図10a】中空のコアボード内に固定するために適用される、本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図10b】中空のコアボード内に固定するために適用される、本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図11a】中空壁に固定するために適用される、本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図11b】中空壁に固定するために適用される、本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図12a】縦に孔が開いているレンガに固定するために適用される、本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図12b】縦に孔が開いているレンガに固定するために適用される、本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図13a】固定要素およびソノトロードシャフトの変形の断面図を示す。
【図13b】固定要素およびソノトロードシャフトの変形の断面図を示す。
【図13c】固定要素およびソノトロードシャフトの変形の断面図を示す。
【図14】引張力の伝搬に適する結合を示す図である。
【図15】本発明に従う方法および装置のさらにほかの実施例を示す図である。
【図16】本発明のいくつかの実施例の変形による、ソノトロードの上面図である。
【図17】本発明のいくつかの実施例の変形による、ソノトロードの上面図である。
【図18】「前方固定」のために、固定要素および対抗要素の別の配置の断面図である。
【図19a】本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図19b】本発明に従う方法および装置の実施例を示す図である。
【図20a】本発明に従う方法および装置のさらなる実施例を示す図である。
【図20b】本発明に従う方法および装置のさらなる実施例を示す図である。
【図21】本発明の異なる実施例の配置の変形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
好ましい実施例の説明
図1aの第1の要素(固定要素1)はスリーブシャフト7を有する、熱可塑性材のスリーブによって形成される。固定要素1の端面は第1の結合面1.11および第2の結合面1.12を規定する。
【0060】
図示される構成の固定要素は、構造物体11のボア内にある。軸方向に対して、第2の要素(対抗要素2)と第3の要素(ツール3)の外部結合面3.1との間に挟持される。このため、ツール3はツールシャフト3.4と、図示されるものは円盤状であり、前方に向いている外部結合面3.1を規定する後ろ広がり3.2とを含む。
【0061】
固定処理において、ツール3に引張力が与えられ、同時に同じ大きさであるが反対方向の反力が対抗要素に与えられ、それにより固定要素1はツールと対抗要素との間で圧縮される。示される構成では、対抗要素は物体11の前表面11.1に対して支えられ、それにより対抗要素2に外部から与えられる力は正確に定められる必要はないが、引張力よりも大きい。なぜなら、物体11から対抗要素2への垂直抗力は、外部力の考えられる余剰を補い、この状況において抗力の大きさが引張力と等しくなるよう自動的に調節する。
【0062】
本図面および以降の図面において、それぞれの力が保持する力である(すなわち、作用対象の要素がその力によって保持される)または要素を実際に動かして固定要素を圧縮するか否かに拘らず、振動要素(および振動要素から固定要素)に与えられる力は一般に矢印4によって示され、対抗要素によって与えられる抗力は点線の矢印6によって示される。実際、以下で示されるように、ツールに与えられる力、対抗要素に与えられる力、またはその両方の力、ツールへの力、および対抗要素への力は、それぞれの要素を動かし、それによりツールと対抗要素との間の固定要素を圧縮させる。
【0063】
引張力がツール3に作用する間、超音波振動のような機械的振動であって、振動周波数がたとえば2kHzおよび200kHzの間である振動がツールに働く。したがって、第1の結合面1.11の熱可塑性材は溶け始める。固定要素1の後ろには、エネルギディレクタとして働くテーパ1.21がある。
【0064】
引張力により、液化熱可塑性材は横に流れて、構造物体の孔または既にある構造体に流れ込む、または構造物体材の不均質な部分に浸透する(それにより、充填される孔が中に作成される)。これは図1bに示される。液化材料部分が既存の孔または不均質な部分に押込まれる圧力は、ツールの形によって影響され得る。たとえば、後ろ広がり3.2がボアの幅全体を覆うようなものであるのなら、液体材料は後ろ方向には流れず、加圧は液体材が後ろ側に侵入するような場合よりも高くなる。
【0065】
再凝固の後、孔内に押込まれる液化材の部分1.22は、形成嵌合接続を規定し、構造物体材が同等に軟らかいまたは脆弱である、および/または実質的に不均質な部分を有していても、構造物体での深い固定により安定している。
【0066】
示される構成では、ツール3は固定処理の後取外すことはできない。しかし、ツールは固定要素の機能的部分として働くことができ、たとえばそこにさらなる要素を固定するために用いることができる。これはたとえばねじ切りされた(図示されていない)またはこのような接続を可能にする他の構造を有する、または他の要素をそこに接着、はんだ付け、または溶接することができる。さらに、ツールの後ろ広がりは、上記の実施例の代替として、ボアの幅全部に対応していなくてもよく、それにより液化材の一部は広がりの後ろに流れ込み、固定の後、ツール3と固定要素1との間に嵌合接続がある。
【0067】
代替の実施例では、ボアは貫通孔であり、ツールは後ろ側に移動させることができる。前側からツールを取外す可能性は以下でより詳細に示される。
【0068】
図2の実施例が図1aおよび図1bのものと異なるのは、スリーブ状の固定要素1が薄い壁を有し、エネルギディレクタを有していない点である。
【0069】
図3は貫通孔にある固定要素を示す。示される構成が図1aおよび図2の構成と異なるのは、ツール3(ソノトロード)が固定処理の際、引っ張られるのではなく、押されることである。示される例では、ソノトロードは管状である。対抗要素は固定要素を通って到達するシャフト2.4を有し、さらに固定要素の第2の結合面1.12に対して押される後ろ広がりを有する。対抗要素は固定の後所定位置に留まってもよいし、動かすことが可能であるのなら、後ろ側から外すことができる。
【0070】
本発明の特定の実施例の別の特徴が図3に示される。固定要素の形に依存して、固定要素1は、対抗要素2との界面において溶け始める、またはその界面においてのみ溶ける(ソノトロードとの界面では溶けない)。図3において、固形要素はソノトロードへの第1のテーパを有し、さらに第2のより顕著なテーパが対抗要素に向かう。テーパに依存して(またはテーパがないことにより)、さらに熱可塑性材の選択された弾性係数、および固定要素1の機械的振動の波長に依存して、熱可塑性材はソノトロードとの界面において、または対抗要素との界面において、またはその両方の界面において、液化が始まる。図3に示される構成において、熱可塑性材は両方の界面において液化が始まってもよい。このような構成(「前方」および「後方」型の両方)は、制御された2位置の固定を確実にする。安定性を高めるために、構造物体にある1つの開口内の場合にあてはまる。代替的に、2つの異なる構造物体の事例もある(したがって、後ろ側の固定部分が一方の物体にあり、前側の固定位置が他方の物体にあり、この固定により、2つの物体は互いに固持される)。
【0071】
本発明の特定の利点は、固定要素がソノトロード(または他の振動要素)との界面で溶け始める場合に特に適することである。したがって、(図3を除き、かつ特に明記しない限り)すべての図面において、液化が(最初は)振動要素との界面で起こる場合が示される。しかし、当業者なら図3の教示により、他の場所で溶融が始まるよう、他の図の構成を変形することは可能である。
【0072】
図4は振動を与えるために用いられ、かつ固定要素の固定の後にソノトロードを取外すことができる、ベース要素31の原理を示す。ベース要素は固定の前、ソノトロード3に結合される。これは、ソノトロード3およびベース要素31をねじ切りすることにより、または適する構造(たとえば、図4に示されるリブ/溝3.11、粗面化など)を有するソノトロードによって実施でき、組立ステップにおいて、ベース要素の熱可塑性材を局所的に液化させて構造体に流れ込むようにする。
【0073】
さらに一般的に、固定処理に必要な要素の組立は以下のステップを含む:
−ソノトロード3を振動生成装置32にしっかりと結合する。対応する結合手段33は図4において概略的に示される。
【0074】
−対抗要素2およびスリーブ状固定要素1をソノトロード3上に押込む。
−ベース31要素をソノトロード3の後ろ端部(先端)に結合する。これがベース要素31材の局所的または完全な溶融によって行なわれるのなら、ベース要素31(またはベース要素材)はこの間、適切な手段によって保持し得る。このような手段はベース要素の型として形成できるので、ベース要素は予め製造する必要はなく、液体熱可塑性材を型に入れて成形することによって製造することができる。代替的に、ベース要素を予め製造して、ソノトロードは振動の際その中に押込まれてもよい。
【0075】
その後(必要ならベース要素の冷却の後)、アセンブリは構造物体の予め形成された適切な開口内に配置され得る。この開口(ボア)は、ベース要素および固定要素の外径よりも少し大きい径で形成される。開口は貫通する開口またはめくら穴であり、後者の場合、固定要素の長さよりも少し深い。
【0076】
次に、ソノトロードはベース要素および固定要素とともに開口内に挿入され、所望の位置に定められる。
【0077】
固定処理自体は図5aから図5eに示される。図5aは固定要素およびベース要素とともにソノトロードを開口内に挿入するステップを示す。固定要素が定められた位置に達すると(図5b)、対抗要素は物体の前表面11.1に対して押され(矢印6)、機械的振動が始まる(矢印5)。次に、機械的振動および反力が続いている間、ソノトロードは引張力によって引き出され、それにより引張力および機械振動の共同作用によって液化した材料は、構造物体のボアの横壁に浸透する(図5c)。この処理では、ソノトロードの周りにある熱可塑性材も軟化し、一定の時間の後、ソノトロードは図5dに示されるように引き出す。ソノトロード3は引き出し対抗要素2を取外した後、固定要素およびベース要素は物体11内に固定されたまま残る。熱可塑性材は界面で溶けているので、固定要素1およびベース要素31は互いに溶接され、それにより再凝固の後、さらなる物体を固定するためのダボとして働き得る固定体41を形成する(図5e)。
【0078】
この「ダボ」の使用であって、本発明の方法による他の実施例によって作成された固定体もダボとして用いられるが、たとえば(図示されるような)多孔性のコンクリートまたは他の弱い、軟らかい、または脆弱な材料のような、弱いまたは局所的に弱い構造物体に、ねじを固定するために特に適する。
【0079】
図6aおよび図6bにおいて、付加的原理が示される。これらの原理は必ずしも図面に示されるように組合せられる必要はなく、別個に、または適する場合は、他の図面で示される原理と組合せて、たとえば、図1から図3のソノトロードの配列との組合せにおいて、用いることができる。
【0080】
−固定要素は、同じ熱可塑性材からなり得るまたは別の材料からなり得る2つの、最初は別個の、固定要素部分1.1および1.2を含む。たとえば、振動要素と直接接触しない第2の固定要素部1.2は、第1の固定要素部1.1のガラス遷移温度よりも高い遷移温度の熱可塑性材から、または可塑性材を含まずに、形成されてもよい。固定処理の際、第1の固定要素部1.1は、第1の接触面1.11(振動要素への接触面)から溶融し始め、第2の固定要素部1.2と接触する熱可塑性材が溶けて、固定要素部が互いに溶接される。
【0081】
−対抗要素は、前の図面に示されるように、中央に貫通する開口を有するディスク状または板状ではなく、開口内に突出することができるフランジ状カラーを含み、それにより固定要素は物体の前表面と面一ではなく、皿孔に埋められる。分岐する固定要素位置を規定し、固定要素が構造物体の前表面から突出する場所も含めて、対抗要素は他の形状が可能である。
【0082】
示される構成では、図4および図5aから図5eを参照して記載される、固定要素の熱可塑性ベース要素は固定処理の際、固定要素に溶接され、したがって固定体41のさらなる部分(図示される実施例において第3の部分)として見ることができる。
【0083】
固定体は、ソノトロード3の取外した後、再凝固ステップの後熱可塑性材にねじ込むことができるねじ22のダボとして働く。ねじはさらなる要素23であって図面において概略的にしか示されない、さらなる要素23を物体11に固定するために使用することができる。
【0084】
さらなる変形を以下に示す。
−第2の要素(対抗要素)2は金属である必要はなく、固定要素1自体のガラス遷移温度よりも十分高いガラス遷移温度を有するたとえば熱可塑性材のようなプラスチック、または熱硬化材からなり得る。
【0085】
−第2の要素と人または装置が反力を与える場所との間に、さらなる要素を配置してもよい。実際、任意の数の要素(ワッシャ、スリーブ、ソケットなど)があってもよい。
【0086】
−固定要素または最も前の固定要素部分(本方法を実施するユーザまたは装置に最も近い)は、「ダボ」機能の代わりに、または「ダボ」機能に付加的に、別の要素を構造物体に直接固定するための固定要素ヘッドを含んでもよい。
【0087】
−たとえば縦に孔が開けられたレンガのようなキャビティ内に、または板状もしくは厚板状の構造物体の後ろにあるキャビティ内への、液化熱可塑性材の膨張。
【0088】
図1−図2および図4−図6に言及して記載された実施例はすべて、多くの場合有利である原理に基づいており、振動は後ろ側から固定要素に結合され、必要な力は引張力(張力)としてソノトロードに結合される。この原理の用途でも、部分的に液化される固定要素を圧縮するために、ソノトロードだけ、対抗要素だけ、またはその両方を動かすかどうかを選択することができる。
【0089】
図7aは図示の目的のために、貫通開口を有する構造物体(本図を参照するこの内容はめくら穴にも適用される)の配置を示し、ソノトロードは固定の後定位置に留まり、固定処理の始まりにおいて固定物の一部である種類のものが示される。図5aから図5eを参照して記載されている処理と同様に、固定処理はソノトロード3の引張運動を想定する。図面において、ソノトロードを振動発生装置に固定するための、ソノトロードの構造体3.11も示される。図7bは固定の後、それぞれの場所に留まる固定要素1およびソノトロード3からなる固定体を示す。図示されるように、本実施の形態において、固定要素の前表面1.12は固定処理によって影響を受けないままである。
【0090】
別の基本的な可能性は図8aおよび図8bに示され、固定処理が始まる際の固定の配置および固定処理後の固定体の配置が示される。図示される実施例では、開口はめくら穴であるが、同じ処理が貫通開口にも適用される。固定処理の間、固定要素1に働く引張力4は固定要素を静止して保持する働きがあり、対抗要素2は固定要素の後ろ端部に向かって押される。この機構は図7aおよび図7bに示されるものと基本的に同じであるが、この「対抗要素を押す」変形は、深さが制限されているめくら穴に特に適する。
【0091】
本発明によるアプローチのさらなる利点は、上記のように、家具もしくは予め製造された建築要素または他の物体における製造ラインの自動化された固定、もしくは携帯装置による固定に適する。対応する方法は、力をソノトロードおよび対抗要素に(またはむしろ、ソノトロードもしくはそれに接続される項目と対抗要素との間に)自動的に与えるステップを備える。たとえば、ソノトロードと対抗要素との間にばね要素があってもよい。対応する方法は、図9aから図9eに示される。図面では、その配置は図4および図5aから図5eに言及して記載された種類のものであるが、記載される原理は他の配置、たとえば後ろ広がり3.2を有する図1のソノトロードを備えた配置にも適用できる。
【0092】
図9aは固定要素およびベース要素とともにソノトロードを開口に挿入するステップを示す。図5aを参照して記載した要素に加えて、この配置はばね要素34を含み、ばね要素34はソノトロードと(より正確には、ソノトロードに接続されている筐体などであって、振動発生装置32の筐体もしくは図面のようにフレーム33または接続される他の物体と振動的に結合されていない)と対抗要素2との間に、引張を受けた状態にある。アセンブリの位置付けの後、ばね力を解放してもよい。図9bに示される両頭矢印35に示されるように、ソノトロード3への力および対抗要素2への反力は、ばね要素によって与えられ得る。固定処理の際、振動発生装置32は少なくとも略不動の位置を有するので、ばね力は、図9cに示されるように、固定の際、対抗要素2を前方に動かす。液化は主にベース要素31と固定要素1との間の界面辺りで起こるので、固定要素1と対抗要素2との間の界面では液化された熱可塑性材はなく、対抗要素は前述の実施例のように、固定の後、ソノトロードと共に取外してもよい(図9d)。図9eは処理後の固定体を示す。
【0093】
図示される構成では、ばね要素は別個のスリーブ状または環状の対抗要素2に当接することが示される。必ずしもこれには限らない。ばね要素自体の(たとえば環状の)当接面が対抗要素として働いてもよい。図示のために図面で示されているロードフレームのばね要素の代わりに、力を与える他の機構、たとえば油圧要素、空気圧要素などを用いることができる。
【0094】
本発明の方法は、特に弱いまたは脆弱な多孔性材に固定体を固定するのに適する。さらに、薄い硬い壁の後ろに何もないまたは非常に弱い材料しかない物体に固定を行なうのに適する。このような物体は、たとえば中空の壁、または中空のコアボードなどである。
【0095】
図10aおよび図10bは構造物体11内の固定体を示し、構造物体は中空のコアボード11である。示される実施例では、中空のコアボードは、2枚の同等に薄くかつ硬いパネル51と、その間にある軟らかい充填材52とを含む。充填材はたとえばコアもしくははポリスチレンフォームまたはガラスウールのような隔離材料であり得る。
【0096】
固定はたとえば図1および図2を参照して記載された処理によって行なわれる(図9に示される力を自動的に与える、または与えない)。固定、特に引張力に対抗する固着は、充填材の特性と無関係に行なわれ、全く充填材がない場合でも行なわれる。しかし、充填材52が剛性および多孔性を有するのなら、固定は全く中空の空間よりも有効である。
【0097】
中空壁での固定は図11aおよび図11bに示される。物体11は距離保持部のような手段によって装着される厚板(または複数の厚板もしくは平坦な物体からなる壁)であり、硬いコンクリートのような非常に硬質な材料からなり得る壁61の前にある。固定方法は上記の方法のいずれかであり得る。液化熱可塑性材は、図11bに示されるように、厚板の後ろのキャビティ内に膨張し、(固定要素1およびソノトロード3を含む)固定体を、特に引張力に対して、確実に固着する。
【0098】
図11aおよび図11bは、ばね要素によってソノトロードと対抗要素との間に力を与えることを示し、ここでは適切な案内手段38によって案内される2つのばねを含む。この例では、図9の例と比べて、ばねによりソノトロード39は引っ込み、対抗要素2は構造物体の前面に対して支えられる。図11aおよび図11bに示される方法が携帯ツールによって行なわれる場合、ツールは振動発生装置32が併進的に移動可能である外側ケーシングを含み、ユーザによって保持される外側ケーシングは処理の際その位置を保ち、振動発生装置は外側ケーシングの中に引っ込む。外側ケーシングはたとえば対抗要素2に接続され得る。
【0099】
図12aおよび図12bは、縦に孔が開けられたレンガ11の固定を示し、液化ポリマー剤の膨張(図12b)はレンガのキャビティ11.3内で起こる。この場合のボアは矩形または縦の孔に対してある角度を有し、縦の孔に開口する。
【0100】
図3に示される実施例を除き、上記の実施例はすべて、振動が後ろ側から固定要素に結合され、必要な力は引張力としてソノトロードに結合される、「後ろ方向」の固定に係わる原理であって、多くの場合有利である原理に基づいている。これらの実施例において、ソノトロードのシャフト3.4は、固定要素を通して何らかの方法で到達しなければならない。これまで記載した好ましい実施例では、固定要素を管状またはスリーブ状に形成し、ソノトロードのシャフトがその中央開口を通して到達する。ソノトロードシャフト3.4の外径は常に固定要素1の内径よりも小さい。この好ましい構成は図13aに示されており、ソノトロードシャフトおよび固定要素の断面が示される。しかし、このような対称的な構成は必ずしも必要ない。他の構成、たとえば図13bに示される偏芯的な設定やその他の構成(外形が円形対称であるまたは円形対称ではない)が可能である。図13cはさらに別の構成を示し、固定要素はソノトロード3の異なる側に配置される2つの別個の固定要素片1.1および1.2を含む。これによりT棒状のソノトロードシャフトが可能であり、機械的安定性に鑑み有利である。対抗要素2が位置付けられる場所も図13cに示される。
【0101】
図13aから図13cおよび図16から図18において、シャフト7は図面に対して垂直である。
【0102】
「後方固定」原理に基づく実施例において、固定要素に結合される力4は、ソノトロード3の引張力として働く。これは振動発生装置に適切な結合手段を要し、これは引張荷重に適する必要があるだけでなく、引張荷重を受けながら機械的振動を伝達するためにも必要である。このような結合手段は当業者にとって既知である。多くの場合、これは形状嵌合(ねじ結合、締結固定、ベイオネット嵌合など)、材料嵌合(接着、溶接、またははんだ付け接続)または摩擦嵌合(クランプ接続)に基づいている。このように一般的に知られている結合手段はここでは説明しない。形状嵌合の結合手段の原理は、図14に示される。この結合は、図示されるように、または別の形で用いることができる。振動発生装置はツール3の近位端部にあるクリアランスに突出する拡張部を含み、その遠位端部に向かって広がって引張力を与える。ツール3を振動発生装置に結合するために、これらは互いに図14の面に対して垂直方向に動かされる。ダブテールまたは同様の変形も考えられる。
【0103】
ソノトロードが所定位置に留まり、固定の後固定体の一部をなす実施例において、同じ結合手段を用いてさらなる要素を固定体に結合することができる(これらの実施例において、接着、溶接、はんだ付けなどのような、本質的に可逆可能な結合のような振動発生装置へのソノトロードの結合は適さない)。
【0104】
図15は本発明に従う方法および装置のさらなる実施例を示す。この実施例は図1および図2を参照して示された概念に基づいているが、実質的に異なるのは、熱可塑性材の液化が、図1および図2の実施例のように固定要素1とソノトロード3との間の界面ではなく、固定要素1と対抗要素2との間の界面で始まることである。このため、固定要素は対抗要素の界面に接触するエネルギディレクタを含む。図示される実施例では、エネルギディレクタは、固定要素の前側に向かうテーパからなる。対抗要素は構造物体の開口内に少し突出して、液化の後横に流れる熱可塑性材は開口の外に押出されずに、構造材の孔/構造体に入る。
【0105】
この実施例は、固定が開口の予め定められた場所および/または構造物体11の前側に近い箇所で行ないたい場合に適する。
【0106】
図16は本教示に従い「後ろ方向」型の配置/方法に用いることができるソノトロード特性の変形を示す。図16のソノトロードは複数の液体案内チャネル3.21を含み、これらはたとえば後ろ広がりの前方対向表面において溝として設けられる(図16は、本方法を用いるユーザ/装置に対向するこの表面を示す)。固定要素の材料は後ろ広がり3.2の最も前側の表面と接触して液化し、チャネル内に、およびそこから横側に流れる。この実施例は、液化材料を特定のアジマス角に固化するのに適する。
【0107】
図17の実施例では、後ろ広がりは開口または断続部3.22を含み、それにより液化材料が通過するのを可能にする。この概念により、ソノトロードの後ろ広がりと対抗要素との間で制限される固定処理の際に固定要素を短くすることよりも、ソノトロードは固定要素材料を通して部分的に動かされ、ソノトロードの後ろ側にこのような材料の層を残す。この実施例は、固定が軸方向の後ろ対向する荷重を受ける場合に特に適する。なぜなら、その層がこのような力を吸収し、特にその層が後ろ広がりと、構造物体の開口にあるベースとの間の空間を埋める場合に適する。
【0108】
半径方向外側に向かう図示される断続部の代わりに、他の種類の開口/断続部があってもよい。たとえば、後ろ広がりは同じまたは異なる大きさの複数の孔を含んでもよい。一例として、このような開口は放射状に配置され、シャフト3.4から離れるにつれサイズが大きくなるものであってもよい。
【0109】
「前方」型装置および方法のさらなる例は、図18から図21を参照して記載される。
図18は固定要素1および対抗要素2の配置を示す断面図である。図3に示される実施例と異なり、固定要素1を通して達する対抗要素の部分は、固定要素の周囲に配置される。図示される実施例では、固定要素の長さに沿って側面に案内される2本のロッド2.4を含む。このような構成、および固定要素の中心からではなく、外周から保持される対抗要素の他の構成は、図3の実施例に比べて、対抗要素およびソノトロード/振動発生装置を扱うのに有利であり得る。
【0110】
図19aおよび図19bは装置および方法の第1の例を示し、対抗要素2はスリーブのようなレセプティカルとして形成される。図19aは固定処理の初めの配置を示し、図19bは固定処理の終わりに向かう配置を示す。
【0111】
レセプティカルは1個の外に向いている口2.2と、横表面(側面)および内側面(図示されない)内にもあり得る複数の開口2.1とを含む。固定要素1は固定処理の前に、レセプティカル内にあって、たとえばレセプティカルに固定されてもよい。代替的に、固定要素は、最初はレセプティカルと分離しており、固定の前に挿入されてもよい。
【0112】
固定処理において、ソノトロード3は振動しながら(機械的振動5)、前部側から固定要素に押付けられる。対抗要素は、開口近くにおいて構造物体の外表面に対して支えられフランジ2.3を含み、それにより対抗力6がフランジ2.3に働く垂直抗力としてもたらされる。固定要素に与えられる機械的振動および押す力の影響により、固定要素は溶融し始め、その後開口2.1を通って、垂直抗力をもたらすフロントパネル51よりも機械的安定性が実質的により低い周りの材料52の孔の中に入る(図19b)。熱可塑性材が孔の近辺において溶け始めるためには、レセプティカル2または開口要素1のどちらかまたは両方は、目減らし、エッジ、先端などのようなエネルギ方向付け構造を含む。図示される構成では、固定要素は開口2.1の近くに内側方向の突出部2.4を含む。
【0113】
図19aおよび図19bの実施例は、他の実施例の固定要素材よりも軟らかい固定要素材を用いることができ、それにより材料を溶かすための熱は、主に界面での機械的エネルギの吸収によってではなく、主にまたは実質的な割合で、内部摩擦によってもたらされ得る。
【0114】
たとえば相対的に軟らかいおよび/または脆弱な材料に固定されるスリーブ状のレセプティカルは、たとえばダボとして用いることができる。たとえばねじ切りのような予め作製された構造を含んで、たとえばねじのようなさらなる要素を固定することができる。このような要素は、そのスリーブ自体におよび/またはスリーブ内の残りの熱可塑性材に載ることができる。
【0115】
さらに、または代替的に、ねじの頭部のように、フランジ2.3を用いて、固定の前に位置付けられた別の要素を、前部面に固定することができる。
【0116】
示される構成では、反力は垂直抗力として、フランジによってもたらされる。しかし、スリーブ状対抗要素2は他の手段、たとえば本方法を実施するユーザ/装置によって積極的に保持できる。
【0117】
示される構成では、反力は垂直抗力として形成され、固定に必要な力は最終的には物体に残るが、たとえばWO98/00109に記載される先行技術の方法に対して実質的な利点がある。液化された熱可塑性材が最終的に侵入する構造体/孔および/またはキャビティを含む表面は、機械的な荷重を受けない。示される構成ではフロントパネルがある、垂直抗力が形成される場所は、固定要素が最終的に固定される場所と同じではない。この利点は、構造物体に十分な機械的に強い材料がなく、固定要素が機械的により安定しない材料に固定しなければならない構成の場合に有用である。たとえば、薄い硬いパネルを含み、その下により軟らかい材料、すなわち挟持されたまたは分離された材料を含む、図示されるような構造物体に有用である。
【0118】
図20aおよび図20bは、対抗要素がスリーブ状レセプティカルとして形成される装置/方法のさらに別の実施例を示す。この実施例では、反力6は構造要素11のめくら穴のベースにおいて垂直抗力によって形成される、すなわちめくら穴の基部に対して押される対抗要素によって形成される。この実施例は、木からなる、もしくは木の材質からなる複合体または(多孔性の)コンクリートまたは密度のある金属フォームのように、同等的に剛性でありかつ機械的に安定している構造物体に適する。
【0119】
図20aおよび図20bの実施例は、さらなる要素22に対してダボを形成するのに特に適し、さらなる要素への接続は、重い荷重を受けなければならないおよび/または長期に亘って荷重を受けなければならない場合に適する。ポリマー材に基づく従来のダボは、ポリマー材が長い間流れるという問題を含む。この問題は、さらなる要素が固定できる、たとえば金属のスリーブ2により、著しく減少する。たとえば、固定処理の後固定要素を示す図20bにあるように、ソノトロードは実質的にすべてのポリマー材をスリーブの奥の相当な部分上に変位されるよう選択されてもよく、ねじとして示されるさらなる要素22をスリーブ2に直接固定させることができる。
【0120】
図21に示される装置の変形が前記のものと異なるのは、スリーブのベースにおいて開口2.1を付加的に(またはそこだけに)含む点である。ベースでの熱可塑性材の溶融を確実にするエネルギディレクタは、スリーブのベースにおいて後ろ方向に対向する突出部2.11によって形成される。この変形は、図19aの実施例のように、フランジ部分が設けられてもよい。
【0121】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、他に多くの実施例が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物体に要素を固定する方法であって、物体の表面は、孔または構造体を有し、および/または表面の孔は静水圧下の液体によって形成可能であり、および/または中にキャビティが規定され、前記方法は
第1の要素および第2の要素を設けるステップを備え、第1の要素は熱可塑性材を含み、
第1の要素を前記表面および/または前記キャビティの近辺に位置付け、第2の要素を第1の要素と接触するよう位置付けるステップと、
ある力で第1の要素に荷重を与えながら第3の要素を振動させ、それにより第1の要素に機械的振動を与え、同時に第2の要素による反力で第1の要素に荷重を与えるステップと、
機械的振動および荷重を共同で与えることにより、熱可塑性材の少なくとも一部を液化し、それにより液化材を形成するステップと、
第2の要素および第3の要素からの機械的振動および荷重を共同で与えることにより、第1の要素を圧縮させ、それにより液化材を孔および/または構造体および/またはキャビティに流れさせるステップと、
第1の要素が物体に固定されるよう、液化材を再凝固させるステップとを含む方法。
【請求項2】
第1の要素の液化材によって、第2の要素を固定させるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の要素の液化材によって第2の要素を固定させるステップは、第2の要素を第1の要素に溶接させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第3の要素を第1の要素の液化材によって固定させるステップをさらに備える、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
第3の要素を第1の要素の液化材によって固定させるステップは、第3の要素を第1の要素に溶接させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
液化材を孔および/または構造体および/またはキャビティに流れさせるステップは、ある力および反力の共同作用により、液化材を静水圧下におき、それにより液化材を既存の孔および/または構造体に押込む、および/または静水圧下の液化材を表面の不均質な部分に浸透させて、それにより液化材によって充填される孔を形成する、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ある力および前記反力は大きさが等しく、反対方向に向かう、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第3の要素の力は引張力である、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ある力は、軸と軸に沿った前側とを規定し、前側から第3の要素が本方法を実施するユーザまたは装置にとってアクセス可能であり、さらに反対の後ろ側を規定し、第1の要素は、第3の要素の面を第1の要素の後ろ結合面に押すことにより、力の荷重が与えられ、第1の要素は、第2の要素を第1の要素の前部結合面に押すことにより、反力の荷重が与えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第3の要素は一体的なものであり、固定の後、所定位置に留まり、構造物体に固定される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
第3の要素は、第1の材料のシャフトと、第1の材料と異なる第2の材料のベース要素とを含み、本方法は、液化材が流れている間、および/または液化材が孔および/または構造体および/またはキャビティ内に流れ込んだ後、シャフトをベース要素から分離するステップを備え、ベース要素は固定の後、所定位置に留まり、構造物体に固定される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項12】
第1の要素は軸方向の貫通孔を含み、第3の要素はシャフトを含み、本方法は、第3の要素を振動させるステップの前に、シャフトを軸方向の貫通孔に挿入するステップを備える、請求項8から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第2の要素は、複数の孔を有するスリーブおよびレセプタクル口によって形成されるレセプティカルであり、第1の要素はレセプティカル内に配置され、第3の要素によって接触するための第1の結合面は、レセプティカル口を通してアクセス可能である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
第2の要素は、口に隣接して形成される、スリーブのフランジを含み、反力を与えるステップは、フランジを物体の前部面に対して支えられるようにすることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
熱可塑性材の少なくとも一部を液化するステップは、第1の要素と第3の要素との間の界面で液化プロセスを開始することを含む、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ある力および反力は、前記表面に対して機械的荷重がないまま保持するよう与えられる、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ある力および反力は、ばね機構、油圧機構、または空気圧機構のような自動化機構によって与えられる、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
熱可塑性材の少なくとも一部を液化するステップは、少なくとも1つの界面において熱可塑性材の少なくとも一部を液化することを含み、前記少なくとも1つの界面は、第1の要素と第3の要素との間の界面、第1の要素と第2の要素との間の界面、および第1の要素の部分間の界面の少なくとも1つである、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
熱可塑性材の少なくとも一部を液化する前記ステップで液化される材料は、液化される前は、構造物体のどの表面とも接触しない、前掲の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
構造材物体に固定体をもたらすための装置であって、好ましくは前掲の請求項のいずれか1項に従う方法を実施するために設計され、装置は:
熱可塑性材を含み、かつ第1および第2の結合面を含む固定要素と、
対抗要素結合面を含む対抗要素と、
第3の要素とを備え、第3の要素は機械的振動の発生器に結合するよう、かつ機械振動を第3の要素の外部結合面に伝搬するよう適し、
固定要素、対抗要素、および第3の要素は以下のために組立てられるよう適合されている:
第3の要素の外部結合面は第1の結合面に当接し、
対抗要素結合面は第2の結合面に当接し、
等しい大きさであって反対方向の力および反力で、それぞれ第3の要素および対抗要素に荷重を与えることにより、圧縮力を固定要素に与えることができ、
力および反力の方向は、その力および反力によって規定される軸に対して、第3の要素との界面近くにおいて、固定要素の横側の最も外の表面が熱可塑性材によって形成される、装置。
【請求項21】
振動発生器をさらに備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
固定要素は熱可塑性材からなる、請求項21または22に記載の装置。
【請求項23】
力および反力を同時に与えるための自動化機構をさらに備える、請求項20から22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
自動化機構はばね要素を含む、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
固定要素は、最初は分離されている、または最初は弱く結合されている部分を複数含む、請求項項20から24のいずれか1項に記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−501007(P2011−501007A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530240(P2010−530240)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000441
【国際公開番号】WO2009/052644
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(501485227)ウッドウェルディング・アクチェンゲゼルシャフト (17)
【Fターム(参考)】