説明

機能性フィルムの製造方法

【課題】ガスバリア膜などの無機膜を形成してなる機能性フィルムの製造において、無機膜を破壊することなく、所定形状のカットシート状の機能性フィルムを製造する。
【解決手段】切断位置を、機能性フィルムを構成するプラスチックフィルム等の支持体のガラス転移温度以上に加熱して、切断を行うことにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物からなる支持体と、目的とする機能を発現する無機膜とを有するフィルム状物を切断して、所定形状のカットシート状の機能性フィルムを製造する、製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示装置、半導体装置、薄膜太陽電池等の各種の装置における防湿性を要求される部位や部品、食品、衣料品、電子部品等の包装に用いられる包装材料に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のプラスチックフィルムを支持体として、この支持体の上に、ガスバリア性を発現する膜(ガスバリア膜)を形成(成膜)してなる、ガスバリアフィルムが利用されている。
また、プラスチックフィルムを支持体として、この支持体の上に反射防止膜を形成してなる反射防止フィルム、同光反射膜を形成してなる光反射フィルム、同紫外線遮蔽膜を形成してなるUVカットフィルムなども知られている。
【0003】
このように、プラスチックフィルムなどを支持体として、目的とする機能を発現する膜(機能膜)を形成してなる機能性フィルムにおいて、ガスバリア性を発現するガスバリア膜や、光反射性を発現する光反射膜など、機能膜は、無機化合物からなる膜(無機膜)である場合や、無機膜を含む場合が多い。
例えば、ガスバリア膜としては、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の各種の無機化合物(無機物)からなる膜が利用されている。
【0004】
これらのガスバリア膜などの無機膜は、特許文献1にも記載されるように、強度が低く、かつ、脆いため、接触などによって容易に破壊されてしまう。
また、無機膜は、300nmを超えると硬くなり、割れ等を生じやすくなってしまう。そのため、機能性フィルムにおいては、一般的に、目的とする機能を得るための無機膜は、薄い膜である。
【0005】
ところで、このような機能性フィルムを良好な生産効率で製造できる方法として、長尺な支持体(ウェブ状の支持体(基板/基材))をロール状に巻回してなる供給ロールを用い、供給ロールから送り出した支持体に成膜を行い、成膜済の支持体を、再度、ロール状に巻回する、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)が知られている。
このロール・ツー・ロールによる成膜では、支持体に成膜を行なう成膜室を通過する所定の経路で、供給ロールから巻取りロールまで長尺な支持体を通紙し、供給ロールからの支持体の送り出フィルム、巻取りロールによる成膜済支持体の巻取りとを同期して行いつつ、成膜室において、搬送される支持体に連続的に成膜を行なう。
【0006】
ここで、機能性フィルムは、多くの場合、所定形状(所定サイズ)のカットシートとして使用される。従って、ロール・ツー・ロールによってガスバリア膜などの目的とする機能を発現する無機膜を成膜した機能性フィルムは、所定形状のカットシートに切断(裁断加工)する必要が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−108531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、所定の機能を発現する無機膜を有する機能性フィルムにおいて、この無機膜は、低強度かつ脆く、しかも、薄い。
そのため、所定形状のカットシート状の機能性フィルムを製造するために、支持体上に無機膜を成膜してなるフィルム状物を切断すると、この切断時に掛かる力によって、特に切断位置近傍の無機膜にヒビや割れ等を生じてしまう。また、一般的に、有機化合物である支持体と、無機化合物である無機膜とは、密着性が低く、端部の割れが連結すると、この部分が剥離してしまう。
【0009】
所定の機能を発現する無機膜が、このような割れや剥離等を有すると、機能性フィルムは、目的とする性能を発揮することができない。
例えば、ガスバリアフィルムであれば、周辺部のガスバリア膜に割れ等があると、この割れの部分から水分(水蒸気)が通過してしまうため、目的とするガスバリア性(水蒸気遮蔽性)が得られない。
【0010】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、プラスチックフィルム等の支持体と、目的とする機能を有する無機膜とを有するフィルム状物を切断して、所定形状のカットシート状の機能性フィルムを製造する際に、切断による無機膜の割れ等を防止して、目的とする性能を有する機能性フィルムを安定して製造することを可能にする機能性フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を有する達成するために、本発明の機能性フィルムの製造方法は、有機化合物からなる支持体と無機化合物からなる無機膜とを有する原料フィルムを、切断位置を、前記支持体のガラス転移温度以上の温度にして、切断することにより、所定形状の機能性フィルムとすることを特徴とする機能性フィルムの製造方法を提供する。
【0012】
このような本発明の機能性フィルムの製造方法において、前記原料フィルムを切断する刃の加熱、レーザ光による前記原料フィルムの裁断、および、接触もしくは非接触の加熱手段による切断前の前記原料フィルムの加熱のいずれかによって、前記原料フィルムの切断位置を前記支持体のカラス転移温度以上の温度にするのが好ましい。
また、前記切断位置から、切断方向と直交する方向の2〜10mmの範囲を、前記支持体のガラス転移温度以上の温度にするのが好ましい。
【0013】
また、前記原料フィルムが長尺なものであり、前記原料フィルムにおける無機膜の形成を、前記無機膜が形成される長尺フィルムを長手方向に搬送しつつ行うのが好ましく、また、前記無機膜の形成を、円筒状のドラムの周面に前記支持体を巻き掛けた状態で行うのが好ましい。
また、この際において、前記長尺フィルムをロール状に巻回してなるフィルムロールから、前記長尺フィルムを引き出して、長手方向に搬送しつつ前記無機膜の形成を行い、前記無機膜を形成した長尺フィルムを、再度、ロール状に巻回するのが好ましい。
また、前記原料フィルムが長尺なものであり、この長尺な原料フィルムに対して、長手方向と直交する幅方向の切断と、前記幅方向両端部の長手方向の切断とを行うことにより、前記所定形状の機能性フィルムとするのが好ましい。
【0014】
また、切断を行う際の前記切断位置の温度が、前記支持体の融点以下の温度であるのが好ましい。
また、前記無機膜が、気相成膜法によって成膜されたものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成を有する本発明の機能性フィルムの製造方法は、プラスチックフィルムなどの有機化合物からなる支持体と、無機化合物からなる、目的とする機能を発現するための無機膜とが形成された原料フィルムを切断して、所定形状のカットシート状の機能性フィルムを製造する際に、前記フィルム状物の切断位置を支持体(その有機化合物)のガラス転移温度(Tg)以上に加熱する。
【0016】
後に詳述するが、上記支持体に無機膜を形成してなる原料フィルムを切断して所定形状のフィルムとする際に、無機膜に割れやヒビ等を生じる原因は、無機膜の成膜時に加熱によって生じた支持体の内部応力と、切断時における原料フィルムの変型との相乗効果によると考えられる。
これに対して、本発明の製造方法は、上記構成を有することにより、切断時に支持体の内部応力を抑制して、切断による原料フィルムの変型に対応する力を無機膜が支配するようにでき、その結果、切断時に生じる無機膜の割れやヒビ等を、大幅に抑制することができる。
【0017】
従って、本発明の製造方法によれば、無機膜の割れや剥離等を大幅に抑制して、目的とする性能を発揮する機能性フィルムを、安定して製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)〜(C)は、本発明の機能性フィルムの製造方法に利用可能な原料フィルムの一例を概念的に示す図である。
【図2】本発明の機能性フィルムの製造方法における無機膜の形成方法の一例を説明するための概念図である。
【図3】(A)〜(C)は、本発明の機能性フィルムの製造方法の一例を説明するための概念図である。
【図4】本発明の機能性フィルムの製造方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の機能性フィルムの製造方法について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0020】
本発明の機能性フィルムの製造方法は、プラスチックフィルムなどの有機化合物からなる支持体と、無機化合物からなる膜である無機膜とを有する原料フィルム12(図3等参照)を切断して、所定形状(所定サイズ)のカットシート状の機能性フィルムを製造するものである。
【0021】
本発明において、原料フィルム12には、特に限定はなく、有機化合物からなる支持体と、機能性フィルムが目的とする機能を発現する無機化合物からなる無機膜とを有するフィルム状物であれば、各種の構成の原料フィルム12が利用可能である。
【0022】
一例として、図1(A)に概念的に示すように、支持体Zの表面に、無機膜(無機層)14を形成してなる原料フィルム12aが例示される。
【0023】
支持体Zには、特に限定はなく、機能性フィルムの支持体として用いられている有機化合物からなるフィルム状物が、各種、利用可能である。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの、プラスチック(高分子材料)からなるプラスチックフィルムが、支持体Zの好適な一例として例示される。
また、支持体Zは、前述のようなプラスチックフィルムなどの表面(無機膜14の形成面)に、保護層、接着層、光反射層、反射防止層、遮光層、平坦化層、緩衝層、応力緩和層等の、各種の機能を得るための層(膜)が形成されているものであってもよい。
【0024】
無機膜14にも、特に限定はなく、製造する機能性フィルムが目的とする機能を発現する、無機化合物からなる膜が、全て、利用可能である。
例えば、機能性フィルムとして、ガスバリアフィルム(水蒸気バリアフィルム)を製造する際には、無機膜14として、窒化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、酸化ケイ素膜等が例示される。
また、機能性フィルムとして、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイのような表示装置など、各種のデバイスや装置の保護フィルムを製造する際には、無機膜14として、酸化ケイ素膜等が例示される。
また、機能性フィルムとして、透明な導電性フィルムを製造する際には、無機膜14としてITO(酸化インジウム錫)膜や酸化錫膜等が例指示される。
さらに、機能性フィルムとして、光反射防止フィルム、光反射フィルム、各種のフィルタ等の光学フィルムを製造する際には、目的とする光学特性を有する、あるいは発現する材料からなる膜を有すればよい。
【0025】
中でも、一般的に、低強度かつ脆く、しかも薄く、加えて、割れやヒビ等に起因する性能劣化が激しい等の点で、無機膜14はガスバリア膜が好適であり、すなわち、本発明は、ガスバリアフィルムの製造には、好適である。
【0026】
また、本発明の製造方法において、原料フィルムは、図1(A)に示すような、支持体Zの表面に無機膜14を形成してなる原料フィルム12aに限定されず、前述のように、各種の構成の物が利用可能である。
一例として、支持体Zの表面に、無機層14と、有機化合物からなる有機膜(有機層)とを交互に積層してなる原料フィルムが例示される。特に、支持体Zの表面に有機膜(下地有機膜)を有し、その上に、無機膜14と有機膜との組み合わせを、1以上、積層してなる原料フィルムは、好適に例示される。
【0027】
具体的には、図1(B)に示すような、支持体Zの表面に下地有機膜16aを有し、その上に、無機膜14と、この無機膜14の表面(支持体Zの逆面)に形成された有機膜16bとの組み合わせを、1つ、有する原料フィルム12bが例示される。
本発明に利用される原料フィルムにおいて、この無機膜14と有機膜16bとの組み合わせは、1つに限定はされず、図1(C)に示される原料フィルム12cのように、2つの無機膜14と有機膜16bとの組み合わせを有してもよく、さらに、3つ以上の、この組み合わせを有する原料フィルムであってもよい。
【0028】
下地有機膜16aおよび有機膜16bには、特に限定はなく、公知の有機化合物からなる膜が利用可能である。
【0029】
具体的には、ポリエステル、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、セルロースアシレート、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、脂環式ポリオレフィン、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、フルオレン環変性ポリカーボネート、脂環変性ポリカーボネート、フルオレン環変性ポリエステル、アクリロイル化合物、などの熱可塑性樹脂、あるいはポリシロキサン、その他の有機珪素化合物の膜が好適に例示される。
例えば、無機膜14がガスバリア性を発現する膜(ガスバリア膜)である場合には、ガスバリア性に効く平滑性、耐熱性の観点から、ラジカル重合性化合物および/またはエーテル基を官能基に有するカチオン重合性化合物の重合物から構成された有機膜16は、好適であり、特に、アクリレートおよび/またはメタクリレートモノマーの重合体を主成分とするアクリル樹脂あるいはメタクリル樹脂は、好適に例示される。
【0030】
下地有機膜16aと有機膜16bとは、同じ有機化合物であっても異なる有機化合物であってもよい。また、各有機膜16bも、同じ有機化合物でも、例えば最上層(表面)の有機膜16bのみ異なるなど、互いに異なる有機化合物でもよい。
【0031】
無機膜14と、下地有機膜16aおよび有機膜16b(以下、両者をまとめて、有機膜16とも言う)は、共に、公知の方法で形成(成膜)されるものである。
具体的には、無機膜14は、一般的に、プラズマCVD、スパッタリング、真空蒸着等の気相成膜法(気相堆積法)によって形成される。他方、有機膜16は、一般的に、塗布法やフラッシュ蒸着によって形成される。
【0032】
ここで、本発明の製造方法においては、好ましくは、原料フィルム12(支持体Z)が長尺なものであり、無機膜14は、長尺な被成膜基材を長手方向に搬送しつつ、気相成膜法によって形成されたものであるのが好ましい。
また、無機膜14は、被成膜基材(すなわち支持体Zの裏面)を円筒状のドラムの周面に巻き掛けた状態で、形成されたものであるのが好ましい。
【0033】
図2に、その一例を概念的に示す。
図2に示す例は、長尺な基材をロール状に巻回してなる基材ロールを用い、このロールから基材を送り出して、長手方向に搬送しつつ成膜を行い、成膜済の基材を、再度、ロール状に巻回する、前述のロール・ツー・ロール(Roll to Roll 以下、『RtoR』とも言う)によるものである。
なお、このようなRtoRによる成膜は、後述する無機膜14の形成のみならず、有機膜16の形成等にも、好適に利用される。
【0034】
図示例において、無機膜14を形成される被成膜基材Ziは、長尺なフィルム状物であり、ロール状に巻回された被成膜基材ロール26として装填される。被成膜基材Ziは、例えば、長尺な支持体Zであり(図1(A))、あるいは、支持体Zの表面に下地有機膜16aを形成してなる、長尺なフィルム状物であり(図1(B))、あるいは、支持体Zの上に下地有機膜16a、無機層14および有機層16bを形成してなる、長尺なフィルム状物である(図1(C))。
被成膜基材Ziは、被成膜基材ロール26から引き出されて、長手方向に搬送されて、ガイドロール28aに案内されて、ドラム20に搬送される。ドラム20に搬送された被成膜基材Ziは、ドラム20の周面の所定領域に巻き掛けられて、所定の成膜位置に位置されて、長手方向に搬送されつつ、ドラム20に対面して配置される成膜手段24によって、スパッタリングやプラズマCVD等の気相成膜法で無機膜14を形成される。
無機膜14を形成された被成膜基材Ziは、ガイドローラ28bに案内されて、巻取り軸30によって、再度、ロール状に巻回される。
【0035】
気相成膜法によって無機膜14を形成(成膜)する際には、被成膜基材Ziすなわち支持体Zは、成膜時に生じる熱によって加熱される。
その結果、室温まで冷却されると、支持体Zには、無機膜14との熱膨張率の違いに起因する内部応力が生じ、後に詳述するが、この支持体Zの内部応力が、原料フィルム12の切断における無機膜14の割れ等の原因になっている。
【0036】
ここで、このようなRtoRの装置では、被成膜基材Ziを長手方向に搬送するために、被成膜基材Ziには、搬送のための張力が長手方向に掛かっている。支持体Zは、このような一方向に張力が掛かっている状態で、無機膜14の形成によって加熱されるので、支持体Zの内部応力は、より大きくなる。
また、ドラム20に被成膜材Ziすなわち支持体Zを巻き掛けた状態で、無機膜14の成膜を行う場合にも、同様に、支持体Zは、曲げ応力を掛けられた状態で、無機膜14の形成によって加熱される。そのため、ドラム20上で無機膜14を形成される場合にも、支持体Zの内部応力は、より大きくなる。
特に、図2に示す例のように、RtoRによってドラム上で成膜を行う装置では、張力と曲げ応力との相乗効果によって、支持体Zの内部応力は、さらに大きくなる。
【0037】
本発明の製造方法によれば、このようなRtoRやドラム成膜で形成された無機膜14を有する、支持体Zの内部応力が大きな原料フィルム12であっても、切断による無機膜14の割れ等を、好適にに抑制できる。
すなわち、このような形成方法によって無機膜14を形成してなる原料フィルム12を用いることにより、無機膜14の割れ等を防止するという本発明の製造方法の効果を、より好適に発現することができる。
【0038】
本発明の機能性フィルムの製造方法は、このような支持体Zと無機膜14とを有する原料フィルム12を切断して、所定形状(所定サイズ)のカットシート状の機能性フィルムとするものである。
【0039】
その一例を、図3に示す。
図3に示す例は、好適な例として、原料フィルム12は、長尺なシート状物であり、この長尺な原料フィルム12をロール状に巻回してなる、フィルムロール34として供給される。
図3に示す例においては、まず、長尺な原料フィルム12をフィルムロール34から引き出して、幅方向(長手方向と直交する方向)に切断して、短尺原料フィルム12Sとする。次いで、この短尺原料フィルム12Sの幅方向の両端部を長手方向に切断して、所定形状の機能性フィルムFとする。なお、短尺原料フィルム12Sの切断において、幅方向および長手方向とは、短尺に切断される前の長尺な原料フィルム12における幅方向および長手方向である(以下、単に『幅方向』および『長手方向』とする)。
【0040】
幅方向の切断の一例を、図3(A)に概念的に示す。
この例では、まず、搬送ローラ対36によって長尺な原料フィルム12をフィルムロール34から引き出して、かつ、搬送ローラ対36によって長手方向(矢印a方向に)に搬送に搬送しつつ、ロータリーカッタ38によって幅方向に切断して、製造する機能性フィルムFの長さに応じたカットシート状の、短尺原料フィルム12Sとする。
【0041】
ロータリーカッタ38は、幅方向と一致する回転軸(中心線)を有する円柱状の回転体38aの周面に、幅方向に延在する刃38bを有する、公知のロータリーカッタである。なお、図3(A)中の符号40は、支持台(下刃/刃受け)である。
ロータリーカッタ38は、公知のロータリーカッタと同様に、長尺な原料フィルム12の搬送と同期(刃38bの先端の回転速度と原料フィルム12の搬送速度とを一致)して、原料フィルム12の搬送方向(矢印b方向)に回転することにより、長手方向に搬送される原料フィルム12を幅方向に切断して、短尺原料フィルム12とする。
【0042】
ここで、図3(A)に示す例においては、長尺な原料フィルム12は、無機膜14等の形成面を図中上方にして引き出され、搬送ローラ対36によって搬送されつつ、切断される。また、切断によって作製された短尺原料フィルム12Sは、ロータリーカッタ38の下流の搬送ローラ対36によって、所定の位置に搬送される。
搬送ローラ対36において、下側の支持体Zに当接するローラ36bは、通常の円柱状のローラであるが、図中上方の無機膜14の形成面に当接するローラは、端部(あるいは端部近傍)の直径が、それ以外の領域(中央領域)の直径よりも大径である、いわゆる段付きローラ36aである。
【0043】
前述のように、無機膜14は、薄く、また、強度も低いため、他の部材との接触等によっても、比較的容易に損傷してしまう。
しかしながら、図3に示す例のように、無機膜14の形成面側に当接するローラを段付きローラ36aとし、後に切り離されてしまう非製品領域のみに当接する構成とすることにより、製品領域の無機膜14の破壊や損傷等を好適に防止して、適正な製品を安定して製造することが可能になる。
【0044】
図3に示す例においては、このようにして長尺な原料フィルム12を幅方向に切断して、短尺原料フィルム12Sとしたら、次いで、図3(B)に示すように、短尺な原料フィルム12Sの幅方向両端部を長手方向(矢印a方向)に切断して、所定形状の機能性フィルムFとする。
【0045】
この幅方向両端部の切断は、一例として、図3(C)に示すような切断装置42によって行う。
この切断装置42は、2つのスリッタ46と、分割ローラ48とを有して構成される。
分割ローラ48は、短尺原料フィルム12Sを長手方向(矢印a方向=図3(C)では紙面に垂直方向)に搬送するもので、幅方向両端の切断位置よりも内側の中央部と、幅方向両端の切断位置よりも外側の外側部とに3分割された分割ローラである。
スリッタ46は、円盤状(円形)の回転上刃46aと回転下刃46bとを有する、公知のスリッタである。両回転刃は、分割ローラ48による短尺原料フィルム12Sの搬送方向と直交する方向(すなわち、短尺原料フィルム12Sの幅方向)と一致する回転軸を有する。図示例では、2つのスリッタ46が、長手方向(搬送方向)の同位置で、両端部の幅方向の切断位置に配置される。また、回転下刃46bは、分割ローラ48と同径で、中央部と外側部との間で、分割ローラ48の回転軸48aに固定される。
【0046】
従って、図示例においては、短尺原料フィルム12Sは、分割ローラ48によって長手方向に搬送されつつ、幅方向両端部の所定位置を、2つのスリッタ46によって長手方向に切断され、図3(B)に示すような、所定形状のカットシート状の機能性フィルムFとされる。
【0047】
ここで、本発明の機能性フィルムの製造方法においては、このような原料フィルム12の切断(切断加工/裁断加工)を、原料フィルム12(12S)の切断位置を、支持体Zのガラス転移温度(Tg)以上の温度にして、行う。なお、支持体ZのTg以上の温度とは、すなわち、支持体Zを形成する有機化合物のTg以上の温度である。
図3(A)に示す例においては、一例として、図示しない加熱手段によって支持台40を加熱することにより、原料フィルム12の切断位置を支持体ZのTg以上の温度にして、ロータリーカッタ38によって、原料フィルム12を幅方向に切断して、短尺原料フィルム12Sとする。また、図3(C)に示す例においては、一例として、図示しない加熱手段によって、下刃46bを加熱することにより、短尺原料フィルム12Sの切断位置を支持体ZのTg以上の温度にして、スリッタ46によって短尺な原料フィルムSの幅方向端部を長手方向に切断して、機能性フィルムFとする。
本発明の製造方法は、このような構成を有することにより、切断によって無機膜14に割れやヒビ、この割れ等に起因する無機膜14の剥離等が生じることを大幅に抑制して、所定の性能を発揮する機能性フィルムを、安定して製造することを可能にしている。
【0048】
前述のように、機能性フィルムとなる原料フィルム12に形成される無機膜14は、強度が低く、かつ、脆く、しかも、一般的に、薄い。そのため、所定形状にするための切断を行うと、切断部(切断線)の近傍に割れやヒビを生じてしまう。また、無機化合物と有機化合物との密着性は、それ程、高くないので、この割れ等が連結すると、無機膜14の剥離等を生じてしまう。
機能性フィルムにおいて、目的とする機能を発現する無機膜14に割れや剥離等を生じると、機能性フィルムは、目的とする性能を発揮することができない。例えば、ガスバリアフィルムであれば、周辺部のガスバリア膜に割れ等があると、この割れの部分から水蒸気が通過してしまうため、目的とするガスバリア性が得られない。
【0049】
これに対し、本発明の製造方法においては、切断時に、原料フィルム12(12S)の切断位置を、支持体ZのTg以上の温度とすることにより、切断によって生じる、切断位置(切断線)近傍の無機膜14の割れ等を、大幅に抑制している。
【0050】
ここで、特開2001−337411号公報や特開平4−372396号公報等に示されるように、長尺物等を切断加工する際には、切断を行う刃や被切断物を加熱することが行われている。
これらの加熱/切断は、有機化合物のみからなるシート状物を対象とするものであり、特開2001−337411号公報に記載される画像形成層のTgに応じた加熱や、特開平4−372396号公報に記載されるポリオレフィン樹脂フィルムの軟化点に応じた加熱からも明らかなように、切断によって損傷し易い膜(層)や保護したい膜を対象として、これらの物性に応じた温度に切断されるシート状物を加熱するものである。
【0051】
これに対して、本発明の製造方法は、有機化合物からなる支持体Zと無機膜14とを有する原料フィルム12を対象として、割れ等の発生を防止したい無機膜14ではなく、原料フィルムの切断位置を、原料フィルム(機能性フィルム)の支持体のTgに応じた温度に加熱することにより、無機膜14の割れ等を防止する。
この切断位置の加熱は、従来の切断加工における被切断物や刃の加熱とは全く異なる、以下の技術的思想に基づくものである。
【0052】
前述のように、ガスバリア膜や反射防止膜などの所定の機能を発現する無機膜14は、多くの場合、プラズマCVD、スパッタリング、真空蒸着などの気相成膜法によって形成(成膜)される。
前述のように、このような気相成膜法によって無機膜14を形成すると、成膜中に、無機膜14を形成される被成膜基材Ziは加熱される。すなわち、プラスチックフィルムなどの有機化合物からなる支持体Zを有する機能性フィルムを製造する本発明では、この無機膜14の形成時に、支持体Zも加熱される。図2に示すようなドラム成膜の場合には、通常、ドラム20を冷却することにより、被成膜基材Ziを冷却するが、やはり、支持体Zの加熱は避けられない。
【0053】
この加熱により、支持体Zは膨張する。また、成膜される無機膜14も、熱によって膨張している。ここで、有機化合物である支持体Zと、無機化合物である無機膜14とでは、熱膨張率が大幅に異なる。
そのため、成膜後、室温まで冷却されると、支持体Zと無機膜14との熱膨張率の差によって、支持体Zと無機膜14とに、互いに異なる内部応力が生じる。すなわち、原料フィルム12では、この支持体Zの内部応力が、無機膜14に不要な力を加えている状態となっている。
また、この内部応力は、図2に示すRtoRなどのような被成膜基材Ziを搬送しつつ成膜を行う場合や、ドラム20に被成膜基材Ziを巻き掛けて成膜を行うドラム成膜の場合には、大きくなるのは、前述のとおりである。
【0054】
ここで、原料フィルム12(および短尺原料フィルム12S 以下、省略)の切断時には、原料フィルム12の切断位置の近傍は、刃による押圧等によって変形し、また、切断後は変形から戻ろうとする。
支持体Zと無機膜14とを有する原料フィルムを切断すると、支持体Zが有する無機膜14とは異なる内部応力と、原料フィルム12が変型する力および変型から戻ろうとする力とが合成される。これにより、切断位置において無機膜14に大きな力が掛かり、無機膜14の切断位置近傍に割れやヒビ等が生じてしまう。
【0055】
これに対し、本発明の製造方法では、原料フィルム12の切断時に、切断位置を支持体ZのTg以上に加熱することにより、この支持体Zの内部応力を除去(抑制)した状態で、切断を行う。すなわち、支持体Zの温度をTg以上とすることにより、切断の際の変形および変形からの復元を、無機膜14が支配する状態として、無機膜14にかかる力を、大幅に低減する。
その結果、原料フィルム12の切断時に、無機膜14に無理な力が掛からないので、切断位置近傍に割れやヒビが生じることを、大幅に低減できる。また、加熱裁断であるので、支持体Zや有機膜16等からのバリやゴミ等の発生も抑制できる。
従って、本発明の製造方法によれば、所定の機能を発現する無機膜14が、切断によって損傷するのを防止して、所定の形状(所定のサイズ)を有し、かつ、目的とする性能を有する機能性フィルムFを、安定して製造することができる。
【0056】
本発明の製造方法において、切断時における原料フィルム12の切断位置の温度は、支持体ZのTg以上であればよい。
しかしながら、あまり高温になると、支持体Zや、有機膜16等を有する場合には、これらの膜にも悪影響が生じる可能性があり、また、支持体Zの変形等が生じる可能性も有る。そのため、切断時における原料フィルム12の切断位置の温度は、支持体Zの融点以下とするのが好ましい。
また、上記の点を考慮すると、原料フィルム12の切断位置の温度は、支持体ZのTg+20℃以下が好ましく、特に、支持体ZのTg+10℃以下が好ましい。
【0057】
ここで、原料フィルム12が有機化合物からなる膜を有する構成、特に、有機膜16図1(B)に示す原料フィルム12bや、図1(C)に示す原料フィルム12cのように、無機膜14が有機膜16で挟まれた構成を有する原料フィルムの場合には、切断時に、この有機膜16が有する内部応力も加わって、より、切断時における無機膜14の割れ等を生じ易い。
そのため、原料フィルム12が、有機膜16等の有機化合物からなる膜を有する場合には、原料フィルム12の切断位置の温度を、支持体Zおよび存在する有機化合物からなる膜のうち、最もTgが高い物のTg以上の温度にするのが好ましい。これにより、切断時における切断位置近傍の割れ等を、より好適に抑制できる。
【0058】
原料フィルム12の切断位置の加熱方法には、特に限定はない。一例として、図3に示すように、切断を行う刃を加熱する方法や切断時に原料フィルム12に接触する部材を加熱する方法、ヒータ等によって原料フィルム12を直接的に加熱する方法が例示される。さらに、レーザ光(レーザビーム)を用いて、原料フィルム12の切断位置を加熱しつつ、切断する方法も、好適に利用可能である。
なお、原料フィルム12の加熱、切断を行う刃の加熱、原料フィルム12に接触する部材の加熱は、接触あるいは非接触による、公知の方法で行えばよい。
【0059】
また、原料フィルム12の切断手段も、図示例のようなロータリーカッタや、2枚の円盤状の回転刃を用いるスリッタに限定はされない。
例えば、ギロチンカッタや、円盤状の回転刃の上刃と固定される下刃とを有するスリッタ、製造する機能性フィルムFを取り囲む形状の刃を用いる打ち抜き(型抜き)等、公知のシート状物の切断手段が、全て、利用可能である。
【0060】
本発明の製造方法においては、基本的に、原料フィルム12の切断時に、切断位置を支持体ZのTg以上の温度とすればよい。
しかしながら、温度を支持体ZのTg以上とする範囲が広すぎると、支持体Zが熱ダメージを受け、機能性フィルムFの変形や機械的強度の低下等の不都合が生じる可能性がある。また、本発明において、無機膜14の割れ等を抑制するのは、原料フィルム12の切断位置近傍であり、切断位置から離れた位置の加熱は、無駄である。
逆に、温度を支持体ZのTg以上とする範囲が狭すぎると、切断によって変形する領域を十分に賄いきれず、原料フィルム12の切断による無機膜14の割れ等を、十分に抑制できない可能性も有る。
【0061】
そのため、本発明においては、図4に概念的に示すように、図中に一点鎖線で示す切断位置(切断方向/切断線)Lと直交する方向において、原料フィルム12の温度を支持体ZのTg以上とする領域w1およびw2を、2〜10mmとするのが好ましい。
これにより、切断位置における無機膜14の割れ等の発生を十分に抑制しつつ、かつ、熱による支持体Z等のダメージが広範囲に広がることも、好適に防止できる。
【0062】
図3に示す例においては、長尺な原料フィルム12を幅方向に切断して、その後、幅方向の両端部を切断して、所定形状の機能性フィルムFとした。しかしながら、本発明は、これに限定はされず、先に長尺な原料フィルム12の幅方向の両端をスリッタ等で切り落とした後に、幅方向に切断して所定形状の機能性フィルムFとしてもよい。
しかしながら、最終的には切り落とす幅方向の端部を、最後まで残しておくことにより、この部分に接触しての搬送や取り扱いが可能となり、製品領域に接触することによる無機膜14の損傷等を防止できる。そのため、図3に示すように、先に幅方向の切断を行い、最後に、幅方向端部の切断を行うのが、好ましい。
【0063】
また、以上の例は、長尺な原料フィルムを幅方向および両端長手方向に切断することで、所定形状の機能性フィルムを製造しているが、本発明は、これに限定はされず、長尺な原料フィルムを幅方向にのみ切断して、所定形状の機能性フィルムを製造してもよい。
さらに、カットシート状の原料フィルムを用い、この原料フィルムを1回以上、切断することにより、所定形状の機能性フィルムを製造してもよい。
【0064】
以上、本発明の機能性フィルムの製造方法について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良および変更を行ってもよいのは、もちろんである。
例えば、本発明で製造するカットシート状の機能性フィルムは、正方形や長方形等の矩形に限定はされず、円形や曲線状の辺を有する形状等、各種の形状が利用可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明を、より詳細に説明する。
【0066】
[実施例1]
図1(B)に示すような、幅1000mmの支持体Zの上に、下地有機膜16a/無機膜14/有機膜16bを形成してなる原料フィルム12を、ロール状に巻回してなる、フィルムロール34を用意した。
【0067】
支持体Zは、厚さ100μmのPETフィルム(Tg:80〜90℃)を用いた。
有機膜16は、アクリレート系モノマーと光重合開始剤とを有機溶剤に溶解した塗料を調製し、この塗料を、ダイコータで塗布して乾燥した後、塗膜を紫外線によって硬化した膜とした。下地有機膜16aおよび有機膜16b共に、膜厚は1000nmとした。なお、有機膜16の形成は、RtoRの装置によって行った。
また、無機膜14は、厚さ50nmの酸化アルミニウム層とした。無機膜14の形成は、図2に示すようなRtoRによるドラム成膜を行う成膜装置を用いて、反応性スパッタリングによって行った。
【0068】
このようなフィルムロール34を、まず、図3(A)に示すようなロータリーカッタ28を用いる切断装置によって幅方向に切断し、長さが500mm(幅1000mm)の短尺原料フィルム12Sとした。
切断は、支持台40を、支持台40の内部に設置したシースヒータで加熱することにより、原料フィルム12の切断位置の温度を100℃にして行った。なお、原料フィルム12の切断位置の温度は、シース熱電対によって測定した。
【0069】
次いで、図3(C)に示すような切断装置42を用いて、短尺原料フィルム12Sの幅方向の両端を長手方向に切断し、500×600mmの矩形の機能性フィルム(ガスバリアフィルム)を作製した。
切断は、下刃46dを赤外線ランプで加熱することにより、短尺原料フィルム12Sの切断位置の温度を100℃にして行った。なお、短尺原料フィルム12Sの切断位置の温度は、放射温度計によって測定した。
【0070】
[実施例2]
支持体Zを厚さ100μmのPENフィルム(Tg:120℃)に変更し、さらに、原料フィルム12および短尺原料フィルム12Sの切断位置の温度を130℃に変更した以外は、実施例1と同様にして機能性フィルムを作製した。
【0071】
[比較例1、比較例2]
原料フィルム12および短尺原料フィルム12Sの切断位置の温度を、30℃(比較例1)、および、60℃(比較例2)に変更した以外は、実施例1(支持体Z=PET)と同様にして機能性フィルムを作製じた。
【0072】
[比較例3、比較例4]
原料フィルム12および短尺原料フィルム12Sの切断位置の温度を、100℃(比較例3)、および、60℃(比較例4)に変更した以外は、実施例2(支持体Z=PEN)と同様にして機能性フィルムを作製した。
【0073】
[評価]
作製した機能性フィルムの切断位置近傍を、目視、および光学顕微鏡(500倍)で、無機膜14の割れ観察して、評価した。
顕微鏡でも割れが確認できない物を○:
目視では割れを確認できないが、顕微鏡では割れが確認できる物を△:
目視でも割れが確認できる物を×: と評価した。
結果を、下記表1に示す。
【0074】
【表1】

上記表1に示すように、切断時に、切断位置を支持体のTg以上の温度にした本発明によれば、切断位置近傍に割れ等の無い、高品質な機能性フィルムを製造できる。
これに対し、切断位置の温度が支持体のTg以下である比較例は、いずれも、切断によって切断位置近傍に割れが確認された。特に、切断位置の温度が支持体のTgよりも大幅に低い比較例1および比較例4は、無機膜14の割れが目視でも確認できた。
以上の結果より、本発明の効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
、用途に応じた形状のガスバリアフィルムなどの、所望の形状を有する機能性フィルムの製造に利用される。
【符号の説明】
【0076】
12a,12b,12c 原料フィルム
14 無機膜
16a 下地有機膜
16b 有機膜
20 ドラム
24 成膜手段
26 被成膜基材ロール
28a,28b ガイドローラ
30 巻取り軸
34 フィルムロール
36 搬送ローラ対
38 ロータリーカッタ
40 支持台
42 切断装置
46 スリッタ
48 分割ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物からなる支持体と無機化合物からなる無機膜とを有する原料フィルムを、切断位置を、前記支持体のガラス転移温度以上の温度にして、切断することにより、所定形状の機能性フィルムとすることを特徴とする機能性フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記原料フィルムを切断する刃の加熱、レーザ光による前記原料フィルムの裁断、および、接触もしくは非接触の加熱手段による切断前の前記原料フィルムの加熱のいずれかによって、前記原料フィルムの切断位置を前記支持体のカラス転移温度以上の温度にする請求項1に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記切断位置から、切断方向と直交する方向の2〜10mmの範囲を、前記支持体のガラス転移温度以上の温度にする請求項1または2に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記原料フィルムが長尺なものであり、前記原料フィルムにおける無機膜の形成を、前記無機膜が形成される長尺フィルムを長手方向に搬送しつつ行う請求項1〜3のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記無機膜の形成を、円筒状のドラムの周面に前記支持体を巻き掛けた状態で行う請求項1〜4のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記長尺フィルムをロール状に巻回してなるフィルムロールから、前記長尺フィルムを引き出して、長手方向に搬送しつつ前記無機膜の形成を行い、前記無機膜を形成した長尺フィルムを、再度、ロール状に巻回する請求項4または5に記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記原料フィルムが長尺なものであり、この長尺な原料フィルムに対して、長手方向と直交する幅方向の切断と、前記幅方向両端部の長手方向の切断とを行うことにより、前記所定形状の機能性フィルムとする請求項1〜6のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項8】
切断を行う際の前記切断位置の温度が、前記支持体の融点以下の温度である請求項1〜7のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記無機膜が、気相成膜法によって成膜されたものである請求項1〜8のいずれかに記載の機能性フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−51061(P2012−51061A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194912(P2010−194912)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】