説明

機能性ポリペプチド及び当該ポリペプチドで修飾された脂質膜構造体

【課題】 表面をポリアルキレングリコールなどで修飾した脂質膜構造体やMENDなどの脂質膜構造体を微粒子キャリアとして用いて標的細胞に核酸を含む薬物等を送達するにあたり、標的細胞の内部に薬物等を効率的に取り込ませる手段を提供する。
【解決手段】本発明のポリペプチドは、ポリアルキレングリコール修飾された脂質膜構造体に対して、当該脂質膜構造体の標的細胞内への取り込み能、ひいては脂質膜構造体に保持された薬剤や核酸の標的細胞内への取り込み、特に脂質膜構造体に保持された核酸の標的細胞の核への移行能がポリアルキレングリコール修飾によって低下することを防ぐ効果を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソームなどの脂質膜構造体の核内移行能を促進させる機能を有するポリペプチド、特にポリアルキレングリコールで修飾された脂質膜構造体に対してその核内移行能を促進させる機能を有するポリペプチド、及び当該ポリペプチドで表面が修飾されたリポソームなどの脂質膜構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤を患部に特異的に輸送する手段として脂質膜構造体に薬剤を封入する方法が提案されている。特に、悪性腫瘍の治療分野において抗腫瘍剤等の薬剤を封入した脂質膜構造体の有効性が数多く報告されている。また、多機能性エンベロープ型ナノ構造体(MEND;Multifunctional
envelope-type nano device、以下、本明細書において「MEND」と略す場合がある。) が提案されており、この構造体は、核酸などを特定の細胞内に選択的に送達するためのドラッグデリバリーシステムとして用いることができ、例えば、腫瘍の遺伝子治療などに有用であることが知られている。
【0003】
脂質膜構造体や上記のMENDなどの微粒子キャリアは静脈内に投与した場合に血液中での滞留性が悪く、肝臓や脾臓などの細網内皮系組織に捕捉され易いという問題を有している。また、これらの微粒子キャリアでは、封入物の漏出が起きたり、微粒子が凝集したりするという問題もある。これらの問題は、薬剤を封入した脂質膜構造体や核酸を封入した上記のMENDを用いて標的臓器や標的細胞に薬剤や核酸を送達させるターゲティング療法を行うに際して大きな障害となっていた。
【0004】
上記の問題を回避するための手段として、脂質膜構造体などの微粒子キャリアの表面をポリアルキレングリコール(PEG: ポリエチレングリコールなど)で修飾する手段が提案されている(非特許文献1〜3)。この手段は、PEGによる水和層が脂質膜構造体などの微粒子キャリアを覆うと血清タンパク吸着などオプソニン化が抑制され、その結果、マクロファージによる貪食と細網内皮系組織による取り込みを回避できることに基づく。
【0005】
この目的のために、ポリアルキレングリコールで修飾されたリン脂質が提案されており、このリン脂質を用いて脂質膜構造体の表面をポリアルキレングリコールで修飾できることが知られている。また、粒子径を100〜200 nmに制御したPEG修飾脂質膜構造体はEPR(Enhanced
Permeability and Retention)効果により固形腫瘍にほぼ選択的に集積し、血中に再び回収されることなく長時間にわたり腫瘍内に維持される(EPR効果について非特許文献4)。
【0006】
しかしながら、脂質膜構造体などの微粒子キャリアの表面をポリアルキレングリコールで修飾した場合には、血中滞留性は改善するものの、標的細胞の内部に微粒子キャリアが取り込まれにくくなるという新たな問題が生じることが知られている。この問題は、特に、薬剤封入脂質膜構造体や核酸封入MENDを用いて標的細胞に特異的に薬剤や核酸を送達するターゲッティング治療において、期待したほどの治療効果を達成できず、また標的細胞に送達されなかった薬剤や核酸による副作用も十分に回避できないという深刻な問題を引き起こしている。
【0007】
この問題に対して、本発明者らは、ポリアルキレングリコール類の残基とリン脂質の残基との間にマトリックスメタロプロテアーゼの基質となりうる基質ペプチドを含むペプチドを置いたリン脂質誘導体を作成し、この脂質誘導体を含む脂質膜構造体を提案した(特許文献1)。この脂質膜構造体はマトリックスメタロプロテアーゼによりペプチド部分が切断されてポリアルキレングリコールなどの修飾部位を脱離する特性を有している。そのため、血中においては該修飾部位の存在により安定である一方、マトリックスメタロプロテアーゼを分泌する悪性腫瘍細胞の近傍では該修飾部位が脱離することにより脂質膜構造体の安定性が低下する。その結果、脂質膜構造体に保持された抗腫瘍剤や核酸が悪性腫瘍細胞の外部で放出されたり、該修飾部位が脱離した状態の脂質膜構造体が悪性腫瘍細胞中に効率的に取り込まれたりすることによって、悪性腫瘍細胞中に薬剤や核酸を効率的に導入することができる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明は、マトリックスメタロプロテアーゼを分泌する悪性腫瘍細胞に対するDDSとしては有効であるが、その他の標的細胞、特にマトリックスメタロプロテアーゼを分泌しないか、あるいはその分泌量が少ない標的細胞に対するDDSとしての有効性は確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-099750号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Biochim. Biophys.Acta,、1991年、第1066巻、第29-36頁
【非特許文献2】FEBSLett.,1990年、第268巻、第235-237頁
【非特許文献3】Biochim. Biophys.Acta、1990年、第 1029巻、第91-97頁
【非特許文献4】CancerRes.、1986年、第46,巻、第6387-6392頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、表面をポリアルキレングリコールなどで修飾した脂質膜構造体やMENDなどの脂質膜構造体を微粒子キャリアとして用いて標的細胞に核酸を含む薬物等を送達するにあたり、標的細胞の内部に薬物等を効率的に取り込ませる手段を提供することにある。特に、ポリアルキレングリコール類で修飾されたし脂質膜構造体の血中滞留性を維持しつつ、標的細胞の内部に薬物等、特に核酸を効率的に取り込ませる手段として利用可能なポリペプチドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ポリアルキレングリコールなどで修飾した脂質膜構造体を特定のアミノ酸配列からなるポリペプチドで修飾することにより、血中においてはポリアルキレングリコールなどの修飾部位の存在により該脂質膜構造体やMENDの高い血中滞留性が保たれる一方、脂質膜構造体にポリアルキレングリコールが存在しているにも拘わらず標的細胞への、特に標的細胞の核内への脂質膜構造体封入物の取り込み効率を向上させることができることを見出した。下記の各発明は、上記の知見を基にして完成されたものである。
【0013】
(1)下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチド。
(a)配列番号1〜4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号1〜4のいずれかに記載のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、当該ポリペプチドで修飾された脂質膜構造体の核内移行能を促進する活性を有するペプチド。
【0014】
(2)ポリアルキレングリコール又はリン脂質が縮合したポリアルキレングリコールで修飾されたポリペプチドである、(1)に記載のポリペプチド。
【0015】
(3)ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、(2)に記載のポリペプチド。
【0016】
(4)(1)乃至(3)に記載のポリペプチドを表面に有する脂質膜構造体。
【0017】
(5)さらに、(c)連続した複数個のアルギニン残基を含むポリペプチドをさらに表面に有する、(4)に記載の脂質膜構造体。
【0018】
(6)前記(c)のポリペプチドが4〜20個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチドである、(5)に記載の脂質膜構造体。
【0019】
(7)前記(c)のポリペプチドがアルギニン残基のみからなるポリペプチドである、(6)に記載の脂質膜構造体。
【0020】
(8)脂質二重層を構成する総脂質に対するカチオン性脂質の割合が0〜40%(モル比)である、(4)〜(7)のいずれかに記載の脂質膜構造体。
【0021】
(9)前記(c)のペプチドが疎水性基又は疎水性化合物で修飾されており、前記疎水性基又は前記疎水性化合物が脂質膜に挿入され、前記ペプチドが前記脂質膜から露出している(4)〜(8)のいずれかに記載の脂質膜構造体。
【0022】
(10)前記疎水性基がステアリル基又はコレステリル基である、(9)に記載の脂質膜構造体。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポリペプチドは、ポリアルキレングリコール修飾された脂質膜構造体に対して、当該脂質膜構造体の標的細胞内への取り込み能、ひいては脂質膜構造体に保持された薬剤や核酸の標的細胞内への取り込み、特に脂質膜構造体に保持された核酸の標的細胞の核への移行能がポリアルキレングリコール修飾によって低下することを防ぐ効果を示す。その結果、本発明のポリペプチドで修飾された脂質膜構造体は、ポリアルキレングリコール修飾による血中滞留性の向上と共に、標的細胞への取り込み能と、脂質膜構造体に保持された物質の標的細胞への放出能に優れるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明のリポソームを用いて形質転換されたHeLa細胞における、ルシフェラーゼ活性を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明のリポソームを用いて形質転換されたHeLa細胞における、βアクチン発現抑制効果を示すグラフである。
【図3】図3は、従来のGALAペプチドおよび本発明のsGALAペプチドを修飾したPEGリポソーム、およびそれに封入したsiRNAの尾静脈内投与6時間後の血中濃度を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明のsGALAペプチドを修飾したPEGリポソームに封入したsiRNAを尾静脈内投与した際の腫瘍における遺伝子抑制効果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチドに関する。
(a)配列番号1〜4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号1〜4のいずれかに記載のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、当該ポリペプチドで修飾された脂質膜構造体の核内移行能を促進する活性を有するペプチド。
【0026】
本発明のポリペプチドの代表例は、アフリカブタ熱病ウイルス(African swine fever virus)タンパク質の一種であるp54(アロンソ(Alonso C)ら、J Virol. 2001年、第75巻、第20号、第9819-27頁)の一部に相当するアミノ酸配列からなるポリペプチド(配列番号1〜3)である。P54は、宿主細胞の微小管を構成するタンパク質であるダイニン(Dynein)に結合する機能を有するとされている。
【0027】
また本発明のポリペプチドのもう一つの代表例は、GALAと称される機能性ポリペプチドを短縮化したアミノ酸配列(22残基)からなるポリペプチド(配列番号4)である。本明細書ではこのポリペプチドをsGALAと表す。GALAはpH応答して脂質膜の融合を促進する機能を有し、脂質膜構造体のエンドソームからの脱出能を高めることのできる30残基からなるポリペプチドである(Bioor. Med. Chem.、1997年、第5巻、第1883-1891項)。しかし、PEGで修飾されたリポソームをGALAで修飾すると、リポソームの血中滞留性を減少させてしまっていた。本発明のポリペプチドであるsGALAは、PEGで修飾されたリポソームの血中滞留性を損なうことなく、脂質膜構造体の細胞内移行性、特に核内移行性を向上させる機能を有する。
【0028】
本発明には、配列番号1〜4の各アミノ酸配列において1個もしくは数個のアミノ酸配列が欠失、置換、あるいは付加されたアミノ酸配列からなり、ポリアルキレングリコールで修飾された脂質膜構造体の核内移行能を促進する活性を有するペプチドも包含される。
【0029】
ここにいう「核内移行能を促進する活性」は、標的細胞の核内において発現可能な状態にある核酸、例えば宿主細胞の核内で作動可能なプロモーターの下流に連結されたルシフェラーゼ等のマーカータンパク質をコードする核酸を保持した脂質膜構造体であって前記ポリペプチドで修飾されている脂質膜構造体(以下、修飾脂質膜構造体とする)と、当該核酸が保持されかつ前記ポリペプチドで修飾されていない脂質膜構造体(以下、非修飾脂質膜構造体とする)とを比較した場合に、修飾脂質膜構造体で形質転換された細胞におけるマーカータンパク質の発現量が非修飾脂質膜構造体で形質転換された細胞におけるマーカータンパク質の発現量を増加させる活性として表すことができる。
【0030】
本発明のポリペプチドは、当業者において知られている各種の遺伝子組み換え技術によって宿主細胞を用いて生物学的に調製することができる。また本発明のポリペプチドは、当業者に知られているポリペプチドの有機化学的合成方法、あるいは典型的にはペプチドシンセサイザーと総称されるポリペプチド合成装置を用いて調製することもできる。
【0031】
本発明では、ポリアルキレングリコールで修飾されたポリペプチド、好ましくは適当なリン脂質が縮合したポリアルキレングリコールで修飾されたポリペプチドを使用する事が好ましい。例えば、ポリアルキレングリコールをN末端又はC末端のシステイン(Cys)残基に縮合させたポリペプチドを利用することが好ましい。
【0032】
本発明におけるポリアルキレングリコールはポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールであることが好ましく、特にポリエチレングリコールであることが好ましい。ポリエチレングリコールを用いる場合、その分子量は特に限定されず、脂質膜構造体に血中滞留性などの所望の特性を付与するために当業者が適宜選択することができるポリエチレングリコールであればよい。
【0033】
本発明では、ポリアルキレングリコールはリン脂質が縮合したものが好ましい。リン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファリジルコリン類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルイノシトール類、ホスファチジルグリセロール類、カルジオリピン類、スフィンゴミエリン類、セラミドホスホリルエタノールアミン類、セラミドホスホリルグリセロール類、セラミドホスホリルグリセロールホスファート類、1,2-ジミリストイル-1,2-デオキシホスファチジルコリン類、プラスマロゲン類、またはホスファチジン酸類を用いることができるが、これらのリン脂質における脂肪酸残基は特に限定されない。例えば、炭素数12〜20個程度の飽和又は不飽和の脂肪酸残基を1個又は2個有するリン脂質を用いることができ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸由来のアシル基を1個又は2個有するリン脂質を用いることができる。これらのうち、ホスファチジルエタノールアミン類が好ましく、特に好ましいのはジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)である。
【0034】
本発明では、脂肪酸、リン脂質その他の脂質膜構造体を構成する脂質で修飾されたポリペプチドも利用することができる。本発明のポリペプチドの脂質による修飾方法は特に限定されず、当業者に知られた方法によって行うことができるが、一般的にはポリペプチドのペプチド末端のアミノ基又はカルボキシル基と脂質の反応性官能基(例えば、水酸基、カルボキシル基、エステル基など)とを反応させることにより行なうことができる。典型的には、脂質のカルボキシル基又はエステル基などの反応性官能基とポリペプチドのアミノ基とを反応させてアミド結合を形成させる方法、酸ハライド法、活性エステル法、又は酸無水物などを用いた方法等により、脂質で修飾されたポリペプチドを調製することができる。
【0035】
本発明は、上記記載のポリペプチドを表面に有する脂質膜構造体を提供する。本発明により提供される脂質膜構造体は、通常用いられるリン脂質類、コレステロール、コレスタノール等のステロール類、炭素数8〜22の飽和又は不飽和のアシル基を有する脂肪酸類、α−トコフェロール等の酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0036】
脂質膜構造体を構成するリン脂質類としては、例えば、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファリジルコリン類、ホスファチジルセリン類、ホスファチジルイノシトール類、ホスファチジルグリセロール類、カルジオリピン類、スフィンゴミエリン類、セラミドホスホリルエタノールアミン類、セラミドホスホリルグリセロール類、セラミドホスホリルグリセロールホスファート類、1,2-ジミリストイル-1,2-デオキシホスファチジルコリン類、プラスマロゲン類、又はホスファチジン酸類等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらリン脂質における脂肪酸残基は特に限定されないが、例えば、炭素数12〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸残基を挙げることができ、具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸由来のアシル基を挙げることができる。
【0037】
また、本発明の脂質膜構造体は、卵黄レシチン、大豆レシチン等の天然物由来のリン脂質を含んでいてもよい。また例えば、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、1-N,N-ジメチルアミノジオレオイルプロパン(DODAP)、1-オレオイル-2-ヒドロキシ-3-N,N-ジメチルアミノプロパン、1,2-ジアシル-3-N,N-ジメチルアミノプロパン、1,2-ジデカノイル-1-N,N-ジメチルアミノプロパン、3-β-[n-[(N',N'-ジメチルアミノ)エタン]カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、1,2-ジミリストオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DMRIE)、および1,2-ジオールオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロマイド(DORI)などを含んでいてもよい。
【0038】
本発明の脂質膜構造体には、構成脂質として、上記脂質の他に、例えば血中滞留性機能、温度変化感受性機能、及びpH感受性機能などを有する脂質誘導体を含有させることができ、それによりこれらの機能のいずれか1つ又は2つ以上を付与することができる。これらの機能を付加することにより、例えば、薬剤及び/又は核酸を含む脂質膜構造体の血液中での滞留性を向上させることができ、あるいは薬剤及び/又は核酸の細胞内における放出性を高めることができる。
【0039】
血中滞留性機能を付与することができる血中滞留性脂質誘導体としては、例えば、グリコフォリン、ガングリオシドGM1、ホスファチジルイノシトール、ガングリオシドGM3、グルクロン酸誘導体、グルタミン酸誘導体、ポリグリセリンリン脂質誘導体、N-{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール-2000}-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール-5000}-1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール-750}-1,2−ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール-2000}-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン、N-{カルボニル−メトキシポリエチレングリコール-5000}-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン等のポリエチレングリコール誘導体等を挙げることができる。
【0040】
温度変化感受性機能を付与することができる温度変化感受性脂質誘導体としては、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン等を挙げることができる。また、pH感受性機能を付与することができるpH感受性脂質誘導体としては、例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン等を挙げることができる。
【0041】
本発明により提供される脂質膜構造体の構造上の種類は特に限定されないが、脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態としては、例えば、一枚膜リポソーム、多重層リポソーム、O/W型エマルション、W/O/W型エマルション、球状ミセル、ひも状ミセル、不定型の層状構造物などを挙げることができる。これらのうちリポソームが好ましい。分散した状態の脂質膜構造体の大きさは特に限定されないが、例えば、リポソームやエマルションの場合には粒子径が50 nmから5 μmであり、球状ミセルの場合、粒子径が5 nmから100 nmである。ひも状ミセルや不定型の層状構造物の場合は、その1層あたりの厚みが5 nmから10 nmであり、これらが層を形成しているものが好ましい。
【0042】
本発明の脂質膜構造体の形態は特に限定されないが、例えば、脂質膜構造体の膜構成成分であるリン脂質等とともに本発明のポリペプチドを修飾しているリン脂質が脂質膜構造体を形成している形態が好ましい。より具体的には、例えば、本発明のポリペプチドを修飾しているリン脂質が、他のリン脂質等から構成される脂質膜構造体の脂質膜中、脂質膜表面、脂質膜構造体内部、脂質層中、及び脂質層表面からなる群から選ばれる1以上の部分に存在(結合)している形態を挙げることができる。
【0043】
本発明の脂質膜構造体の形態及びその製造方法は特に限定されないが、形態としては、例えば、乾燥した混合物の形態、あるいは水系溶媒に分散された形態又はこれを乾燥させた形態若しくは凍結させた形態等を挙げることができる。以下に、これらの形態の脂質膜構造体を製造する方法を説明するが、本発明の脂質膜構造体の形態及びその製造方法は上記の形態又は下記に説明する製造方法に限定されることはない。
【0044】
本発明の脂質膜構造体の製造方法は特に限定されないが、例えば、乾燥した混合物の形態の脂質膜構造体は、例えば、脂質膜構造体の構成成分全てを一旦クロロホルム等の有機溶媒に溶解させ、次いでエバポレータによる減圧乾固や噴霧乾燥機による噴霧乾燥を行うことによって製造することができる。
【0045】
脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態は、上記の乾燥した混合物を水系溶媒に添加し、さらにホモジナイザー等の乳化機、超音波乳化機、高圧噴射乳化機等により乳化することで製造することができる。また、リポソームを製造する方法としてよく知られている方法、例えば逆相蒸発法などによっても製造することができる。脂質膜構造体の大きさを制御したい場合には、孔径のそろったメンブランフィルター等を用いて、高圧下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。
【0046】
水系溶媒(分散媒)の組成は特に限定されるべきものではなく、例えば、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩液等の緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地などを挙げることができる。これら水系溶媒(分散媒)は脂質膜構造体を安定に分散させることができるが、さらに、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類、ラフィノース、メレジノース等の三糖類、シクロデキストリン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコールなどの糖(水溶液)や、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)等を加えてもよい。この水系溶媒(分散媒)に分散した脂質膜構造体を安定に長期間保存するには、凝集などの物理的安定性の面から、水系溶媒(分散媒)中の電解質を極力なくすことが望ましい。また、脂質の化学的安定性の面から、水系溶媒(分散媒)のpHを弱酸性から中性付近(pH3.0から8.0)に設定することや窒素バブリングにより溶存酸素を除去することが望ましい。
【0047】
さらに脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態を乾燥又は凍結させた形態は、上記の水系溶媒に分散した脂質膜構造体を通常の凍結乾燥や噴霧乾燥による乾燥又は凍結方法等により製造することができる。水系溶媒に分散した形態の脂質膜構造体を一旦製造した上でさらに乾燥すると、脂質膜構造体の長期保存が可能となるほか、この乾燥した脂質膜構造体に薬効成分含有水溶液を添加すると、効率よく脂質混合物が水和されるために薬効成分を効率よく脂質膜構造体に保持させることができる長所がある。
【0048】
凍結乾燥や噴霧乾燥する場合には、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース糖の単糖類、乳糖、ショ糖、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類、ラフィノース、メレジノース等の三糖類、シクロデキストリン等の多糖類、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコールなどの糖(水溶液)を用いると安定に長期間保存することができる。また、凍結する場合には、例えば、前記した糖(水溶液)やグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール(水溶液)をそれぞれ用いると安定に長期間保存することができる。糖と多価アルコールとを組み合わせて用いてもよい。脂質膜構造体が水系溶媒に分散した形態における糖又は多価アルコールの濃度は特に限定されないが、脂質膜構造体が水系溶媒に分散した状態において、例えば、糖(水溶液)は、2〜20%(W/V)が好ましく、5〜10%(W/V)がさらに好ましい。また、多価アルコール(水溶液)は、1〜5%(W/V)が好ましく、2〜2.5%(W/V)がさらに好ましい。水系溶媒(分散媒)として、緩衝液を用いる場合には、緩衝剤の濃度が5〜50 mMが好ましく、10〜20 mMがさらに好ましい。水系溶媒(分散媒)における脂質膜構造体の濃度は特に限定されないが、脂質膜構造体における脂質総量の濃度は、0.1 mM〜500 mMが好ましく、1 mM〜100 mMがさらに好ましい。
【0049】
本発明の脂質膜構造体には薬剤、核酸等を保持させることができるが、特にsiRNAやタンパク質をコードしているDNA、RNA等の核酸を保持させることが好ましい。ここで「保持」とは、薬物や核酸等が脂質膜構造体の脂質膜の中、表面、内部、脂質層中、及び/又は脂質層の表面に存在することを意味する。脂質膜構造体が、例えばリポソームなどの微粒子である場合には、微粒子内部に薬剤や核酸等を封入することもできる。
【0050】
脂質膜構造体に保持させるべき薬剤や核酸等の量は特に限定されず、それらの薬効を生体(細胞)内で有効に発揮させるのに充分な量であればよく、それらの種類も特に限定されない。
【0051】
薬剤としては、例えば、塩酸イリノテカン、塩酸ノギテカン、エキサテカン、RFS-2000、Lurtotecan、BNP-1350、Bay-383441、PNU-166148、IDEC-132、BN-80915、DB-38、DB-81、DB-90、DB-91、CKD-620、T-0128、ST-1480、ST-1481、DRF-1042、DE-310等のカンプトテシン誘導体、ドセタキセル水和物、パクリタキセル、IND-5109、BMS-184476、BMS-188797、T-3782、TAX-1011、SB-RA-31012、SBT-1514、DJ-927等のタキサン誘導体、イホスファミド、塩酸ニムスチン、カルボコン、シクロホスファミド、ダカルバジン、チオテパ、ブスルファン、メルファラン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、6−メルカプトプリンリボシド、エノシタビン、塩酸ゲムシタビン、カルモフール、シタラビン、シタラビンオクホスファート、テガフール、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、リン酸フルダラビン、アクチノマイシンD、塩酸アクラルビシン、塩酸イダルビシン、塩酸エビルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸ブレオマイシン、ジノスタチンスチマラマー、ネオカルチノスタチン、マイトマイシンC、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、エトポシド、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、硫酸ビンブラスチン、塩酸アムルビシン、ゲフィニチブ、エキセメスタン、カペシタビン、TNP-470、TAK-165、KW-2401、KW-2170、KW-2871、KT-5555、KT-8391、TZT-1027、S-3304、CS-682、YM-511、YM-598、TAT-59、TAS-101、TAS-102、TA-106、FK-228、FK-317、E7070、E7389、KRN-700、KRN-5500、J-107088、HMN-214、SM-11355、ZD-0473等の抗腫瘍剤を挙げることができる。
【0052】
核酸は、オリゴヌクレオチド、DNA又はRNAのいずれでもよく、インビボ特に標的細胞の核内で発現することができる形態にある核酸であることが好ましく、特に悪性腫瘍の遺伝子治療用に用いられる核酸であることが好ましい。遺伝子治療用核酸としては、悪性腫瘍における血管新生や細胞増殖に関わるアンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、shRNA、siRNA、酵素やサイトカイン等の生理活性タンパク質をコードする核酸等を挙げることができる。
【0053】
脂質膜構造体が核酸を保持する場合、当該核酸を標的細胞内に効率的に導入するために、脂質膜構造体の構成成分として核酸導入機能を有する化合物を加えることが好ましい。このような化合物としては、O,O'-N-ジドデカノイル-N-(α−トリメチルアンモニオアセチル)-ジエタノールアミンクロリド、O,O'-N-ジテトラデカノイル-N-(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジエタノールアミンクロリド、O,O'-N-ジヘキサデカノイル-N-(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジエタノールアミンクロリド、O,O'-N-ジオクタデセノイル-N-(α−トリメチルアンモニオアセチル)−ジエタノールアミンクロリド、O,O',O’’-トリデカノイル-N-(ω−トリメチルアンモニオデカノイル)アミノメタンブロミド及びのる[α−トリメチルアンモニオアセチル]−ジドデシル-D-グルタメート、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアンモニウムトリフルオロアセテート、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、3-β-[n-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール等を挙げることができる。これらの核酸導入機能を有する化合物は、脂質膜構造体の膜の中、表面、内部、脂質層中及び/又は脂質層の表面に存在(結合)している形態が好ましい。
【0054】
また、脂質膜構造体には、悪性腫瘍細胞を特異的に認識する抗体を保持させておいてもよい。抗体としてはモノクローナル抗体が好ましい。抗体は、例えば、単一のエピトープに対する1種類のモノクローナル抗体を用いてもよいが、各種のエピトープに対する特異性を持つ2種以上のモノクローナル抗体を組み合わせて用いてもよい。1価抗体又は多価抗体のいずれを用いてもよい。天然型(intact)分子又はそのフラグメント若しくは誘導体を用いてもよい。例えば、F(ab')2、Fab'及びFabなどのフラグメントを用いてもよく、少なくとも二つの抗原又はエピトープ (epitope)結合部位を有するキメラ抗体若しくは雑種抗体、又はクワドローム(quadrome), トリオーム(triome)などの二重特異性組換え抗体、種間雑種抗体、抗イディオタイプ抗体、さらには化学的に修飾あるいは加工などがされた誘導体を用いることもできる。公知の細胞融合又はハイブリドーマ技術や抗体工学を適用し、合成あるいは半合成技術を使用して得られた抗体、抗体生成の観点から公知である従来技術を適用し、DNA 組換え技術を用いて調製される抗体、あるいは標的エピトープに関して中和特性を有する抗体や結合特性を有する抗体を用いてもよい。
【0055】
薬剤及び/又は核酸を保持する本発明の脂質膜構造体は、好ましくは悪性腫瘍の治療のための医薬組成物として用いることができる。本発明の医薬組成物の存在形態及びその製造方法は特に限定されず、上記の脂質膜構造体と同様の形態として調製することが可能である。例えば、形態としては、混合乾燥物形態、水系溶媒に分散した形態、さらにこれを乾燥させた形態や凍結させた形態を挙げることができる。
【0056】
混合乾燥物形態は、例えば、脂質膜構造体の構成成分と薬剤及び/又は核酸とを一旦クロロホルム等の有機溶媒で溶解させて混合物を得て、次にこれをエバポレータによる減圧乾固や噴霧乾燥機による噴霧乾燥に付することにより製造することができる。脂質膜構造体と薬剤及び/又は核酸とを含む水系溶媒に分散した形態の医薬組成物の製造方法としてはいくつかの方法が知られており、脂質膜構造体における薬剤及び/又は核酸の保持様式や混合物の性状などに応じて、下記のように適宜の製造方法を選択することができる。
【0057】
製造方法1
上述の混合乾燥物に水系溶媒を添加し、さらにホモジナイザー等の乳化機、超音波乳化機、高圧噴射乳化機等による乳化を行い製造する方法である。大きさ(粒子径)を制御する場合には、さらに孔径のそろったメンブランフィルターを用いて、高圧力下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。この方法の場合、まず、脂質膜構造体の構成成分と薬剤及び/又は核酸との混合乾燥物を作るために、脂質膜構造体、薬剤及び/又は核酸を有機溶媒に溶解する必要があるが、薬剤及び/又は核酸と脂質膜構造体の構成成分との相互作用を最大限に利用できる長所がある。すなわち、脂質膜構造体が層状構造を有する場合にも、薬剤及び/又は核酸は多重層の内部にまで入り込むことが可能であり、この製造方法を用いると薬剤及び/又は核酸の脂質膜構造体への保持率を高くできる長所がある。
【0058】
製造方法2
脂質膜構造体の構成成分を有機溶媒で一旦溶解後、有機溶媒を留去した乾燥物に、さらに薬剤及び/又は核酸を含む水系溶媒を添加して乳化を行い製造する方法である。大きさ(粒子径)を制御する場合には、さらに孔径のそろったメンブランフィルターを用いて、高圧力下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。脂質膜構造体がリポソームの場合、内水相部分にも薬剤及び/又は核酸を保持できる長所がある。
【0059】
製造方法3
水系溶媒に既に分散したリポソーム、エマルション、ミセル、又は層状構造物などの脂質膜構造体に、さらに薬剤及び/又は核酸を含む水系溶媒を添加して製造する方法である。対象となる薬剤及び/又は核酸としては、水溶性のものを利用できる。脂質膜構造体としてリポソームを用いた場合、この製造方法3を用いると、薬剤及び/又は核酸がリポソーム粒子同士の間に挟まったサンドイッチ構造(一般的には複合体あるいはコンプレックスと呼ばれている。)を形成することが知られている。この製造方法では、脂質膜構造体単独の水分散液をあらかじめ製造するため、乳化時における薬剤及び/又は核酸の分解等を考慮する必要がなく、大きさ(粒子径)の制御もし易い。したがって、製造方法1や製造方法2に比べて比較的容易に製造することができる。
【0060】
製造方法4
水系溶媒に分散した脂質膜構造体を製造して乾燥することにより得られた乾燥物に、さらに薬剤及び/又は核酸を含む水系溶媒を添加して製造する方法である。製造方法3と同様に対象となる薬剤及び/又は核酸としては、水溶性のものを利用できる。製造方法3との相違点は、脂質膜構造体と薬剤及び/又は核酸との存在様式にあり、この製造方法4では、水系溶媒に分散した脂質膜構造体を一旦製造した上でさらに乾燥させた乾燥物を製造することから、この段階で脂質膜構造体は脂質膜の断片として固体状態で存在する。この脂質膜の断片を固体状態に存在させるためには、前記したように水系溶媒に、さらに糖(水溶液)、好ましくはショ糖(水溶液)や乳糖(水溶液)を添加した溶媒を用いることが好ましい。ここで、薬剤及び/又は核酸を含む水系溶媒を添加すると、固体状態で存在していた脂質膜の断片は水の侵入とともに速やかに水和し始め、脂質膜構造体を再構築することができる。この時、薬剤及び/又は核酸が脂質膜構造体内部に保持された形態の構造体が製造できる。
【0061】
製造方法3では、薬剤及び/又は核酸が高分子の場合には、薬剤及び/又は核酸は脂質膜構造体内部には入り込めず、脂質膜構造体の表面に結合した存在様式をとるが、製造方法4はこの点で大きく異なる。すなわち、この製造方法4は、脂質膜構造体単独の分散液をあらかじめ製造するため、乳化時の薬剤及び/又は核酸の分解を考慮する必要がなく、大きさ(粒子径)の制御もし易い。従って、製造方法1や製造方法2に比べて比較的製造が容易である。また、この他に、一旦凍結乾燥又は噴霧乾燥を行うため、製剤(医薬組成物)としての保存安定性を保証し易く、乾燥製剤を薬効成分及び/又は核酸の水溶液で再水和しても大きさ(粒子径)を元に戻せること、高分子の薬剤及び/又は核酸であっても、脂質膜構造体内部に薬剤及び/又は核酸を保持させ易いことなどの長所がある。
【0062】
脂質膜構造体と薬剤及び/又は核酸との混合物が水系溶媒に分散した形態を製造するための他の方法としては、リポソームを製造する方法としてよく知られた方法、例えば逆相蒸発法などを採用できる。大きさ(粒子径)を制御する場合には、孔径のそろったメンブランフィルターを用いて、高圧力下でイクストルージョン(押し出し濾過)を行えばよい。また、上記の脂質膜構造体と薬剤及び/又は核酸との混合物が水系溶媒に分散した分散液をさらに乾燥させる方法としては、凍結乾燥や噴霧乾燥等を挙げることができる。この時の水系溶媒としては、上述の糖(水溶液)、好ましくはショ糖(水溶液)や乳糖(水溶液)を添加した溶媒を用いることが好ましい。脂質膜構造体と薬剤及び/又は核酸との混合物が水系溶媒に分散した分散液をさらに凍結させる方法としては、通常の凍結方法が挙げられるが、この場合の水系溶媒としては、糖(水溶液)や多価アルコール(水溶液)を添加した溶媒を用いるのが好ましい。
【0063】
製造方法5
抗体を脂質膜構造体の表面に保持させた脂質膜構造体は、上記の製造方法1〜4に準じて、脂質膜の構成成分と薬剤及び/又は核酸とを用いて脂質膜構造体を製造し、次いで抗体を添加することで、抗体が脂質膜構造体の膜の表面に存在(結合)する形態の組成物を製造することができる。
【0064】
製造方法6
抗体を脂質膜構造体の表面に保持させた脂質膜構造体は、上記の製造方法1〜4に準じて、脂質膜の構成成分と薬剤及び/又は核酸とを用いて脂質膜構造体を製造し、次いで、抗体及び抗体中のメルカプト基と反応し得る脂質誘導体を添加することで、抗体が脂質膜構造体の膜の表面に存在(結合)する形態の組成物を製造することができる。
【0065】
本発明の脂質膜構造体の調製において配合し得る脂質は、使用する薬剤及び/又は核酸の種類などに応じて適宜選択すればよいが、例えば、抗腫瘍剤を用いる場合には、抗腫瘍剤1質量部に対して、総脂質として0.1〜1000質量部が好ましく、0.5〜200質量部がより好ましい。また、核酸を用いる場合には、核酸1μgに対して総脂質として1から500 nmolが好ましく、10から200 nmolがより好ましい。
【0066】
薬剤及び/又は核酸を保持した脂質膜構造体を含む本発明の医薬組成物は、特に悪性腫瘍の治療に有用である。本発明の医薬組成物により治療可能な悪性腫瘍としては、例えば、線維肉腫、扁平上皮癌、神経芽細胞腫、乳癌、胃癌、肝細胞癌、膀胱癌、甲状腺腫瘍、尿路上皮癌、グリア芽細胞腫、急性骨髄性白血病、膵管癌及び前立腺癌等を挙げることができるが、これらに限定されることはない。また、本発明の医薬組成物をヒト等の動物や実験用細胞に投与すると、腫瘍内部における血管新生先端部位に薬剤及び/又は核酸を効率的に送達することができる。腫瘍内部における血管新生先端部位としては、ruffling edgeの内皮細胞(endothelial
cells)などを挙げることができるが、これに限定されることはない。
【0067】
いかなる特定の理論に拘泥するわけではないが、本発明の医薬組成物をヒトを含む哺乳類動物に投与すると、血中においてはポリアルキレングリコールの存在により優れた血中滞留性が得られ、一方、本発明のポリペプチドにより脂質膜構造体の核内移行能が活性化され、本発明の脂質膜構造体に保持される薬剤及び/又は核酸が、標的細胞特に悪性腫瘍細胞により取り込まれ易くなることにより、該細胞に対して薬剤及び/又は核酸の効果を発揮させることができる。
【0068】
本発明の脂質膜構造体を含む医薬組成物の投与方法は特に限定されず、経口投与又は非経口投与のいずれも選択可能である。経口投与の剤形としては、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、カプセル剤、内服液剤等を挙げることができ、非経口投与の剤形としては、例えば、注射剤、点滴剤、点眼剤、軟膏剤、坐剤、懸濁剤、パップ剤、ローション剤、エアゾール剤、プラスター剤等を挙げることができる。これらのうち注射剤又は点滴剤が好ましく、投与方法としては、静脈注射、動脈注射、皮下注射、皮内注射などのほか、標的とする細胞や臓器に対しての局所注射を挙げることができる。本発明の医薬組成物の投与量及び投与期間などは特に限定されず、有効成分として作用する薬剤及び/又は核酸の種類や保持量、脂質膜構造体の種類、治療対象疾患の種類や患者の体重、年齢など、種々の条件に応じて適切な投与量及び投与期間を適宜選択可能である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【0070】
<実施例1>配列番号1〜3のポリペプチドで修飾されたリポソーム
(1)封入される核酸の調製
ルシフェラーゼをコードしているプラスミド(pDNA、BD Biosciences Clontech社製)をローダミンでラベル化し、10mM HEPES緩衝液に0.1mg/mLとなる様に溶解した。このpDNA溶液に、0.131mg/mL(10mM HEPES緩衝液)のプロタミン(Protamine)溶液100μLを攪拌しながら少量ずつ滴下して、プロタミンとpDNAのコンパクション体を調製した(N/P比は2.0)。
【0071】
(2)PEGによるポリペプチドの修飾
ペプチドシンセサイザーを用いて配列番号1〜3の各アミノ酸配列からなるポリペプチド(ポリペプチド1〜3)を合成、精製し、DMSO溶液に4 mMとなるように溶解した。ポリペプチド1〜3に4mMのDSPE-PEG2000-Mal(SUNBRIGHT社)を加えて、30℃で24時間反応させて、PEGで修飾されたポリペプチド1〜3(DSPE-PEG2000-peptideとする)を調製した。本反応液を凍結乾燥させた後、水に溶解し、2mM溶液とした。
【0072】
(3)リポソームの作製
1mM DOPE
85.6mL及び1mM PA 24.4mLをDOPE:PA=7:2となるようにガラス試験管に加え、さらに1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[amino(polyethylene
glycol)-2000](SUNBRIGHT社のDSPE-020CN、以下、DSPE-PEG2000とする)の0.1mM(水溶液)及びDSPE-PEG2000-peptides(0.1 mM)を加え、さらに全量が200μLとなるようにクロロホルムを加えた後、デシケーターで減圧乾燥して溶媒を留去させて脂質膜を得た。この脂質膜に、総脂質濃度が0.55mMとなるように(1)のコンパクション体と、特開2003-343857に記載の方法で合成したステアリル化オクタアルギニン(STR-R8)2mg/mL水溶液を総脂質の10mol%となるように添加し、室温で10分間静置し水和させた後、ソニケーターで1分間超音波処理して、本発明のリポソーム1〜3を作製した。また、上記の組成においてDSPE-PEG2000-peptidesを同量のDSPE-PEG2000に代えたコントロールリポソームを作製した。
【0073】
<実施例2>HeLa細胞の形質転換とルシフェラーゼ活性の測定
(1)形質転換細胞の作製
HeLa細胞を4×104cells/ウェルとなるように24 ウェルプレートに播種し、DMEM培地で24 時間培養した。培養後の細胞をPBS 250 mLで洗浄した後、実施例1で作製したリポソーム1〜3とコントロールリポソーム(PEG2000の修飾量はそれぞれ0.5%、1%、3%、5%)をpDNA量が0.4 mg/wellとなる様にDMEM に添加した後、各ウェルに加えて37℃、5% CO2で3時間インキュベーションした。インキュベーション後に細胞をPBS 250 mLで洗浄した後、DMEM 500 mLを各ウェルに添加し、37 ℃ 、5% CO2でさらに3時間インキュベーションして、形質転換細胞を作製した。
【0074】
(2)発現量の測定
(1)の形質転換細胞をPBS 250μLで洗浄した後、Reporter Lysis Buffer(Promega社)75μLを各ウェルに添加し、-80℃のフリーザーに移して凍結した。凍結させたサンプルを解凍させた後、セルスクレーパーを用いて細胞をはがし、1.5mLサンプルチューブに回収した。回収した細胞溶解液を15,000 rpm、4℃、5min遠心分離し、その上清45μLを回収した。得られた上清を用いてルシフェラーゼ活性測定(RLU/mL)を測定した。さらにBCA法によるタンパク定量(mg/mL)を行い、単位タンパク質量当たりのルシフェラーゼ活性(RLU/mg protein)を算出し、コントロールリポソームとリポソーム1〜3のルシフェラーゼ発現量を比較した。その結果を図1に示す。
【0075】
図1に示される様に、本発明のポリペプチドで修飾されていないコントロールリポソームでは、PEGの修飾濃度(0.5%〜5%)に依存してルシエラーゼ活性は減少するのに対して、本発明のポリペプチドで修飾されたリポソーム1〜3では、ルシフェラーゼ活性の減少が抑制されることが確認された。特に、ポリペプチド1で修飾したリポソーム1におけるルシフェラーゼ活性の減少がもっとも抑制されていた。発現量としては、3%PEG修飾時における非修飾リポソームとポリペプチド1で修飾した修飾リポソームとの発現量には約500倍の差が認められた。
【0076】
<実施例3>配列番号4のポリペプチドで修飾されたβアクチンsiRNA封入リポソーム
(1)siRNAコア粒子封入の作製
STR-R8(クラボウ社製)水溶液を4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic
acid)(以下、HEPES)緩衝液で1.87 mg/mLに希釈し、1.6mg/mLとなるように希釈したボルテックスによる攪拌下のヒトβアクチン遺伝子(Sigma社製)水溶液に対して少しずつ滴下後、さらにHEPES緩衝液を用いてさらに4倍希釈して、βアクチンsiRNAコア粒子を作製した。また、上記βアクチンsiRNAをホタルルシフェラーゼ遺伝子に対するsiRNA(北海道システムサイエンス社製)に代えて、ルシフェラーゼsiRNAコア粒子を作製した。
【0077】
(2)siRNA封入MENDの作製
前記Bioor. Med. Chem.、1997年、第5巻、第1883-1891項に記載の方法に従って、配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドsGALA
のコレステロール誘導体(chol-sGALA)を合成した。同時にGALAのコレステロール誘導体(chol-GALA)も合成した。次に、正電荷脂質を帯びた脂質1,2-dioleoyl-3-trimethylammonium-propane(以下DOTAP、Avanti
Polar Lipid社製)、中性脂質1,2-dioleoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine(以下DOPE、Avanti
Polar Lipid社製)、コレステロール(以下chol、Avanti Polar Lipid社製)が40:30:30となるようにガラス試験管に添加し、減圧下で溶媒を留去することでPEGを含まない脂質膜aを作製した。また、上記のDOTAP/DOPE/cholに対してモル比で2、4%相当量のchol-sGALAを添加することで、sGALAを含むがPEGを含まない脂質膜a-sGALAを作製した。
【0078】
さらに、DOTAP/DOPE/cholに対してモル比で2%、5%もしくは10%となるように2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-[amino(polyethylene
glycol)-2000](以下PEG2000-DSPE、Avanti Polar Lipid社製)を混合し、DOTAP/DOPE/chol=40:30:30となるようにガラス試験管に添加し、減圧下で溶媒を留去することでPEGを含む脂質膜bを作製した。さらに、上記のDOTAP/DOPE/cholに対してモル比で2、4%相当量のchol-sGALAを添加することで、sGALA及びPEGを含む脂質膜b-sGALAを作製した。
【0079】
上記各脂質膜に(1)で作製したβアクチンsiRNAコア粒子を含むHEPES緩衝液700μLを添加した後、室温で10分間静置することで水和させ、30秒間超音波処理を行うことで、βアクチンsiRNAが封入された、PEG・sGALAいずれも含まないMEND(MENDa)、PEGは含まないがsGALAを含むMEND(MENDa-sGALA)、PEGを含むがsGALAを含まないMEND(MENDb)、PEG・sGALAいずれも含むMEND(MENDb-sGALA)を作製した。
【0080】
また、上記と同様の操作をルシフェラーゼsiRNAコア粒子についても行い、ルシフェラーゼsiRNAが封入された、PEG・sGALAいずれも含まないMEND(MENDc)、PEGを含まないがsGALAを含むMEND(MENDc-sGALA)、PEGは含むがsGALAを含まないMEND(MENDd)、PEG・sGALAいずれも含むMEND(MENDd- sGALA)を作製した。
【0081】
(3)形質転換細胞の作製とsiRNAによる遺伝子発現抑制効果
HeLa細胞を12ウェルプレートに1×105cells/wellで播種し、24間後にPBSでウェルを洗浄し、(2)で作製した各MENDを添加したopti-MEM(Invitrogene社製)を1mL(siRNA濃度:120nM)添加した後、37℃で3時間インキュベーションした。インキュベーション後のopti-MEMを除去し、10%血清含有DMEM
1mL/wellを添加し、37℃で21時間にインキュベーションした。インキュベーション後、Qiagen社のtotal RNA抽出キットの推奨プロトコルに従って細胞を溶解させ、ライセートからtotal RNA抽出を行い、ABI社の逆転写キットを用いてtotal
RNAをcDNAに逆転写した。その後、cDNA
10ng相当量を用いて定量的PCR法によって、mRNA発現レベルを測定した。
【0082】
βアクチンsiRNAコア粒子を封入した各MENDを導入した細胞でのβアクチンmRNA発現量を測定し、ルシフェラーゼsiRNAコア粒子を封入した各MENDを導入した細胞でのmRNA発現量をコントロールとした際のノックダウン効果を図2に示した。PEGを含むがsGALAを含まないMEND(MENDa-sGALA、図2の-sGALA)のノックダウン活性は大きく減少したが、PEG・sGALAいずれも含むMEND(MENDd-sGALA、図2の+sGALA)のノックダウン活性は大きく上昇し、PEG10%修飾時においてもヒトβアクチンmRNAの発現が60%以上減少することが確認された。
【0083】
<実施例4>体内動態評価
実施例3の(1)において、[32P]-ATPで標識したβアクチンsiRNAを用いてβアクチンsiRNAコア粒子を作製した。また、実施例3の(2)における脂質膜の作製において、脂質を含むエタノール溶液に[3H]-cholesteryl
hexadecyl ether (CHE)(Perkin
Elmer社製)をトレーサー量添加することで、脂質膜を[3H]標識した。[32P]-ATP標識βアクチンsiRNAコア粒子と10%PEGを含む[3H]標識脂質膜とを基にして、Chol-GALA(0,1,2,4各%)で修飾されたMEND(GALA-MEND)とChol-sGALA(0,1,2,4各%)で修飾されたMEND(sGALA-MEND)を作製した。
【0084】
上記各MENDにsiRNAが5%(w/v)となるようにグルコースを添加したものを、エーテル麻酔下、23μg siRNA/200μL/mouseの条件で、マウス尾静脈より投与した。投与6時間後にエーテル麻酔下で、心臓より直接血液を採取した。採取した血液のうち50μLをプラスチックバイアルにはかりとり、1mLのSoluene-350を添加し、H2O2を300μL加え30分間ほど室温で静置することで脱色した。この溶液に対してHionic fluor 10mLを添加しよく混合させた後、4℃で一晩静置し、液体シンチレーションカウンターにて[3H]、[32P]のカウントを測定した。また、[3H]、[32P]の投与量を評価するため、投与したMENDサンプル10μLに対してHionic
fluor 10mLを添加して混合させた後、同様に[3H]、[32P]のカウントを測定した(図3)。
【0085】
4%GALA
で修飾されたGALA-MENDでは、脂質、siRNAそれぞれを示す3H、32Pの血中濃度の低下が認められた一方、sGALAで修飾されたsGALA-MENDでは、4%修飾でも3H、32Pの血中濃度に変化はなかった。
【0086】
<実施例5>がんマウスモデルにおける遺伝子発現抑制効果
ヒト繊維芽肉腫由来HT1080細胞を1×106 cells/75μL PBS懸濁液をBALB/cAJcl nu/nu(4週)の背部皮下に27G注射針を用いて移植し、10日間飼育することで作成した。実施例3で作製したMENDbとMENDb-sGALA(sGALA4%)が5% (w/v) となるようにグルコースを添加し、ジエチルエーテル麻酔下で4mg siRNA/kg weight/dayの投与量で24時間おきに4日間連続投与し、最終投与から24時間後にマウスよりがん組織を摘出した。Qiagen社のtotal RNA抽出キットの推奨プロトコルに従ってがん組織を破砕後、ホモジェネートからtotal RNA抽出を行い、ABI社の逆転写キットを用いてtotal
RNAをcDNAに逆転写した。その後、cDNA
10 ng相当量を用い定量的PCR法によって、mRNA発現レベルを測定した。未処理の担癌マウスから抽出したmRNAのβアクチン発現量をコントロールとして遺伝子発現抑制を評価した。その結果を図4に示す。
【0087】
MENDbのノックダウンは40%程度しか認められなかった一方、MENDb-sGALA(4%)では約70%のmRNAの発現を抑制していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)及び/又は(b)のポリペプチド。
(a)配列番号1〜4のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号1〜4のいずれかに記載のアミノ酸配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであって、ポリアルキレングリコールで修飾された脂質膜構造体の核内移行能を促進する活性を有するペプチド。
【請求項2】
ポリアルキレングリコール又はリン脂質が縮合したポリアルキレングリコールで修飾されているポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載のポリペプチドを表面に有する脂質膜構造体。
【請求項5】
さらに、(c)連続した複数個のアルギニン残基を含むポリペプチドをさらに表面に有する、請求項4に記載の脂質膜構造体。
【請求項6】
前記(c)のポリペプチドが4〜20個の連続したアルギニン残基を含むポリペプチドである、請求項5に記載の脂質膜構造体。
【請求項7】
前記(c)のポリペプチドがアルギニン残基のみからなるポリペプチドである、請求項6に記載の脂質膜構造体。
【請求項8】
脂質二重層を構成する総脂質に対するカチオン性脂質の割合が0〜40%(モル比)である、請求項4〜7のいずれかに記載の脂質膜構造体。
【請求項9】
前記(c)のペプチドが疎水性基又は疎水性化合物で修飾されており、前記疎水性基又は前記疎水性化合物が脂質膜に挿入され、前記ペプチドが前記脂質膜から露出している請求項4〜8のいずれかに記載の脂質膜構造体。
【請求項10】
前記疎水性基がステアリル基又はコレステリル基である、請求項9に記載の脂質膜構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−172519(P2011−172519A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39667(P2010−39667)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】