説明

機能性飲料

この発明は、アンチエイジング効果を持つ、水溶性の液体食品に関し、これはレスベラトロール、クエン酸、果糖、赤ワイン用ブドウのポリフェノール抽出物、緑茶抽出物、ビタミンE、ビタミンC、及びナイアシンを含む。少なくとも風味と色合いを出すのに十分な量の赤色系の食用ソフトフルーツの濃縮果汁が処方中に含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水溶液状の液体食品に関するものであり、この食品はその他の成分として、レスベラトロールを含んでおり、所謂「アンチエイジング効果」を持つ。
【0002】
2003年頃から、レスベラトロールが持つ健康上の有益な効果が明らかになっており、そのトランス異性体(以下においては簡略化するため、これらをまとめて「レスベラトロール」と記す)や赤ブドウの抽出物中のレスベラトロールと共に生じる物質が大きな注目を受けている。
【0003】
レスベラトロール(5−[(E)−2−(4−ヒドロキシフェニル)−エテニル]ベンゼン−1,3−ジオール、実験化学式:C1412)はポリフェノールの一種であり、分類上はスチルベン類に属しており、フィトアレキシン基の員である。これはとりわけて活性が高いフリーラジカル・キャッチャーの一つであり、したがって酸化ストレスを最小化することができる。これは、血管を硬化から保護し、癌細胞の成長を抑制する、あるいは癌細胞を殺し、心筋梗塞のリスクを低下させ、老化進行に抗い、寿命を延ばし、抗炎症性であり、コレステロール値を下げ、前立腺癌を予防し、脳卒中のリスクを低下させ、大腸癌を発病するリスクを低下させ、アルツハイマー病発症のリスクを低下させ、そして微生物感染症に対する耐性と抗ウイルス性の特性を具えている。
【0004】
EP1648437A2(WO2005/1002672A2)は、例えば原核細胞でナイアシンのような物質と組合せたレスベラトロールの作用によって、SIRT1のようなサーチュイン遺伝子の発現を促進することや、それによって長命化をもたらすアンチエイジング効果を実現することを提案している。これは、インビトロでのみならず、動物やヒトといった生体の細胞でも起こる。ヒトへの適用は、ここでは例えば癌治療の化学療法におけるアジュバントとして、医療分野でのみ提案されている。
【0005】
US6,368,617B1は、成人の器官組織の酸化ストレス回避用の食餌添加物を提案している。この食餌添加物は、レスベラトロールに加えて、果糖やクエン酸、そして望ましくは粉砕したハーブの混合物も含んでいる。この食餌添加物は、好ましくは、粉末状、典型的には細かい緑色の粉として提供され、摂取に際して水で溶いて飲用される。
【0006】
DE10223262A1は、コーヒーの代替物について言及している。これはコーヒーの活性化効果を有することは述べられているが、例えば中毒並の依存症を引き起こすといった有害な副作用については触れられていない。この水溶性組成物は、イチョウの成分に加えて、個別に提案された例では緑茶抽出物や、グレープシードの抽出物と、果糖を含有している。
【0007】
WO02/081651A2においては、赤ワインに含まれるポリフェノールがもたらす心臓循環器系における有益な特性を有すると言われる、アルコールを含有しない飲料が提案されている。レスベラトロールに加えて、この飲料には緑茶から抽出されたカテキンも含まれている。
【0008】
WO2004/105517A1は、炎症を抑制する飲料について言及しており、これは、レスベラトロールに加えて、クエン酸、ビタミンE、ビタミンC、及びベータ−カロチンも含有している。
【0009】
US2006/0251608A1は、12時間の時間差で摂取される二つの異なる錠剤と、局所的に塗付されるクリームで構成された、剤形の組み合わせについて言及している。この剤形の組み合わせは、老化して皺の出た皮膚を治癒する働きをする。第一の錠剤は、とりわけ、L−カルニチン、赤ワイン用ブドウからのポリフェノール抽出物、赤色液果類の濃縮物、緑茶抽出物、ビタミンC、ビタミンE、及びベータ−カロチンを含有している。第二の錠剤は、とりわけ、レスベラトロール、ユビキノン(コエンザイムQ10)、及びセレンを含有している。
【0010】
WO2007/049796A2は、アンチエイジング組成物を提案しており、ここでは、レスベラトロールと赤ワイン用ブドウの葉の抽出物が用いられている。ゼリー用および飲料用の処方が提唱されており、さらに、クエン酸と果糖が含まれている。このアンチエイジング効果は、孤立した態様でレスベラトロールに基づいており、したがって比較的狭い。保存可能であり、取り扱いが煩雑でない飲料として使用するには、追加の添加物が必要となる。
【0011】
US2007/0122502A1は、女性用、とりわけ35歳以上の女性向けのアンチエイジングジュースを提案しており、これはノニ果実と、キンポウゲ科の「ブラック・コホッシュ」(Cimicifuga racemosa;ニワトコの一種で、医薬品としてエストロゲンに似た性質を持つ)からなる成分のほか、クロム化合物や、カルシウム化合物に加えて、植物由来のトランス−レスベラトロールも含有している。味の面で問題が有る添加物があるにもかかわらず飲用可能なジュースにするには、果汁とクエン酸のような添加物が更に加えられる。
【0012】
WO2007/112366A2では、レスベラトールの多面的な健康増進作用によって、様々な植物から得られるレスベラトロールを動物の飼料に用いることを提案している。人間に適用可能な処方については論じられていない。
【0013】
この従来技術に関する知見をもとに、発明者は、レスベラトロールをベースにした水溶性で液状の飲用可能な飲用可能な食品としての処方を提供することを目的としており、これは健康増進効果とりわけレスベラトロールのアンチエイジング効果を最適に発揮させ、更に、アンチエイジング効果を有するその他の物質を含有する。
【0014】
更に、この食品は取り扱いが容易であることが重要である。すなわち:
含有される有効成分は、混合物として、充分に水溶性があり、したがって、凝集及び/又はパッケージへの付着や沈着を起さないものでなくてはならず、
この食品は、保存剤と安定化剤を含まない完成した飲料として、冷蔵しない状態でも、良好な保存品質を有し、容易に輸送できるものでなければならない。
【0015】
外観(色や粘性など)、香り、味、保存寿命、分離・分解に対する安定性その他、といった食品として使用する上での一般的な利点である本質的な特性は、この目的のために後から調合される特殊な食品添加物によるものではなく、アンチエイジング効果にとって必要な、可能な限り自然に近い成分によって達成されるべきである。
【0016】
この目的を達成するためには、冒頭で述べた文献のそれぞれの特徴に一致する出発点となっていて、レスベラトロールの他に、望ましくは、クエン酸、果糖、赤ワイン用ブドウからのポリフェノール抽出物、緑茶抽出物、ビタミンE、ビタミンC、及びナイアシンが含有されている。この処方に味を与える量の赤色系食用液果の濃縮果汁が加えられる。好ましくは、この赤色系食用液果の濃縮果汁は、この処方の色にも影響する。
【0017】
赤色系液果として考えられるものには、例えば、苺、ラズベリー、ブラックベリー、クランベリー、ビルベリー、赤スグリ、サクランボ、サワーチェリー、ニワトコ、赤ワイン用ブドウがある。
【0018】
赤色系液果は、レスベラトロールの必須の源であり、同様の望ましい有効成分を形成する赤ワイン用ブドウを容易に連想させるので、一面として、見栄えの理由から好ましい。更には、これらの液果は風味の点で圧倒的に好まれるものである。
【0019】
しかしながら、赤色系液果の本質的に重要なことは、これらの液果が、実際に(周知のように)血管系に有益な効果がある成分を現実に有することである。
【0020】
ニワトコやビルベリーのような赤色系液果は、既に数百年来、欧州と北米において自然治癒に利用されている。インディアナ医科大学での現在の研究は、その成分であるフラボノイド、ポリフェノール、及びアントシアニンの効用を今や実証済みである。とりわけ、果実の赤色および青色の彩色を司っているアントシアニンは、ヒトの健康への有益な効能が認められている。
【0021】
ニワトコと黒スグリとの混合濃縮果汁が特に有用であることが判明した。これらは、好ましい色に加えて、ポリフェノール、アントシアニン、及びフラボノイドを含有している。アントシアニンは、ニワトコの彩色のように、視覚過程を改善し、炎症を抑え血管を保護する働きをする。加えてこれらは高い抗酸化力があり、心筋梗塞のリスクを著しく低減する。
【0022】
ニワトコは、細胞膜を保護することによってフリーラジカルによる細胞老化プロセスを遅らせると共に、抗酸化物として作用する。ニワトコはビタミンC、ビタミンB、フルーツ酸、精油(軽度の発汗促進及び去痰作用を持つ)、フラボノイド、および発色性のアントシアニンに富んでいる。ニワトコは、風邪や腎臓疾患および膀胱疾患そして腹痛の治癒を助ける。更に黒ニワトコは、紫色の色素であるニワトコシアニン(sambucyanin)を含有しており、これは植物二次代謝産物であり、抗酸化物質として癌や心循環疾患のリスクを下げる。
【0023】
赤スグリは、水分の他、タンパク質、炭水化物、脂肪酸を含み、また、ミネラル、アントシアニン、フラボノイド、及びカテキン(緑茶のような)を含んでいる。更に、ビタミンC、クエン酸、及びβ−カリオフィレンも存在する。β−カリオフィレンは、CBカンナビノイドの一つであり、炎症や痛みを抑制するほか、アテローム性動脈硬化や骨粗しょう症に対する抑制作用を持つ。
【0024】
したがって、赤色系液果を用いることはまた、視覚的連想に関する理由や嗜好上の理由ばかりでなく、学術的に正当な健康上の理由からも望ましい。
【0025】
前記物質に加えて、この食品の更なる成分として望ましいものは次のとおりである。
【0026】
ベータ・カロチン:これはビタミンAの前駆体であり、必要な場合にのみ体内でビタミンAに転換するもので、したがって、大量に摂取しても無害である。ビタミンAは視覚過程や皮膚構造の形成に重要であり、血球の形成を促進し、タンパク質合成の際に新陳代謝に重要な役割を果たす。更に、カロチンは赤色の食品用色素として認められている。
【0027】
L−カルニチン:これは天然由来のビタミンに似た物質である。これはヒト、動物、及び植物の細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たす。L−カルニチンは、運動と組み合わせて脂肪燃焼物質として作用する。
【0028】
ユビキノン コエンザイム Q10:これはビタミンKおよびビタミンEと構造的に関連している。これはミトコンドリア内で細胞膜呼吸鎖における電子キャリアと陽子キャリアとして用いられ、抗酸化物質として機能する。ユビキノンの欠乏は、老人性ユビキノン濃度の減少、肉体疲労、ストレス、病的なアルコールおよびニコチンの過剰摂取、及び疾病によって発生する。いくつかのコレステロールを低下させる薬剤(いわゆる「スタチン」)は、生体が本来持っているユビキノンの体内合成を抑制してしまう。栄養補助食品としてユビキノンを摂取することによって、これらの欠乏症を回避することができる。
【0029】
セレン:これはフリーラジカル・キャッチャーとして、細胞膜を酸化による破壊から保護する上で重要な役割を果たす。
【0030】
ナイアシン(ビタミンB3)は、ビタミンCとビタミンEとの協働させることで一層優れた効能を発し、サーチュイン遺伝子でのレスベラトロールの遺伝子発現促進作用を高める。
【0031】
また、その他の効果と相まってアンチエイジング効果を相当に改善する働きをする。
【0032】
ナイアシンは、コレステロールおよびトリグリセリンを低下させる効果を有し、組織中の脂肪蓄積を減少させ、脳機能を改善する赤血球とその酸素搬送能力の機能を改善する。ナイアシンは、心血管性のリスクを低減し、抗動脈硬化因子として作用する。ナイアシンは、新陳代謝において200の反応に関与している。通常、酸化によって損傷が生じた細胞を再生、保護、修復して、総コレステロールを下げ、とりわけ肝臓内で抗酸化作用を発揮し、エネルギーの生成、血糖調節、及びシトクロムP450システムを介しての環境損傷物質からの解毒に重要な役割を果たす。ナイアシンは、アミノ酸代謝、炭水化物−脂肪代謝、ステロイド代謝、ビタミン代謝、及びエネルギー代謝において、多様な同化機能と異化機能に介入する。
【0033】
望ましい処方例は以下のとおりである。
果糖 110g
黒スグリ濃縮果汁 20g
ニワトコ濃縮果汁 14g
クエン酸 7g
L−カルニチン 1g
赤ワイン用ブドウポリフェノール抽出物 200mg
緑茶抽出物 200mg
ビタミンC 120mg
レスベラトロール 100mg
ナイアシン 36mg
ビタミンE 36mg
ユビキノン コエンザイムQ10 10mg
ベータ・カロテン 4mg
セレン 1.5μg
【0034】
この処方は、総量を1kgとして、これに満たない分量を補う水に問題無く溶解する。これは常温で問題無く保存および輸送が可能である。成分の種類が多く、部分的には互いに異種のものである点を考慮すると、干渉するような分解作用や、沈殿あるいは好ましくないその他の相互作用などの異変が生じないことは驚くべきである。
【0035】
水に溶けた態様において、この処方は、美味しく、食欲をそそる、大変健康的な完成型の飲料を具現しており、性別や年代を問わず問題無く誰もが毎日飲むことができる。この飲料は、相応の成分を合わせて計量し、攪拌することによって容易に作ることができ、その性質によって、従来の飲料販売チャンネルを経由して冷蔵せずに配送および販売することが可能である。果糖以外に、ザラメ糖(スクロース)が更に加えられていなければ、この飲料は糖尿病患者にも問題なく適合する。
【0036】
本発明の課題に適合することに加えて、この食品には以下のような更なる利点がある。
口当たりを良くするのに必要な物質を別途必要としないことである。「口当たり」は、例えば、食品についての以下の技術的特性に関連する:濃度、付着性、粘性、水分特性、粒状性。
この食品は、果糖以外に、人工的あるいは天然の甘味料を必要としないため、糖尿病患者に適している。
この食品は、乳糖不耐症に罹っているヒトに適している。
この食品は、ゼラチンを必要としない。
この食品は、ペットボトルに詰めて容易に保存し、搬送することができる。
この食品は、約85%が清浄な水で構成されており、フルーティなリフレッシュ感がある味であるため、喉の渇きを癒す素晴らしい飲み物である。
様々な成分が互いに相溶しており、これは、それぞれ所与の効果を弱めるということではなく、相互に強化し、あるいは補完し合ったりすることを意味している。このことは、優れて飲用可能であり、非常に扱い易い飲料としての特性のみならず、「アンチエイジング食品」との名に値するだけの食品を作るために、個々の効果について所望の幅があることを意味する。
【0037】
上述の食品はヒトばかりでなく、例えば、馬や犬そして駱駝などその他の哺乳動物に対しても、基本的に同じ有益な効果を有する。この意味で、特許請求の範囲において、「食品」の用語は、ヒトが経口摂取する成分のみでなく、哺乳動物の飼料も意味すると解すべきである。
【0038】
特許請求の範囲は、上述した物質に関するものであり、植物抽出物であるのか、化学的に合成されたものであるのかに関係なく、同様に、類似物であるのか、模造物であるかにも関係がない。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチエイジング効果を有する水溶性の液体食品であって、各成分の1kg当りの各成分の乾燥重量を、それぞれ以下のとおりの量を限度して含有する液体食品において:
物質名 最小 最大
果糖 200g 800g
クエン酸 0g 100g
L−カルニチン 0g 12g
赤ワイン用ブドウ抽出ポリフェノール 0.5g 3g
緑茶抽出物 0g 3g
ビタミンC 0g 2g
レスベラトロール 0.4g 2g
ナイアシン 0g 0.5g
ビタミンE 0g 0.5g
上記成分に加えて、1kg当りの乾燥重量を、以下のとおりの量を限度として以下の物質を含有している:
物質名 最小 最大
赤色系液果濃縮物 100g 300g
ユビキノン コエンザイムQ10 0mg 100mg
ベータ・カロチン 0mg 50mg
セレン 0μg 30μg
ことを特徴とする食品。
【請求項2】
請求項1に記載の食品において、
1kg当りの乾燥重量の限度を以下のとおりとして以下の物質を含有している:
物質名 最小 最大
果糖 680g 760g
赤スグリ濃縮果汁 100g 160g
ニワトコ濃縮果汁 70g 115g
クエン酸 35g 55g
L−カルニチン 5g 8g
赤ワイン用ブドウ抽出ポリフェノール 1.1g 1.5g
緑茶抽出物 1.1g 1.5g
ビタミンC 0.6g 0.9g
レスベラトロール 0.6g 0.7g
ナイアシン 0.2g 0.3g
Q10 45mg 85mg
ベータ・カロチン 20mg 30mg
セレン 0μg 15μg
ことを特徴とする食品。


【公表番号】特表2011−500078(P2011−500078A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530575(P2010−530575)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【国際出願番号】PCT/IB2008/002733
【国際公開番号】WO2009/053802
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510114620)
【氏名又は名称原語表記】ZEHETHOFER,Karl
【Fターム(参考)】