説明

機能的アシルグリセリド

【課題】ヒトおよび動物の栄養の分野に関連し、特定の目的のために改変した、共役リノール酸(CLA)の特定の新規組成物を提供すること。
【解決手段】共役リノール酸を含むアシルグリセリド分子のSN1位およびSN3位、またはSN2位のうちのいずれかの共役リノール酸(CLA)、およびその共役リノール酸を含むアシルグリセリド分子のSN1位およびSN3位、またはSN2位のうちのもう一方の位置における別の脂肪アシル残基の、特定の異性体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、ヒト栄養および動物栄養の分野に関連し、そして特に、共役リノール酸(CLA)の特定の新規組成物に関連する。特に、本発明は、アシルグリセリド分子のSN1位およびSN3位、またはSN2位のいずれかの共役リノール酸およびアシルグリセリド分子のSN1位およびSN3位またはSN2位のもう1つの位置の別の脂肪アシル残基の特定の異性体に関連する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
1978年、ウイスコンシン大学の研究者が、変異誘発を抑制するように思われる調理済み牛肉に含まれる物質の正体を発見した。その物質は、共役二本鎖を有するリノール酸(C18:2)の位置異性体の混合物であることが見出された。c9,t11異性体およびt10,c12異性体が最大量で存在するが、観察される生物学的活性をどの異性体が担うかは、定かではない。9,11異性体は、幾分優先的に摂取され、動物組織のリン脂質画分に取り込まれるように思われるが、より少ない程度に、10,12異性体も摂取されて取り込まれることが、標識摂取研究から着目された(非特許文献1)。
【0003】
共役リノール酸(CLAという)と関連する生物学的活性は、多様かつ複雑である。現在、進行中のいくつかの前臨床研究および臨床研究が、生理学的作用様式および生物学的作用様式を明らかにする可能性があるが、作用機構についてほとんど知られていない。CLAの抗発癌性特徴は十分に述べられてきた。CLAの投与によって、非特許文献2に記載されるように、ラット乳房腫瘍形成が抑制される。Haらの非特許文献1は、マウス噴門洞新形成モデルにおいて同様の結果を報告した。CLAはまた、インビトロで、標的ヒト黒色腫細胞、標的ヒト結腸直腸癌細胞、およびヒト乳癌細胞に対する強力な細胞傷害剤として同定された。最近の主要な総説文献は、個々の研究から得た結論を確認する(非特許文献3)。
【0004】
CLA作用機構は、依然として曖昧であるが、免疫系のいくつかの構成成分が、少なくともインビボで、関係があり得るという証拠がある。特許文献1(Cookら、本明細書中で参考として援用されている)が、CLAを含む食餌を投与することによって、I型過敏症またはIgE型過敏症により媒介される動物におけるアレルギー反応を減衰させる方法を開示する。約0.1%〜1.0%の濃度のCLAはまた、白血球の保存において有効なアジュバントであることが示された。本明細書中に参考として援用されている特許文献2(Cookら)は、遊離酸形態または塩形態のいずれかでのCLAの経口投与または非経口投与の結果、細胞媒介性免疫と関連したCD4リンパ球部分集団およびCD8リンパ球部分集団が増加したことを開示した。外因性腫瘍壊死因子を用いた前処置から生じる有害な作用は、CLAが投与された動物におけるCD4細胞およびCD8細胞の増加または維持によって、間接的に軽減され得る。最後に、特許文献3(本明細書中で参考として援用されている)は、免疫刺激による体重減少および食欲不振の予防におけるCLAの効果を記載する。
【0005】
上述のCLAの潜在的な治療適用および薬理学的適用とは別に、栄養的に食事補助物質としてのCLAの使用に関して、大いに注目されてきた。CLAは、身体組成に対して顕著な一般的効果を発揮し、特に太った組織塊および痩せた組織塊を変更することが見出された。特許文献4(Cookら、本明細書中に参考として援用されている)は、ブタ、マウス、およびヒトに、0.5%CLAを含む食事を与えられた、食事補助物質としてCLAを使用する方法を開示する。各々の種において、脂肪含有量の有意な減少が、タンパク質塊における同時増加とともに観察された。これらの動物において、CLAの添加による食事中の脂肪酸含有量の増加によって、体重は増加しなかったが、体内での太った部分と痩せた部分との再分配に関連していたことは、興味深い。食事における別の興味深い現象は、食餌変換に対するCLA補充の効果である。特許文献5(Cookら、本明細書中に参考として援用されている)は、動物の食餌(鳥類および哺乳類)中へのCLAの組み込みが、食餌変換の効率を増加し、CLA補充動物におけるより多くの体重増加につながることを示すデータを提供した。
【0006】
CLAにおける目的の興味深い重要な源、およびCLAの早期の商業的能力を強調する重要な源は、CLAが、ヒトや動物などに消費される食品および食餌中に天然に存在することである。特に、CLAは、反芻動物由来の産物中に豊富である。例えば、CLAが種々の乳製品で調べられるいくつかの研究が行われた。非特許文献4は、ミルクからヨーグルトにする処理が、CLAの濃縮を生じることを観察した。非特許文献5は、処理温度および乳精添加を合わせて増加すると、プロセスチーズの調製の間にCLA濃度を増加させたことを示した。別の研究において、非特許文献6は、処理条件および貯蔵条件が、認識できるほどにはCLA濃度を減少させないが、彼らは、増加を全く観察しなかったことを報告した。実際に、いくつかの研究によって、季節変化および動物変化が、牛乳のCLA含有量において3倍もの違いを計上し得ることが、示された(非特許文献7を参照のこと)。また、食事の要素が、非特許文献8に記載されているように、CLA含有量の変化に関連付けられた。天然の供給源におけるCLA含有量のこの変化が原因で、所定量の種々の食物の摂取は、個体または動物が、所望の栄養効果を達成するのを保証するための最適量を受けることを保証しない。
【0007】
リノール酸は、生体脂質の重要な構成成分であり、そしてかなりの比率のトリグリセリドおよびリン脂質を含む。リノール酸は、「必須」脂肪酸として公知である。このことは、リノール酸は自己合成され得ないので、動物は、外因性の食事源からリノール酸を摂取しなければならないことを意味する。リノール酸のCLA形態の取り込みは、非共役リノール酸が移動する脂質位置へのCLAの直接置換を生じ得る。しかし、このことは証明されておらず、観察される非常に有用であるが説明はされない効果のうちのいくつかは、非共役リノール酸がさもなければ移動しなかった部位の脂質構造内でのCLAの再配置さえを生じ得る。動物CLAの1つの供給源は、特に乳製品では、ネイティブなリノール酸に対する特定の第1胃細菌の生化学的作用に由来する。これは、まず、リノール酸からCLAへと異性化し、そして次に、CLAを第1胃腔に分泌する。非特許文献9は、第1胃の細菌であるButyrivibrio fibrisolvensを単離した。この細菌は、リノール酸の生体水素添加における中間体として9,11−CLAの形成を触媒する。非特許文献10はさらに、齧歯類の組織中に見られるCLAは、細菌と関連することを見出した。なぜなら、対応する無微生物ラットは、CLAを産生しなかったからである。
【0008】
上述の共役リノール酸の遊離脂肪酸形態が、いくつかの使用のために適切であるが、当該分野で必要なものは、特定の目的のために改変した共役リノール酸の形態である。
【特許文献1】米国特許第5,585,400号
【特許文献2】米国特許第5,674,901号
【特許文献3】米国特許第5,430,066号
【特許文献4】米国特許第5,554,646号
【特許文献5】米国特許第5,428,072号
【非特許文献1】Haら、Cancer Res.(1990)50:1097
【非特許文献2】Birtら、Cancer Res.(1992)52:2035s
【非特許文献3】Ip,Am.J.Clin.Nutr.(1997)66(補遺6):1523s
【非特許文献4】Anejaら、J.Dairy Sci.(1990)43:231
【非特許文献5】Shantaら,Food Chem.(1993)47:257
【非特許文献6】Shantaら,J.Food Sci.(1995)60:695
【非特許文献7】Parodiら、J.Dairy Sci.(1997)60:1550
【非特許文献8】Chinら、J.Food Camp. Anal.(1992)5:185
【非特許文献9】Keplerら,J.Nutrition(1966)56:1191
【非特許文献10】Chinら、J.Nutrition(1994)124:694
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、ヒトおよび動物の栄養の分野に関連し、そして、特に共役リノール酸(CLA)の特定の新規組成物に関連する。特に、本発明は、アシルグリセリド分子のSN1位およびSN3位、またはSN2位のいずれかの共役リノール酸、およびそのアシルグリセリド分子のSN1位およびSN3位、またはSN2位のもう1つの位置の別の脂肪アシル残基の、特定の異性体に関連する。
【0010】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、次の構造
【0011】
【化7】

を有するアシルグリセリドを提供し、
ここで、RおよびRは、10,12オクタデカジエン酸;9,11オクタデカジエン酸;8,10;および11,13オクタデカジエン酸からなる群より選択されるアシル残基であり、Rは、長鎖脂肪アシル残基および中鎖脂肪アシル残基からなる群より選択される。本発明は、任意の特定の中鎖脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下の酸の残基を含む種々の中鎖脂肪アシル残基が企図されるが、これらに限定されない:デカン酸、ウンデカン酸、10−ウンデカン酸、ラウリン酸、シス−5−ドデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、およびミリストレイン酸。本発明は、任意の特定の長鎖脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下の酸の残基を含む種々の長鎖脂肪アシル残基が企図されるが、これらに限定されない:ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、エライジン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、シス−11−エイコセン酸、11,14−エイコサジエン酸、ヘンエイコサン酸(heneicosanoic acid)、ドコサン酸、エルカ酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ネルボン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコサン酸、バクセン酸、タリル酸、およびリシノール酸。本発明はまた、前述のアシルグルセリドを含む、粉末、油、食品組成物、および薬学的組成物を企図する。いくつかの実施形態において、これらの組成物は、抗酸化剤をさらに含む。いくかの特に好ましい実施形態において、食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児食品、妊娠食品、また高齢者用食品である。他の好ましい実施形態において、栄養組成物または薬学的組成物は、前述のアシルグルセリドのうちの1つと、経口投与、腸内投与、または非経口投与に適したキャリアとを、含む。
【0012】
さらなる他の実施形態において、本発明は、次の構造
【0013】
【化8】

を有するアシルグルセリドを提供し、
ここで、RおよびRは、中鎖脂肪アシル残基および長鎖脂肪アシル残基からなる群より選択されるアシル残基であり、Rは、10,12;9,11;8,10;および11,13オクタデカジエン酸残基からなる群より選択される。本発明は、任意の特定の中鎖脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下の酸の残基を含む種々の中鎖脂肪アシル残基が企図されるが、これらに限定されない:デカン酸、ウンデカン酸、10−ウンデカン酸、ラウリン酸、シス−5−ドデカン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、およびミリストレイン酸。本発明は、任意の特定の長鎖脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下の酸の残基を含む種々の長鎖脂肪アシル残基が企図されるが、それらに限定されない:ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、エライジン酸、オレイン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、シス−11−エイコサン酸、11,14−エイコサジエン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸、エルカ酸、トリコサン酸、テトラコサン酸、ネルボン酸、ペンタコサン酸、ヘキサコサン酸、ヘプタコサン酸、オクタコサン酸、ノナコサン酸、トリアコサン酸、バクセン酸、タリル酸、およびリノール酸。本発明はまた、前述のアシルグリセリドを含む、粉末、油、食品組成物、および薬学的組成物を企図する。いくつかの実施形態において、これらの組成物は、抗酸化剤をさらに含む。いくつかの特に好ましい実施形態において、食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児用食品、妊娠食品、または高齢者用食品である。他の好ましい実施形態において、栄養組成物または薬学的組成物は、前述のアシルグリセリドうちの1つと、経口投与、腸内投与、または非経口投与に適したキャリアとを、含む。
【0014】
さらなる他の実施形態において、本発明は、次の構造
【0015】
【化9】

を有するアシルグリセリドを提供し、
ここで、RおよびRは、10,12オクタデカジエン酸;9,11オクタデカジエン酸;8,10オクタデカジエン酸および11,13オクタデカジエン酸からなる群より選択されるアシル残基であり、Rは,ω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基およびω9脂肪アシル残基からなる群より選択される。本発明は、任意の特定のω3脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下からなる群より選択されるものを含む、種々のω3脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドが企図される:9,12,15−オクタデカトリエン酸;6,9,12,15オクタデカテトラエン酸、11,14
,17−エイコサトリエン酸;8,11,14,17−エイコサテトラエン酸;5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸;7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸;および4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸。本発明は、任意の特定のω6脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下からなる群より選択されるものを含む、種々のω6脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドが企図される:6,9,12−オクタデカトリエン酸;8,11,14−エイコサトリエン酸;5,8,11,14−エイコサテトラエン酸;7,10,13,16−ドコサテトラエン酸、および4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸。本発明は、任意の特定のω9脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下からなる群より選択されるものを含む種々のω9脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドが、企図される:6,9−オクタデカジエン酸;8,11−エイコサジエン酸;および5,8,11−エイコサトリエン酸。本発明はまた、前述のアシルグリセリドを含む、粉末、油、食品組成物、および薬学的組成物を意図する。いくつかの実施形態において、これらの組成物は、抗酸化剤をさらに含む。いくつかの特に好ましい実施形態において、食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児用食品、妊娠食品、または高齢者用食品である。他の好ましい実施形態において、栄養組成物または薬学的組成物は、前述のアシルグリセリドのうちの1つと、経口投与、腸内投与、または非経口投与に適したキャリアとを、含む。
【0016】
なおさらなる実施形態において、本発明は、次の構造:
【0017】
【化10】

を有するアシルグリセリドを提供し、
ここで、RおよびRは、ω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基およびω9脂肪アシル残基からなる群より選択されるアシル残基であり、Rは、10,12オクタデカジエン酸残基;9,11オクタデカジエン酸残基;8,10オクタデカジエン酸残基;および11,13オクタデカジエン酸残基からなる群より選択される。本発明は、任意の特定のω3脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下からなる群より選択されるものを含む、種々のω3脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドが企図される:9,12,15−オクタデカトリエン酸;6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸;11,14,17−エイコサトリエン酸;8,11,14,17−エイコサテトラエン酸;5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸;7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸;4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸。本発明は、任意の特定のω6脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下からなる群より選択されるものを含む、種々のω6脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドが企図される:6,9,12−オクタデカトリエン酸;8,11,14−エイコサトリエン酸;5,8,11,14−エイコサテトラエン酸;7,10,13,16−ドコサテトラエン酸および4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸。本発明は、任意の特定のω9脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドに限定されない。実際に、以下からなる群より選択されるものを含む、種々のω9脂肪アシル残基を含むアシルグリセリドが企図される:6,9−オクタデカジエン;8,11−エイコサジエン酸;および5,8,11−エイコサトリエン酸。本発明はまた、前述のアシルグリセリドを含む、粉末、油、食品組成物、および薬学的組成物を意図する。いくつかの実施形態において、これ
らの組成物は、抗酸化剤をさらに含む。いくつかの特に好ましい実施形態において、食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児用食品、妊娠食品、または高齢者用食品である。他の好ましい実施形態において、栄養組成物および薬学的組成物は、前述のアシルグリセリドのうちの1つと、経投与、腸内投与、または非経口投与に適するキャリアとを、含む。
【0018】
さらなる他の実施形態において、本発明は、次の構造:
【0019】
【化11】

を有するアシルグリセリドを提供し、
ここで、RおよびRは、10,12オクタデカジエン酸であり、そしてRは9,11オクタデカジエン酸である。いくつかの好ましい実施形態において、10,12オクタデカジエン酸は、t10,c12オクタデカジエン酸であり、9,11オクタデカジエン酸は、c9,t11オクタデカジエン酸である。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明は、次の構造:
【0021】
【化12】

を有するアシルグリセリドを提供し、
ここで、RおよびRは、9,11オクタデカジエン酸であり、Rは、10,12オクタデカジエン酸である。いくつかの好ましい実施形態において、10,12オクタデカジエン酸はt10,c12オクタデカジエン酸であり、9,11オクタデカジエン酸はc9,t11オクタデカジエン酸である。
・本発明はさらに、以下を提供し得る:
・(項目1)
構造
【0022】
【化1】


を有するアシルグリセリドであって、
およびRは、10,12オクタデカジエン酸残基;9,11オクタデカジエン酸残基;8,
10オクタデカジエン酸残基;および11,13オクタデカジエン酸残基からなる群より選択され
るアシル残基であり、そしてRは、長鎖脂肪アシル残基および中鎖脂肪アシル残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目2)
項目1に記載のアシルグリセリドであって、上記中鎖脂肪アシル残基は、デカン酸のアシル残基、ウンデカン酸のアシル残基、10−ウンデカン酸のアシル残基、ラウリン酸のアシル残基、シス−5−ドデカン酸のアシル残基、トリデカン酸のアシル残基、ミリスチン酸のアシル残基、およびミリストレイン酸のアシル残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目3)
項目1に記載のアシルグリセリドであって、上記長鎖アシル残基は、ペンタデカン酸のアシル残基、パルミチン酸のアシル残基、パルミトレイン酸のアシル残基、ヘプタデカン酸のアシル残基、ステアリン酸のアシル残基、エライジン酸のアシル残基、オレイン酸のアシル残基、ノナデカン酸のアシル残基、エイコサン酸のアシル残基、シス−11−エイコセン酸のアシル残基、11,14−エイコサジエン酸のアシル残基、ヘンエイコサン酸のアシル残基、ドコサン酸のアシル残基、エルカ酸のアシル残基、トリコサン酸のアシル残基、テトラコサン酸のアシル残基、ネルボン酸のアシル残基、ペンタコサン酸のアシル残基、ヘキサコサン酸のアシル残基、ヘプタコサン酸のアシル残基、オクタコサン酸のアシル残基、ノナコサン酸のアシル残基、トリアコサン酸のアシル残基、バクセン酸のアシル残基、タリル酸のアシル残基、およびリシノール酸のアシル残基からなる群から選択される、アシルグリセリド。
・(項目4)
項目1に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、粉末。
・(項目5)
項目1に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む,油。
・(項目6)
項目5に記載の油であって、当該油脂、抗酸化剤をさらに含む、油。
・(項目7)
項目1に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、食品組成物。
・(項目8)
項目7に記載の食品組成物であって、当該食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児食品、妊娠食品、高齢者用食品である、食品組成物。
・(項目9)
項目1に記載のトリグリセリドの少なくとも1つの型を含む、薬学的組成物。
・(項目10)
項目1に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型と、経口投与、腸内投与、または非経口投与に適したキャリアとを含む、栄養組成物または薬学的組成物。
・(項目11)
構造
【0023】
【化2】


を有するアシルグリセリドであって、
およびRは中鎖脂肪アシル残基および長鎖脂肪アシル残基からなる群より選択されるアシル残基であり、そしてRは、10,12オクタデカジエン酸残基;9,11オクタデカジエン酸残基;8,10オクタデカジエン酸残基;および11,13オクタデカジエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目12)
項目11に記載のアシルグリセリドであって、上記長鎖脂肪アシル残基は、ペンタデカン酸のアシル残基、パルミチン酸のアシル残基、パルミトレイン酸のアシル残基、ヘプタデカン酸のアシル残基、ステアリン酸のアシル残基、エライジン酸のアシル残基、オレイン酸のアシル残基、ノナデカン酸のアシル残基、エイコサン酸のアシル残基、シス−11−エイコセン酸のアシル残基、11,14−エイコサジエン酸のアシル残基、ヘンエイコサン酸のアシル残基、ドコサン酸のアシル残基、エルカ酸のアシル残基、トリコサン酸のアシル残基、テトラコサン酸のアシル残基、ネルボン酸のアシル残基、ペンタコサン酸のアシル残基、ヘキサコサン酸のアシル残基、ヘプタコサン酸のアシル残基、オクタコサン酸のアシル残基、ノナコサン酸のアシル残基、トリアコサン酸のアシル残基、バクセン酸のアシル残基、タリル酸のアシル残基、およびリシノール酸のアシル残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目13)
項目11に記載のアシルグリセリドであって、上記中鎖アシル残基が、デカン酸のアシル残基、ウンデカン酸のアシル残基、10−ウンデカン酸のアシル残基、ラウリン酸のアシル残基、シス−5−ドデカン酸のアシル残基、トリデカン酸のアシル残基、ミリスチン酸のアシル残基、およびミリストレイン酸のアシル残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目14)
項目11に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、粉末。
・(項目15)
項目11に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、油。
・(項目16)
項目15に記載の油であって、当該油は、抗酸化剤をさらに含む、油。
・(項目17)
項目1に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、食品組成物。
・(項目18)
項目17に記載の食品組成物であって、当該食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児食品、妊娠食品、または高齢者用食品である、食品組成物。
・(項目19)
項目11に記載のトリグリセリドの少なくとも1つの型を含む、薬学的組成物。
・(項目20)
項目11に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型と、経口投与、腸内投与、または非経口投与に適したキャリアとを含む、栄養組成物または薬学的組成物。
・(項目21)
構造
【0024】
【化3】


を有するアシルグリセリドであって、
およびRは、10,12オクタデカジエン酸残基;9,11オクタデカジエン酸残基;8,10オクタデカジエン酸残基;および11,13オクタデカジエン酸残基からなる群より選択されるアシル残基であり、そしてRは、ω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基、およびω9脂肪アシル残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目22)
項目21に記載のアシルグリセリドであって、上記ω3脂肪アシル残基が、9,12,15−オクタデカトリエン酸残基;6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸残基;11,14,17−エイコサトリエン酸残基;8,11,14,17−エイコサテトラエン酸残基;5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸残基;7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸残基;および4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目23)
項目21に記載のアシルグリセリドであって、上記ω6脂肪アシル残基が、6,9,12−オクタデカトリエン酸残基;8,11,14−エイコサトリエン酸残基;5,8,11,14−エイコサテトラエン酸残基;7,10,13,16−ドコサテトラエン酸残基、および4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目24)
項目21に記載のアシルグリセリドであって、上記ω9脂肪アシル残基が、6,9−オクタデカジエン酸残基;8,11−エイコサジエン酸残基;5,8,11−エイコサトリエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目25)
項目21に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、粉末。
・(項目26)
項目21に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、油。
・(項目27)
項目26に記載の油であって、当該油は、抗酸化剤をさらに含む、油。
・(項目28)
項目21に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、食品組成物。
・(項目29)
項目28に記載の食品組成物であって、当該食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児食品、妊娠食品、または高齢者用食品である、食品組成物。
・(項目30)
項目21に記載のトリグリセリドの少なくとも1つの型を含む、薬学的組成物。
・(項目31)
項目21に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型と、経口投与、腸内投与、または非経口投与に適したキャリアとを含む、栄養組成物または薬学的組成物。
・(項目32)
構造
【0025】
【化4】


を有するアシルグリセリドであって、
およびRは、ω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基、およびω9脂肪アシル残基からなる群より選択されるアシル残基であり、そしてRは、10,12オクタデカジエン酸残基;9,11オクタデカジエン酸残基;8,10オクタデカジエン酸残基;および11,13オクタデカジエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目33)
項目32に記載のアシルグリセリドであって、上記ω3脂肪アシル残基が、9,12,15−オクタデカトリエン酸残基;6,9,12、15−オクタデカテトラエン酸残基;11,14,17−エイコサトリエン酸残基;8,11,14,17−エイコサテトラエン酸残基;5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸残基;7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸残基;および4,7、10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目34)
項目32に記載のアシルグリセリドであって、上記ω6脂肪アシル残基が、6,9,12−オクタデカトリエン酸残基;8,11,14−エイコサトリエン酸残基;5,8,11,11
4−エイコサテトラエン酸残基;7,10,13,16−ドコサテトラエン酸残基、および4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目35)
項目32に記載のアシルグリセリドであって、上記ω9脂肪アシル残基が、6,9オクタデカジエン酸残基;8,11−エイコサジエン酸残基;および5,8,11−エイコサトリエン酸残基からなる群より選択される、アシルグリセリド。
・(項目36)
項目32に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、粉末。
・(項目37)
項目32に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、油。
・(項目38)
項目37に記載の油であって、当該油は、抗酸化剤をさらに含む、油。
・(項目39)
項目32に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型を含む、食品組成物。
・(項目40)
項目39に記載の食品組成物であって、当該食品組成物は、機能性食品、栄養補助食品、乳幼児食品、妊娠食品、または高齢者用食品である、食品組成物。
・(項目41)
項目32に記載のトリグリセリドの少なくとも1つの型を含む、薬学的組成物。
・(項目42)
項目32に記載のアシルグリセリドの少なくとも1つの型と、経口投与、腸内投与、または非経口投与に適したキャリアとを含む、栄養組成物または薬学的組成物。
・(項目43)
構造
【0026】
【化5】


を有するアシルグリセリドであって、
およびRは10,12−オクタデカジエン酸であり、そしてRは、9,11−オクタデカジエン酸である、アシルグリセリド。
・(項目44)
項目43に記載のアシルグリセリドであって、上記10,12オクタデカジエン酸は、t10,t12オクタデカジエン酸であり、そして上記9,11オクタデカジエン酸は、c9,t11オクタデカジエン酸である、アシルグリセリド。
・(項目45)
構造
【0027】
【化6】


を有するアシルグリセリドであって、
およびRは、9,11オクタデカジエン酸であり、Rは、10,12オクタデカジエン酸である、アシルグリセリド。
・(項目46)
項目43に記載のアシルグリセリドであって、上記10,12オクタデカジエン酸は、t10,c12オクタデカジエン酸であり、上記9,11オクタデカジエン酸は、c9,t11オクオクタデカジエン酸である、アシルグリセリド。
【0028】
(定義)
本明細書中で使用される場合、「共役リノール酸」または「CLA」は、任意の共役リノール酸またはオクタデカジエン遊離脂肪酸をいう。この用語は、その分子の任意の場所に、2つの共役炭素−炭素二重結合を持つリノール酸の全ての位置異性体および幾何異性体を包含しそして示すことが、意図される。CLAは、通常のリノール酸が、炭素原子9および炭素原子12において二重結合を有する点で、通常のリノール酸とは異なる。CLAの例としては、以下の位置異性体のシス異性体およびトランス異性体(「E/Z」異性体)が挙げられる:2,4−オクタデカジエン酸、4,6−オクタデカジエン酸、6,8−オクタデカジエン酸、7,9−オクタデカジエン酸、8,10−オクタデカジエン酸、9,11−オクタデカジエン酸および10,12−オクタデカジエン酸、11,13−オ
クタデカジエン酸。本明細書中で使用される場合、「CLA」は単一異性体、2つ以上の異性体の選択された混合物、および天然供給源から得た異性体の非選択性の混合物、ならびに合成CLAおよび半合成CLAを包含する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「異性化された共役リノール酸」は、化学的方法(例えば、水性アルカリ異性体化、非水溶性アルカリ異性体化、またはアルカリアルコラート異性体化)によって合成されたCLAをいう。
【0030】
本明細書中で使用される場合、用語「共役リノール酸部分」とは、共役リノール酸もしくは誘導体を含む、任意の化合物または複数の化合物を指す。例としては、共役リノール酸の、脂肪酸、アルキルエステル、およびトリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書中で使用される場合、CLAの「トリグリセリド」または「アシルグリセリド」は、トリグリセリド骨格の3つの位置(例えば、SN−1位、SN−2位、SN−3位)のいずれかまたは全ての位置のCLAを含むことを意図する。従って、CLAを含むトリグリセリドは、CLAの位置異性体および幾何異性体のうちのいずれかを含み得る。
【0032】
本明細書中で使用される場合、CLAの「エステル」は、アルコールまたは任意の他の化学基(生理学的に受容可能な天然に存在するアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールを含むが、それらに限定されない))とのエステル結合を介して結合したCLAの任意および全ての位置異性体および幾何異性体を含むことが意図される。従って、CLAのエステルすなわちエステル化CLAは、CLAの位置異性体および幾何異性体のうちのいずれかを含み得る。
【0033】
CLAの「天然に存在しない異性体」は、オクタデカジエン酸のc11,t13異性体;t11,c13異性体;t11,t13異性体;c11,c13異性体、c8,t10異性体;t8,c10異性体;t8,t10異性体;c8,c10異性体;およびトランス−トランス異性体を含むが、それらに限定されず、そして、t10,c12異性体およびc9,t11異性体を含まないことが、意図される。「天然に存在しない異性体」はまた、CLAがアルカリ異性体化によって合成される場合、これらの異性体は、一般的に低量で産生されるので、CLAの「微量(minor)異性体」と言われ得る。
【0034】
本明細書中で使用される場合、用語「低不純物」CLAは、1%未満の総8,10オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス−トランスオクタデカジエン酸を含む、CLA組成物(遊離脂肪酸、アルキルエステル、およびトリグリセリド)をいう。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「c」は、シス方向の化学結合を包含し、そして「t」は、トランス方向の化学結合をいう。CLAの位置異性体が「c」も「t」もなく示される場合、その記載は可能な4つすべての異性体を含む。例えば、10,12オクタデカジエン酸は、c10,t12;t10,c12;t10,t12;およびc10,c12オクタデカジエン酸を包含し、一方、t10,c12オクタデカジエン酸またはCLAは、単一異性体のみをいう。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「油」は、長鎖脂肪酸(例えば、CLA)、トリグリセリド、または他の長鎖炭化水素基を含む、自由に流動する液体をいう。長鎖脂肪酸としては、CLAの種々の異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「生理学的に受容可能なキャリア」は、油状薬剤と
ともに一般的に使用される任意のキャリアまたは賦形剤をいう。このようなキャリアまたは.賦形剤としては、油、デンプン、ショ糖、および乳糖が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「経口送達ビヒクル」は、カプセル、丸剤、錠剤およびシロップを含むがそれらに限定されない、任意の薬剤経口送達手段をいう。
【0039】
本明細書中で使用される場合、用語「食品」は、ヒト、非反芻動物、または反芻動物による消費に適した、任意の食物または食餌をいう。「食品」は、調整済みの包装済み食品(例えば、マヨネーズ、サラダドレッシング、パン、またはチーズ食品)あるいは動物の食餌(例えば、押出し成形したペレット状の動物の食餌、およびまたは粗い混合食餌)であり得る。「調製済み食品」は、ヒトの消費について認められた包装前の任意の食品を意味する。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「食料品(foodstuff)」は、ヒトの消費または動物の消費に適した任意の物質をいう。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「機能性食品」は、生物学的に活性な補助物質が添加された食品をいう。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「乳幼児食品」は、調合乳のような、乳幼児のために処方された食品をいう。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「高齢者用食品」は、高齢のヒトのために処方された食品をいう。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「妊娠食品」は、妊婦のために処方された食品をいう。
【0045】
本明細書中で使用される場合、用語「栄養補助食品」は、食事の一部として使用されるべき食事補助物質または栄養補助物質として処方された食品をいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、用語「中鎖脂肪アシル残基」は、14個以下の炭素の炭素鎖長を持つ脂肪酸由来の脂肪アシル残基をいう。
【0047】
本明細書中で使用される場合、用語「長鎖脂肪アシル残基」は、14個以上の炭素の炭素鎖長を持つ脂肪酸由来の脂肪アシル残基をいう。
【0048】
本明細書中で使用される場合、用語「揮発性有機化合物」は、所定の温度で、部分的にかあるいは完全に気体状態で存在する、任意の小さな炭素含有化合物をいう。揮発性有機化合物は、有機化合物(例えば、CLA)の酸化から形成され得る。揮発性有機化合物としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−ブテナール、エタノール、3−メチルブタナール、4−メチルペンタノン、ヘキサナール、ヘプタナール、2−ペンチルフラン、オクタナールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「金属酸化剤キレート剤」は、金属をキレートする任意の抗酸化剤をいう。例としては、レシチンおよびクエン酸エステルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0050】
本明細書中で使用される場合、用語「アルコラート触媒」は、任意の一水素性アルコー
ル(カリウムメチレートおよびカリウムエチレートを含むがそれらに限定されない)のアルカリ金属化合物をいう。
【0051】
(発明の詳細な説明)
本発明は、ヒト栄養学および動物栄養学の分野に関し、そして特に共役リノール酸(CLA)の特定の新規の組成物に関連する。特に、本発明は、アシルグリセリド分子のSN1位とSN3位、またはSN2位のいずれかに共役リノール酸、およびアシルグリセリド分子のSN1位とSN3位、またはSN2位のもう一方の位置で別の脂肪アシル残基の、特定の異性体に関連する。
【0052】
(I. 共役リノール酸の供給源)
本発明のアシルグリセリドは、共役リノールアシル残基を含む。これらのアシルグリセリドに取り込まれた共役リノール酸は、種々の方法(例えば、米国特許第6,015,833号および同6,060,514号に記載されており、その各々が本明細書中に援用されている)によって、行われ得る。いくつかの実施形態において、ひまわり油、ベニバナ油、コーン油は、高沸点溶媒における過剰のアルカリ(つまり、その溶媒の沸点より低い温度でのプロピレングリコール)と、不活性ガスの雰囲気下で、周囲の圧力で反応され得る。いくつかの特に好ましい実施形態において、ひまわり油、ベニバナ油、またはコン油は、アルカリアルコラート触媒および少量の適切な溶媒の存在下で反応され得る。ダイズ油と比較して、これらの油は、好ましくない成分(例えば、ホスファチドおよびステロール)のより低い濃度を有する。これらの好ましくない成分は、共役装置をふさぐゴムおよび他の好ましくない重合体の形成に寄与し得る。
【0053】
(A. 溶媒としてのプロピレングリコールを用いた異性体化)
本発明のいくつかの実施形態において、共役リノール酸は、非水溶性アルカリ異性体化によって産生される。制御された異性体化プロセスの反応条件は、結合プロセスの温度(および一定の周囲の圧力)の正確な制御を可能にする。好ましくは、アルカリは、無機アルカリ(例えば、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸セシウム)または有機アルカリ(例えば、テトラエチル水酸化アンモニウム)である。触媒は、好ましくは、油の脂肪酸含有量と比べて、過剰のモル濃度で提供される。溶媒は、プロピレングリコールである。好ましくは、反応は、130℃〜165℃の範囲の温度で、最も好ましくは、約150℃で、行われる。しかし、反応時間は変化し得るが、反応が長期間にわたって行われる場合、好ましくない異性体の形成の可能性の増加がある。2.0時間〜6.5時間の比較的短時間の反応は、優れた生成にとって満足のいくことが証明された。
【0054】
所望の組成物を産生するために、上述の反応条件は、共役される油、アルカリ供給源、および設備に依存して、変化し得ることが理解される。特定の油の予備分析は、条件が所望の組成物を得るために変化しなければならないことを示し得る。従って、温度範囲、圧力、および他の反応パラメーターは、個々のプロセスの設計の出発点を表し、ガイドとしてのみ意図される。例えば、記載された温度範囲は、使用され得る唯一の範囲であることを意味しない。重要な局面は、正確な温度制御を供給することである。しかし、圧力を増加することは、完全未満の異性体化および望ましくない異性体の形成に通じ得るので、注意が払われなければならない。最終的に、共役反応の長さは変化し得る。一般的に、漸増量の好ましくない異性体が、反応時間の長さが増加することで、形成される。従って、最適な反応時間によって、反応がほぼ完了または基本的に完了することが可能となるが、好ましくない異性体の形成は生じない。
【0055】
共役反応の後、得られたCLA含有組成物は、精製され得る。脂肪酸を、結合反応混合物から単離するために、反応混合物は、約95℃まで冷やされ、50℃の過剰量の水が加えられ、そして温度が約50℃〜60℃に下がるまで混合物はゆっくりと振盪される。水
を加える際に、脂肪酸の石鹸が形成され、そしてグリセロールが、副産物として形成される。次に、モル過剰の濃HCLが、振盪中に添加される。それから、水層および非水層が、約80℃〜90℃で分離され得る。次に、水およびプロピレングリコールを含有する基底相が、除かれる。残存プロピレングリコールは、60℃〜80℃でバキューム脱水によって除去される。
【0056】
次に、乾燥CLA組成物は、好ましくは、任意の残存プロピレングリコールを除去するための冷トラップで、脱気ユニット(degassing unit)で脱気され得る。次に、CLAは、10−1〜10−2ミリバールの真空で、分子蒸留プラント内にて190℃で蒸留される。この精製システムの利点は、短時間(1分未満)であり、その時間で、CLAは高温で保持される。従来のバッチ蒸留手順は、その手順が数時間までの間、約180℃〜200℃の高温に関連するので、厳密に避けられるべきである。これらの高温において、好ましくないトランス−トランス異性体の形成が生じる。約90%の供給材料は、わずかに黄みを帯びた留出物として、回収される。次に、CLAは、約120℃〜170℃で、好ましくは、約150℃で2時間、熱することで脱臭され得、においと味を改良し得る。過剰の熱は、トランス−トランス異性体の形成を生じる。これらの手順は、約5ppm未満の溶媒レベルで、好ましくは、約1ppm未満で、CLA組成物を産生する。このプロセスは、極微量レベルの溶媒レベルの毒性を排除し、その結果、得られた組成物は、毒性溶媒残渣を実質的に持たない。
【0057】
上述のプロセスは、試験規模および工業規模の両方に容易に適用される。例えば、400kgのベニバナ油は、触媒として添加された200kgのKOHと一緒に、400kgのプロピレングリコール中に150℃で5時間結合され得る。次に、得られたCLAは、上述のように精製され得る。さらに、工業規模のバッチシステムは、容易に改変され、所望のCLA化合物を産生する。例えば、ステンレス鋼反応器は、好ましくは、3.0より低いpHレベルに起因して、腐食を防ぐためにガラスが内張りされるべきである。しかし、非水溶性溶媒を用いる結合プロセスは、一般的に、水で行われたプロセスより腐食性が少ないことに注意のこと。
【0058】
(B. アルコラート触媒を用いた異性体化)
他の実施形態において、本発明のアシルグリセリドは、アルコラートの存在下でのリノール酸の異性体化によって作製されたアシルグリセリドを取り込む。脂肪分解および脱水の後、遊離脂肪酸は、メタノールまたは別の一水素性の低分子量アルコールと合わされ、アルコールが沸騰する温度まで熱せられる。エステル化は、冷却器を介して、反応水の除去を伴う還流条件下で進行する。さらなる量の同じあるいは異なった一水素アルコールを加えた後、アルコラート触媒は、エステル混合液中に混合される(例えば、米国特許第3,162,658号)、(本明細書中に援用されている)を参照のこと)。代表的なアルコラート触媒は、ナトリウムエトキシドまたはカリウムエトキシド、またはそれらのメチル代替物、エチル代替物、またはプロピル代替物である。
【0059】
エステル化において、メタノールまたはエタノールが好ましく、他の分岐鎖一水素アルコールまたは直鎖一水素アルコールが使用され得る。アルキル基の脂肪酸鎖が長ければ長いほど、その材料がより脂質適合性になる。さらに、粘性が増加する傾向にある。食餌または食事の異なった型のための(そのコンシステンシーは変化するが)、粘性を変化させる産物は、CLA部分から生じる治療的特性および栄養的特性に影響することなく、所望のフローまたは複合特性を得るために使用され得る。エステル化の理論および実践は従来通りである。最も共通の方法の基本的な説明は、McCraw−Hill Encyclopedia of Science & Technology,McGraw−Hill Book Co.,N.Y.:1996(第5版)に記載されている。動物の体およびヒトの体は、種々のエステラーゼを有し、その結果CLAエステルが切断されて、遊
離脂肪酸が容易に放出される。組織取り込みは、関連する組織および考えられる利益に依存した異なった動態を有し得る。
【0060】
異性体化の工程において、アルコラート触媒は、水溶性アルカリ媒介異性体化よりはるかに優秀な産物を産生した。後者の工程は、穏やかな反応条件下でさえ、望ましくない異性体を常に産生する。実施例に示されるように、条件がより穏やかになれば、実施例に示されるように、望ましくない異性体の量は少なくなるが、生産費は大きくなる。ほとんどのシステムにおいて、c9,t11異性体およびt10,c12異性体の出現が優勢になり、そしてそれらの異性体はおよそ等モル量で形成される。これまでは、他の異性体の排除に対する1つの異性体の異性体化を制御することができなかった。(達成される生理学的効果に依存して)1つまたは他の異性体のパーセンテージを増加させることが望ましいが、現在、所望の異性体の濃縮供給源を加えることによって、このことが主に行われなければならない。
【0061】
アルコラート触媒との共役のための好ましい出発物質は、ひまわり油、ベニバナ油、およびコーン油である。各々のこれらの油は、高レベルのリノール酸および低レベルのリノレイン酸を含む。リノレイン酸の結合の結果、いくつかの特徴付けされていない脂肪酸部分の形成が生じ、その未知の生物学的特性は未知である。従来の共役工程は、未知の化合物の生成を考慮していなかった。なぜなら、その産物は乾燥油、ペイントおよびワニスにおいて使用され、ヒトおよび動物の消費を目的とした産物には使用されないからである。
【0062】
いくつかの実施例において、さらに、グリセロールおよびグリセロールエステルが脂肪酸のモノエステルの作製前に除去されるべきであることが意図される。共役の間に存在する微量のグリセロールは、トリメトキシプロパンおよびトリエトキシプロパンの産生に寄与する。従って、結合前に、アルコール分解によって得られたモノエステルを蒸留することが好ましい。
【0063】
(C. 他のCLA異性体の合成)
本発明はまた、下記表1に記載の異性体を含むトリグリセリドの合成を意図する。本発明のいくつかの実施例において、CLAの部分精製異性体または濃縮異性体は、二重結合系の移動を生じる条件下で処理される。好ましい実施形態において、その条件は、約200℃〜240℃までの、好ましくは約220℃までの、少なくとも1つの異性体の加熱を含む。さらに、他の実施形態において、その条件は、密閉容器中の窒素下での部分精製異性体または濃縮異性体との反応を含む。表1を参照すると、列1の異性体の調製は、列2の対応する異性体の実質量を含む調製物を産生するために使用され得る。初めの変換反応後、調製物は、出発異性体および「姉妹(sister)」異性体の両方含む。同様に、列2の異性体の調製は、列1の対応する異性体の実質量を産生するために使用され得る。さらに、両方の異性体を含む調製物は、姉妹(sister)異性体を(例えば、ガスクロマトグラフィーによって)精製するために処理され得る。当業者によって理解されるように、1つより多い部分精製異性体を用いて始めることが可能であり、それによって4つ、6つ、8つまたはそれ以上の異性体を含む調製物を産生する。さらなる実施形態において、姉妹異性体の部分調製は、初めの異性体およびその姉妹異性体を含む処理された調製物から、当該分野に公知の方法(つまり、ガス−液体クロマトグラフィー)によって調製され得る。
【0064】
【表1】

実施例に示されるように、精製t10,c12オクタデカジエン酸の処理によって、c11,t13オクタデカジエン酸の産生が生じた。同様に、濃縮c11,t13または部分精製c11,t13オクタデカジエン酸は、t10,c12オクタデカジエン酸を産生するために使用され得る。
【0065】
(D. 共役リノール酸異性体の他の供給源)
他の実施形態において、本発明のアシルグリセリドを産生するために使用される共役リノール酸は、代わりの供給源から得られる。例えば、いくつかの異性体(例えば、t10,c12およびc9,t11)は、商業的供給源から利用可能である。他の実施例において、t10,c12 CLAおよびc9,t11 CLAは、Scholfieldら、JAOCS 47(8):303(1970)およびBerdeauら、JAOCS 74:1749〜55(1998)に記載される方法によって、精製され得る。この方法は、異性体の混合物からt10、c12異性体の結晶化および沈降を可能にする。初めの混合物がt10,c12異性体およびc9,t11異性体(つまり、上述のように行われた異性体 id)を優先的に含む場合、沈降後に残る油はc9,t11 CLAのために濃縮される。よりさらなる実施形態において、CLA異性体はガスクロマトグラフィー法またはガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー法によって調製され得る。
【0066】
(II.トリグリセリドの合成)
本発明は、新規のアシルグリセリドおよび新規のアシルグリセリドを含む、食品組成物、動物食餌、薬学的組成物および栄養組成物を提供する。本発明に従って、次の構造を有するアシルグリセリドが、提供される:
【0067】
【化13】

ここで、R1およびR3は10,12;9,11;8,10;および11,13オクタ
デカジエン酸エステルからなる群より選択されるアシル残基であり、そしてR2は、長鎖脂肪アシル残基および中鎖脂肪アシル残基からなる群より選択される。
【0068】
他の実施形態において、次の一般的構造を有するアシルグリセリドが提供される:
【0069】
【化14】

ここで、R1およびR3は、中鎖脂肪アシル残基および長鎖脂肪アシル残基からなる群より選択されるアシル残基であり、R2は、10,12;9,11;8,10および11,13オクタデカジエン酸エステル残基からなる群より選択される。
【0070】
他の実施形態において、次の一般的構造を有するアシルグリセリドが、提供される:
【0071】
【化15】

ここで、R1およびR3は、10,12;9,11;8,10および11,13オクタデカジエン酸エステルからなる群より選択されるアシル残基であり、R2は、ω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基、およびω9脂肪アシル残基からなる群より選択される。
【0072】
他の実施形態において、次の一般的構造を有するアシルグリセリドが、提供される:
【0073】
【化16】

ここで、R1およびR3は、ω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基、およびω9脂肪アシル残基からなる群より選択されるアシル残基であり、R2は、10,12;9,11;8,10および11,13オクタデカジエン酸エステル残基からなる群より選択される。
【0074】
他の実施機形態において、次の一般的構造を有するアシリグリセリドが、提供される:
【0075】
【化17】

ここで、R1およびR3は、10,12オクタデカジエン酸エステルであり、そしてR2は、9,11オクタデカジエン酸エステルである。
【0076】
他の実施形態において、次の一般的構造を有するアシルグリセリドが提供される:
【0077】
【化18】

ここで、R1およびR3は、9,11オクタデカジエン酸エステルであり、R2は10,12オクタデカジエン酸エステルである。
【0078】
本発明は、共役リノール酸の任意の特定の異性体残基を含むアシルグリセリドに制限されない。実際に、種々の共役リノール酸の異性体(t10,c12オクタデカジエン酸エステル;c10,t12オクタデカジエン酸エステル、c9,t11オクタデカジエン酸エステル;t9,c11オクタデカジエン酸エステル、c8,t10オクタデカジエン酸エステル;t8,c10オクタデカジエン酸エステル;t11,c13オクタデカジエン酸エステル;およびc11,t13オクタデカジエン酸エステルならびに上記表1に記載される他の異性体を含むがこれらに制限されない)の使用が意図されている。
【0079】
本発明は、任意の特定の長鎖脂肪酸残基および中鎖脂肪酸残基を含むアシルグリセリドに制限されない。実際に、種々の長鎖脂肪酸残基および中鎖脂肪酸残基の取り込みが意図され、これらの脂肪酸残基としては、以下が挙げられるが、それらに制限されない:デカン酸(10:0)、ウンデカン酸(11:0)、10−ウンデカン酸(11:1)、ラウリン酸(12:0)、シス−5−ドデカン酸(12:1)、トリデカン酸(13:0)、ミリスチン酸(14:0)、ミリストレイン酸(シス−9−テトラデセン酸、14:1)、ペンタデカン酸(15:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(シス−9−ヘキサデセン酸、16:1)、ヘプタデカン酸(17:1)、ステアリン酸(18:0)、エライジン酸(トランス−9−オクタデセン酸、18:1)、オレイン酸(シス−9−オクタデカン酸,18:1)、ノナデカン酸(19:0)、エイコサン酸(20:0)、シス−11−エイコセン酸(20:1)、11,14−エイコサジエン酸(20:2)、へンエイコサン酸(21:0)、ドコサン酸(22:0)、エルカ酸(シス−13−ドコセン酸、22:1)、トリコサン酸(23:0)、テトラコサン酸(24:0)、ネルボン酸(24:1)、ペンタコサン酸(25:0)、ヘキサコサン酸(26:0)、ヘプタコサン酸(27:0)、オクタコサン酸(28:0)、ノナコサン酸(29:0)、
トリアコサン酸(30:0)、バクセン酸(t−11−オクタデネコ酸、18:1)、タリル酸(オクタデクー6−イノイック酸、18:1)、およびリシノール酸(12−ヒドロキシオクタデクーシス−9−エノイック酸、18:1)。
【0080】
本発明は、任意の特定のω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基、ω9アシル残基を含むアシルグリセリドに制限されない。実際に、本発明は、次のω3脂肪酸、ω6脂肪酸、ω9脂肪酸の残基を含むアシルグリセリドを示すが、それらに制限されない:
9,12,15−オクタデカトリエン酸(α−リノレン酸)[18:3、ω3];
6,9,12,15−オクタデカテトラエン酸(ステアリドン酸))[18:4、ω3];
11,14,17−エイコサトリエン酸(ジホモ−α−リノレン酸)[20:3、ω3];
8,11,14,17−エイコサテトラエン酸[20:4、ω3];
5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸[20:5、ω3];
7,10,13,16,19−ドコサペンタエン酸[22:5、ω3];
4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸[22:6、ω3];
9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸)[18:2、ω6];
6,9,12−オクタデカトリエン酸(γ−リノレン酸)[18:3、ω6];
8,11,14−エイコサトリエン酸(ジホモ−γ−リノレン酸)[20:3、ω6];
5,8,11,14−エイコサテトラエン酸(アラキドン酸)[20:4、ω6];
7,10,13,16−ドコサテトラエン酸[22:4、ω6];
4,7,10,13,16−ドコサペンタエン酸[22:5、ω6];
6,9−オクタデカジエン酸[18:2、ω9];
8,11−エイコサジエン酸[20:2、ω9];
5,8,11−エイコサトリエン酸(ミード酸(Mead acid))[20:3、ω9]。
【0081】
さらに、アシル残基は、水酸化アシル残基、エポキシド化アシル残基またはジヒドロキシエポキシド化アシル残基であり得る。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の新規のアシルグリセリドは、化学的合成法によって調製される。本明細書中で使用されるこれらの方法および中間体は、実施例8〜20で記載されている。
【0083】
他の実施例において、本発明の新規のアシルグリセリドは、アシルグリセリドの2位(SN2)の第1の脂肪アシル残基およびアシルグリセリドの1位および3位(SN1およびSN3)の第2の脂肪アシル残基を挿入するために、非特異的リパーゼおよび位置特異的リパーゼによって作製される。非特異的リパーゼは、グリセロールの全ての位置の脂肪酸を加水分解またはエステル化(つまり、逆反応)することができるリパーゼである。位置特異的リパーゼまたは1,3特異的リパーゼはグリセロール骨格の1位および3位における脂肪酸を、ほとんど排他的に加水分解またはエステル化する。本発明の構造を持つ
アシルグリセリドは、第1に非特異的リパーゼを用いて2位に所望される脂肪酸を全ての3位に結合させ、次に1,3特異的リパーゼを用いて1位および3位におけるアシル残基を加水分解することで合成される。次に、1位および3位に結合することが望まれる酸が同じのリパーゼによって添加され、1位および3位をエステル化される前に、蒸留によって、加水分解された酸が、除去される。反応(加水分解またはエステル化)の方向は、水の添加または除去の各々によって容易に制御される。次の例は、方法の一般的概要である。
【0084】
特定の好ましい実施形態において、第1脂肪酸の精製アリコート(約3モル)、グリセロール(約1モル)および10重量%までの酸が、固定非特異的リパーゼ(市販)と混合される。混合物は、真空下で攪拌され、わずかに(50℃〜60℃)熱せられる。エステル化中に生成された水は、真空吸引によって連続的に除去される。24時間〜48時間後に、反応は終わり、酵素が除去され、濾過によって回収される。得られたアシルグリセリドは、3つの全ての位置に結合した第1脂肪酸を有する。次に、1位および3位の第1脂肪酸残基が、1,3特異的固定リパーゼ(市販)および1%の水の添加によって除去される。混合物は、50℃〜60℃に熱せられ、24時間〜48時間、窒素雰囲気下で攪拌される。反応混合物は1位および3位から遊離される遊離脂肪酸およびモノグリセリド(2位に結合した脂肪酸B)を含む。次に、好ましい実施形態において、脂肪酸は、分子蒸留によって混合物から蒸留される。さらなる実施形態において、約1モルのモノグリセリドが1,3特異的リパーゼの存在下で2モルの第2遊離脂肪酸と24時間〜48時間反応される。いくつかの実施形態において、この反応は、50℃〜60℃の攪拌および真空吸引下で起こり、エステル化プロセス中に生成される水を除去する。得られたアシルグリセリドは、2位に第1脂肪酸、および1位および3位に第2脂肪酸を有する構造をしたトリグリセリドである。
【0085】
上述のように、本発明のいくつかの実施形態において、トリグリセリドの1位と3位に特異的に作用するリパーゼは、触媒として使用される。本発明は、任意の特定の1,3特異的リパーゼの使用に制限されない。本発明に有用な1,3特異的リパーゼの例は、Rhizopus属、Rhizomucor属、Mucor属、Penicillium属、Aspergillus属、Humicola属またはFusarium属に属する微生物によって産生されるリパーゼおよびブタの膵臓リパーゼ含む。市販のリパーゼの例は、Rhizopus delemar(Tanabe Pharmaceutical,Dalipase)のリパーゼ、Rhizomucor miehei(Novo Nordisk,Ribozyme IM)のリパーゼ、Aspergillus niger(Amano Pharmaceutical、Lipase A)のリパーゼ、Humicola lanuginosa(Novo Nordisk, Lipolase)のリパーゼ、Mucor javanicus(Amano Pharmaceutical、Lipase M)のリパーゼおよびFusarium heterosporumのリパーゼを含む。これらのリパーゼは、それらのネイティブ体またはセライト、イオン交換樹脂またはセラミックキャリアで固定されたリパーゼの形式で使用され得る。
【0086】
反応系に加えられた水の量は、反応の結果に影響する。エステル交換反応(transesterification)が、水の絶対的非存在下では進行しない一方で、水の量が多すぎる場合、加水分解が起こり、トリグリセリド回収率が低下するか、自発的アシル基転移が部分的にアシル化されたグリセリドに起こり、その結果、2位の飽和脂肪酸が1位と3位に転移する。従って、結合した水を有さない固定化酵素を用いる場合、第1に水が反応を実行する前に加えられた基質を用いて酵素を活性化し、次に反応中に水が加えられない基質を用いることが効果的である。バッチ反応において酵素を活性化するために、加えた酵素の量の0%〜1000%(重量%)の水を含む基質が、酵素を前処理するために使用され、そしてカラム法によって活性化する場合には、水飽和基質がカラム中を連続的に流れるようにする。バッチ反応で使用されるリパーゼの量は、反応条件に従って決定され得る。リパーゼの量に特定の制限はないが、反応混合物の1%〜30%(重量%)が、例えば、セライトまたはセラミックキャリア上に固定されたRhizopus delemarのリパーゼまたはRhizomucor mieheiのリパーゼを用いる場合に適切である。
【0087】
いくつかの好ましい実施形態において、上述の固定化酵素は繰り返し使用され得る。要するに、反応後に反応容器中の固定化酵素を残し、基質を含む新しく調製された反応混合
液で反応混合液を置き換えることによって、反応が続けられ得る。さらに、カラム法によるエステル交換反応のために、基質を含む反応混合液は、酵素1グラムあたり0.05ml/hr〜20ml/hrの速度で、連続的に流すようにする。他の好ましい実施形態において、標的トリグリセリドの内容物は、繰り返しエステル交換反応を行うことによって、増加され得る。すなわち、アシルグリセリドの1位および3位に特異的に作用するリパーゼは、第2脂肪酸またはそのエステルの存在下で作用し、1位および3位の脂肪酸が所望の脂肪酸にエステル交換反応される反応混合物を得る。
【0088】
本発明の標的アシルグリセリドは、慣用的方法(例えば、液体クロマトグラフィー、分子蒸留、下流膜分画または真空超分画またはその組合せ)によって、容易に単離され得る。本発明の標的アシルグリセリドの精製は、アルカリ脱酸、蒸気蒸留、分子蒸留、下流膜分画、真空超分画、カラムクロマトグラフィー、溶媒抽出または膜分離、またはこれらの組み合わせによって行われ得、エステル交換反応によって放出された上述の脂肪酸および未反応の不飽和脂肪酸を除去する。
【0089】
(III. CLAアシルグリセリドの安定化)
本発明はまた、化合物の酸化を防ぐことによって、CLAアシルグリセリドの安定化を企図する。本発明は、任意のメカニズムに制限されない。実際に、本発明のメカニズムの理解は、本発明の組成物を作製することまたは方法を行うことに必要ではない。それにもかかわらず、非結合型脂肪酸と異なり、CLAは、過酸化物分解産物を形成するように思われない。このことは、チオシアン酸第2鉄法によって、分光光度計的に過酸化物値(PV)を測定することで実験的に示された。開口ガラスで貯蔵した後、CLAのPVは32であり、対照的に、リノール酸のPV値は370であった。
【0090】
CLAは、分解の間、揮発性の有機化合物(例えば、ヘキサン)を形成する。数週間スチールドラムに貯蔵された産物は、25ppmまでのヘキサンを含むことが示された。ヘキサンは、食品に好ましくない特徴的は味と臭いを有する。CLAの酸化は、金属不純物の存在によって引き起こされるように思われる。このように、精製中の酸化を促進するこのような化合物の除去のシステムは、有用である。
【0091】
さらに、貯蔵中の酸化を減少するために、化合物にCLAアシルグリセリドを加えることもまた有用である。酸化を防ぐ化合物(抗酸化剤)は、2つの一般的な作用メカニズムを有する。第1には、脂質過酸化ラジカルスカベンジングによる酸化の防止である。例としては、トコフェロールおよびアスコルビルパルミテートが挙げられる。これらに制限されない。酸化を防ぐ第2メカニズムは、金属イオンのキレートによる。金属酸化剤キレート剤の例としては、クエン酸エステルおよびレシチンが挙げられるが、これらに制限されない。いくつかの市販の化合物(例えば、Controx、Grumau(Henkel)、Illertissen、DE)は、過酸化スカベンジャーおよび金属キレート剤(例えば、レシチン、トコフェロール、アスコルビルパルミテート、およびクエン酸エステル)の両方を含む。本発明のいくつかの実施形態において、金属酸化剤キレート剤が、酸化を防ぐためにCLA含有化合物に加えられる。他の実施形態において、金属酸化剤キレート剤および過酸化物スカベンジャーがCLAアシルグリセリド組成物に含まれる。
【0092】
いくつかの実施形態において、ガスクロマトグラフィー/質量分光法が、CLAの揮発性有機分解産物の存在の検出に使用される。他の実施形態において、油安定インデックス(OSI)測定が、CLAの揮発性有機分解生成物の存在の検出に使用される。本発明のいくつかの実施形態において酸化促進剤(例えば、鉄)が、CLAアシルグリセリド組成物から除去される。酸化促進剤を除去する方法は、蒸留または吸着を含むが、それらに制限されない。本発明のいくつかの実施形態において、CLAの酸化を防ぐために、化合物が加えられる。
【0093】
好ましい実施形態において、貯蔵中の酸化を防ぐために、精製中に注意が払われる。これらの注意は、酸化促進剤(鉄または他の金属を含むが、それらに制限されない)として働く化合物の除去を含む。いくつかの実施形態において、吸着剤(漂白用土壌、活性炭ゼオライト、およびシリカを含むが、それらに制限されない)で処理することによって金属が除去される。他の実施形態において、酸化促進剤は、蒸留によって除去される。
【0094】
いくつかの実施形態において、酸化促進剤は、蒸留プロセスにおいて除去される。いくつかの好ましい実施形態において、本発明のCLAアシルグリセリドの蒸留は、分子蒸留装置上で行われる。蒸留は、150℃および10−2ミリバールの圧力で行われる。本発明は、蒸留で記載された条件を制限することを意図しない。他の温度および圧力は、本発明の範囲内である。
【0095】
いくつかの実施形態において、本発明のCLAアシルグリセリドの酸化は、最終産物に金属酸化剤キレート剤または過酸化物スカベンジャーの添加によって防がれる。いくつかの実施形態において、酸化の量は、油安定インデックス(OSI)によって測定される。OSI(例えば、AOCS公式法Cd12b−92)は、油の酸化に対する抵抗性の尺度である。酸化速度の最大変化の時間で、数学的に定義される。この速度は数学的に決定され得る。実験的に、OSIは、揮発性有機酸(酸化産物)が溶解される脱イオン水の伝導性の変化を測定することで算出される。OSI測定を行う場合、微量の金属(酸化プロセスを促進し得る)による混入を避けることが重要である。このプロセスは、一般的にクロム酸塩または界面活性税を欠く洗浄液で使用された全てのガラス製品の注意深い洗浄によって達成される。水は脱イオン化されなければならず、そして全ての溶媒は、高精製グレードでなければならない。
【0096】
(IV. CLAアシルグリセリドの処方および投与)
本発明のCLAアシルグリセリドは、種々の形式で提供され得る。いくつかの実施形態において、投与は経口である。CLA部分は、適切なキャリア(例えば、錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル、溶液、液体、スラリー、懸濁液および乳剤中の、デンプン、ショ糖または乳糖)と一緒に処方され得る。好ましくは、CLA処方物は、抗酸化剤(Controx、Covi−OX、レシチン、およびビタミンCの油可溶化形態(パルミチン酸アスコルビルパルミチン酸))を含むが、これらに制限されない。CLAアシルグリセリドは、油溶液、または上述の任意の他の形式で、提供され得る。本発明の錠剤またはカプセルは、約6.0〜7.0のpHで溶解される腸溶性コーティングでコートされ得る。胃ではなく、小腸で溶解される適切な腸溶性コーティングは、セルロースアセテートフタレートである。いくつかの実施形態において、CLAは、500mg〜1500mgのアシルグリセリドを含むソフトゼラチンカプセルとして提供される。CLAはまた、多数の他の経路(静脈内手段、筋肉内手段、動脈内手段、骨髄内手段、鞘内手段、脳室内手段、経皮性手段、皮下手段、服腔内手段、鼻腔内手段、経腸内手段、局所手段、舌下手段、直腸手段を含むが、これらに制限されない)によって提供され得る。処方および投与の技術におけるさらなる詳細は、Remington,Pharmaceutical Science(Maack Publishing Co.,Easton,PA)の最新版に見られ得る。
【0097】
特に好ましい実施形態において、本発明のアシルグリセリドは、賦形剤または粉末剤と組み合わされる。次に、混合物は、方法(例えば、スプレー乾燥(米国特許第4,232,052号(本明細書中に援用されている)を参照のこと))によって粉末状に形成される。一般的に、スプレー乾燥は、物質を液化または乳化し、次にそれを噴霧する工程を含み、その結果、低いパーセント以外の全ての水が除去され、遊離の流動粉末を生じる。適切なスプレー乾燥ユニットは、高圧ノズルスプレー乾燥および回転版噴霧器、または遠心
噴霧乾燥器の両方を含む。本発明者らは、高ロード(例えば、40%〜65%)共役リノール酸および/または他の油(例えば、イブニングプリムローズオイル(evening
primrose oil)、ルリヂサ油、亜麻油、CLA油)を含む粉末は、油、賦形剤および水の乳濁液の単純スプレー乾燥によって形成され得る。より複雑な方法(例えば、流動床中のスプレーまたは向流様式でのスプレーを含む)を取り入れる必要はない。
【0098】
本発明は、任意の特定の賦形剤に制限されない。実際に、種々の賦形剤(HI−CAP100(National Starch,Bridgewater,NJ)およびHI−CAP200(National Starch,Bridgewater,NJ)を含むが、これらに制限されない)を企図する。本発明の粉末は、賦形剤と比較して、高いパーセンテージの油を含む。いくつかの実施形態において、油は、重量/重量に基づいて20%の粉末である(つまり、粉末は、粉末各100グラムあたり20グラムの油を含む)。他の実施形態において、油は、重量/重量に基づいて35%の粉末である。さらなる他の実施形態において、油は、重量/重量に基づいて少なくとも50%の粉末である。さらなる実施形態において、油は、重量/重量に基づいて少なくとも60%〜65%の粉末である。各々のケースにおいて、油の粉末は、自由流動状および無臭性である。好ましい実施形態において、油は、CLA部分を含む。特に好ましい実施形態において、油は、本発明のCLAアシルグリセリドを含む。
【0099】
CLA部分の有効量はまた、種々の食品(ヒト機能的食品、乳幼児食品、栄養補助食品、および飲料を含むが、それらに制限されない)の補助として提供され得る。この適用の目的で、CLAアシルグリセリドを含む食品は、任意の天然食品、加工食品、食事用食品、または非食事用食品を意味し、その食品に外因性のCLAアシルグリセリドが添加されている。従って、CLAアシルグリセリドは、種々の調製された食品(ダイエット飲料、ダイエットバー、サプリメント、調製済冷凍食品、キャンディー、スナック産物(例えば、チップ)、調製肉製品、牛乳、チーズ、ヨーグルトおよび任意の他の脂肪または油含有食品を含むが、それらに制限されない)中に直接取り込まれ得る。
【0100】
さらに、上記および実施例に示されるように、CLAアシルグリセリド組成物は、CLAアシルグリセリドを含む食品の味と臭いに有害に作用する揮発性有機化合物のレベルを含み得る。100ppm未満のそして好ましくは5ppm未満の揮発性有機化合物を有するCLAアシルグリセリド化合物を含む本発明の食品は、高レベルの揮発性有機化合物を含む食品に対して味と臭いに優れており、盲検味および臭い試験で好まれる。従って、本発明のいくつかの実施形態は、CLAアシルグリセリドを含む食品を提供し、ここで共役リノール酸部分は、十分な低揮発性有機化合物濃度を有するので、食品の味と臭いは影響されない。
【0101】
(実験)
特定の好ましい実施形態および本発明の局面を示しそしてさらに例示するために、次の実施例が提供されるが、その範囲を制限するような解釈はない。
【0102】
次の実験的開示において、次の略語を提供する:M(モル濃度);mM(ミリモル濃度);μM(マイクロモル濃度);kg(キログラム);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);Lまたはl(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏度);KOH(水酸化ナトリウム);HCL(塩酸);Hg(水銀)
【実施例】
【0103】
(実施例1)
(低温度でのプロピレングリコールを用いたベニバナ油の異性体化)
ベニバナ油は、触媒としてKOHを用いて低温にてプロピレングリコール中で異性化した。異性化装置は、1つのネックに温度計を備えた2口フラスコからなり、小さな開口部から過剰の圧力を放出させる。窒素供給源をフラスコの他のネックに取り付けた。フラスコに添加された溶液を、マグネットバーおよびマグネット攪拌器の使用によって攪拌した。フラスコの温度を、マグネット攪拌器に置いた温度制御油浴中にフラスコを置くことで制御した。
【0104】
フラスコを、60.27gのプロピレングリコールおよび28.20gのKOHで満たし、油浴中に浸した。温度は、130℃まで上昇し、KOHを溶解した。KOHを溶解した後、60.09gのベニバナ油をフラスコに導入した。多量の窒素を、2口フラスコを介して5分間循環させた。そして次に、窒素をより少ない量に減少させた。混合物を、約40分間かけて150℃に熱した。次に、混合物を150℃で3.5時間反応させた。間隔をおいて、分析用に3mlのサンプルを取り出した。
【0105】
サンプルを、6mlの熱水中に直接置いて、遊離脂肪酸が上相に分離するまで、過剰量のクエン酸を添加した。加熱は、クエン酸を添加する場合に固体化を防ぐために必要であった。ガスクロマトグラフィーによる分析用に、遊離脂肪酸をメチルエステルに変換するために、0.025gの遊離脂肪酸、5mlの4%HCL溶液およびエタノールを、試験管に加えた。窒素を、試験管に加え、次に試験管をシールし、60℃で20分間水浴中に置いた。次に、試験管を冷やし、そして1mlの精製水および5mlのイソオクタンを添加した。窒素を試験管に加え、30秒間試験管を振盪した。新しい試験管中で、得られた上層に1μlの精製水を加え、窒素添加下で再度振盪した。次に、得られた上層をイソオクタンで洗浄し、3番目の試験管にデカントした。水の吸収のために、少量の硫酸ナトリウムを加えた。次に、1μlのサンプルをガスクロマトグラフィー中に直接注入した。
【0106】
ガスクロマトグラフィー条件は以下の通りである:

システム: Perkin−Elmer Auto System
インジェクター: 240℃、分割なし
検出器: 炎イオン検出器、280℃
キャリア: ヘリウム
カラム: WCOT融合シリカ0.25mm X100M、CP−SL 8
8 for FAME、DF 0.2
オーブンプログラム:1分あたり10℃で80℃(0分)〜220℃まで上昇、および
220℃で10分間維持
【0107】
全ての結果を、相対的ピーク面積パーセンテージで表した。標準は、一般的に利用不可能なので、溶出のピークは他のシステムで確認した。GC−MSで数を決定したが、シス結合およびトランス結合の位置は決定しなかった。従って、結合の位置を確認するために、NMR分析を使用した。主要ピークは、c9,t11および/またはt10,c12であった。CLA異性体のNMR分析については、Marcel S.F.Lie Ken
JieおよびJ.Mustafa,Lipids,32(10)1019〜34(1997)、本明細書中に援用されている、を参照のこと。
【0108】
このデータは、表2に示され、表10に要約されているが、溶媒としてポリプロピレングリコールを用い、触媒としてKOHを使用し、低温で反応した、ベニバナ油の異性体化によって、8,10異性体および11,13異性体を欠く共役リノール酸の産生を生じる。8,10異性体および11,13異性体をc9,t11異性体およびt10,c12異性体から分離するために、本実施例で使用される高極性カラムを上手く使用し得る。8,
10異性体は、c9,t11異性体とともに溶出されるか、c9,t11異性体の直ぐ後に溶出される傾向にある。11,13異性体は、カラム条件に依存して、t10,c11の前で溶出されるか、t10,c12異性体とともに溶出される。
【0109】
【表2】

(実施例2)
(アルコラート触媒を用いたCLAの産生)
この実施例は、触媒としてカリウムメチレートを用いたベニバナ油からのCLAの産生を示す。ベニバナ油(41.5g)の蒸留メチルエステルを0.207gのメタノールおよび0.62gのカリウムメチレートと一緒に反応器に置き、そして閉じる前に反応器を窒素でパージした。反応器内容物を、120℃まで攪拌した。次に、反応を120℃で4時間行った。次に、反応器を80℃まで冷やし、そして内容物を分離漏斗に移して、温蒸留水で洗浄し、次にクエン酸を含む熱水で洗浄した。次に、メチルエステルを、適温にて真空下で乾燥させた。乾燥メチルエステルをイソオクタン中で溶解し、そしてPerkin Elmer オートサンプラーでGLCによって分析した。カラムは、高極性融合シリカ型であった。以下のプログラムを使用した:

注入: 250℃、分割なし
検出: 炎イオン検出器、280℃
キャリア: psigのヘリウム
オーブンプログラム:80℃〜130℃(45℃/分)、次に220℃まで1℃/分
そして10分間ずっと220℃
カラム: WCOT FUSED SILICA 0.25mm 100m、

CP−SIL 88 for FAME,df+0.2
得られたCLAは、表3に示されるように、ほとんど排他的に、CLAのc9,t11異性体およびt10,c12異性体からなった。
【0110】
【表3】

(実施例3)
(CLA粉末の産生)
本実施例は、本発明のCLAアシルグリセリドを含む粉末の産生を示す。CLAアシルグリセリドは、上記のように調製され得る。温水(110°F〜120°Fで538.2ml)およびHI−CAP100(約230.9g、National Starch,Bridgewater,NJ)が組み合わされ、分散によって任意の塊がなくなるまで攪拌した。次に、CLAトリグリセリド(230.9g)を加え、混合物をセッティング30で、Arde Berinco labホモゲナイザー中に2分間ホモゲナイズした。次に、前乳化物を全速力で2〜5分間(総圧力3500psiで一回通過)ホモゲナイズした。粒子の大きさをチェックし、そして約0.8〜1.0ミクロンであった。次に、乳濁液を、次のセッティングで、7フット(foot)の円錐形ドライヤー中でスプレー乾燥した:入口温度(190℃〜215℃);出口温度(95℃〜100℃)。出口温度を、乳濁液フィード(feed)速度を調整することで維持した。このプロセスは、約50%のCLAトリグリセリドを含む遊離の流動粉末を産生する。
【0111】
(実施例4)
(CLA異性体の調製)
この実施例は、t10,c12オクタデカジエン酸からの、c11,t13オクタデカジエン酸の産生を記載する。50gのKOHを、穏やかに加熱しながらプロピレングリコール中に溶解した。次に、100gの98%リノール酸を混合物に添加し、そして混合物を150℃に加熱し、3時間攪拌した。次に、混合物を冷却し、熱水で数回洗浄した後、穏やかに加熱しながら減圧下乾燥させた。得られたCLA混合物はc9,t11オクタデカジエン酸およびt10,c12オクタデカジエン酸ならびに微量のCLA異性体からなっていた。酸性メタノール中での還流沸騰によって、混合物をメチルエステルに変換した。50gの共役遊離脂肪酸を、4.5%硫酸を含むメタノール中に溶解し、水浴中で1時
間、還流条件下で沸騰させた。混合物を冷却し、そして下相を処分した。4.5%硫酸を添加した新鮮メタノールを添加し、還流条件下でさらに1時間、混合物を沸騰させた。冷却した後、このメチルエステル混合物を水で数回洗浄し、次に穏やかに加熱しながら真空下で乾燥させた。10gのメチルエステルをアセトン中に溶解し、そして冷凍庫中にて一晩中−60℃で冷却した。固体沈降物を濾過によって回収し、そしてアセトン中に再融解し、再び一晩中−60℃で冷却した。沈降物を、真空下で乾燥させ、97%のt10,c12 CLAを含むことを、GLC分析によって示した。分析装置は、オートサンプラーを備えたPerkin Elmer GLCからなっていた。カラムは高極性溶解シリカ型であった。
【0112】
次のプログラムセッティングを使用した:
注入: 250℃、分割なし
検出: 炎イオン化検出器、280℃
キャリア: psigのヘリウム
オーブンプログラム: 80℃〜130℃(45℃/分)、次に220℃まで
1℃/分そして10分間ずっと220℃
カラム: WCOT FUSED SILICA 0.25mm×100m、
FAMEについてCP−SIL 88,df=0.2
次に、1gの精製t10,c12異性体を密閉管中にて窒素で覆い、そして220℃で2時間加熱した。冷却後、得られたメチルエステルを、上述のようにGCによって分析した。混合物中のt10,c12の相対的含有量は、52.32%に減少し、そしてc11,t13異性体は41.96%のレベルにて存在した(表4を参照のこと)。
【0113】
【表4】

(実施例5)
(CLA異性体の調製)
この実施例は、c9,t11オクタデカジエン酸からのt8,c10オクタデカジエン酸の産生を記載する。精製c9,t11オクタデカジエン酸を、商業的供給源(Matreya、State College、PA)から入手し得、または第1胃微生物を用いた発酵によって入手し得る(例えば、米国特許第5,674,901号、(本明細書中で援用されている)を参照のこと)。精製c9,t11オクタデカジエン酸を、c9,t11オクタデカジエン酸を窒素下で密閉管中に置き220℃2時間加熱することによって、高いパーセンテージ(例えば、25%〜50%)で、t8,c10オクタデカジエン酸に変換する。
【0114】
(実施例6)
(CLA異性体の調製)
この実施例は、c7,t9オクタデカジエン酸からのt6,c8オクタデカジエン酸の産生を記載する。精製c7,t9オクタデカジエン酸を、調製規模のガスクロマトグラフィーによって入手し得る。精製c7,t9オクタデカジエン酸を、c9,t11オクタデカジエン酸を密閉管中に窒素下で置き220℃2時間加熱することによって、高いパーセンテージ(例えば、25%〜50%)で、t6,c8オクタデカジエン酸に変換する。
【0115】
(実施例7)
(CLA異性体の調製)
この実施例は、t11,c13オクタデカジエン酸からのc12,t14オクタデカジエン酸の産生を記載する。精製t11,c13オクタデカジエン酸を、調製規模のガスクロマトグラフィー(例えば、実施例1に記載したプロセスに従って)によって入手し得る。精製t11,c13オクタデカジエン酸を、c9,t11オクタデカジエン酸を密閉管中に窒素下で置き220℃2時間加熱することによって、高いパーセンテージ(例えば、25%〜50%)で、c12,t14オクタデカジエン酸に変換する。
【0116】
(実施例8)
(アシルグリセロールの化学合成のための中間体)
次の中間体化合物は、CLA異性体および/または他の脂肪酸を含むトリグリセリドの化学合成にとって有用である。これらの中間体の使用は、実施例12〜実施例23にさらに記載している。
【0117】
(1,3−ジパルミトイルアセトン(中間体1))
1,3−ジパルミトイルアセトンを、P.H.Bentleyら、J.Org.Chem.35:2082(1970)に従って、1,3−ジヒドロキシアセトン(二量体として)および、塩化パルミトイルから塩基としてミリミジンを用いて調製する。
【0118】
(1,3−ジ(c9,t11−オクタデカジエノイル)アセトン(中間体2))
表題の化合物を、1,3−ジヒドロキシアセトンおよびc9,t11−オクタデカジエノイル酸塩化物(標準法に従って対応する酸チオ二ル塩化物または五塩化リン)から調製する。
【0119】
(1,3−ジ(t10,c12−オクタデカジエノイル)アセトン(中間体3))
表題の化合物をt10,c12−オクタデカジエン酸および1,3−ジヒドロキシアセトンから中間体2として調製する。
【0120】
(1,3−パルミトイルグリセロール(中間体4))
表題の化合物を、P.H.Bentleyら、J.Org.Chem.35:2082(1970)に従って、水素化ホウ素ナトリウム(sodium borohydride)を用いる、1,3−パルミトイルアセトン(中間体1)の還元によって調製する。
【0121】
(1,3−ジ(c9,t11−オクタデカジエノイル)−グリセロール(中間体5))
表題の化合物を、中間体4で記載した方法に従って、1,3−ジ(c9,t11−オクタデカジエノイル)アセトン(中間体2)から調製する。
【0122】
(1,3−ジ(t10,c12−オクタデカジエノイル)−グリセロール(中間体6))
表題の化合物を、中間体4について記載した方法に従って、1,3−ジ(t10,c12−オクタデカジエノイル)アセトン(中間体3)アセトンから調製する。
【0123】
(1,3−ベンジリデングリセロール(中間体7))
1,3−ベンジリデングリセロールを、Hilbertら、J.Am.Chem.Soc.51:1601(1929)に記載されるベンズアルデヒドおよび無水グリセロールから調製する。
【0124】
(2−ノジル(nosyl)−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体8))
4−ニトロベンゼンスルホニル塩化物(14.7g、12ekv)およびベンジリデングリセロール(中間体7)を、ジクロロメタン(400ml)、トリエチルアミン(20ml)中に溶解し、そして4−ジメチルアミノ−ピリジン(400mg)を加え、そして混合物を0℃で2時間攪拌し、5℃で12時間維持する。ジクロロメタン(800ml)を加え、そしてこの溶液を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液(3×200ml)で洗浄する。次に、有機溶液を、水(2×200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして200mlまでエバポレートする。溶液を、シリカゲルのプラグを介して濾過し、そしてエバポレートする。表題の化合物を、酢酸エチルから結晶化によって単離する。
【0125】
(2−パルミトイル−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体9))
2−ノジル−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体8)(2g、1ekv)を、ジメチルホルムアミド(100ml)中に溶解する。パルミチン酸のセシウム塩(1ekv)(パルミチン酸および炭酸セシウムから調製)を加え、そして反応混合物を、周囲温度で12時間攪拌する。混合物を、エバポレートし、そして表題の化合物を、精製(シリカカラム、酢酸エチルおよびヘキサン)後単離する。
【0126】
(2−(c9,t11−オクタデカジエノイル)−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体10))
表題の化合物を、c9,t11−オクタデカジエン酸セシウム塩(酸および炭酸セシウムから調製)を用いて、中間体9と同様に調製する。
【0127】
(2−(t10,c12−オクタデカジエノイル)−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体11))
表題の化合物を、t10,c12−オクタデカジエン酸セシウム塩(対応する酸および炭酸セシウムから調製)を用いて、中間体10と同様に調製する。
【0128】
(2−パルミトイル1,3−グリセロール(中間体12))
表題の化合物を、2−パルミトイル−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体9)の加水分解によって調製する。2−パルミトイル−1,3−ベンジリデングリセロール(2g、1ekv)およびボロン酸(0,56、2ekv)をトリエチルホウ酸(20ml)中に懸濁させる。混合物を、溶液が透明になるまで周囲温度で攪拌する。混合物を、エバポレートする。粗製産物を、ジエチルエーテル(100ml)中に溶解し、そして水(2×50ml)で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、そしてエバポレートして、表題の化合物を生じる。
【0129】
(2−(c9,t11−オクタデカジエノイル)−1,3−グリセロール(中間体13))
表題の化合物を、中間体12における方法に従って、2−c9,t11−オクタデカジエノイル)−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体10)の加水分解によって調製する。
【0130】
(2−(t10,c12−オクタデカジエノイル)−1,3−グリセロール(中間体14))
表題の化合物を、中間体12における方法に従って、2−t10,c12−オクタデカジエノイル)−1,3−ベンジリデングリセロール(中間体11)の加水分解によって調製する。
【0131】
(1,3−ジトシル−2−パルミトイルー1,3−グリセロール(中間体15))
2−パルミトイル−1,3−グリセロール(中間体12)(0.4g、1ekv)をピリジン(10ml)中に溶解し、そしてp−トルエンスルホニル塩化物(0.5g、2.5ekv)を次第に加える。混合物を、周囲温度で12時間攪拌し、エバポレートし、そして表題の化合物をエタノールから結晶化する。
【0132】
(1,3−ジトシル−2−(c9,t11−オクタデカジエノイル)グリセロール(中間体16))
表題の化合物を、中間体12から出発して中間体15と同様に調製する。
【0133】
(1,3−ジトシル−2−(t10,c12−オクタデカジエノイル)グリセロール(中間体17))
表題の化合物を、中間体14から出発して中間体15と同様に調製する。
【0134】
(1,3−ジパルミトイル−2−ノシル−グリセロール(中間体18))
1,3−パルミトイルグリセロール(中間体4)(2.5g、4.4mmol)を、ジクロロメタン(60ml)に溶解し、4−ニトロベンゼンスルホニル塩化物(1.2g、5.5mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(25mg、0.2mmol)およびトリエチルアミン(1.12g、11mmol)を加える。混合物を、0℃で3日攪拌し、ジクロロメタン(200ml)を加え、そして有機溶液を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液(2×200ml)で洗浄し、そして次に水(2×200ml)で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、エバポレートする。表題の化合物を、クロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチル、およびヘキサン)によって精製する。
【0135】
(1,3−ジ(c9,t11−オクタデカジエノイル)−2−ノジルルグリセロール(中間体19))
表題の化合物を、中間体5から始めて、中間体18と同様に調製する。
【0136】
(1,3−ジ(t10,c12−オクタデカジエノイル)−2−ノシルグリセロール(中間体20))
表題の化合物を、中間体6から始めて、中間体18と同様に調製する。
【0137】
(実施例9)
(1,3−ジ(c9,t11−オクタデカジエノイル)−2−パルミトイルグリセロール(トリグリセリド))
1,3−ジトシル−2−パルミトイル−1,3−グリセロール(中間体15)(1ekv)およびc9,t11−オクタデカジエン酸セシウム塩(2ekv)を、トルエンおよびジメチルホルムアミド(1:1)中に懸濁する。混合物を、周囲温度で12時間攪拌する。溶媒をエバポレートによって除去し、そして表題の化合物をクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチルおよびヘキサン)後に単離する。
【0138】
(実施例10)
(1,3−ジ(t10,c12−オクタデカジエノイル)−2−パルミトイルグリセロール(トリグリセリド))
表題の化合物を、t10,c12−オクタデカジエン酸セシウム塩から出発して、実施例9と同様に調製する。
【0139】
(実施例11)
(1,2,3−トリ(c9,t11−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
表題の化合物を、中間体16およびc9,t11−オクタデカジエン酸セシウム塩から出発して、実施例9と同様に調製する。この化合物をまた、グリセロールおよび活性化酸誘導体(酸塩化物または酸無水物)から直接またはカップリング剤(例えば、ジシクロへキシル−カルボジイミド)(DCC))を用いて調製し得る。
【0140】
(実施例12)
(1,3−ジ(t10,c12−オクタデカジエノイル−2−(c9,t11−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
表題の化合物を、中間体16およびt10,c12−オクタデカジエン酸セシウム塩から出発し、実施例9と同様に調製する。
【0141】
(実施例13)
(1,3−ジパルミトイル−2−(c9,t11−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
表題の化合物を、中間体16およびパルミトイルセシウム塩から出発し、実施例9と同様に調製する。
【0142】
(実施例14)
(1,2,3−トリ(t10,c12−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
表題の化合物を、中間体17およびt10,c12−オクタデカジエン酸セシウム塩から出発し、実施例9と同様に調製する。この化合物をまた、グリセロールおよび活性化酸から直接調製し得る。
【0143】
(実施例15)
(1,3−ジ(c9,t11−オクタデカジエノイル)−2−(t10,c12−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
表題の化合物を、中間体17およびc9,t11−オクタデカジエン酸セシウム塩から実施例9と同様に調製する。
【0144】
(実施例16)
(1,3−ジパルミトイル−2−(t10,c12−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
表題の化合物を、中間体17およびパルミトイルセシウム塩から実施例9と同様に調製する。
【0145】
(実施例17)
(1,3−ジパルミトイル−2−(c9,t11−オクタデカジエノイル)−グリセロール)(トリグリセリド))
実施例13と同じ化合物であるが、異なった方法。1,3−ジパルミトイル−2−ノシルグリセロール(中間体18)(0.25g、0.3mmol)を、ジメチルホルムアミド(5ml)中に溶解する。c9,t11−オクタデカジエン酸セシウム塩(1ekv)を加え、そして混合物を周囲温度で48時間攪拌する。ジクロロメタン(50ml)を加え、そして混合物を飽和水性炭酸水素ナトリウム溶液(2×30ml)で洗浄する。有機相を、硫酸ナトリウム(NaSO)で乾燥させ、そしてエバポレートする。表題の化合物をクロマトグラフィー(シリカ、酢酸エチルおよびヘキサン)後に単離する。
【0146】
(実施例18)
(1,3−ジパルミトイル−2−(t10,c12−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
この化合物は、実施例16と同じであるが、異なった方法。表題の化合物を、中間体18およびt10,c12−オクタデカジエン酸セシウム塩から出発して実施例20と同様に調製する。
【0147】
(実施例19)
(1,2,3−トリ(c9,t11−オクタデカジエノイル)−グリセロール(トリグリセリド))
実施例11と同じ化合物であるが、異なった方法。この化合物を、中間体19およびc9,t11−オクタデカン酸セシウム塩から出発して、実施例20と同様に調製する。
【0148】
(実施例20)
(1,3−ジ(t10,c12−オクタデカジエノイル)−2−パルミトイルグリセロール(トリグリセリド))
実施例10と同じ化合物であるが、異なった方法。この化合物を、中間体20およびパルミチン酸セシウム塩から出発して、実施例17と同様に調製する。
【0149】
これらの実施例において、パルミチン酸は、代表的な非CLA脂肪酸として使用された。同じトリグリセリドを、他の脂肪酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸およびポリ不飽和脂肪酸の両方が挙げられる)から調製し得る。CLAトリグリセリド結合体をまた、生物学的に活性な酸または薬物で調製し得る。さらに、CLAの混合物は、トリグリセリドの混合物を調製するために使用され得る。
【0150】
上記から明らかなことは、本発明がCLAおよび少なくとも1つの他のアシル残基(例えば、ω3脂肪アシル残基、ω6脂肪アシル残基、およびω9脂肪アシル残基)を含む新規のアシルグリセリドを提供し、薬学的組成物、動物の食餌およびヒトの消費に適した製品において使用され得ることである。上記明細書中で述べた全ての出版物および特許は、本明細書中で援用されている。本発明の記載した方法およびシステムの種々の改変およびバリエーションは、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本発明は、特定の好ましい実施形態と関連して記載されたが、特許請求される本発明は、このような特定の実施形態に過度に制限されるべきでないことが理解されるべきである。実際に、本発明を実行するための記載したモードの、医学、生化学、または関連した分野の当業者に明らかな、種々の改変は添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載されるような、機能的アシルグリセリド。

【公開番号】特開2009−84286(P2009−84286A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274844(P2008−274844)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【分割の表示】特願2003−545610(P2003−545610)の分割
【原出願日】平成14年11月19日(2002.11.19)
【出願人】(502376272)
【Fターム(参考)】