説明

機能的色素沈着皮膚同等物

【課題】本発明による評価の方法により、直接および/または間接的に皮膚色素沈着を制御することができる基質または刺激物を評価することが可能となる。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つの表皮同等物、および少なくとも1つの真皮同等物を含むこと、ならびに構成的にメラニンを生産するメラノサイト、および線維芽細胞を含むことを特徴とする、in vitro皮膚同等物に関する。また本発明は、皮膚同等物を調製する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成的色素沈着を有する再構成皮膚、および皮膚色素沈着現象を評価するための方法におけるその使用に関する。そして本発明は、構成的または誘導性のどちらであろうとも、この色素沈着を制御することができる薬剤を評価するための方法に関する。本発明はまた、そのような皮膚モデルを調製するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の色は主に、表皮中における色素、メラニンの存在によるものである。メラニンは、表皮の基底層に位置する特異的樹状細胞、メラノサイトによって合成される。メラニン合成は、細胞内小器官、メラノソーム中で行われ、メラニンが蓄積すると、メラノソームは樹状突起を介して近隣表皮細胞、ケラチノサイトに移送される。
【0003】
紫外線のような物理的因子により、あるいは脱色素化または前色素化(propigmenting)生成物のような化学的因子により、ならびに/あるいは皮膚の機能化の心理学的または病理学的改変の間に、この色素沈着を制御することができる。
【0004】
それゆえ、一方で機械的意味および生理学的意味の両方において、皮膚の役割をよりよく理解するために必要な研究の実行を可能とし、もう一方で化粧用および/または医薬用活性薬剤の活性、あるいは局所成分または経口投与される薬剤の副作用に対する予測試験を構築するモデルを有していることが望ましい。
【0005】
現在、色素沈着の制御を評価するためのin vitroモデルが存在する。それらのモデルは特に以下のモデルである:
‐組換えヒトまたは真菌チロシナーゼ(生化学的のみ、非細胞モデル)のin tuboでの阻害(Virador Analytical Biochem 1999);
‐正常メラノサイト、またはメラノーマに由来するメラノサイトの単層単一培養物(Virador Analytical Biochem 1999, Ni-komatsu JID 2007);
‐正常または固定化ヒトメラノサイト-ケラチノサイトの単層共培養物(Regnier Cell Mol Biol 1999, Yoon Pigment Cell Res 2003);
‐死んだ脱表皮化真皮上または不活性ポリカーボネートフィルター上の色素沈着再構成真皮:メラノサイトおよびケラチノサイトのみより構築される3次元モデル。
【0006】
何年もの間、再構成皮膚モデルを開発する努力が行われており、そのモデルにより、一方で機械的意味および生理学的意味の両方において、皮膚の役割をよりよく理解するために必要な研究を実行することが可能となり、もう一方で化粧用および/または医薬用活性薬剤の活性、あるいは局所成分の副作用に対する予測試験が構成される。
【0007】
そして、EP285471には、毛包の鞘に由来するケラチノサイトの培養物と同等な皮膚を調製する方法が記載されている。真皮同等物上に播種することにより、分化した表皮が取得され、その構造はヒト表皮の構造に近いものである。
【0008】
種々の皮膚同等物が次々に提案されており、メラノサイトをこれらのモデルに導入することが提案されている。
【0009】
特許FR2689904およびWO 95/10600には、ケラチノサイトおよびメラノサイトを含む表皮同等物を調製すること、および日焼け試験におけるその使用が記載されている。しかし、これらの表皮同等物は、真皮との生理的相互作用を再生産しない、および線維芽細胞またはマトリックス同等物を含まない、不活性支持体上で取得される。さらに、腫瘍プロモーター(TPAまたはPMA)の使用のために、正常表現型にあるメラノサイトを培養条件によって維持することを可能にはしない。
【0010】
しかし、これらのモデルは生きた真皮を含まないために、いずれのモデルも、真皮(線維芽細胞、細胞外マトリックス、真皮表皮接合成分)の参加による制御を理解することを可能にはしない。
【0011】
生きた線維芽細胞を含むヒト器官型培養モデルが開発されたときでさえ、機能的欠損を有している(構成的色素沈着、または特に紫外線被爆により誘導することができる色素沈着がない)ために、生理学的意味で色素沈着の制御を評価することは、それらのモデルによっては可能にはならなかった。
【0012】
脱表皮化した死んだ真皮上、または線維芽細胞により再コロニー化したスポンジ(コラーゲンのマトリックス+GAG)上で、色素沈着皮膚のモデルが開発されてきた。しかし、その中でメラノサイトの局在はしばしば不完全であり、これらのモデルは機能的欠陥を提示している。特に、それらのモデルによって構成的色素沈着はほとんど、または全く示されておらず、紫外線または生理的前色素沈着薬剤による色素沈着の刺激はこれらのモデルで観察されていない。
【0013】
遊離コラーゲン(ピンと張ってはいない)のマトリックス中に埋め込まれた線維芽細胞もまた、色素沈着皮膚を再構成するために使用されている。しかし、これらのモデルは、色素沈着の制御を評価するために使用することができなくなる欠点を有している。
【0014】
Bertauxら(Br J Dermatol 1988)は、表皮細胞が表皮を離れ、格子の表面で増殖するために、真皮同等物上に皮膚の生検を導入することにより、色素沈着皮膚のモデルを開発した。そのような技術の欠点の中で、表皮細胞の制御の欠如、ならびに1個だけの皮膚再構成物が生検可能であった事実が言及されてよい。それゆえ、他と比較しうる実験はなされていない(再現性なし)。さらに、Haake and Scott (Scott and Haake, J. Invest Dermatol 1991)により開発されたモデルのように、このモデルでは現実の機能性は全く示されていない。メラニンの構成的または誘導性存在のいずれも観測されていない。
【0015】
Archambaultら(J Invest Dermatol. 1995)によるモデルでは、メラニン合成刺激はUVB照射後に誘導されるが、生理学的意味に近いin vitroの意味で色素沈着およびその制御を研究することができるためには完全には受け入れられない条件を構築する、表皮変換を誘導する投与量(毒性投与量)に対して誘導されるものである。
【0016】
色素沈着再構成皮膚を再構成する他の最近の試みが、遊離格子支持体上でおこなわれている。しかし、得られるモデルは正常ヒト皮膚のモデルに対応しない。なぜなら、それらのモデルはマウスのメラノサイトを使用して作り出されるか(Yoshimura, J Dermatol Sci 2001)、あるいはTPAの存在下(Liu Cell Biol Int 2007)で、腫瘍形質転換を誘導する条件下でメラノサイトを培養する(Liu, Cell Biol Int 2007)ためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】EP285471
【特許文献2】FR2689904
【特許文献3】WO 95/10600
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Virador Analytical Biochem 1999, Ni-komatsu JID 2007
【非特許文献2】Regnier Cell Mol Biol 1999
【非特許文献3】Yoon Pigment Cell Res 2003
【非特許文献4】Bertaux et al., Br J Dermatol 1988
【非特許文献5】Scott and Haake, J. Invest Dermatol 1991
【非特許文献6】Archambault et al.,J Invest Dermatol. 1995
【非特許文献7】Yoshimura, J Dermatol Sci 2001
【非特許文献8】Liu, Cell Biol Int 2007
【非特許文献9】Martinhao Sauto et al., Sao Paulo Med J 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
それゆえ、皮膚およびその破壊、ヒト皮膚の生理的相互作用の再生産に関連のある理解を取得することを可能にするモデルの必要性が存在する。
【0020】
また、皮膚色素沈着の制御を評価する方法の必要性もまた存在し、その方法により、皮膚色素沈着およびその破壊、ヒト皮膚の生理的相互作用の再生産に関連のある全ての機構に関連のある理解を取得することが可能となる。
【0021】
特に、ヒト皮膚中、および生きた線維芽細胞を有する真皮部分に存在するメラノサイトに類似した局在を有する、生きた機能性メラノサイトを含む皮膚同等物に対する必要性が存在する。
【0022】
この理由から、本発明の主題は、in vitroの皮膚同等物であり、その皮膚同等物が、少なくとも1つの表皮同等物および少なくとも1つの真皮同等物を含むこと、ならびに構成的にメラニンを合成するメラノサイトを含むことに特徴づけられる。このメラニンは、ケラチノサイトに移送される。本発明による皮膚同等物はまた、生きた線維芽細胞も含む。
【0023】
それゆえ、本発明による皮膚同等物は構成的色素沈着、すなわち紫外線または前色素沈着活性薬剤による刺激が全く存在しない色素沈着を提示する。「構成的色素沈着」の語は、刺激されていない基底状態でメラニンを生産するメラノサイトの能力を意味することが意図される。この色素沈着は、生理的条件下で、メラノソーム内で成熟メラニンを生産するメラノサイトが存在することに相当する。メラノサイトの樹状突起によりメラニンはケラチノサイトに移送され、表皮同等物において均一に分散した色素沈着がもたらされる。メラノサイト中および近隣ケラチノサイト中にメラニン顆粒が存在するために、構成的色素沈着が停止する。
【0024】
本発明はより詳しくはヒト皮膚同等物である。
【0025】
特に本発明は、正常ヒトメラノサイト、ケラチノサイトおよび線維芽細胞を含む、全体および機能性色素沈着単位(または複合体)、ならびにマトリックス環境に関する。前記単位(または複合体)は、少なくとも1つの表皮同等物および少なくとも1つの真皮同等物を含み、構成的および機能的色素成分(生理的条件下で構成的および誘導性である色素沈着)を含む。
【0026】
本発明の主題はまた、薬剤の色素沈着を制御する能力を評価する方法でもあり、
(a) 前記薬剤はin vitro皮膚同等物に適用され、前記皮膚同等物は、構成的にメラニンを生産するメラノサイトを含む少なくとも1つの表皮同等物、ならびに生きた線維芽細胞を含む少なくとも1つの真皮同等物を含み、ならびに
(b) 評価される薬剤が適用されているin vitro皮膚同等物の色素沈着(i)が、薬剤にさらされていない対照皮膚同等物の色素沈着(ii)と比較される
ことにより特徴づけられる。
【0027】
「1つの(an)」薬剤の語は、別に特定されない限り、本明細書において、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0028】
広義における色素沈着の制御を、比較する目的のために定性的および定量的に評価することができる。以下を解析するために、以下のいずれかの方法を使用してよい:
- 皮膚同等物の色素沈着および/または着色、ならびにメラニンの量および性質、ならびにケラチノサイトへの移送、およびケラチノサイトにおける分解;例えば、直接または間接分光比色法(輝度およびITAの測定)による、選択的分光法(メクサメーター(mexameter)測定)による、シアスコピー法(siascopy)による、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定(DHIメラニン、DHICAメラニン、フェオメラニン(pheomelanin)の測定)による、ソルエン(soluene)または水酸化ナトリウムで皮膚を溶解した後の可視光吸光光度分析による、Fontana-Massonでメラニンを染色した後のイメージ解析による、共焦点および多光子イメージングによる、電子常磁性共鳴による、透過電子顕微鏡による方法が言及されてよい;
- メラノサイト中で生産され、ケラチノサイトへ移送され、および/またはケラチノサイトで分解されるメラノソームの数、形状、および成熟度;
- 例えば、pmel-17、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2 (DCT)、MATP、タンパク質P MART-1、SCL117A、SLC24A5 (nckx5)、OA1のようなメラノソームのタンパク質の量、成熟度、および/または酵素活性;
- メラノサイトの数、分散、形態(樹状突起様);
- メラニン合成、樹状突起中の移動、およびケラチノサイトへのメラニンおよびメラノソームの移送の経路に関わる、膜、細胞質および核レベルでのレセプター、分子、転写因子の量、成熟度、および/または酵素活性。例として、MC1-R、m-KIT、ETB-R、ETA-R、MITF、USF-1、SOX10、ミオシンVa、Rho、Rac、Rab27A、メラノフィリンが言及されてよい。
【0029】
使用される方法は、ドーパ反応、免疫解剖化学、解剖学的染色、イメージ解析、分子生物学(PCR)、生化学(WB, ELISA酵素免疫アッセイ)などの技術のような、タンパク質の量および活性、およびそれをコードする遺伝子の発現を評価する方法であってよい。
【0030】
前記方法は、より詳しくはヒト皮膚同等物を使用し、特に少なくともヒト皮膚に由来するメラノサイトおよび/またはケラチノサイトおよび/または線維芽細胞を含み、有利には少なくともヒト皮膚由来のメラノサイトを含む皮膚同等物を使用する。
【0031】
そして特に前記方法は、正常ヒトメラノサイト、ケラチノサイトおよび線維芽細胞を含む、全体および機能性色素沈着単位(または複合体)、ならびにマトリックス環境に適用される。前記単位は、少なくとも1つの表皮同等物および少なくとも1つの真皮同等物を含み、構成的および機能的色素成分(生理的条件下で構成的および誘導性である色素沈着)を含む。
【0032】
実際に、本発明の文脈中において、上記に概説された必要性を満たし、
- 色素沈着に関わる主要関係細胞、すなわちメラノサイト、ならびに主要細胞パートナー:ケラチノサイトおよび線維芽細胞を含む。
- 細胞パートナー、真皮-表皮接合および細胞外マトリックスの間に天然に存在する接触および影響を尊重し、可能とするために、皮膚の三次元組織化を再生産する。
- 生理現象を再生産する条件下で機能的である、すなわち、基底状態で色素沈着し(構成的色素沈着)、紫外線または色素沈着剤により刺激されることができる
という特徴を有するモデルを取得することが可能であることが発見された。
【0033】
本発明によるモデルには、皮膚の構造に近い構造において、皮膚に存在し、色素沈着に関わる3つの主要なタイプの細胞が含まれ、それゆえそのモデルにより、メラノサイトの制御、ならびにその細胞パートナーおよび細胞外マトリックスの制御を再生産することが可能となる。
【0034】
実際皮膚において、色素細胞は近隣表皮および真皮細胞に近接して結合している。表皮-真皮接合部分において、基底層におけるその局在により、メラノサイトとケラチノサイトとの間、およびメラノサイトと線維芽細胞との間にも、物理的および化学的結合が存在する。これらの2つのタイプの細胞との接合部分の機能は、メラノサイトの制御および色素沈着の制御である。
【0035】
ケラチノサイトにより放出される傍分泌因子により、およびE-カドヘリンにより確立される物理的な直接結合により、ケラチノサイトは、メラノサイトの接着、増殖、および生存、ならびに生産されるメラニンの量および質を制御すると認識されている。これらの因子の中で、例えばαメラノサイト刺激ホルモン(MSH)、エンドセリン1 (ET1)、幹細胞因子(SCF)、プロスタグランジンE2およびF2α(PGE2, PGF2α)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、または神経増殖因子 (NGF)が言及されてよい。
【0036】
同様に、色素沈着において線維芽細胞により演じられる役割は、現在疑う余地のないところである:bFGF、SCF、または肝細胞増殖因子(HGF)のような、ケラチノサイトにより生産される因子と同一の因子、あるいはディコプフル(dickkopf1)およびマトリックスタンパク質のような、異なる因子を分泌することにより、線維芽細胞はメラノサイトの発生、増殖、形態および分化を制御する。
【0037】
さらに、真皮-表皮接合の成分、真皮細胞外マトリックス(ECM)の分子もまた、メラノサイトおよび色素沈着に影響力を有する。なぜなら、メラノサイトは、インテグリンおよびレセプターを介して、基底膜の分子に、特にラミニンおよびIV型コラーゲンに結合し、基底膜の分子が存在することが、メラノサイトが正確な基底部に位置するために必要であるためである。真皮-表皮接合(すなわちDEJ)の質は、線維芽細胞とケラチノサイトとの間の相互作用よりその成分とそれらの局在がもたらされ、DEJにおける固定の型(インテグリン)に影響する。
【0038】
線維芽細胞由来のECMタンパク質の制御は、正常メラノサイトの増殖、形態、およびメラニン合成活性にも影響を及ぼす。特にI型コラーゲン、IV型コラーゲン、フィブロネクチンおよびラミニンはチロシナーゼ活性を刺激し、メラノサイトの樹状化およびその増殖を制御する。
【0039】
さらに、以下の細胞制御ループが存在する:ケラチノサイトは直接メラノサイトに、または間接的に線維芽細胞に作用し、線維芽細胞は次いでメラノサイトに作用する:例えば、ケラチノサイトによるIL-1αおよびTNF-αの分泌により、線維芽細胞によるHGFおよびSCFの生産が刺激され、次いでメラノサイトを活性化することができる。同様に、線維芽細胞は、ケラチノサイトを刺激するサイトカイン(例えばKGF)を放出してもよい。これらのケラチノサイトは次いで色素沈着制御因子を生産する。皮膚を日光にさらすことにより、色素沈着の刺激が誘導されることもまた知られている。これは日焼けであり、メラノサイトの一時的活性化およびメラニン合成の増加に相当する。
【0040】
この反応は主にパートナー細胞、ケラチノサイトおよび線維芽細胞の傍分泌因子の貢献によるものであり、前記傍分泌因子の生産は紫外線により増大する。
【課題を解決するための手段】
【0041】
予想外なことに、本発明によるモデルにより、これらの現象を再生産し、それゆえ皮膚色素沈着を改変することができる基質または刺激物を試験することが可能となる。
【0042】
本発明による評価の方法により、これらの現象全てを考慮に入れ、それゆえ直接および/または間接的に皮膚色素沈着を制御することができる基質または刺激物を評価することが可能となる。
【0043】
本発明による皮膚同等物‐すなわち再構成皮膚‐は、少なくとも1つの表層および少なくとも1つの基底層を含む層状分化表皮同等物を有する。有利にはケラチノサイトは、in vivoで表皮、すなわち、真皮同等物と接触する基底層を有する層状多層上皮の特徴、および分化を反映する上部層を再生産し、表皮の周辺の深淵部から、基底層直上層(または有棘細胞層)、顆粒層(stratum granulosum)、および角層(stratum corneum)を再生産する。
表皮同等物の上部層は、基底層直上層、顆粒層、または角層に相当する層の少なくとも1つを意味するものとして理解される。
【0044】
表皮同等物中で使用されるケラチノサイトを、既知の先行技術の方法のいずれかにより調製することができる。例として、正常または病理皮膚サンプルに由来する分離表皮からの培養物が言及されてよい。
【0045】
好ましくは本発明により、使用されるケラチノサイトを正常または病理皮膚サンプルに由来する分離表皮から、特にRheinwald and Green, Cell, vol. 6, 331-344, 1975に記載された方法により調製する。それらのケラチノサイトは、コーカサス種、アジア種、またはアフリカ種の皮膚に由来してよく、(特に背中、顔、胸、手の甲、手のひらなどのような)種々の解剖学的部位に由来してよく、日光にさらされた部位またはさらされていない部位に由来してよい。正常皮膚に由来するケラチノサイトを使用してよい。
本発明のある特定の態様によれば、例えばしみ(化学的ほくろ)、肝斑、白斑、母斑、色素性乾皮症または悪性黒色腫のような皮膚病理に由来するケラチノサイトもまた使用してよい。それらのケラチノサイトは一般に、ある遺伝子群を過剰発現または過少発現する改変ケラチノサイトであってもよい。
【0046】
メラノサイトは表皮に統合され、本発明による表皮同等物の基底層に局在する。
これらのメラノサイトは表皮同等物中に均一に分散する、すなわちそれらの分散密度は、前記真皮同等物の表面に並行な平面で実質的に一定であり、ヒト皮膚で見られる密度に実質的に類似している。そして全てのメラノサイトは本発明による表皮同等物基底層にあり、再構成の質を保証する表皮同等物の基底層直上層および角層にメラノサイトは存在しない。
【0047】
メラノサイトは、大人、若者または新生児のヒト皮膚、特に大人のヒト皮膚に由来する。そのようなメラノサイトは、毛包のメラノサイトと異なりTRP-2酵素を発現する。それゆえ合成されるメラニンの性質は異なる:表皮のメラノサイトはDHI-メラニンおよびDHICA-メラニンからなるユーメラニン(eumelanin)を生産し、毛髪のメラノサイトはTRP-2酵素発現がないために、主にDHI-メラニンのみを生産する。
【0048】
さらに、皮膚メラノサイトの主要な生理的刺激は紫外線であり、紫外線により、メラニン合成が活性化され、メラニンの再分散が行われることにより、皮膚の褐色化、日焼けが誘導される。この生理的機能は毛髪のメラノサイトには関係なく、毛髪のメラノサイトの色素沈着は紫外線により誘導されない。
【0049】
メラノサイトは、コーカサス種、アジア種、またはアフリカ種の皮膚に由来してよく、(特に背中、顔、胸、手の甲、手のひらなどのような)種々の解剖学的部位に由来してよく、日光にさらされた部位またはさらされない部位に由来してよい。正常皮膚に由来するメラノサイトを使用してよい。本発明のある特定の態様によれば、例えばしみ(化学的ほくろ)、肝斑、白斑、母斑、色素性乾皮症または悪性黒色腫のような皮膚病理に由来するメラノサイトもまた使用してよい。それらのメラノサイトは一般的に、ある遺伝子群を過剰発現または過少発現する改変メラノサイトであってもよい。
【0050】
基底層に局在するメラノサイトは、近隣ケラチノサイトに移送されるメラノソームおよびメラニンを生産する。そしてメラノサイトの型にリンクされる、ある程度の強さで構成的色素沈着を有する皮膚の表現型を、再生産することができる。色素沈着またはメラニンの量を測定する方法のいずれか、例えば、分光比色法(輝度の測定)により、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定により、solueneまたは水酸化ナトリウムで皮膚を溶解した後の可視光吸光光度分析により、Fontana-Massonでメラニンを染色した後のイメージ解析により、共焦点および多光子イメージングにより、構成的色素沈着を定量化することができる。
【0051】
有利には、本発明による皮膚同等物は、紫外線および/または前色素沈着剤に全くさらされることなく、Chardonら(In Biological responses to ultraviolet A radiation, Ed Urbach 1992)の技術により測定される、80以下の輝度を有する。この値は、特にアフリカ人種の皮膚同等物の場合、より低くてもよく、特に非常に薄い範囲から黒い範囲にわたる表現型に対して、+80から-40の範囲であってよい。一般的に、本発明による色素化再構成皮膚は、紫外線照射に全くさらされず、メラノサイトを含まない再構成皮膚と比較した輝度(デルタL)の少なくとも1.5倍の差異を有する。
【0052】
本発明による真皮同等物は、主軸が少なくとも2つの直行する方向に向けられる線維芽細胞を含む。有利には、真皮同等物の表面に対して縦方向に向けられる線維芽細胞のパーセンテージは50%より小さい。
【0053】
真皮同等物は遊離コラーゲンまたは格子を含み、その遊離コラーゲンまたは格子は全ての方向に収縮可能で、均質であり、生検を有さない。線維芽細胞、および適切であれば真皮の他の細胞は、連続コラーゲンゲル中に分散されている。
【0054】
真皮同等物は、少なくとも1つのI型コラーゲンのマトリックスを含み、その中に線維芽細胞が分散されている。真皮同等物はまた、他の細胞外マトリックス構成物も含んでよい。「細胞外マトリックス構成物」の語は、特にコラーゲンのような分子、特にIV型コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、またはヒアルロン酸を指す。本発明のある態様によれば、真皮同等物は、少なくともIV型コラーゲンおよびラミニンを含む。好ましくは、真皮同等物はエンタクチンも含む。これらの種々の構成物の濃度を当業者は調節してよく、例えば、ラミニンに対して、最終容量の1%と15%との間、IV型コラーゲンに対して、最終容量の0.3%と4.5%との間、およびエンタクチンに対して、最終容量の0.05%と1%との間であろう。
【0055】
使用されるコラーゲンはウシ胎仔起源、ラットの尾または魚由来、あるいは他の天然源のコラーゲンであってよく、あるいは線維芽細胞の存在下で収縮を可能とする遺伝子操作により生産されるコラーゲンであってよい。
【0056】
マトリックスは、ピンと張ってはいないコラーゲンのゲルであり、水平方向および垂直方向両方の収縮により取得され、線維芽細胞の選択的組織化を強いるものではない。そのようなマトリックスは、「遊離している」とも呼ばれ、支持体に接着せず、その容量を制限なく改変し、さまざまな厚さおよび直径をそれに付与することができる。真皮同等物の厚さは一般に、少なくとも0.05 cm、特におよそ0.05 cmから2 cmであろうが、本発明による皮膚同等物の有利な特性を損なわずに増大させてもよい;同様に、その厚さを当業者はおよそ3 mmから20 cmまたはそれ以上に調節するであろう。
【0057】
生きた線維芽細胞を含む真皮成分と多層化した表皮同等物との間で、接触は直接であり、構造的見地と生化学的見地の両方からin vivoに存在する真皮-表皮接合に類似した真皮-表皮接合を構成する。生化学的見地からそれは、とりわけIV型コラーゲン、VII型コラーゲン、ラミニン5、エンタクチンまたはフィブロネクチンのような、基底層の;緻密層の;透明層の(lamina lucida);および準基底部(sub-basal zone)の成分を含む。
【0058】
皮膚同等物は、本発明による評価の方法で使用され、内皮細胞、真皮乳頭細胞、ならびにリンパ球、樹状細胞、マクロファージまたはランゲルハンス細胞のような免疫系細胞、脂肪細胞、神経細胞、ならびにそれらの混合物もまた含むことができる。
【0059】
上記のように、皮膚同等物は構成的色素沈着を提示し、前色素沈着剤および/または紫外線にさらすことにより、色素沈着を増大させてもよい。
【0060】
特に、生理条件下における個人のヒト皮膚が受ける日常または天頂照射に同等な投与量である紫外線による刺激の後、本発明によるモデルの線維芽細胞は、色素沈着および/またはその制御に関わるサイトカインまたは増殖因子のような細胞質可溶性(cytosoluble)因子を生産する。
【0061】
さらに、基底層におけるメラノサイトの数が、紫外線による、特に少なくとも1.5倍の刺激の後増大し、前記メラノサイトの形状が改変される:メラノサイトは、樹状突起の数およびその伸長が増大する樹状化の顕著な増大を示す;メラニンの量もまた、合成により、および表皮層への移送を増大させることにより、1.5倍以上に増大する。
【0062】
皮膚の輝度における変動、あるいはメラニンを定量する他のいずれかの方法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用する測定により、solueneまたは水酸化ナトリウムで皮膚を溶解した後の可視光吸光光度分析により、Fontana-Massonでメラニンを染色した後のイメージ解析により、あるいは共焦点および多光子イメージングにより、色素沈着の増大を評価する。
【0063】
紫外線照射後の本発明によるモデルの生理機能性により、以下のパラメーターにおける変動が示される:
- 巨視的色:紫外線にさらされる皮膚は、さらされない皮膚よりもはるかに色が黒い:この色素化の巨視的刺激を、輝度の減少(DL = 4.38)により定量化する。
- メラノサイト濃度:紫外線照射後のメラノサイト濃度は、正常皮膚におけるように増大する。
- メラニンの量:紫外線照射後に色素化は実際に刺激される:メラニンの量は増加し、この増加を、Fontana-Masson染色(メラニン顆粒を明示するために染色する)後のイメージ解析により、あるいはソルエンまたは水酸化ナトリウムで抽出したあとのアッセイにより定量化する。
【0064】
本発明の主題はまた、そのような皮膚同等物を調製する方法でもある。前記方法は、特に
a) 線維芽細胞とコラーゲン溶液とを接触させ、その後十分な期間インキュベートして、その中に線維芽細胞が分散している収縮コラーゲンマトリックスを取得し、真皮同等物を構成する工程、
b) ケラチノサイトおよびメラノサイトの混合物と一緒に、a)で取得された真皮同等物を播種し、液体培地中に浸して培養する工程、
c) b)で取得された培養物全体(真皮同等物上に播種されたケラチノサイトおよびメラノサイト)が出現し、空気-液体界面で培養を継続して、メラノサイトを含み、コラーゲンマトリックス中に線維芽細胞を含む真皮同等物上にあり、皮膚同等物を構成する多層化表皮同等物を取得する工程
を含む:。
【0065】
好ましくは、表皮同等物は角層を形成し、メラノサイトは基底層上に位置する。
【0066】
そして皮膚同等物を取り除き、種々の評価方法において、その支持体上で使用することができる。
【0067】
均一な懸濁物中で、I型コラーゲン、特にウシ由来のもの、あるいはI型コラーゲンとIII型コラーゲンとの混合物(格子の最終容量に対しておよそ30%)とともに工程aを実行することができる。有利には、それに対して、ラミニン(特に最終容量に対して1%から15%)、IV型コラーゲン(特に最終容量に対して0.3%から4.5%)、および/またはエンタクチン(特に最終容量に対して0.05%から1%)のような他の構成要素を添加し、均一な懸濁物を取得する。
【0068】
線維芽細胞を、ヒト皮膚、有利には大人の皮膚より取得する。線維芽細胞は、コーカサス種、アジア種、またはアフリカ種の皮膚に由来し、(背中、顔、胸、手の甲、手のひらなどの)種々の解剖学的部位に由来し、日光にさらされた部位またはさらされない部位に由来する、単独またはいずれかの比率の混合物である、乳頭および/または網状線維芽細胞であってよい。ある特定の態様において、例えばしみ(化学的ほくろ)、肝斑、白斑、母斑、悪性黒色腫または色素性乾皮症のような皮膚病理に由来する線維芽細胞を使用する。線維芽細胞はまた一般に、ある遺伝子群を過剰発現または過少発現する改変線維芽細胞であってもよい。
【0069】
それらを、当業者に既知の適切な培地中で培養し、その後懸濁してコラーゲンおよび増殖因子の懸濁物と混合する。1日から6日間、好ましくは4日から5日間、およそ37°C、一般に36°Cと37.5°Cとの間の温度で、混合物をインキュベートする。有利には、それを接着させない支持体上、特に支持体の縁に混合物が接着しないようにして、混合物をインキュベートする;特に、その表面の前処理、例えばウシアルブミンまたは血清で前記表面を被覆することにより、そのような支持体を取得してよい。そして、複数の方向に自由に収縮する一方、栄養培地を放出し、その中に線維芽細胞が埋め込まれるコラーゲンゲルが取得される。
【0070】
工程bを実行するために、ヒト皮膚、好ましくは大人の皮膚に由来するケラチノサイトを使用する。ケラチノサイトは、コーカサス種、アジア種、またはアフリカ種の皮膚に由来し、(背中、顔、胸、手の甲、手のひらなどの)種々の解剖学的部位に由来し、日光にさらされた部位またはさらされない部位に由来してよい。ある特定の態様において、例えばしみ(化学的ほくろ)、肝斑、白斑、母斑、または悪性黒色腫のような皮膚病理に由来するケラチノサイトを使用する。ケラチノサイトはまた一般に、ある遺伝子群を過剰発現または過少発現する改変ケラチノサイトであってもよい。
【0071】
伝統的な細胞培養方法により、ケラチノサイトを調製することができる。
【0072】
特に、個人より採取された皮膚外植片を使用して、以下の手順を実行してよい:
- 外科用メスを使用して皮下組織を除去する;
- 抗菌処理(例えば:ゲンタマイシン)により皮膚サンプルを除菌する;
- タンパク質分解処理(例えば:トリプシンおよびディスパーゼ)、ならびにその後の解剖により真皮を表皮より分離する;
- 続けて、0.05%トリプシン、および0.02% EDTAの溶液の存在下で細胞の分離を促進する;10%血清を含むDMEM培養培地を添加することにより、トリプシンの効果を中和する;
- 細胞懸濁物を均質化し、続けてRheinwald and Green (Cell, 1975)の技術によりケラチノサイト培養培地中で洗浄する。
【0073】
Rheinwald and Green (Cell, vol. 6, 331-344, 1975)の技術により、増殖因子、特にアミノ酸、血清、コレラ毒、インスリン、トリヨードチロニン、およびpHバッファー溶液の存在下で、当業者に既知の適切な培地中で、3T3線維芽細胞により構成されるフィーダー支持体上で培養させることにより、ケラチノサイトを増殖させ、播種する。特にそのような培養培地は、ケラチノサイトに対する少なくとも1つの分裂促進因子(例えば、表皮増殖因子(EGF)および/またはケラチノサイト増殖因子(KGF)、特にKGF)、インスリン、ヒドロコルチゾン、および任意に抗生物質(例えば:ゲンタマイシン、アンフォテリシンB)を含んでよい。
【0074】
有利には、前記培地はまた、血清または下垂体抽出物、例えばウシ由来の血清または下垂体抽出物、エピネフェリン、トランスフェリン、および/または非必須アミノ酸も含んでよい。
【0075】
メラノサイトは、コーカサス種、アジア種、またはアフリカ種の皮膚に由来し、(背中、顔、胸、手の甲、手のひらなどの)種々の解剖学的部位に由来し、日光にさらされた部位またはさらされない部位に由来する、若者または大人のヒト皮膚に由来するメラノサイトである。ある特定の態様において、例えばしみ(化学的ほくろ)、肝斑、白斑、母斑、または悪性黒色腫のような皮膚病理に由来するメラノサイトを使用する。メラノサイトはまた一般に、ある遺伝子群を過剰発現または過少発現する改変メラノサイトであってもよい。
【0076】
メラノサイトを、ホルボールエステルの非存在下で、DMEM/F12またはMCDB153のような塩基性培地からなり、(例えばbFGF、SCF、ET-1、ET3またはαMSHのような)メラノサイト特異的増殖因子で補填されている適切な培地中、ならびに特にM2培地(Promocell)またはM254(Cascades Biologics(登録商標))のような他の培地中で、培養させることにより増殖させてよい。
【0077】
メラノサイトおよびケラチノサイトの細胞懸濁物を、これらの培養物から調製し、混合して、混合メラノサイト/ケラチノサイト懸濁物を取得する。メラノサイト/ケラチノサイト比は、1:10と2:1との間であってよく、一般におよそ1:1である。
【0078】
それゆえ、本発明により皮膚同等物を調製する方法は、ケラチノサイトおよびメラノサイトをそれぞれの増殖培地中で別々に増殖させる工程を含む。その後細胞を解離させ、規定の濃度および規定の比率で真皮同等物上に直接共播種する。
【0079】
この方法は、より大きい柔軟性をもたらし、増殖の間、および真皮同等物上へ表皮細胞を播種する間、それぞれの細胞型を調節する可能性をもたらす。播種され、前記比率にあるそれぞれの型の細胞の量をこのように制御することは、表皮の再構成の制御および再生産性の点で、産業応用に対する有利な点を表す。
【0080】
それゆえ、本発明の変種により、正常皮膚からのケラチノサイトおよびメラノサイトを使用してよく、あるいは皮膚病理に由来するメラノサイトおよびケラチノサイトを使用してよく、あるいは皮膚病理に由来する2型の細胞のうちの1つを使用してよく、もう1つの型の細胞は正常で健康な細胞に相当すると見ることができる。
【0081】
この混合懸濁物を、真皮同等物上に配置する;有利には真皮同等物を、コラーゲンのような生物性物質を介する支持体に接着させる。メラノサイト/ケラチノサイト懸濁物を、制限された表面部分上でそれを維持するためにリング状またはそれに相当するいずれかに配置する。細胞混合物をカバーするように液体栄養培地を添加する;この培地は当業者に既知の増殖因子、特にEGFおよび/またはKGFを含む。培地を定期的に交換し、2日と10日との間、特に5日から8日、およびおよそ7日間の間、培養物を浸潤し続ける。有利には、培地は浸潤開始から2日目から、理想的には浸潤開始から4日目からKGFを含む。
【0082】
上記のように、真皮同等物は、正常線維芽細胞および/または病理由来の線維芽細胞を含んでよい。これらの種々の型の真皮を、上記の種々の変形により、正常および/または病理ケラチノサイト/メラノサイト混合物より調製される表皮同等物と組み合わせてよい。
【0083】
そして皮膚を、それ自体既知のやり方で浸潤し、ケラチノサイトに分化させ、層状表皮同等物を形成させる。この工程cは空気-液体界面に浸潤させる培養に相当し、分化構造が得られるまで、一般的におよそ7日、継続する。しかし、より長い期間、例えばおよそ28日間、工程cをを継続する一方、同時に上記で特定される有利な特徴を有する皮膚同等物を保持してよい。栄養培養培地は、定期的に交換されるであろう。皮膚同等物をその後除去し、必要な試験を実行する。
【0084】
調製方法では、TPAまたはPMAのような突然変異誘発基質は使用されず、細胞は腫瘍型の改変を全く提示しない。
【0085】
本発明により取得することができる皮膚モデルにより、構成的色素沈着、および誘導性色素沈着を可能にする機能性が提示され、これはより完全な生体上に移植することが全くないin vitroモデルの場合である。
【0086】
本発明による皮膚モデルにより、あらゆる角度からメラニン合成を制御する経路を理解することが可能となる。メラノサイトに対する直接活性が、またケラチノサイト、線維芽細胞、3次元状況全体、および微小環境の影響により仲介される(前色素沈着または抗色素沈着)活性がこのモデルを反映してよい。
【0087】
それは特に種々の評価方法において有用である。
【0088】
本発明による方法を実施する際に評価される薬剤は、直接または間接的に、色素沈着を制御してよい、または制御することができてよい、化学的または生物学的基質または化合物、あるいは物理的処理または現象であってよい。
【0089】
本発明により評価することができる物理的処理の例として、光線照射、例えば紫外線または赤外線照射、特にLED(発光ダイオード)処理が言及されてよい。
【0090】
「皮膚同等物への薬剤の適用」の表現は、直接接触または他のいかなる方法によろうとも、評価される薬剤と少なくとも1つの皮膚同等物の一部との相互作用を刺激する因子を意味することが意図される。
【0091】
本発明は特に、色素沈着を制御してよい薬剤をスクリーニングする方法に関し、前記薬剤は、特に化学合成、あるいは植物または微生物/酵母由来の出発物質からの抽出物により取得される化合物または化合物の混合物である可能性がある。前記方法は、化粧分野において使用するための活性薬剤をスクリーニングし、同定するために特に使用されるであろう。そして前記薬剤は、表皮、真皮または接合部分に影響を及ぼすことができる、分子、増殖因子、レチノイン酸誘導体、ホルモン、または植物抽出物のいずれかであってよい。制御するもの(modulators)は、siRNAまたはアンタゴマー(antagomir)であってよい。
【0092】
前記方法はまた、医薬分野、特に皮膚科学において使用される活性薬剤の色素沈着制御を評価するために使用されてよい。
【0093】
他の態様によれば、本発明による方法により、色素沈着制御剤が適用された際に、関係する種々の因子の改変を評価することができるであろう。
【0094】
「色素沈着を制御する」の語は、本発明によれば、直接または間接的のいずれにせよ、皮膚の構成的または誘導性色素沈着を増大させることにより、または減少させることにより、または阻害することにより、皮膚の構成的または誘導性色素沈着のレベルを改変することを意味する。本発明による方法において、対照皮膚同等物を調製し、評価される薬剤が適用される前記皮膚同等物の状態と同一の状態で対照皮膚同等物を保存し、対照皮膚同等物および評価される薬剤を受けた対照皮膚同等物と同一時に色素沈着の測定を実行するであろう。
【0095】
ある実施態様において、評価される薬剤を、皮膚同等物の少なくとも一部と直接接触させることにより適用する。別の実施態様によれば、前記皮膚同等物の培養培地中で、あるいは皮膚同等物の構成物の一つと薬剤を間接的に相互作用させるであろう手段により、前記薬剤をまた適用してもよい。皮膚同等物に前記薬剤を適用する、非限定的な別の方法として特に、注射、メソセラピー(mesotherapy)、またはイオントフォレシス(iontophoresis)が言及されてよい。
【0096】
特に評価される薬剤を、しみ(化学的ほくろ)のような色素疾患に由来する線維芽細胞および/またはケラチノサイトおよび/またはメラノサイトを少なくとも含む皮膚同等物に適用することができる。
【0097】
前記方法の実施態様の一つによれば、評価される薬剤は、色素沈着阻害剤であり、その脱色素および/または抗色素活性を測定することが望ましい。前記方法により、色素性しみ、および/または色素性疾患を、防ぐ、遅延させる、または軽減する生成物の有効性を評価することができる。
【0098】
その態様の一つによれば、前記方法により、脱色素沈着剤を評価する、すなわち構成的または誘導性色素沈着を減少させる前記薬剤の能力を評価することが可能となる。
【0099】
別の態様によれば、前記方法は、抗色素沈着剤を評価する、すなわち誘導性色素沈着を防止する、および/または軽減させる前記薬剤の能力を試験することに関する。
【0100】
本発明のある態様によれば、上記に記載される病理モデル、例えば白斑、悪性黒色腫、母斑、化学的ほくろ、肝斑のような過剰色素沈着または色素沈着低下に対して、これらの病理から単離される、または遺伝的に改変されている(サイレンシング、過剰発現など)細胞(メラノサイト、ならびにケラチノサイトまたは線維芽細胞)を使用して、評価される生成物が適用されるであろう。
【0101】
本発明による方法の別の実施態様によれば、評価される薬剤は、単独で、または紫外線と組み合わせて色素沈着を促進する薬剤である。
【0102】
特定の実施態様によれば、皮膚同等物はさらに紫外線にさらされ、評価される薬剤の適用の前に、適用と同時に、および/または適用後に、紫外線を照射する、あるいは対照皮膚同等物に同等の時間の間、紫外線を照射する。
【0103】
本発明による方法は、特に日焼け防止剤の評価に使用されるであろう。
【0104】
本発明によりまた、色素沈着制御剤の光線防御力を評価することも可能となるであろう。これは、色素沈着刺激前または後の紫外線照射により誘導される損傷のレベル、または、特に日焼け細胞の形成、DNAに対する損傷、酸化ストレスなどにおける薬剤による阻害のレベルの比較に関するであろう。
【0105】
上記のように、皮膚同等物は構成的色素沈着を提示し、前色素沈着薬剤および/または紫外線にさらすことにより、色素沈着を増大させてもよい。
【0106】
特に、生理条件下における個人のヒト皮膚が受ける日常または天頂照射に同等な投与量である紫外線の刺激の後、本発明によるモデルの線維芽細胞は、色素沈着および/またはその制御に関わるサイトカインまたは増殖因子のような細胞質可溶性因子を生産する。
【0107】
さらに、基底層におけるメラノサイトの数が、特に少なくとも1.5倍の紫外線刺激の後増大し、前記メラノサイトの形状が改変される:それらのメラノサイトは、樹状突起およびその伸長が増大することによる樹状化の顕著な増大を示す;メラニンの量もまた増大し、増大した表皮層への移送を通して、増大は1.5倍以上である。
【0108】
皮膚の輝度における変動の測定により、あるいはメラニンを定量する他のいずれかの方法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定により、solueneまたは水酸化ナトリウムで皮膚を溶解した後の可視光吸光光度分析により、Fontana-Massonでメラニンを染色した後のイメージ解析により、あるいは共焦点および多光子イメージングにより、色素沈着の増大を評価する。
【0109】
本発明による方法により、色素沈着において、直接メラノサイトに作用する、および/または間接的にケラチノサイトに作用することができ、その後メラノサイトを活性化する(メラニン合成に対する作用、あるいはメラノサイト増殖または接着)であろう、紫外線の効果を評価することが可能となる。
【0110】
独特には、それにより、以下に作用することができる紫外線の色素沈着に対する影響力を評価することが可能となる:
- 線維芽細胞、細胞外マトリックスタンパク質、および真皮-表皮接合の要素。それに応じて、これらの誘導性因子または改変は、直接メラノサイトを刺激することができ、および/または間接的にケラチノサイトを刺激することができ、その後メラノサイトを刺激するであろう;
- その後線維芽細胞、細胞外マトリックスタンパク質、および真皮-表皮接合の要素、その結果色素沈着を制御するケラチノサイト。
【0111】
それにより、構成的色素沈着または日光に誘導される色素沈着(日焼け)を阻害する、局所的または全身的に遅延させる、阻害する、または刺激するような、生成物または分子を試験することも可能となる
- 脱色素沈着剤、抗色素沈着剤
- 前色素沈着剤(単独または紫外線を伴う色素沈着のアクチベーター)。
【0112】
本発明による評価の方法の一変形により、付加的な測定群を、また色素沈着促進活性、または逆に色素沈着阻害活性で知られる参照生成物とともに実行してもよい。
【0113】
この変形では、評価される薬剤を適用したin vitro皮膚同等物の色素沈着(i)が、色素沈着促進または阻害参照基質を適用した皮膚同等物の色素沈着(iii)とも比較される。
【0114】
例えば、色素沈着促進剤の場合、少なくとも参照基質に対して観察される色素沈着以上の色素沈着である薬剤を保持することを選択することが可能であろう。逆に、脱色素沈着剤の場合、参照基質で得られる色素沈着以下の色素沈着である薬剤を保持することが可能であろう。
【0115】
一方で、評価される薬剤を適用する皮膚同等物と対照皮膚同等物(i)-(ii)との間、もう一方で、参照基質を適用する皮膚同等物と対照皮膚同等物(iii)-(ii)との間で測定される色素沈着の変動を比較することも可能であろう;
選択される薬剤は、色素沈着の制御が参照基質に対して測定される制御に少なくとも同等である薬剤であろう。
【0116】
特定の実施態様によれば、in vitro皮膚同等物は、特にcDNAの過剰発現により、部位特異的変異導入による遺伝子消去(gene quenching)により、あるいはsiRNA技術またはshRNAの過剰発現によるdsRNAにより、遺伝学的に改変されたケラチノサイト、メラノサイト、および/または線維芽細胞を少なくとも含む。
【0117】
他の実施態様によれば、真皮同等物は細胞外マトリックス同等物を含み、前記細胞外マトリックス同等物の構成要素は、少なくともI型コラーゲンを含み、前記構成要素は、健康な若者の皮膚由来の細胞外マトリックス同等物と比較して、少なくとも1つの改変が行われている。例えばこれは、真皮同等物を構成する巨大分子の性質、量、または比率の改変、ならびに/あるいは化学的改変に関するものであってよい。真皮同等物の組成物、ならびに/あるいは特に存在するIV型コラーゲン、ラミニン、エンタクチン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、および/またはヒアルロン酸の比率は、伝統的に使用され上記に示される濃度より大きく変動してよい。細胞外マトリックス同等物の構成要素は特に、糖化、架橋、および酸化から選択される化学的改変を行っていてよい。
【0118】
本発明の方法により、あらゆる角度からメラニン合成を制御する経路を理解することが可能となる。メラノサイトに対する直接活性が、またケラチノサイト、線維芽細胞、3次元状況全体、および微小環境の影響により仲介される(前色素沈着または抗色素沈着)活性がこのモデルを反映してよい。
【0119】
それにより、以下に作用することができる薬剤の色素沈着に対する影響力を評価することが可能となる:
- 線維芽細胞、細胞外マトリックスのタンパク質、および真皮-表皮接合の要素。それに応じて、これらの誘導性因子または改変は、直接メラノサイトを刺激することができ、および/または間接的にケラチノサイトを刺激することができ、その後メラノサイトを刺激するであろう;
- その後線維芽細胞、細胞外マトリックスのタンパク質、および真皮-表皮接合の要素、その結果色素沈着を制御するケラチノサイト。
【0120】
そして前記方法は、以下に対して有用である:
- これらの病理から単離される、または遺伝的に改変されている(サイレンシング、過剰発現など)細胞(メラノサイト、ならびにケラチノサイトまたは線維芽細胞)を使用して、例えば白斑、悪性黒色腫、母斑、化学的ほくろ、肝斑のような過剰色素沈着または色素沈着低下に由来する細胞の色素沈着に対する影響力を試験する
- ケラチノサイトまたは線維芽細胞の破壊(病理ケラチノサイトまたは線維芽細胞)の色素沈着に対する影響を試験する
- 色素沈着に対する細胞外マトリックスの破壊(糖化、架橋)、細胞外マトリックスの巨大分子の酸化、または巨大分子の性質、量、および比率の改変の影響を試験する。
【0121】
本発明はまた、真皮支持体、メラノサイト、およびケラチノサイトを含む再構成皮膚、ならびにまた上記の培地を生産するためのキットにも関する。
【0122】
本発明は、以下の実施例により詳細に説明されるであろう。これらの実施例において、以下の図が参照されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】ヒト色素沈着再構成皮膚。
【図2】メラノサイトの型に連結した再構成色素沈着を有するヒト色素沈着再構成皮膚。
【図3】色素沈着再構成皮膚における、紫外線による色素沈着の誘導。
【図4】色素沈着再構成皮膚における、α-MSHによる色素沈着の誘導。
【0124】
実施例1:皮膚同等物の調製
格子の調製(D-4)
真皮同等物を、ウシI型コラーゲンおよび真皮由来のヒト線維芽細胞と調製する。
【0125】
Asselineauら (Exp Cell Res. 1985, vol. 159, 536-539)およびBernerd and Asselineau (Dev Biol, 1997, vol. 183, 123-138)により記載された技術により、真皮同等物を、ウシI型コラーゲンおよび真皮由来のヒト線維芽細胞と調製する。10%血清を含むMEMでペトリ皿を前被覆する。
【0126】
細胞を含むコラーゲン調製物を浸す前に、ラミニン(3%/最終容量)、IV型コラーゲン(1.5%/最終容量)、およびエンタクチン(0.35%/最終容量)の溶液を混合物に添加し、激しく撹拌する。この懸濁物を、インキュベーター(37°C-5% CO2)に設置し、格子を収縮させる。
【0127】
ケラチノサイトおよびメラノサイトの播種(D0)
格子の収縮後、ケラチノサイトおよびメラノサイトを真皮同等物上に播種する。
【0128】
このために、細胞を7日間増殖し、その後それぞれの増殖培地に播種した。
【0129】
メラノサイトのための培養培地、ホルボールエステルを全く含まないM2培地(Promocell)中でメラノサイトを増殖させた。
【0130】
Rheinwald and Green (Cell, vol. 6, 331-344, 1975)の技術により、3T3線維芽細胞で構成されるフィーダー支持体上の培養により、ケラチノサイトを増殖させた。
【0131】
真皮同等物上にケラチノサイトおよびメラノサイトを播種するために、コラーゲンベースの調製物(2個の格子に対して、0.46 mlの1.76倍MEM + 0.09 mlのFCS + 0.05 mlの0.1N NaOH + 0.1 mlのMEM Hepes 10% FCS + 0.3 mlの透析コラーゲン)を使用して、皿の底部に最初格子を接着させる。
【0132】
メラノサイトおよびケラチノサイトをトリプシン処理し、それぞれMEM 10% FCS + 2 mM L-グルタミン + 1 mMピルビン酸ナトリウム + 1X非必須アミノ酸 + 0.2% ペニシリン/ストレプトマイシン + 0.1% 抗真菌抗生物質 + 10 ng/ml EGF、10-10 Mコレラ毒 + 0.4 μg/ml ヒドロコルチゾン+ 0.625 μl/mlのサプリメント混合物(Promocell) = PRP培地とともに、細胞懸濁物を200,000個細胞/mlの濃度に調製する。
【0133】
メラノサイトおよびケラチノサイトの混合懸濁物を、0.25 mlのケラチノサイト懸濁物および0.25 mlのメラノサイト懸濁物で調製する。そして、50,000個のケラチノサイト、および50,000個のメラノサイトを含む最終懸濁物を、接着した格子上に設置されたリング(直径14 mm)の内側に配置する。リングの周りに、6 mlのPRP培地を添加する。
【0134】
前記皿を、37°C-5% CO2でインキュベーター中に設置する。2時間後、リングを除去する。2日後、同じ培養培地を交換する。
【0135】
播種4日後に、PRP培地のEGF (10 ng/ml)を、KGF (10 ng/ml)と交換する。
【0136】
色素沈着再構成皮膚の抽水培養(Emersion-culture)(D7)
浸潤培養の7日後、皮膚をスクリーン(空気-液体界面)上で抽水する。培地を、2日ごとに交換する。
【0137】
抽水の7日後、正常ヒト皮膚に非常に近い形態を提示する皮膚を除去して解析することができ、培地を2日ごとに交換して、種々の実験のために非常に長い期間培養してその皮膚を維持することができる。
【0138】
実施例2:3つの細胞型:メラノサイト、ケラチノサイト、および線維芽細胞を含むヒト色素沈着再構成皮膚(図1)
抽水の7日後、前記皮膚はヒト皮膚の組織構造および三次元構造に近い組織構造および三次元構造を提示する。
【0139】
それは、種々の細胞層(基底層、有棘細胞層、顆粒層)および角層からなる層状で分化した表皮を有する。
【0140】
前記真皮は、コラーゲンマトリックス中に埋め込まれる生きた線維芽細胞を含む(図1A)。
【0141】
メラノサイトは表皮に統合され、正常皮膚の形態および濃度に近い形態および濃度を示す(図1C、分離表皮上でDOPA反応)。それらのメラノサイトははっきりと基底層に局在し(図1B、TRP1免疫標識、白い点線は真皮-表皮接合を示す)、近隣メラノサイトに移送されるメラノソームおよびメラニンを生産する(図1D、Fontana-Massonでメラニンの染色)。
【0142】
実施例3:メラノサイト型に連結される構成的色素沈着を有するヒト色素沈着再構成皮膚(図2)
モデルにより、最も色素沈着されないものから最も多く色素沈着されるもの(適切なモデル)まで、種々のメラノサイト系統を統合することができ、
多かれ少なかれ色素沈着される再構成皮膚の表現型は、使用されるメラノサイト型(生理は維持される)に対応する。実際、メラノサイトがより色素沈着されるほど(M03からM504まで)、巨視的な皮膚の色はより強力になり、切片に見えるメラニンの量もより多くなる。この巨視的な色素沈着を、輝度の減少は反映する(図2、輝度)。
【0143】
実施例4:色素沈着再構成皮膚における紫外線による色素沈着の誘導(図3)
抽水の7日目より開始して、再構成皮膚を太陽紫外線にさらし、色素沈着を誘導する。太陽シミュレーターを使用する:太陽のスペクトル(UVB/UVA比が14)に匹敵するスペクトルを有するUVB光線およびUVA光線が太陽シミュレーターによりもたらされる。2日に一回、計3回皮膚をUVB光線にさらす。最後の照射から48時間後に皮膚を除去する。太陽シミュレーターへさらすことのない対照条件を実施する。
【0144】
紫外線にさらされた皮膚において、メラノサイトはまだ存在し、はっきりと基底層に局在する(図3、TRP1免疫染色、白い点線は真皮-表皮接合を示す)。メラノサイトは紫外線により活性化される:紫外線にさらされない皮膚よりも、いっそう多くのそのようなメラノサイトが存在し(図3、メラノサイト濃度グラフ)、そのメラノサイトはより樹状化し、よりDOPA反応に反応性である。対照皮膚に比較した光線照射皮膚におけるFontana-Masson染色後、メラニン量の増加(1.8倍)を測定する(図3、メラニンの量)。輝度(L*)を測定することにより、紫外線による色素沈着の刺激を定量化する:輝度の減少(ΔL = 4.38)により、照射されない皮膚よりも紫外線照射皮膚がより黒いことが示される(図3、輝度)。
【0145】
実施例5:前色素沈着剤を有する色素沈着再構成皮膚における色素沈着の誘導(図4)
抽水相から始まり、50 nMの濃度である培地中に設置され、既知の前色素沈着剤αMSHの存在下で、18日後に採取される皮膚は、巨視的にみてより色素沈着している。処理されない皮膚とαMSHで処理された皮膚の間で輝度を6.7倍減少させたことから、輝度測定によりこの褐色化が確認された(図4、輝度)。
【0146】
メラノサイトはより樹状化しており、αMSHの存在下で、Fontana-Masson標識化により可視化される、より多くのメラニンを生産する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基底層および少なくとも1つの表層を形成するケラチノサイトを含む少なくとも1つの表皮同等物、ならびに少なくとも1つの真皮同等物を含むこと、ならびに前記皮膚同等物が、構成的にメラニンを生産するメラノサイト、および生きた線維芽細胞を含み、全てのメラノサイトが表皮同等物の基底層にあることを特徴とする、in vitro皮膚同等物。
【請求項2】
真皮同等物中において、真皮同等物の表面に対して縦方向に方向付けられる線維芽細胞のパーセンテージが50%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のin vitro皮膚同等物。
【請求項3】
真皮同等物がI型コラーゲンのマトリックスを含み、そのマトリックス中に線維芽細胞が分散していることを特徴とする、請求項1または2に記載のin vitro皮膚同等物。
【請求項4】
メラノサイトが、ヒト皮膚に由来するメラノサイトであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のin vitro皮膚同等物。
【請求項5】
前色素沈着剤および/または紫外線へさらすことにより色素沈着が増大することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のin vitro皮膚同等物。
【請求項6】
a) 線維芽細胞とコラーゲン溶液とを接触させ、その後十分な時間インキュベートして、その中に線維芽細胞が分散している収縮コラーゲンマトリックスを取得し、真皮同等物を構成する工程、
b) a)で取得した真皮同等物上にあるケラチノサイトとメラノサイトの混合物とともに真皮同等物を播種し、液体培地中に浸して培養する工程、
c) b)で取得した真皮同等物上にケラチノサイトとメラノサイトの培養物が出現し、空気-液体界面で培養を継続して、メラノサイトを含み、コラーゲンマトリックス中に線維芽細胞を含む真皮同等物上にあり、皮膚同等物を構成する多層化表皮同等物を取得する工程
を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の皮膚同等物を調製する方法。
【請求項7】
メラノサイトが、大人の皮膚から取得するヒトメラノサイトであり、事前に増殖させることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ケラチノサイトおよび線維芽細胞を大人の皮膚から取得することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
IV型コラーゲン、ラミニン、および/またはエンタクチンの存在下で工程a)を実行することを特徴とする、請求項6または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
(a) 前記薬剤を、請求項1から5のいずれか一項に記載のin vitro皮膚同等物、または請求項6から9のいずれか一項に記載の方法により取得することができるin vitro皮膚同等物に適用すること、
(b) 評価される薬剤を適用しているin vitro皮膚同等物の色素沈着(i)を、薬剤にさらされていない対照皮膚同等物の色素沈着(ii)と比較すること
を特徴とする、薬剤の色素沈着を制御する能力を評価する方法。
【請求項11】
皮膚同等物の少なくとも一部と直接接触させることにより、前記薬剤を皮膚同等物に適用することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記皮膚同等物が、色素疾患に由来する線維芽細胞および/またはケラチノサイトおよび/またはメラノサイトを少なくとも含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤が色素沈着阻害剤であることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
評価する薬剤を、過剰色素沈着を提示する領域の皮膚同等物に適用することを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記評価する薬剤が色素沈着促進剤であることを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
皮膚同等物がさらに紫外線にさらされ、評価する薬剤の適用前に、適用と同時に、および/または適用後に、紫外線を適用する、あるいは対照皮膚同等物と同等の時間紫外線を適用することを特徴とする、請求項10から15のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項17】
評価する薬剤を適用しているin vitro皮膚同等物の色素沈着(i)をまた、色素沈着促進剤または色素沈着阻害剤参照基質を適用している同等物の色素沈着(iii)とも比較することを特徴とする、請求項10から16のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項18】
評価する薬剤が、ケラチノサイト、線維芽細胞、細胞外マトリックスの構成要素、および/または真皮-表皮接合に対して、少なくとも部分的に作用することを通して色素沈着を制御することを特徴とする、請求項10から17のいずれか一項に記載の評価方法。
【請求項19】
評価する薬剤が、少なくとも1種類の日焼け防止剤を含むことを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−219491(P2009−219491A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−62725(P2009−62725)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】