説明

機電一体型駆動装置

【課題】 温度センサの組み付け性の向上を図ることができる機電一体型駆動装置を提供する。
【解決手段】 モータロータ7とステータ8とを有するモータ9とコイル56の通電量を制御する基板27とが一体に設けられ、コイル56の温度を検出する温度センサ58を備えた機電一体型駆動装置において、基板27を、モータ9の背面側に配置し、温度センサ58を、センサ部59と端子部60とから構成し、センサ部59をステータ8の背面側端部に設けられたインシュレータ57に固定し、端子部60を基板27に固定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機電一体型駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータのコイル間の隙間に温度センサを配置してコイルの表面温度を検出する温度センサの取り付け構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−252508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータと制御基板とが一体に設けられた機電一体型駆動装置では、温度センサの組み付け性の観点からモータと制御基板との間にハーネスを設けないことが好ましいが、上記従来技術では、コイルの隙間から信号を取り出すためのハーネスが必要となるため、組み付け性の低下を招くという問題があった。
本発明の目的とするところは、温度センサの組み付け性の向上を図ることができる機電一体型駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、温度センサのセンサ部を、ステータの背面側に設けられたインシュレータに固定し、温度センサの端子部を、モータの背面側に配置した制御基板に固定した。
【発明の効果】
【0006】
よって、温度センサの組み付け性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の電動オイルポンプ1の縦断面図である。
【図2】実施例1のステータ8の背面側斜視図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】実施例1の電動オイルポンプ駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の機電一体型駆動装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
〔実施例1〕
図1は、実施例1の電動オイルポンプ(機電一体型駆動装置)1の縦断面図である。
実施例1の電動オイルポンプ1は、アイドルストップ機能を備えた車両の自動変速機用に搭載されるポンプである。この自動変速機はベルト式無段変速機であり、エンジンにより駆動されるメインポンプを別途備えている。そして、アイドルストップ制御によるエンジンの停止時には、メインポンプによる油圧が確保できず、また、ベルト式無段変速機内の摩擦締結要素やプーリからのリーク等によって油圧が低下すると、再発進時に必要な油圧を確保するまでに時間が掛かるため、運転性の低下を招く。そこで、メインポンプとは別に、エンジンの作動状態にかかわらず油圧を吐出可能な電動オイルポンプ1を設け、摩擦締結要素やプーリからのリーク分の油圧を担保することで、エンジン再始動および再発進時の運転性向上を図る。
電動オイルポンプ1は、オイルポンプ部2とインバータ部3とを一体に設けた機電一体型の電動オイルポンプである。
【0009】
[オイルポンプ部2の構成]
オイルポンプ部2は、外歯を有するポンプロータ4と内歯を有するアウタロータ5とから構成されるポンプ6と、ポンプロータ4に接続されたモータロータ(ロータ)7とステータ8とから構成されるモータ9とを有する。ステータ8の構成については後述する。
ポンプ6およびモータ9は、1つのセンタハウジング10に収容される。センタハウジング10は、アルミダイカスト等の樹脂100%材料よりも熱伝導率の高い材料で形成されている。センタハウジング10は、軸方向外側(図1の右側)に向けて両端において開口を有し、一方の開口内周にアウタロータ5を回転可能に収装するポンプ要素収容部11が形成された筒状のポンプ収容部12が形成され、他方の開口内周においてステータ8を固定支持すると共に内部にモータロータ等を収容するモータ収容部13が形成され、さらにモータ収容部13よりも軸方向外側には、自動変速機に取り付けるためのブラケット14が形成されている。
【0010】
センタハウジング10内部には、ロータ駆動軸15を回転可能に支持する円筒状支持部16と、円筒状支持部16をセンタハウジング10の外周と連結すると共にポンプ収容部12とモータ収容部13との間を画成する隔壁を有する。そして、円筒状支持部16の内周でロータ駆動軸15を支持すると共に、モータ収容部13側の端部において、ロータ駆動軸15と円筒状支持部16内周との間をシールするシール部材17が設けられている。
ポンプカバー18は、ポンプ要素の吐出領域と連通する円筒状に延在された吐出ポート19と、ポンプ要素の吸入領域と連通する吸入ポート20と、を有する。吐出ポート19の先端外周には、シールリング21が取り付けられるシールリング溝22が形成されている。また、ポンプカバー18には、周方向三箇所にボルト穴23が形成され、センタハウジング10に形成されたボルト穴24に対し、ボルト25によって締め付け固定される。
【0011】
[インバータ部3の構成]
インバータ部3は、インバータハウジング26と基板(制御基板)27とヒートシンク28とを有する。
インバータハウジング26は、モータ収容部13を閉塞する閉塞面29と、閉塞面29から立設されモータ収容部13の内壁に挿入される円筒状立設部30と、ブラケット14のフランジ面と当接しシール部材31を押圧すると共にボルト32が貫通する貫通穴33を備えたフランジ面34とを有する。これにより、モータ収容部13内は乾燥室として構成され、ポンプ収容部12の内部およびポンプ外周は湿室として構成される。
基板27は、インバータハウジング26の内部に収容され、複数のボルト35により共締めされている。基板27には、パワーMOSFET36や図外のCPU等が表面実装されると共に、コンデンサ37やインダクタ38が取り付けられている。基板27とヒートシンク28との間であって、パワーMOSFET36と対応する位置には、平板状の放熱シート39が設けられている。
ヒートシンク28は、インバータハウジング26を閉塞するようにインバータハウジング26に取り付けられている。放熱シート39およびヒートシンク28によって、パワーMOSFET36の発する熱を外部へ放熱する放熱経路が形成されている。
インバータ部3は、コネクタ40を経由して図外のバッテリから供給される直流電流をパワーMOSFET36のスイッチングによって交流電流に変換し、端子53を介してモータ9のステータ8へ供給する。なお、図1には記載していないが、端子53は基板27に接合されている。
【0012】
実施例1の電動オイルポンプ1は、自動変速機のハウジング41に形成されたポンプ収容穴42に収容されている。ポンプ収容穴42には、図外のコントロールバルブユニットに油圧を供給する吐出流路43と、図外のオイルパン内に開口するオイル吸い込み口と連通する吸入流路44とが開口している。ポンプ収容穴42は、オイルパンよりも高い位置に設けられている。吐出流路43には、吐出流路43には、ポンプ収容穴42に面して拡径部45が形成され、拡径部45には、ポンプカバー18の吐出ポート19が挿入により嵌合支持されている。吐出流路43とポンプ収容穴42との間はシールリング21によってシールされている。吐出流路43とポンプ要素の吐出領域とは、吐出ポート19に形成された吐出口46を介して連通している。
ポンプ収容穴42は、電動オイルポンプ1のセンタハウジング10が収容された状態で吸入ポート20の吸入口47と連通する小径開口部48と、小径開口部48よりも大径に形成されセンタハウジング10のモータ収容部13の最外径部分と略同一の内径を有する大径開口部49と、大径開口部49のハウジング41外側開口縁に形成されたテーパ面50とを有する。テーパ面50は、モータ収容部13の外周との間でシールリング51を挟持する。
ポンプカバー18およびセンタハウジング10とポンプ収容穴42との間には、流体収容室52が画成されている。流体収容室52は、モータ収容部13と大径開口部49との間まで延在する。流体収容室52には、吸入ポート20の吸入口47が開口し、吸入流路44と流体収容室52を介して連通している。
【0013】
[ステータ8の構成]
図2は実施例1のステータ8の背面側斜視図、図3は図2の要部拡大図である。
ステータ8は、コア55とコイル56とで構成されている。コア55は、珪素鋼板が積層されてなり、筒状を成すコア本体55aと、コア本体55aの内周側に突設された複数のティース55bとからなる。コイル56は、ティース55bに巻回されている。コア本体55aはティース55b毎に周方向で分割されている。コア本体55aの背面側(図1の右側)および各ティース55bには、樹脂製のインシュレータ57が装着され、コア55とコイル56との電気的絶縁性を維持している。
インシュレータ57の背面側端部には、温度センサ58が固定されている。温度センサ58はコイル56の温度(コイル温度)を計測するためのもので、センサ部59と端子部60とから構成される。センサ部59は、弓形の横断面形状を有し、先端にはセンサ面59aが設けられている。端子部60は、電源、グランド、信号の3つの端子からなり、センサ部59から出力された信号を信号端子により外部へ出力する。端子部60の各端子の先端は、基板27に挿入された状態ではんだ付けにより固定されている。なお、インバータハウジング26には、端子部60の各端子が貫通する貫通穴(不図示)が形成されている。
インシュレータ57には、センサ部59がセンサ面59a側から挿入される溝61が設けられている。溝61は、センサ部59の外周形状に沿って形成され、センサ部59の径方向(軸直方向)の移動を規制する。センサ部59は、溝61に挿入されセンサ面59aがコイル56と接触した状態で、接着剤によりインシュレータ57と固定されている。温度センサ58の端子部60は、基板27に固定され、センサ部59から出力された信号を、基板27上に実装されたCPUに送信する。
【0014】
[電動オイルポンプ駆動制御処理]
図4は、実施例1の電動オイルポンプ駆動制御処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートは、基板27上に実装されたCPUによって所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
ステップS1では、電動オイルポンプ1を制御するコントロールユニットからの指令信号を入力する。
ステップS2では、温度センサ58からコイル温度Tを入力する。
ステップS3では、ステップS2で入力したコイル温度Tがあらかじめ設定された耐熱設定温度Tsよりも大きいか否かを判定し、YESの場合はステップS4へ進み、NOの場合はステップS5へ進む。ここで、耐熱設定温度Tsは、例えば、コイル56の耐熱限界温度とする。
ステップS4では、ステップS1で入力した指令信号に応じてコイル56に電力を供給し、モータ9を作動させる。
ステップS5では、コイル56への通電を停止し、モータ9を停止させる。
ステップS6では、コントロールユニットにモータ9の停止情報を送信する。コントロールユニットは、モータ9の停止情報を受信したとき、アイドルストップ制御を中止してエンジンを始動させ、メインポンプを駆動する。
【0015】
次に、作用を説明する。
[モータ保護作用]
従来の電動オイルポンプでは、ポンプ外(例えば、オイルパン)の油温に基づいてモータの電流値を制御しており、オイルの粘性が高い極低温時などは、ポンプ駆動のために高い電流値で制御する必要がある。しかし、通常よりも高い電流を印加することで、コイルに過昇温が発生し、コイルが耐熱限界(耐熱設定温度)を超える場合がある。コイルが耐熱限界を超えると、ポンプ機能の低下や消失等の問題が生じる。
これに対し、実施例1では、温度センサ58によってコイル56のコイル温度Tを監視し、コイル温度Tが耐熱設定温度Tsを超えた場合、コイル56への通電を停止するため、耐熱設定温度Tsを超えるコイル56の温度上昇を抑制できる。よって、コイル56の性能低下や焼損等が発生する前の段階でコイル56に流れる電流を制限でき、コイル56の保護を図ることができる。
また、モータ9が機能保証温度外での温度で作動するのを禁止することで、ポンプの吐出不良等の発生に伴う制御性の低下を抑制でき、安全性および信頼性の向上を図ることができる。
【0016】
[組み付け性向上作用]
実施例1では、温度センサ58のセンサ部59を、ステータ8の背面側に設けられたインシュレータ57に固定し、温度センサ58の端子部60を、モータ9の背面側に配置した基板27に固定した。
温度センサ58の端子部60を直接基板27に固定する構成としたことで、温度センサ58と基板27とをハーネスで繋ぐ作業が不要となるため、温度センサ58の組み付け性の向上を図ることができる。
また、インシュレータ57には、温度センサ58のセンサ部59を挿入する溝61を設け、溝61は温度センサ58のセンサ部59に合わせた形状であるため、温度センサ58の位置決めおよび固定が容易であり、組み付け性の向上を図ることができる。さらに溝61はインシュレータ57のコイル側に開口するように設けられているため、温度センサ58のセンサ部59の厚みがコイル側に突出してもコイル上部の空間に納めることができる。
【0017】
次に、効果を説明する。
実施例1の電動オイルポンプ1にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1) モータロータ7とステータ8とを有するモータ9とコイル56への通電量を制御する基板27とが一体に設けられ、コイル56の温度を検出する温度センサ58を備えた機電一体型駆動装置において、基板27を、モータ9の背面側に配置し、温度センサ58を、センサ部59と端子部60とから構成し、センサ部59をステータ8の背面側端部に設けられたインシュレータ57に固定し、端子部60を基板27に固定した。
温度センサ58と基板27とをハーネスで繋ぐ作業が不要であるため、温度センサ58の組み付け性の向上を図ることができる。
(2) インシュレータ57に、センサ部59を挿入する溝61を設けた。
溝61は温度センサ58のセンサ部59に合わせた形状であるため、温度センサ58の位置決めおよび固定が容易であり、組み付け性の向上を図ることができる。さらに溝61はインシュレータ57のコイル側に開口するように設けられているため、温度センサ58のセンサ部59の厚みがコイル側に突出してもコイル上部の空間に納めることができる。
【0018】
(他の実施例)
以上、本発明の機電一体型駆動装置を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施例の構成に限定されるものではない。
実施例では、機電一体型駆動装置を電動オイルポンプに適用した例を示したが、他の駆動装置に適用した場合であっても、実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0019】
1 電動オイルポンプ
7 モータロータ(ロータ)
8 ステータ
9 モータ
27 基板(制御基板)
56 コイル
57 インシュレータ
58 温度センサ
59 センサ部
60 端子部
61 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを有するモータと前記ステータのコイルへの通電量を制御する制御基板とが一体に設けられ、前記コイルの温度を検出する温度センサを備えた機電一体型駆動装置において、
前記制御基板を、前記モータの背面側に配置し、
前記温度センサを、センサ部と端子部とから構成し、
前記センサ部を前記ステータの背面側端部に設けられたインシュレータに固定し、前記端子部を前記制御基板に固定したことを特徴とする機電一体型駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の機電一体型駆動装置において、
前記インシュレータに、前記センサ部を挿入する溝を設けたことを特徴とする機電一体型駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate