説明

櫂式攪拌装置

【課題】装置全体の高さを抑えかつメンテナンス性を改善した櫂式攪拌装置を提供すること。
【解決手段】鍋1を加熱して回転させ、その鍋1の内側に櫂を挿入して攪拌を行う櫂式攪拌装置100において、ロッド5は、回転軌跡を描く回転中心dと、摺動する回転中心fとに支持され、回転中心fと回転中心dとを結ぶ延長線上に櫂2が固定されている。回転中心dの回転軌跡の中心である回転中心cと回転中心fとが鍋1の回転中心の延長線Pを挟んで相対する位置に配置さている。ロッド5には、ロッド5の長さ方向に位置変更可能に保持した摺動体をその長さ方向の前後においてバネにより支持するスリーブ7が設けられており、櫂2は摺動体に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を攪拌および乾燥する櫂式攪拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品を加熱しながら攪拌する機械として、例えば特許文献1には櫂式攪拌装置が開示されている。櫂式攪拌装置は、鍋を加熱しながら、櫂を鍋の内面を擦りながら攪拌するものである。櫂を固定したロッドがスリーブに勘合され、スリーブが偏心回転部材のピンに取り付けられ、回転可能に案内され、偏心回転部材はブラケットの支軸に取り付けられて回転可能に案内されている。ロッドはプレートに挿入されて、孔によってロッドが案内されている。また、スリーブの両側にはピンを挟んでバネが両側に設けられて、ロッドを弾性保持している。偏心回転部材が回転すると、ロッドは孔の中を摺動し、ロッドの船体に固定された櫂は、楕円を描くように運動する。一方、スリーブの両側に設けられたバネにより、櫂は弾性保持されているので、櫂は鍋の底内面に突き当たりバネにより押し付けられ、擦りながら移動するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平1−41443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
櫂のロッドは偏心回転部材が回転するとき、孔を摺動するが、少なくとも孔から脱落しないように長くしておく必要がある。偏心回転部材の回転半径が大きければ大きいほどロッドが上側に突出する長さが長くなり、装置の高さが増大する。また、ロッドは、スリーブによりピンの外側(偏心回転部材の回転中心に対する)で支持されており、偏心回転部材の回転半径の割りにはロッドが長くなっていた。また、スリーブによりピンの外側で支持することにより、スリーブにおいてピンの両側でバランスしてロッドを弾性支持できる利点があるが、ピンの上側のバネが破損した場合或いは、交換が必要であった場合には、ロッドをプレートの孔から抜かなければ、上側のバネに到達できない。このため、メンテナンス性が劣る。
本発明は、このような実情に鑑みて創案されたもので、装置全体の高さを抑えかつメンテナンス性を改善した櫂式攪拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、鍋を加熱して回転させ、その鍋の内側に櫂を挿入し、前記鍋の内面に沿って移動させて攪拌を行う櫂式攪拌装置において、回転軌跡を描く力点と、摺動する支点とに支持され、前記力点を挟んで支点の反対側に前記櫂が固定されたロッドであって、前記力点の回転軌跡の中心と支点とが前記鍋の回転中心の延長線を挟んで相対する位置に配置されたロッドと、前記力点を挟んだ支点の反対側の前記ロッドに取り付けられ、前記力点に対して前記ロッドの長さ方向に位置変更可能に保持した摺動体をその長さ方向の前後において弾性体により支持するスリーブとを有し、前記櫂は摺動体に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ロッドの上部の端が到達する高さ範囲を低くすることがでるため、装置全体の高さを抑えることができる。また、櫂を弾性支持する弾性体の交換が容易でありメンテナンス性が向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】櫂式攪拌装置の斜視図である。
【図2】同装置の一部を側面から見た断面図である。
【図3】同装置の櫂の動きを示す図である。
【図4】スリーブの構造を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施例の櫂式攪拌装置100を説明する。
図1において、櫂式攪拌装置100は、鍋1および櫂2を有する。鍋1は平面視において円形であり、釜3の上で図中イ方向に回転可能に支持されている。釜3には、鍋1を加熱する加熱装置4が設けられている。
【0009】
櫂2はロッド5に固定されており、ロッド5は、スリーブ7を介して偏心回転部材6に、軸支されている。偏心回転部材6は、水平方向の回転中心cから偏心した位置にロッド5を支える回転中心dを有しており、回転中心dはロッドの軸中心e上に位置している。ロッド5は、プレート11を貫通しており、プレート11内のローラーベアリング(図示せず)により方向ロに摺動可能に支持されている。また、プレート11は、アーム4の頂部に回転中心fを中心に方向ハに揺動可能なように支持されている。回転中心dが櫂2に対して力を入力する力点の位置であるとすると、回転中心fの位置(或いはプレート11がロッドを摺動支持する位置)が支点の位置であるといえる。つまり、櫂2は、回転中心dの位置により力が加えられ、回転中心fの位置を支点として、ロッド5の先端に取り付けられた櫂2に攪拌力を作用させているのである。そして、力点は、偏心回転部材6により回転しており、その回転中心が回転中心cである。
【0010】
図2は、櫂式攪拌装置100の一部を側面から見た断面図である。鍋1は、釜3の上に設けられた円形の支持枠8内に嵌められている。鍋1の側面には、周囲を一周するラックギア9が設けられており、ピニオンギア10と噛み合って支持枠9上を鍋1が回転する。ピニオンギア10は、図示しない動力原により回転駆動される。
【0011】
回転中心cをなすシャフト24は周囲をブラケット16に囲まれており、図示しない動力源からの回転力を、ベアリング12を介して鍋1の直上に位置する偏心回転部材6にまで案内している。回転中心cから距離rだけ偏心してシース26が設けられ、この中にベアリング14を介して回転中心dをなすシャフト25が配置される。また、ブラケット16には、アーム4が取り付けられている。
【0012】
図3において、偏心回転部材6の正面から見た回転中心c、dおよびfの鍋1の回転中心に対する位置関係を示している。図中、鍋1の回転中心を延長した線Pに対して、回転中心cは左側にy1だけずれており、また中心軸dは右側にy2だけずれている。よって、線Pを挟んで回転中心cとdが相対する側に配置されている。このため、ロッド5は傾いた状態で保持されることになる。偏心回転部材6を回転させると、中心軸dは破線t1に示す軌跡に従って回転する。そして、ロッド5の先部5aの描く軌跡は、破線t2に示す軌跡をたどる。ロッド5が傾いた状態で操作されることから、先部5aの到達する高さは、抑制されることになる。
【0013】
一方、櫂2は、力点となる回転中心dと支点となる回転中心fとを結んだ延長線上にあり、その先端2aの軌跡は、回転中心c、dが先端2aを鍋1の左に向けるように位置しているため、鍋1の左側の範囲E1では鍋1の内面に押し付けられながら下に移動し、鍋1の中心より右側の範囲E2では鍋1の内面から次第に離れるように鍋1の直径方向に移動する。これは、櫂2が鍋1の底面を通過し鍋1から離脱しようとするさいに、鍋1内の食材が櫂2によりかき上げられて鍋1からこぼれることを抑制するためである。E3の範囲では、櫂2は鍋1の上空を通過する。
【0014】
図4は、スリーブ7の構造を示す断面図である。ロッド5は、スリーブ7の上下でロッド下部50、ロッド上部55に分割されており、ロッド下部50に櫂2が固定される。ロッド下部50はスリーブ7内において、2つの径を持ちスリーブ7内をロッド5の長さ方向であってロッド5の軸中心e上で自由にスライドする摺動体51を構成している。摺動体51の先端は小径の部分51aであり、これにより大きな径の部分51bが段差部51cを介して連なっている。段差部51cの位置にロッド5をその長さ方向に垂直に貫通する孔51dが開けられている。
【0015】
ロッド上部55は、中空な管状をしており、この中空部分に摺動体51の部分51aが侵入できるようになっている。ロッド上部55は、スリーブ7と固着している。スリーブ7は、長さ方向に貫通した長孔7aを有している。ピン23が、長孔7aと摺動体51の貫通孔51dに貫通し、ナット24により止められている。ナット24は、ピン23の長孔7aからの脱落を防止するためであり、ピン23が長孔7内を移動することを許容している。スリーブ7の下側はキャップ7bが螺着されている。ピン23の上下には、弾性体であるバネ13a、13bがそれぞれ部分51aと部分51bに外装されている。バネ13aはロッド上部55の端面と段差部51cの間に挿入され、バネ13bはピン23とキャップ7bとの間に挿入されている。このため、ロッド下部50は長孔7aによりピン23の動きが上下方向になるように束縛された状態で、ロッド上部55に対して上下いずれにも弾性的に保持された状態となる。スリーブ7のバネ13a、13bにより、櫂2は上下に弾性保持される。
【0016】
尚、特許文献1においても、櫂を保持する際に上下に弾性保持されるが、本実施例のピン23を偏心回転部材で回転可能に支持するため、本実施例におけるロッド上部55側が自由端となり、櫂を固定する側となる。
【0017】
次に、櫂式攪拌装置100の動作について説明する。図1において、食品を鍋1に投入し、加熱を開始する。鍋1は口を上に向けた状態で回転する。櫂2は鍋1の底面を擦る動作を行うが、鍋1が回転しているため、櫂2が擦る位置は順々にずれていく。一方、偏心回転部材6は、回転中心cと中心軸dとの間の距離で規定されるトルクにより櫂2を操作する。中心軸dがロッド5の中心と重なっているため、このトルクが櫂2の操作力になる。一方、回転中心cと中心軸fとは鍋1の中心に対して相対する位置に位置しているため、ロッド5の先部5aが到達する高さは低い。
【0018】
バネ13a或いは13bの交換が必要なときは、ピン23とキャップ7bをスリーブ7から外せば、摺動体51ごとバネ13a或いは13bがスリーブ7から脱落する。このため、メンテナンス性が高い。
【符号の説明】
【0019】
1 鍋
2 櫂
3 釜
4 アーム
5 ロッド
6 偏心回転部材
7 スリーブ
13a、13b バネ
100 櫂式攪拌装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を加熱して回転させ、その鍋の内側に櫂を挿入し、前記鍋の内面に沿って移動させて攪拌を行う櫂式攪拌装置において、
回転軌跡を描く力点と、摺動する支点とに支持され、前記力点を挟んで支点の反対側に前記櫂が固定されたロッドであって、前記力点の回転軌跡の中心と支点とが前記鍋の回転中心の延長線を挟んで相対する位置に配置されたロッドと、
前記力点を挟んだ支点の反対側の前記ロッドに取り付けられ、前記力点に対して前記ロッドの長さ方向に位置変更可能に保持した摺動体をその長さ方向の前後において弾性体により支持するスリーブとを有し、
前記櫂は摺動体に取り付けられていることを特徴とする櫂式攪拌装置。

【請求項2】
請求項1の櫂式攪拌装置において、前記力点は、前記櫂が前記鍋に対して作用する作用点と支点を結んだ線上に位置することを特徴とする櫂式攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−27834(P2013−27834A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166951(P2011−166951)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(511185519)株式会社フジイ機械製作所 (1)
【Fターム(参考)】