説明

櫛付き容器

【課題】 塗布体における内容液の吐出流路の主体部分である、櫛歯片に近接した流路部分を、構成部分を分解することなく、大きく解放できるようにすることにより、塗布体の内容液吐出流路の洗浄を、充分にかつ簡単に達成することを目的とする。
【解決手段】 櫛歯片5間に、内容液を吐出可能とした櫛付き容器であって、頂板4に櫛歯片5を列設した主体筒3を有する櫛歯体2を、吐出路15を形成した起立筒片14の上端に、主体筒3と嵌合して吐出室Aを形成する組付き筒16を連設した起立筒体13にヒンジ結合し、吐出室A全域を開放させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体に収納された白髪染め液、ヘアマニキュア、ヘアカラーさらには整髪料等の内容液を、容器体から頭髪に直接塗布すべく構成した櫛付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクイズ性を有する容器体やエアゾール式の容器体に、容器体の白髪染め液やヘアマニキュア等の内容液を、直接頭髪に塗布することができるようにした塗布体を組付けた櫛付き容器が知られているが、この種の櫛付き容器は、列設された複数の櫛歯片間に、容器体に収納された内容液を吐出する構成となっていて、適量の内容液を櫛歯片間に吐出した状態で、櫛付き容器で頭髪を梳くことにより、そのまま内容液を頭髪に塗布するものとなっている。
【0003】
この櫛付き容器にあっては、容器体の内容液を直接頭髪に塗布することができるので、頭髪に対する内容液の簡単で素早い塗布を得ることができると云う利点がある反面、頭髪に対する内容液の塗布後、塗布体内に残留した内容液が乾燥固化し、以降の使用を不能とする、もしくは不良とする、と云う不都合があった。
【0004】
この不都合を解消する従来技術として、塗布体である櫛部組立体を、櫛体と、基台と、スパウト部材とから構成し、この櫛部組立体の各構成部分を分解可能とし、分解された櫛体、基台、そしてスパウト部材を、個々に洗浄可能に構成した、ものがある。
【特許文献1】特開平9−066246号公報
【0005】
上記従来技術にあっては、櫛部組立体を、押ボタンの押圧操作等により係止状態を解除した、容器体から引き抜き状に分離させ、この容器体から分離させた櫛部組立体を、櫛体、基台、そしてスパウト部材の各構成部分に分解し、この分解した各構成部分を、個々に洗浄することにより、内容液である剤の流路内を、無理なく充分に洗浄することができる、と云う利点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、洗浄に際して、櫛部組立体を、容器体から分離し、次いで各構成部分に分解しなければならず、このため洗浄操作および洗浄のための取扱い操作が、煩雑で面倒である、と云う問題があった。
【0007】
また、櫛部組立体の洗浄した各構成部分は、乾くまで別々に取扱われるので、その取扱いと保管とが煩わしいものとなる易く、時として構成部分の一部が紛失することが起こり易い、と云う問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、櫛付き容器における内容液の吐出流路の主体部分である、櫛歯片に近接した流路部分を、構成部分を分解することなく、大きく開放できるようにすることを技術的課題とし、もって櫛付き容器の内容液吐出流路の洗浄を、充分にかつ簡単に達成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の櫛付き容器は、白髪染め液、ヘアマニキュア、ヘアカラーさらには整髪料等の内容液を収納する容器体の口部に、列設した複数の櫛歯片間に内容液を吐出可能とした合成樹脂製の塗布体を組付けたものであって、塗布体は、多数の櫛歯片を列設した櫛歯体と、容器体に組付くと共に、櫛歯体との間に、吐出された内容液を各櫛歯片間に吐出する吐出孔に導く吐出室を形成する起立筒体とから構成されている。
【0010】
櫛歯体は、頂板に複数の櫛歯片を列設した有頂短筒状の主体筒の内周面から離れた上端部に、ヒンジを介して固定版片を連設して構成されている。
【0011】
また、起立筒体は、容器体の口部に組付く取付き筒を下端に設け、吐出路を上下に貫通形成した縦長筒状の起立筒片の上端に、櫛歯体の主体筒に密嵌入して吐出室を形成する、有底短筒状の組付き筒を連設して構成されている。
【0012】
そして、櫛歯体の固定板片を、起立筒体の組付き筒の底壁外面に不動に固定している。
【0013】
櫛歯体の主体筒と起立筒体の組付き筒との間に形成される吐出室は、吐出路を通って導かれてきた吐出内容液を、櫛歯片間に吐出させるための「溜まり」を形成する部分となっており、吐出内容液の分岐点となっている。
【0014】
それゆえ、櫛歯体の主体筒と起立筒体の組付き筒との密嵌合を解除して、吐出室を開放すると、吐出室内は当然のこととして、容器体からの流路である吐出路と、櫛歯片間への吐出路との全てが、開放状態となる。
【0015】
このように吐出路の全てを開放状態とすることにより、水道水等による吐出路の洗浄が行い易い状態となる。
【0016】
櫛歯体と起立筒体は、固定板片を組付き筒に不動に固定することにより、ヒンジ結合されることになり、このため吐出路を洗浄すべく吐出室を開放する状態となっても、櫛歯体を起立筒体とは分離することなく、一体的に連結されている。
【0017】
また、櫛歯体と起立筒体を連結するヒンジは、櫛歯体の主体筒の内周面から離れた箇所と、起立筒体の組付き筒の底壁外面に固定された固定版片とを連結しているので、吐出室を形成する櫛歯体の主体筒と、起立筒体の組付き筒との密嵌合組付きに影響を与えることはない。
【0018】
本発明の別の構成は、櫛歯体の主体筒の下端部に、起立筒体の起立筒片に対し、着脱自在に不動に組付く掴持片を、連結片を介して連設した、ことにある。
【0019】
櫛歯体に掴持片を設けたものにあっては、掴持片の起立筒片に対する不動な組付きにより、主体筒と組付き筒の密な組付きと、起立筒体に対する櫛歯体の、揺動変位不能な組付きを確保する。
【0020】
また、本発明の別の構成は、起立筒体の組付き筒の底壁外面に、櫛歯体の固定板片をカシメ固定する固定突片を、一体に突設した、ことにある。
【0021】
起立筒体の組付き筒の底壁外面に固定突片を一体に突設したものにあっては、組付き筒の底壁外面に対して、固定板片を不動に組付ける部分が、簡単な構成となる。
【0022】
また、本発明の別の構成は、櫛歯体の主体筒の頂板内面に、起立筒体の組付き筒に密嵌入する短筒片状のシール筒片を設けた、ことにある。
【0023】
主体筒の頂板内面にシール筒片を設けたものにあっては、主体筒と組付き筒との密な嵌合組付きの、密嵌合程度を充分に高めることになる。
【0024】
また、本発明の別の構成は、起立筒片の上端に、斜めに起立した姿勢の縦に長い長円短筒状の組付き筒を下側部分で連設し、櫛歯体の縦に長い長円短筒状の主体筒の頂板に、上下方向に沿って2列の櫛歯片を列設し、この2列の櫛歯片間に内容液を吐出する細長の吐出孔を上下に分けて開設した、ことにある。
【0025】
斜めに起立した姿勢の縦長長円短筒状の組付き筒の下側部分に、起立筒片の上端を連設し、2列の櫛歯片間に上下に分けて細長の吐出孔を開設したものにあっては、縦長な櫛歯体の略全長さ範囲に亘って内容液を吐出させることができると共に、吐出孔を上下に分けることにより、吐出孔を開設することによる頂板の機械的強度の低下を、大幅に抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明にあっては、吐出室を開放すると、吐出室内は当然のこととして、容器体からの流路である吐出路と、櫛歯片間への吐出路とが、開放状態となるので、塗布体内に形成されている内容液の吐出路の全てを開放状態とすることができ、これにより吐出路の全部の洗浄を容易にかつ確実に達成できる。
【0027】
櫛歯体と起立筒体は、分離することなく一体的に連結されているので、簡単で安全な取扱いを得ることができる。
【0028】
さらに、櫛歯体と起立筒体を連結するヒンジは、吐出室を形成する主体筒と組付き筒との密嵌合組付きに影響を与えることはなく、これにより吐出室の高い液密性を維持することができ、内容液の漏出を確実に防止することができる。
【0029】
そして、吐出路の全てを開放状態とすることができるので、この吐出路の洗浄を、水道水を注ぐ等により簡単にかつ充分に行うことができる。
【0030】
櫛歯体に掴持片を設けたものにあっては、掴持片の起立筒片に対する不動な組付きにより、主体筒と組付き筒の密な組付きを、不要な変位を生じさせることなく確保するので、液漏れのない吐出室を確保すると共に、起立筒体に対する櫛歯体の、不要な揺動変位を確実に防止して、良好な頭髪梳き動作を得ることができる。
【0031】
起立筒体の組付き筒の底壁外面に固定突片を一体に突設したものにあっては、組付き筒の底壁外面に固定板片を不動に組付ける部分の構成が簡単となり、これにより全体構造を単純化することができると共に、組立て操作が容易となる。
【0032】
主体筒の頂板内面にシール筒片を設けたものにあっては、主体筒と組付き筒との密な嵌合組付きの、密嵌合程度を充分に高めることになるので、吐出室の液漏れ防止を、高いレベルで達成することができる。
【0033】
斜めに起立した姿勢の縦長長円短筒状の組付き筒を下側部分に起立筒片の上端を連設し、2列の櫛歯間に上下に分けて細長の吐出孔を開設したものにあっては、櫛歯体の略全域に内容液を吐出させることができると共に、吐出孔を開設することによる機械的強度の低下を抑制することができるので、安定して良好な内容液塗布動作を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0035】
本発明の櫛付き容器における塗布体1は、スクイズ性を有する容器体21やエアゾール式の容器体21の上端口部22に組付けられるもので、容器体21の口部22に組付く取付き筒18を有する起立筒体13と、この起立筒体13に密に組付き、2つ縦列設した複数の櫛歯片5間に、容器体21に収納された白髪染め液やヘアマニキュア等の内容液を吐出可能とした櫛歯体2と、から構成されている。
【0036】
起立筒体13は、容器体21の口部22に外嵌組付きする取付き筒18と、容器体21に連通可能に接続して立ち上がり、内部に上下に貫通した吐出路15を形成した起立筒片14と、この起立筒片14の上端に、傾斜姿勢で連設された縦に長い有底長円短筒状の組付き筒16とから構成されており、組付き筒16の底壁外面には、固定突片17が突設されている。
【0037】
図示構成例は、容器体21がエアゾール容器であるので、(以下、図1参照)起立筒片14の下端の前側部分は、取付き筒18にヒンジ結合されており、また起立筒片14の下端部に垂下連設された接続筒片19を、容器体21のステム23に密嵌合させ、そして起立筒片14の下端部の後側部分に、起立筒体13を回動下降変位させるための押し下げ片20を設けている。
【0038】
櫛歯体2は、起立筒体13の組付き筒16への組付き部分を形成すると共に、組付き筒16と組合さって吐出室Aを形成する、有頂長円短筒状の主体筒3と、この主体筒3の内周面から離れた上端部に、ヒンジ12を介して連設された固定板片11と、主体筒3の下端部に連結片10を介して連設された掴持片9とから構成されている。
【0039】
主体筒3は、頂板4と、組付き筒16が密嵌入する筒壁7とから構成され、頂板4には、2列の櫛歯片5が上下方向に沿って平行に設けられていると共に、両櫛歯片5の列の間に、上下に分割された縦に細長な吐出孔6が開設されており、さらに内面に、組付き筒に密嵌入するシール筒片8が垂下状に設けられている。
【0040】
また、シール筒片8は、筒壁7に嵌入した組付き筒16の開口端部に、筒壁7との間で挟持する状態で密嵌入し、これにより主体筒3と組付き筒16との強固な密嵌組付きを達成している。
【0041】
筒壁7の下面上端にヒンジ12を介して連設された固定板片11の中央には、透孔状の取付け孔が設けられており、この取付け孔に固定突片17を嵌着させることにより、固定板片17の組付き筒16に対する強固なカシメ組付けが達成される。
【0042】
筒壁7の下端に連結片10を介して連設された掴持片9は、門型断面構造(図3参照)を有しており、四角筒状をした起立筒片14に対して、挟み込む形態で着脱自在に組付く。
【0043】
この掴持片9を持って引上げると、櫛歯体2は、ヒンジ12を回動軸として、起立筒体13に対して、主体筒3と組付き筒16を分離させる方向に回動し、吐出室Aを開放(図6参照)する。
【0044】
この吐出室Aの開放状態にあっては、主体筒3および組付き筒16の筒壁部分全域が開放されることになり、また吐出路15は、その上下両端開口部が開放されることになり、さらに吐出孔6は、その全域が露出されることになる。
【0045】
このように、吐出孔6の全域を露出させた状態で、例えば開放された主体筒3および組付き筒16に、水道の蛇口等から、直接水を注いで、塗布体1の内部を短時間に効果的に洗浄することができる。
【0046】
また、塗布体1を容器体21から外して、組付き筒16を開放した状態で、起立筒片13の下端開口部から水道水を注ぐことにより、吐出路15内は当然のこととして、塗布体1全体を洗浄することができ、洗浄後、新しい容器体21を組付けて、塗布体1を繰り返し使用することができる。また、同様に、塗布体1を容器体21から外し、主体筒3および組付き筒16を開放した状態で、塗布体1全体を洗面器等に溜めた水に浸漬して洗浄することもできる。
【0047】
なお、図示実施例にあっては、吐出孔6を、頂板4に直接開設した構造となっているが、これに限られることはなく、各櫛歯片5内に成形された吐出通路の基端開口部として構成しても良い。
【0048】
この構成であっても、各櫛歯片5に形成された吐出孔6は、隠れることなく、その全てが露出する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態例の、一部破断した全体側面図である。
【図2】図1の実施形態例の、要部拡大縦断面図である。
【図3】図1の実施形態例の、要部拡大平断面図である。
【図4】図1の実施形態例の、要部拡大正面図である。
【図5】図1の実施形態例の、要部拡大背面図である。
【図6】図1の実施形態例の、開状態の要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ; 塗布体
2 ; 櫛歯体
3 ; 主体筒
4 ; 頂板
5 ; 櫛歯片
6 ; 吐出孔
7 ; 筒壁
8 ; シール筒片
9 ; 掴持片
10; 連結片
11; 固定板片
12; ヒンジ
13; 起立筒体
14; 起立筒片
15; 吐出路
16; 組付き筒
17; 固定突片
18; 取付き筒
19; 接続筒片
20; 押下げ片
21; 容器体
22; 口部
23; ステム
A ; 吐出室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収納する容器体の口部に組付いて、列設した複数の櫛歯片間に、前記内容液を吐出可能とした合成樹脂製の塗布体を有する櫛付き容器であって、頂板に前記櫛歯片を列設した有頂短筒状の主体筒の内周面から離れた上端部に、ヒンジを介して固定板片を連設した櫛歯体と、前記容器体の口部に組付く取付き筒を下端に設け、吐出路を上下に貫通形成した縦長筒状の起立筒片の上端に、前記主体筒に密嵌入して吐出室を形成する有底短筒状の組付き筒を連設した起立筒体とから成り、前記固定板片を組付き筒の底壁外面に不動に固定した櫛付き容器。
【請求項2】
櫛歯体の主体筒の下端部に、起立筒体の起立筒片に対し、着脱自在に不動に組付く掴持片を、連結片を介して連設した請求項1記載の櫛付き容器。
【請求項3】
起立筒体の組付き筒の底壁外面に、櫛歯体の固定板片をカシメ固定する固定突片を、一体に突設した請求項1または2記載の櫛付き容器。
【請求項4】
櫛歯体の主体筒の頂板内面に、起立筒体の組付き筒に密嵌入する短筒片状のシール筒片を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の櫛付き容器。
【請求項5】
起立筒片の上端に、斜めに起立した姿勢の縦に長い長円短筒状の組付き筒を下側部分で連設し、櫛歯体の縦に長い長円短筒状の主体筒の頂板に、上下方向に沿って2列の櫛歯片を列設し、該2列の櫛歯片間に内容液を吐出する細長の吐出孔を上下に分けて開設した請求項1〜4のいずれか1項に記載の櫛付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−50355(P2009−50355A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218078(P2007−218078)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】