説明

歌唱評価装置

【課題】歌唱者の歌唱の巧拙さを採点する場合に、従来の採点基準データだけでなく、同じ楽曲において最も高い得点を得た歌唱データも採点の基準とすることで、従来と比較してより多角的な採点を行うことができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】歌唱者の歌唱音声が音声入力部によって収音され、オーディオ信号(以下、歌唱データ)に変換される。カラオケ装置の制御部は、歌唱データから音高と音量とを検出する。制御部は、歌唱データと採点基準データ、歌唱データと歌唱基準データのそれぞれに対応する音高と音量とを比較して両者の差分に応じて歌唱の採点を行う。そして、採点基準データと歌唱基準データに基づいて算出された採点結果を、採点比重テーブルに記述された比重を加味して歌唱者の歌唱の技巧を採点する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歌唱を評価する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ装置において歌唱者の歌唱の巧拙を採点する方法や、その採点結果を各種の目的に利用するための方法が種々提案されている。例えば、特許文献1においては、複数の歌唱者から投稿された区間毎に採点結果が付与された歌唱データから、同一区間において最も高い採点の歌唱データを区間毎に抽出し、それらを繋ぎ合わせることで、模範となる歌唱データを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−241848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歌唱者の歌唱の巧拙を採点する場合に、その基準となる採点基準データは、楽曲の旋律を示す音高や拍の長さなどを示すデータである。したがって、歌唱者は、楽曲の旋律どおりに歌唱すると採点結果が高得点となるが、音符の長さを意図的に変化させて歌唱する歌唱技巧、例えば「ため」や「しゃくり」などを用いて歌唱すると、楽曲の旋律と歌唱とが一致しないため、かえって採点結果が低い点数になってしまう。
本発明は上述した背景の下になされたものであり、歌唱者の歌唱を評価する場合に、楽曲の旋律という評価基準以外に、歌唱者の歌唱技巧に関する評価基準を用いて評価を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、楽曲の旋律を表す第一のデータと、当該楽曲の歌唱音声を表す第二のデータとを記憶する記憶手段と、評価対象となる歌唱音声を表す歌唱データを取得する取得手段と、前記歌唱データと前記第一のデータとを比較し、前記歌唱データと前記第二のデータとを比較する比較手段と、前記歌唱データと前記第一のデータとの比較結果、及び、前記歌唱データと前記第二のデータとの比較結果に基づいて、当該歌唱データが表す歌唱音声による歌唱を評価し、その評価結果を出力する評価手段とを備える歌唱評価装置を提供する。
【0006】
前記記憶手段は、前記取得手段により取得された歌唱データを前記第二のデータとして記憶するとともに、当該歌唱データが表す歌唱音声による歌唱が前記評価手段により評価されたときの評価結果を記憶し、前記評価手段により評価された評価結果が自記憶手段に記憶されている評価結果を超えた場合には、自記憶手段に記憶されている歌唱データ及び評価結果に代えて、当該評価手段により評価された歌唱データ及び当該歌唱データが表す歌唱音声による歌唱に対する評価結果を記憶するようにしてもよい。
【0007】
前記評価手段は、前記記憶手段に記憶されている前記評価結果が高いほど、前記歌唱データと前記第一のデータとの比較結果よりも前記歌唱データと前記第二のデータとの比較結果に高い比重を置いて評価するようにしてもよい。
【0008】
また、本発明は、コンピュータを、楽曲の旋律を表す第一のデータと、当該楽曲の歌唱音声を表す第二のデータとを記憶する記憶手段と、評価対象となる歌唱音声を表す歌唱データを取得する取得手段と、前記歌唱データと前記第一のデータとを比較し、前記歌唱データと前記第二のデータとを比較する比較手段と、前記歌唱データと前記第一のデータとの比較結果、及び、前記歌唱データと前記第二のデータとの比較結果に基づいて、当該歌唱データが表す歌唱音声による歌唱を評価し、その評価結果を出力する評価手段として実現させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、歌唱者の歌唱を評価する場合に、楽曲の旋律という評価基準以外に、歌唱者の歌唱技巧に関する評価基準を用いて評価を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】カラオケ装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】楽曲データ2の構造を示す図である。
【図3】採点リファレンスデータ3の構造を示す図である。
【図4】採点比重テーブル124の内容の一例を示す図である。
【図5】採点処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】カラオケシステム6のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
(1)構成
図1は、カラオケ装置1の構成を示すブロック図である。
カラオケ装置1は、制御部11、記憶部12、表示部13、操作部14、音声入力部15、音声処理部16、及び音声出力部17を備えており、歌唱者の歌唱を評価する歌唱評価装置として機能する。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)とを備えており、ROM又は記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バスを介してカラオケ装置1の各部を制御する。表示部13は、VRAM(Video RAM)、液晶ディスプレイ及び液晶駆動回路を備えており、制御部11による制御の下で各種の画像を表示する。操作部14は、楽曲を選択したり、歌唱の採点を実施する動作モード(以下、採点モードと称する)を選択したりするための種々のキーを備えており、歌唱者の操作を受け付けてその操作に応じた信号を制御部11に出力する。音声入力部15は、例えばマイクロホンであり、収音し、収音した音声を表すオーディオ信号(アナログ信号)を出力する。音声処理部16は、音声入力部15から入力されたアナログ信号をデジタルデータに変換したり、制御部11から供給されるデジタルデータをアナログ信号に変換して音声出力部17に出力したりする。また、音声処理部16は、デジタルデータに変換した歌唱者の音声から、制御部11の採点処理に必要な情報を抽出する。音声出力部17は、例えばスピーカーであり、音声処理部16でデジタルデータからアナログ信号に変換されて出力されるオーディオ信号に応じた音を放音する。
【0012】
記憶部12は、制御部11によって実行されるコンピュータプログラムやその実行時に使用されるデータを記憶するための記憶手段であり、例えばHD(Hard Disk)などの不揮発性の補助記憶装置である。この記憶部12は、楽曲データ記憶領域121と採点リファレンスデータ記憶領域122とを有しており、採点プログラム123と採点比重テーブル124とを記憶している。楽曲データ記憶領域121には、複数の楽曲の伴奏音や歌詞を表す楽曲データが記憶されている。また、採点リファレンスデータ記憶領域122には、歌唱の巧拙を採点する為のデータや、歌唱の巧拙を採点するときの採点基準に関する採点リファレンスデータが記述されている。採点プログラム123には、音声入力部15から入力された歌唱者の歌唱の巧拙を、採点リファレンスデータや採点比重テーブル124などを用いて採点結果を算出するための手順が記述されている。
【0013】
図2は、楽曲データ記憶領域121に記憶された楽曲データ2の構造を示す図である。
楽曲データ2は、ヘッダ、伴奏データ、及び歌詞データから構成されている。ヘッダには、楽曲を一意に特定する楽曲番号、楽曲の名称を示す楽曲名、楽曲を様式・内容によって区分するジャンル、及び楽曲の演奏時間を示す楽曲時間などの、楽曲の属性に関するメタデータが含まれている。伴奏データは、歌唱者の歌唱を主たる演奏とした場合に、副次的な演奏となる楽器などによる伴奏音を表すデータである。この伴奏データは、制御部11により読み出されて音声処理部16に供給され、その伴奏データに応じた音が音声出力部17から放音される。歌詞データは、楽曲の歌詞を表すデータであり、制御部11により伴奏データの読み出しと同期して読み出され、表示部13に供給される。表示部13は、供給された歌詞データが表す歌詞を表示する。
【0014】
図3は、採点リファレンスデータ記憶領域122に記憶された採点リファレンスデータ3の構造を示す図である。
採点リファレンスデータ3は、ヘッダ、採点基準データ(第一のデータ)、歌唱基準データ(第二のデータ)、及び得点データから構成されている。ヘッダには、楽曲を一意に特定する楽曲番号などの、楽曲の属性に関するメタデータが記述されている。
採点基準データは、楽曲の旋律を示す音高や拍の長さなどを示すデータであり、歌唱者の歌唱を採点する基準となる。
得点データは、ヘッダに記述された楽曲番号の楽曲の歌唱に対する採点結果の最高得点を表している。
歌唱基準データは、ヘッダに記述された楽曲番号の楽曲の歌唱において最高得点を得たときの歌唱者の歌唱音声を表している。この歌唱基準データは、上記採点基準データと併せて、制御部11が歌唱者の歌唱を採点する際の基準となる。歌唱基準データは、最高得点を得た歌唱者の生の歌唱音声であるから、その歌唱者の歌唱技巧、例えばため、しゃくり、ビブラートなどの特徴を含んだ情報となる。
【0015】
図4は、記憶部12に記憶された採点比重テーブル124の内容の一例を示す図である。
採点比重テーブル124には、採点リファレンスデータ3の得点データによって表される最高得点の範囲に対応付けて、採点時における採点基準データ及び歌唱基準データの比重が記述されている。図の例の場合、例えば、今までの最高得点が81〜99点の楽曲に対する歌唱の採点を行う場合には、採点基準データに基づいて算出された採点結果が19%の割合で採用され、歌唱基準データに基づいて算出された採点結果が81%の割合で採用されることを意味している。また、例えば、今までの最高得点が0点或いは記述無し(つまり過去にその歌唱が採点されたことがない)の楽曲に対する歌唱の採点を行う場合には、採点基準データに基づいて算出された採点結果が100%の割合で採用され、歌唱基準データに基づいて算出された採点結果は一切採用されないということを意味している。このように、採点比重テーブル124には、採点基準データに基づいて算出された採点結果と、歌唱基準データに基づいて算出された採点結果のどちらに比重をおいて採点を実施するのかという情報が記述されている。
【0016】
(2)動作
歌唱者は、カラオケ装置1の操作部14に設けられた複数のキーを操作することで、歌唱する楽曲の楽曲番号又は楽曲名を入力して歌唱する楽曲を選択し、さらに、動作モードとして採点モードを選択する。操作部14は、歌唱者の操作を受け付けてその操作に応じた信号を制御部11に出力する。制御部11は、選択された楽曲に応じた楽曲データ2を楽曲番号又は楽曲名をキーにして楽曲データ記憶領域121から読み出してRAMに記憶させる。また、制御部11は、採点リファレンスデータ3を採点リファレンスデータ記憶領域122から読み出してRAMに転送して記憶させる。
【0017】
まず、歌唱者が、カラオケ装置1による伴奏及び歌詞の案内に従って歌唱を行うときの処理を説明する。
制御部11は、RAMに記憶された伴奏データを音声処理部16に対して順次出力する。音声処理部16は、デジタルデータである伴奏データをアナログ信号に変換して音声出力部17に出力して、音声出力部17から伴奏データに応じた音を放音させる。この放音された音が、歌唱者が歌唱する際の伴奏となる。また、この伴奏出力と同期して、制御部11は、RAMに記憶された歌詞データを表示部13に対して順次出力する。表示部13は、歌詞データに応じた歌詞を表示する。このように、伴奏データが表す伴奏が音声出力部17から出力されるのと同時に、歌詞データが表す歌詞が表示部13に表示されるので、歌唱者はこれらの伴奏及び歌詞の案内に従って歌唱を行う。この歌唱音は、音声入力部15によって収音され、音声処理部16による増幅やエコー付与などの音声処理を経て、音声出力部17から放音される。
【0018】
次に、制御部11が実施する採点処理の説明をする。
音声入力部15は、歌唱者の音声を収音し、収音した音声をアナログのオーディオ信号に変換して音声処理部16に出力する。音声処理部16は、このアナログのオーディオ信号を、デジタルのオーディオ信号に変換して歌唱データを生成し、制御部11に供給する。制御部11は、この歌唱データを取得する。そして、制御部11は、この歌唱データが示す音声波形から、各音高と、その音高毎の音量とを抽出する。以下では、制御部11が歌唱データから抽出した音高を「歌唱音高データ」と称し、制御部11が歌唱音声データから抽出した音量を「歌唱音量データ」と称する。制御部11は、歌唱音高データ及び歌唱音量データに基づいて歌唱の採点処理を実施する。
【0019】
図5は、制御部11が実施する採点処理の流れを示すフローチャートである。
制御部11は、採点プログラム123に記述された手順に従って採点演算処理を開始する(ステップS51)。この採点演算処理は、歌唱データと採点基準データと比較してその一致度を求めるとともに、歌唱データと歌唱基準データとを比較してその一致度を求め、これらの各一致度を採点比重テーブル124の内容を考慮して評価し、採点結果を求める。
【0020】
具体的には、まず、制御部11は、採点基準データから各音高を時系列に抽出してRAMに記憶するとともに、歌唱基準データからピッチ(基本周波数)、即ち音高を時系列に抽出するとともに、その音高に対応する音量を時系列に抽出して、それぞれRAMに記憶する。次に、制御部11は、音声処理部16によって抽出された歌唱音高データと採点基準データの音高との差分を求めてRAMに記憶する。また、制御部11は、音声処理部16によって抽出された歌唱音高データと歌唱基準データの音高との差分を求めてRAMに記憶する。さらに、制御部11は、各音高毎に、音声処理部16によって抽出された歌唱音量データと歌唱基準データの音量との差分を求めて、RAMに記憶する。そして、採点の対象となる歌唱が終了すると、制御部11は、RAMに記憶された内容、即ち、歌唱データと採点基準データとの差分、及び、歌唱データと歌唱基準データとの差分をそれぞれ集計する。歌唱の採点は、この集計された差分に応じた値となり、この差分の値が大きいほど採点結果は低く算出されることになる。
【0021】
ここで、歌唱者が、例えば採点基準データで規定された旋律からは少しはずれた歌唱ではあったが、歌唱基準データで規定されている、ため、しゃくり、ビブラートなどの歌唱技巧については比較的良好な歌唱を行ったとする。この場合、制御部11は、採点基準データとの比較に基づく採点において、旋律からは少しはずれた歌唱部分を採点基準データとの差分として判断して減点の対象とするから、採点結果を例えば70点と算出する。一方、制御部11は、歌唱基準データとの比較に基づく採点においては、歌唱者の歌唱技巧が歌唱基準データの内容と比較的一致するから、採点結果を例えば80点と算出する。また、上記とは逆に、歌唱者が、楽曲の旋律には比較的合っているが、歌唱技巧という点では不足がある歌唱を行った場合、制御部11は、例えば採点基準データとの比較に基づく採点結果を例えば80点と算出し、歌唱基準データとの比較に基づく採点結果を例えば70点と算出する。このように、採点基準データと歌唱基準データとのそれぞれに基づく採点結果には得点差が発生することになる。なお、以下では、制御部11が、採点基準データとの比較に基づく採点結果を70点と算出し、歌唱基準データとの比較に基づく採点結果を80点と算出した場合を例に挙げて説明する。
【0022】
歌唱された楽曲の採点リファレンスデータ3における得点データとして70点が記述されていた場合には、その得点データ70点は、採点比重テーブル124の得点データの範囲の「61〜80」に該当する。この場合、制御部11は、採点基準データに基づいて算出された採点結果(70点)に0.36を乗じた値(25.2点)と、歌唱基準データに基づいて算出された採点結果(80点)に0.64を乗じた値(46.2点)を加えた値である(71.4点)を、歌唱者の歌唱の採点結果として算出する。
【0023】
次に、制御部11は、ステップS51で算出した採点結果が、歌唱した楽曲に対応する採点リファレンスデータ3の得点データを超えたか否かを判定する(ステップS52)。そして、制御部11は、歌唱者の歌唱の採点結果が、採点リファレンスデータ3の得点データを超えたと判断すると(ステップS52;YES)、採点リファレンスデータ3の得点データを歌唱者の歌唱の採点結果で更新するとともに、評価対象としていた歌唱データを採点リファレンスデータ3の歌唱基準データとして記憶部12に記憶させる(ステップS53)。つまり、評価前の歌唱基準データ及び得点データに代えて、新たに最高得点であると評価された歌唱データ及び得点データが記憶部12に採点リファレンスデータ3として記憶されることになる。そして、制御部11は、歌唱者の歌唱の採点結果を表示部13に表示する(ステップS54)。なお、ステップS52において、制御部11は、歌唱者の歌唱の採点結果が、採点リファレンスデータ3の得点データ未満であると判断した場合には、ステップS53の処理をスキップして、ステップS54の採点結果を表示する処理に進む。
【0024】
一方、例えば、歌唱された楽曲の採点リファレンスデータ3における得点データとして、0点或いは何も記述されていなかった場合には、採点比重テーブル124の「0点或いは記述無し」に該当するから、採点基準データに基づいて算出した採点結果を100%の割合で採用して、歌唱基準データに基づいて算出した採点結果を一切採用しないということを意味している。つまり、制御部11は、歌唱者の歌唱を採点基準データに基づいて算出した採点結果(70点)に1.00を乗じた値(70点)を、歌唱者の歌唱の採点結果(70点)として算出する。そして、制御部11は、先述した処理と同様にして、ステップS52以降の処理を実施する。
【0025】
採点基準データのみを基に歌唱の採点を実施する場合には、作曲時に予め決められる楽曲の旋律どおりに歌唱すると採点結果は高い結果になるが、音符の長さを意図的に変化させて歌唱する歌唱技巧を用いて歌唱すると、楽曲の旋律と歌唱とが一致しないため、採点結果が低い結果になる。よって、例えば、プロの歌手のように非常に優れた歌い手を真似して歌唱しても必ずしも高い採点結果にはならない。
これに対し、上述の実施形態によって歌唱者の歌唱の巧拙を採点する場合には、作曲時に予め決められる採点基準データだけでなく、その楽曲において採点結果が最高得点を得た生の歌唱音声を採点の基準に加味することで、楽曲の旋律から意図的に外すようなレベルの高い歌唱技巧を用いた歌唱を正当に評価するような採点が可能となる。
【0026】
また、採点比重テーブル124は、過去の最高得点が高い場合ほど、歌唱基準データの比重を大きく、過去の最高得点が低い場合ほど、歌唱基準データの比重が小さくするような内容になっている。例えば、或る楽曲についての過去の最高得点が低い場合ということは、過去にその楽曲を採点モードで歌唱したことのある歌唱者の歌唱の巧拙のレベルがそれほど高くはないということを意味する。このような場合に、その歌唱者の歌唱に重点を置いて採点すると、妥当な評価にはならない虞がある。このため、過去の最高得点が低い場合には、歌唱基準データの比重を小さくしている。一方、或る楽曲についての過去の最高得点が高い場合ということは、過去にその楽曲を採点モードで歌唱したことのある歌唱者の歌唱の巧拙のレベルが高いことを意味する。このような場合には、歌唱のレベルの高い歌唱者の歌唱技巧を採点基準に含めることで、歌唱技巧を用いた歌唱を正当に評価することができる。
【0027】
(3)変形例
(3−1)変形例1
採点リファレンスデータ3の歌唱基準データは、カラオケ装置1を利用した歌唱者の歌声だけではなく、採点モードのサービスを提供する者が予め収録したデータであっても良い。また、図4に示した採点比重テーブル124に記述されている得点データの範囲や対応する比重(数値)は、採点モードのサービスを提供する者だけではなく、カラオケ装置の利用者や、歌唱者が選択する採点モードの種類によって設定・変更されるようにしてもよい。カラオケ装置の利用者が、採点比重テーブル124に記述されている比重(数値)を設定・変更する場合には、操作部14を操作して任意の比重をカラオケ装置1に入力すればよい。また、採点基準データとの比較に基づく採点結果の比重を大きくした旋律重視モードと、歌唱基準データとの比較に基づく採点結果の比重を大きくした歌唱技巧重視モードという2つの採点モードについて、それぞれ内容の異なる2種類の採点比重テーブル124を記憶部12に記憶しておき、制御部が11がこれらをその採点モードに応じて使い分けてもよい。
また、例えば歌唱の専門的な技術を有する人物(例えば歌手)の歌声を歌唱基準データに記述して、さらに採点比重テーブル124に歌唱基準データが1.00、且つ採点基準データが0.00となるような採点比重を記述すると、歌唱者は楽曲の旋律だけではなく、歌手の歌い方を模範(物真似)することを加味した採点を行うことが可能となる。
【0028】
(3−2)変形例2
採点リファレンスデータ3の歌唱基準データは、該当する楽曲における歌唱の採点結果が最高得点であった場合に、歌唱時の歌声が記述されるものとした。しかし、歌唱基準データは、採点結果以外の要素を加味してもよい。例えば図3に示した採点リファレンスデータ3の構造を、歌唱基準データを3件、得点データを3件記述可能とし、制御部11は、該当の楽曲において歌唱者の採点結果が3位以内であった場合に、歌唱時の歌声を歌唱基準データに、そして採点結果を得点データに記述する。そして、カラオケ装置1の歌唱者が、操作部14を操作することで所望する楽曲の採点リファレンスデータ3の3件分の歌唱基準データを視聴し、歌唱者自身が好適な歌唱基準データを指定する。すると制御部11は、歌唱者が好適とした歌唱基準データの得点データに予め決められた点数を加点する。この加点によって採点リファレンスデータ3の歌唱基準データの採点結果の順位が変動する場合もある。つまり、採点リファレンスデータ3に基づいた採点結果が、必ずしも歌唱者が好適とする順位に忠実であるとは限らないので、歌唱者の意思を反映した順位付けが可能となる。
【0029】
(3−3)変形例3
カラオケ装置1に代わる別の装置が楽曲データ2及び採点リファレンスデータ3を記憶していてもよい。
図6は、カラオケシステム6の全体構成図である。
カラオケ装置61は、カラオケ装置1の構成に加えて、通信部18を備えている。通信部18は、通信回路や通信インタフェースを備えており、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)などの情報を伝達するための通信網であるネットワーク62を介して情報管理サーバー63と通信を行う。また、情報管理サーバー63の記憶部631には、カラオケ装置1の記憶部12が記憶していた楽曲データ記憶領域121及び採点リファレンスデータ記憶領域122が設けられており、それぞれ楽曲データ2及び採点リファレンスデータ3が記憶されている。よってカラオケ装置61は、記憶部12に楽曲データ記憶領域121及び採点リファレンスデータ記憶領域122が設けられておらず、ネットワーク62を介して情報管理サーバー63に対して、歌唱者によって選択された楽曲の楽曲番号又は楽曲名を通知して、楽曲データ2及び、採点リファレンスデータ3を要求し、それを取得して記憶する。そして、カラオケ装置の制御部11は、取得した楽曲データ2及び採点リファレンスデータ3を用いて図5に示した処理を行う。また、カラオケ装置61は、歌唱者からの要求によって楽曲データ2及び、採点リファレンスデータ3を情報管理サーバー63から逐次取得するのではなく、使用頻度の高いデータを予め設定された条件によって記憶部12に記憶(キャッシュ)することにより、逐次取得にかかる時間を短縮してもよい。
【0030】
また、カラオケ装置1に代わる別の装置が採点演算処理を実施してもよい。
例えば、図6のカラオケ装置61の記憶部12に記憶されていた採点プログラム123及び採点比重テーブル124を、カラオケ装置61の記憶部12ではなく、情報管理サーバー63の記憶部631に記憶するようにしてもよい。そして、カラオケ装置61の制御部11は、音声処理部16によって抽出した歌唱者の歌唱データを情報管理サーバー63に通信部18から送信する。情報管理サーバー63は、図5のステップS51と同様にして採点演算処理を実施し、歌唱者の歌唱データと採点基準データ、及び歌唱データと歌唱基準データとの一致度をそれぞれ求め、これらの各一致度を採点比重テーブル124の内容を考慮して評価し、採点結果を求める。そして、情報管理サーバー63は、採点結果をカラオケ装置1の通信部18に送信する。カラオケ装置1の制御部11は、受信した採点結果を表示部13に表示する。
【0031】
以上の変形例によれば、カラオケシステム6の管理者は、情報管理サーバー63の記憶部631に設けられたデータの一元管理が可能となり、それぞれのカラオケ装置61に対してデータを記憶させる作業の必要性がなくなる。また、カラオケシステム6の管理者は、任意のカラオケ装置61に対してのみ、予め決められたデータを配信するといった制御も可能となる。なお、図6において1台の情報管理サーバー63と3台のカラオケ装置61を図示しているが、ネットワーク62に接続されるカラオケ装置61や情報管理サーバー63の数はこれに限らない。
【0032】
(3−4)変形例4
上述した実施形態においては、歌唱データと採点基準データ、歌唱データと歌唱基準データのそれぞれに対応する特性情報である音高と音量とを比較して両者の差分に応じて歌唱の採点を行った。しかし、特性情報は、音高と音量に限定されない。つまり、歌唱者の歌唱技巧の採点は、歌唱データと採点基準データと歌唱基準データが共通して有する特性情報が比較されて実施されればよい。
また、歌唱者の歌唱の採点結果は、表示部13に表示されるとしたが、これに限定されない。例えば、歌唱者の歌唱の採点結果は、音声として読み上げられても良いし、パーソナルコンピューター及び携帯端末などにデータの形式で出力されても良い。
【符号の説明】
【0033】
1…カラオケ装置、11…制御部、12…記憶部、121…楽曲データ記憶領域、122…採点リファレンスデータ記憶領域、123…採点プログラム、124…採点比重テーブル、13…表示部、14…操作部、15…音声入力部、16…音声処理部、17…音声出力部、18…通信部、2…楽曲データ、3…採点リファレンスデータ、6…カラオケシステム、61…カラオケ装置、62…ネットワーク、63…情報管理サーバー、631…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲の旋律を表す第一のデータと、当該楽曲の歌唱音声を表す第二のデータとを記憶する記憶手段と、
評価対象となる歌唱音声を表す歌唱データを取得する取得手段と、
前記歌唱データと前記第一のデータとを比較し、前記歌唱データと前記第二のデータとを比較する比較手段と、
前記歌唱データと前記第一のデータとの比較結果、及び、前記歌唱データと前記第二のデータとの比較結果に基づいて、当該歌唱データが表す歌唱音声による歌唱を評価し、その評価結果を出力する評価手段と
を備える歌唱評価装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、
前記取得手段により取得された歌唱データを前記第二のデータとして記憶するとともに、当該歌唱データが表す歌唱音声による歌唱が前記評価手段により評価されたときの評価結果を記憶し、
前記評価手段により評価された評価結果が自記憶手段に記憶されている評価結果を超えた場合には、自記憶手段に記憶されている歌唱データ及び評価結果に代えて、当該評価手段により評価された歌唱データ及び当該歌唱データが表す歌唱音声による歌唱に対する評価結果を記憶する
ことを特徴とする請求項1記載の歌唱評価装置。
【請求項3】
前記評価手段は、
前記記憶手段に記憶されている前記評価結果が高いほど、前記歌唱データと前記第一のデータとの比較結果よりも前記歌唱データと前記第二のデータとの比較結果に高い比重を置いて評価する
ことを特徴とする請求項2記載の歌唱評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−237258(P2010−237258A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82066(P2009−82066)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】