止水工法
【課題】地中に横方向に掘削されたトンネルと、垂直方向に掘削された縦孔との交差点を確実に止水することができる止水工法の提供。
【解決手段】地中Gに横方向に掘削されたトンネル(5)と、垂直孔(H)との交差領域を止水する止水工法において、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程(図2及び図3参照)と、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する工程(図6参照)とを有することを特徴としている。
【解決手段】地中Gに横方向に掘削されたトンネル(5)と、垂直孔(H)との交差領域を止水する止水工法において、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程(図2及び図3参照)と、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する工程(図6参照)とを有することを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に横方向に掘削されたトンネルと、垂直方向に掘削された縦孔との交差点を止水する技術、例えば、シールドの線形確認のためのチェック作業(いわゆる「チェックボーリング」)等で好適に用いられる止水技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の発生する地盤において、トンネルを掘削する技術として、シールド工法が知られている。
シールド工法を用いてトンネルを掘削している際には、トンネルが予定通り(計画線の通り)に掘削されているか否かをチェックする(線形確認を行う)必要がある。
【0003】
その様なチェックのために、シールドマシン内部で進行距離及び方向を計測して、予定通り(計画線の通り)に掘削されているかをチェックしている。それに加えて、例えば2km毎に、地上側からシールドマシンによる掘削個所まで垂直掘削して、線形確認を行っている。
【0004】
従来技術において、地上側からシールドマシンによる掘削個所まで垂直掘削して線形確認を行う態様について、図12〜図27を参照して、説明する。
先ず、図12で示す様に、例えば、直径500mmのビット1(500mmビット)により、地表GLから垂直下方に、掘削機6によってガイド孔2を掘削する。
そして、図13で示す様に、例えば直径が500mm、長さが5.0mの鋼管を、ガイド管3として、例えば、クレーン10によってガイド孔2に建て込む。ここで、ガイド管(直径500mmの鋼管)3の長さを5.0mとしたのは、地下水の流出による地表面GLの陥没を防止するために十分な長さだからである。
【0005】
次に、図14で示す様に、図13で建て込んだガイド管3の内側に、直径が450mmのビット4(450mmのビット)を通し、垂直孔を削孔する。
図15で示す様に、450mmのビット4による垂直削孔は、シールド5の天井部分のセグメント51近傍まで行われる。
図15において、符号Hは、450mmのビット4により掘削された垂直孔を示す。
この段階で、450mmのビット4がシールド(シールドセグメント)5の天井部分を貫通してしまうと、シールド5内に大量の地下水が流入し、地表GL側が陥没する恐れがあるので、450mmのビットによる垂直削孔は、シールド5の天井部分のセグメント51近傍までに止めている。
【0006】
図16で示す様に、450mmのビット4により削孔された垂直孔Hに、直径350mmの鋼管(350mm鋼管)7をクレーン10によって建て込む。
ここで、350mm鋼管7は、シールド5の天井部分のセグメント51から、例えば2m上方まで建て込まれる。
図16における350mm鋼管7の建て込み作業は、「目視」により「建ち」を確認して行われる。
【0007】
350mm鋼管7がシールド5の天井部分のセグメント51から2m上方まで建て込まれたならば(図16で示す工程が完了したならば)、図17で示す様に、350mm鋼管7が建て込まれた垂直孔H内に、セメントミルク注入管8を、例えばクレーン10を用いて挿入する。そして、350mm鋼管7の先端からシールド5の天井部分51に至る領域に、注入管8の先端81からセメントミルク9を注入する。すなわち、シールド5の天井部分のセグメント51から2m上方までの領域に、セメントミルク9を注入する。
【0008】
図17の工程でセメントミルク9を注入した後、350mm鋼管7を、シールド5の天井部分のセグメント51に当接するまで建て込む(図18の工程)。
図18の工程において、350mm鋼管7をシールド5の天井部分のセグメント51に当接させた段階では、350mm鋼管7とセグメント天井部分51との間には、図19で示す様な隙間δが存在している。
【0009】
図20の工程では、350mm鋼管7の内側に、先端にビット12を取り付けた直径が300mmの鋼管11を通す。ここで、ビット12の直径は、300mmである。そして、ビット12でセメントミルク9が注入された領域を削孔する。
直径が300mmのビット12によるセメントミルク9の削孔は、シールドの天井部分51の上方300mmまで行われる。
図21は、図20の工程で、シールドの天井部分51の上方300mmまでセメントミルク9が削孔された状態を、詳細に示している。
350mm鋼管7の内側にビット12を通してセメントミルク9の部分を掘削しているのは、セメントミルク9が注入された部分よりも上方の領域に存在する地下水が、高い水圧を伴って、シールドセグメント(シールド)5内に流入することを防止するためである。
【0010】
また、ビット12によるセメントミルク9の削孔が、シールドの天井部分の上方300mmの部分を残して行われるのは、当該300mmだけ残ったセメントミルク9により、隙間δ(図19参照:350mm鋼管7とセグメント天井部分51との間の隙間)から、地下水が、シールドセグメント5内に浸入するのを防止するためである。
【0011】
図20で示す工程において、直径が300mmのビット12によるセメントミルクの削孔が終了したならば、直径300mmのビット12を取り付けた直径300mmの鋼管12を、地上側GLへ引き上げる(図示を省略)。
そして、図22で示す様に、排水ホース13の先端に取り付けた排水ポンプ14を、クレーン10により350mm鋼管7内に挿入し、350mm鋼管7内の水を排水する。
【0012】
図22において、350mm鋼管7内には、正確には、水と、セメントミルク9の掘削ズリとが溜まっている。この状態で、シールドの天井部分51を貫通すると、350mm鋼管7内に溜まった水及びズリがシールドセグメント5内に流入してしまう。
そのため、排水ポンプ14を挿入して、水及び掘削ズリを、350mm鋼管7内から排出するのである。
係る排水作業により、350mm鋼管7内において、セメントミルク9が充填されている個所(シールドの天井部分から300mm上方)よりも地上側GLの領域は、空洞となる。
【0013】
次に、図23で示す様に、直径300mmの鋼管(300mm鋼管)11を、クレーン10によって、セメントミルク9で固化されている個所(シールドの天井部分51から300mm上方)まで建て込む。300mm鋼管11の建て込み作業は、「目視」により「建ち」を確認して行われる。
ここで、300mm鋼管11の先端には、直径300mmのビット16が取り付けられている。このビット16は、図20で示すビット12とは別種類のビットであり、図20の工程と図24の工程との間において、300mm鋼管11の先端で付け替えられている(ビット12からビット16に交換されている)。
【0014】
図24で示す工程では、直径が300mmのビット16により、セメントミルク9を無水削孔する(垂直方向に300mm、無水削孔を行う)。
換言すれば、地上側からシールドの天井部分51の300mm上方までの領域のセメントミルク9を削孔するには(図20の工程では)、切削水を用いている。それに対して、図24において、シールドの天井部分51から300mmの部分を削孔するには、切削水を用いずに行う(無水削孔を行う)のである。
【0015】
図20の工程で用いられるビット(切削水を用いる場合のビット)12と、図24の無水削孔で用いられるビット16との相違について、図25を参照して、さらに説明する。
図24の工程(無水削孔)で使用されるビット16には、図25において点線で示すチップ17(300mm鋼管11の半径方向外側に突出したチップ)が存在しない。
それに対して、図20の工程(切削水を用いてセメントミルクを削孔する工程)で用いられるビットには、300mm鋼管11の半径方向外側に突出したチップ17(図25において点線で示すチップ)が設けられている。
【0016】
チップ17(半径方向外側に突出したチップ)があると、ビットにより掘削される範囲は、300mm鋼管11よりも、チップ17が半径方向外側へ突出した分だけ、半径方向寸法を大きく削孔出来る。そして、削孔された領域において、300mm鋼管11の外周面よりも半径方向外側に形成された隙間を通って、切削水や切削ズリが地上側に逃げることができる。
ここで、切削水や切削ズリが地上側GLに逃げることが出来なければ、ビット周辺の圧力が昇圧し過ぎて、直ちに削孔が出来なくなってしまう。
そのため、図20の工程(切削水を用いてセメントミルク9を削孔する工程)では、300mm鋼管11の半径方向外側に突出したチップ17を設けたビット12を用いている。
【0017】
これに対して、図24の工程(無水削孔)の様に、削孔距離が300mm程度であれば、300mm鋼管11の外周面よりも半径方向外側に、切削水や切削ズリが地上側に逃げるための隙間が形成されていなくても、削孔が可能である。
直径が300mmの鋼管11の半径方向外側に突出したチップ17(23において点線で示すチップ)を有しないビットで、350mm鋼管7内のセメントミルク9を掘削したならば、図25で示す様に、350mm鋼管7の半径方向内側に、円環状のセメントミルク9aが残存する。
350mm鋼管7の半径方向内側に円環状のセメントミルク9aが残存すれば、350mm鋼管7とシールドセグメント5との隙間δが、セメントミルク9aにより閉塞され、当該隙間δからシールドセグメント5内へ地下水が浸入するのを防止することができる。
【0018】
換言すれば、後述する様に、300mm鋼管11の先端のビット16がシールドセグメント天井部分51を貫通した際に、上記隙間δを介して高圧の地下水がシールドセグメント5内に流入してしまうと、地表側が陥没する恐れがある。係る事態を防止するため、円環状のセメントミルク9aを残存させる必要がある。
【0019】
そのため、図24の工程では、半径方向外側に突出したチップ17を有しないビット16を用いて、円管状のセメントミルク9aを、350mm鋼管7の半径方向内側に形成している。
なお、図20の工程(切削水を用いてセメントミルク9を削孔する工程)では、上述した通り、半径方向外側に突出したチップ17を有するビット12で掘削するので、当該チップ17により、350mm鋼管7の半径方向内側には、セメントミルクが残存しない。すなわち、図20の工程(切削水を用いてセメントミルク9を削孔する工程)では、円管状のセメントミルク9aは残存しない。
【0020】
再び図24において、300mm鋼管11により、シールドの天井部分51から300mm上方までの領域のセメントミルク9を削孔したならば、そのまま、シールドの天井部分のセグメント51と、そのセグメント51の半径方向内側に固定された止水箱(図24では図示せず)を、300mm鋼管11先端のビット16で貫通する。
【0021】
300mm鋼管11先端のビット16により、シールドの天井部分のセグメント51及び止水箱18を貫通したならば、300mm鋼管11先端と止水箱とを溶接して、固定する(図26参照)。
【0022】
そして、図27で示す様に、ガイド管(直径500mmの鋼管)3を引き抜き、350mm鋼管7と地山との隙間(直径350mmの鋼管7の外周における円環状の隙間)を、硅砂等の充填材料19で充填する。
これにより、従来技術におけるシールドの線形確認(いわゆる「チェックボーリング」)を完了している。
【0023】
ここで、図25において、350mm鋼管7の外径が、355.6mm、厚さ寸法が6.4mmで、300mm鋼管11の外径が318.5mm、厚さ寸法が6.0mmであれば、円環状のセメントミルク9a(直径350mmの鋼管7の半径方向内方に形成されたセメントミルク9aの領域)の半径方向厚さは18.2mmとなる。
そして、円環状のセメントミルク9aの半径方向厚さ18.2mmは、350mm鋼管7と300mm鋼管11とが完全に同心に配置している場合であり、350mm鋼管7と300mm鋼管11とが偏芯していれば、円環状のセメントミルク9aの半径方向厚さは一様ではなくなり、厚さ寸法が18.2mmよりもさらに小さい部分が出来てしまう。すなわち、円環状のセメントミルク9aは、その半径方向の厚さ寸法が非常に小さい(半径方向について薄い)。
【0024】
図12〜図27で示す従来技術では、高圧の地下水の進入に対して、上述した様な非常に薄い円環状のセメントミルク9aによって、外管7とシールド天井部分51との隙間δを止水しなければならず、隙間δからの高圧地下水の進入に対しては不十分である。
そのため、図12〜図27で示す従来技術では、特に、350mm鋼管7とセグメント天井部分51とが当接する部分における止水性が問題となっている。
【0025】
また、従来技術において、直径500mmの垂直孔を掘削するのは、大変な労力及びコストが必要となる。
また、図24の工程において、シールドセグメント天井部分51に貫通孔を穿孔するに際して、地下水がシールドセグメント5内に流入するのを防止する観点から、貫通孔の径寸法は小さくしたい。
【0026】
一方、線形確認に際しては、高精度にて垂直方向へ掘削することが要求される。特に、径の小さなボーリング孔を垂直方向へ掘削することは、高い精度が要求される。
深度50m〜60mの垂直掘削を行う場合であって、小径の鋼管(例えば、直径200mmの鋼管)による掘削を行いたいという要請は従来から存在するが、上述したように高精度の垂直掘削が要求されるので、従来技術においては実現が困難であった。
【0027】
その他の従来技術として、シールドセグメントの天井部分の半径方向内側に止水ボックスを設置して、削孔用のケーシングがシールドセグメントの天井部分を貫通した際に、貫通個所から地下水がシールドセグメント内部に流入するのを防止した技術が存在する(特許文献1参照)。
【0028】
係る従来技術(特許文献1)は、地表からシールドセグメントまでの深度が小さい場合には大変に有効である。
しかし、地表からシールドセグメントまでの深度が50m以上では、地下水がシールドセグメント内に流入するのを阻止することが困難である。
【特許文献1】特開平8−93395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、地中に横方向に掘削されたトンネルと、垂直方向に掘削された縦孔との交差点を確実に止水することができる止水工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の止水工法は、地中に横方向に掘削されたトンネル(5)と、垂直孔(H)との交差領域を止水する止水工法において、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程(図3及び図4参照)と、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する工程(図6参照)とを有することを特徴としている(請求項1)。
【0031】
本発明の止水工法において、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する前記工程(図6参照)は、トンネル直上(51)まで垂直孔(H)を削孔する工程(図2参照)と、固化材噴射機構(セメントミルク噴射用ロッド80)を垂直孔(H)へ挿入する挿入工程(図6、図7参照)と、固化材噴射機構(80)から固化材(例えば、セメントミルク9)を噴射して垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域の土壌と固化材(9)とを混合する噴射工程(図7参照)とを含み、噴射工程では、固化材(9)を斜め下方へ噴射しつつ固化材噴射機構(80)を回転して、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域よりも半径方向外方の範囲まで固化材により切削して原位置土壌と混合するのが好ましい(請求項2)。
【0032】
また、本発明において、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、(例えばローラー型傾斜計により)傾斜を計測する工程と、計測された傾斜に対応して垂直孔(H)の掘削方向を修正する工程とを含んでいるのが好ましい(請求項3:図2参照)。
【0033】
そして、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、トンネル直上まで垂直孔(H)を削孔する工程(図2参照)と、垂直孔(H)を介してトンネル天井部分(51)に印をつける(ポンチングを行う)工程(及びその印を確認する工程)とを有するのが好ましい(請求項4:図3、図4参照)
【0034】
前記トンネル(5)はシールドセグメントで構成されており、シールドセグメントは薄い板状部材(スキンプレート50)で構成されており、前記垂直孔(H)に挿入された管状部材(例えば、鋼管11)がシールドセグメント天井部分(51)を貫通する工程を有しており、シールドセグメント天井部分(51)が貫通される箇所の内側に止水ボックス(18)を設置することが可能である(請求項5)。
【0035】
前記トンネル(5)はシールドセグメントで構成されており、前記垂直孔(H)に挿入された管状部材(例えば、鋼管11)がシールドセグメント天井部分(51)を貫通する工程を有しており、シールドセグメントは薄い板状部材(スキンプレート50)で構成されているのが好ましい。
或いは、前記トンネル(5)はシールドセグメントで構成されており、前記垂直孔(H)に挿入された管状部材(例えば、鋼管11)がシールドセグメント天井部分(51)を貫通する工程を有しており、シールドセグメントはコンクリートセグメントであるのが好ましい。
【0036】
本発明の止水工法は、いわゆる「チェックボーリング」に対して限定して適用されるものではない。例えば、いわゆる「本設管」における止水にも適用可能である。
【発明の効果】
【0037】
上述する構成を具備する本発明によれば、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する様に構成されているので、固化された交差領域(9E)の止水作用により、トンネル(5)内に地下水が流入することが防止される。
例えば、横方向に掘削されたトンネル(5)がシールド工法により施工されており、垂直孔(H)が線形確認のため(いわゆる「チェックボーリング」のため)に削孔される場合に、垂直孔(H)に挿入された鋼管(11)の先端のビット(16)がシールドセグメントの天井部分(51)を貫通した際にも、当該貫通箇所(垂直孔とトンネルとの交差領域)の周辺が固化されて、止水効果を発揮するので、地下水がシールドセグメント(トンネル5)内に流入してしまうことが防止され、地表が陥没してしまうことはない。
【0038】
また本発明では、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程を有しているので、比較的小径のロッド(例えばφ200mmの鋼管11)を用いて、高精度で、大深度(例えば、深度50m〜60m)の垂直掘削を行うことが可能である。
【0039】
本発明において、シールドセグメント天井部分(51)が貫通される箇所の内側に止水ボックス(18)を設置すれば(請求項5)、止水性がさらに向上して、シールドセグメント(5)内に地下水が流入する事態がさらに防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図1〜図11を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態は、本発明をシールド工法における線形確認(いわゆる「チェックボーリング」)に適用した場合に係るものである。
【0041】
図1で示す工程では、掘削機6によって、ボーリングロッド(或はビット)Rを用いて地表GL側から直径350mmの垂直孔(ガイド孔)2を削孔する。そして、垂直孔2に直径350mmの鋼管(ガイド管:350mm)3を埋設する。
ここで、図1で使用される350mm鋼管(ガイド管)3は、従来技術における図12、図13の工程における直径500mmの鋼管に相当する。
図1において、350mm鋼管(ガイド管)3埋設用の垂直孔(ガイド孔)2は、例えば、地表から8m削孔される。そして、350mm鋼管3は地表から7.5mまで建て込まれる。
【0042】
350mm鋼管3を建て込むことにより、地表GLの陥没が防止される。それと共に、既存の地中埋設管等と、図示の実施形態を施工する際に垂直掘削される縦孔とが干渉してしまうことを確実に防止することが出来る。係る干渉を防止するためには、安全率を見込んで、比較的径の大きな鋼管を建て込むのが好適であり、350mm鋼管3を建て込むことにより、係る安全率を見込むことになるからである。
なお、垂直孔(ガイド孔)2を削孔するための「8m」という数値は、土層やその他の条件に基いて、変動し得る。
【0043】
図2では、350mm鋼管3の内側を通して、先端にビット12を取り付けた直径200mmの鋼管(200mm鋼管)11により、トンネル5のシールドセグメント天井部分51を目指して、垂直削孔を行う状態が示されている。
図2で示す工程においては、シールドセグメント天井部分51に向けて、200mm鋼管11により正確に垂直掘削されているか否かを確認するため、図示しないローラー型傾斜計で傾斜測定を行い、垂直孔Hの曲がりを確認して、必要に応じて、修正が行われる。
修正を行う場合を考慮して、この段階では、ガイド管(350mm鋼管)3は固定されていない。
【0044】
ここで、ローラー型傾斜計は、1mピッチで削孔方向の変位を計測、確認することが可能である。ローラー型傾斜計の様な装置を用いて測定を行いつつ、垂直削孔を行うことにより、シールドセグメント天井部分51に向けて、削孔方向を修正しながら、200mm鋼管11によって削孔することが出来るのである。
【0045】
200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51まで垂直孔Hを削孔したならば、図3において、350mm鋼管(ガイド管)3を固定し、シールドセグメント5であるスキンプレート50に対して、200mm鋼管11側からポンチングを行う。
350mm鋼管(ガイド管)3の固定は、例えば、350mm鋼管3と垂直孔2との間の隙間に、モルタルを充填することにより行う。
【0046】
図3の工程において、ポンチングを行う状態が図4で示されている。
図4において、200mm鋼管11の内側に、ポンチング用ロッド21を降下させ、シールドセグメント天井部分51のスキンプレート(厚さ6mm〜8mm)50を、半径方向内側へ凹ませることにより、ポンチングが行われる。スキンプレート50が半径方向内側へ凹んだか否かについては、シールド内から確認すれば良い。
図4で示すポンチングロッド21は、先端にポンチング用の突起21aを有しており、先端近傍の部分に案内部材22を備えている。案内部材22は、ポンチング用突起21aを、200mm鋼管11の半径方向中心に位置せしめている。ポンチングロッド21が傾斜して、200mm鋼管11の内側で詰まってしまうことを防止するためである。
【0047】
図3、図4では図示されていないが、ポンチングを行った後に、スキンプレート50が凹んだ個所Pt(図4参照)を中心に、止水ボックス(例えば、特許文献1で示す止水ボックス)を取り付けても良い。
ここで、図示の実施形態では、シールドセグメント貫入用の200mm鋼管11の径が、従来技術よりも小さくなっているので、それに対応して、止水ボックスも小型化することが出来る。
【0048】
なお、図示の実施形態において、シールドセグメント5として、厚さ寸法(半径方向寸法)が大きなコンクリートセグメントを用いれば、コンクリートセグメントの厚さ寸法によって、止水に必要な距離(いわゆる「止水パス」)が得られるので、止水ボックスを設置する必要は無い。
【0049】
図3、図4で示す工程でポンチングを行った後に、図5で示す工程において、掘削機6により、200mm鋼管11を地上側へ引き出す。
そして、図5では明確に示していないが、200mm鋼管11が引き出された垂直孔H内に、地上側までベントナイトを充填する。垂直孔の崩落防止のためである。
ベントナイト充填の間に、200mm鋼管11の先端のビット12を、いわゆる「外チップ」のビットから、いわゆる「内チップ」のビットに交換する。
なお、図5における符号18は、シールドセグメント5の天井部分51の内側頂点に設けた止水ボックスを示している。
【0050】
ここで、「外チップ」のビットとは、図25において点線で示すチップ17の様に、鋼管の半径方向外側に突出したチップを有するビットである。そして、「内チップ」のビットとは、鋼管の半径方向外側に突出したチップを有さないビットである。
【0051】
次に、図6で示す工程では、ベントナイトが充填された垂直孔H内に、セメントミルクのジェットを噴射する様に構成されたロッド80を挿入して、シールドセグメント天井51から1.0mの範囲に対して、セメントミルクジェットを噴射する。
図6における符号9は、固化材であるセメントミルクが固まった領域を示している。
セメントミルクジェットを噴射する態様について、図7をも参照して説明する。
【0052】
図7において、例えば直径90mmのセメントミルク噴射用ロッド80が、ベントナイトが充填された垂直孔H内を、シールドセグメント天井部分51近傍まで挿入されている。
セメントミルク噴射用ロッド80は、先端において、斜め下方向に向うノズルNを備えており、ノズルNからセメントミルク9のジェット9Jが、図7の斜め下方向へ噴出される様に構成されている。
そして、セメントミルク9を斜め下方へ噴射すると同時に、セメントミルク噴射用ロッド80を回転させつつ、シールドセグメント天井51から1.0m上方まで引き上げる。
【0053】
図7において、セメントミルクジェット9Jを斜め下方向へ噴射しているのは、セメントミルクにより固化される領域が半径方向外方に拡がる様にせしめ、且つ、セグメントの天井部分51に確実に接触する様にするためである。
【0054】
図12〜図27で説明した従来技術においては、図17で示す工程では、セグメントシールド天井部分51と350mm鋼管7の先端との間の隙間にセメントミルク9を注入しているが、セメントミルク9の注入領域を半径方向外側に拡張することはしていない。
これに対して、図7で示すセメントミルクの噴射工程では、図7中、斜め下方向へセメントミルクのジェット9Jを噴射することにより、セメントミルク9で固化される領域を、200mm鋼管11の半径方向外方にまで拡大している。
セメントミルクで固化される領域が、200mm鋼管11の半径方向外方にまで拡大することにより、地下水を止水する領域の厚さ寸法(いわゆる「止水パス」)が増加し、止水能力が十分に発揮できる。
【0055】
図7で示す様に、セメントミルクジェット9Jを噴射する工程において、その噴射量は、セメントミルク9を噴射して行う工法等における使用量に比較して、遥かに抑制されている。
図7で示す工程で、セメントミルクの噴射量は、セメントミルク9で固化する予定の領域の土壌を切削して混合するのに、必要最低限の量に設定されている。
そのため、図7の工程において、セメントミルク9を噴射して、固化予定領域の土壌を切削し混合する際に、スラリーの発生量は極めて少なく、実質的には、殆ど生じない。そのため、セメントミルク9を噴射する際に、垂直孔Hに充填されているベントナイトが、スラリーにより押し出されて、地上に溢れ出てしまう恐れもない。
【0056】
図6及び図7で示すセメントミルクの噴射(図7の符号9J)が完了したならば、図8で示す様に、200mm鋼管11(200mmケーシング)を、セメントミルクジェットで切削、混合した領域E9の直上まで建て込む。
図5の工程で充填されたベントナイトにより、垂直孔Hの崩落が防止されているが、崩落防止をより確実ならしめるために、200mm鋼管11を建て込むのである。
【0057】
図8で示す工程から、セメントミルクで切削・混合された領域E9が強度を発現するまでの時間(例えば、24時間)だけ経過したならば、図9で示す工程を実行する。
ここで、「強度の発現するまでの時間」とは、セメントミルクで切削・混合された領域E9が止水に耐え得る強度を得るまでの時間を意味している。
【0058】
図9で示す工程では、セメントミルクで切削・混合された領域E9を、200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51から300mm上の領域まで削孔する。
ここで、図6及び図7で示すセメントミルクの噴射9Jが完了してから、200mm鋼管11により削孔するまでの時間が長過ぎると、セメントミルクで切削・改良された領域E9が硬くなり過ぎて、削孔が困難になってしまう。
一方、セメントミルクの噴射完了から削孔までの時間が短過ぎると、止水性が確保できない。
【0059】
セメントミルクで切削・混合された領域E9を、200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51の上方300mmまで削孔したならば(図9の工程を終了したならば)、図10で示す工程で、垂直孔H内に充填されたベントナイト泥水その他を、吸引機構(例えば、バキューム車30)で吸引して、垂直孔H内から除去する。
【0060】
図示で明示していないが、ベントナイト泥水その他を垂直孔H内から除去した後、200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51から300mmの領域(セメントミルクで切削・混合された領域)を削孔し、シールドセグメント天井部分51を貫通する。
シールドセグメント天井部分51を貫通したとしても、図6及び図7を参照して説明したように、貫通部分の周辺はセメントミルク9で固化されているので、シールドセグメント5内に地下水が流入してしまうことはない。
【0061】
200mm鋼管11でシールドセグメント天井部分51を貫通したならば、図11で示す様に、シールドセグメント5内部に進入した200mm鋼管11の先端を、シールドセグメント天井部分51のトンネル内側に設けた止水ボックス18に溶接固定する。
すなわち、200mm鋼管11をシールドセグメント5の止水ボックス18に溶接・固定して、それ以上、シールドセグメント5内へ移動(下降)しない様にしている。それにより、止水をより一層、確実にする。
【0062】
以上により、図示の実施形態におけるシールドの線形確認のためのチェック作業(いわゆる「チェックボーリング」)が完了する。
【0063】
図示の実施形態は、深度が20m以上で適用される。ただし、シールドセグメント5内に絶対に地下水を進入させることが出来ない条件では、深度20m未満でも、図示の実施形態によるシールドの線形確認作業を適用可能である。
【0064】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態における各種鋼管の外径及び内径や、各種深度或いは各種領域の垂直方向の寸法等も例示であって、図示の実施形態で表示された数値に限定されるものではない。換言すれば、各種鋼管の外径及び内径や、各種深度或いは各種領域の垂直方向の寸法等については、図示の実施形態で示す数値以外の数値を採用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態におけるガイド管設置工程図。
【図2】実施形態における垂直孔の削孔及び傾斜測定工程図。
【図3】実施形態における貫通孔確認工程図。
【図4】図3のA部拡大図。
【図5】実施形態における鋼管引き抜き工程図。
【図6】実施形態における固化材注入工程図。
【図7】図6のA部拡大図。
【図8】実施形態における200mmケーシング建て込み工程図。
【図9】実施形態における固化材部分削孔工程図。
【図10】実施形態における孔内排水工程図。
【図11】実施形態においてセグメントを貫通した状態を示す図。
【図12】従来技術におけるガイド孔削孔工程図。
【図13】従来技術におけるガイド管建て込み工程図。
【図14】図13の工程を詳細に説明する説明図。
【図15】従来技術における垂直孔削孔工程図。
【図16】従来技術における外管建て込み工程図。
【図17】従来技術における固化材注入工程図。
【図18】従来技術における外管再建て込み工程図。
【図19】図18におけるA部拡大図。
【図20】従来技術における固化材部分削孔工程図。
【図21】図20のA部拡大図。
【図22】従来技術における孔内排水工程図。
【図23】従来技術における内管建て込み工程図。
【図24】従来技術におけるセグメント直上の無水削孔工程図。
【図25】従来技術におけるセグメント貫通加工工程図。
【図26】従来技術における内管固定工程図。
【図27】従来技術におけるガイド管引き抜き工程図。
【符号の説明】
【0066】
2・・・垂直孔/ガイド孔
3・・・ガイド管
5・・・シールドセグメント/トンネル
6・・・掘削機
7・・・直径350mmの鋼管
8・・・セメントミルク注入桿
9・・・セメントミルク
10・・・クレーン
11・・・直径300mmの鋼管
12・・・直径300mmのビット
13・・・排水ホース
14・・・排水ポンプ
16・・・直径300mmの別のビット
17・・・チップ
18・・・止水ボックス
H・・・垂直孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に横方向に掘削されたトンネルと、垂直方向に掘削された縦孔との交差点を止水する技術、例えば、シールドの線形確認のためのチェック作業(いわゆる「チェックボーリング」)等で好適に用いられる止水技術に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水の発生する地盤において、トンネルを掘削する技術として、シールド工法が知られている。
シールド工法を用いてトンネルを掘削している際には、トンネルが予定通り(計画線の通り)に掘削されているか否かをチェックする(線形確認を行う)必要がある。
【0003】
その様なチェックのために、シールドマシン内部で進行距離及び方向を計測して、予定通り(計画線の通り)に掘削されているかをチェックしている。それに加えて、例えば2km毎に、地上側からシールドマシンによる掘削個所まで垂直掘削して、線形確認を行っている。
【0004】
従来技術において、地上側からシールドマシンによる掘削個所まで垂直掘削して線形確認を行う態様について、図12〜図27を参照して、説明する。
先ず、図12で示す様に、例えば、直径500mmのビット1(500mmビット)により、地表GLから垂直下方に、掘削機6によってガイド孔2を掘削する。
そして、図13で示す様に、例えば直径が500mm、長さが5.0mの鋼管を、ガイド管3として、例えば、クレーン10によってガイド孔2に建て込む。ここで、ガイド管(直径500mmの鋼管)3の長さを5.0mとしたのは、地下水の流出による地表面GLの陥没を防止するために十分な長さだからである。
【0005】
次に、図14で示す様に、図13で建て込んだガイド管3の内側に、直径が450mmのビット4(450mmのビット)を通し、垂直孔を削孔する。
図15で示す様に、450mmのビット4による垂直削孔は、シールド5の天井部分のセグメント51近傍まで行われる。
図15において、符号Hは、450mmのビット4により掘削された垂直孔を示す。
この段階で、450mmのビット4がシールド(シールドセグメント)5の天井部分を貫通してしまうと、シールド5内に大量の地下水が流入し、地表GL側が陥没する恐れがあるので、450mmのビットによる垂直削孔は、シールド5の天井部分のセグメント51近傍までに止めている。
【0006】
図16で示す様に、450mmのビット4により削孔された垂直孔Hに、直径350mmの鋼管(350mm鋼管)7をクレーン10によって建て込む。
ここで、350mm鋼管7は、シールド5の天井部分のセグメント51から、例えば2m上方まで建て込まれる。
図16における350mm鋼管7の建て込み作業は、「目視」により「建ち」を確認して行われる。
【0007】
350mm鋼管7がシールド5の天井部分のセグメント51から2m上方まで建て込まれたならば(図16で示す工程が完了したならば)、図17で示す様に、350mm鋼管7が建て込まれた垂直孔H内に、セメントミルク注入管8を、例えばクレーン10を用いて挿入する。そして、350mm鋼管7の先端からシールド5の天井部分51に至る領域に、注入管8の先端81からセメントミルク9を注入する。すなわち、シールド5の天井部分のセグメント51から2m上方までの領域に、セメントミルク9を注入する。
【0008】
図17の工程でセメントミルク9を注入した後、350mm鋼管7を、シールド5の天井部分のセグメント51に当接するまで建て込む(図18の工程)。
図18の工程において、350mm鋼管7をシールド5の天井部分のセグメント51に当接させた段階では、350mm鋼管7とセグメント天井部分51との間には、図19で示す様な隙間δが存在している。
【0009】
図20の工程では、350mm鋼管7の内側に、先端にビット12を取り付けた直径が300mmの鋼管11を通す。ここで、ビット12の直径は、300mmである。そして、ビット12でセメントミルク9が注入された領域を削孔する。
直径が300mmのビット12によるセメントミルク9の削孔は、シールドの天井部分51の上方300mmまで行われる。
図21は、図20の工程で、シールドの天井部分51の上方300mmまでセメントミルク9が削孔された状態を、詳細に示している。
350mm鋼管7の内側にビット12を通してセメントミルク9の部分を掘削しているのは、セメントミルク9が注入された部分よりも上方の領域に存在する地下水が、高い水圧を伴って、シールドセグメント(シールド)5内に流入することを防止するためである。
【0010】
また、ビット12によるセメントミルク9の削孔が、シールドの天井部分の上方300mmの部分を残して行われるのは、当該300mmだけ残ったセメントミルク9により、隙間δ(図19参照:350mm鋼管7とセグメント天井部分51との間の隙間)から、地下水が、シールドセグメント5内に浸入するのを防止するためである。
【0011】
図20で示す工程において、直径が300mmのビット12によるセメントミルクの削孔が終了したならば、直径300mmのビット12を取り付けた直径300mmの鋼管12を、地上側GLへ引き上げる(図示を省略)。
そして、図22で示す様に、排水ホース13の先端に取り付けた排水ポンプ14を、クレーン10により350mm鋼管7内に挿入し、350mm鋼管7内の水を排水する。
【0012】
図22において、350mm鋼管7内には、正確には、水と、セメントミルク9の掘削ズリとが溜まっている。この状態で、シールドの天井部分51を貫通すると、350mm鋼管7内に溜まった水及びズリがシールドセグメント5内に流入してしまう。
そのため、排水ポンプ14を挿入して、水及び掘削ズリを、350mm鋼管7内から排出するのである。
係る排水作業により、350mm鋼管7内において、セメントミルク9が充填されている個所(シールドの天井部分から300mm上方)よりも地上側GLの領域は、空洞となる。
【0013】
次に、図23で示す様に、直径300mmの鋼管(300mm鋼管)11を、クレーン10によって、セメントミルク9で固化されている個所(シールドの天井部分51から300mm上方)まで建て込む。300mm鋼管11の建て込み作業は、「目視」により「建ち」を確認して行われる。
ここで、300mm鋼管11の先端には、直径300mmのビット16が取り付けられている。このビット16は、図20で示すビット12とは別種類のビットであり、図20の工程と図24の工程との間において、300mm鋼管11の先端で付け替えられている(ビット12からビット16に交換されている)。
【0014】
図24で示す工程では、直径が300mmのビット16により、セメントミルク9を無水削孔する(垂直方向に300mm、無水削孔を行う)。
換言すれば、地上側からシールドの天井部分51の300mm上方までの領域のセメントミルク9を削孔するには(図20の工程では)、切削水を用いている。それに対して、図24において、シールドの天井部分51から300mmの部分を削孔するには、切削水を用いずに行う(無水削孔を行う)のである。
【0015】
図20の工程で用いられるビット(切削水を用いる場合のビット)12と、図24の無水削孔で用いられるビット16との相違について、図25を参照して、さらに説明する。
図24の工程(無水削孔)で使用されるビット16には、図25において点線で示すチップ17(300mm鋼管11の半径方向外側に突出したチップ)が存在しない。
それに対して、図20の工程(切削水を用いてセメントミルクを削孔する工程)で用いられるビットには、300mm鋼管11の半径方向外側に突出したチップ17(図25において点線で示すチップ)が設けられている。
【0016】
チップ17(半径方向外側に突出したチップ)があると、ビットにより掘削される範囲は、300mm鋼管11よりも、チップ17が半径方向外側へ突出した分だけ、半径方向寸法を大きく削孔出来る。そして、削孔された領域において、300mm鋼管11の外周面よりも半径方向外側に形成された隙間を通って、切削水や切削ズリが地上側に逃げることができる。
ここで、切削水や切削ズリが地上側GLに逃げることが出来なければ、ビット周辺の圧力が昇圧し過ぎて、直ちに削孔が出来なくなってしまう。
そのため、図20の工程(切削水を用いてセメントミルク9を削孔する工程)では、300mm鋼管11の半径方向外側に突出したチップ17を設けたビット12を用いている。
【0017】
これに対して、図24の工程(無水削孔)の様に、削孔距離が300mm程度であれば、300mm鋼管11の外周面よりも半径方向外側に、切削水や切削ズリが地上側に逃げるための隙間が形成されていなくても、削孔が可能である。
直径が300mmの鋼管11の半径方向外側に突出したチップ17(23において点線で示すチップ)を有しないビットで、350mm鋼管7内のセメントミルク9を掘削したならば、図25で示す様に、350mm鋼管7の半径方向内側に、円環状のセメントミルク9aが残存する。
350mm鋼管7の半径方向内側に円環状のセメントミルク9aが残存すれば、350mm鋼管7とシールドセグメント5との隙間δが、セメントミルク9aにより閉塞され、当該隙間δからシールドセグメント5内へ地下水が浸入するのを防止することができる。
【0018】
換言すれば、後述する様に、300mm鋼管11の先端のビット16がシールドセグメント天井部分51を貫通した際に、上記隙間δを介して高圧の地下水がシールドセグメント5内に流入してしまうと、地表側が陥没する恐れがある。係る事態を防止するため、円環状のセメントミルク9aを残存させる必要がある。
【0019】
そのため、図24の工程では、半径方向外側に突出したチップ17を有しないビット16を用いて、円管状のセメントミルク9aを、350mm鋼管7の半径方向内側に形成している。
なお、図20の工程(切削水を用いてセメントミルク9を削孔する工程)では、上述した通り、半径方向外側に突出したチップ17を有するビット12で掘削するので、当該チップ17により、350mm鋼管7の半径方向内側には、セメントミルクが残存しない。すなわち、図20の工程(切削水を用いてセメントミルク9を削孔する工程)では、円管状のセメントミルク9aは残存しない。
【0020】
再び図24において、300mm鋼管11により、シールドの天井部分51から300mm上方までの領域のセメントミルク9を削孔したならば、そのまま、シールドの天井部分のセグメント51と、そのセグメント51の半径方向内側に固定された止水箱(図24では図示せず)を、300mm鋼管11先端のビット16で貫通する。
【0021】
300mm鋼管11先端のビット16により、シールドの天井部分のセグメント51及び止水箱18を貫通したならば、300mm鋼管11先端と止水箱とを溶接して、固定する(図26参照)。
【0022】
そして、図27で示す様に、ガイド管(直径500mmの鋼管)3を引き抜き、350mm鋼管7と地山との隙間(直径350mmの鋼管7の外周における円環状の隙間)を、硅砂等の充填材料19で充填する。
これにより、従来技術におけるシールドの線形確認(いわゆる「チェックボーリング」)を完了している。
【0023】
ここで、図25において、350mm鋼管7の外径が、355.6mm、厚さ寸法が6.4mmで、300mm鋼管11の外径が318.5mm、厚さ寸法が6.0mmであれば、円環状のセメントミルク9a(直径350mmの鋼管7の半径方向内方に形成されたセメントミルク9aの領域)の半径方向厚さは18.2mmとなる。
そして、円環状のセメントミルク9aの半径方向厚さ18.2mmは、350mm鋼管7と300mm鋼管11とが完全に同心に配置している場合であり、350mm鋼管7と300mm鋼管11とが偏芯していれば、円環状のセメントミルク9aの半径方向厚さは一様ではなくなり、厚さ寸法が18.2mmよりもさらに小さい部分が出来てしまう。すなわち、円環状のセメントミルク9aは、その半径方向の厚さ寸法が非常に小さい(半径方向について薄い)。
【0024】
図12〜図27で示す従来技術では、高圧の地下水の進入に対して、上述した様な非常に薄い円環状のセメントミルク9aによって、外管7とシールド天井部分51との隙間δを止水しなければならず、隙間δからの高圧地下水の進入に対しては不十分である。
そのため、図12〜図27で示す従来技術では、特に、350mm鋼管7とセグメント天井部分51とが当接する部分における止水性が問題となっている。
【0025】
また、従来技術において、直径500mmの垂直孔を掘削するのは、大変な労力及びコストが必要となる。
また、図24の工程において、シールドセグメント天井部分51に貫通孔を穿孔するに際して、地下水がシールドセグメント5内に流入するのを防止する観点から、貫通孔の径寸法は小さくしたい。
【0026】
一方、線形確認に際しては、高精度にて垂直方向へ掘削することが要求される。特に、径の小さなボーリング孔を垂直方向へ掘削することは、高い精度が要求される。
深度50m〜60mの垂直掘削を行う場合であって、小径の鋼管(例えば、直径200mmの鋼管)による掘削を行いたいという要請は従来から存在するが、上述したように高精度の垂直掘削が要求されるので、従来技術においては実現が困難であった。
【0027】
その他の従来技術として、シールドセグメントの天井部分の半径方向内側に止水ボックスを設置して、削孔用のケーシングがシールドセグメントの天井部分を貫通した際に、貫通個所から地下水がシールドセグメント内部に流入するのを防止した技術が存在する(特許文献1参照)。
【0028】
係る従来技術(特許文献1)は、地表からシールドセグメントまでの深度が小さい場合には大変に有効である。
しかし、地表からシールドセグメントまでの深度が50m以上では、地下水がシールドセグメント内に流入するのを阻止することが困難である。
【特許文献1】特開平8−93395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、地中に横方向に掘削されたトンネルと、垂直方向に掘削された縦孔との交差点を確実に止水することができる止水工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の止水工法は、地中に横方向に掘削されたトンネル(5)と、垂直孔(H)との交差領域を止水する止水工法において、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程(図3及び図4参照)と、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する工程(図6参照)とを有することを特徴としている(請求項1)。
【0031】
本発明の止水工法において、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する前記工程(図6参照)は、トンネル直上(51)まで垂直孔(H)を削孔する工程(図2参照)と、固化材噴射機構(セメントミルク噴射用ロッド80)を垂直孔(H)へ挿入する挿入工程(図6、図7参照)と、固化材噴射機構(80)から固化材(例えば、セメントミルク9)を噴射して垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域の土壌と固化材(9)とを混合する噴射工程(図7参照)とを含み、噴射工程では、固化材(9)を斜め下方へ噴射しつつ固化材噴射機構(80)を回転して、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域よりも半径方向外方の範囲まで固化材により切削して原位置土壌と混合するのが好ましい(請求項2)。
【0032】
また、本発明において、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、(例えばローラー型傾斜計により)傾斜を計測する工程と、計測された傾斜に対応して垂直孔(H)の掘削方向を修正する工程とを含んでいるのが好ましい(請求項3:図2参照)。
【0033】
そして、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、トンネル直上まで垂直孔(H)を削孔する工程(図2参照)と、垂直孔(H)を介してトンネル天井部分(51)に印をつける(ポンチングを行う)工程(及びその印を確認する工程)とを有するのが好ましい(請求項4:図3、図4参照)
【0034】
前記トンネル(5)はシールドセグメントで構成されており、シールドセグメントは薄い板状部材(スキンプレート50)で構成されており、前記垂直孔(H)に挿入された管状部材(例えば、鋼管11)がシールドセグメント天井部分(51)を貫通する工程を有しており、シールドセグメント天井部分(51)が貫通される箇所の内側に止水ボックス(18)を設置することが可能である(請求項5)。
【0035】
前記トンネル(5)はシールドセグメントで構成されており、前記垂直孔(H)に挿入された管状部材(例えば、鋼管11)がシールドセグメント天井部分(51)を貫通する工程を有しており、シールドセグメントは薄い板状部材(スキンプレート50)で構成されているのが好ましい。
或いは、前記トンネル(5)はシールドセグメントで構成されており、前記垂直孔(H)に挿入された管状部材(例えば、鋼管11)がシールドセグメント天井部分(51)を貫通する工程を有しており、シールドセグメントはコンクリートセグメントであるのが好ましい。
【0036】
本発明の止水工法は、いわゆる「チェックボーリング」に対して限定して適用されるものではない。例えば、いわゆる「本設管」における止水にも適用可能である。
【発明の効果】
【0037】
上述する構成を具備する本発明によれば、垂直孔(H)とトンネル(5)との交差領域周辺を固化する様に構成されているので、固化された交差領域(9E)の止水作用により、トンネル(5)内に地下水が流入することが防止される。
例えば、横方向に掘削されたトンネル(5)がシールド工法により施工されており、垂直孔(H)が線形確認のため(いわゆる「チェックボーリング」のため)に削孔される場合に、垂直孔(H)に挿入された鋼管(11)の先端のビット(16)がシールドセグメントの天井部分(51)を貫通した際にも、当該貫通箇所(垂直孔とトンネルとの交差領域)の周辺が固化されて、止水効果を発揮するので、地下水がシールドセグメント(トンネル5)内に流入してしまうことが防止され、地表が陥没してしまうことはない。
【0038】
また本発明では、垂直孔(H)がトンネル(5)との交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程を有しているので、比較的小径のロッド(例えばφ200mmの鋼管11)を用いて、高精度で、大深度(例えば、深度50m〜60m)の垂直掘削を行うことが可能である。
【0039】
本発明において、シールドセグメント天井部分(51)が貫通される箇所の内側に止水ボックス(18)を設置すれば(請求項5)、止水性がさらに向上して、シールドセグメント(5)内に地下水が流入する事態がさらに防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図1〜図11を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態は、本発明をシールド工法における線形確認(いわゆる「チェックボーリング」)に適用した場合に係るものである。
【0041】
図1で示す工程では、掘削機6によって、ボーリングロッド(或はビット)Rを用いて地表GL側から直径350mmの垂直孔(ガイド孔)2を削孔する。そして、垂直孔2に直径350mmの鋼管(ガイド管:350mm)3を埋設する。
ここで、図1で使用される350mm鋼管(ガイド管)3は、従来技術における図12、図13の工程における直径500mmの鋼管に相当する。
図1において、350mm鋼管(ガイド管)3埋設用の垂直孔(ガイド孔)2は、例えば、地表から8m削孔される。そして、350mm鋼管3は地表から7.5mまで建て込まれる。
【0042】
350mm鋼管3を建て込むことにより、地表GLの陥没が防止される。それと共に、既存の地中埋設管等と、図示の実施形態を施工する際に垂直掘削される縦孔とが干渉してしまうことを確実に防止することが出来る。係る干渉を防止するためには、安全率を見込んで、比較的径の大きな鋼管を建て込むのが好適であり、350mm鋼管3を建て込むことにより、係る安全率を見込むことになるからである。
なお、垂直孔(ガイド孔)2を削孔するための「8m」という数値は、土層やその他の条件に基いて、変動し得る。
【0043】
図2では、350mm鋼管3の内側を通して、先端にビット12を取り付けた直径200mmの鋼管(200mm鋼管)11により、トンネル5のシールドセグメント天井部分51を目指して、垂直削孔を行う状態が示されている。
図2で示す工程においては、シールドセグメント天井部分51に向けて、200mm鋼管11により正確に垂直掘削されているか否かを確認するため、図示しないローラー型傾斜計で傾斜測定を行い、垂直孔Hの曲がりを確認して、必要に応じて、修正が行われる。
修正を行う場合を考慮して、この段階では、ガイド管(350mm鋼管)3は固定されていない。
【0044】
ここで、ローラー型傾斜計は、1mピッチで削孔方向の変位を計測、確認することが可能である。ローラー型傾斜計の様な装置を用いて測定を行いつつ、垂直削孔を行うことにより、シールドセグメント天井部分51に向けて、削孔方向を修正しながら、200mm鋼管11によって削孔することが出来るのである。
【0045】
200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51まで垂直孔Hを削孔したならば、図3において、350mm鋼管(ガイド管)3を固定し、シールドセグメント5であるスキンプレート50に対して、200mm鋼管11側からポンチングを行う。
350mm鋼管(ガイド管)3の固定は、例えば、350mm鋼管3と垂直孔2との間の隙間に、モルタルを充填することにより行う。
【0046】
図3の工程において、ポンチングを行う状態が図4で示されている。
図4において、200mm鋼管11の内側に、ポンチング用ロッド21を降下させ、シールドセグメント天井部分51のスキンプレート(厚さ6mm〜8mm)50を、半径方向内側へ凹ませることにより、ポンチングが行われる。スキンプレート50が半径方向内側へ凹んだか否かについては、シールド内から確認すれば良い。
図4で示すポンチングロッド21は、先端にポンチング用の突起21aを有しており、先端近傍の部分に案内部材22を備えている。案内部材22は、ポンチング用突起21aを、200mm鋼管11の半径方向中心に位置せしめている。ポンチングロッド21が傾斜して、200mm鋼管11の内側で詰まってしまうことを防止するためである。
【0047】
図3、図4では図示されていないが、ポンチングを行った後に、スキンプレート50が凹んだ個所Pt(図4参照)を中心に、止水ボックス(例えば、特許文献1で示す止水ボックス)を取り付けても良い。
ここで、図示の実施形態では、シールドセグメント貫入用の200mm鋼管11の径が、従来技術よりも小さくなっているので、それに対応して、止水ボックスも小型化することが出来る。
【0048】
なお、図示の実施形態において、シールドセグメント5として、厚さ寸法(半径方向寸法)が大きなコンクリートセグメントを用いれば、コンクリートセグメントの厚さ寸法によって、止水に必要な距離(いわゆる「止水パス」)が得られるので、止水ボックスを設置する必要は無い。
【0049】
図3、図4で示す工程でポンチングを行った後に、図5で示す工程において、掘削機6により、200mm鋼管11を地上側へ引き出す。
そして、図5では明確に示していないが、200mm鋼管11が引き出された垂直孔H内に、地上側までベントナイトを充填する。垂直孔の崩落防止のためである。
ベントナイト充填の間に、200mm鋼管11の先端のビット12を、いわゆる「外チップ」のビットから、いわゆる「内チップ」のビットに交換する。
なお、図5における符号18は、シールドセグメント5の天井部分51の内側頂点に設けた止水ボックスを示している。
【0050】
ここで、「外チップ」のビットとは、図25において点線で示すチップ17の様に、鋼管の半径方向外側に突出したチップを有するビットである。そして、「内チップ」のビットとは、鋼管の半径方向外側に突出したチップを有さないビットである。
【0051】
次に、図6で示す工程では、ベントナイトが充填された垂直孔H内に、セメントミルクのジェットを噴射する様に構成されたロッド80を挿入して、シールドセグメント天井51から1.0mの範囲に対して、セメントミルクジェットを噴射する。
図6における符号9は、固化材であるセメントミルクが固まった領域を示している。
セメントミルクジェットを噴射する態様について、図7をも参照して説明する。
【0052】
図7において、例えば直径90mmのセメントミルク噴射用ロッド80が、ベントナイトが充填された垂直孔H内を、シールドセグメント天井部分51近傍まで挿入されている。
セメントミルク噴射用ロッド80は、先端において、斜め下方向に向うノズルNを備えており、ノズルNからセメントミルク9のジェット9Jが、図7の斜め下方向へ噴出される様に構成されている。
そして、セメントミルク9を斜め下方へ噴射すると同時に、セメントミルク噴射用ロッド80を回転させつつ、シールドセグメント天井51から1.0m上方まで引き上げる。
【0053】
図7において、セメントミルクジェット9Jを斜め下方向へ噴射しているのは、セメントミルクにより固化される領域が半径方向外方に拡がる様にせしめ、且つ、セグメントの天井部分51に確実に接触する様にするためである。
【0054】
図12〜図27で説明した従来技術においては、図17で示す工程では、セグメントシールド天井部分51と350mm鋼管7の先端との間の隙間にセメントミルク9を注入しているが、セメントミルク9の注入領域を半径方向外側に拡張することはしていない。
これに対して、図7で示すセメントミルクの噴射工程では、図7中、斜め下方向へセメントミルクのジェット9Jを噴射することにより、セメントミルク9で固化される領域を、200mm鋼管11の半径方向外方にまで拡大している。
セメントミルクで固化される領域が、200mm鋼管11の半径方向外方にまで拡大することにより、地下水を止水する領域の厚さ寸法(いわゆる「止水パス」)が増加し、止水能力が十分に発揮できる。
【0055】
図7で示す様に、セメントミルクジェット9Jを噴射する工程において、その噴射量は、セメントミルク9を噴射して行う工法等における使用量に比較して、遥かに抑制されている。
図7で示す工程で、セメントミルクの噴射量は、セメントミルク9で固化する予定の領域の土壌を切削して混合するのに、必要最低限の量に設定されている。
そのため、図7の工程において、セメントミルク9を噴射して、固化予定領域の土壌を切削し混合する際に、スラリーの発生量は極めて少なく、実質的には、殆ど生じない。そのため、セメントミルク9を噴射する際に、垂直孔Hに充填されているベントナイトが、スラリーにより押し出されて、地上に溢れ出てしまう恐れもない。
【0056】
図6及び図7で示すセメントミルクの噴射(図7の符号9J)が完了したならば、図8で示す様に、200mm鋼管11(200mmケーシング)を、セメントミルクジェットで切削、混合した領域E9の直上まで建て込む。
図5の工程で充填されたベントナイトにより、垂直孔Hの崩落が防止されているが、崩落防止をより確実ならしめるために、200mm鋼管11を建て込むのである。
【0057】
図8で示す工程から、セメントミルクで切削・混合された領域E9が強度を発現するまでの時間(例えば、24時間)だけ経過したならば、図9で示す工程を実行する。
ここで、「強度の発現するまでの時間」とは、セメントミルクで切削・混合された領域E9が止水に耐え得る強度を得るまでの時間を意味している。
【0058】
図9で示す工程では、セメントミルクで切削・混合された領域E9を、200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51から300mm上の領域まで削孔する。
ここで、図6及び図7で示すセメントミルクの噴射9Jが完了してから、200mm鋼管11により削孔するまでの時間が長過ぎると、セメントミルクで切削・改良された領域E9が硬くなり過ぎて、削孔が困難になってしまう。
一方、セメントミルクの噴射完了から削孔までの時間が短過ぎると、止水性が確保できない。
【0059】
セメントミルクで切削・混合された領域E9を、200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51の上方300mmまで削孔したならば(図9の工程を終了したならば)、図10で示す工程で、垂直孔H内に充填されたベントナイト泥水その他を、吸引機構(例えば、バキューム車30)で吸引して、垂直孔H内から除去する。
【0060】
図示で明示していないが、ベントナイト泥水その他を垂直孔H内から除去した後、200mm鋼管11により、シールドセグメント天井部分51から300mmの領域(セメントミルクで切削・混合された領域)を削孔し、シールドセグメント天井部分51を貫通する。
シールドセグメント天井部分51を貫通したとしても、図6及び図7を参照して説明したように、貫通部分の周辺はセメントミルク9で固化されているので、シールドセグメント5内に地下水が流入してしまうことはない。
【0061】
200mm鋼管11でシールドセグメント天井部分51を貫通したならば、図11で示す様に、シールドセグメント5内部に進入した200mm鋼管11の先端を、シールドセグメント天井部分51のトンネル内側に設けた止水ボックス18に溶接固定する。
すなわち、200mm鋼管11をシールドセグメント5の止水ボックス18に溶接・固定して、それ以上、シールドセグメント5内へ移動(下降)しない様にしている。それにより、止水をより一層、確実にする。
【0062】
以上により、図示の実施形態におけるシールドの線形確認のためのチェック作業(いわゆる「チェックボーリング」)が完了する。
【0063】
図示の実施形態は、深度が20m以上で適用される。ただし、シールドセグメント5内に絶対に地下水を進入させることが出来ない条件では、深度20m未満でも、図示の実施形態によるシールドの線形確認作業を適用可能である。
【0064】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態における各種鋼管の外径及び内径や、各種深度或いは各種領域の垂直方向の寸法等も例示であって、図示の実施形態で表示された数値に限定されるものではない。換言すれば、各種鋼管の外径及び内径や、各種深度或いは各種領域の垂直方向の寸法等については、図示の実施形態で示す数値以外の数値を採用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施形態におけるガイド管設置工程図。
【図2】実施形態における垂直孔の削孔及び傾斜測定工程図。
【図3】実施形態における貫通孔確認工程図。
【図4】図3のA部拡大図。
【図5】実施形態における鋼管引き抜き工程図。
【図6】実施形態における固化材注入工程図。
【図7】図6のA部拡大図。
【図8】実施形態における200mmケーシング建て込み工程図。
【図9】実施形態における固化材部分削孔工程図。
【図10】実施形態における孔内排水工程図。
【図11】実施形態においてセグメントを貫通した状態を示す図。
【図12】従来技術におけるガイド孔削孔工程図。
【図13】従来技術におけるガイド管建て込み工程図。
【図14】図13の工程を詳細に説明する説明図。
【図15】従来技術における垂直孔削孔工程図。
【図16】従来技術における外管建て込み工程図。
【図17】従来技術における固化材注入工程図。
【図18】従来技術における外管再建て込み工程図。
【図19】図18におけるA部拡大図。
【図20】従来技術における固化材部分削孔工程図。
【図21】図20のA部拡大図。
【図22】従来技術における孔内排水工程図。
【図23】従来技術における内管建て込み工程図。
【図24】従来技術におけるセグメント直上の無水削孔工程図。
【図25】従来技術におけるセグメント貫通加工工程図。
【図26】従来技術における内管固定工程図。
【図27】従来技術におけるガイド管引き抜き工程図。
【符号の説明】
【0066】
2・・・垂直孔/ガイド孔
3・・・ガイド管
5・・・シールドセグメント/トンネル
6・・・掘削機
7・・・直径350mmの鋼管
8・・・セメントミルク注入桿
9・・・セメントミルク
10・・・クレーン
11・・・直径300mmの鋼管
12・・・直径300mmのビット
13・・・排水ホース
14・・・排水ポンプ
16・・・直径300mmの別のビット
17・・・チップ
18・・・止水ボックス
H・・・垂直孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に横方向に掘削されたトンネルと、垂直孔との交差領域を止水する止水工法において、垂直孔がトンネルとの交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程と、垂直孔とトンネルとの交差領域周辺を固化する工程とを有することを特徴とする止水工法。
【請求項2】
垂直孔とトンネルとの交差領域周辺を固化する前記工程は、トンネル直上まで垂直孔を削孔する工程と、固化材噴射機構を垂直孔へ挿入する挿入工程と、固化材噴射機構から固化材を噴射して垂直孔とトンネルとの交差領域の土壌と固化材とを混合する噴射工程とを含み、噴射工程では、固化材を斜め下方へ噴射しつつ固化材噴射機構を回転して、垂直孔とトンネルとの交差領域よりも半径方向外方の範囲まで固化材により切削して原位置土壌と混合する請求項1の止水工法。
【請求項3】
垂直孔がトンネルとの交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、傾斜を計測する工程と、計測された傾斜に対応して垂直孔の掘削方向を修正する工程とを含んでいる請求項1、請求項2の何れかの止水工法。
【請求項4】
垂直孔がトンネルとの交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、トンネル直上まで垂直孔を削孔する工程と、垂直孔を介してトンネル天井部分に印をつける工程とを有する請求項1〜請求項3の何れか1項の止水工法。
【請求項5】
前記トンネルはシールドセグメントで構成されており、シールドセグメントは薄い板状部材で構成されており、前記垂直孔に挿入された管状部材がシールドセグメント天井部分を貫通する工程を有しており、シールドセグメント天井部分が貫通される箇所の内側に止水ボックスを設置する請求項1〜請求項4の何れか1項の止水工法。
【請求項1】
地中に横方向に掘削されたトンネルと、垂直孔との交差領域を止水する止水工法において、垂直孔がトンネルとの交差点に向かって削孔されているか否かを確認する工程と、垂直孔とトンネルとの交差領域周辺を固化する工程とを有することを特徴とする止水工法。
【請求項2】
垂直孔とトンネルとの交差領域周辺を固化する前記工程は、トンネル直上まで垂直孔を削孔する工程と、固化材噴射機構を垂直孔へ挿入する挿入工程と、固化材噴射機構から固化材を噴射して垂直孔とトンネルとの交差領域の土壌と固化材とを混合する噴射工程とを含み、噴射工程では、固化材を斜め下方へ噴射しつつ固化材噴射機構を回転して、垂直孔とトンネルとの交差領域よりも半径方向外方の範囲まで固化材により切削して原位置土壌と混合する請求項1の止水工法。
【請求項3】
垂直孔がトンネルとの交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、傾斜を計測する工程と、計測された傾斜に対応して垂直孔の掘削方向を修正する工程とを含んでいる請求項1、請求項2の何れかの止水工法。
【請求項4】
垂直孔がトンネルとの交差点に向かって削孔されているか否かを確認する前記工程は、トンネル直上まで垂直孔を削孔する工程と、垂直孔を介してトンネル天井部分に印をつける工程とを有する請求項1〜請求項3の何れか1項の止水工法。
【請求項5】
前記トンネルはシールドセグメントで構成されており、シールドセグメントは薄い板状部材で構成されており、前記垂直孔に挿入された管状部材がシールドセグメント天井部分を貫通する工程を有しており、シールドセグメント天井部分が貫通される箇所の内側に止水ボックスを設置する請求項1〜請求項4の何れか1項の止水工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2008−291458(P2008−291458A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136256(P2007−136256)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】
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