説明

止血を妨害するノサシバエ唾液由来タンパク質

ウシの吸血性外寄生を予防するための組成物および方法が提供される。本発明は、血小板凝集を妨害する単離されたタンパク質に関する。このタンパク質をコードするヌクレオチド配列もまた、提供される。例示的なヘマトロジェンタンパク質が、Haematobia irritansの唾液腺から単離された。この組成物は、ノサシバエの寄生によるウシにおける吸血を防止する獣医学的ワクチンとして有用であり、血栓症の予防において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

(米国連邦に支援された研究または開発)
本発明の基礎となる研究は、USDA助成金番号USDA−96−35302−3381からの資金により一部支援された。合衆国政府は、本発明の事項に権利を有し得る。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、子ウシを吸血性の外寄生物から防止するための獣医用ワクチンと、血栓症の医学的処置に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アメリカにおける家畜の生産量の外寄生生物による損失は、毎年22.6億ドルを超えると見積もられる(非特許文献1:Byford et al.(1992)J.Anim.Sci.70:597−602)。影響を与える5〜6種の主要な節足動物の有害な種のうち、ノサシバエであるHaematobia irritans Linnaeusによる損失が、最も深刻で広範囲に及ぶ。アメリカにおけるウシの生産量に対するサシバエの毎年の経済的な影響は、7.303億ドルと見積もられる。カナダでは、ウシの生産量におけるこの外寄生生物の管理に、1977ドルの対価を使用し、1年当たり7100万〜1億700万ドルの損失を減少すると見積もられる(非特許文献2:Haufe and Weintraub(1985)Can.Entomol.117:901−907)。従って、北アメリカでは、この吸血性のハエによって、ウシの生産量に対する毎年の経済的な影響は、10億ドルに達する。
【0004】
ノサシバエの外寄生による生理学的な症状の発現は、心拍数の増加、呼吸速度の増加、および直腸温度における上昇を含む。さらに、水の消費と尿の産生、および尿窒素分泌が、有意に増加する。血中コルチソル濃度もまた、有意に増加する。増体の低下、活動の増大、および牧草を食べる量の低下もまた、報告されている(非特許文献3:Schwinghammer et al.(1986)J.Econ.Entomol.79:1010−1014)。
【0005】
成虫段階のH.irritansは雌雄ともに、1日24時間の間、断続的に血液を栄養源とする偏性外寄生生物である。一過的に血液を摂取する生物である他の双翅目の有害生物(ブユ、蚊、アブ、およびサシバエ(stable flies)など)とは異なり、H.irritansの翅のある成虫は、ウシを宿主とし続け、食物を必要とする場合、その口器をウシの肌に頻繁に挿入して、摂取する。非特許文献4:Harris et al.((1974)Ann.Entomol.Soc.Am.67:891−894)は、実験的条件の下、メスのノサシバエが1日当たり平均163分間を食物摂取に費やし;オスは1日平均96分間費やすことを指摘した。各メスが、1日当たり平均17.1mgの血液を摂取するのに対し、オスは、摂取する時間の長さの違いにより、個体当たり1日12.1mgを摂取した(非特許文献5:Harris and Frazer(1970)Ann.Entomol.Soc.Am.63:1475−1476)。
【0006】
H.irritansの唾液腺の生理学を記述する科学的文献のうち、特に血液摂取に対する参考文献については、わずかである。非特許文献6:Hori et al.((1981)Appl.Ent.Zool.16:16−23)は、H.irritansの腸および唾液腺中の消化酵素のいくつかの分類を、Stomoxys calcitrans(Linnaeus)、サシバエ(stable fly)と比較した。弱いアミノぺプチダーゼ活性が、H.irritans唾液腺の中から検出された。そのことは、腸の中のプロテアーゼおよびグリコシダーゼが、摂取した血液の消化を独占的に担うことを示唆する。
【0007】
ノサシバエHaematobia irritans linnaeusは、オーストラリアならびに南半球の他の場所で発生する水牛ハエ(buffalo fly)、H.i.exigua de Meijereを含めて、亜種である。KerlinとHughes(非特許文献7(1992)Med.Vet.Entomol.6:121−126)は、4種の寄生性節足動物(H.irritans exigua、Boophilus microplus(Canestrini)、Aedes aegypti(Linnaeus)、およびLucilia cuprina(Wiedemann))の唾液中の酵素を比較し、異なる摂取方法を見かけ上反映する4種間の唾液の酵素プロフィールの違いを指摘した。これらの違いは、主に、グリコシダーゼ活性とプロテアーゼ活性の型とレベルによる。H.irritans exiguaの唾液を、セロトニン刺激により収集し、その後SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により評価し、銀染色により7〜8バンドを生じた。この種の唾液と唾液腺抽出物(SGE)中のアピラーゼ活性が、かろうじて検出可能であった。これは、この亜種が、他の多くの血液摂取節足動物と同じ方法によりウシの血小板凝集を妨害しないことを示唆する(非特許文献8:Ribeiro(1987)Ann.Rev.Entomol.32:463−478)。
【0008】
さらに、H.irritans exiguaに曝されたウシの免疫反応の調査により、水牛ハエ(buffalo fly)抗原の全てではないが、そのいくつかに対する血中抗体産生が高いレベルであることを示し;それにもかかわらず、以前からハエに曝されたウシの血液を摂取するハエは、ハエに曝されてないウシの血液を摂取するハエより高い死亡率を示さなかった(非特許文献9:Kerlin and Allingham(1992)Vet.Parasitol.43:115−129)。
【0009】
血液を摂取する節足動物により採択された生化学的戦略の解明は、過去10年間の間に進展した。吸血性節足動物の唾液中の抗凝血物質の存在は、少なくとも80年間知られてはいたものの、ごく最近になって、活性成分のいくつかが精製され、それらの分子構造が定義されたに過ぎない。第Xa因子、トロンビン(第II因子)などのような凝固因子は、凝固カスケードにおける中心として存在し、しばしばそれら抗凝血物質の標的にされることが明らかになってきている。
【0010】
ブユのいくつかの種から回収した唾液の研究により、特定の酵素の標的は、宿主の選択と関連し得ることが示唆された(非特許文献10:Abebe et al.(1994)J.Med.Entomol.31:908−911)。例えば、ウシを好む吸血嗜好性(zoophagic)種に関するデータによると、トロンビンは重要な標的分子であり、その分子の不活性化は、凝固カスケードを妨害し得ることに加え、不可逆的に血小板凝集も妨害し得ることを示す。Stomoxys calcitransに関して、非特許文献11:Hudson(1964)Can.J.Zool.42:113−120を参照;およびG.morsitans(Westwood)の唾液に関して、非特許文献12:Parker and Mant(1979)Thrombos.Haemostas(Stuutg.)42:743−751を参照。
【0011】
ウシにおける上記の吸血性外寄生の有害な影響が原因で、そのような外寄生を妨害するために治療上かつ経済上必要である。
【0012】
血栓塞栓症の処置も必要である。血栓塞栓症は、もっとも重要な循環器疾患に入る。血栓は、血管を通して血流を部分的または全面的に遮る血液の塊である。塞栓は、体中どこにでも形成される血栓であり、それは突然自由な状態になり、遮断が生じることになる部位に移動する。脳における遮断は、脳卒中、つまり、脳梗塞を生じ、脳梗塞は限局した壊死領域である。肺中の梗塞は、寝たきりの患者における主要な肺の疾患の1つである、肺梗塞症を引き起こし得る。寝たきりの人および年配の人は、とりわけ血栓性静脈炎の傾向もあり、それは、梗塞によって引き起こされる、足における血行の遮断である。心臓に供給する血管の1つの中に留まる梗塞または血栓は、心臓組織の一部の壊死、すなわち心筋梗塞を引き起こし、心筋梗塞は、一般的に心臓発作とよばれる。
【0013】
多くの心筋梗塞の最初に起こる事象は、アテローム性動脈硬化症のプラーク内への出血である。そのような出血は、しばしば梗塞域に血液を供給する冠状動脈内に血栓(または血塊)が形成することになる。この血栓は、フィブリンおよび血小板の組み合わせから構成される。そのフィブリン−血小板の塊の形成は、深刻な臨床的副産物を有する。フィブリン−血小板塊によって引き起こされる閉塞の度合いと持続期間により、梗塞域の範囲と損傷の程度が決まる。
【0014】
循環器系の他の部分におけるフィブリン−血小板塊の形成は、ヘパリンなどのような抗凝血剤の使用を通して、部分的に妨害され得る。残念ながら、ヘパリンは、心筋梗塞の被害者において(血管の閉塞の度合いが70%以上の被害者において、特に冠状動脈における狭窄の重篤な後遺症を有する患者において)再閉塞の防止に普遍的に効果があるとは見出されていなかった。そのような薬剤のさらに有望なもののうちに、ヒルジンとそのアナログがあり、それらは、トロンビンと結合し、トロンビンを不活性化する。ヒルジンは、抗血栓剤としてのヘパリンを超える理論的な利点を有する。血栓または血小板に結合したトロンビンは、ヘパリンによる阻害から比較的保護されるが、一方ヒルジンは、少なくともインビトロにおいて、なお有効である。他の有望な研究薬剤としては、フィブリノーゲン受容体アンタゴニスト(アスピリンとは異なる機構により血小板凝集と濃染顆粒の放出を妨害する)およびトロンボキサン産生の阻害剤が挙げられる。
【0015】
従って、低い毒性、ほとんどもしくはまったくない抗原性、および循環器からの非常に短時間でのクリアランスを示す、さらなる抗血栓薬剤が必要である。
【非特許文献1】Byford et al.(1992)J.Anim.Sci.70:597−602
【非特許文献2】Haufe and Weintraub(1985)Can.Entomol.117:901−907
【非特許文献3】Schwinghammer et al.(1986)J.Econ.Entomol.79:1010−1014
【非特許文献4】Harris et al.(1974)Ann.Entomol.Soc.Am.67:891−894
【非特許文献5】Harris and Frazer(1970)Ann.Entomol.Soc.Am.63:1475−1476
【非特許文献6】Hori et al.(1981)Appl.Ent.Zool.16:16−23
【非特許文献7】Kerlin and Hughes(1992)Med.Vet.Entomol.6:121−126
【非特許文献8】Ribeiro(1987)Ann.Rev.Entomol.32:463−478
【非特許文献9】Kerlin and Allingham(1992)Vet.Parasitol.43:115−129
【非特許文献10】Abebe et al.(1994)J.Med.Entomol.31:908−911
【非特許文献11】Hudson(1964)Can.J.Zool.42:113−120
【非特許文献12】Parker and Mant(1979)Thrombos.Haemostas(Stuutg.)42:743−751
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の要旨)
抗止血活性を有する単離したヘマトロジェンタンパク質は、それをコードするヌクレオチド配列と同様に、提供される。模範的なヘマトロジェンタンパク質は、血液を摂取するノサシバエ(horn fly)であるHaematobia irritansの唾液腺から単離された。その提供されたタンパク質とヌクレオチドは、外寄生するノサシバエ(horn fly)によるウシにおける血液摂取(吸血性)を妨害する獣医用ワクチンとして、とりわけ有用である。本発明のタンパク質はまた、血栓および血小板凝集が望ましくない状態の予防および/または処置血小板凝集が好まれない状態においても有用である。本発明のタンパク質とヌクレオチド配列を投与する方法も、提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
ウシに対する吸血(血液摂取)を抑制するための方法と組成物を、提供する。その方法と組成物はまた、哺乳類の血栓症の処置における使用、および、低減した血小板凝集および/または活性化が有利である状態の処置における使用を見出す。例えば、Vanhoorelbeke et al.(2003)Current Drug Targets−Cardiovascular & Haematological Disorders 3:125−140を参照。その組成物は、双翅目の環縫短角亜目に属する、吸血性サシバエ、Haematobia irritansの唾液腺のタンパク質を含む(例えば、Yeates et al.(1999)Annu.Rev.Entomol.44:397−428を参照)。ヘマトロジェンと名づけられている、そのタンパク質の主要な機能は、血小板凝集を妨害することによって、凝血を抑制することである。このことを、本明細書中で「抗止血活性」とよぶ。本発明は、作用の特定な機構に縛られない一方、ヘマトロジェンは、コラーゲンに曝されることによって誘導される血小板凝集を妨害することによって機能すると考えられる。
【0018】
本発明の組成物は、配列番号2および配列番号4に示すアミノ酸配列を有し、血小板凝集を妨害および/または減少させることに関連する、模範的なタンパク質を含む。特に、本発明は、配列番号2および配列番号4に示すアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を包含する単離したポリヌクレオチドを提供する。さらに提供されるものは、本明細書中に記載のポリヌクレオチド(例えば、配列番号1および配列番号3に示す配列、ならびにその断片および変異体)にコードされているアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0019】
「吸血性」とは、他の生物によって宿主生物の血液が摂取されることを意味する。「吸血性外寄生」とは、寄生虫により宿主の血液が摂取されることを包含する、宿主−寄生虫の関係を意味する。「血栓症」とは、血栓の形成、発達または存在を意味する。「血小板凝集を妨害すること」とは、血小板の正常な凝集工程が妨害され、そのため凝集がある程度まで減少することを意味する。つまり、「血小板凝集を妨害すること」とは、血小板凝集が、適切な対照実験(例えば、ヘマトロジェンが存在しない場合の血小板凝集)と比較するとき、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%、400%、500%、もしくはそれ以上まで減少することを意味する。血小板凝集は、当該分野において公知の方法を用いて測定され得る。例えば、Krause et al.(2001)Platelet 12:423−430を参照。
【0020】
ヘマトロジェンの実質的に精製された調製物が、提供される。そのような実質的に精製された調製物は、天然な状態ではそのタンパク質と通常結合する任意の化合物が実質的にないタンパク質を含む。そのようなタンパク質は、SDS−PAGE、クロマトグラフィー、電気泳動、または他の方法により純度を評価され得る。M.P.Deutscher(ed.),Guide to Protein Purification,Academic Press,Inc.(1990)を参照。
【0021】
本発明は、単離されたまたは実質的に精製したポリヌクレオチド組成物またはタンパク質組成物を包含する。「単離された」または「精製された」ポリヌクレオチドまたはタンパク質、またはその生物学的に活性のある一部分は、天然に存在する環境の中から見出されたようなポリヌクレオチドまたはタンパク質と通常随伴するまたは相互作用する成分が、実質的または基本的にない。「実質的に純粋」または「実質的に精製された」という用語は、タンパク質またはヌクレオチドと他の化合物との人工混合物または合成混合物を除外することを意味していない。従って、単離されたまたは精製されたポリヌクレオチドまたはタンパク質は、組換え技術により産生された際、他の細胞性材料も培養培地も実質的にない、または化学合成された際、化学的前駆体も他の化合物も実質的にない。最適には、「単離された」ポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドが由来する生物のゲノムDNA中のポリヌクレオチドに天然に隣接する配列(つまり、そのポリヌクレオチドの5’末端と3’末端に位置する配列)(最適には、タンパク質をコードする配列)がない。例えば、様々な実施形態において、その単離されたポリヌクレオチドは、それが由来する細胞のゲノムDNA中のそのポリヌクレオチドと天然に隣接するヌクレオチド配列の、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb、または0.1kb以下を含み得る。実質的に細胞性材料がないタンパク質は、約30%、20%、10%、5%、または1%(乾燥重量で)以下の混入しているタンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。本発明のタンパク質またはその生物学的に活性のある一部分が、組換えて産生されるときに、最適には培養培地は、化学的前駆体または目的のタンパク質でない化合物の約30%、20%、10%、5%、または1%(乾燥重量で)以下になる。
【0022】
その開示されるポリヌクレオチドの断片および変異体とそれによってコードされているタンパク質はまた、本発明により包含される。「断片」とは、そのポリヌクレオチドの一部分またはそれによってコードされているそのアミノ酸配列の一部分、従ってタンパク質の一部分を意味する。ポリヌクレオチドの断片は、天然のタンパク質の生物学的活性を保持し、それゆえ血小板凝集を妨害するタンパク質断片をコードし得る。例えば、配列番号1に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにコードされる、配列番号2)に示すアミノ酸配列からなるタンパク質(つまり、成熟したヘマトロジェンタンパク質)、配列番号4に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにコードされる、配列番号3に示すアミノ酸配列からなるタンパク質の断片である。あるいに、ハイブリダイゼーションのプローブとして有用であるポリヌクレオチドの断片は、一般的に生物学的活性を保持するタンパク質の断片をコードしない。従って、ヌクレオチド配列の断片は、少なくとも約20ヌクレオチド、約50ヌクレオチド、約100ヌクレオチドから本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの長さまで変動し得る。
【0023】
本発明のヘマトロジェンタンパク質の生物学的に活性のある一部分をコードするヘマトロジェンポリヌクレオチドの断片は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、または125の連続したアミノ酸、または本発明のヘマトロジェンタンパク質の中に存在する全てのアミノ酸数(例えば、配列番号2の128アミノ酸)までをコードする。ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして有用であるヘマトロジェンポリヌクレオチドの断片は、一般的にヘマトロジェンタンパク質の生物学的に活性のある一部分をコードする必要がない。
【0024】
従って、ヘマトロジェンポリヌクレオチドの断片は、ヘマトロジェンタンパク質の生物学的に活性のある一部分をコードし得るか、またはそれは、下記の方法を用いるハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして使用され得る断片であり得る。ヘマトロジェンタンパク質の生物学的に活性のある一部分は、本発明のヘマトロジェンポリヌクレオチドのうちの1つの一部分を単離し、コードされたヘマトロジェンタンパク質の一部分を(例えば、インビトロにおける組換え体の発現により)発現し、コードされたヘマトロジェンタンパク質の一部分の活性を評価することによって調整され得る。ヘマトロジェンヌクレオチド配列の断片であるポリヌクレオチドは、少なくとも16、20、50、75、100、150、200、250、300、350、または360の連続したヌクレオチド、または本明細書中で開示されるヘマトロジェンポリヌクレオチド中に存在するヌクレオチド数(例えば、配列番号1は、384ヌクレオチド)まで含む。
【0025】
「改変体」は、実質的に類似の配列を意味すると解釈される。ポリヌクレオチドに関して、改変体は、天然のポリヌクレオチド内の1以上の内側の部位に、1以上のヌクレオチドの欠失および/もしくは付加、ならびに/または天然のポリヌクレオチド内の1以上の部位に1以上のヌクレオチドの置換を含む。本明細書中で使われる、「天然の」ポリヌクレオチドまたはペプチドは、天然に存在するヌクレオチド配列またはアミノ酸配列をそれぞれ包含する。ポリヌクレオチドに関して、保存的な改変体は、遺伝コードの縮重によって、本発明のヘマトロジェンポリペプチドの1つのアミノ酸配列をコードする配列を含む。ヘマトロジェンポリヌクレオチド配列などのような天然に存在する対立遺伝子の改変体は、周知の分子生物学的技術、例えば、以下に略述するようにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびハイブリダイゼーション技術を使用することによって同定され得る。ポリヌクレオチドの改変体は、例えば、部位指向性変異誘発の使用により生成されたポリヌクレオチドのなどのような、合成されたポリヌクレオチドも含むが、その改変体は、本発明のヘマトロジェンタンパク質をなおコードする。一般的に、本発明の特定のポリヌクレオチドの改変体は、本明細書中のどこかに記載の配列アラインメントプログラムおよびパラメーターにより決定されるとおり、その特定のポリヌクレオチドに対して、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する。
【0026】
本発明の特定のポリヌクレオチドの改変体(つまり、参照ポリヌクレオチド)は、ポリヌクレオチド改変体にコードされたポリペプチドと参照ポリヌクレオチドにコードされたポリペプチドとの間の配列同一性の百分率の比較によっても評価し得る。従って、例えば、配列番号2のポリペプチドと所定の百分率で配列同一性を有するポリペプチドをコードする単離したポリヌクレオチドは、開示される。任意の2つのポリペプチド間の配列同一性の百分率は、本明細書中のどこかに記載の配列アラインメントプログラムならびにパラメーターを使用して算出され得る。本発明のポリヌクレオチドの任意の既定の対が、それらがコードする2つのポリペプチドによって共有される配列同一性の百分率の比較によって評価される場合、コードされた2つのポリペプチド間の配列同一性の百分率は、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性である。
【0027】
タンパク質の「改変体」は、天然のたんぱく質の1以上の内部部位における1以上のアミノ酸の欠失もしくは付加ならびに/または天然のタンパク質の1以上の部位における1以上のアミノ酸の置換によって天然タンパク質から由来するタンパク質を意味すると解釈される。本発明により包含されるタンパク質の改変体は、生物学的な活性を有し;つまりそれらは、天然のタンパク質の好ましい生物学的活性を保有し続け、換言すると、そのような活性は、本明細書中に記載のとおり血小板凝集を妨害する活性である。そのような改変体は、例えば、遺伝子多型性もしくは人の操作によって生じ得る。本発明の天然のヘマトロジェンタンパク質の生物学的活性を有する改変体は、本明細書中のどこかに記載の配列アラインメントプログラムおよびパラメーターによって決定されるとおり、天然のタンパク質のアミノ酸配列に対して、少なくても約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を有する。本発明のタンパク質の生物学的活性を有する改変体は、わずか1〜15アミノ酸残基、わずか1〜10(例えば、6〜10など)、わずか5、わずか4、3、2、または1アミノ酸残基でさえ、そのタンパク質と異なり得る。
【0028】
本発明のタンパク質は、アミノ酸置換、欠失、トランケーション、および挿入を含む様々な方法により改変され得る。そのような操作の方法は、一般的に当該分野において公知である。例えば、ヘマトロジェンタンパク質のアミノ酸配列改変体ならびにその断片は、そのDNA中に変異を誘発させることによって調製され得る。変異誘発およびポリヌクレオチド改変の方法は、当該分野において周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:488−492;Kunkel et al.(1987)Methods in Enzymol.154:367−382;米国特許第4,873,192号;Walker and Gaastra,eds.(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company,New York)およびそこに引用される参考文献を参照のこと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を与えない適切なアミノ酸置換に関する手引きは、Dayhoff et al.(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)(本明細書中に参考として援用される)のモデルに見出され得る。本明細書中に参考として援用され得る。あるアミノ酸と、類似の性質を有する他のアミノ酸を交換することなどのような保存的置換は、最適であり得る。
【0029】
従って、本発明の遺伝子とポリヌクレオチドは、天然に存在する配列および変異体の両方を含む。同様に、本発明のタンパク質は、天然に存在するタンパク質、ならびに改変体およびその改変形態の両方を包含する。そのような改変体は、血小板凝集を妨害する望ましい活性を保有し続ける。明らかに、その改変体をコードするDNA中に生成されるその変異は、リーディングフレーム外の配列に生成してはならず、そして最適にはその変異によって、mRNAの2次構造を取り得る相補的領域が創生されない。欧州特許出願公開第75,444号を参照。
【0030】
本明細書中に含まれるタンパク質の配列の欠失、挿入、および置換によって、そのタンパク質の特徴において急激な変化を生じるとは予測されない。しかし、改変をする前に置換、欠失、または挿入の正確な効果を予測することが困難である場合、当業者は、その効果が慣用的なスクリーニングアッセイによって評価されることを理解する。つまり、その活性は、当該分野において公知の血小板凝集計アッセイにより評価され得る。例えば、その活性は、Krause et al.(2001)Platelet 12:423−430(本明細書に参考として援用される)のマイクロタイタープレート法により評価され得る;他の適切な方法については、Rand et al.(2003)Transfusion and Apheresis Science 28:307−317も参照のこと。
【0031】
ポリヌクレオチドの改変体ならびにタンパク質の改変体は、DNAシャッフリングなどのような変異原性手順および組換え誘導手順により得られるポリヌクレオチド配列ならびにタンパク質も含む。このように、1以上のヘマトロジェンをコードする種々の配列は、好ましい性質を有する新しいヘマトロジェンを創生するために操作され得る。この方法によって、組換えポリヌクレオチドライブラリーは、実質的な配列同一性を有する配列領域を含む関連した配列のポリヌクレオチドの集団から作製され、インビトロまたはインビボにおいて相同的に組換えられ得る。例えば、この取組みを用いて、目的のドメインをコードする配列モチーフが、酵素の場合Kmが増加されるなどのような目的の性質が向上したタンパク質をコードする新しい遺伝子を得るために、本発明のヘマトロジェン遺伝子と他の公知のヘマトロジェン遺伝子との間でシャッフルされ得る。そのようなDNAシャッフリングの戦略は、当該分野において公知である。例えば、Stemmer(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747−10751;Stemmer(1994)Nature 370:389−391;Crameri et al.(1997)Nature Biotech.15:436−438;Moore et al.(1997)J.Mol.Biol.272:336−347;Zhang et al.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4504−4509;Crameri et al.(1998)Nature 391:288−291;および米国特許第5,605,793号および同第5,837,458号を参照。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドは、他の生物、特に他の吸血性昆虫から対応する配列を単離するために使用され得る。このように、PCR、ハイブリダイゼーションなどのような方法は、本明細書中に示す配列との配列同一性に基づいてそのような配列を同定するために使用され得る。本明細書中に示すヘマトロジェンの配列または改変体ならびにその断片に対する配列同一性に基づいて単離した配列は、本発明に含まれる。そのような配列は、開示された配列のオルソログである配列を含む。「オルソログ」は、共通の祖先の遺伝子に由来する遺伝子を意味すると解釈され、および「オルソログ」は、種分化の結果として異なる種から見出される。異なる種から見出される遺伝子は、それらヌクレオチド配列および/またはそれらヌクレオチド配列にコードされたタンパク質配列が少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を共有する場合、オルソログであると考えられる。オルソログの機能は、しばしば種の間で高度に保存されている。従って、血小板凝集を妨害し、本明細書中に開示したヘマトロジェンの配列または改変体またはその断片とストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションする単離したポリヌクレオチドは、本発明に含まれる。
【0033】
PCR法において、オリゴヌクレオチドプライマーは、任意の目的とする生物から抽出したcDNAまたはゲノムDNAから対応するDNA配列を増幅するPCR反応に使用するために設計され得る。PCRプライマーおよびPCRクローニングを設計するための方法は、一般的に当該分野において公知であり、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)の中で開示されている。Innis et al.,eds.(1990)PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Academic Press,New York);Innis and Gelfand,eds.(1995)PCR Strategies(Academic Press,New York);Innis and Gelfand,eds.(1999)PCR Methods Mannual(Academic Press,New York)も参照。PCRの公知の方法は、対のプライマー、ネステッドプライマー、単一の特異的プライマー、縮重プライマー、遺伝子特異的プライマー、ベクター特異的プライマー、部分的ミスマッチプライマーなどを使用する方法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
ハイブリダイゼーション技術において、公知のポリヌクレオチドの全部または一部を、選択した生物から得たクローン化されたゲノムDNA断片またはcDNA断片(つまり、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー)の集団に存在する、対応する他のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションするプローブとして使用する。そのハイブリダイゼーションプローブは、ゲノムDNA断片、cDNA断片、RNA断片、または他のオリゴヌクレオチドであり得、32P,または任意の他の検出マーカーなどのような検出基により標識され得る。従って、例えば、ハイブリダイゼーション用プローブは、本発明のヘマトロジェンポリヌクレオチドに基づく合成オリゴヌクレオチドを標識することにより作製され得る。ハイブリダイゼーション用のプローブならびにcDNAライブラリーおよびゲノムライブラリーの構築用のプローブを調製する方法は、一般的に当該分野において公知であり、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)に開示されている。
【0035】
例えば、本明細書中に開示されているヘマトロジェンポリヌクレオチド全体、または1以上のその部分は、対応するヘマトロジェンポリヌクレオチドおよびメッセンジャーRNAに特異的にハイブリダイゼーションすることができるプローブとして使用され得る。様々な条件の下で特異的なハイブリダイゼーションを達成するために、そのようなプローブは、ヘマトロジェンポリヌクレオチド配列の中で独特であり、かつ最適には少なくとも約10ヌクレオチドの長さを有し、もっとも最適には少なくとも約20ヌクレオチドの長さを有する配列を含む。そのようなプローブは、選択された生物由来の対応するヘマトロジェンポリヌクレオチドをPCRにより増幅するために使用され得る。この技術は、さらなるコード配列を望ましい生物から単離するため、もしくはコード配列が生物中に存在することを決定する診断上のアッセイとして使用され得る。ハイブリダイゼーション技術は、プレートされたDNAライブラリー(プラークまたはコロニーのどちらか;例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)を参照)のハイブリダイゼーションスクリーニングを含む。
【0036】
そのような配列のハイブリダイゼーションは、ストリンジェントな条件の下で行われ得る。「ストリンジェントな条件」または「ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件」とは、プローブが、他の配列より検出可能度合いが高く(例えば、バックグランドより少なくとも2倍、または少なくとも3倍、5倍、またはバックグランドより10倍)その標的配列にハイブリダイゼーションする条件であると解釈される。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、環境が異なるとその条件も異なる。ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄の条件のストリンジェンシー(stringency)を制御することによって、プローブと100%相補的な標的配列は、同定され得る(相同的精査(homologous probing))。代わりに、ストリンジェントな条件は、配列中のいくつかのミスマッチを許容するように適合され得るので、類似性のより低い度合いの配列を検出する(非相同的精査(heterologous probing))。一般的に、プローブは、約1000ヌクレオチド未満の長さであって、最適には500ヌクレオチド未満の長さである。
【0037】
代表的に、ストリンジェントな条件は、塩濃度が、Naイオン約1.5M未満であって、代表的にはpH7.0〜8.3においてNaイオン濃度が約0.01〜1.0M(または他の塩)であり、温度は、短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)の場合少なくとも約30℃であって、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチより長い)の場合少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドなどのような不安定化剤の添加によってもなし得る。低ストリンジェンシーの模範的な条件は、37℃において30〜35%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝溶液によるハイブリダイゼーション、および50〜55℃における1×〜2×SSC(20×SSC=3.0M NaCl/0.3M クエン酸三ナトリウム)による洗浄を含む。中程度のストリンジェンシーの模範的な条件とは、37℃において40〜45%ホルムアミド、1.0M NaCl、1% SDS中のハイブリダイゼーション、および55〜60℃における0.5×〜1×SSC中の洗浄を含む。高ストリンジェンシーの模範的な条件は、37℃において50%ホルムアミド、1M NaCl、1% SDS中のハイブリダイゼーション、および60〜65℃における0.1×SSC中の洗浄を含む。必要に応じて、洗浄緩衝液は、約0.1%〜約1%SDSを含み得る。ハイブリダイゼーションの時間の長さは、一般的に約24時間未満で、通常約4時間〜約12時間である。洗浄の時間の長さは、少なくとも平衡に達する十分な時間の長さであって、代表的には例えば、約15分間、1時間、または2時間の長さである。
【0038】
特異性は、代表的にハイブリダイゼーション後の洗浄の関数であって、最終洗浄溶液のイオン強度および温度が重要な要素である。DNA−DNAハイブリッドの場合、そのTは、Meinkoth and Wahl(1984)Anal.Biochem.138:267−284:Tm=81.5℃+16.6(log M)+0.41(%GC)−0.61(%form)−500/Lの等式から概算され得る;ここでMは、一価のカチオンのモル濃度、%GCは、DNA中のグアノシンヌクレオチドとシトシンヌクレオチドの百分率、%formは、ハイブリダイゼーション溶液中のホルムアミドの百分率、およびLは、塩基対中のハイブリッドの長さである。Tは、相補的な標的配列の50%が、完全にマッチしたプローブとハイブリダイゼーションする温度(定義済のイオン強度およびpHの下)である。Tは、各ミスマッチ1%につき約1℃下げられる;従って、T、ハイブリダイゼーション、および/または洗浄条件は、望ましい同一性を有する配列とハイブリダイゼーションするために調整され得る。例えば、≧90%の同一性を有する配列を探し出す場合、Tは、10℃下げられ得る。一般的に、ストリンジェントな条件は、定義されるイオン強度ならびにpHにおける特定の配列およびその相補配列の温度の融解点(T)より約5℃低く選択される。しかし、厳密にストリンジェントな条件は、温度の融解点(T)より1、2、3、または4℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得る;中程度のストリンジェンシーの条件は、温度の融解点(T)より6、7、8、9、または10℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得る;低ストリンジェンシーの条件は、温度の融解点(T)より11、12、13、14、15、または20℃低い温度でのハイブリダイゼーションおよび/または洗浄を利用し得る。Meinkoth and Wahlの等式、ハイブリダイゼーションならびに洗浄組成物、および望ましいTを用いて、当業者は、ハイブリダイゼーションおよび/または洗浄溶液のストリンジェンシーにおける変化量が、本質的に記述されていることを理解する。ミスマッチする望ましい度合いが、45℃(水溶液)または32℃(ホルムアミド溶液)未満のTを生じる場合、SSCの濃度を増大させることが最適なのでより高い温度を使用し得る。核酸のハイブリダイゼーションについての詳細な手引は、Tijssen(1993)Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−Hybridization with Nucleic Acid Probes,Part I,Chapter 2(Elsevier,New York);Ausubel et al.,eds.(1995)Current Protocols in Molecular Biology,Chapter 2(Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York)に見出される。Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York)を参照。
【0039】
以下の用語は、2以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチドの間の配列の関係を記述するために使用される:(a)「参照配列」、(b)「比較ウインドウ」、(c)「配列同一性」、および(d)「配列同一性の百分率」。
【0040】
(a) 本明細書で使用される「参照配列」は、配列比較の基準として使用される定義された配列である。参照配列は、具体的な配列の部分集合または全部;例えば、全長のcDNAまたは遺伝子配列、すなわちその完全長のcDNAまたは遺伝子配列のセグメントとしてあり得る。
【0041】
(b) 本明細書で使用される「比較ウインドウ」は、ポリヌクレオチド配列の連続しかつ特定のセグメントを参照し、ここで比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列は、2つのポリヌクレオチドの最適なアラインメントのために参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して、付加または欠失(つまりギャップ)を含み得る。一般的に、比較ウインドウは、少なくとも20の連続したヌクレオチドの長さであって、そして必要に応じて30、40、50、100またはそれ以上の長さになり得る。当業者は、ポリヌクレオチド配列中にギャップを含むことにより参照配列との類似性が高くなることを避けるために、ギャップペナルティーが、代表的に導入され、マッチ数から引かれることを理解する。
【0042】
比較のための配列のアラインメントの方法は、当該分野において周知である。従って、任意の2つの配列間の配列同一性の百分率の決定は、数学的アルゴリズムの使用により達成され得る。そのような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Myers and Miller(1988)CABIOS 4:11−17のアルゴリズム;Smith et al.(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所的アラインメントのアルゴリズム;Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443−453の全体的アラインメントのアルゴリズム;Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:2444−2448の局所アラインメント検索法;Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 872264のアルゴリズム(Karlin and Altshul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877に記載のとおりに改変)である。
【0043】
これらの数学的アルゴリズムのコンピューターによる実行は、配列を比較する場合、配列同一性を決定するために利用され得る。そのようなアルゴリズムの実行としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:PC/Geneプログラム(Intelligenetics,Moutain View,Californiaから入手可能)におけるCLUSTAL;GCG Wisconsin Genetics Software Package,Version 10(Accelrys Inc.,9685 Scranton Road,San Diego,California,USAから入手可能)におけるALIGNプログラム(Version 2.0)ならびにGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA。これらのプログラムを使用するアラインメントは、デフォルトのパラメーターを使用することによって実行され得る。CLUSTALプログラムは、Higgins et al.(1988)Gene 73:237−244(1988);Higgins et al.(1989)CABIOS 5:151−153;Corpet et al.(1988)Nucleic Acids Res.16:10881−90;Huang et al.(1992)CABIOS 8:155−65;and Pearson et al.(1994)Meth.Mol.Biol.24:307−331によって詳細に記述される。ALIGNプログラムは、前出のMyers and Miller(1988)のアルゴリズムに基づく。PAM120ウェイトレジデューテーブル、12のギャップレングスペナルティー、および4のギャップペナルティーは、アミノ酸配列を比較する場合、ALIGNプログラムにより使用され得る。Altschul et al(1990)J.Mol.Biol.215:403のBLASTプログラムは、前出のKarlin and Altschl(1990)のアルゴリズムに基づく。BLASTのヌクレオチド検索は、本発明のタンパク質をコードするヌクレオチド配列と相同なヌクレオチド配列を得るために、BLASTNプログラム、スコア=100、ワードレングス=12により実行され得る。BLASTのタンパク質検索は、本発明のタンパク質またはポリペプチドと相同であるアミノ酸配列を得るために、BLASTXプログラム、スコア=50、ワードレングス=3により実行され得る。比較目的のためのギャップを有するアラインメントを得るために、Gapped BLAST(BLAST2.0にある)は、Altschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389に記載のとおりに利用され得る。代わりに、PSI−BLAST(BLAST2.0にある)は、分子間の遠い関係を検出する繰り返し検索を実行するために使用され得る。前出のAltschul et al.(1997)を参照。BLAST、Gapped BLAST、PSI−BLASTを使用する場合、それぞれのプログラム(例えば、ヌクレオチド配列に対してBLASTN、タンパク質に対してBLASTX)のデフォルトのパラメーターを使用し得る。www.ncbi.nlm.nih.govを参照。アラインメントは、検査の際に手動によっても実行され得る。
【0044】
他に記載されない限り、本明細書で提供される配列同一性/類似性の値は、以下のパラメーターを使用して、GAP Version 10を用いて得られた値に言及する:50のGAP Weightおよび3のLength Weight、およびnwsgapdna.cmp スコアリングマトリックスを使用するヌクレオチド配列の%同一性および%類似性;8のGAP Weightおよび2のLength Weight、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスを使用するアミノ酸配列の%同一性および%類似性;もしくはその任意の等価なプログラム。「等価なプログラム」とは、GAP Version 10により得た対応するアラインメントを比較する場合、任意の2つの当該配列において、同一のヌクレオチドのマッチまたは同一のアミノ酸残基のマッチを有するアラインメントならびに同一の配列同一性の百分率を有するアラインメントを生成する任意の配列比較プログラムであると解釈される。
【0045】
GAPは、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443−453のアルゴリズムを、マッチ数を最大にしかつギャップ数を最小にする2つの完全な配列のアラインメントを見つけるために使用する。GAPは、全ての可能なアラインメントおよびギャップの位置を考慮し、そしてマッチした塩基数を最大にしかつギャップを最小にするアラインメントをつくり出す。GAPは、マッチした塩基のユニットにおいて、ギャップクリエーションペナルティーおよびギャップエクステンションペナルティーの提供を可能にする。GAPは、GAPが挿入する各ギャップにつきマッチのためのギャップクリエーションペナルティー数を利用する。0より大きいギャップエクステンションペナルティーを選択する場合、GAPは、さらに、ギャップの長さ×ギャップエクステンションペナルティーを挿入したギャップ各々につき、利益を生じさせる。タンパク質配列のためのGCG Wisconsin Genetics Software PackageのVersion 10のデフォルトのギャップクリエーションペナルティーの値およびデフォルトのギャップエクステンションペナルティーの値は、それぞれ8および2である。ヌクレオチド配列の場合、デフォルトのギャップクリエーションペナルティーが50である一方、デフォルトのギャップエクステンションが3である。ギャップクリエーションペナルティーおよびギャップエクステンションペナルティーは、0から200までからなる整数の群から選択された整数として表現され得る。従って、例えば、ギャップクリエーションペナルティーおよびギャップエクステンションペナルティーは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65以上になり得る。
【0046】
GAPは、もっとも良いアラインメントの一群のうちの1つを与える。この一群には多くのアラインメントが存在し得るが、より良好な質を有する他のアラインメントは、存在しない。GAPは、アラインメントに関する4つの指標(figure of merit):Quality、Ratio、Identity、Similarity。Qualityは、配列をアラインメントさせるために最大化される指標(metric)である。Ratioは、より短い断片中の塩基数で割ったQualityである。Identityの百分率は、実際にマッチする記号の百分率である。Similarityの百分率は、類似する記号の百分率である。ギャップの真向かいにある記号は無視される。一対の記号のスコアリングマトリックス値が、類似性の閾値である0.50以上の場合、類似性がスコア付けされる。GCG Wisconsin Genetics Software PackageのVersion 10で使用されるスコアリングマトリックスは、BLOSUM62である(Henikoff and Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照)。
【0047】
(c) 本明細書で使用される、2つのポリヌクレオチド配列または2つのポリペプチド配列に関連する「配列同一性」または「同一性」は、特定の比較ウインドウにわたる最大の対応のためにアラインメントされた場合、同じである2つの配列中の残基に言及する。配列同一性の百分率が、タンパク質に関して使用される場合、同一でない残基の位置は、保存的なアミノ酸の置換によってしばしば異なり、保存的アミノ酸置換の場合そのアミノ酸残基は、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基と置換され、従って、それは、分子の機能的な特性を変えないことが認識される。配列が保存的置換において異なっている場合、その配列同一性の百分率は、その置換の保存的な性質に関して高くなるように補正されて調整され得る。そのような保存的置換によって異なる配列は、「配列類似性」または「類似性」を有すると言われる。この調整を行うための方法は、当業者に周知である。代表的に、これは、完全な不一致よりむしろ部分的に一致するとして、保存的置換をスコア付けすることを含み、その結果、上述の配列同一性の百分率が上昇する。従って、例えば、同一のアミノ酸が、スコア1を与えられ、非保存的置換は、スコア0を与えられる場合、保存的置換は、0と1の間のスコアを与えられる。保存的置換のスコアは、例えば、PC/GENE(Interrigenetics,Mountain View,California)プログラムで実行されるときに算出される。
【0048】
(d) 本明細書で使用される「配列同一性の百分率」は、比較ウインドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定される値を意味し、ここで比較ウインドウにおけるポリヌクレオチド配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントのために、参照配列(付加も欠失も含まない)と比較するとき、付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含み得る。百分率は、同一の核酸塩基または同一のアミノ酸残基が、両配列に存在する位置の数を決定して、マッチした位置の数を得、マッチした位置の数を比較ウインドウにおける位置の全数で割り、その結果に100を掛けて、配列同一性の百分率を得ることによって算出される。
【0049】
「ポリヌクレオチド」という用語の使用は、本発明を、DNAを含むポリヌクレオチドに限定するように解釈されない。当業者は、ポリヌクレオチドが、リボヌクレオチドならびにリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの組み合わせを含み得ることを認識している。そのようなデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドは、天然に存在する分子および合成アナログの両方を含む。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖形態、二本鎖形態、ヘアピン、ステム−ループ構造などが挙げられるが、これらに限定されない配列の全ての形態も含む。
【0050】
本発明のヘマトロジェンポリヌクレオチドは、目的の生物中において発現させるための発現カセット中に提供され得る。そのカセットは、本発明のヘマトロジェンポリヌクレオチドに作動可能に連結される5’調節配列および3’調節配列を含む。「作動可能に連結される」は、2以上の要素間の機能的連結を意味すると解釈される。例えば、目的のポリヌクレオチドと調節配列(つまり、プロモーター)との間の作動可能な連結は、目的のポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的連結である。作動可能に連結された成分は、連続または非連続であり得る。2つのタンパク質コード領域を連結することに言及するために使用される場合、作動可能に連結されるとは、そのコードする領域が、同じリーディングフレーム中に存在すると解釈される。そのカセットは、生物中へ共形質転換されるための、少なくとも1つのさらなる遺伝子を、さらに含み得る。代わりに、そのさらなる遺伝子は、多重発現カセットに提供され得る。そのような発現カセットは、調節領域の転写調節の下にあるように、ヘマトロジェンポリヌクレオチドの挿入のための複数の制限部位および/または組換え部位とともに提供される。その発現カセットは、選択マーカー遺伝子をさらに含み得る。
【0051】
発現カセットは、転写の5’−3’方向において、転写開始部位および翻訳開始部位(つまり、プロモーター)ならびに本発明のヘマトロジェンポリヌクレオチドを含む。調節領域(つまり、プロモーター、転写調節領域、および翻訳終止領域)および/または本発明のヘマトロジェンポリヌクレオチドは、宿主細胞または互いにとっての天然/類似であり得る。代わりに、調節領域および/または本発明のヘマトロジェンポリヌクレオチドは、宿主細胞または互いとって異種であり得る。本明細書で使用される、ある配列に対する言及における「異種の」は、外来種に由来する配列、または、同じ種に由来する場合、人間の意図的な介入による組成および/またはゲノムの遺伝子座における、その天然形態から実質的に改変される。例えば、異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結されるプロモーターは、そのポリヌクレオチドが由来する種とは異なる種に由来するか、または同様/類似の種に由来する場合、1つまたは両方が、それらの本来の形態および/またはゲノム遺伝子座から実質的に改変されるか、またはそのプロモーターが、作動可能に連結されるポリヌクレオチドのための天然のプロモーターではない。本明細書に使用されるキメラ遺伝子は、コード配列とは異種である転写開始領域と作動可能に連結されるコード配列を含む。
【0052】
異種プロモーターを用いて配列を発現することは好ましいことであり得るが、天然のプロモーター配列が使用され得る。そのような構築物は、細胞内のヘマトロジェンの発現レベルを変化し得、それによって、それらが発現される細胞、組織、または生物の表現型を変える。
【0053】
適切な場合、ポリヌクレオチドは、形質転換された生物における発現の増加に対して最適化され得る。つまり、ポリヌクレオチドは、発現の改善のために細菌に好ましいコドンまたは動物に好ましいコドンを使用して合成され得る。このようにしてポリヌクレオチドを最適化する方法は、当該分野において周知である。さらなる配列の改変は、細胞性宿主中の遺伝子発現を促進することが公知である。例えば、その配列のG−C含有量は、所定の宿主細胞中で発現される公知の遺伝子を参照して計算されるように、所定の細胞性宿主にとって平均レベルに調整され得る。このような改変は、本発明の実施の際に熟慮される。
【0054】
発現カセットの調製において、適切な配向で、かつ適切な場合には、適切なリーディングフレーム中に、DNA配列を提供するように、様々なDNA断片が操作され得る。このような目的で、アダプターまたはリンカーが、DNA断片に付加するために用いられ得るか、または他の操作が、便利な制限部位、過剰なDNAの除去、制限部位の除去などを提供するために伴い得る。この目的のために、インビトロにおける変異誘発、プライマー修復、制限、アニーリング、再置換(例えば、遷移(transition)および塩基転換(transversion)が含まれ得る。
【0055】
従って、一旦ヘマトロジェンのヌクレオチド配列が、本明細書中で開示されたとおり同定されると、当業者は、治療上の使用のために多量のタンパク質を産生し得る。従って、組換えタンパク質、および組換えタンパク質を産生する方法は、本発明に包含される。このようにして、ヘマトロジェンタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、大量のタンパク質、または活性化アナログ、またはその断片および血小板凝集を妨害するタンパク質を産生する能力を有する他の構築物を産生するために、原核生物細胞および真核生物細胞の両方を含む、様々な宿主細胞の型における発現のためのベクターにおいて利用され得る。
【0056】
一般的に、組換えDNAの発現の方法は、当該分野において公知である。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)を参照。さらに、バキュロウイルス発現ベクターなどのような宿主細胞および発現ベクターは、当該分野において公知であって、例えば、米国特許第4,745,051号および同第4,879,236号に記載のように、本明細書を実施する際に利用され得る。一般的に、バキュロウイルス発現ベクターは、ポリヘドリン(polyhedron)転写開始シグナルからATG開始部位までにわたる位置に挿入されかつバキュロウイルスのポリヘドリン(polyhedron)プロモーターの転写制御下で発現される遺伝子を含む、バキュロウイルスゲノムを含む。
【0057】
本発明のポリペプチドは、ポリペプチド鎖の硫酸化、COOHのアミド化、アシル化、または化学的改変などのような、1以上の翻訳後修飾に供され得る。ヘマトロジェンタンパク質をコードするポリヌクレオチドは、そのポリペプチドが発現される細胞からそのポリペプチドの分泌を指向する能力を有するリーダーペプチドも含むように構築され得る。リーダーペプチドをコードするポリヌクレオチドは、代表的に、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの5’末端に融合される。リーダー配列は、当該分野において公知であり、OmpAリーダーペプチドおよび水疱性口内炎ウイルスのGタンパク質(VSV Gタンパク質)のリーダーペプチドが挙げられる。OmpAリーダーは、E.coliなどのような細菌性宿主中で発現される場合に有用であり、一方、VSVGタンパク質は、昆虫細胞中で発現される場合に有用である。
【0058】
ポリヌクレオチドは、本発明のポリヌクレオチドを放出するための開裂部位をコードするヌクレオチド配列を含み得、および/または、本発明のポリペプチドのN末端に開裂可能な連結を介して融合されるキャリアポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含み得る。開裂可能な連結は、臭化シアンによって開裂可能な連結であり得る。
【0059】
広範な種々の適切な原核生物細胞および微生物のベクターは、他の生物(微生物を含む)を含む様々な宿主における本発明のヘマトロジェンタンパク質の発現に利用可能である。同様に、外来タンパク質の発現において使用されるそのプロモーターおよび他の調節因子は、当該分野において利用可能である。組換え細菌発現ベクターにおいて一般的に使用されるプロモーターは、当該分野において公知であり、ベータ−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーターシステム(Chang et al.(1978)Nature 275:615およびGoeddel et al.(1979)Nature 281:544);トリプトファン(TRP)プロモーターシステム(Goeddel et al.(1980)Nucleic Acids Res.8:4057);Tacプロモーター(DeBoer et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21)を含む。これらが一般的に使用されるが、他の細菌プロモーターが利用可能である。多くのヌクレオチド配列に関する詳細が公表され、当業者が、プラスミドまたはウイルスのベクターにおいて、タンパク質をコードするDNAにそれらを作動可能に連結することを可能にする。例えば、Siedenlist et al.(1980)Cell 20:269を参照。
【0060】
酵母などのような真核細胞の宿主細胞は、適切なタンパク質をコードしているベクターで形質転換され得る。例えば、米国特許第4,745,057号を参照。Saccharomyces cerevisiaeが、下等真核生物細胞の宿主微生物の中で最も一般的に使用されるが、他の多くの株も、一般的に利用可能である。酵母のベクターは、2ミクロン酵母プラスミドの複製起点または自己複製配列(ARS)、プロモーター、望ましいタンパク質をコードするDNA、ポリアデニル化および転写終止のための配列、ならびに選択遺伝子を含み得る。模範的なプラスミドは、YRp7(Stinchcomb et al.(1979)Nature 282:9;Kingsman et al.(1979)Gene 7:141;Tschemper et al.(1980)Gene 10:157)である。このプラスミドは、トリプトファンの中で生育する能力を欠損している酵母の変異株(例えば、ATCC番号44076またはPEP4−1(Jones(1977)Genetics 85:12))のための選択マーカーを提供する遺伝子であるtrp1を含む。そういうわけで、酵母宿主細胞ゲノム中のtrp1損傷の存在は、トリプトファンの非存在下での生育によって形質転換を検出するために有効な環境を提供する。
【0061】
酵母ベクターにおける使用のための適切なプロモーター配列としては、メタロチオネイン、アルコールデヒドロゲナーゼ、アデニレートシクラーゼ、3−ホスホグリセレートキナーゼ(Hitzeman et al.(1980)J.Biol.Chem.255:2073)ならびに、エノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベートデカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−ホスフェートイソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルベートキナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼなどのような他の解糖酵素(Hess et al.(1968)J.Adv.Enzyme Reg.7:149;およびHolland et al.(1978)Biochemistry 17:4900)のためのプロモーターが挙げられる。
【0062】
本発明は、本発明のタンパク質、または記載されるその任意の改変体または断片に選択的に結合する抗体調製物を提供する。抗体は、たとえそれがヘマトロジェンタンパク質と実質的に相同でない他のタンパク質にも結合するとしても、選択的に結合すると考えられる。これらの他のタンパク質は、相同な配列によって両方のタンパク質と結合する抗体を生じるヘマトロジェンタンパク質の断片またはドメインと相同性を共有する。この局面において、ヘマトロジェンタンパク質に結合する抗体は、やはり選択的であると認識される。
【0063】
抗体調製物は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体、インタクトな抗体またはその断片(例えば、Fab)、アフィニティー精製した調製物などのような精製調製物、または腹水、血清などのような純粋度の低い調製物を包含する。抗体を惹起するための方法は、当該分野において周知であり、Harlow and Lane((1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press)(その内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、提供されるタンパク質、その改変体または断片の生物学的機能を中和する抗体調製物を具現化する。そのような機能としては、抗止血活性が挙げられるが、これに限定されない。本発明は、免疫反応を調節する能力を有する組成物も提供する。免疫反応を調節するとは、その宿主に対して、本明細書に記載の本発明の組成物を投与することによってもたらされる宿主生物の免疫系における決定できる変化であると解釈される。
【0064】
本発明の組成物は、哺乳動物において、吸血の処置における獣医用ワクチンとしての治療の使用を見出す。その方法は、本発明の組成物の治療上有効な量を含む獣医用ワクチンを、哺乳動物に対して投与する工程を包含する。この局面において、治療上有効な量は、本発明のワクチンが投与された哺乳動物における吸血性外寄生の、検出可能な減少、改善、排除または防止を生じる量である。例えば、本明細書で提供される実用的な例は、外寄生しているハエの卵巣管数を減少させることによって吸血性外寄生を改善するための本発明の組成物の治療上の有効性を示す(実施例4を参照)。
【0065】
本発明のワクチンが任意の哺乳動物に使用され得るが、特定の目的とする哺乳動物は、家畜であり、さらに詳しくはウシ、ウマなどである。その組成物は、環縫短角亜目である吸血性のハエ、さらに具体的には、種Haematobia irritansに対するワクチン接種として有用である。しかし、本発明は、本発明の組成物および方法を使用するワクチン接種が治療上有効である場合、任意の吸血性の生物に対するワクチン接種としての使用を見出す。本発明は、ワクチンを提供する際に、他の組成物および方法と併せて使用され得る;例えば、本発明のタンパク質は、米国特許第6,162,785号で教示されるものなどのような、当該分野で公知の抗トロンビンタンパク質を用いたワクチンにおいて使用され得る。「抗トロンビン活性」とは、トロンビンの凝血促進活性を減少もしくは排除し;そして/または血栓症を阻害する生物学的活性を意図する。
【0066】
獣医学的応用のために、本発明の組成物は、以下に記載の任意の受容可能な薬学的調製物または獣医用の任意の他の受容可能な調製物へと処方され得る。
【0067】
いくつかの実施形態の中で、そのワクチンは、本明細書に記載の本発明のヌクレオチド組成物を含む。Cox et al.(1993)J.Viol.67:5664−5667;Fynan et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11478−11482;およびLewis et al.(1997)Vaccine 15:861−864;およびRobinson(1997)Vaccine 15:785−787に記載され;Tighe et al.(1998)Immunol.Today 19:89−97(その全ての内容は、本明細書中に参考として援用される)によって概説されるように、核酸ワクチンは、容易に構築され、産生され得る。一般的に、免疫原として使用されるタンパク質をコードしている標的DNA配列は、真核細胞発現ベクターにクローニングされ、これは、次に、適切な宿主細菌に形質転換される。プラスミドDNAは、その後、細菌から精製され、動物に直接注射され、その動物において、接種された宿主の細胞によるそのDNAの発現により、標的タンパク質が産生され、それによって、免疫反応が引き起こされる。DNAの注射は、一般的に、筋肉内注射によって行われるが、皮内注射などのようなもう1つの適切な方法によっても行われ得る。例えば、Cox et al.(1993)J.Virol.67:5664−5667(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。そのようなDNAから発現されたナノグラムレベルのタンパク質は、免疫反応を刺激するため、ならびに皮膚、筋肉および静脈へのDNAの接種によりなされる感染性因子から防止するために利用され得る。例えば、Fynan et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:11478−11482;Cox et al.(1993)J.Viol.67:5664−5667(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。筋肉内注射または皮下注射によって導入されるそのようなプラスミドは、チャレンジの後に、臨床的疾患を抑止する防御反応を刺激する。
【0068】
本発明の組成物は、治療用途のために薬学的調製物へと処方され得る。そのような組成物は、例えば、静脈の血栓症、血管バイパスの閉塞およびトロンビン誘導による播種性血管内凝固症候群などのような凝固に関する医学的状態の処置においての使用を見出す。本発明の組成物は、治療上有用である;つまり、本発明の組成物は、処置を必要とする哺乳動物に対して投与される場合、凝固に関する医学的状態の改善をもたらす。いくつかの実施形態において、医学的状態の改善は、血小板凝集の減少から生じる。本発明の組成物は、単独で使用されうるか、または獣医用薬剤を含め、他の抗トロンビン薬剤および治療剤と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の組成物は、米国特許第6,162,785号に開示の抗トロンビン薬剤および治療剤と組み合わせて使用され得る。他の薬剤は、当該分野において公知である。
【0069】
抗止血性組成物は、薬学的に有用な組成物を、例えば、薬学的に受容可能なキャリアビヒクルとの混合によって調製するために、公知の方法に従って処方され得る。適切なビヒクルおよびそれらの処方は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 19th ed.,Osol,A.(ed.),Mack Easton PA(1980)に記載される。有効な投与に適した、薬学的に受容可能な組成物を形成するために、そのような組成物は、有効な量のヘマトロジェンタンパク質を、単独で、または適切な量のキャリアビヒクルと一緒かのいずれかで含む。
【0070】
さらなる製薬法は、作用時間を制御するために使用され得る。制御放出性調製物は、その組成物と複合体を形成するもしくはその組成物を吸収するポリマーの使用によって達成され得る。制御される送達は、適切な高分子(例えば、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルピロリドン、エチレン−酢酸ビニル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、または硫酸プロタミン)を選択することによって行われ得る。薬物放出速度は、そのような高分子の濃度を変えることによっても制御され得る。
【0071】
作用時間を制御するもう1つの考えられる方法は、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ乳酸またはエチレン−酢酸ビニルコポリマーなどのようなポリマー物質の粒子中に、治療剤を取り込むことを含む。あるいは、例えば、コアセルベーション技術または界面重合によって、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン−ミクロカプセルもしくはポリ(メチルメタクリレート)ミクロカプセルそれぞれの使用によって、またはコロイド薬送達系(例えば、リポソーム、アルブミン、ミクロスフェア、ミクロエマルジョン、ナノ粒子、ナノカプセル)において、またはマクロエマルジョンにおいて調製されるミクロカプセルにその治療剤を取り込むことは可能である。そのような教示は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)に開示されている。
【0072】
さらに具体的な実施形態において、本発明のポリペプチドは、薬学的に受容可能な塩に転換され得る。そのポリペプチドは、有機酸または無機酸との酸付加塩へ転換され得る。適切な酸としては、酢酸、コハク酸および塩酸が挙げられる。あるいは、そのペプチドは、アンモニウム塩などのようなカルボン酸塩、またはアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩など)へ変換され得る。
【0073】
従って、ポリペプチドまたは薬学的に受容可能なその塩は、薬学的組成物において、そのための薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤とともに使用され得る。そのような処方物は、代表的に静脈内投与のためである(その場合、そのキャリアは、一般的に、滅菌した、生理食塩水または許容し得る純度を有する水である)。従って、ポリペプチドは、術後血栓症の予防を含め、ヒトまたは他の哺乳動物における血栓症および血栓塞栓症の治療および予防のために、急性ショック治療(例えば敗血性ショックまたは多発外傷性ショックのための治療)のために、ならびに、血液透析、血液分離および体外血液循環における消費性凝固障害の治療のために、使用され得る。本発明の1つの実施形態において、本発明のポリペプチドまたはその塩は、組織プラスミノゲンアクチベーターなどのようなプラスミノゲンアクチベーターと共に投与され得る。
【0074】
投薬量は、特に投与の具体的な形態および治療または予防の目的に依存する。個々の投与量の大きさおよび投与レジメンは、疾患の特定の症例の個々の判断によって決められるのが最良であり得る;この目的に必要とされる関連した血液因子を決定する方法は、当業者に周知である。通常、注射の場合、本発明に従う化合物の治療上有効な量は、約0.005mg/kg体重、0.01mg/kg体重、0.02mg/kg体重、0.05mg/kg体重、または0.1mg/kg体重から約0.15mg/kg体重mg/kg体重、0.2mg/kg体重、0.3mg/kg体重、0.5mg/kg体重、0.7mg/kg体重、1.0mg/kg体重、2.0mg/kg体重、または5.0mg/kg体重、または約0.1mg/kg体重から約0.2mg/kg体重までにわたる投薬量の範囲の中にある。
【0075】
投与は、静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射によってもたらされる。従って、単一投与形態における非経口投与のための薬学的組成物は、投与様式に依存して、一回の投与当たり、約0.4mgから約7.5mgまでの本発明に従う化合物を含む。活性成分に加え、これら薬学的組成物は、通常、pH値を約3.5〜約7の間に保つことを意図する緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)も含み、等張性を調整するために塩化ナトリウム、マンニトールまたはソルビトールもまた含む。その調製物は、凍結乾燥されるかもしくは溶解され得る。抗細菌性活性を有する保存剤は、例えば0.2%から0.3%の4−ヒドロキシ安息香酸のメチルエステルまたはエチルエステルを含み得る。
【0076】
局所的適用のための組成物は、水溶液、ローションまたはゲル、油性溶液または懸濁液または脂肪含有、または特に乳化軟膏の形態において存在し得る。水溶液の形態で存在する組成物は、例えば、pH4からpH6.5までの水溶性緩衝溶液に、本発明に従う活性成分もしくは薬学的に受容可能なその塩を溶解させ、望ましい場合は、さらなる活性成分(例えば、抗炎症剤、および/または重合性結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)および/または保存剤)を加えることによって得られる。活性成分の濃度は、溶液10ml中またはゲル10gにおいて、約0.1mgから約1.5mgまで、好ましくは0.25mgから1.0mgまでである。
【0077】
上記の組成物、およびヒトまたは哺乳動物の身体における直接的な医学的使用が意図されたこの組成物に類似の薬学的組成物に加え、本発明はまた、ヒトまたは哺乳類動物の生体外の医学的使用のための薬学的組成物および調製物に関する。そのような組成物および調製物は、体外への循環または処置(例えば血液分離)に供されている血液への抗止血性添加因子として、特に使用される。保存溶液または単一投与形態における代替調製物などのような調製物は、上記の注射用調製物の組成に類似している;しかし、活性成分の濃度の量は、処置されるべき血液の体積、もしくは、さらに正確には、そのトロンビン含有量に有利に基づく。具体的な目的に依存して、適切な投与量は、血液1リットル当たり約0.01mgから約0.2mgまでの活性成分であるが、その薬剤が相対的に高い量であっても害がないので、その上限量は、危険を冒さずにさらに超えられ得る。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
(ヘマトロジェンタンパク質の単離)
(H.irritansの採集と飼育)
蛹は、U.S.D.A.Livestock Insects Research Laboratory(Kerrville,Texas)から隔週を基本として出荷され、必要となるまで4℃で保存した。それらを取り出し、小型のアイスクリームの箱(Neptune Paper Products,Inc.,Newark,NJ)を改造した段ボール箱の中に置き、成虫の出現を促進するために、27℃で16:8時間(L:D)にセットしたインキュベーターの中に置いた。脱脂綿の詰め物を、各ケージの上に置き、成虫出現後24〜48時間の間、実験する時点まで、成虫に水を与えるための芯として使用した。
【0079】
アリゾナ大学の乳用牛の群れおよびオーバーン大学の肉用牛および乳用牛の群れから採集した野生の成虫を、いくつかのアッセイのために使用した。それらを、採集して1時間以内に研究室に輸送し、実験する時点まで上記のように維持した。
【0080】
(唾液腺の回収)
H.irritansは、両性ともに、偏性吸血昆虫であり、それらの唾液腺は、形態と体の中の位置の点で、サシバエ(Stomoxys calcitrans)およびツェツェバエ(Glossina spp.)に似ている。以下のプロトコールを、腺の解剖のために使用した:(a)ノサシバエ(H.irritans)を、加湿したCOで「ノックダウン」させ、70%エタノール(ETOH)槽に短時間くぐらせ、その後、脱イオン水の中ですすいだ;(b)そのハエを、清潔なスライドガラスの上に滴下した0.15Mの冷却した生理食塩水の雫の中に置き、足、羽、および頭を取り除き、カミソリの刃またはメスを使用してその胸部を矢状に開裂した;(c)その後、そのハエを、パラフィンで満たした時計皿または小型のディッシュの中の冷却した生理食塩水の新鮮な雫へ移し、その胸部の2つの半身を、解剖用の微細な針を使用して背側に剥がした;(d)ピンセットを使用して、内部器官を露出させるために腹部のクチクラを引っ張り、その後、唾液腺を内臓組織から取り出し、内臓(噴門)の腹側の末端をつかみ、内臓−唾液腺集合体を、腹部−胸部のくびれを通して引っ張るように引き出した;(e)その後、腺を内臓から掻き裂き、冷却した生理食塩水の中で1回すすぎ、回収の工程のあいだ氷上に置いたエッペンドルフに移し、その後、−70℃で冷凍した。
【0081】
(唾液腺抽出物の調製)
唾液腺抽出物(SGEs)を、超音波処理によって調製した。腺の超音波破砕を、Sonifer 450(Branson Ultrasonics,Danbury,CT)の70%周期および70%出力を使用して行った。その超音波破砕は、熱を分散するために氷槽に浸した超音波プローブの基部に各チューブの先端を約2分間保持することで行った。約12,000×gで5分間、4℃で遠心することによる細胞の断片の除去に引き続き、唾液腺抽出物を、新しいチューブに移した。個々の腺当たりのタンパク質量を、BCAタンパク質アッセイキット(Pierce,Rockford,IL)を使用して決定した。超音波処理したH.irritansの唾液腺から得た可溶性タンパク質の初期測定は、メスが、一対の腺当たり0.54±0.09μgで、オスが、一対の腺当たり0.63±0.02μgであった。
【0082】
(電気泳動とウェスタンブロッティング)
タンパク質を、12%NuPAGE成形済みタンパク質用ゲル(Invitrogen,Carlsbad,CA)で分離し、SimplyBlue SafeStainおよびその製造業者(Invitrogen,Carlsbad,CA)の方法を使用して可視化した(図2および図3)。抗体による検出のために、タンパク質を、Immun−BlotTM PVDF膜(BIO−RAD,Hercules,CA)に転写し、ヘマトロジェンで免疫したウサギ抗血清およびHRP接合ヤギ抗ウサギIgG(KPL Laboratories,Gaithersburg,MD)により発色させた(図4)。その後、そのタンパク質の部分的(N末端の)アミノ酸配列を、標準的技術を使用して決定した。
【0083】
(実施例2)
(ヘマトロジェンのクローニングと発現)
(クローニング)
現場で採集したサシバエから解体した唾液腺を、NucleoSpin RNA IIキット(BD Biosciences Clontech)を使用して全RNAを抽出するために、用いた。2つのcDNA集団(5’−RACE−Ready cDNAおよび3’−RACE−Ready cDNA)は、SMARTTM RACE cDNA増幅キット(BD Biosciences Clontech)を使用して全RNAのうち1μgから生成した。3’−RACE反応を、3’−RACE−Ready cDNAを鋳型として使用し、実行した。遺伝子特異的な増幅プライマーおよび縮重した増幅プライマーを、そのタンパク質の部分的なアミノ酸配列に基づき設計した。その増幅したDNA産物を、アガロースゲル電気泳動の後、単一バンドとして分離、精製し、直接DNA配列決定した。その後、3’末端配列を、逆向きの遺伝子特異的プライマーを設計するために使用し、5’−RACE−Ready cDNAを鋳型として用い、5’−RACEを実行するために、そのプライマーを使用した。その結果生じたDNA産物を、配列決定し、単離したタンパク質と一致することを確認した;その後、その見かけの全長の遺伝子を、pCR4−TOPO(登録商標)ベクター(Invitrogen)にクローニングした。
【0084】
(細菌中でのヘマトロジェンの発現)
成熟したヘマトロジェンタンパク質(つまり、シグナルペプチドを除く)をコードするポリヌクレオチドを、pTriExTM−4発現カセット(Novagen)にサブクローニングした。このカセットは、連続したヒスチジン残基を包含するHis Tagをコードする配列が与えられ、そのために、そのベクターを用いて発現したタンパク質は、付加されたHis Tagを含む。その組換えカセットを、E.coli発現宿主、RosettaTM(Novagen)に移入した。形質転換した細菌を、1%グルコースおよび抗生物質(50μg/mlカルベニシリンおよび34μg/mlクロラムフェニコール)を補充したLB培地中、37℃で培養した。組換えタンパク質の産生を、IPTG(300μMまで)で誘導した。37℃で誘導2〜3時間後、細胞を、遠心によって回収し、タンパク質抽出を、BugBusterTMタンパク質抽出プロトコール(Novagen)に従って、行った。その標的タンパク質を、His.Bind(登録商標)樹脂(Novagen)を使用して精製した。可溶性画分と不溶性画分の両方を、SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティングにより解析した。
【0085】
(Sf9昆虫細胞中でのヘマトロジェンの発現)
その全長のヘマトロジェン遺伝子を、pBacPAK8プラスミド(転移ベクター(Clontech))のPstI部位とNotI部位にクローニングした。その後、組換えベクター中の標的遺伝子を、製造業者(Clontech)の使用説明書にしたがいBacPAK6(Clontech)ウイルスゲノム中にインビボにおいて移入した。組換えウイルスを、単離、増幅し、その後、Sf9宿主細胞に感染させるために使用した。単層のSf9細胞を、Insect−Xpress培地(無血清培地(Bio Whittaker))中で、感染の多重度(moi)10で感染させた。細胞培養の上清を、感染72時間後に遠心により回収し、−20℃で冷凍した。
【0086】
(組換えヘマトロジェンの精製)
Sf9細胞により産生した組換えヘマトロジェンを、以下のとおりに精製した。Sf9細胞培養上清を解凍し、氷槽中で80%(NHSOと混合した。その混合物を、15,000×g、4℃で30分間遠心した。その沈殿物を、脱イオン水で再懸濁し、脱塩のためにPD−10カラム(Amersham Biosciences)に通した。その溶出したタンパク質懸濁液を、50,000−MWCO遠心フィルター装置(Amicon(登録商標) Ultra,Millipore(登録商標))に通した。その残留物(retentate)を、10mM Tris(pH8.0)で2回洗浄した。その濾液を混合し、5,000−MWCO遠心装置で濃縮した。その後、濃縮したタンパク質を、Macrosphere C−18カラム(300Å、5μm、250×10mm(Alltech(登録商標)))および以下の溶媒での勾配溶出による逆層HPLCを使用して、分離し、精製した:A:0.12%トリフルオロ酢酸(TFA)を含む20%アセトニトリル(ACN)およびB:0.11%TFAを含む60%ACN。その回収した画分のアリコートを、凍結乾燥し、SDS−PAGEおよびウェスタンブロットにより解析した。標的タンパク質の画分であると推定されるそれらのアリコートを、1%BSA溶液と共に凍結乾燥した(再構成後、結果として0.1%BSA溶液となる)。Sf9細胞培養において産生した組換えヘマトロジェンを、SDS−PAGEとウェスタンブロッティング解析(図3)によって示したように、適用した方法により均一に近くなるまで精製した。
【0087】
(ヘマトロジェン遺伝子構造)
ヘマトロジェン(配列番号3)をコードする再構築したcDNAは、148アミノ酸の長さのタンパク質産物(配列番号4)をコードした(図1中にも示した)。唾液腺から精製した成熟タンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)は、フェニルアラニン(翻訳されたcDNAにコードされた21番目の残基)から始まった。従って、配列番号4に示す配列の最初の20アミノ酸は、シグナルペプチドのようである。さらに、再構築したcDNAにおいて、ヘマトロジェンをコードする領域は、最初のATG開始コドンに先行する5’末端の51bpの非翻訳配列およびポリAテールより前の3’末端の63bpの非翻訳配列に隣接していた。分泌したヘマトロジェンタンパク質は、7.82の等電点(pI)を有する14.4kDaの予測分子量を有する。NCBI(the National Center for Biotechnology Information)によって維持されている、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列のデータベースのBLAST検索により、ヘマトロジェンタンパク質の配列は、いかなる以前より既知の配列とも有意な配列同一性がないことがわかった。
【0088】
(E.coli中でのヘマトロジェンの産生)
E.coli宿主中で発現させた場合、ヘマトロジェン融合タンパク質(つまり、N末端にHis Tagを有するヘマトロジェンタンパク質)は、誘導したE.coliの封入体にのみ存在した(図2)。その封入体を、E.coli細胞抽出物から単離し、6M尿素を含む1×His・Bind結合緩衝液(5mM イミダゾール、50mM NaCl、20mM Tris−HCl(pH7.9))に再懸濁した。His・Bindカラム精製において、その融合ヘマトロジェンを、6M尿素、1M イミダゾール、0.5M NaCl、および20mM Tris−HCl(pH7.9)を含む緩衝液で溶出した。最後の緩衝液交換およびタンパク質濃縮を、5,000−MWCO遠心装置および50mM Tris−HCl(pH7.9)、100mM NaCl、および6M尿素からなる緩衝液を用いて行った。その結果生じたヘマトロジェン融合タンパク質を、SDS−PAGEにより90%以上の純粋であると見積もった(図3)。
【0089】
(実施例3)
(抗体の産生)
ニュージーランドホワイトウサギを、組換えヘマトロジェン50μgを全量として、皮内に5部位および皮下に5部位注射することによって免疫した。その組換えヘマトロジェンは、上記E.coliのRosetta株中で発現させ、その後、Freund完全アジュバンド(FCA)中に乳化した。Freund不完全アジュバンド(IFA)中に乳化した50μgの組換えヘマトロジェンの2回の追加免疫を、初回抗原刺激の注射後14日目と35日目に、筋肉内に4部位注射することによって行った。ウェスタンブロッティングにより確認したとおり、この手順により、ヘマトロジェンに結合する抗体が産生した(図4を参照)。
【0090】
(実施例4)
(獣医学的ワクチンとしてのヘマトロジェンの有効性)
予防接種の実験を、年齢が一致した子ウシ4対に行った。実験の子ウシを、Freund完全アジュバンド中で乳化させた精製ヘマトロジェン50μgを初回抗原刺激の投与量として、6部位(皮内に3部位、皮下に3部位)で同量ずつ注射することによって免疫した。その後、子ウシを、各50μgのタンパク質で2回追加免疫した;そのタンパク質を、Freund不完全アジュバンド中で乳化させ、皮下に4部位(同量ずつ)に注射した。対照実験の子ウシを、同じ手順を用いて、オボアルブミン(OVA)タンパク質で免疫した。2回目の追加免疫してから2週間以上後、子ウシの背側の皮膚の毛を剃った部分に、20匹の吸血ハエを含む供給ケージを取り付けることによって、子ウシをそのハエに曝した。子ウシの各群を、3回検定した。
【0091】
血液を摂取するハエから得られた血液の体積を、中腸内のヘモグロビンの定量的測定によって決定した(Cupp et al.(2004)Vaccine 22:2285−2297)。ヘマトロジェンで免疫した子ウシの血液を摂取したハエが子ウシから血液を摂取する傾向は小さく、実験から得られたp値は0.06で、群間の差も有意だった。
【0092】
吸血ハエ中の卵巣管の発達の度合いを、実験または対照実験の子ウシに対して24時間、48時間、および72時間連続してハエに曝した後に記録した。卵巣管の数は、対照実験の子ウシに対する実験の子ウシにおいて有意な減少(p=0.015)を示したが、群間の差は有意であった。
【0093】
(実施例5)
(コラーゲンI誘導血小板凝集に対する組換えヘマトロジェンの効果)
組換えSVEP(「rSVEP」対照実験;例えば、米国特許第6,162,785号を参照)およびヘマトロジェン(「HFX」)タンパク質を、インビトロにおいて、組換えバキュロウイルスBV/SVEPまたはBV/HFXに感染したSf9細胞により発現させた。感染72時間後に回収した培養上清を、100kDaおよび10kDaカットオフ膜(Centricon Plus 20,Millipore Corporation,Bedford,MA)を用いて、連続遠心の工程に供した。その膜の使用により、濃縮した半精製した調製物(10kDa≦x≦100kDa)を得た。
【0094】
この半精製の組換えヘマトロジェンが、コラーゲンIに対するウシ血小板の凝集反応を阻害する能力を、インビトロにおける動力学的アッセイにおいて検定した。そのアッセイは、Krause et al.((2001)Platelet 12:423−430)により記載され、本明細書中に参考として援用されている。要約すると、血小板凝集実験を、96ウェルの平底マイクロタイタープレートの中で行った。血小板が豊富な血漿のサンプルを、マイクロタイタープレートの中に入れた。その後、実験および対照実験のタンパク質のアリコートを、読み込みが開始される前に直接サンプルに加えた。光学的密度の測定を、650nmで行った。走査時間中、プレートを、37℃でインキュベートし、断続的に混ぜ合わせた。結果を、下の表1に示す。各実験に使用した両方のサンプルにおいて、コラーゲンの濃度は3μg/mlおよびその体積(10kDa≦x≦100kDa)は10μlであった。
【0095】
表1の速度(Rate)の値は、懸濁液中の血小板が、コラーゲンの添加に反応して凝集したときに生じる時間に対する吸光度の減少の尺度である。組換えヘマトロジェンの存在により、対照実験タンパク質rSVEPを有する同様の調製物と比較して、凝集反応を有意に減少させる。
【0096】
【表1】

本明細書中で言及した全ての刊行物と特許出願は、この発明が属する分野の当業者のレベルを示す。各個々の刊行物または特許出願が、具体的かつ個々に参考として援用されると示されるのと同程度に、全ての刊行物と特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0097】
本発明の他の改変と実施形態は、本発明が属する分野の当業者に想起され、本明細書中に示した教示の恩恵を有する。従って、本発明は、開示された具体的な実施形態に限定されないことが理解されるべきである。特定の用語を用いるものの、それらの用語は、一般的で記述的な意味において使用されるに過ぎず、限定する目的のために使用されるのではない。そして、その改変と実施形態は、添付した特許請求の範囲内に含まれると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、ヘマトロジェンヌクレオチド配列と推定アミノ酸配列を示す。翻訳の開始コドン(ATG)、終止コドン(TAA)、およびポリアデニル化部位(AATAAA)を、ボールドフォントで示す。推定分泌シグナルペプチドを、イタリックフォントで示し、ゲノム上のヘマトロジェンのイントロンの場所を、矢印で示す。イントロンそれ自体の配列を、括弧内に示す。
【図2】図2は、非誘導(レーンB)E.coliならびにIPTG誘導(レーンC)E.coliからの組換えヘマトロジェン調製物のSDS−PAGEゲルを示す。マーカーを、レーンAに示す。
【図3】図3は、Sf9細胞(ゲルa)ならびにE.coli(ゲルb)中で産生された組換えヘマトロジェンおよびHPLCで精製した同タンパク質のSDS−PAGEゲルを示す。各ゲルのレーンAは、マーカーを示し、一方各ゲルのレーンBは、ヘマトロジェン調製物を示す。
【図4】図4は、E.coli産生ヘマトロジェン免疫したNZWウサギ内で産生した抗体を使用した、ヘマトロジェンのウェスタンブロット解析を示す。マーカーを、レーンAに示し、組換えヘマトロジェンを、レーンBに示し、および8×His−Tagを有する組換えヘマトロジェンを、レーンCに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む実質的に精製されたタンパク質であって、該タンパク質は、血小板凝集を妨害する、タンパク質。
【請求項2】
前記タンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
前記タンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
前記タンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項5】
配列番号2に示す配列のうち少なくとも20の連続したアミノ酸を含むアミノ酸配列を含む、実質的に精製されたタンパク質であって、該タンパク質は、血小板凝集を妨害する、タンパク質。
【請求項6】
前記タンパク質は、組換え法によって得られる、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項7】
請求項1に記載のタンパク質の治療上有効な量を含む、薬理学的組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のタンパク質の治療上有効な量を含む、獣医用ワクチン。
【請求項9】
ウシにおける吸血を処置する方法であって、該方法は、請求項8に記載のワクチンを、該ウシに投与する工程を包含する方法。
【請求項10】
減少した血小板凝集が有益である状態の哺乳動物を処置する方法であって、該方法は、血小板凝集を妨害するタンパク質の治療上有効な量を該哺乳動物に投与する工程を包含し、該タンパク質は、配列番号2に示す配列と少なくとも80%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項11】
前記タンパク質は、組換え法によって得られる、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−535489(P2007−535489A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541491(P2006−541491)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/039910
【国際公開番号】WO2005/051996
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506009109)オーバーン ユニバーシティ (5)
【Fターム(参考)】