説明

止血及び血液処理のための方法及び装置

特に心血管処置のための、止血及び血液処理のための処置は、サンプリング指示、即ち、何時血液サンプルを抜き取るのか及び血液サンプルを前処理する方法、種々の凝固障害の同定を可能にする止血分析結果の解読を助けるための決定樹、並びに止血分析結果に関連する治療示唆を与える。分析、解読及び同定は好適にプログラミングされたコンピュータにより行ない得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許は1999年2月22日に出願された米国特許出願第09/255,099号(現在の米国特許第6,225,126号)の継続出願である、2001年4月30日に出願された米国特許出願第09/845,222号(発明の名称“止血を測定するための方法及び装置”)の一部継続出願である。また、この出願は2000年6月9日に出願された米国特許出願第09/591,371号(発明の名称“坑血小板薬を監視するための方法及び装置”)及び2001年10月10日に出願された米国特許出願第09/974,044号(発明の名称“止血を診断するための方法及び装置”)の一部継続出願である。上記米国特許及び特許出願の全ての開示が参考として本明細書に明らかに含まれる。
この特許は一般に止血の分野に関するものであり、更に特別には、この特許は止血並びに血液産物及び医薬の処理(pharmaceutical management)の方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液は酸素及び栄養物質を組織に運び、二酸化炭素及び排泄のための種々の代謝産物を除去する生物の循環組織である。全血は淡黄色又は黄灰色の液体、血漿からなり、その中に赤血球、白血球、血小板、及び止血因子が懸濁されている。
患者の血液が適時かつ有効な様式で凝固し、溶解する能力の正確な測定は或る種の外科処置及び医療処置に重要である。異常な凝固の促進され(迅速)、かつ正確な検出がまた凝固障害を患っている患者及び凝固障害に寄与し得る患者の血液の異常な成分又は“因子”を考慮した後に明らかに決められる必要がある量の血液凝固阻止薬、坑繊維素溶解薬、血栓溶解薬、坑血小板薬、又は血液成分を投与することが必要であり得る患者に施されるのに適した治療に関して特に重要である。
止血は多くの相互作用因子を伴う動的な、極めて複雑なプロセスであり、これらの因子として、凝固タンパク質及び繊維素溶解タンパク質、アクチベーター、インヒビター及び細胞要素、例えば、血小板細胞骨格、血小板細胞質顆粒及び血小板細胞表面が挙げられる。結果として、活性化中に、因子が静的に留まらず、又は単離の際に作用しない。凝固プロセスの最終結果は血小板糖タンパク質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)受容体結合と一緒になって最終クロットを形成する重合されたフィブリン(フィブリノーゲン)繊維の三次元ネットワークである(図1)。このネットワーク構造の特異な性質はそれが循環血液の変形せん断応力に耐え得る、硬質弾性固体として挙動する性質である。変形せん断応力に耐える最終クロットの強さはフィブリン繊維ネットワークの構造及び密度並びに関与する血小板により加えられる力により決められる。
【0003】
こうして、活性化された凝固の結果として発生し、損傷された血管系に付着し、循環血液の変形せん断応力に耐えるクロットは、本質的に“一時的ストッパー”を与えるのに形成された機械装置であり、これは血管回復中に循環血液のせん断力に耐える。クロットの動態、強さ、及び安定性、即ち、循環血液の変形せん断力に耐えるその物理的性質が止血の作業を行なうその能力を決め、これは不適当な血栓症を許さないで出血を停止することである。これは正確には以下に記載される、トロンベラストグラフ(登録商標)(TEG(登録商標))止血分析系が行なうように設計されることであり、これは初期のフィブリン形成に要する時間、クロットがその最大強さに達するのに要する時間、実際の最大強さ、及びクロットの安定性を測定すべきである。
止血アナライザー装置はHelmut Hartert教授が1940年代にドイツでこのような装置を開発して以来知られていた。止血アナライザーの一つの型が共通に譲渡された米国特許第5,223,227号及び同第6,225,126号に記載されており、これらの開示が参考として本明細書に明らかに含まれる。この装置、TEG(登録商標)止血分析系は、血液が機能不全の静脈血流に似ている低せん断環境下で凝固するように誘導される際の血液の弾性特性を監視する。発生するクロットのせん断弾性の変化のパターンがクロット形成の動態だけでなく、形成されたクロットの強さ及び安定性、要するに、発生するクロットの機械的性質の測定を可能にする。上記のように、クロットの動態、強さ及び安定性は“機械作業”を行ない、即ち、循環血液の変形せん断応力に耐えるクロットの能力についての情報を与える。本質的に、クロットは止血の要素的機械であり、TEG(登録商標)止血分析系はクロットの構造発生中に機械的作業を行なうクロットの能力を測定する。TEG(登録商標)止血分析系は試験開始の時点から初期のフィブリン形成まで、凝固速度増大中の単離されない様式、又は静的様式の全血成分の正味の産物として患者止血の全ての段階そして最終的には血小板GPIIb/IIIa受容体によるフィブリン血小板結合及びクロット溶解中のクロット強さを連続的に測定する。
患者止血の全ての段階を同定し、測定する能力が今、例えば、TEG(登録商標)止血分析系により与えられるが、この入手し得るデータを患者止血及び血液療法の処理に使用するのに包括的な処置はない。即ち、患者止血及び血液産物の処理又は医薬療法のための止血アナライザー案内処置はない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
止血(hemostasis)及び血液処理(blood management)、特に心血管処置のための処置として、サンプリング指示、即ち、何時血液サンプルを抜き取るべきか、そして血液サンプルを前処理する方法、種々の凝固障害の同定を可能にする止血分析結果の解釈を助けるための決定樹(decision tree)、及び止血分析結果に関する治療示唆が挙げられる。特に心血管適用と関連して本明細書に記載されるが、その方法及び装置は一般に患者止血及び血液産物使用の処理に止血分析を使用するあらゆる分野に適用可能である。
本発明の実施態様の止血及び血液産物使用の処理のための処置は、クロットの物理的性質を測定するために、止血アナライザー10、例えば、上記トロンベラストグラフ(登録商標)(TEG(登録商標))止血分析系を利用する。例示の止血アナライザー10は上記米国特許第6,225,126号に詳しく記載されており、完全な説明はここでは繰り返されない。しかしながら、図2を参照して、処置の理解を助けるために、止血アナライザー10の簡単な記載が示される。止血アナライザーは血液サンプル13を保持する特別な円筒形カップ12を使用する。カップ12はカップを角度α、好ましくは約4°45'で振動させる駆動メカニズムに結合される。夫々の回転サイクルは10秒続く。ピン14がねじりワイヤ15により血液サンプル13中に懸垂され、ピン14が運動について監視される。回転するカップ12のトルクはフィブリン-血小板結合がカップ12及びピン14を一緒に結合した後にのみ浸漬ピン14に伝達される。これらのフィブリン-血小板結合の強さがピン運動の大きさに影響し、その結果、強いクロットがカップ運動と直接同調してピン14を移動する。こうして、出力の大きさは形成されたクロットの強さに直接関係する。クロットが退縮又は溶解するにつれて、これらの結合が分解され、カップ運動の伝達が減少される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
ピン14の回転運動は機械-電気変換機16により電気信号に変換され、これがプロセッサー32及び制御プログラム34を含むコンピュータ30(図4)により監視し得る。コンピュータ30は電気信号に対し操作可能であり、測定された凝固プロセスに応答する標示グラフ及び一連の数的パラメーター(集約的に、止血プロフィール)を生じる。更に、コンピュータはビジュアルディスプレイを含んでもよく、又は止血プロフィールのビジュアル表示を与えるためにプリンターに結合されてもよい。コンピュータのこのような形態は当業者のスキル内に良くあり、別の成分として示されるが、止血アナライザーと一体化されてもよい。
図3に示されるように、得られる止血プロフィール20は最初のフィブリンストランドが形成されるのに要する時間、クロット形成の動態、クロットの強さ及びクロットの溶解の目安である。下記の表1はこれらの測定されたパラメーターの幾つかの定義を示す。
【0006】
表1

【0007】
勿論、本明細書に記載された処置は上記パラメーター、付加的なパラメーター又は異なるパラメーターを与える止血分析機との使用に適し得る。このような機械は種々の製造業者から市販されている。
図5を参照して、処置100が止血及び/又は血液成分使用の止血アナライザー案内処理についてそこに概説され、また図6を参照して、決定樹200が止血アナライザーにより与えられた結果の解釈を助けるために特定される。心血管処置と関連する特別なサンプリングプロトコルの以下の記載は特別な医療/外科処置のための付加的なサンプリングプロトコルを開発するのに使用し得る例示の例を示す。サンプリングプロトコルが必ず夫々の特別な処置のために開発されること、及び心血管処置について記載されたサンプリングプロトコルがその他の処置、例えば、トラウマ治療又は臓器移植に関して適さないかもしれないことが認められるであろう。
処置におけるサンプリング指示は全ての血液サンプルが低濃度のカオリンで処理されるべきであることを示す。カオリンは血液サンプルの因子XII及び血小板を活性化する制御表面として作用する試薬であり、これは患者止血の全ての段階を測定し、又は低濃度のヘパリンを検出する感度を失わないで速い結果を与える。
本明細書に記載された心血管処置に関して止血及び凝固障害を評価する際の別の事柄はヘパリン効果である。その処置に概説されたサンプリングはヘパリンの存在下及び不在下の患者止血が測定し得るようにヘパリナーゼ−ヘパリンを分解する酵素−の使用を必要とし得る。幾つかのサンプルが分けられ、ヘパリナーゼで分析され、幾つかがヘパリナーゼなしで分析される。この技術を使用して、ヘパリン効果、残留ヘパリン、又はライン汚染があるかどうかを見ることが可能である。両方のサンプルからの結果が同様であり、例えば、両方のR値が通常の限界内にある場合、ヘパリンが有効に反転された。TEG止血アナライザーを使用して、ヘパリナーゼによるRが通常であるが、ヘパリンなしのRが延長される場合、ヘパリンが完全には反転されない。
患者が心血管処置の一部としてヘパリンで処理されなかった場合、凝固障害はヘパリナーゼを用いないサンプルに基づいて評価されるべきであることに注目されたい。TEG(登録商標)止血分析の利点の一つはサンプルがサンプルカップ中で生体内条件を模擬して実験でき、また実験されるべきであることである。こうして、患者がヘパリンによらない場合、止血評価はヘパリナーゼを使用しないサンプルに基づくべきである。
【0008】
図4に概説された例示の心血管サンプリングプロトコル100によれば、サンプルが四つの時点で抜き取られる。
・誘導時の基準線
・復温時(約36℃)
・プロタミンの10分後
・術後
基準線サンプル
患者が手術室に入る時、基準線サンプルが患者止血のため、かつ患者が凝固亢進であり、又は出血する傾向を有するか否かを証明するために測定スティックの開始点として実験される。この標本が二つのアリコート、サンプル1及びサンプル2に分けられる。サンプルの一つがヘパリナーゼを使用して分析され、また一つがヘパリナーゼなしで分析されてヘパリン効果だけでなく、坑トロンビンIII(ATIII)不足についてチェックする。都合良くは、TEG(登録商標)止血分析系が単純なサンプルカップ及びピン(透明カップ)並びにヘパリナーゼで処理されたサンプルカップ及びピン(青色カップ)の使用を可能にする。
ATIII不足はヘパリンが患者又はカップ中のサンプルに投与された場合にヘパリナーゼR及び無ヘパリナーゼRが同じである場合に容易に示される。
ATIII不足は典型的にはATIII又は新しい凍結血漿(FFP)で処理される。患者が凝固亢進である場合、患者が血小板インヒビターで処理されなかった限り、又は出血する傾向を有しない限り、坑繊維素溶解薬が忌避され、その場合にはアプロチニン(トラシロール)が示唆される。
【0009】
復温時
サンプル、即ち、サンプル3が患者の復温時(約36℃)に抜き取られ、その処置中に発生した凝固障害の最大発現を示す。サンプル3は二つの効果:
・患者についての手術のトラウマの効果
・血液が最長の時間にわたってポンプ中にあった時点における止血に関する体外表面の正味の効果
についての止血測定スティックの別のノッチである。
体外装置は、一般に、凝固亢進を軽減するが、オフポンプ冠動脈バイパス(OPCAB)の場合には患者が一層凝固亢進になる。サンプル3からの結果は典型的にはどの薬物製品が必要とされるのか(そして通常この時点で投与されるのか)、またどの血液産物がその後の投与のために注文されるべきであるのかを決めるのに使用される。
サンプル3のMA値は典型的には以下に記載される、プロタミン後のサンプルよりもこの時点で5〜7mm低く、これが結果を評価する場合に考慮されるべきである。これはその値がボーダーラインで低く、血小板(必要とされないかもしれない)が考慮されている場合に特に真実である。
通常、復温値が通常である場合、患者止血は術後に通常であり続けるであろう。しかしながら、患者は依然として残留ヘパリン効果(プロタミン後)、手術出血、又はその後の時点で凝固亢進について監視されるべきである。
【0010】
プロタミン10分後
この時点で、患者がヘパリンを中和するためにプロタミンで処理された。これは残留ヘパリンのチェックとしてのヘパリナーゼの有無の場合のRを比較するのに使用された、分けられたサンプル、サンプル4及び5である。Rがサンプル4及びサンプル5の両方について等しい場合、ヘパリンが有効に中和された。ヘパリナーゼを用いないRがそれを用いるものよりも長い場合、残留ヘパリンがある。
サンプル4及び5はまた基準線サンプルの重要性を示す。何とならば、基準線からの変化の程度が重要であるからである。基準線MAとプロタミン後のMAの間の変化が大きい場合、即ち、高く、そしてボーダーライン輸血誘発値に低下する基準線MAは、その差が小さい場合よりも大きい流出又は出血の予測値であり、それ故、治療に考慮されるべきである。
プロタミン後のサンプルが凝固障害を示す場合、多分、それは患者がバイパスポンプを付けていた間に既に観察されたものと合致する。
術後
術後−集中治療室(ICU)中で1時間−、サンプルが豊富な情報を与える。おそらく、最も重要なことはそれが今までの治療が有効であったかどうかのチェックであることである。また、それは胸管排出及びヘパリンリバウンドの量を評価すべき時点である。凝固亢進の増大があった場合、考慮が血液凝固阻止すべきか否か又は更なる試験を、例えば、2時間間隔で命ずべきか否かについて払われるべきである。
【0011】
止血分析結果が通常に見え、即ち、それらが凝固障害を示さないが、患者が出血している場合、おそらく凝固障害はない。それは多分手術の出血である。しかしながら、考慮がフォン・ビレブランド病又は後天性フォン・ビレブランド因子(VWF)不足について払われるべきである。この場合、クロットは充分に機能性であるが、それは不十分な血小板-内皮下のコラーゲン結合のために、損傷された血管部位に付着し得ない。手術の出血は典型的には手術の出血と関連する出血の一層大きい速度によりVWF不足とは区別し得る。しかしながら、VWF不足を手術の出血と誤診することにおける患者への増大されたリスクのために、患者をFFPもしくは寒冷沈降物(クリオ)(VWFを因子VIIIの部分として有する)で処置して確認し、又はデスモプレシンアセテート(DDAVP)で処置して内皮によるVWFの放出を模擬することを考慮すること。出血がその処理により減少される場合、VWF不足が示される。出血が処理にかかわらず続く場合、手術の出血が示され、FFP又はクリオがいずれの場合にも容積置換に必要とされる。
手術部位が小さい場合、手術の出血は連続の製品輸血で臨床上治療されるかもしれず、この治療は再探索の前に考慮されるべきである。その部位が大きい場合、再探索がその問題を改善するのに必要とされるかもしれない。
【0012】
こうして、本発明の一つの処置に従って、サンプルが多くの時点で抜き取られ、これらのサンプルがカオリンで処理されて迅速な分析結果を得てもよい。ヘパリナーゼ処理サンプル対未処理サンプルの比較はヘパリン効果、残留ヘパリン効果、ヘパリンリバウンド、及びヘパリンの存在下の患者止血の程度を評価する。このサンプリングプロトコルに従うと、患者の止血が手術中の基準線からICUにシフトする際の患者の止血の完全なピクチャーを得る。これらのサンプルは、決定樹200(図6)に対して評価された場合に、発生している凝固障害又は手術の出血の治療に関する付加的な解答を与える。上記サンプリングプロトコルは主として心血管処置と関連する使用に適しているが、決定樹200は凝固障害の診断及び治療への一般的適用可能性を有する。決定樹200は止血アナライザーと関連する案内として実現されてもよい。都合良くは、決定樹200は止血アナライザーの運転を制御するためにコンピュータ30により使用される制御プログラム34の一部として実現されてもよい。また、止血アナライザーは連絡能を含んでもよく、インターネット或いはワイヤード接続及び/又はワイヤレス接続を使用するその他の連絡ネットワークにより、遠隔演算装置、例えば、離れて配置されたコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ等と連絡してもよい。使用し得るリモートコンピュータと連絡するための止血アナライザーの配置が上記米国特許出願第09/974,044号に記載されており、その開示が本明細書に含まれる。
決定樹200は凝固障害を同定することを助け、また腺溶亢進の場合には、一次フィブリン溶解と二次フィブリン溶解を区別し得る。凝固亢進の場合、血小板誘発凝固亢進対酵素凝固亢進を区別し得る止血分析技術を使用することが必要であるかもしれない。TEG止血分析系がこの区別を行なうことを可能にする。
止血分析結果を決定樹200に適用する際に、最初の評価は腺溶亢進についてである。TEG止血分析を使用して、LY30>7.5%の場合に腺溶亢進の指示がある。LY30が未だ入手し得ない場合、EPL−溶解の推定値−がそれに代えて使用されてもよく、15%より大きい値がフィブリン溶解を示す(202)。
サンプルがフィブリン溶解を示す場合、次に凝固指数(CI)が評価される(204)。凝固指数が1より小さい場合、即ち、CI<1(206)の場合、患者は凝固亢進ではなく、これは一次フィブリン溶解である(208)。サンプルがフィブリン溶解を示し、凝固指数が3より大きく(CI>3(210))、凝固亢進を示す場合、それは二次フィブリン溶解である(212)−それは凝固亢進に二次的である。一次フィブリン溶解の測定を行なうことが容易になる−それが二次一次フィブリン溶解(212)ではない場合、それは一次である(210)。
Dダイマー試験がフィブリン溶解を診断するのに頻繁に使用されるが、それは両方の型のフィブリン溶解について上昇した結果を与え、これは極めてリスクがある。それは誤診をもたらし、二次フィブリン溶解を一次と誤診することの患者へのペナルティーは致命的であり得る。例えば、二次フィブリン溶解の誤診はアミカーの如き坑繊維素溶解薬で措置されることを推定のこと。この措置は実際にはクロットを分解するための経路を遮断し、それ故、反復虚血イベントの可能性を増大する。
【0013】
一方、二次フィブリン溶解の誤診が血液凝固阻止薬で措置される場合−患者に一層出血させる−、ペネルティーはそれ程大きくない。継続又は増大した出血は、ヘパリンをプロタミンで中和する際のように、薬物で中和し得る。アミカーの如き坑繊維素溶解薬がその後に与えられて一次フィブリン溶解を治療し得る。
決定樹200の別のブランチでは、LY30<7.5 (202)(腺溶亢進なし)の場合、評価が最初に凝固亢進について行なわれる。3より大きい凝固指数、CI>3(214)は凝固亢進を示す。次の工程は酵素凝固亢進及び血小板凝固亢進を決めることである。TEG(登録商標)止血分析系を使用する場合、Rのチェックが行なわれる。Rが短く、例えば、4分未満である場合(216)、それは酵素的である(220)。加えて、Rが短く(216)、血小板機能が高く、MAが高く、73mmより大きい(218)場合、それは高酵素反応及び高血小板活性化のためである(222)。一方、Rが通常であり、MAが高い場合、凝固亢進は高血小板機能のためである(224)。アスピリンの如き血小板インヒビター、プラビクスの如きADPインヒビター、又はPeoPro、インテグリリン、及びアッグラスタットの如きGPIIb/IIIaインヒビターによる治療が指示される。
CI<3(214)−凝固亢進ではない−、かつRが延長され、10分より大きい(226)場合、最初の優先事項はRを標準化することである。この長いRは凝固障害又は低率のトロンビン形成をもたらす血液希釈からの低凝固因子(228)のためであり、これは血小板を活性化し、可溶性フィブリノーゲンをフィブリンに開裂する。最良の治療は凝固因子のためのFFPである。Rが通常であり−凝固亢進ではない−、かつMAが<45mm(230)であり、低血小板機能(232)を示す場合、典型的な治療はDDAVP又は血小板の1単位によるものである。MA<48mmの場合、血小板が以下に記載されるように適当に投与されるべきである。R及びMAが通常であることが明らかであるが、αが低い(α<45°、234)場合、クリオで処理することにより低フィブリノーゲンレベル(236)について修正することができ、これは高濃度のフィブリノーゲンを含むだけでなく、高濃度の因子VIII及び因子XIIIを有する。
【0014】
或る状況では、Rが血液希釈のためにプロタミン後にわずかに延長し得る。このような場合には、患者が通常出血しておらず、治療が必要とされない。止血分析結果が通常であるが、患者が依然として流出している場合、それは次第に減少されるべきである。
決定樹200は評価基準を論理的様式で取り決め、系統的様式で、凝固障害診断に達するのに使用される。全ての止血パラメーターは相互依存性であり、患者の臨床状態及び出血状態に加えて、パラメーターを互いに対して評価して、凝固障害が存在するかどうか、それがどの凝固障害であるのか、及びそれを治療する方法を決めることが必要である。図7はこの最後の工程で補助するためのプロトコルの一部であり得る治療案内300を示す。
図7を参照して、治療案内300は止血分析結果に基づいて指針及び治療示唆を与える。パラメーターの夫々により示される止血プロセスの部分を知ることはサンプルの止血状態をもたらし、こうして、パラメーターの大きさを知ることは凝固障害のレベルを示す。これを同定したので、次いで正しい用量における適切な治療が一層決め易くなる。
説明として、決定樹を使用して、10mm以上のR値は低凝固因子を示す。治療案内300はそれに拡張して、11〜14のRがわずかに低い凝固因子を示し、2単位のFFPで処理されるべきであることを示すが、R>14は凝固因子の一層ひどい不足を示し、その2倍−4単位のFFPで処理されるべきである。
同様に、55mm未満のMA値は低血小板機能を示し、MAの三つのカテゴリーが増大するレベルの血小板機能不全について示され、それに応じて治療を増やす。わずかに低いレベルはDDAVP、1単位の血小板で治療でき、又は全く治療されない。何とならば、患者自体の血小板が回復することを単に待つことが可能であり得るからである。
【0015】
治療案内300は既に存在し、又は手術中及び手術後に発生する凝固障害を治療する方法に特別な指針を与える。凝固障害の程度は報告された止血分析値の大きさにより評価でき、治療がこれらの値に基づいて決められ、調節される。
決定樹200及び治療案内300は治療を対象に投与する前に潜在的な治療プロトコルを試験するのに更に使用し得る。提案された治療の効力は医薬製品又は血液製品をin vitroで血液サンプルに添加することにより試験し得る。治療プロトコルの先のin vitro評価がin vivoの患者止血に関する効力の指示を与え得る。この様式で、止血及び血液製品用量が最初にサンプリングプロトコルに従って試験し、決定樹に基づいて凝固障害を測定し、治療案内に鑑みて治療を同定することにより処理される。次いで提案治療がin vitroで試験されて効力を確かめ得る。治療後のサンプリング及び試験プロトコルが理解されるであろう。
本発明が幾つかの好ましい実施態様に関して記載された。当業者は本発明がその正当な範囲(これは特許請求の範囲に示される)から逸脱しないでそれ以外に具体化し得ることを認めるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】血小板凝集のメカニズムを示すグラフ図である。
【図2】本発明の好ましい実施態様の血液凝固アナライザーの略図である。
【図3】図2に示された血液凝固アナライザーにより生じた止血プロフィールを示すプロットである。
【図4】患者止血及び血液製品の処理又は医薬療法のための装置を示すブロック図である。
【図5】患者止血の処理及び血液療法のための止血アナライザー案内処置のためのサンプリング処置を示す表である。
【図6】患者止血の処理及び血液療法を案内するための止血アナライザーとの使用のための処置を示すフローチャートである。
【図7】止血分析結果に基づいて指針及び治療示唆を与える治療案内を示す表である。
【符号の説明】
【0017】
10−止血アナライザー
12−円筒形カップ
13−血液サンプル
14−ピン
15−ねじりワイヤ
16−機械-電気変換機
20−止血プロフィール
30−コンピュータ
32−プロセッサー
34−制御プログラム
100−処置
200−決定樹
300−治療案内

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置の経過中の止血及び血液産物処理のための方法であって、その方法が
複数の血液サンプルを医療処置の対象から得る工程(複数の血液サンプルの一種以上が多くの時点で抜き取られる)、
複数の血液サンプルの夫々を止血分析にかけて夫々の血液サンプルと関連する止血パラメーターを得る工程、
結果分析基準を得る工程、
止血パラメーターを結果分析基準に従って評価して評価結果を得る工程、及び
評価結果に基づいて止血及び血液処理プロトコルを選択する工程
を含むことを特徴とする止血及び血液産物処理のための方法。
【請求項2】
結果分析基準を得る工程が結果分析基準を論理的に系統化することを含み、かつ止血パラメーターを結果分析基準に従って評価する工程が論理的に取り決められた結果分析基準に従って評価結果を決めることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
コンピュータ制御止血分析装置を用意する工程を更に含み、その止血分析装置がメモリー及びデータ分析可能なプロセッサーを含み、メモリーが結果分析基準を含み、止血パラメーターを評価する工程がプロセッサーにより行なわれる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
複数の血液サンプルを止血分析にかける工程が止血分析装置により行なわれる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
止血分析装置が止血パラメーターを得、結果分析基準が止血分析装置から離れた位置にあり、その方法が止血パラメーターをその位置に連絡することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
止血パラメーターを連絡する工程が止血パラメーターをインターネットにより連絡することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
止血パラメーターを連絡する工程が止血パラメーターをワイヤード連絡リンク及びワイヤレス連絡リンクの一つにより連絡することを含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
医療処置が心血管医療処置を含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
結果分析基準が止血処理を案内するための決定樹を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
決定樹が止血パラメーターを得るのに使用される止血アナライザーのコントローラー内で実現される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
止血パラメーターを得るための止血アナライザー、
止血アナライザーと関連する決定樹(その決定樹は凝固障害を止血パラメーターと関連づける分析基準を含む)
を含むことを特徴とする止血及び血液処理のための装置。
【請求項12】
止血アナライザーがコントローラー、制御プログラム及びメモリーを含み、決定樹が制御プログラム内に包含され、コントローラーが制御プログラムに応答して操作可能であり、凝固障害を止血パラメーターに関連づける、請求項11記載の装置。
【請求項13】
コンピュータ、制御プログラム及びメモリーを更に含み、決定樹が制御プログラム内に包含され、コンピュータが制御プログラムに応答して操作可能であり、凝固障害を止血パラメーターに関連づける、請求項11記載の装置。
【請求項14】
連絡リンクがコンピュータ及び止血アナライザーを結合する、請求項13記載の装置。
【請求項15】
連絡リンクがワイヤード連絡リンク及びワイヤレス連絡リンクの一つを含む、請求項14記載の装置。
【請求項16】
連絡リンクが連絡ネットワークを含む、請求項14記載の装置。
【請求項17】
止血パラメーターを血液サンプルから測定するための装置、
分析結果を得るために止血パラメーターを分析基準に対して分析するための装置、及び
止血及び血液処理プロトコルを分析結果に基づいて同定するための装置
を含むことを特徴とする止血及び血液処理のための装置。
【請求項18】
止血パラメーターを分析するための装置が決定樹を含む、請求項17記載の装置。
【請求項19】
分析するための装置及び同定するための装置が制御プログラムを含むコンピュータを含み、制御プログラムが決定樹を実現するアルゴリズムを含む、請求項17記載の装置。
【請求項20】
測定するための装置、分析するための装置及び同定するための装置を結合する連絡リンクを含む、請求項17記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−501477(P2006−501477A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−541851(P2004−541851)
【出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2003/030710
【国際公開番号】WO2004/031723
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(505121361)ヒーモスコープ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】