説明

正倒立ポンプ機構およびポンプ式製品

【課題】正倒立用の各移動弁を用いた正倒立ポンプ機構において、正倒立変更後も、変更前の移動弁と弁座との吸着が継続する場合に、この吸着状態を積極的に解除する。
【解決手段】流入通路選択作動部10,11と上流弁作用部3a,8との間にピストン4の移動に応じて容積が変化するシリンダ内上流側収納空間域22を設けて、放出操作の際に、上流側収納空間域の内容物を流入通路選択作動部に逆流させる(B方向)。また、正立状態から図示の倒立状態への変更にともない、開口部11aの方へ落下する移動弁14が、正立時、弁座10bに当接していた移動弁13に衝突するようにした。内容物逆流作用や移動弁衝突作用により、倒立状態への変更初期に弁座10bに吸着されたままの移動弁13は図示下方に落下し、放出操作終了の際の容器内部からシリンダ内下流側空間域21への内容物流入経路(D方向の流路)が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部と連動するピストンのシリンダ内での移動に基づく弁作用により当該シリンダ内の下流側収納空間域・収納空間域の内容物を外部空間に放出するポンプ作動部と、
前記シリンダへの正立流入通路および、第1の移動弁の自重に基づく落下によって当該正立流入通路の一部を開閉する第1の弁構造ならびに、当該シリンダへの倒立流入通路および、第2の移動弁の自重に基づく落下によって当該倒立流入通路の一部を開閉する第2の弁構造を備えた流入通路選択作動部と、
からなる正倒立ポンプ機構に関する。
【0002】
この正倒立ポンプ機構において正常な内容物放出動作が担保されるためには、第1,第2の各移動弁が容器の正立・倒立状態に応じる形で確実に落下してそれぞれの弁作用部分の開閉状態を真正に切り換えることが必要とされ、本発明はこのような要請に応えるものである。
【0003】
なお、本明細書における「上」,「下」の語はポンプ式製品の正立状態(図1,図2,図3,図7参照)における位置関係のものとしている。
【0004】
したがって、ポンプ式製品の倒立状態を示す図4,図5,図6,図8における実際の上下位置と、明細書中の「上」,「下」を付した用語(例えば上側ピストン部材,下側ピストン部材,上側ブッシュ,下側ブッシュ,上方ボール弁,下方ボール弁など)の上下の概念とは逆の関係になっている。ただし、「上流」および「下流」の用語は容器本体の内容物が外部空間に放出される際の全体的な流れにおけるものであり、ポンプ式製品の正立/倒立に依存しない。
【0005】
また、「静止モード」とは操作ボタンがその初期位置(上動位置)に保持されて容器内容物が外部空間に放出されない状態のことであり、「操作モード」とは操作ボタンが押圧されてその初期位置から移動している状態のことである。
【背景技術】
【0006】
上述の、操作部と連動するピストン(ステム)のシリンダ内での移動に基づくポンプ作動部と、シリンダへの正立流入通路の一部を開閉する第1の弁構造および当該シリンダへの倒立流入通路の一部を開閉する第2の弁構造からなる流入通路選択作動部と、を備えた正倒立ポンプ機構は、本件出願人がすでに提案している(特許文献1参照)。
【0007】
ここで、ポンプ作動部のピストンには下流弁作用部が形成され、シリンダの内容物流入側には上流弁作用部が形成されている。そして周知のポンプ作動により、下流弁作用部と上流弁作用部との間のシリンダ内部に収納されている内容物が、操作部の次の押圧操作時に外部空間へ放出される。
【0008】
流入通路選択作動部の第1,第2の弁構造はそれぞれ自重で落下する移動弁とそれを受ける弁座とからなっている。また、各弁座には開口部が形成されている。
【0009】
この正倒立ポンプ機構の正立モードでは第2の弁構造が閉状態となって倒立流入通路とシリンダとの間が遮断され、また、倒立モードでは第1の弁構造が閉状態となって正立流入通路とシリンダとの間が遮断される。
【0010】
第1,第2の弁構造は、ポンプ式製品の正倒立状態の選択的設定に応じて、その一方が「開」に移行すれば他方が「閉」に移行するといった形のいわばシーソー的な動作変化を呈する。
【特許文献1】特開2005−288210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本件出願人は、上述の正倒立ポンプ機構を備えたポンプ式製品の動作を検証したところ、その内容物放出状態が不安定(例えば内容物である液の吸い上げや噴射ができない)になるケースを確認した。
【0012】
そして正倒立ポンプ機構の内部構造などの考察の結果、この不安定さの原因として、上述の流入通路選択作動部における第1,第2の弁構造の各移動弁がポンプ容器の正立・倒立の変更に応じる形で確実に落下していないことを知見するにいたった。
【0013】
すなわち、ポンプ容器をその正倒立の(任意の)一方の状態から他方の状態に変更したときに、当該変更前までは弁座に当接し閉状態となっていた移動弁が変更後も当該弁座に吸着されて閉状態のままに保持される事例がみられた。
【0014】
この吸着現象の発生理由としては、正倒立変更前に移動弁と弁座との間の当接部分近傍に存在していた内容物の正倒立変更後の表面張力や、移動弁と弁座との当接部分近傍における内容物の定着化,固化などが考えられる。
【0015】
移動弁の吸着状態がポンプ容器の正倒立変更後も継続すると、本来は当該移動弁が落下してその弁座との間が「開」状態に変化して操作ボタン押圧後の復帰動作の際に容器本体の内容物がピストン収容のシリンダ内部(=シリンダ内の下流弁作用部と上流弁作用部との間の内容物収納空間域)に流入する、といった次の必須動作ステップが阻止されることになる。なお、この内容物収納空間域に収納されている内容物が次回の操作時に外部空間へ放出される。
【0016】
この内容物の流入動作が阻止される結果、次の放出動作のために必要な内容物が容器本体からシリンダ内部の内容物収納空間域に供給されず、放出動作不良の要因となってしまう。
【0017】
本発明は、正倒立ポンプ機構において、
(11)上記内容物収納空間域の構成要素である上流弁作用部を、特許文献1のようにシリンダの内容物流入側ではなく、シリンダ内を移動するピストンに形成することにより、シリンダ内部のピストン上流側に内容物収納域としての空間域を確保し、
(12)上記流入通路選択作動部における第1,第2の移動弁および第1,第2の弁座を、正倒立変更後に弁座の方に落下してくる一方の移動弁が正倒立変更前の状態で弁座に吸着したままの他方の移動弁に衝突する、
態様のものである。
【0018】
そして、これら(11),(12)の各態様に応じ、
(21)操作モード設定時のピストンの移動でシリンダ内上流側空間域の内容物が第1,第2の移動弁に向かって(本来の流れとは逆方向に)駆動され、このときのいわば逆流の勢いにより、正倒立変更前の吸着状態のままの移動弁は吸着解除の方向へと押されて自重で落下し、
(22)移動弁同士の衝突により、正倒立変更前の吸着状態のままの移動弁はその吸着が解除されて自重で落下していく。
【0019】
本発明は、このように正倒立変更前の吸着状態が継続している移動弁を、操作モード設定操作にともなう当該移動弁側への内容物の逆流や、正倒立変更にともなう本来の落下作動を呈する他の移動弁からの衝突力で吸着解除して落下させ、これにより正倒立ポンプ機構の流入通路選択作動部の正立流入通路および倒立流入通路それぞれに設けられた各弁構造の誤作動をなくす、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、以上の課題を次の正倒立ポンプ機構を用いて解決する。
(1)操作部(例えば後述の操作ボタン1)と連動するピストン(例えば後述のピストン4)のシリンダ(例えば後述のシリンダ5)内での移動に基づく弁作用により当該シリンダ内の下流側収納空間域(例えば後述のシリンダ内下流側空間域21)の内容物を外部空間に放出するポンプ作動部と、
前記シリンダへの正立流入通路および、第1の移動弁(例えば後述の下方ボール弁14)の自重に基づく落下によって当該正立流入通路の一部を開閉する第1の弁構造(例えば後述の弁座11b)ならびに、当該シリンダへの倒立流入通路および、第2の移動弁(例えば後述の上方ボール弁13)の自重に基づく落下によって当該倒立流入通路の一部を開閉する第2の弁構造(例えば後述の弁座10b)を備えた流入通路選択作動部と、からなる正倒立ポンプ機構であって、
前記ピストンは、
前記弁作用を呈する上流弁作用部(例えば後述の横孔部3a,筒状弁部材8)および下流弁作用部(例えば後述の横孔部2a,環状弁部材7)のそれぞれを備え、
前記シリンダは、
前記上流弁作用部の上流側の内部空間に、前記正立流入通路および前記倒立流入通路のそれぞれと連通し、かつ前記ピストンの移動に応じて容積が変化する上流側収納空間域(例えば後述のシリンダ内上流側空間域22)を備え、
操作モード設定操作時の前記ピストンの移動により、前記上流弁作用部が閉じた状態で、前記上流側収納空間域の内容物が前記正立流入通路および前記倒立流入通路の側に逆送される、形にする。
(2)上記(1)において、
前記第1の弁構造および前記第2の弁構造は、
全体として、前記第1の移動弁に対する第1の開口部(例えば後述の開口部11a)が形成された第1の弁座と、前記第2の移動弁に対する第2の開口部(例えば後述の開口部10a)が当該第1の開口部と対向する形で形成された第2の弁座とを有し、
当該第1の開口部および当該第2の開口部それぞれの大きさおよび、当該開口部同士の間隔が、
正立状態と倒立状態の変更にともなって、当該開口部の方に落下する当該第1または当該第2の移動弁の一方が当該変更前の落下位置に残ったままの当該第1または当該第2の移動弁の他方に衝突する態様に設定された、形にする。
(3)操作部(例えば後述の操作ボタン1)と連動するピストン(例えば後述のピストン31)のシリンダ(例えば後述のシリンダ5)内での移動に基づく弁作用により当該シリンダ内の収納空間域(例えば後述のシリンダ内空間域33)の内容物を外部空間に放出するポンプ作動部と、
前記シリンダへの正立流入通路および、第1の移動弁(例えば後述の下方ボール弁14)の自重に基づく落下によって当該正立流入通路の一部を開閉する第1の弁構造(例えば後述の弁座11b)ならびに、当該シリンダへの倒立流入通路および、第2の移動弁(例えば後述の上方ボール弁13)の自重に基づく落下によって当該倒立流入通路の一部を開閉する第2の弁構造(例えば後述の弁座10b)を備えた流入通路選択作動部と、からなる正倒立ポンプ機構において、
前記第1の弁構造および前記第2の弁構造は、
全体として、前記第1の移動弁に対する第1の開口部(例えば後述の開口部11a)が形成された第1の弁座と、前記第2の移動弁に対する第2の開口部(例えば後述の開口部10a)が当該第1の開口部と対向する形で形成された第2の弁座とを有し、
当該第1の開口部および当該第2の開口部それぞれの大きさおよび、当該開口部同士の間隔が、
正立状態と倒立状態の変更にともなって、当該開口部の方に落下する当該第1または当該第2の移動弁の一方が当該変更前の落下位置に残ったままの当該第1または当該第2の移動弁の他方に衝突する態様に設定された、形にする。
【0021】
本発明は、以上の構成からなる正倒立ポンプ機構および、これを備えたポンプ式製品を対象としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、このように正倒立変更後も変更前の吸着状態が継続している移動弁を、操作モード設定操作にともなう当該移動弁側への内容物の逆流や、正倒立変更にともなう本来の落下作動を呈する他の移動弁からの衝突力で、吸着解除している。
【0023】
そのため、正倒立ポンプ機構のシリンダ(ポンプ作動部)への流入通路選択作動部の正立流入通路および倒立流入通路それぞれに設けられた各弁構造の誤作動をなくすことができる。
【0024】
その結果、操作モードから静止モードへの復帰にともなうシリンダ内の下流側収納空間域・収納空間域(=次回の放出対象内容物の収納空間域)への容器本体側からの内容物供給動作が確実に行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1乃至図8を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0026】
ここで、
図1は、正倒立ポンプ機構(その1)を備えたポンプ容器全体の正立静止モードを示し、
図2は、図1の正倒立ポンプ機構の拡大図を示し、
図3は、正倒立ポンプ機構(その1)の正立操作モードを示し、
図4は、正倒立ポンプ機構(その1)の倒立静止モード(図1の正立静止モードのときと同じように上方ボール弁13が上側ブッシュ10の弁座10bに吸着したままの状態)を示し、
図5は、正倒立ポンプ機構(その1)の倒立操作モードの初期状態を示し、
図6は、正倒立ポンプ機構(その1)の倒立操作モードから倒立静止モードへの復帰途中を示し、
図7は、正倒立ポンプ機構(その2)の正立静止モードを示し、
図8は、正倒立ポンプ機構(その2)の倒立静止モードを示している。
【0027】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば放出口1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0028】
図1〜図6の正倒立ポンプ機構(ポンプ式製品)お主たる構成要素は、後述のように操作ボタン1,ピストン4(=上側ピストン部材2+下側ピストン部材3),シリンダ5,コイルスプリング6,環状弁部材7,筒状弁部材8,シリンダカバー9,上側ブッシュ10,下側ブッシュ11,ブッシュカバー12,上方ボール弁13,下方ボール弁14である。
【0029】
その他の構成要素としては、チューブ15,容器本体16,シール部材17,パッキン18およびネジキャップ19がある。
【0030】
図1〜図6において、操作ボタンおよびこれの押圧操作により下流側収納空間域の内容物を外部空間に放出するポンプ作動用の構成要素に関し、
1は押下げタイプで上下動可能な操作ボタン(操作部),
1aは内容物の放出口,
1bは当該放出口にいたる操作ボタン内部通路,
2は操作ボタン1と一体化された鞘状の上側ピストン部材(ステム),
2aは後述の環状弁部材7との間で下流弁の作用を呈する複数の横孔部,
2bは当該横孔部の外側に形成された環凹状部,
2cは当該横孔部と連通した上側ピストン部材内部通路,
3は上側ピストン部材2に嵌合した鞘状の下側ピストン部材,
3aは後述の筒状弁部材8との間で上流弁の作用を呈する複数の横孔部,
3bは当該横孔部と連通した下側ピストン部材内部通路,
3cは当該下側ピストン部材の外周面に形成されて後述のシリンダ5の小径下部内周面に密接する逆スカート部,
4は上側ピストン部材2および下側ピストン部材3からなるピストン,
5は内容物通過・収納用の内部空間域を有してピストン4が大径の上部空間および小径の下部空間を上下動するシリンダ,
5aは底部に形成された内容物通過用の縦孔部,
5bは大径上部外周面に複数形成されて内容物や外気の通路となる縦溝状部,
5cは上端面に複数形成されて内容物や外気の通路となる横溝状部,
6はシリンダ5の底面段部と下側ピストン部材3との間に配設されてピストン3を上方向に付勢するコイルスプリング,
7はシリンダ5の内周面と密接する状態で上側ピストン部材2の環凹状部2bに取り付けられてその内側の横孔部2aとの間で下流弁の作用を呈する環状弁部材,
8は下側ピストン部材3の外周面に取り付けられてその横孔部3aとの間で上流弁の作用を呈する筒状弁部材,
をそれぞれ示している。
【0031】
シリンダ5への正立流入通路および倒立流入通路を選択的に設定する流入通路選択作動用の構成要素に関し、
9はシリンダ5の下側外周面に嵌合して後述のシリンダ内下流側空間域21への内容物流入通路を形成するための筒状のシリンダカバー,
9aはシリンダ5の底面部分の一部と当接してこれを保持する天面部分,
9bは当該天面部分から中央下方に続いて後述の上方ボール弁13の移動範囲を規制するブロック状部,
9cは当該ブロック状部の底面側に形成されて倒立状態における上方ボール弁13を保持する擂鉢状の受け部,
9dは当該シリンダカバーの外周面から当該ブロック状部の底面側へといたる倒立時の流入通路,
9eは当該シリンダカバーの上側内周面(シリンダ5の外周面と対向する内周面)およびその下側部分から外周面側へと連通する態様で形成されて内容物や外気の通路となる縦方向溝状部,
9fは上側外周面に形成された環鍔状部分,
10はシリンダカバー9のブロック状部9bに受け部9cおよび流入通路9dを挟む形で嵌合して後述の上方ボール弁13が内部空間に配設される筒状の上側ブッシュ,
10aは後述の倒立時用ブッシュ内空間域24の出口および正立時の上方ボール弁13のいわば収納空間として作用する開口部,
10bは当該開口部の回りに形成されて正立時の上方ボール弁13を受ける環テーパ状の弁座,
10cは外周面に複数形成されてシリンダカバー9の内周面に当接する縦方向リブ,
11はシリンダカバー9の下端側内周面に嵌合して後述の下方ボール弁14が配設される筒状の下側ブッシュ,
11aは後述の正立時用ブッシュ内空間域25の出口および倒立時の下方ボール弁14のいわば収納空間として作用する開口部,
11bは当該開口部の回りに形成されて倒立時の下方ボール弁14を受ける環テーパ状の弁座,
12は下側ブッシュ11の下側外周面に嵌合して下方ボール弁14の移動範囲を規制する筒状のブッシュカバー,
12aは正立時の下方ボール弁14を保持する擂鉢状の受け部,
12bは下側の小径筒状部,
12cは当該小径筒状部から上方に続く正立時の流入通路,
13はシリンダカバー9(ブロック状部9b)および上側ブッシュ10により特定される空間域に配設された上方ボール弁,
14は下側ブッシュ11およびブッシュカバー12により特定される空間域に配設された下方ボール弁,
をそれぞれ示している。
【0032】
ここで、上方ボール弁13および下方ボール弁14の直径は上側ブッシュ10および下側ブッシュ11の開口部10a,11aのそれよりも大きく設定されている。
【0033】
これらの数値は例えば、
・開口部10a,11aの直径は1.8mm〜3.5mmであり、
・上方ボール弁13および下方ボール弁14の直径は2.38mm〜3.97mm(3/32インチ〜5/32インチ)であり、
・上方ボール弁13および下方ボール弁14の重さは0.05g〜0.25gであり、
・開口部10aと開口部11aとの距離(弁座10bの下端面部分と弁座11bの上端面部分との距離)は0.1mm〜0.5mmである。
【0034】
その他の構成要素に関し、
15はブッシュカバー12の小径筒状部12bにはめ込まれた内容物流入用のチューブ,
16は各種内容物が収納された容器本体,
17はシリンダ5の上端面と後述のネジキャップ19とに挟持されて内端部分が下方に弾性変位可能な形で上側ピストン部材2の外周面に密接している環状のシール部材,
18はシリンダカバー9の環鍔状部分9fと容器本体16の上端面との間に挟持された環状のパッキン,
19は容器本体16を除く各構成要素と一体化された形で容器本体首部の外周面と螺子結合している筒状のネジキャップ,
をそれぞれ示している。
【0035】
シリンダ5,シリンダカバー9,ブッシュカバー12などの内部に形成される空間域に関し、
21はシリンダ内部空間の下流域(横孔部3aよりも下流側の空間域)であって次回の放出対象となる内容物が収納されたシリンダ内下流側空間域,
22はシリンダ内部空間の上流域(縦孔部5aから横孔部3aまでの空間域)であってシリンダ内下流側空間域21と連通可能なシリンダ内上流側空間域,
23はシリンダ5の縦孔部5aと上側ブッシュ10および下側ブッシュ11の各開口部10a,11aとの間に縦方向リブ10cの横空間部分を通る態様で形成された正立時・倒立時それぞれの共用流入空間域,
24はシリンダカバー9と上側ブッシュ10との間に形成された倒立時用ブッシュ内空間域,
25は下側ブッシュ11とブッシュカバー12との間に形成された正立時用ブッシュ内空間域,
26は上方ボール弁13,下方ボール弁14とこれに当接(密接)する弁座10b,11bとの隙間部分であって上述の表面張力作用や内容物固化等作用の対象範囲となるブッシュ内隙間空間域,
をそれぞれ示している。
【0036】
また、内容物や外気の流れ方向に関し、
Aは操作ボタン1の押圧操作にともなってシリンダ内下流側空間域21の内容物が外部空間に放出される、正立時および倒立時に共通する内容物流出方向,
Bは操作ボタン1の押圧操作にともなってシリンダ内上流側空間域22の内容物が上側ブッシュ10および下側ブッシュ11の各開口部10a,11aへ送られる、正立時および倒立時に共通する内容物移動方向(逆流方向),
Cは操作ボタン1の押圧操作解除にともなって容器本体16の内容物がシリンダ内下流側空間域21に供給される、正立時の内容物流入方向,
Dは操作ボタン1の押圧操作解除にともなって容器本体16の内容物がシリンダ内下流側空間域21に供給される、倒立時の内容物流入方向,
Eは操作ボタン1の押圧操作解除にともなって外部空間の空気が容器本体16の内部に供給される、正立時および倒立時に共通する外気流入方向,
をそれぞれ示している。
【0037】
ここで、
・A方向の内容物流出ルートは「シリンダ内下流側空間域21−横孔部2a−上側ピストン部材内部通路2c−操作ボタン内部通路1b−放出口1a」であり、
・B方向の内容物逆流ルートは「シリンダ内上流側空間域22−縦孔部5−共用流入空間域23−開口部10a,11a」であり、
・C方向の内容物流入ルートは「チューブ15−正立時用ブッシュ内空間域25−開口部11a−共用流入空間域23−縦孔部5a−シリンダ内上流空間域22−下側ピストン部材内部通路3b−横孔部3a−シリンダ内下流側空間域21」であり、
・D方向の内容物流入ルートは「シリンダカバー流入通路9d−倒立時用ブッシュ内空間域24−開口部10a−共用流入空間域23−縦孔部5a−シリンダ内上流空間域22−下側ピストン部材内部通路3b−横孔部3a−シリンダ内下流側空間域21」であり、
・E方向の外気流入ルートは「操作ボタン1とネジキャップ19との間の通路域−上側ピストン部材2の外周面とシール部材17との間−シリンダ5の横溝状部5c−シリンダ5の縦溝状部5b−容器本体内部」である。
【0038】
上述の操作ボタン1,上側ピストン部材2,下側ピストン部材3,シリンダ5,シリンダカバー9,上側ブッシュ10,下側ブッシュ11,ブッシュカバー12,チューブ15およびネジキャップ19は、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のものである。容器本体16は合成樹脂製や硝子製のものである。
【0039】
なお、コイルスプリング6,上方ボール弁13および下方ボール弁14は金属製や合成樹脂製のものである。また、環状弁部材7,筒状弁部材8,シール部材17およびパッキン18はゴム製や合成樹脂製のものである。
【0040】
図1乃至図6の正倒立ポンプ機構の基本的特徴は、
(31)操作ボタン1の押圧操作にともなうピストン4の下動により、(前回の押圧操作終了の際に)シリンダ内上流側空間域22に収納済みの内容物が共用流入空間域23を経て上側ブッシュ10および下側ブッシュ11の各開口部10a,11aにいたるB方向に逆流すること、
(32)ポンプ式製品の正倒立変更時に、上方ボール弁13および下方ボール弁14の中でその受け部9c,12aから新たに弁座10b,11bの側へ落下するボール弁が、当該変更前の弁座との当接状態(吸着状態)に保持されたままになっている他方のボール弁に衝突すること、
である。
【0041】
この内容物逆流作用およびボール弁衝突作用により、正倒立状態変更前の弁座との当接状態に保持(吸着)されたままの上方ボール弁13または下方ボール弁14を、積極的に駆動して、その受け部9c,12aの方へ落下させるものである。
【0042】
すなわち、図1などの正立状態では下方ボール弁14がブッシュカバー12の受け部12aに落下し、図4などの倒立状態では上方ボール弁13がシリンダカバー9の受け部9cに落下する。
【0043】
このような正倒立状態変更時の被吸着ボール弁に対する駆動落下作用により、正立状態または倒立状態のいずれの場合にも、容器本体16の内部から上側ブッシュ10/下側ブッシュ11および共用流入空間域23を経てシリンダ5の縦孔部5aにいたるC方向,D方向の内容物流入通路が確実に担保される。
【0044】
図1〜図6の正倒立ポンプ機構は上述の内容物逆流作用およびボール弁衝突作用の双方を呈する形になっているが、これら作用の何れか一方のみからなる態様の正倒立ポンプ機構も本発明の対象範囲である。なお、図7,図8の正倒立ポンプ機構はボール弁衝突作用のみが生じる態様である。
【0045】
図1および図2の正立静止モードでは、
(41)環状弁部材7が上側ピストン部材2の横孔部2aを、筒状弁部材8が下側ピストン部材3の横孔部3aをそれぞれ塞いで、ピストン4の下流弁および上流弁がともに閉じ、
(42)上方ボール弁13が上側ブッシュ10の弁座10bに当接し、
(43)下方ボール弁14がブッシュカバー12の受け部12aに当接した、
状態になっている。
【0046】
そして、容器本体16の内部から筒状弁部材8までの通路域(チューブ15−正立時用ブッシュ内空間域25−共用流入空間域23−シリンダ内上流側空間域22−下側ピストン部材内部通路3b−横孔部3aからなる空間域)およびシリンダ内下流側空間域21には、それぞれ内容物が連続する状態で収納されている。
【0047】
これは、上述したように、前回の操作ボタン1の押圧状態からの復帰動作時におけるポンプ機構の周知の吸引作用に基づく。すなわち当該復帰動作にともなうシリンダ内下流側空間域21の容積増加にともなってそこでの圧力が下がり、その結果、横孔部3aおよび筒状弁部材8の上流弁が開いて容器本体16の内容物が上記通路域を経てシリンダ内下流側空間域21に流入する、すなわちC方向ルートで流入するためである。
【0048】
図1の状態の操作ボタン1が押圧されてこれと一体のピストン4がコイルスプリング5の上方向への付勢力に抗しながら下動すると、環状弁部材7も、その外端部分をシリンダ5の内周面に密接させて、上側ピストン部材2の環凹状部2bに挟まれた内端側を図3のように変形させながら下方向に移動する。
【0049】
このピストン4の下動および環状弁部材7の変形に基づいて、下流弁作用部である横孔部2aは開状態となり、下側ピストン部材3はその逆スカート部3bがシリンダ5の下側小径部分の内周面と確実に密接した状態で下方に移動していく。
【0050】
そして、この下側ピストン部材3のシリンダ小径部分への移動量に応じて、シリンダ内下流側空間域21の容積が減少して当該空間域の内容物の圧力が増加する。
【0051】
その結果、図3に示すように、上流弁作用部である横孔部3aが筒状弁部材8によって閉状態に維持されたまま、
(51)シリンダ内下流側空間域21の内容物はA方向ルートの流れによって外部空間に放出され、
(52)シリンダ内上流側空間域22の内容物は、「縦孔部5−共用流入空間域23」を経て上側ブッシュ10および下側ブッシュ11の各開口部10a,11aにいたるB方向ルートの流れによって送り出される。
【0052】
上述したように、操作ボタン1の押圧操作時にこのシリンダ内上流側空間域22の内容物を上側ブッシュ10および下側ブッシュ11の方に逆流させる(戻す)ことが、本発明の特徴の一つである。
【0053】
すなわち下方ボール弁14が、図示(図1〜図3)の状態とは違って前回の倒立使用時のままで、下側ブッシュ11の弁座11bに吸着している状態のときは、この内容物のB方向への逆流によって下方ボール弁14が押されて吸着状態は解除される。そして下方ボール弁14は落下し、図示のようにブッシュカバー12の受け部12aに保持される。
【0054】
図3の点線C,Eは、操作ボタン1の押圧解除時に、容器本体16からシリンダ内下流側空間域21へ供給される内容物の流入方向および、外部空間から容器本体16へ供給される外気の流入方向をそれぞれ示している。
【0055】
C方向のいわば内容物充填流が生じるのは、操作ボタン1の押圧解除にともなってピストン4がコイルスプリング6の付勢作用により上方向に復帰し、シリンダ内下流側空間域21およびシリンダ内上流側空間域22それぞれの容積が増加してそこでの内容物圧力が低下するからである。このとき、筒状弁部材8の下部分が内容物充填流の作用で外側に押されて、上流弁作用部の横孔部3aはシリンダ内下流側空間域21と連通する。
【0056】
またE方向のいわば外気充填流が生じるのは、シリンダ内下流側空間域21へ容器本体16の内容物が供給されるのにともない、容器本体の空気層部分の容積が増加して容器内空気圧力が外気圧力よりも低下するからである。
【0057】
図4はポンプ式製品を正立状態から倒立状態へと変更した後の様子(倒立静止モード)を示している。
【0058】
ここで上方ボール弁13は、正立状態のときと同様の位置にあり、上側ブッシュ10の弁座10bに保持(吸着)された形になっている。
【0059】
このときの作用力としては、概略、弁座10bと上方ボール弁13との間に挟まれたブッシュ内隙間空間域26に残留する液体内容物の表面張力や、当該空間域に入っていた内容物が定着化,固化したときの保持力などが考えられる。なお、主たる作用が表面張力に基づいていつ場合は、この残留液体内容物の(倒立状態における)直上流側空間(上側ブッシュ内部空間)に空気層が存在している。
【0060】
また、正立状態のときブッシュカバー12の受け部12aに保持されていた下方ボール弁14は、自重で図示矢印方向に落下して上方ボール弁13に当たる。
【0061】
なお、後述の図7および図8の正倒立ポンプ機構を備えた製品においても正倒立変更後の良好な内容物放出動作の検証結果が得られている。
【0062】
この検証結果からすれば、図4の弁座10bに吸着したままの上方ボール弁13も下方ボール弁14との衝突により落下する事象が十分に期待できる。
【0063】
ただ、図1〜図6の正倒立ポンプ機構では、操作ボタン1の押圧操作時のボール弁側へのB方向の内容物逆流に基づく被吸着ボール弁の落下作用の点に一義的に着目して説明する。
【0064】
この内容物逆流による落下作用が、正倒立変更後の上方ボール弁13と下方ボール弁14との間での衝突を生じ得ない構造になっている正倒立ポンプ機構にも妥当する、のは勿論である。
【0065】
図5は図4の倒立状態の操作ボタン1を押圧した初期状態を示している。この押圧にともなうピストン4の(図5における上方向への)移動により、上述したように、シリンダ内上流空間域22の内容物がB方向に逆流して上方ボール弁13および下方ボール弁14をそれぞれ弁座10a,11aから離す方向に駆動する。
【0066】
その結果、上方ボール弁13はシリンダカバー9の受け部9cに落下して保持され、下方ボール弁14は少し離れてから自重で弁座11aに落下し、これにより本来の(操作ボタン押圧解除時の)D方向の内容物流入ルートが確保される。
【0067】
また、図5の倒立操作モードにおいて、上述したように、シリンダ内下流側空間域21の内容物がA方向に流れて外部空間に放出されることは勿論である。
【0068】
図6は倒立操作モードの終了途中、すなわち利用者が操作ボタン1の押圧操作を止めた後のコイルスプリング6の弾性力に基づくピストン復帰途中の状態を示している。
【0069】
図示のピストン復帰動作では、下流弁作用部の横孔部2aが環状弁部材7によって閉じられ、上流弁作用部の横孔部3aは開状態に移行している。
【0070】
横孔部3aが「開」となるのは、容器本体側からの内容物流入によりシリンダ内上流側空間域22での内容物圧力が増加して、筒状弁部材8の横孔部対応部分が自らの弾性に抗しながら外側に広がるためである。
【0071】
すなわち、シリンダ内上流側空間域22の容積が増加してそこの内容物圧力が低下し、これにより容器本体16の内容物がD方向ルートでシリンダ内上流空間域22へと流入して筒状弁部材8への押圧力も大きくなるからである。図示の筒状弁部材8はまだシリンダ5の内周面(小径部分)に当接している。
【0072】
そしてピストン4がさらに(図6における下方向へ)復帰して筒状弁部材8がシリンダ5の小径部分から離れると、シリンダ内上流空間域22への上記流入内容物が横孔部3aを経てシリンダ内下流空間域21に入りこむ。
【0073】
最終的には双方の空間域21,22の内容物圧力がバランスした状態で、筒状弁部材8は初期状態に弾性復帰して横孔部3aを閉じる。その結果、閉空間からなるシリンダ内下流空間域21の中に次の放出対象内容物が収納された状態、すなわち静止モードへと移行する。
【0074】
図7および図8は、正倒立変更時の(変更前のままの)ボール弁吸着状態を解除するための方策として、もっぱら上方ボール弁13と下方ボール弁14との衝突作用を採る正倒立ポンプ機構を示している。この正倒立ポンプ機構では操作ボタン1の押圧操作時にシリンダ内上流空間域22の内容物をボール弁に逆流させる構成を採用していない。
【0075】
図1〜図6の正倒立ポンプ機構との基本的な違いは、シリンダ内部空間域に対する上流弁作用部(図1〜図6の場合は横孔部3aと筒状弁部材8)がピストンではなくシリンダに取り付けられていることである。
【0076】
すなわち上流弁作用部は移動せず、そのため図1〜図6の正倒立ポンプ機構におけるピストン4の移動に応じて容積が変化するシリンダ内上流空間域22が存在しない。
【0077】
図7および図8で新たに用いる参照番号は次の通りであり、その他の参照番号は図1〜図6と同じものを用いる。
【0078】
図7および図8において、
5’はシリンダ5と同様の機能を備えたシリンダ,
5a’は後述のシリンダ底側鞘状部32の上外周面を保持する筒状部,
5b’は筒状部5a’からその下部外側の径方向にシリンダ内周面まで延びてコイルスプリング6’の受け作用を呈するリブ,
6’はコイルスプリング6と同様の機能を備えたコイルスプリング,
7’は環状弁部材7と同様の機能を備えた環状弁部材,
8’は筒状弁部材8と同様の機能を備えた筒状弁部材,
31は操作ボタン1と一体化された鞘状のピストン(≒上側ピストン部材2),
31aは環状弁部材7’との間で下流弁の作用を呈する複数の横孔部,
31bは当該横孔部の外側に形成された環凹状部,
31cは当該横孔部と連通したピストン内部通路,
32はシリンダ5’の下開口部に取り付けられたシリンダ底側鞘状部,
32aは縦方向内部通路,
32bは当該縦方向内部通路と連通して筒状弁部材8’との間で上流弁の作用を呈する複数の横孔部,
33はシリンダ5’,シリンダ底側鞘状部32とピストン31との間に形成されるシリンダ内空間域,
A’は内容物流出方向Aと同様のルートについての、正立時および倒立時に共通する内容物流出方向,
C’は内容物流出方向Cと同様のルートについての、正立時の内容物流入方向,
D’は内容物流出方向Dと同様のルートについての、倒立時の内容物流入方向,
をそれぞれ示している。
【0079】
ここで、
・A’方向の内容物流出ルートは「シリンダ内空間域33−横孔部31a−ピストン内部通路31c−操作ボタン内部通路1b−放出口1a」であり、
・C’方向の内容物流入ルートは「チューブ15−正立時用ブッシュ内空間域25−開口部11a−共用流入空間域23−縦方向内部通路32a−横孔部32b−シリンダ内空間域33」であり、
・D’方向の内容物流入ルートは「シリンダカバー流入通路9d−倒立時用ブッシュ内空間域24−開口部10a−共用流入空間域23−縦方向内部通路32a−横孔部32b−シリンダ内空間域33」である。
【0080】
上述のシリンダ5’,ピストン31およびシリンダ底側鞘状部32は、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどの合成樹脂製のものである。
【0081】
なお、コイルスプリング6’は金属製や合成樹脂製のものであり、環状弁部材7’および筒状弁部材8’はゴム製や合成樹脂製のものである。
【0082】
図7,図8の正倒立ポンプ機構の場合、図1〜図6の正倒立ポンプ機構における下側ピストン部材3が捨象され、これの代わりにシリンダ底側鞘状部32を設けた形態になっている。そのため、操作ボタン1の押圧操作時に上記B方向の内容物の逆流が生じることはない。
【0083】
図7の正立状態のポンプ式製品を図8のように倒立させた場合には下方ボール弁14が落下する。
【0084】
そのため、この倒立状態への変更後も上方ボール弁13が正立時のまま、すなわち上側ブッシュ10の弁座10bに当接(吸着)したままであっても、下方ボール弁14が上方ボール弁13に衝突して当該上方ボール弁を弁座10bからシリンダカバー9の受け部9cへと落下させる。
【0085】
この上方ボール弁13の落下により、操作ボタン1の放出操作解除時の容器本体内部からシリンダ内空間域33へのD’方向の内容物流入ルートが確保される。
【0086】
ポンプ式製品を図8の倒立状態から図7の正立状態に変更する場合も、図7から図8へのシフトのときと同じように、自重で落下する上方ボール弁13が、倒立時のままで下側ブッシュ11の弁座11bに当接(吸着)したままの下方ボール弁14に衝突してこれを弁座11bからブッシュカバー12の受け部12aへと落下させる。
【0087】
図7の正立静止モードおよび図8の倒立静止モードにおける操作ボタン1の押圧が解除されると周知のように、ピストン31がコイルスプリング6’の弾性力により初期状態に復帰する。
【0088】
この復帰動作にともなって、容器本体6からシリンダ内空間域33までのC’方向またはD’方向のルートによる内容物流入および、外部空間から容器本体16までのE方向のルートによる外気流入がそれぞれ生じる。
【0089】
なお、操作部は押下げタイプの操作ボタンに限定されないことは勿論である。例えば操作部を、トリガータイプ(回動タイプ)の操作レバーやチルトタイプ(傾斜タイプ)の操作ボタンなどにしてもよい。
【0090】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0091】
容器本体に収納する内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0092】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0093】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0094】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0095】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0096】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0097】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0098】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】正倒立ポンプ機構(その1)を備えたポンプ容器全体の正立静止モードを示す説明図である。
【図2】図1の正倒立ポンプ機構を拡大した状態を示す説明図である。
【図3】正倒立ポンプ機構(その1)の正立操作モードを示す説明図である。
【図4】正倒立ポンプ機構(その1)の倒立静止モード(図1の正立静止モードのときと同様上方ボール弁13が上側ブッシュ10の弁座10bに吸着したままの状態)を示す説明図である。
【図5】正倒立ポンプ機構(その1)の倒立操作モードの初期状態を示す説明図である。
【図6】正倒立ポンプ機構(その1)の倒立操作モードから倒立静止モードへの復帰途中を示す説明図である。
【図7】正倒立ポンプ機構(その2)の正立静止モードを示す説明図である。
【図8】正倒立ポンプ機構(その2)の倒立静止モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0100】
1:押圧タイプの操作ボタン
1a:内容物の放出口
1b:操作ボタン内部通路
2:上側ピストン部材
2a:複数の横孔部
2b:環凹状部
2c:上側ピストン部材内部通路
3:下側ピストン部材
3a:複数の横孔部
3b:下側ピストン部材内部通路
3c:逆スカート部
4:ピストン
5:シリンダ
5a:縦孔部
5b:縦溝状部
5c:横溝状部
6:コイルスプリング
7:環状弁部材
8:筒状弁部材
9:シリンダカバー
9a:天面部分
9b:ブロック状部
9c:受け部
9d:倒立時の流入通路
9e:縦方向溝状部
9f:環鍔状部分
10:上側ブッシュ
10a:開口部
10b:弁座
10c:縦方向リブ
11:下側ブッシュ
11a:開口部
11b:弁座
12:ブッシュカバー
12a:受け部
12b:小径筒状部
12c:正立時の流入通路
13:上方ボール弁
14:下方ボール弁
15:チューブ
16:容器本体
17:シール部材
18:パッキン
19:ネジキャップ
21:シリンダ内下流側空間域
22:シリンダ内上流側空間域
23:共用流入空間域
24:倒立時用ブッシュ内空間域
25:正立時用ブッシュ内空間域
26:ブッシュ内隙間空間域
A:正立時および倒立時に共通する外部空間への内容物流出方向
B:正立時および倒立時に共通する内容物移動方向(逆流方向)
C:正立時のシリンダ内部への内容物流入方向
D:倒立時のシリンダ内部への内容物流入方向
E:正立時および倒立時に共通する外気流入方向,
【0101】
(図7,図8のみで使用)
5’:シリンダ
5a’:筒状部
5b’:リブ
6’:コイルスプリング
7’:環状弁部材
8’:筒状弁部材
31:ピストン
31a:複数の横孔部
31b:環凹状部
31c:ピストン内部通路
32:シリンダ底側鞘状部
32a:縦方向内部通路
32b:複数の横孔部,
33:シリンダ内空間域,
A’:正立時および倒立時に共通する外部空間への内容物流出方向,
C’:正立時のシリンダ内部への内容物流入方向,
D’:倒立時のシリンダ内部への内容物流入方向,

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と連動するピストンのシリンダ内での移動に基づく弁作用により当該シリンダ内の下流側収納空間域の内容物を外部空間に放出するポンプ作動部と、
前記シリンダへの正立流入通路および、第1の移動弁の自重に基づく落下によって当該正立流入通路の一部を開閉する第1の弁構造ならびに、当該シリンダへの倒立流入通路および、第2の移動弁の自重に基づく落下によって当該倒立流入通路の一部を開閉する第2の弁構造を備えた流入通路選択作動部と、からなる正倒立ポンプ機構であって、
前記ピストンは、
前記弁作用を呈する上流弁作用部および下流弁作用部のそれぞれを備え、
前記シリンダは、
前記上流弁作用部の上流側の内部空間に、前記正立流入通路および前記倒立流入通路のそれぞれと連通し、かつ前記ピストンの移動に応じて容積が変化する上流側収納空間域を備え、
操作モード設定操作時の前記ピストンの移動により、前記上流弁作用部が閉じた状態で、前記上流側収納空間域の内容物が前記正立流入通路および前記倒立流入通路の側に逆送される、
ことを特徴とする正倒立ポンプ機構。
【請求項2】
前記第1の弁構造および前記第2の弁構造は、
全体として、前記第1の移動弁に対する第1の開口部が形成された第1の弁座と、前記第2の移動弁に対する第2の開口部が当該第1の開口部と対向する形で形成された第2の弁座とを有し、
当該第1の開口部および当該第2の開口部それぞれの大きさおよび、当該開口部同士の間隔が、
正立状態と倒立状態の変更にともなって、当該開口部の方に落下する当該第1または当該第2の移動弁の一方が当該変更前の落下位置に残ったままの当該第1または当該第2の移動弁の他方に衝突する、態様に設定されたものである、
ことを特徴とする請求項1記載の正倒立ポンプ機構。
【請求項3】
操作部と連動するピストンのシリンダ内での移動に基づく弁作用により当該シリンダ内の収納空間域の内容物を外部空間に放出するポンプ作動部と、
前記シリンダへの正立流入通路および、第1の移動弁の自重に基づく落下によって当該正立流入通路の一部を開閉する第1の弁構造ならびに、当該シリンダへの倒立流入通路および、第2の移動弁の自重に基づく落下によって当該倒立流入通路の一部を開閉する第2の弁構造を備えた流入通路選択作動部と、からなる正倒立ポンプ機構において、
前記第1の弁構造および前記第2の弁構造は、
全体として、前記第1の移動弁に対する第1の開口部が形成された第1の弁座と、前記第2の移動弁に対する第2の開口部が当該第1の開口部と対向する形で形成された第2の弁座とを有し、
当該第1の開口部および当該第2の開口部それぞれの大きさおよび、当該開口部同士の間隔が、
正立状態と倒立状態の変更にともなって、当該開口部の方に落下する当該第1または当該第2の移動弁の一方が当該変更前の落下位置に残ったままの当該第1または当該第2の移動弁の他方に衝突する、態様に設定されたものである、
ことを特徴とする正倒立ポンプ機構。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の正倒立ポンプ機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−143617(P2009−143617A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325230(P2007−325230)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】