説明

歩み下駄

【課題】 より歩き易い健康になる履物を提供する。
【解決手段】 本発明によって提供される履物A1は、上面に足載せ面11を有する足載せ部材10と、足載せ部材10の下面に前後方向に隣接するようにして設けられた複数の硬質の接地片21、22、23、24、25、26とを備えており、足載せ部材10は、外力によって上に凹に湾曲変形可能である一方、各接地片21、22、23、24、25、26は、前後方向の側面と、下面の各接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aとを備えるとともに、各接地片21、22、23、24、25、26における隣接する接地片の側面に対向する各側面には、相互に当接しうる当接面40a、40bが形成されており、各接地片21、22、23、24、25、26の各当接面40a、40bが相互に当接するとき、各接地片21、22、23、24、25、26の各接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aが同一の略水平面内にあるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下駄、草履、スリッパ、サンダル等の簡易な履物に関し、特に、湾曲可能に形成されることでより歩き易くなるように工夫されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような湾曲可能な履物としては、特許文献1及び2に記載されているような履物が知られている。図6にこのような履物の概略側面図を示す。
【0003】
図7に示す履物Xは、足載せ部材910と、足載せ部材910の下面に設けられた複数の硬質の接地片920と、足載せ部材910の上面に配置された鼻緒930とを備えている。足載せ部材910は、外力によって変形可能なように形成されている。複数の接地片920は、足載せ部材910の下面にそれぞれ所定の間隔を隔てて、前後方向に沿って並列に設けられている。足載せ部材910が湾曲可能であり、かつ、複数の接地片920が互いに一定の間隔を隔てて並んでいるので、履物Xは、外力によって上に凸にも、下に凹にも湾曲変形可能となっている。
【0004】
上記構成の履物Xによれば、平坦な地面を歩行する時、足の踏み出し時においては、まず踵付近が最初に地面に接し、接地面が前方に拡大するようにして、次第に足裏全体が接地していき、次いで、地面を後方に蹴るときにおいては、踵付近が最初に地面から離れ、足裏の後方部から前方部にかけて、次第に地面から離れるという、素足で歩行した場合の足裏の変形と対応した足載せ面の変形を達成することが出来るため、歩行感覚が良くなり疲れも少ない。
【0005】
しかしながら、この履物Xは、下に凹にも変形することが出来るので、この履物Xを履いた状態で、地面の小石などの突起物を踏んだ場合には、下に凹となるように大きく変形してしまう。この場合、足裏に違和感があり、足裏に力を入れてうまく地面を蹴ることが出来ないなど、歩行感覚が非常に悪くなってしまうし、履物が脱げ易くなるという欠点がある。また、鼻緒に大きな力が掛かり、これが切れてしまい易いという欠点もある。
【0006】
【特許文献1】実開昭59−189501号公報
【特許文献2】実開昭61−25361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より快適に歩行可能な履物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供される履物は、上面に足載せ面を有する足載せ部材と、上記足載せ部材の下面に前後方向に隣接するようにして設けられた複数の硬質の接地面とを備えており、上記足載せ部材は、外力によって上に凹に湾曲変形可能である一方、上記各接地片は、前後方向の側面と、下面の書く接地面とを備えているとともに、上記各接地片における隣接する接地片の側面に対向する各側面には、相互に当接しうる当接面が形成されており、上記各接地片の上記各当接面が相互に当接するとき、上記各接地片の各接地面が同一の略水平面内にあるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、上記の履物は、外力によって上に凹に湾曲変更可能であり、なおかつ、上記各接地片の各当接面が相互に当接するので、外力によって下に凹に湾曲変形不可能となっている。このため、この履物を履いて平坦な地面を歩く際に、素足で歩行した場合の足裏の変形と対応した上記足載せ面の変形を達成することができ、歩行感覚が良くなり疲れも少なくなる。さらに、この履物を履いて突起物を踏んでも、下に凹となるように変形しないので、足裏に違和感が生じにくく、歩行感覚が良好に保たれ、上記履物が脱げにくくなっている。したがって、この履物を履いて平坦ではない道を歩く際にも、快適に歩くことが出来る。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記各接地片の側面に形成された当接面は、これが形成される側面の少なくとも上下方向の一部の範囲に形成されている。このような構成によれば、上記当接面は上記各接地片の側面の一部でよいので、上記各接地片の実施可能な形状の幅が広がり、例えば軽量化を実現する事が出来る。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記足載せ部材の上面は、畳状の表層材によって被覆されている。このような構成によれば、上記足載せ部材の上面で足が滑りにくく、さらに、履き心地が良くなる。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記足載せ面には、鼻緒が取り付けられている。このような構成によれば、足の親指と人差し指で上記鼻緒を挟むだけで履く事が出来、脱ぐのも容易である。また、この場合、この履物を履いて突起物を踏んでも、下に凹に湾曲することがないので、足裏に違和感がなく歩行感覚が優れることに加え、鼻緒に過大な張力が掛かることが無いので、鼻緒が切れてしまうといったことも無い。
【0013】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照にして具体的に説明をする。
【0015】
図1は、本発明に係る履物の第1の実施形態を示す斜視図である。図1に示す履物A1は、足載せ部材10、複数の接地片21、22、23、24、25、26、及び鼻緒30で構成されている。なお、以下の説明において、図1における右方を履物A1の前側とし、左方を履物A1の後側とする。この履物A1を履いて平坦な地面に真っ直ぐに立っている時の履物A1の状態を図2に側面図で示しており、この履物A1を履いて平坦な地面を歩行している状態を図3と図4に側面図で示している。図3には、踵から着地して足を踏み出し始める状態を示しており、図4には、爪先で地面を後方に蹴って踏み出す状態を示している。図2〜4においては、足及び地面を仮想線で示している。また、図5には、履物A1を履いて階段を歩いている状態を側面図で示している。
【0016】
足載せ部材10は、その上面に足載せ面11を備えており、下面側にゴム層12を備えている。足載せ面11は、履物A1を履くときに足を載せる面であり、畳目状に編まれた竹の皮によって覆われている。ゴム層12は、所定の弾力を有するゴムにより形成されており、その上面側に足載せ部材10が接着されている。この足載せ部材10は、所定の力が加わると、図3または図4に示すように前後方向に沿って上に凹に湾曲し、加わっている力が無くなれば、自己の持つ復元力及びゴム層12の弾力によって図2の状態に戻る。
【0017】
接地片21、22、23、24、25、26は、それぞれの上面がゴム層12の下面側に前後方向に沿って、順に連続して接着されており、それぞれの下面側に接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aを備えている。接地片21、22、23、24、25、26は、例えば、桐材などの硬質軽量の素材で形成されており、各々の下端付近はゴムで付着されている。また、接地片21、22、23、24、25のそれぞれの後側の側面全体が当接面40aとして形成されている。さらに、この当接面40aと向かい合う当接面40bが、接地片22、23、24、25、26のそれぞれの前側の側面全体に形成されている。図2の状態においては、向かい合う当接面40a、40bがそれぞれ当接しており、接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aがいずれも地面に対して水平となっている。一方、図3または図4のように、履物A1が湾曲している状態においては、当接面40a、40bはそれぞれ離間しており、接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aが異なる向きに傾いている。接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aは、上記ゴムで付着されているので、床または地面に接する際の衝撃を和らげる事が出来る。この接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aを覆うゴムの表面に凹凸を形成すると、歩行の際に滑るのを防ぐことが出来るので、より快適に歩けるようになる。なお、図1〜5に示す実施形態においては、最も前方に位置する接地片21の接地面21aの前方側には、前方に向うほど上に退避するように、なだらかな凸状の湾曲部21a´が形成されている。
【0018】
鼻緒30は、足載せ部材10の前端付近に、上下に伸びる部分と、この部分から足載せ部材10の後端付近の左右の端へ向けて伸びる部分とで構成されている。上下に伸びる部分を親指と人差し指とで挟み、左右の端へ向けて伸びる部分を足の甲に引っ掛けることで、履物A1を足に引っ掛けることが出来る。このように、鼻緒30に足を引っ掛けるだけで履物A1を容易に履くことが可能であり、また、容易に脱ぐことができる。
【0019】
次に、履物A1の作用について説明する。
【0020】
このような履物A1を履いて平坦な地面を歩行するに際し、足の踏み出し時においては、まず、図3に示すように、最も後方に位置する接地片26の接地面26aが最初に地面に接地し、続いて接地面25aが設置するというように、接地面26a、25a、24a、23a、22a、21aが順に接地していく。次いで、地面を後方に蹴る時においては、最も後方に位置する接地片26の接地面26aが最初に地面から離れ、最後に図4に示すように最も前方に位置する接地片21の接地面21aが地面から離れる。したがって、履物A1においては、素足で歩行した場合の足裏の変形と対応した足載せ面11の変形を達成することが出来、歩行感覚が良くなり、疲れも少ない。図に示す実施形態においては、最も前方の接地片21の接地面21aに、なめらかな凸状の湾曲面21a´を形成しているので、最後に接地面21aで地面を蹴る時、違和感なく蹴る力を最後まで地面に伝えることが出来、歩行感覚がより良くなる。
【0021】
さらに、履物A1は、図2に示す状態から、下に凹に湾曲しない構造になっているので、履物A1を履いて小石などの突起物を踏んでも、足載せ面11が変形せず、足裏に違和感を覚えにくく、快適に歩くことが出来る。また、足載せ面11が足裏から大きく離れるように変形しないので、履物A1が歩行中に脱げにくくなっている。また、足載せ面11が下に凹に湾曲して、鼻緒30に過大な張力が作用することも無いので、鼻緒30が切れてしまうといったことも無い。
【0022】
さらに、この履物A1は、階段を昇り降りする場合の歩行感覚が快適となる。すなわち、図5に示すように、足先部分を階段に載せて踏み込む力を作用させる場合、足載せ面11が略水平に保たれるので、この履物A1の後方部が階段からずれ落ちる危険が無く、効果的に踏み込む力を作用させることが出来、安全に階段を昇ることが出来る。逆に、階段を降りる場合において、足の後方部のみが階段に乗っていても、足載せ面11が水平に保たれるので、足の前方部が階段からずれ落ちると言った危険は無く、安全に階段を降りることが出来る。
【0023】
図6に、本発明に係る履物の第2の実施形態を側面で示している。図6に示す履物A2は、接地片21、22、23、24、25、26の形状が異なっている以外は、履物A1と同様の構成を備えている。接地片21の後側の側面21b、接地片22の後側の側面22c、接地片23の後側の側面23c、接地片24の後側の側面24c、及び、接地片25の後側の側面25cの下半分に、当接面40aが形成されている。この当接面40aと向かい合う当接面40bが、接地片22の前側の側面22b、接地片23の前側の側面23b、接地片24の前側の側面24b、接地片25の前側の側面25b、及び、接地片26の前側の側面26bの下半分に形成されている。これらの当接面40a、40bは、側面21b、22b、22c、23b、23c、24b、24c、25b、25c、26bに対して、前方または後方に所定の厚みだけ突出している。図6に示すように、向かい合う当接面40a、40bが当接するとき、接地面21a、22a、23a、24a、25a、26aがいずれも水平な地面に接している。したがって、履物A2は、履物A1と同様に、下に凹に湾曲しないようになっている。さらに、接地片21、22、23、24、25、26として、履物A1の場合に比べて体積が小さく軽量のものを用いているので、履物A2は軽量化されており、足への負担が軽減される。
【0024】
なお、側面21b、22b、22c、23b、23c、24b、24c、25b、25c、26bにおける当接面40a、40bの位置や大きさは自在に変形可能である。例えば、当接面40a、40bが側面21b、22b、22c、23b、23c、24b、24c、25b、25c、26bの上側や中央付近に配置されていても構わない。
【0025】
本発明に係る履物は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る履物の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。例えば、足載せ部材10、接地片21、22、23、24、25、26、鼻緒30の素材は、市販されている履物に使用されているもの、つまり、どのようなものでも構わない。さらに、接地片の数、及び大きさも適宜変更可能である。なお、上記実施形態では、足を引っ掛けるために鼻緒30を用いた下駄を示しているが、サンダルのようにバンド状のものや、スリッパのように袋状になっている履物であっても、本発明は実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る履物の第1の実施形態を示す斜視図
【図2】図1の履物を履いて直立した状態を示す側面図
【図3】図1の履物を履いて歩行中に踵を地面に置いた状態を示す側面図
【図4】図1の履物を履いて歩行中に爪先で地面を蹴る状態を示す側面図
【図5】図1の履物を履いて階段を歩く状態を示す側面図
【図6】本発明に係る履物の第2の実施形態を示す側面図
【図7】従来の履物を示す断面図
【符号の説明】
【0027】
A1、A2 履物
10 足載せ部材
11 足載せ面
12 ゴム層
21、22、23、24、25、26 接地片
21a、22a、23a、24a、25a、26a 接地面
21a´ 湾曲面
21b、22b、22c、23b、23c、24b、24c、25b、25c、26b 側面
30 鼻緒
40a、40b 当接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に足載せ面を有する足載せ部材と、上記足載せ部材の下面に前後方向に隣接するようにして設けられた複数の硬質の接地片とを備えており、上記足載せ部材は、外力によって上に凹に湾曲変形可能である一方、上記各接地片は、前後方向の側面と、下面の各接地面とを備えているとともに、上記各接地片における隣接する接地片の側面に対向する各側面には、相互に当接しうる当接面が形成されており、上記各接地片の上記各当接面が相互に当接する時、上記各接地片の各接地面が同一の略水平面内にあるように構成されていることを特徴とする、履物。
【請求項2】
上記各接地片の側面に形成された当接地面は、これが形成される側面の少なくとも上下方向の一部の範囲に形成されている、請求項1に記載の履物。
【請求項3】
上記足載せ部材の上面は、畳状の表層材によって被覆されている。請求項1または2に記載の履物。
【請求項4】
上記足載せ面には、鼻緒が取り付けられている、請求項1ないし3のいずれかに記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−188190(P2008−188190A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25069(P2007−25069)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(306048801)
【Fターム(参考)】