説明

歩行器

【課題】 立ち上がりや着座の補助を可能として、容易に歩行の姿勢に移ることを支援すると共に、安全に歩行訓練を行うことがてきる歩行器を提供すること。、
【解決手段】歩行者の体を支えることにより、歩行を補助する歩行器において、歩行器の器体を平行四辺形のリンク構造として、ハンドルフレーム4が上下及び前後に平行移動できる構成として、歩行者の立ち上がりや着座を容易にしてリハビリ機会を広げると共に、歩行中の歩行者の体を保持する保持ベルト14を備えて安全な歩行を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や足腰のフ不自由な人、脳梗塞、リウマチ等によって歩行が困難となった人等の使用に適した歩行器に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や足腰の不自由な人、脳梗塞、リウマチ等で歩行が困難となった人等が歩行のリハビリを行う際には、補助器具として歩行器が用いられる。この歩行器は、歩行者の前方と両側面を囲んだ4脚の脚立状(例えば、非特許文献1参照)や、フレームの下部に車輪を備えて構成されたもの(例えば、非特許文献2参照)がある。
これらは、歩行者の体を安定させながら歩行について補助するようになっている。
【0003】
以下、図9、図10により従来の歩行器について説明する。
図9においては、4脚の脚立状の歩行器で、歩行者の前方と両側面を囲んだ一体構造の剛体フレームで、歩行者が握るハンドルフレームの高さは歩行時に適した高さに設定し固定されている。
【0004】
図10においては、フレームの下部に車輪を備え、歩行者の前方と両側面を囲んだ一体構造の剛体フレームで、歩行者が握るハンドルフレームの高さは歩行時に適した高さに設定し固定した構成である。
【非特許文献1】福祉用具便利帳vol4 ウェルファン株式会社 2007.10P52
【非特許文献2】福祉用具便利帳vol4 ウェルファン株式会社 2007.10P51
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の歩行器では、一体構造の剛体フレームであるから、歩行者が握る歩行器のハンドルフレームは歩行時に適した高さに設定した高さにある。
例えば、ベッド等に着座した歩行者が歩行器のハンドルフレームを掴んで立ち上がるには、歩行器のハンドルフレームの高さは歩行に適した高さに設定されているので、高すぎて立ち上がるには適当な高さでない。又立ち上がり時には歩行者の両側面の囲いが歩行者にまで届かないので、立ち上がり時に歩行者の姿勢が不安定になる、等の問題で立ち上がりには必ず介助者の支援が必要とされる。
また例えば、歩行器からベッド等に着座する時にも、立ち上がりの時と同様な不安定な状態であるから、介助者の支援を必要とするのである。
この時の介助者の支援は、抱きかかえの姿勢を要し介助者にとっても、大きな負担を強いているという問題があった。
又、従来の歩行器では、歩行者の前方と両側面の3方をガードしているが、後方のガードが無いので、歩行器で歩行中の歩行者が突然の膝折れ等で転倒するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の歩行器が有する問題を解決しようとするもので、単に歩行の補助をするのみでなく、歩行者の立ち上がりや着座についても安全で且つ容易に行えるように補助して、リハビリ効果を上げると共に、介助者の負担を軽減することができる歩行器を提供することを目的とする。
又、歩行者の前方と両側面をガードするだけの従来の方式の歩行器において、発生する歩行中の転倒事故を防止できる歩行器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本第1発明の歩行器は、車輪を設けたベースフレームと歩行者が握るハンドフレームと、これらのフレームを支える左右支柱とを、回転関節で接合した平行四辺形のリンク構造として、操作レバーでハンドフレームが前後及び上下に平行移動し、クランプで固定できる機構で構成することを特徴とする。
【0008】
また、第2発明の歩行器は、上記の平行四辺形のリンク構成の中に駆動装置を設けて、平行四辺形リンク機構の変形を駆動装置で行ったり、該平行四辺形リンク機構の変形を駆動装置の制動力で阻止固定する駆動装置を備えたことを特徴とする。
【0009】
又、歩行者の前方及び両側面の3方をガードする歩行器のハンドフレームの後方端部に、歩行者の体を保持するベルトを備えることを特徴とする。
【0010】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。この歩行器は、車輪を備えたベースフレームを平行四辺形リンクの下辺とし、歩行者が握るハンドルフレームを平行四辺形リンクの上辺、両側面の支柱を平行四辺形リンク機構の垂辺とし、これらの接合部を回転関節で結合した平行四辺形のリンク構造で構成する。
従って、例えば着座した歩行者が立ち上がるには、平行四辺形リンクの作用でハンドフレームの高さを下げて立ち上がりに適当な高さに調整できると同時に、歩行者の両側面をガードした位置まで近接する作用がある。
歩行者がハンドルフレームを握って立ち上がる動作に合わせて、操作レバーを押して支柱リンクを立てると、ハンドフレームは平行四辺形リンクの作用で、高くなると同時に前方に移動するので、安全で且つ容易に歩行者の立ち上がりを補助する作用がある。
【0011】
歩行者が着座する際にも、操作レバーのクランプを解除して、操作レバーを持ち上げると平行四辺形リンク機構の作用で、ハンドルフレームの高さが下がると同時に、後方に移動して歩行者を安全に且つ容易に着座の補助をする作用がある。
【0012】
そして、第2の課題解決手段による作用は、歩行器を構成する平行四辺形のリンク機構に駆動装置を設けて、該駆動装置によってリンクを駆動装置で変形させて上下と同時に前後移動したり、適当な位置に駆動装置の制動力で阻止固定するので、ハンドルフレームの位置を歩行者にとって最も適した位置に無段階に設定して、歩行者の立ち上がりや着座を更に安全に行うことができる作用がある。
【0013】
第3の課題解決手段による作用は、歩行器で歩行中の歩行者のガードを、ハンドルフレームによる前方と両側面の3方をガードし更に、歩行者の後方をベルトで支えるので、歩行中の膝折れや転倒を防止の作用がある。
そして、第2の手段による駆動装置による着座においては、本補助ベルトに体重を預けらので、歩行者の着座の姿勢が保持でき安全で容易に着座できる作用がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0015】
この歩行器は、図1及び図2に示すように両側に車輪1及び前後に自在キャスター2を備えたコの字型のベースフレーム3と、上部に対向してコの字型のハンドルフレーム4と、これら上下のフレーム3と4を支持する複数の支柱5で構成し、支柱5は、下支柱5−1と上支柱5−2に分割して、それぞれの接合は回転関節6で接合した平行四辺形のリンク構成である。
【0016】
従って、ベースフレーム3に取り付ける下支柱5−1の回転関節6のピッチaは下支柱5−1と上支柱5−2を接合する中間リンク7の長さは同じピッチaとし、ハンドルフレーム4の上支柱5−2を取り付ける回転関節6の寸法もピッチa寸法としてある。
【0017】
又、左右2個の下支柱5−1はすべて同一サイズbで下平行四辺形のリンク機構を構成し、左右2個の上支柱5−2もすべて同一サイズcとして上平行四辺形のリンク機構として、上下2つの平行四辺形のリンク機構を構成する。
【0018】
そして、前側の下支柱5−1−1と後側の上支柱5−2−1の中間部をクロスリンク8で回転関節で接合し下平行四辺形リンク機構と上平行四辺形リンク機構の反転リンクとして構成している。
【0019】
操作レバー9は、前側の上支柱5−2の回転関節の軸6−1に取り付けられている。操作レバー9の先端には、クランプ10を設けてありベースフレーム3を掴むキャッチャー機構で構成している。
【0020】
操作レバー9のクランプ10がベースフレーム3を掴んだ状態では、ハンドルフレーム4は上点に固定していて、歩行者は立位の歩行状態にある。
【0021】
クランプ10を解除して、操作レバー9を持ち上げると、上支柱5−2を後方に押しハンドルフレーム4は後方に移動するので、上平行四辺形のリンク機構の作用で下方に平行移動すると同時に、クロスリンク8で下支柱5−1−1を前方に押して下平行四辺形が平行移動して、クロスリンク8が中間リンク7のストッパー11に当って固定され図3の着座の状態になる。
【0022】
従って、ハンドルフレーム4は前方に傾く下平行四辺形のリンク機構と、後方に傾く上平行四辺形のリンク機構の作用によって、ハンドルフレーム4の上下動を前後動に対して大きく移動できるので、歩行者の立位から着座を自然な姿勢で補助できる。
【0023】
そして、立ち上がりにおいては、着座した歩行者がハンドルフレーム4を握り、立ち上がりに合わせて操作レバー9を押し込み、クランプ10がベースフレーム3を掴んで固定すると、ハンドルフレーム4は上に移動すると同時に前方に移動に移動して、歩行者の着座から立位を自然な姿勢で補助する。
【0024】
図4の歩行器は、図1のリンク構成において、操作レバー9、クランプ10とストッパー11の代わりに、駆動装置12を設けた事例形態で、駆動装置12の伸縮で上下の平行四辺形のリンク機構を変動させハンドルフレーム4を上下移動させると共に、停止時には駆動装置12の制動力で固定して、図5のように着座の位置にハンドルフレーム4を任意に設定する。
【0025】
図6の歩行器は、図4の駆動装置12を支柱軸6−1と上支柱レバー5−2−2の間に設けた事例形態で、駆動装置13の伸縮で上支柱5−2のレバーに作用して上下の平行四辺形のリンク機構を変動して、図7のように着座の位置にハンドルフレーム4を任意に設定する。
【0026】
図8のハンドルフレーム4の端部に備える保持ベルト14は、立位の歩行者の背後、特に臀部を保持するように少なくとも2本のベルトを左右に渡してあり、金具15を介してハンドルフレーム4に引っ掛けている。
【0027】
以下、上記構成の動作を説明する。本第1の発明は、立位の歩行者が着座する時、介助者が操作レバー9のクランプ10を解除して、操作レバー9を上げると器体で構成した上下の平行四辺形のリンク機構の作用で、歩行者が握るハンドルフレーム4が後方に移動すると同時に下降へ平行移動するので、歩行者は立った足の位置で自然な姿勢で腰掛け着座できる。
【0028】
着座した歩行者がハンドルフレーム4を握って立ち上がる時、介助者が操作レバー9を押すとハンドルフレーム4は引き上げられるから、器体で構成した上下の平行四辺形のリンク機構の作用で、ハンドルフレーム4は前方に移動すると同時に上方へ平行移動するので、歩行者は着座した足の自然な姿勢位置で立ち上がることができる。
【0029】
本第2の発明は、介助者が操作する操作レバー9やクランプ10に代わって、駆動装置12又は駆動装置13で器体の上下の平行四辺形のリンク機構に作用して動作するので、駆動装置12又は13の伸縮制御で、ハンドルフレーム4の高さは最適な位置に設定できるから、立ち上がり、歩行や着座が更に安全にできるようになる。
【0030】
歩行者の状態によっては、駆動装置12又は13の制御を自分でできるので、立ち上がりや着座が容易となりリハビリの効果が促進される。
【0031】
本第3の発明は、歩行器のハンドルフレーム4に掴まった歩行者の後方に、保持ベルト14を渡して金具15を介してハンドルフレーム4に架けている。
これによって、歩行器の歩行者は前方と両側面をハンドフレーム4でガードされ、後方を保持ベルト14で四周をガードして、膝折れを起こした時には歩行者の臀部を保持ベルト14が支えるから転倒を防止できる。
【0032】
又、図1、図6及び図8の本歩行器で立ち上がりや着座をする時、保持ベルト14は歩行者の体を後方で支えるので、立ち上がり時の歩行者の体を引き上げる補助をする。
着座の時には保持ベルト14は、歩行者の体をハンドルフレーム4の動きと合わせて保持するので安全に着座の補助をする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明1の実施形態を示す歩行器の立位側面図
【図2】同歩行器の立位上面図
【図3】同歩行器の着座側面図
【図4】本発明2の実施形態を示す歩行器の立位側面図
【図5】同歩行器の着座側面図
【図6】同歩行器の立位側面図
【図7】同歩行器の着座側面図
【図8】本発明3の実施形態を示す歩行器の補助ベルト
【図9】従来の歩行器の側面図
【図10】同歩行器の側面図
【符号の説明】
【0034】
1 車輪
2 自在キャスター
3 ベースフレーム
4 ハンドルフレーム
5−1 後下支柱
5−1−1 前下支柱
5−2 前上支柱
5−2−1 後上支柱
5−2−2 後上支柱レバー
6 回転関節
6−1 回転関節軸
7 中間リンク
8 クロスリンク
9 操作レバー
10 クランプ
11 ストッパー
12 駆動装置A
13 駆動装置B
14 保持ベルト
15 金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の体を支えることにより、歩行を補助する歩行器において、車輪を設けるベースフレームと歩行者が握るハンドルフレームと、前記のフレームを支える左右支柱を回転関節で接合して平行四辺形のリンク構成として、操作レバーでハンドルフレームが前後及び上下に平行移動し、クランプでハンドルフレームを固定する機構を設けたことを特徴とする歩行器。
【請求項2】
上記の平行四辺形リンク構成の中に駆動装置を設けて、該平行四辺形のリンクを駆動装置で変形させ、又は駆動装置の制動力で該平行四辺形リンク機構の変形を阻止して固定する、駆動装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の歩行器。
【請求項3】
ハンドルフレームの端部に、後方より歩行者の体を保持するベルトを備えたことを特徴とする請求項1及び2記載の歩行器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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