説明

歩行型作業機

【課題】保管時や搬送時における収納スペースの小スペース化が図れ、さらに作業場所に障害物があったとしても作業者が楽な姿勢で作業を実施できるようにすること。
【解決手段】作業者が操作する操作部Mを有し且つ旋回操作及び上下角度変更操作可能に作業機本体Aに連結される操縦ハンドルHを備える歩行型作業機であって、操縦ハンドルHが、上下方向に折り曲げ用の支点20を長手方向の中間部分に備え、操縦ハンドルHの操作部側部分P2を、操縦ハンドルHが直線状となる非折り曲げ姿勢から、操縦ハンドルHの作業機本体側部分P1の上方に折り畳むことができ、且つ、非折り曲げ姿勢から下方に折り曲げることができるように構成されており、支点20に前記操縦ハンドルの姿勢を変更可能に固定する固定手段を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が操作する操作部を有し且つ旋回操作及び上下角度変更操作可能に作業機本体に連結される操縦ハンドルを備える歩行型作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行型作業機としては、例えば、特許文献1に示す草刈機が知られている。この草刈機によれば、操縦ハンドルを旋回させて適当な姿勢に切換えることによって、平地の草刈だけでなく、斜面の草刈をも実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010‐246425号公報(図1及び図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
斜面の草刈を実施する場合、作業者は草刈機本体から離れた位置で操作するため、操縦ハンドルはどうしても一定の長さが必要であり、保管時や搬送時における収納スペースに操縦ハンドルが収まり切れない場合があった。
また、作業者は、作業中に操縦ハンドルが障害物に接触しないよう旋回操作及び上下角度変更操作を行って位置調整を行う必要がある。このとき、上下方向の角度を変更して作業を行う場合、例えば、上方に障害物があり操縦ハンドルを地面の近くまで下げなければならないような状況では、作業者が腰を下ろして作業しなければならず、また、下方に障害物があり操縦ハンドルを略垂直になるぐらいまで上方に上げなければならないような状況では、作業者が両腕をかなり上に上げたままで作業しなければならず、作業者に無理な姿勢を強いる場合があった。
【0005】
本発明の目的は、保管時や搬送時における収納スペースの小スペース化が図れ、さらに作業場所に障害物があったとしても作業者が通常の姿勢で作業を実施できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の歩行型作業機の第1特徴構成は、作業者が操作する操作部を有し且つ旋回操作及び上下角度変更操作可能に作業機本体に連結される操縦ハンドルを備える歩行型作業機であって、前記操縦ハンドルが、上下方向に折り曲げ用の支点を長手方向の中間部分に備え、前記操縦ハンドルの操作部側部分を、前記操縦ハンドルが直線状となる非折り曲げ姿勢から、前記操縦ハンドルの作業機本体側部分の上方に折り畳むことができ、且つ、前記非折り曲げ姿勢から下方に折り曲げることができるように構成されており、前記支点に前記操縦ハンドルの姿勢を変更可能に固定する固定手段を設けてある点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、操縦ハンドルの操作部側部分を、操縦ハンドルが直線状となる非折り曲げ姿勢から、操縦ハンドルの作業機本体側部分の上方に折り畳むことによって、操縦ハンドル全体の長さを短くすることができるため、保管時や搬送時における収納スペースの小スペース化が図れる。
【0008】
さらに、操縦ハンドルの操作部側部分を上下方向に折り曲げることができるため、例えば、障害物が作業機本体の上方にある場合、操縦ハンドルを下方側に揺動させ、さらに、操縦ハンドルの操作部側部分を、支点を中心として上方に折り曲げる。この状態によれば、作業者は、特に腰を下ろす必要はなく、通常の姿勢で草刈作業を実施することができる。
また、斜面(法面)における草刈作業を行う場合であって、尚且つ障害物が操縦ハンドルの下方にある場合、操縦ハンドルを上方側に揺動させ、さらに、操縦ハンドルの操作部側部分を、支点を中心として下方に折り曲げる。この状態によれば、作業者は、両腕を上に上げたままで作業しなくとも良く、通常の姿勢で草刈作業を実施することができる。
【0009】
第2特徴構成は、前記支点が前記操縦ハンドルにおける上側に偏倚した位置に設けられており、前記操縦ハンドルにおける前記支点の下側の位置に、前記操縦ハンドルの操作部側部分の下側の折り曲げ角度を規定する折り曲げ角度制限部を設けてある点にある。
【0010】
〔作用及び効果〕
本構成によれば、支点を操縦ハンドルにおける上側に偏倚した位置に設けてあるため、操縦ハンドルの操作部側部分を、作業機本体側部分の上方に重なる位置まで折り曲げることができるようになり、簡易な構成でありながらも、操縦ハンドルの操作部側部分を確実に折り畳んで全体の長さを短くすることができる。
さらに、支点が操縦ハンドルの上方にあるため、操縦ハンドルの操作部側部分を下側に折り曲げる場合には、操縦ハンドルが所定の角度だけ下方に折れ曲がったとき、操縦ハンドルの操作部側部分と作業機本体側部分とが干渉するよう角度を規定する折り曲げ角度制限部を設けることが容易である。これにより、操縦ハンドルの操作部側部分の下側の折り曲げ角度を確保しつつ、操作部が地面と接触するほど過度に折れ曲がるのを規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】操縦ハンドルが非折り曲げ姿勢にあるときの歩行型草刈機の全体側面図である。
【図2】歩行型草刈機の全体平面図である。
【図3】伝動構造を模式的に示す図である。
【図4】ハンドル支持部の縦断面図である。
【図5】ハンドル支持部の平面図である。
【図6】操縦ハンドルの支点部分の横断面図である。
【図7】操縦ハンドルの支点部分の側面図である。
【図8】操縦ハンドルの支点部分の分解斜視図である。
【図9】障害物が上方(a)及び下方(b)にある場合の作業状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態として、本発明の構成を採用した歩行型草刈機を図面に基づいて説明する。
〔実施形態〕
図1〜図3に示すように、歩行型草刈機は、走行機体を構成する作業機本体Aと、長手方向に沿って伸縮操作可能に作業機本体Aに連結される操縦ハンドルHとを備える。
【0013】
(作業機本体)
作業機本体Aは、前車輪1、後車輪2、ハウジング3、エンジン4、伝動ケース5、刈取機構C、及び走行伝動機構Dを備えて構成される。
【0014】
前車輪1及び後車輪2のそれぞれは、ハウジング3の前端位置及び後端位置に配置される。尚、本明細書において、前側とは図1の紙面左側を意味し、後側とは図1の紙面右側を意味する。
【0015】
伝動ケース5は、原動部としてのエンジン4を上部に備え、ハウジング3に対して上下に貫通する状態で設けられている。
【0016】
刈取機構Cは、ハウジング3の中に配置され、伝動ケース5の下端の駆動軸6からの駆動力により縦向きの駆動軸心Y周りで回転する複数の刈刃7を備える。また、走行伝動機構Dは、伝動ケース5からの駆動力を前車輪1及び後車輪2に伝えるものである。
【0017】
図3に示すように、伝動ケース5の上部位置には、主クラッチMCを備え、この主クラッチMCからの駆動力を駆動軸6に伝える刈取用の伝動系に刈取クラッチCCを介装している。
【0018】
また、主クラッチMCからの駆動力を前車輪1及び後車輪2に伝える走行用の伝動系には、駆動速度(単位時間あたりの回転数)を高低2段に切り換える速度切換機構SMと、この速度切換機構SMからの駆動力を前進のための正転駆動力、又は、後進のための逆転駆動力に変換して出力軸8に伝える前後進切換機構FRMとを備えている。
【0019】
刈取クラッチCCは、エンジン4からの駆動力が伝えられる駆動回転体101に対し、駆動軸6にスプライン嵌合するクラッチ部材102を駆動軸心Yに沿ってシフトすることにより伝動状態と動力遮断状態とを現出するドッグクラッチ式に構成されている。
【0020】
速度切換機構SMは、エンジン4からの駆動力がウオームギヤ機構WGによって減速されて伝えられる低速軸103と動力取出軸104とが平行姿勢で配置されると共に、減速軸103に遊転支承した減速側の第1ギヤ105と、これに噛合することで動力取出軸104に動力を伝える第2ギヤ106と、減速軸103に遊転支承した高速側の第3ギヤ107と、これに噛合することで動力取出軸104に動力を伝える第4ギヤ108とを備え、更に、減速軸103にスプライン嵌合し、シフト作動により第1ギヤ105又は第3ギヤ107の何れかに噛合するシフト部材109を備えている。
【0021】
前後進切換機構FRMは、動力取出軸104と一体回転するベベルギヤ110と、このベベルギヤ110に噛合するように出力軸8に遊転支承した一対の切換ギヤ111と、出力軸8にスプライン嵌合し、シフト作動により一対の切換ギヤ111の何れかに噛合する切換部材112とを備えている。
【0022】
前述した出力軸8が、前述したハンドル支持部Bと反対側に突出する形態で配置されている。走行伝動機構Dとして、出力軸8からの駆動力が伝えられる主チェーンケース10と、この主チェーンケース10の前端側からの駆動力を前車輪1に伝える前部チェーンケース11と、主チェーンケース10の後端部からの駆動力を後車輪2に伝える後部チェーンケース12とを備えている。
【0023】
(操縦ハンドル)
図1及び図2に示すように、操縦ハンドルHは、延出端側に設けられる操作部Mと、ハウジング3の横側面に設けられるハンドル支持部Bに支持される基端部Eと、操作部Mと基端部Eとをつなぐパイプ部Pとを備える。
【0024】
〔1〕操作部
図2に示すように、操作部Mは、作業者が作業中に把持するループ状のグリップGと、主クラッチMCを操作する主クラッチレバー13と、前後進切換機構FRMを変速操作する前後進切換レバー14と、第1ロック機構L1の解除操作を行う第1ロック解除レバー15と、第2ロック機構L2の解除操作を行う第2ロック解除レバー16と、エンジン4の回転速度を設定するスロットル操作具17と、速度切換機構SMを操作する変速操作具18と、刈取クラッチCCを操作するクラッチ操作具19とを備える。
【0025】
操作部Mの主クラッチレバー13、前後進切換レバー14、第1ロック解除レバー15、第2ロック解除レバー16、スロットル操作具17、変速操作具18、及びクラッチ操作具19のそれぞれが、図3〜図5に示す、作業機本体A側に設けられる被操作部の主クラッチMC、前後進切換機構FRM、第1ロック機構L1、第2ロック機構L2、エンジン4、速度切換機構SM、及び刈取クラッチCCとそれぞれのワイヤWを介して連係されている。
【0026】
〔2〕パイプ部
図1に示すように、パイプ部Pは、基端部E側に設けられる筒状の第1パイプP1(作業機本体側部分)、操作部M側に設けられる筒状の第2パイプP2(操作部側部分)、及び第1パイプP1と第2パイプP2とを折り曲げ自在に連結する支点20を備えて構成されている。
【0027】
本実施形態においては、第1パイプP1及び第2パイプP2は、同じ大きさの外径を有するものであるが、その長さについては第1パイプP1よりも第2パイプP2の方が少し長く設定されている。
【0028】
図6〜図8に示すように、第1パイプP1における基端部Eの反対側の端部に、横断面形状がコの字型を有する第1ブラケット21が溶接されている。第1ブラケット21は、底壁21aと、相対峙する右側壁21b及び左側壁21cとを有する。
【0029】
図8に示すように、右側壁21b及び左側壁21cは、第1パイプP1の端部から斜め上に延伸するテーパー部TPと、テーパー部TPに連設し且つ第1パイプP1の軸心よりも少し上側に偏倚した位置に設けられる円弧部ARとを備える。
【0030】
図6及び図8に示すように、第1ブラケット21において、その左側壁21cの内側に円盤形状の回転板23が溶接されている。回転板23の外径は、第1ブラケット21の底壁21aから右及び左側壁21b,21cの端までの長さと略同じ大きさに設定されている。また、回転板23の径方向の中心には、厚み方向に貫通する貫通孔T3が設けられている。そして、回転板23の溶接面とは反対側の面に、貫通孔T3から放射状に延びる凹凸面23a(菊座面)が形成されている。
【0031】
図6に示すように、右及び左側壁21b,21cにおける円弧部ARの中心のそれぞれには、厚み方向に貫通する貫通孔T1,T2が形成されている。右側壁21bの貫通孔T1の径は、左側壁21cの貫通孔T2よりも大きく設定されており、右側壁21bの貫通孔T1に円筒状のカラー部材25を嵌め込むことができる。
【0032】
第1ブラケット21における、右側壁21bの貫通孔T1の中心、左側壁21cの貫通孔T2の中心、及び回転板23の貫通孔T3の中心はすべて同一軸心上に位置する。
【0033】
図6〜図8に示すように、第2パイプP2における操作部M側の反対側の端部に、横断面形状がコの字型を有する第2ブラケット22が溶接されている。第2ブラケット22は、底壁22aと、相対峙する右側壁22b及び左側壁22cとを有する。
【0034】
図8に示すように、右側壁22b及び左側壁22cは、第2パイプP2の端部から斜め上に延伸するテーパー部TPと、テーパー部TPに連設し且つ第2パイプP2の軸心よりも少し上側に偏倚した位置に設けられる円弧部ARとを備える。
【0035】
図6及び図8に示すように、第2ブラケット22において、その右側壁22bの内側に円盤形状の回転板24が溶接されている。回転板24の外径は、第2ブラケット22の底壁22aから右及び左側壁22b,22cの端までの長さと略同じ大きさに設定されている。また、回転板24の径方向の中心には、厚み方向に貫通する貫通孔T6が設けられている。そして、回転板24の溶接面とは反対側の面に、貫通孔T6から放射状に延びる凹凸面24a(菊座面)が形成されている。
【0036】
右及び左側壁22b,22cにおける円弧部ARの中心のそれぞれには、厚み方向に貫通する貫通孔T4,T5が形成されている。左側壁22cの貫通孔T5の径は、右側壁22bの貫通孔T4よりも大きく設定されており、左側壁22cの貫通孔T5に円筒状のカラー部材26を嵌め込むことができる。また、左側壁22cの外面における貫通孔T5の周縁部には、六角孔を有する回り止め部材27が溶接されている。
【0037】
第2ブラケット22における、右側壁22aの貫通孔T4の中心、左側壁22cの貫通孔T5の中心、及び回転板24の貫通孔T6の中心はすべて同一軸心上に位置する。
【0038】
図6及び図8に示すように、第1ブラケット21の回転板23及び第2ブラケット22の回転板24のそれぞれを、第2ブラケット22及び第1ブラケット21の中に相互に嵌め込むことができる。
【0039】
このとき、第1ブラケット21の回転板23の凹凸面23aと、第2ブラケット22の回転板24の凹凸面24aとが相対峙する状態となる。そして、第1ブラケット21における右側壁21bの貫通孔T1の中心、左側壁21cの貫通孔T2の中心、及び回転板23の貫通孔T3の中心、並びに、第2ブラケット22における右側壁22bの貫通孔T4の中心、左側壁22cの貫通孔T5の中心、及び回転板24の貫通孔T6の中心は、すべて同一軸心上に配置され、支点となる六角頭付きのボルト20をこれらすべてにわたって挿通させることができる。
【0040】
第1ブラケット21の右側壁21bの貫通孔T1および第2ブラケット22の左側壁22cの貫通孔T5のそれぞれにカラー25,26を装着し、ボルト20を、第2ブラケット22の左側壁22cのカラー26側から挿入して、第1ブラケット21の右側壁21bのカラー25まで挿通させる。そして、ボルト20の頭部を、第2ブラケット22の回り止め部材27内に配置してカラー26に係止させ、ボルト20の雄ネジ部を、ワッシャ29を介して、ノブナット28の雌ネジ部に螺入することによって、第1ブラケット21と第2ブラケット22が連結される。尚、回り止め部材27は、ボルト20の頭部に外嵌して、ボルト20の回り止めとして機能する。
【0041】
〔3〕操縦ハンドルの折り曲げ操作
上記構成によって、第2パイプP2が、ボルト20の軸心回りに上下方向に折り曲げ可能に第1パイプP1に連結されると共に、ノブナット28を操作することによって、第2パイプP2の姿勢を変更可能に固定することができる。
【0042】
第2パイプP2を上方又は下方に折り曲げる場合、先ず、ノブナット28を回しながらボルト20の頭部から離間する方向に移動させて締結を緩め、第1ブラケット21の回転板23の凹凸面23aと第2ブラケット22の回転板24の凹凸面24aとの係合を解除する。
【0043】
次いで、第2パイプP2の操作部M等を持って、ボルト20の軸心回りに第2パイプP2を所望する位置まで上方又は下方に回動させる。そして、ノブナット28を回しながらボルト20の頭部に近づく方向に移動させると、その押圧力が、ワッシャ29とカラー25を介して第2ブラケット22の右側壁22bに伝わり、右側壁22bが第2ブラケット22の内側に押される。その結果、第2ブラケット22の回転板24の凹凸面24aが、第1ブラケット21の回転板23の凹凸面23aと接触して係合し合い、第2パイプP2が回動不能となって、第2パイプP2の姿勢が固定される。即ち、第1ブラケット21の回転板23、第2ブラケット22の回転板24、ボルト20、及びノブナット28は、操縦ハンドルHの第2パイプP2の姿勢を変更可能に固定する固定手段として機能する。
【0044】
図7に示すように、本実施形態においては、第1パイプP1の軸心と第2パイプP2の軸心とが一致して操縦ハンドルHが直線状になる非折り曲げ姿勢(図7の実線部分)から、第2パイプP2を第1パイプP1の上方に最大限折り曲げることができる姿勢(図7の紙面上側の二点鎖線部分)までの折り曲げ角度αは、第2パイプP2を非折り曲げ姿勢から第1パイプP1の下方に最大限折り曲げることができる姿勢(図7の紙面下側の二点鎖線部分)までの折り曲げ角度βよりも大きくなるように設定されている。
【0045】
即ち、本実施形態においては、支点となるボルト20が、操縦ハンドルHにおいて上側に偏倚した位置に設けられている。このため、第2パイプP2を上方に折り曲げるとき、第2ブラケット22の底壁22aの上面が、第1パイプP1の第1ブラケット21の底壁21aの上面に当接する位置まで折り曲げることができる。このとき、第2パイプP2が第1パイプP1の上方に重なるように配置され、操縦ハンドルHの第2パイプP2が、第1パイプP1の上方に折り畳まれた姿勢となり、操縦ハンドルH全体の長さを短くすることができるため、保管時や搬送時における収納スペースの小スペース化が図れる。
【0046】
一方、第2パイプP2を下方に折り曲げるときは、第2ブラケット22の右側壁22bのテーパー部TPが第1ブラケット21の底壁21aに当接する位置か、あるいは第1ブラケット22の左側壁21cのテーパー部TPが第2ブラケット22の底壁22aに当接する位置までしか折り曲げることができない。
【0047】
即ち、ボルト20の下側に位置する、第2ブラケット22の右側壁22bのテーパー部TP、及び第1ブラケット21の底壁21a、並びに第1ブラケット22の左側壁21cのテーパー部TP、及び第2ブラケット22の底壁22aが、第2パイプP2の下側の折り曲げ角度を規定する折り曲げ角度制限部として機能しており、第2パイプP2を第1パイプP1の下方に重なるような姿勢までは折り曲げることはできない。
【0048】
上記構成によれば、支点となるボルト20が操縦ハンドルHの上方にあるため、操縦ハンドルHの第2パイプP2を下側に折り曲げる場合には、操縦ハンドルHが所定の角度だけ下方に折れ曲がったとき、操縦ハンドルHの第2パイプP2と第1パイプP1とが干渉するよう角度を規定する上記折り曲げ角度制限部を設けることが容易である。これにより、操縦ハンドルHの第2パイプP2の下側の折り曲げ角度を確保しつつ、操作部Mが地面と接触するほど過度に折れ曲がるのを規制することができる。
【0049】
(ハンドル支持部)
図2に示すように、操縦ハンドルHは、ハウジング3の横側面に設けられているハンドル支持部Bにおいて支持されている。
【0050】
図4及び図5に示すように、ハンドル支持部Bは、切換軸心Xと同軸心で配置される縦向き姿勢の筒状体35と、この筒状体35の上端部に備えた水平姿勢の支持プレート36と、筒状体35に対して回転自在に挿入された回転軸37と、支持プレート36の上面に摺接して移動可能となるように回転軸37に連結固定された回転プレート38と、横軸心Qを中心とする円弧面を有し回転プレート38に支持されたロックフレーム40とを備えている。操縦ハンドルHにおける第1パイプP1の基端側に連結された断面コの字型の基端部E(基端ブラケット)を、回転軸37の上端に溶接されているボス部材の両端に亘るように配置して、ボルトを操縦ハンドルHの基端部Eとボス部材とに亘るように挿通してナットを締結させることによって、操縦ハンドルHが横軸心Qを中心として揺動自在に接続される。
【0051】
第1ロック機構L1は、支持プレート36に対して切換軸心Xを中心とする円弧状の領域上に穿設された多数の係合孔36Aと、これらの係合孔36Aに係入する方向にバネ付勢され回転プレート38に支持された第1ロックピン41と、第1ロック解除レバー15(図2参照)の操作力で第1ロックピン41を係合孔36Aから引き出す方向に操作する第1操作ワイヤ45(W)とを備えている。
【0052】
この構成から第1ロック解除レバー15を作業者が握り操作することにより、第1操作ワイヤ45(W)のインナーが引き操作されて、第1ロックピン41が係合孔36Aから上へ抜けるため、切換軸心Xを中心とした操縦ハンドルHの旋回姿勢を任意に設定することが可能となる。そして、第1ロック解除レバー15の握り操作を解除することで、第1ロックピン41が係合孔36Aに係入し、切換軸心Xを中心とした操縦ハンドルHの姿勢が維持される。
【0053】
第2ロック機構L2は、ロックフレーム40に穿設された多数の係合孔40Aと、これらの係合孔40Aに係入する方向にバネ付勢され基端部Eに支持された第2ロックピン42と、第2ロック解除レバー16(図9参照)の操作力で第2ロックピン42に対して係合孔40Aから引き出す方向に作用させる第2操作ワイヤ46(W)とを備えている。
【0054】
この構成から第2ロック解除レバー16を作業者が握り操作することにより、第2操作ワイヤ46(W)のインナーが引き操作されて、第2ロックピン42が係合孔40Aから抜けるため、横軸心Qを中心とした操縦ハンドルHの揺動姿勢を任意に設定することが可能となる。そして、第2ロック解除レバー16の握り操作を解除することで、第2ロックピン42が係合孔40Aに係入し、横軸心Qを中心とした操縦ハンドルHの姿勢が維持される。
【0055】
以上の構成により、操縦ハンドルHは、ハンドル支持部Bに対して、縦向き姿勢の切換軸心Xを中心として旋回操作可能に連結されると共に、横向きの横軸心Qを中心として上下角度変更操作可能に連結される。
【0056】
(草刈作業)
操縦ハンドルHの旋回姿勢を図1に示す向きにセットした状態が標準状態であり、図1中の矢印Fの方向が前進方向となる。この標準状態は、特に何ら障害物OBのない平地における草刈作業に適しており、作業者は、作業機本体Aを前進又は後進させながら、通常の姿勢で草刈作業を実施することができる。
【0057】
一方、何らかの障害物OBがある場合や、斜面(法面)における草刈作業を行う場合には、図2に示すように、操縦ハンドルHを、切換軸心Xを中心として作業機本体Aの進行方向と直交する向きに旋回して固定する。
【0058】
例えば図9(a)に示すように、障害物OBが作業機本体Aの上方にある場合、操縦ハンドルHを、横軸心Qを中心として下方側に揺動させ、さらに、操縦ハンドルHの第2パイプP2を、支点20を中心として上方に折り曲げる。この状態によれば、作業者は、特に腰を下ろす必要はなく、通常の姿勢で草刈作業を実施することができる。
【0059】
また図9(b)に示すように、斜面(法面)における草刈作業を行う場合であって、尚且つ障害物OBが操縦ハンドルHの下方にある場合、操縦ハンドルHを、横軸心Qを中心として上方側に揺動させ、さらに、操縦ハンドルHの第2パイプP2を、支点20を中心として下方に折り曲げる。この状態によれば、作業者は、両腕を上に上げたままで作業しなくとも良く、通常の姿勢で草刈作業を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、歩行型草刈機や、歩行型管理機などの歩行型作業機に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
A 作業機本体
H 操縦ハンドル
M 操作部
P1 第1パイプ(作業機本体側部分)
P2 第2パイプ(操作部側部分)
20 ボルト(支点,固定手段)
21a 底壁(折り曲げ角度制限部)
21c 左側壁(折り曲げ角度制限部)
22a 底壁(折り曲げ角度制限部)
22b 右側壁(折り曲げ角度制限部)
23 回転板(固定手段)
24 回転板(固定手段)
28 ノブナット(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が操作する操作部を有し且つ旋回操作及び上下角度変更操作可能に作業機本体に連結される操縦ハンドルを備える歩行型作業機であって、
前記操縦ハンドルが、上下方向に折り曲げ用の支点を長手方向の中間部分に備え、前記操縦ハンドルの操作部側部分を、前記操縦ハンドルが直線状となる非折り曲げ姿勢から、前記操縦ハンドルの作業機本体側部分の上方に折り畳むことができ、且つ、前記非折り曲げ姿勢から下方に折り曲げることができるように構成されており、
前記支点に前記操縦ハンドルの姿勢を変更可能に固定する固定手段を設けてある歩行型作業機。
【請求項2】
前記支点が前記操縦ハンドルにおける上側に偏倚した位置に設けられており、前記操縦ハンドルにおける前記支点の下側の位置に、前記操縦ハンドルの操作部側部分の下側の折り曲げ角度を規定する折り曲げ角度制限部を設けてある請求項1に記載の歩行型作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−249610(P2012−249610A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126553(P2011−126553)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【出願人】(599118768)株式会社斎藤農機製作所 (47)
【Fターム(参考)】