説明

歩行型水田作業機

【課題】歩行型水田作業機において、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態に加えて、耕盤の大きな凹凸に沿って機体が右及び左に大きく傾斜するような状態に対しても、適切に対応できるように構成する。
【解決手段】走行用の右及び左の車輪、機体に対する右及び左の車輪の高さに強制的に差を与えるローリング機構26、機体が田面と平行になるようにローリング機構26を作動操作するローリング操作手段31を備える。右及び左の車輪の昇降を許す融通部20をローリング機構26と右及び左の車輪との間に備え、機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢する付勢機構29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の右及び左の車輪を昇降自在に機体に備えた歩行型水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行型水田作業機の一例である歩行型田植機では特許文献1に開示されているように、右及び左の車輪支持体(特許文献1の図1,2,3の10)を、機体の横軸芯X周りに上下に揺動自在に支持し、右及び左の車輪支持体の端部に走行用の右及び左の車輪(特許文献1の図1,2,3の1)を備えている。軸芯(特許文献1の図3及び図4のY)周りに揺動する天秤リンク(特許文献1の図3及び図4の41)を備えて、右及び左の車輪支持体が逆方向に揺動するようによう構成し、右及び左の車輪が逆方向に昇降するように構成している。
【0003】
水田は一般に、表面に位置する田面と田面の下方に位置する比較的硬質の耕盤とにより構成されており、右及び左の車輪は耕盤に接地して走行する。これにより、耕盤の凹凸に馴染むように右及び左の車輪が逆方向に昇降して、機体が田面と平行に維持されるのであり、特許文献1では、右及び左の車輪支持体に亘ってトーションバー(特許文献1の図2,3,8の60)を取り付けて、機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢するように構成している。
【0004】
【特許文献1】特開2006−238790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
歩行型水田作業機において、右及び左の車輪が逆方向に昇降する構造、及び機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢する構造は、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態に対して適したものと考えられる。
本発明は歩行型水田作業機において、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態に加えて、耕盤の大きな凹凸に沿って機体が右及び左に大きく傾斜するような状態に対しても、適切に対応できるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、歩行型水田作業機において次のように構成することにある。
走行用の右及び左の車輪と、機体に対する右及び左の車輪の高さに強制的に差を与えるローリング機構と、機体が田面と平行になるようにローリング機構を作動操作するローリング操作手段とを備える。右の車輪の昇降を許す融通部をローリング機構と右の車輪との間に備える。左の車輪の昇降を許す融通部をローリング機構と左の車輪との間に備える。機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢する付勢機構を備える。
【0007】
(作用)
[I]−1
本発明の第1特徴によると、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような場合、融通部により耕盤の小さな凹凸に沿って右及び左の車輪が逆方向に昇降し、機体に対する右及び左の車輪の高さの差が小さく頻繁に発生するような状態となって、機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態が抑えられる。
【0008】
この場合、本発明の第1特徴によると、特許文献1と同様に機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢する付勢機構を備えている。これにより、機体に対する右及び左の車輪の高さの差が小さく頻繁に発生するような状態が過剰にならないように、付勢機構が作用するのであり、機体に対する右及び左の車輪の高さの差が小さく頻繁に発生し過ぎるような状態や、機体に対する右及び左の車輪の高さの差が大きくなり過ぎるような状態が、付勢機構によって抑えられる。
【0009】
[I]−2
本発明の第1特徴によると、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような場合、融通部により耕盤の小さな凹凸に沿って右及び左の車輪が同方向に昇降し、機体に対する右及び左の車輪の同方向の昇降が小さく頻繁に発生するような状態となって、機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような状態が抑えられる。
この場合、本発明の第1特徴によると、機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢する付勢力は、付勢機構に発生しないので、機体に対する右及び左の車輪の同方向の昇降に対して、付勢機構が抵抗にはならない。
【0010】
[I]−3
耕盤の大きな凹凸に沿って機体が右及び左に大きく傾斜するような場合、融通部による右及び左の車輪の逆方向への昇降構造、機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢する付勢機構では、対応することが困難である(前述のように、機体に対する右及び左の車輪の高さの差が大きくなり過ぎるような状態が、付勢機構によって抑えられる点による)。
【0011】
本発明の第1特徴によると、付勢機構とは別に、機体に対する右及び左の車輪の高さに強制的に差を与えるローリング機構と、機体が田面と平行になるようにローリング機構を作動操作するローリング操作手段とを備えている。
これにより、耕盤の大きな凹凸に沿って機体が右及び左に大きく傾斜するような場合、ローリング機構及びローリング操作手段により付勢機構に抗して、機体に対する右及び左の車輪の高さに強制的に差が与えられて、機体が田面と平行に維持される。
【0012】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、歩行型水田作業機において、機体に対する右及び左の車輪の高さの差が小さく頻繁に発生するような状態が過剰にならないようにしながら、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態が抑えられ、機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような状態が抑えられるようになって、歩行型水田作業機の走行性能を向上させることができた。
本発明の第1特徴によると、耕盤の大きな凹凸に沿って機体が右及び左に大きく傾斜するような状態に対し、ローリング機構及びローリング操作手段により適切に対応することができるようになって、歩行型水田作業機の走行性能を向上させることができた。
【0013】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の歩行型水田作業機において次のように構成することにある。
融通部がサスペンション機構である。
【0014】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、前項[I]に記載のように、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような場合、耕盤の小さな凹凸に沿って機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような場合、サスペンション機構(融通部)によって、耕盤の小さな凹凸に沿って右及び左の車輪が、滑らかに逆方向及び同方向に昇降するようになり、機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態が滑らかに抑えられ、機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような状態が滑らかに抑えられる。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態が滑らかに抑えられるようになり、機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような状態が滑らかに抑えられるようになって、歩行型水田作業機の走行性能を向上させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[1]
図1及び図2に示すように、機体の前後方向に配置された角パイプ状の機体フレーム1の前部にミッションケース2が連結され、ミッションケース2の前部に右及び左の支持フレーム3が連結されて、右及び左の支持フレーム3にエンジン4が前傾姿勢で支持されており、機体フレーム1の後部に苗植付装置5及び操縦ハンドル6が連結され、センターフロート12及びサイドフロート13が備えられて、歩行型水田作業機の一例である歩行型田植機が構成されている。
【0017】
図1に示すように、苗植付装置5は、機体フレーム1の後部に連結されたフィードケース7、フィードケース7に回転駆動自在に支持された6個の植付アーム8、フィードケース7により左右方向に往復横送り駆動される苗のせ台9等を備えて、6条植型式に構成されている。エンジン4の動力がミッションケース2に伝達され、ミッションケース2の動力が機体フレーム1に内装された伝動軸40(図5参照)を介して、苗植付装置5(フィードケース7)に伝達されている。
【0018】
図1,2,5に示すように、ミッションケース2の右及び左のボス部2aの横軸芯P1周りに、右及び左の車輪支持ケース10が上下に揺動自在に支持されて後方に延出されており、右及び左の車輪支持ケース10の後部に右及び左の車輪11が支持されている。右及び左の車輪支持ケース10は、前部の鋳造製のボス部10a、後部の鋳造製の車輪支持部10b、ボス部10a及び車輪支持部10bに亘ってボルト連結された丸パイプ製の中間部10cを備えて構成されている。ミッションケース2の動力が、右及び左の車輪支持ケース10に内装された伝動軸39を介して右及び左の車輪11に伝達されている。
[2]
次に、右及び左の車輪11の昇降構造について説明する。
図2,3,4に示すように、右及び左の支持フレーム3の間に単動型の昇降シリンダ14が斜めに配置されて、昇降シリンダ14のピストンロッド14aの縦軸芯P2周りに上及び下の操作アーム15が揺動自在に支持されており、操作アーム15が右及び左の支持フレーム3の長孔3aを通って横外側に延出されている。
【0019】
図9,10,11に示すように、操作アーム15の右及び左の端部に、連係ロッド16がピン17により揺動自在に接続されている。板材を角パイプ状に折り曲げて連係部材18が構成されており、連係部材18の前部の長孔18cにピン17が挿入されて、操作アーム15及び連係ロッド16に対して、連係部材18が長孔18cの範囲でスライド可能に取り付けられている。連係部材18に固定された仕切り板18aの開口18bに、連係ロッド16がスライド自在に挿入されて、連係ロッド16の端部にナット19が取り付けられている。連係ロッド16と連係部材18の仕切り板18aとの間に、3個のサスペンションゴム20(融通部及びサスペンション機構に相当)が、自由長状態(又は自由長状態よりも少し圧縮された状態)で配置されている(3個のサスペンションゴム20に連係ロッド16が挿入されている)。
【0020】
図9及び図10に示すように、連係部材18の後部に、3個の開口18dが備えられている。図5及び図6に示すように、右及び左の車輪支持ケース10の中間部10cにブラケット10dが固定され、右及び左の車輪支持ケース10のボス部10a及びブラケット10d(中間部10c)に亘って、側面視(図3参照)で三角形状の操作部21がボルト連結されており、操作部21の上部にボス部21aが固定されている。図3,9,10に示すように、操作部21のボス部21aが、連係部材18の開口18dの一つにピン22により接続されている。
【0021】
図2,3,4に示すように、昇降シリンダ14が伸張作動すると、操作アーム15が紙面右方に移動して、連係ロッド16及び連係部材18により、右及び左の車輪支持ケース10が横軸芯P1周りに下方に揺動して、右及び左の車輪11が下降する。昇降シリンダ14が収縮作動すると、操作アーム15が紙面左方に移動して、連係ロッド16及び連係部材18により、右及び左の車輪支持ケース10が横軸芯P1周りに上方に揺動して、右及び左の車輪11が上昇する。
このように昇降シリンダ14が伸縮作動することにより、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)が同方向に昇降する。
【0022】
図3,9,10に示すように、操作部21のボス部21aを接続する連係部材18の開口18dを変更することにより、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の昇降範囲を上方に変更したり下方に変更したりすることができる。図3,9,10に示す状態は、連係部材18の前側の開口18dに操作部21のボス部21aを接続している状態であり、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の昇降範囲を上方に設定した状態である。連係部材18の後側の開口18dに操作部21のボス部21aを接続すると、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の昇降範囲を下方に設定することができる。
【0023】
[3]
次に、右及び左の車輪11のローリング構造について説明する。
図2,4,10,11に示すように、平板状の連結部23が上及び下の操作アーム15の間に位置するように、昇降シリンダ14のピストンロッド14aに固定されており(連結部23は縦軸芯P2周り揺動しない)、連結部23が左の支持フレーム3の長孔3aを通って横外側に延出されている。
【0024】
図9,10,11に示すように、板材を角パイプ状に折り曲げて連係部材24が構成されており、連係部材24の前部の切欠き部24aに操作アーム15及び連結部23が入り込んで、連係部材24と操作アーム15とがピン25により接続されている。複動型のローリングシリンダ26(ローリング機構に相当)が連係部材24の内部に配置されて、ローリングシリンダ26のピストンロッド26aがピン27により連結部23に接続されており、ローリングシリンダ26がピン28により連係部材24に接続されている。
【0025】
図2,9,10に示すように、ローリングシリンダ26が伸張作動すると、連結部23に対してローリングシリンダ26及び連係部材24が図9の紙面右方に移動して、操作アーム15が縦軸芯P2周りに図9の紙面反時計方向に揺動する。これにより、右の車輪支持ケース10が横軸芯P1周りに上方に揺動して、右の車輪11が上昇し、左の車輪支持ケース10が横軸芯P1周りに下方に揺動して、左の車輪11が下降する。
【0026】
図2,9,10に示すように、ローリングシリンダ26が収縮作動すると、連結部23に対してローリングシリンダ26及び連係部材24が図9の紙面左方に移動して、操作アーム15が縦軸芯P2周りに図9の紙面時計方向に揺動する。これにより、右の車輪支持ケース10が横軸芯P1周りに下方に揺動して、右の車輪11が下降し、左の車輪支持ケース10が横軸芯P1周りに上方に揺動して、左の車輪11が上昇する。
このようにローリングシリンダ26が伸縮作動することにより、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)が逆方向に昇降する(機体に対する右及び左の車輪11の高さに強制的な差が与えられた状態に相当)。
【0027】
図9,10,11に示すように、連係部材24に舌片状の突出部24b,24cが備えられており、連係部材24の突出部24bが連係部材18の上面に当て付けられ、連係部材24の突出部24cが連係部材18の下辺部に係合している。これにより、ローリングシリンダ26の伸縮作動により、ローリングシリンダ26及び連係部材24が図9の紙面左右方向に移動した場合、連係部材24の突出部24b,24cにより連係部材24が連係部材18に沿って案内される状態になって、連係部材24のガタ付きが抑えられて、操作アーム15が縦軸芯P2周りに滑らかに揺動する。
【0028】
図2,5,6に示すように、右及び左の車輪支持ケース10の操作部21に亘って、横長の板バネ29(付勢機構に相当)がボルト連結されており、板バネ29が機体フレーム1とセンターフロート12との間を通るように配置されている。
前述のように、ローリングシリンダ26により、右の車輪11(右の車輪支持ケース10)が下降し、左の車輪11(左の車輪支持ケース10)が上昇すると(右の車輪11(右の車輪支持ケース10)が上昇し、左の車輪11(左の車輪支持ケース10)が下降すると)、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さに強制的な差が与えられた状態になり、板バネ29が捻られるような状態となって、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)を付勢する付勢力が、板バネ29に発生する。しかし、ローリングシリンダ26の伸縮作動力は、板バネ29の付勢力よりも十分に強いものに設定されている。
【0029】
[4]
次に、昇降制御弁30の作動について説明する。
図1に示すように、センターフロート12の後部が機体の後部の横軸芯P3周りに上下に揺動自在に支持されている。図3及び図4に示すように、ミッションケース2の前部の横軸芯P4周りに案内部材32が上下に揺動自在に支持され、センターフロート12の前部にブラケット33が固定されており、ブラケット33の横向きのピン33aが案内部材32の長孔32aに挿入されている。センターフロート12が横軸芯P3周りに上下に揺動するのに伴って、案内部材32が横軸芯P4周りに上下に揺動するのであり、センターフロート12の前部が右及び左横方に移動しようとする状態が案内部材32によって止められる。
【0030】
図3,4,5に示すように、ミッションケース2の上部に昇降制御弁30が固定されており、昇降制御弁30の操作部30aと案内部材32とに亘って連係ロッド34が接続されており、油圧ポンプ(図示せず)の作動油が昇降制御弁30を介して昇降シリンダ14に給排操作される。
【0031】
図1に示すように、水田は一般に、表面に位置する田面G1と、田面G1の下方に位置する比較的硬質の耕盤G2とにより構成されている。センターフロート12及びサイドフロート13が田面G1に接地追従して、右及び左の車輪11が耕盤G2に接地して走行するのであり、右及び左の車輪11が耕盤G2に接地することにより機体の重量が支持されている。
【0032】
図1,3,4に示すように、耕盤G2の大きな凹凸に沿って機体が上及び下に大きく昇降するような場合、機体に対してセンターフロート12が横軸芯P3周りに上下に揺動する状態となり、案内部材32及び連係ロッド34により昇降制御弁30が操作される。昇降制御弁30により昇降シリンダ14が伸縮作動して、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)が同方向に昇降する。これにより、機体が田面G1から設定高さに維持され、植付アーム8による苗の植付深さが設定深さに維持されるのであり、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)を付勢する付勢力は、板バネ29に発生しない。
【0033】
[5]
次にローリング制御弁31(ローリング操作手段に相当)の作動について説明する。
図3,4,5に示すように、昇降制御弁30の上部にローリング制御弁31が固定されており、油圧ポンプ(図示せず)の作動油がローリング制御弁31を介して、ローリングシリンダ26に給排操作されるように構成されている。図3,4,5,7,8に示すように、ローリング制御弁31に固定されたブラケット35の機体前後方向の横軸芯P5周りに、操作アーム36が揺動自在に支持されて、操作アーム36の下部に錘37が固定されている。
【0034】
図3,4,7,8に示すように、ローリング制御弁31のスプール31aが前方に突出して、平面視L字状の操作アーム38がブラケット35の縦軸芯P6周りに揺動自在に支持されており、操作アーム38の一端がローリング制御弁31のスプール31aに接続され、操作アーム38の他端が操作アーム36に接続されている。錘37に掛かる重力により、操作アーム36は横軸芯P5から鉛直方向に向いており、この状態で機体が右及び左に傾斜しても、操作アーム36は横軸芯P5から鉛直方向に向いている。
【0035】
図7及び図8に示すように、耕盤G2の大きな凹凸に沿って機体が右及び左に大きく傾斜するような場合、操作アーム36及び錘37に対してローリング制御弁31が右及び左に傾斜する状態となり、操作アーム38が縦軸芯P6周りに揺動して、ローリング制御弁31のスプール31aが機体前後方向にスライド操作される。ローリング制御弁31によりローリングシリンダ26が伸縮作動して、右の車輪11(右の車輪支持ケース10)が下降し、左の車輪11(左右の車輪支持ケース10)が上昇して(右の車輪支持ケース10)が上昇し、左の車輪11(左右の車輪支持ケース10)が下降して)、機体が田面G1と平行に維持される(機体に対する右及び左の車輪11の高さに強制的に差が与えられる状態に相当)。
【0036】
[6]
前項[4]に記載のように、耕盤G2の大きな凹凸に沿って機体が上及び下に大きく昇降するような状態に対して、耕盤G2の小さな凹凸に沿って機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような場合、昇降制御弁30が操作されるほど、機体に対してセンターフロート12が横軸芯P3周りに上下に揺動する状態にはならない。
前項[5]に記載のように、耕盤G2の大きな凹凸に沿って機体が右及び左に大きく傾斜するような状態に対して、耕盤G2の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような場合、ローリング制御弁31が操作されるほど、操作アーム36及び錘37に対してローリング制御弁31が右及び左の傾斜する状態にはならない。
【0037】
図9及び図10に示すように、連係ロッド16及び連係部材18において、連係ロッド16が操作アーム15にピン17により接続されている。連係部材18は操作アーム15及び連係ロッド16に対して、連係部材18の長孔18cの範囲で図9の紙面左右方向に移動可能である。
右及び左の車輪11が耕盤G2に接地することにより機体の重量が支持されていることによって、耕盤G2の凸部により、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)が上昇しようとすると、連係部材18が操作アーム15に接近する方向(図9の紙面左方)に移動して、連係部材18の仕切り板18aによりサスペンションゴム20が圧縮される。耕盤G2の凹部により、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)が下降しようとすると、連係部材18が操作アーム15に離間する方向(図9の紙面右方)に移動して、サスペンションゴム20が伸張するのであり、連係部材18の仕切り板18aがナット19に接当することによって、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の下降が止まる。
【0038】
これにより、耕盤G2の小さな凹凸に沿って機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような場合、サスペンションゴム20が伸縮することによって、耕盤G2の小さな凹凸に沿って、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)が同方向に昇降し、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の同方向の昇降が小さく頻繁に発生するような状態となって、機体が上及び下に小さく頻繁に昇降するような状態が抑えられる。
【0039】
この場合、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)を付勢する付勢力は、板バネ29に発生しないので、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の同方向の昇降に対して、板バネ29が抵抗にはならない。
【0040】
耕盤G2の小さな凹凸に沿って機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような場合、サスペンションゴム20が伸縮することによって、耕盤G2の小さな凹凸に沿って、右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)が逆方向に昇降し、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差が小さく頻繁に発生するような状態となって、機体が右及び左に小さく頻繁に傾斜するような状態が抑えられる。
【0041】
この場合、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差が発生すると、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差が小さく頻繁に発生するような状態が過剰にならないように、板バネ29が作用する。これにより、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差が小さく頻繁に発生し過ぎるような状態や、機体に対する右及び左の車輪11(右及び左の車輪支持ケース10)の高さの差が大きくなり過ぎるような状態が、板バネ29によって抑えられる。
【0042】
[発明の実施の別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、サスペンションゴム20に代えて、コイルスプリング(図示せず)を使用してもよい。板バネ29を廃止し、昇降シリンダ14のピストンロッド14aに対して操作アーム15が直角の姿勢となるように、操作アーム15を付勢する付勢機構(図示せず)を備えてもよい。
本発明は、苗植付装置5を備えた歩行型田植機ばかりではなく、直播装置を備えた歩行型直播機等にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】歩行型田植機の全体側面図
【図2】歩行型田植機の横断平面図
【図3】歩行型田植機の前部下部の側面図
【図4】歩行型田植機の前部下部の縦断側面図
【図5】ミッションケースの付近の縦断背面図
【図6】右の車輪支持ケース、操作部及び板バネの付近の分解斜視図
【図7】ローリング制御弁の付近の斜視図
【図8】ローリング制御弁の付近の横断平面図
【図9】昇降シリンダ及びローリングシリンダの付近の横断平面図
【図10】昇降シリンダ及びローリングシリンダの付近の分解斜視図
【図11】昇降シリンダ及び操作アームの付近の縦断正面図
【符号の説明】
【0044】
11 車輪
20 融通部、サスペンション機構
26 ローリング機構
29 付勢機構
31 ローリング操作手段
G1 田面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の右及び左の車輪と、機体に対する右及び左の車輪の高さに強制的に差を与えるローリング機構と、機体が田面と平行になるように前記ローリング機構を作動操作するローリング操作手段とを備え、
右の車輪の昇降を許す融通部を前記ローリング機構と右の車輪との間に備え、左の車輪の昇降を許す融通部を前記ローリング機構と左の車輪との間に備えて、
機体に対する右及び左の車輪の高さの差を無くす方向に右及び左の車輪を付勢する付勢機構を備えてある歩行型水田作業機。
【請求項2】
前記融通部がサスペンション機構である請求項1に記載の歩行型水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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