歩行型管理機
【課題】主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの相互の位置関係を適切な状態に保持することにより、歩行型管理機の誤操作を防止するとともに、操作性を向上させる。
【解決手段】主クラッチ14dを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバー54と、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバー57と、を具備する管理機1において、駐車ブレーキレバー57には突出軸57fが形成され、主クラッチレバー54には突出軸57fと当接可能な当接面54fが形成され、突出軸57fと当接面54fとの当接により、主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57の相互の位置関係が制限されるとともに、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合には、主クラッチレバー54が切位置に保持されることとした。
【解決手段】主クラッチ14dを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバー54と、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバー57と、を具備する管理機1において、駐車ブレーキレバー57には突出軸57fが形成され、主クラッチレバー54には突出軸57fと当接可能な当接面54fが形成され、突出軸57fと当接面54fとの当接により、主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57の相互の位置関係が制限されるとともに、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合には、主クラッチレバー54が切位置に保持されることとした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業あるいは中耕除草作業等の農作業を行うための歩行型管理機に関し、より特定的には、歩行型管理機に備えられる操作具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作部に駐車ブレーキレバー及び主クラッチレバーを備えた歩行型管理機が公知となっている。例えば特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の歩行型管理機においては、操作部の左側の操作ボックスに、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーが別個に操作できるように配置されている。主クラッチレバーを傾倒操作することにより、主クラッチを「入」または「切」に切替操作することが可能である。また、駐車ブレーキレバーを傾倒操作することにより、ブレーキ装置(制動装置)を「作動」または「解除」に切替操作することが可能である。
しかしながら、特許文献1に記載の歩行型管理機では、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの相互の位置関係が適切でない状態に操作される虞があった。
【0004】
詳述すると、特許文献1に記載の歩行型管理機においては、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーが左右に隣接するように配置されている。また、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーは、相互の動きが連係されることなく、別個独立に操作可能である。このため、作業者が誤操作により、主クラッチレバーを主クラッチが「入」となるときの回動位置に保持したまま、駐車ブレーキレバーをブレーキ装置が「作動」となるときの回動位置まで傾倒してしまう虞があった。係る場合、主クラッチレバーに連結されるワイヤー等の部材が、駐車ブレーキレバーに連結されるワイヤー等の部材に干渉し、作業者が次なる操作をしようとした場合に、主クラッチレバーまたは駐車ブレーキレバーの傾倒操作を円滑に行えない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−298901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの相互の位置関係を適切な状態に保持することにより、誤操作を防止するとともに、操作性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一つの局面に従った歩行型管理機は、
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記当接部と前記被当接部との当接により、前記主クラッチレバー及び前記駐車ブレーキレバーの相互の位置関係が制限されるとともに、前記駐車ブレーキレバーが作動位置にある場合には、前記主クラッチレバーが切位置に保持されることとしたものである。
【0008】
ここで、「作動位置」はブレーキ装置が「作動」となるときの駐車ブレーキレバーの回動位置を指し、後述の「解除位置」はブレーキ装置が「解除」となるときの駐車ブレーキレバーの回動位置を指す。また、「切位置」は主クラッチが「切」となるときの主クラッチレバーの回動位置を指し、後述の「入位置」は主クラッチが「入」となるときの主クラッチレバーの回動位置を指す。
【0009】
したがって、駐車ブレーキレバーが作動位置、かつ、主クラッチレバーが入位置、の状態に操作することは不能である。
【0010】
この発明の別の一つの局面に従った歩行型管理機は、
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記駐車ブレーキレバーが作動位置にあり、かつ、前記主クラッチレバーが前記切位置から入位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記被当接部が前記当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーのそれ以上の入位置側への回動が規制される、ものである。
【0011】
したがって、駐車ブレーキレバーが作動位置にある場合には、主クラッチレバーを切位置から入位置まで回動することが不能である。
【0012】
好ましくは、前記主クラッチレバーが入位置にあり、かつ、前記駐車ブレーキレバーが解除位置から作動位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記当接部が前記被当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーが切位置側に回動される、ものである。
【0013】
したがって、主クラッチレバーが入位置にある場合に、駐車ブレーキレバーを解除位置から作動位置側に回動すると、これに連動して主クラッチレバーが切位置側に回動される。
【0014】
さらに好ましくは、前記主クラッチレバーのグリップは、作業者が操作時に握るハンドルの把持部から手を離さなくても親指が届く範囲内に配置される、ものである。
【0015】
したがって、作業者はハンドルの把持部を手で握ったまま、その手の親指で主クラッチレバーのグリップを操作することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの相互の位置関係を適切な状態に保持することにより、誤操作を防止するとともに、操作性を向上することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態に係る歩行型管理機の全体的な構成を示す左側面図である。
【図2】主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの操作系の構成を示した模式図である。
【図3】操作ボックス、主クラッチレバー、及び駐車ブレーキレバーの構成を示す斜視図である。
【図4】操作ボックスに取り付けられたときの主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの状態を示す図である。
【図5】作動位置のときの駐車ブレーキレバーと、切位置のときの主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図6】図5の状態から主クラッチレバーを所定の回動位置Xまで回動したときの、駐車ブレーキレバーと、主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図7】作動位置のときの駐車ブレーキレバーと、入位置のときの主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図であり、仮想の状態を示す図である。
【図8】入位置のときの主クラッチレバーと、解除位置のときの駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図9】図8の状態から駐車ブレーキレバーを所定の回動位置Yまで回動したときの、主クラッチレバーと、駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図10】他の形態に係る連係機構の構成を示す図であり、作動位置のときの駐車ブレーキレバーと、切位置から所定の回動位置Vまで回動したときの主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図11】他の形態に係る連係機構の構成を示す図であり、入位置のときの主クラッチレバーと、解除位置から所定の回動位置Wまで回動したときの駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明に係る歩行型管理機の実施の一形態である管理機1の全体的な構成について、図1及び図2を参照して説明する。
管理機1は、適宜の作業装置を装着することにより、耕耘作業あるいは中耕除草作業等の農作業を行うことができるものである。本実施形態の管理機1には、作業装置の一例としてロータリ式の耕耘装置40が装着されている。
以下では、管理機1が直進する方向を前後方向と規定するとともに、エンジン12が搭載される側を前方、耕耘装置40が装着される側を後方と規定して説明を行う。
【0019】
図1に示す管理機1は、エンジンフレーム11、エンジン12、伝動機構14、ミッションケース20、走行車輪30・30、耕耘装置40、及び操作部50等を具備する。
【0020】
管理機1の駆動源であるエンジン12は、エンジンフレーム11の前部に搭載される。エンジン12の出力軸12aから取り出した回転動力は、プーリ14a・14b及びベルト14c等により構成される伝動機構14を介してミッションケース20の入力軸21に伝達される。
伝動機構14には、後述する主クラッチ14dが備えられる。主クラッチ14dの操作は、後述する主クラッチレバー54の操作と連係される(図2参照)。
【0021】
入力軸21から取り出された動力の一部は、ミッションケース20内の変速機構、走行側出力軸、及び車軸31等を経由して、左右一対の走行車輪30・30に伝達される。
変速機構(厳密には変速機構に備えられるブレーキ軸28)には、後述するブレーキ装置18が備えられる。ブレーキ装置18の操作は、後述する駐車ブレーキレバー57の操作と連係される(図2参照)。
【0022】
また、入力軸21から取り出された動力の他の一部は、チェーンケース46・47内の伝動機構及び耕耘側出力軸等を経由して、耕耘装置40の耕耘軸44に伝達される。
【0023】
走行車輪30・30は管理機1を走行させるものである。走行車輪30・30は車軸31の左右両端部に固定されるとともに、ミッションケース20の下部の左右両側方に配置される。
【0024】
耕耘装置40は、前述したチェーンケース46・47、耕耘側出力軸、及び耕耘軸44の他、さらに耕耘カバー45等を備える。耕耘軸44の外周面には耕耘爪42・42・・・が固定される(植設される)。耕耘爪42・42・・・が耕耘軸44と一体的に回転することにより、管理機1を走行車輪30・30によって走行しながら、圃場を耕耘することが可能である。耕耘カバー45は、耕耘爪42・42・・・の回動軌跡の上半部の概ね全体を、上方から被覆している。
【0025】
操作部50は、ハンドル基部51、ハンドル58、及び各種の操作具を備える。ハンドル基部51はミッションケース20の上に設けられる。ハンドル基部51には、ハンドル58が高さ調節可能に取り付けられる。ハンドル58は後上方に延出され、その後端部には左右の把持部52・62が形成される。把持部52・62は、管理機1を操作するときに作業者が手で握る部分であり、耕耘装置40の後上方に配置される。
【0026】
ハンドル58上の、左の把持部52の前方となる位置には、操作ボックス53が固定される。操作ボックス53には、主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57を含む各種の操作具が配置される。
ハンドル58上の、右の把持部62の前方となる位置にも、前記とは別の操作ボックス(不図示)が固定される。係る右の操作ボックスには、耕耘装置40を「作動」または「停止」の状態に切替操作するための耕耘クラッチレバー等の各種の操作具が配置される。また、左の操作ボックス53と、右の操作ボックスと、の間には、安全クラッチレバー56が回動可能に架け渡される。係る安全クラッチレバー56の操作は、連動機構を介して主クラッチレバー54の操作と連係される。
なお、本実施形態の管理機1においては、ハンドル基部51を水平方向に回動することにより、ハンドル基部51及びハンドル58が延出する向きを前後に振替可能である。
【0027】
以下では、操作ボックス53の構成について、図3〜図5を参照して説明する。
操作ボックス53は、ベースプレート63、ステー64、及び上カバー65(図5参照)を有する。
【0028】
図3に示すベースプレート63は、板材を折り曲げて形成された部材であり、左側板63a、右側板63b、及び底板63cから成る。左側板63aの上部は、ステー64を介してハンドル58に固定される。左側板63aの上面と、ステー64の下面と、の間には、孔67(隙間)が形成される。ベースプレート63及びステー64は、上方から上カバー65(図1及び図5参照)により被覆される。
【0029】
ステー64の後部の側面部、及び、右側板63bには、回動軸66を貫装するための側面視円形状の孔64d・63eがそれぞれ形成される。
孔64d・63eに回動軸66を貫装することにより、回動軸66はその軸線が水平方向に延びた姿勢で、ベースプレート63及びステー64に支持される。回動軸66は主クラッチレバー54の回動支点を成す。
なお、以下の説明における「側面視」及び「右側面視」は、回動軸66の軸線方向からみたときの状態を指すものとする。
【0030】
ステー64の前部の側面部には、回動軸69を貫装するための側面視円形状の孔64fが形成される。
孔64fに回動軸69を貫装することにより、回動軸69はその軸線が回動軸66の軸線と平行となる姿勢で、ステー64に支持される。回動軸69は駐車ブレーキレバー57の回動支点を成す。
ここで、右側面視において、回動軸69の中心が配置される地点は、回動軸66の中心が配置される地点の前方に配置されている。このように、回動軸69と回動軸66とは、相互に平行であり、かつ、軸線方向が一直線とならないように配置されている。
【0031】
図2に示すように、主クラッチレバー54と駐車ブレーキレバー57とは、連係機構70により相互の動きに影響を及ぼし合う。連係機構70の構成については、後に詳述する。
【0032】
以下では、主クラッチレバー54、主クラッチ14d、プレート59、及びこれらを連係する機構について、図2〜図5を参照して詳細に説明する。
【0033】
主クラッチレバー54は、主クラッチ14dを「入」または「切」に人為的に切り替えるための操作具である。主クラッチレバー54(のグリップ54g)は、把持部52を手で握っている作業者が、把持部52から手を離さなくても、親指を動かすことにより操作可能な位置に配置される(図1参照)。
【0034】
図3に示すように、主クラッチレバー54は前後方向に長い板状の部材であり、後延出部54a、中途部54b、及び前延出部54cを有する。後延出部54aの先端部(後端部)には、操作時に作業者が手で触れて力を加える部分であるグリップ54gが形成される。後延出部54aは、操作ボックス53の後部の、ベースプレート63及び上カバー65の間の孔(不図示)に貫装され、中途部54b及び前延出部54cはベースプレート63の内側に収容される。
【0035】
中途部54bは、後延出部54aと前延出部54cとが接続される部分であり、円筒部54d及び突出片54eが形成される。
円筒部54dは、中途部54bの側面から左右両側方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回動軸66に嵌装される。突出片54eは、中途部54bの右側面から右側方に向かって突出する部材であり、後述するプレート59の下面と当接可能である。
前延出部54cには、後述する当接面54fが形成される。当接面54fは、本発明に係る被当接部の実施の一形態である。
【0036】
プレート59は、前後方向に長い板状の部材であり、円筒部59a、ワイヤー軸59b、及びガイド孔59cを有する。円筒部59aは、回動軸66に嵌装される。ワイヤー軸59bは、プレート59の上部の右側面から右側方に向かって突出する軸であり、後述するワイヤー15の後端部が連結される(図2参照)。
【0037】
このような構成の主クラッチレバー54及びプレート59は、回動軸66を中心として回動可能にベースプレート63に支持される。より詳細には、左側板63aと右側板63bの間に、主クラッチレバー54及びプレート59が左右に隣接するように配置され、孔64dと、円筒部54dと、円筒部59aと、孔63eと、に回動軸66が貫装される。
【0038】
ここで、プレート59は、その下面が主クラッチレバー54の突出片54eの上面に当接することにより、主クラッチレバー54に対する相対的な回動が制限されている(主クラッチレバー54に対して僅かにしか回動しない)。よって、主クラッチレバー54は、プレート59と概ね一体的に回動する。
【0039】
このような構成により、主クラッチレバー54を、回動軸66を中心として所定の範囲内において回動できるようにしている。以下では、グリップ54gが最も上方に到達する位置まで回動したときの主クラッチレバー54の位置を「切位置」(図5参照)と規定する。一方、グリップ54gが最も下方に到達する位置まで傾倒したときの主クラッチレバー54の位置を「入位置」(図7及び図8参照)と規定する。
【0040】
図2に示す主クラッチ14dは、エンジン12の出力軸12aからミッションケース20の入力軸21への動力の伝達及びその停止を切り替える(入切操作する)ものである。主クラッチ14dはベルトテンション式のクラッチであり、ベルト14cの張力を変動させることにより出力軸12aから入力軸21への動力の伝達及びその停止を切り替えることが可能である。主クラッチ14dは、テンションアーム14e及びテンションプーリ14f等を有する。
【0041】
テンションアーム14eは棒状の部材であり、その中途部はミッションケース20に回動可能に支持される。テンションアーム14eの一端部(前端部)には、テンションプーリ14fが回転可能に支持される。テンションアーム14eの他端部(後端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー15等を介して、プレート59のワイヤー軸59bに連結される。ここで、プレート59は主クラッチレバー54と概ね一体的に回動することから、上記を換言すると、テンションアーム14eの他端部(後端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー15等を介して、主クラッチレバー54の中途部54bに連結されている、といえる。
【0042】
管理機1の作業者が主クラッチレバー54から手を離している場合には、プレート59のガイド孔59cに遊嵌されるピン83と、ベースプレート63の右側板63bの後上部と、を連結するように介装される捩りバネ84(図4参照)によって、主クラッチレバー54の回動位置が所定の位置に保持されている。すなわち、主クラッチレバー54の位置は、捩りバネ84の付勢力を受けることにより、切位置または入位置のいずれか一方に選択的に保持されている。
【0043】
作業者がグリップ54gを下方に傾倒することにより、主クラッチレバー54が入位置まで回動された場合、ワイヤー15の後端部が後方に引っ張られ、テンションアーム14eが左側面視で時計回りに回動する。これに伴って、テンションプーリ14fがベルト14cの外周面に押し付けられ、ベルト14cの張力が増大する。したがって、プーリ14aの回転動力がベルト14cを介してプーリ14bに伝達可能な状態となる。その結果、主クラッチ14dは「入(出力軸12aから取り出した動力が入力軸21に伝達され得る状態)」となる。換言すれば、管理機1の走行及び耕耘作業が可能な状態となる。
【0044】
作業者がグリップ54gを上方に傾倒することにより、主クラッチレバー54が切位置まで回動された場合、ワイヤー15の後端部が入位置のときよりも前方に移動し、テンションアーム14eが左側面視で反時計回りに回動する。これに伴って、テンションプーリ14aがベルト14cの外周面から離間し、ベルト14cの張力が減少する。したがって、プーリ14aの回転動力がプーリ14bに伝達不能な状態となる。その結果、主クラッチ14dは「切(出力軸12aから取り出した動力が入力軸21に伝達されない状態)」となる。換言すれば、出力軸12aから入力軸21への動力の伝達が停止され、管理機1の走行及び耕耘作業ができない状態となる。
【0045】
以下では、駐車ブレーキレバー57、ブレーキ装置18、及びこれらを連係する機構について、図2〜図5を参照して詳細に説明する。
【0046】
駐車ブレーキレバー57は、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に人為的に切り替える(切替操作する)ための操作具である。
【0047】
図3に示すように、駐車ブレーキレバー57は、側面視において概ねL字型の板状の部材であり、長辺部57a、短辺部57b、及び角部57cを有する。長辺部57aの先端部(上端部)には、操作時に作業者が手で触れて力を加える部分であるグリップ57gが形成される。長辺部57aは上カバー65の上面に形成されたガイド溝(不図示)に貫装され、短辺部57b及び角部57cはベースプレート63の内側に収容される。
【0048】
角部57cは、長辺部57aと短辺部57bとが接続される部分であり、円筒部57dが形成される。円筒部57dは、角部57cの側面から左右両側方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回動軸69に嵌装される。
短辺部57bには、ワイヤー軸57e及び後述する突出軸57fが形成される。突出軸57fは、本発明に係る当接部の実施の一形態である。
ワイヤー軸57eは、短辺部57bの左側面から左側方に向かって突出する軸であり、後述するワイヤー19の後端部が連結される(図2参照)。
【0049】
このような構成の駐車ブレーキレバー57は、回動軸69を中心として回動可能にステー64に支持される。より詳細には、孔64f及び円筒部57dに回動軸69が貫装されるとともに、ワイヤー軸57eが左側面視において孔67に収容された状態で、駐車ブレーキレバー57が操作ボックス53(ベースプレート63及びステー64)に取り付けられる。
ここで、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として回動できる範囲は、ワイヤー軸57eが孔67内を移動できる範囲により制限されている。
【0050】
このような構成により、駐車ブレーキレバー57を、回動軸69を中心として所定の範囲内において回動できるようにしている。
ワイヤー軸57eが孔67の前上方の外周面に当接したとき(図8参照)、駐車ブレーキレバー57のグリップ57gが最も前方に到達する。以下では、係る場合の駐車ブレーキレバー57の位置を「解除位置」と規定する。
一方、ワイヤー軸57eが孔67の下方の外周面に当接したとき(図5参照)、駐車ブレーキレバー57のグリップ57gが最も後方に到達する。以下では、係る場合の駐車ブレーキレバー57の位置を「作動位置」と規定する。
【0051】
図2に示すブレーキ装置18は、走行車輪30・30の回転に抵抗を付与するものである。走行車輪30・30(厳密には変速機構に備えられるブレーキ軸28)の回転に付与する抵抗の大きさを変動させることにより、走行車輪30・30が回転可能な状態と、走行車輪30・30の回転を停止する状態と、に切り替えることが可能である。ブレーキ装置18は、ブレーキアーム18a、シュー18b・18b、及びブレーキドラム18c等を有する。
【0052】
ブレーキアーム18aは棒状の部材であり、ミッションケース20に回動可能に支持される。ブレーキアーム18aの一端部(後端部)は、カム機構等を介してミッションケース20の内部に設けられたシュー18b・18bに連結される。ブレーキアーム18aの他端部(前端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー19等を介して、駐車ブレーキレバー57のワイヤー軸57eに連結される。ブレーキドラム18cはブレーキ軸28の左端部に固定(嵌設)される。
なお、ブレーキアーム18aの回動位置は、ブレーキアーム18aとミッションケース20とを連結するように介装された付勢部材(不図示)からの付勢力を受けることにより、ブレーキ装置18が「解除」となるときの位置(解除位置)に保持されている。
【0053】
管理機1の作業者が駐車ブレーキレバー57から手を離している場合には、前記付勢部材によりワイヤー19の前端部(ブレーキ装置18に連結される側の端部)が前方に常に引っ張られている。これにより、駐車ブレーキレバー57の位置は、解除位置または作動位置のいずれか一方に選択的に保持されている。詳述すると、前記付勢部材は、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置までの途中の所定の回動位置に到達したときに、支点越えが生じるように設定されているから、駐車ブレーキレバー57の回動位置を解除位置または作動位置に安定的に保持することができる。
【0054】
作業者がグリップ57gを後方に傾倒することにより、駐車ブレーキレバー57が作動位置まで回動された場合、ワイヤー19の後端部が後方に引っ張られ、ブレーキアーム18aが左側面視で反時計回りに回動する。これに伴って、シュー18b・18bがブレーキドラム18cに押し付けられ、ブレーキ軸28の回転に抵抗が付与される。したがって、ブレーキ軸28の回転が停止され、ひいては走行車輪30・30の回転が停止(制動)される。その結果、管理機1は走行を停止した状態を保持することが可能となる。
【0055】
作業者が駐車ブレーキレバー57のグリップ57gを前方に傾倒することにより、その回動位置が解除位置まで回動された場合、ワイヤー19の後端部が作動位置のときよりも前方に移動し、テンションアーム14eが左側面視で時計回りに回動する。これに伴って、シュー18b・18bがブレーキドラム18cから離間し、ブレーキ軸28の回転に付与されていた抵抗が解除される。したがって、ブレーキ軸28が回転可能な状態となり、ひいては走行車輪30・30が回転可能な状態となる。その結果、管理機1が走行可能な状態となる。
【0056】
以下では、連係機構70の構成について、図3〜図9を参照して詳細に説明する。
連係機構70は、(1)駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構と、(2)主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構と、を有する。
【0057】
本実施形態の連係機構70は、突出軸57f及び当接面54f等により構成される(図3及び図4参照)。
【0058】
突出軸57fは、本発明に係る当接部の実施の一形態である。
突出軸57fは、駐車ブレーキレバー57の短辺部57bに形成されるものであり、短辺部57bの右側面から主クラッチレバー54が配置される側に向かって突出する円柱形状の部材である。突出軸57fの軸線は、回動軸69の軸線と平行である。
【0059】
当接面54fは、本発明に係る被当接部の実施の一形態である。
当接面54fは、主クラッチレバー54の前延出部54cの上面に形成されるものであり、前延出部54cの板面の厚みにより形成される面である。
【0060】
次に、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構について、図5〜図7を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー54が切位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある状態を、初期の状態(図5参照)と想定して説明を行う。
【0061】
初期の状態のとき、突出軸57fは、側面視において主クラッチレバー54の当接面54fの前方に配置されている。ここで、主クラッチレバー54を切位置から入位置側に向かって回動すると、入位置に向かう途中の所定の回動位置Xに到達したとき(作用時)に、当接面54fが突出軸57fに当接する(図6参照)。
当接面54fが突出軸57fに当接したとき、突出軸57fは当接面54fにより前上方に押される。詳述すると、突出軸57fの当接面54fとの接触部(作用点)には、当接面54fに対して概ね垂直な方向の外力Fが働く。ここで図6に示すように、外力Fの作用線(外力Fが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸69の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸69(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Fが加えられることにより、駐車ブレーキレバー57の突出軸57fには、回動軸69に関する右側面視反時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り、すなわち解除位置側へ向かう回動方向)とは反対方向である。
【0062】
したがって、突出軸57fが当接面54fにより前上方に押されても、これに伴って駐車ブレーキレバー57が解除位置まで回動されることはない(作動位置に保持される)。
【0063】
なお、右側面視における当接面54fと突出軸57fとが当接する地点(作用点)は、回動軸69の中心が配置される地点よりも下方となるように設定される。また、当接面54fと突出軸57fとの作用時には、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として作動位置側へ向かう方向に押されるように、当接面54f及び突出軸57fの位置が調整されている。
【0064】
このように、連係機構70では、当接面54fが突出軸57fに当接することにより、それ以上の主クラッチレバー54の入位置側への回動を規制している。
【0065】
さらに図5及び図6に右側面視にて示すように、駐車ブレーキレバー57が作動位置にあるときの突出軸57fが配置される位置は、主クラッチレバー54の当接面54fが配置される位置よりも常に前方となるように設定されている。したがって、当接面54fと突出軸57fとの物理的な配置の制限(駐車ブレーキレバー57が作動位置にある状態では、当接面54fは突出軸57fを越えて前方に移動することができないという制限)があるため、主クラッチレバー54を入位置とし、かつ、駐車ブレーキレバー57を作動位置とすることはできない(図7参照)。
このように構成することにより、作業者が誤操作により、主クラッチ14dが「入」、かつ、ブレーキ装置18が「作動」となる状態にしようとしても、主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57の傾倒位置を係る状態に設定することができない。したがって、管理機1の走行を停止(駐車)しているにも関わらず、耕耘装置40を駆動してしまう、といった異常な状況の発生を回避することができる。よって、管理機1の主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57の誤操作を防止することができ、ひいては安全性が向上する。
【0066】
次に、主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構について、図5、図8及び図9を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー54が入位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が解除位置にある状態を、初期の状態(図8参照)と想定して説明を行う。
【0067】
初期の状態のとき、突出軸57fは、側面視において主クラッチレバー54の当接面54fの上方に配置されている。ここで、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に向かって回動すると、作動位置に向かう途中の所定の回動位置Yに到達したとき(作用時)に、突出軸57fが当接面54fに当接する(図9参照)。
突出軸57fが当接面54fに当接したとき、当接面54fは突出軸57fにより後下方に押される。詳述すると、当接面54fの突出軸57fとの接触部(作用点)には、当接面54fの面に対して概ね垂直な方向の外力Rが働く。ここで図9に示すように、外力Rの作用線(外力Rが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸66の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸66(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Rが加えられることにより、主クラッチレバー54の当接面54fには、回動軸66に関する右側面視時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り)と同じ方向である。
したがって、当接面54fが突出軸57fにより後下方に押されることによって(図9参照)、主クラッチレバー54が切位置まで回動される(図5参照)。
【0068】
なお、右側面視における突出軸57fと当接面54fとが当接する地点(作用点)は、回動軸66の中心が配置される地点よりも上方となるように設定される。また、突出軸57fと当接面54fとの作用時には、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として切位置側へ向かう方向に押されるように、突出軸57f及び当接面54fの位置が調整されている。
【0069】
このように、連係機構70では、突出軸57fが当接面54fに当接することにより、駐車ブレーキレバー57の作動位置側への回動と、主クラッチレバー54の切位置側への回動と、が連動するようにしている。
【0070】
以上の如く、本実施形態に係る管理機1は、エンジン12からミッションケース20の入力軸21への動力の伝達を入切する主クラッチ14dと、走行車輪30・30の回転に抵抗を付与するブレーキ装置18と、主クラッチ14dと連係されるとともに、主クラッチ14dが「入」となる入位置から主クラッチ14dが「切」となる切位置までの範囲内において、回動軸66を中心として回動可能である主クラッチレバー54と、ブレーキ装置18と連係されるとともに、ブレーキ装置18が「作動」となる作動位置からブレーキ装置18が「解除」となる解除位置までの範囲内において、その軸線方向が回動軸66の軸線方向と平行であり、かつ、その軸線方向が回動軸66の軸線方向と一直線ではない回動軸69を中心として回動可能である駐車ブレーキレバー57と、を具備する歩行型管理機において、駐車ブレーキレバー57には突出軸57fが形成され、主クラッチレバー54には突出軸57fと当接可能な当接面54fが形成され、駐車ブレーキレバー57が作動位置にあり、かつ、主クラッチレバー54が切位置から入位置に向かう途中の所定の回動位置Xにあるときに、当接面54fが突出軸57fに当接することにより、主クラッチレバー54のそれ以上の入位置側への回動が規制される、ものである。
したがって、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合には、主クラッチレバー54を切位置から入位置まで回動することができない。
【0071】
このように構成することにより、作業者が誤操作により、ブレーキ装置18を「作動」の状態にしたまま主クラッチ14dを「入」の状態にしようとしても、主クラッチレバー54を入位置まで回動することができない。このため作業者は、駐車ブレーキレバー57を操作してブレーキ装置18を「解除」の状態に切り替える必要があることに容易に気づくことができる。よって、作業者による主クラッチレバー54の誤操作を防止することができ、管理機1の操作性及び安全性が向上する。
【0072】
また、本実施形態に係る管理機1は、回動位置Xにおいて当接面54fが突出軸57fを押すことにより突出軸57fに付与される回動軸69に関するモーメントの方向は、駐車ブレーキレバー57の回動軸69を中心とする解除位置側への回動に伴って突出軸57fが移動する方向とは反対の方向である、ものである。
したがって、当接面54fが突出軸57fを押す力は、駐車ブレーキレバー57の解除位置側への回動に寄与しない。
【0073】
このように構成することにより、主クラッチレバー54の切位置から入位置までの回動を確実に規制することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る管理機1は、主クラッチレバー54が入位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置に向かう途中の所定の回動位置Yにあるときに、突出軸57fが当接面54fに当接することにより、主クラッチレバー54が切位置側に回動される、ものである。
したがって、主クラッチレバー54が入位置にある場合に、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に回動すると、これに連動して主クラッチレバー54が切位置側に回動される。
【0075】
このように構成することにより、作業者が主クラッチ14dを「入」の状態にしたままブレーキ装置18を「作動」の状態にしようとしても、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に回動する操作に連動して主クラッチレバー54が切位置側に回動されて、主クラッチ14dが「切」となる。したがって、管理機1を駐車する(走行を停止し、かつ、耕耘作業を停止した状態を保持する)際には、駐車ブレーキレバー57を操作することにより、ブレーキ装置18が「作動」、かつ、主クラッチ14dが「入」の状態にすることができる。よって管理機1の操作が簡潔となり、管理機1の操作性が向上する。
【0076】
さらに、本実施形態に係る管理機1は、回動位置Yにおいて突出軸57fが当接面54fを押すことにより当接面54fに付与される回動軸66に関するモーメントの方向は、主クラッチレバー54の回動軸66を中心とする切位置側への回動に伴って当接面54fが移動する方向と同じ方向である、ものである。
したがって、突出軸57fが当接面54fを押す力は、主クラッチレバー54の切位置側への回動に寄与する。
【0077】
このように構成することにより、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に回動する操作に連動して、主クラッチレバー54を円滑に切位置側に回動することができる。
【0078】
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態に代えて以下の構成とすることも可能である。
【0079】
上記の実施形態の突出軸57fは、駐車ブレーキレバー57(短辺部57b)の右側面から主クラッチレバー54が配置される側に突出する円柱形状の部材とした。しかしながら、本発明に係る「当接部」は係る構成のものに限らない。例えば、駐車ブレーキレバーの下面を左右方向にある程度の幅を有する形状に構成し、この下面を本発明に係る当接部とすることも可能である。
【0080】
上記の実施形態の当接面54fは、主クラッチレバー54における前延出部54cの板面の厚みにより形成される面とした。しかしながら、本発明に係る「被当接部」は係る構成のものに限らない。例えば、主クラッチレバーの板面の一部を駐車ブレーキが配置される側に折り曲げて突出片を形成し、この突出片を本発明に係る被当接部とすることも可能である。
【0081】
上記の実施形態においては、「駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構」において突出軸57fと当接する被当接部と、「主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構」において突出軸57fと当接する被当接部と、は、当接面54f上に面一に形成されるものとした。しかしながら、当該二つの機構において突出軸57fと当接する被当接部を、別個の被当接部(例えば、面一ではない二つの面)として構成してもよい。
【0082】
以下では、管理機2の構成について、図10及び図11を参照して説明する。
管理機2は、連係機構70に代えて、連係機構90を具備する点で、管理機1と相違する。
なお、以下の説明においては、管理機1に具備される部材と、形状、材質及び機能の点において同様の部材に関しては、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0083】
主クラッチレバー94は、主クラッチ14dを「入」または「切」に人為的に切り替えるための操作具である。
図10に示すように、主クラッチレバー94は前後方向に長い板状の部材であり、後延出部94a、中途部94b、及び前延出部94cを有する。後延出部94aの先端部(後端部)には、グリップ94gが形成される。中途部94bには、回動軸66を貫装するための円筒部(不図示)、及び、プレート59の下面と当接する突出片54e、が形成される。前延出部94cには当接面94fが形成される。
主クラッチレバー94は、「切位置」から「入位置」までの範囲内において、回動軸66を中心として回動可能である。
【0084】
駐車ブレーキレバー97は、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に人為的に切り替えるための操作具である。
図10に示すように、駐車ブレーキレバー97は、側面視において概ねL字型の板状の部材であり、長辺部97a、短辺部97b、及び角部97cを有する。長辺部97aの先端部(後端部)には、グリップ97gが形成される。角部97cには、回動軸69を貫装するための円筒部(不図示)が形成される。短辺部97bには、ワイヤー軸57e及び突出軸97fが形成される。
駐車ブレーキレバー97は、「作動位置」から「解除位置」までの範囲内において、回動軸69を中心として回動可能である。
【0085】
ここで、右側面視において、回動軸69の中心が配置される地点は、回動軸66の中心が配置される地点の前方に配置されている。このように、回動軸69と回動軸66とは、相互に平行であり、かつ、軸線方向が一直線とならないように配置されている。
【0086】
以下では、連係機構90の構成について、図10及び図11を参照して詳細に説明する。
連係機構90は、(1)駐車ブレーキレバー97が作動位置にある場合において、主クラッチレバー94が切位置から入位置側に回動されると、これに連動して駐車ブレーキレバー97を解除位置側に回動する機構と、(2)主クラッチレバー94が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー97が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー94を切位置側に回動する機構と、を有する。
【0087】
連係機構90は、突出軸97f及び当接面94f等により構成される。
【0088】
突出軸97fは、駐車ブレーキレバー97の短辺部97bに形成されるものであり、短辺部97bの右側面から主クラッチレバー94が配置される側に向かって突出する円柱形状の部材である。突出軸97fの軸線は、回動軸69の軸線と平行である。
側面視における突出軸97fの位置は、管理機1に係る突出軸57fの位置よりもワイヤー軸57eに近づけた位置に配置される。
【0089】
当接面94fは、主クラッチレバー94の前延出部94cの上面に形成されるものであり、前延出部94cの板面の厚みにより形成される面である。
当接面94fの水平面に対する傾斜角度は、管理機1に係る主クラッチレバー54の当接面54fの傾斜角度よりも若干緩やかである(水平面に対する傾きが相対的に小さい)。
【0090】
次に、駐車ブレーキレバー97が作動位置にある場合において、主クラッチレバー94が切位置から入位置側に回動されると、これに連動して駐車ブレーキレバー97を解除位置側に回動する機構について、図10を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー94が切位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー97が作動位置にある状態を、初期の状態と想定して説明を行う。
【0091】
初期の状態のとき、突出軸97fは、側面視において主クラッチレバー94の当接面94fの前方に配置されている。ここで、主クラッチレバー94を切位置から入位置側に向かって回動すると、入位置に向かう途中の所定の回動位置Vに到達したときに、当接面94fが突出軸97fに当接する(図10参照)。
当接面94fが突出軸97fに当接したとき、突出軸97fは当接面94fにより前上方に押される。詳述すると、突出軸97fの当接面94fとの接触部(作用点)には、当接面94fに対して概ね垂直な方向の外力Tが働く。ここで、図10に示すように、外力Tの作用線(外力Tが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸69の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸69(の中心)の上方を通過する直線を成している。このため、外力Tが加えられることにより、駐車ブレーキレバー97の突出軸97fには、回動軸69に関する右側面視時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、駐車ブレーキレバー97が回動軸69を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り、すなわち解除位置側へ向かう回動方向)と同じ方向である。
したがって、突出軸97fが当接面94fにより前上方に押されることによって(図10参照)、駐車ブレーキレバー97が解除位置まで回動される。
【0092】
次に、主クラッチレバー94が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー97が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー94を切位置側に回動する機構について、図11を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー94が入位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー97が解除位置にある状態を、初期の状態と想定して説明を行う。
【0093】
初期の状態のとき、突出軸97fは、側面視において主クラッチレバー94の当接面94fの上方に配置されている。ここで、駐車ブレーキレバー97を作動置側に向かって回動すると、作動位置に向かう途中の所定の回動位置Wに到達したときに、突出軸97fが当接面94fに当接する(図11参照)。
突出軸97fが当接面94fに当接したとき、当接面94fは突出軸97fにより後下方に押される。詳述すると、当接面94fの突出軸97fとの接触部(作用点)には、当接面94fに対して概ね垂直な方向の外力Uが働く。ここで、図11に示すように、外力Uの作用線(外力Uが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸66の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸66(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Uが加えられることにより、主クラッチレバー94の当接面94fには、回動軸66に関する右側面視時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り、すなわち切位置側へ向かう回動方向)と同じ方向である。
したがって、当接面94fが突出軸97fにより下方に押されることによって(図11参照)、主クラッチレバー94が切位置まで回動される。
【0094】
このように、「当接部」を形成する位置を変更したり、「当接部」と「被当接部」とが当接する面の傾斜角度を変更したりすることにより、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーが連動する態様を適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 管理機(歩行型管理機)
14d 主クラッチ
18 ブレーキ装置
54 主クラッチレバー
54g グリップ
66 回動軸(主クラッチレバーの回動軸)
57 駐車ブレーキレバー
69 回動軸(駐車ブレーキレバーの回動軸)
54f 当接面(当接部)
57f 突出軸(被当接部)
58 ハンドル
52 把持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業あるいは中耕除草作業等の農作業を行うための歩行型管理機に関し、より特定的には、歩行型管理機に備えられる操作具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、操作部に駐車ブレーキレバー及び主クラッチレバーを備えた歩行型管理機が公知となっている。例えば特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の歩行型管理機においては、操作部の左側の操作ボックスに、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーが別個に操作できるように配置されている。主クラッチレバーを傾倒操作することにより、主クラッチを「入」または「切」に切替操作することが可能である。また、駐車ブレーキレバーを傾倒操作することにより、ブレーキ装置(制動装置)を「作動」または「解除」に切替操作することが可能である。
しかしながら、特許文献1に記載の歩行型管理機では、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの相互の位置関係が適切でない状態に操作される虞があった。
【0004】
詳述すると、特許文献1に記載の歩行型管理機においては、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーが左右に隣接するように配置されている。また、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーは、相互の動きが連係されることなく、別個独立に操作可能である。このため、作業者が誤操作により、主クラッチレバーを主クラッチが「入」となるときの回動位置に保持したまま、駐車ブレーキレバーをブレーキ装置が「作動」となるときの回動位置まで傾倒してしまう虞があった。係る場合、主クラッチレバーに連結されるワイヤー等の部材が、駐車ブレーキレバーに連結されるワイヤー等の部材に干渉し、作業者が次なる操作をしようとした場合に、主クラッチレバーまたは駐車ブレーキレバーの傾倒操作を円滑に行えない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−298901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの相互の位置関係を適切な状態に保持することにより、誤操作を防止するとともに、操作性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一つの局面に従った歩行型管理機は、
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記当接部と前記被当接部との当接により、前記主クラッチレバー及び前記駐車ブレーキレバーの相互の位置関係が制限されるとともに、前記駐車ブレーキレバーが作動位置にある場合には、前記主クラッチレバーが切位置に保持されることとしたものである。
【0008】
ここで、「作動位置」はブレーキ装置が「作動」となるときの駐車ブレーキレバーの回動位置を指し、後述の「解除位置」はブレーキ装置が「解除」となるときの駐車ブレーキレバーの回動位置を指す。また、「切位置」は主クラッチが「切」となるときの主クラッチレバーの回動位置を指し、後述の「入位置」は主クラッチが「入」となるときの主クラッチレバーの回動位置を指す。
【0009】
したがって、駐車ブレーキレバーが作動位置、かつ、主クラッチレバーが入位置、の状態に操作することは不能である。
【0010】
この発明の別の一つの局面に従った歩行型管理機は、
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記駐車ブレーキレバーが作動位置にあり、かつ、前記主クラッチレバーが前記切位置から入位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記被当接部が前記当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーのそれ以上の入位置側への回動が規制される、ものである。
【0011】
したがって、駐車ブレーキレバーが作動位置にある場合には、主クラッチレバーを切位置から入位置まで回動することが不能である。
【0012】
好ましくは、前記主クラッチレバーが入位置にあり、かつ、前記駐車ブレーキレバーが解除位置から作動位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記当接部が前記被当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーが切位置側に回動される、ものである。
【0013】
したがって、主クラッチレバーが入位置にある場合に、駐車ブレーキレバーを解除位置から作動位置側に回動すると、これに連動して主クラッチレバーが切位置側に回動される。
【0014】
さらに好ましくは、前記主クラッチレバーのグリップは、作業者が操作時に握るハンドルの把持部から手を離さなくても親指が届く範囲内に配置される、ものである。
【0015】
したがって、作業者はハンドルの把持部を手で握ったまま、その手の親指で主クラッチレバーのグリップを操作することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの相互の位置関係を適切な状態に保持することにより、誤操作を防止するとともに、操作性を向上することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の一形態に係る歩行型管理機の全体的な構成を示す左側面図である。
【図2】主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの操作系の構成を示した模式図である。
【図3】操作ボックス、主クラッチレバー、及び駐車ブレーキレバーの構成を示す斜視図である。
【図4】操作ボックスに取り付けられたときの主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーの状態を示す図である。
【図5】作動位置のときの駐車ブレーキレバーと、切位置のときの主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図6】図5の状態から主クラッチレバーを所定の回動位置Xまで回動したときの、駐車ブレーキレバーと、主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図7】作動位置のときの駐車ブレーキレバーと、入位置のときの主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図であり、仮想の状態を示す図である。
【図8】入位置のときの主クラッチレバーと、解除位置のときの駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図9】図8の状態から駐車ブレーキレバーを所定の回動位置Yまで回動したときの、主クラッチレバーと、駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図10】他の形態に係る連係機構の構成を示す図であり、作動位置のときの駐車ブレーキレバーと、切位置から所定の回動位置Vまで回動したときの主クラッチレバーと、の配置の関係を示す図である。
【図11】他の形態に係る連係機構の構成を示す図であり、入位置のときの主クラッチレバーと、解除位置から所定の回動位置Wまで回動したときの駐車ブレーキレバーと、の配置の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明に係る歩行型管理機の実施の一形態である管理機1の全体的な構成について、図1及び図2を参照して説明する。
管理機1は、適宜の作業装置を装着することにより、耕耘作業あるいは中耕除草作業等の農作業を行うことができるものである。本実施形態の管理機1には、作業装置の一例としてロータリ式の耕耘装置40が装着されている。
以下では、管理機1が直進する方向を前後方向と規定するとともに、エンジン12が搭載される側を前方、耕耘装置40が装着される側を後方と規定して説明を行う。
【0019】
図1に示す管理機1は、エンジンフレーム11、エンジン12、伝動機構14、ミッションケース20、走行車輪30・30、耕耘装置40、及び操作部50等を具備する。
【0020】
管理機1の駆動源であるエンジン12は、エンジンフレーム11の前部に搭載される。エンジン12の出力軸12aから取り出した回転動力は、プーリ14a・14b及びベルト14c等により構成される伝動機構14を介してミッションケース20の入力軸21に伝達される。
伝動機構14には、後述する主クラッチ14dが備えられる。主クラッチ14dの操作は、後述する主クラッチレバー54の操作と連係される(図2参照)。
【0021】
入力軸21から取り出された動力の一部は、ミッションケース20内の変速機構、走行側出力軸、及び車軸31等を経由して、左右一対の走行車輪30・30に伝達される。
変速機構(厳密には変速機構に備えられるブレーキ軸28)には、後述するブレーキ装置18が備えられる。ブレーキ装置18の操作は、後述する駐車ブレーキレバー57の操作と連係される(図2参照)。
【0022】
また、入力軸21から取り出された動力の他の一部は、チェーンケース46・47内の伝動機構及び耕耘側出力軸等を経由して、耕耘装置40の耕耘軸44に伝達される。
【0023】
走行車輪30・30は管理機1を走行させるものである。走行車輪30・30は車軸31の左右両端部に固定されるとともに、ミッションケース20の下部の左右両側方に配置される。
【0024】
耕耘装置40は、前述したチェーンケース46・47、耕耘側出力軸、及び耕耘軸44の他、さらに耕耘カバー45等を備える。耕耘軸44の外周面には耕耘爪42・42・・・が固定される(植設される)。耕耘爪42・42・・・が耕耘軸44と一体的に回転することにより、管理機1を走行車輪30・30によって走行しながら、圃場を耕耘することが可能である。耕耘カバー45は、耕耘爪42・42・・・の回動軌跡の上半部の概ね全体を、上方から被覆している。
【0025】
操作部50は、ハンドル基部51、ハンドル58、及び各種の操作具を備える。ハンドル基部51はミッションケース20の上に設けられる。ハンドル基部51には、ハンドル58が高さ調節可能に取り付けられる。ハンドル58は後上方に延出され、その後端部には左右の把持部52・62が形成される。把持部52・62は、管理機1を操作するときに作業者が手で握る部分であり、耕耘装置40の後上方に配置される。
【0026】
ハンドル58上の、左の把持部52の前方となる位置には、操作ボックス53が固定される。操作ボックス53には、主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57を含む各種の操作具が配置される。
ハンドル58上の、右の把持部62の前方となる位置にも、前記とは別の操作ボックス(不図示)が固定される。係る右の操作ボックスには、耕耘装置40を「作動」または「停止」の状態に切替操作するための耕耘クラッチレバー等の各種の操作具が配置される。また、左の操作ボックス53と、右の操作ボックスと、の間には、安全クラッチレバー56が回動可能に架け渡される。係る安全クラッチレバー56の操作は、連動機構を介して主クラッチレバー54の操作と連係される。
なお、本実施形態の管理機1においては、ハンドル基部51を水平方向に回動することにより、ハンドル基部51及びハンドル58が延出する向きを前後に振替可能である。
【0027】
以下では、操作ボックス53の構成について、図3〜図5を参照して説明する。
操作ボックス53は、ベースプレート63、ステー64、及び上カバー65(図5参照)を有する。
【0028】
図3に示すベースプレート63は、板材を折り曲げて形成された部材であり、左側板63a、右側板63b、及び底板63cから成る。左側板63aの上部は、ステー64を介してハンドル58に固定される。左側板63aの上面と、ステー64の下面と、の間には、孔67(隙間)が形成される。ベースプレート63及びステー64は、上方から上カバー65(図1及び図5参照)により被覆される。
【0029】
ステー64の後部の側面部、及び、右側板63bには、回動軸66を貫装するための側面視円形状の孔64d・63eがそれぞれ形成される。
孔64d・63eに回動軸66を貫装することにより、回動軸66はその軸線が水平方向に延びた姿勢で、ベースプレート63及びステー64に支持される。回動軸66は主クラッチレバー54の回動支点を成す。
なお、以下の説明における「側面視」及び「右側面視」は、回動軸66の軸線方向からみたときの状態を指すものとする。
【0030】
ステー64の前部の側面部には、回動軸69を貫装するための側面視円形状の孔64fが形成される。
孔64fに回動軸69を貫装することにより、回動軸69はその軸線が回動軸66の軸線と平行となる姿勢で、ステー64に支持される。回動軸69は駐車ブレーキレバー57の回動支点を成す。
ここで、右側面視において、回動軸69の中心が配置される地点は、回動軸66の中心が配置される地点の前方に配置されている。このように、回動軸69と回動軸66とは、相互に平行であり、かつ、軸線方向が一直線とならないように配置されている。
【0031】
図2に示すように、主クラッチレバー54と駐車ブレーキレバー57とは、連係機構70により相互の動きに影響を及ぼし合う。連係機構70の構成については、後に詳述する。
【0032】
以下では、主クラッチレバー54、主クラッチ14d、プレート59、及びこれらを連係する機構について、図2〜図5を参照して詳細に説明する。
【0033】
主クラッチレバー54は、主クラッチ14dを「入」または「切」に人為的に切り替えるための操作具である。主クラッチレバー54(のグリップ54g)は、把持部52を手で握っている作業者が、把持部52から手を離さなくても、親指を動かすことにより操作可能な位置に配置される(図1参照)。
【0034】
図3に示すように、主クラッチレバー54は前後方向に長い板状の部材であり、後延出部54a、中途部54b、及び前延出部54cを有する。後延出部54aの先端部(後端部)には、操作時に作業者が手で触れて力を加える部分であるグリップ54gが形成される。後延出部54aは、操作ボックス53の後部の、ベースプレート63及び上カバー65の間の孔(不図示)に貫装され、中途部54b及び前延出部54cはベースプレート63の内側に収容される。
【0035】
中途部54bは、後延出部54aと前延出部54cとが接続される部分であり、円筒部54d及び突出片54eが形成される。
円筒部54dは、中途部54bの側面から左右両側方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回動軸66に嵌装される。突出片54eは、中途部54bの右側面から右側方に向かって突出する部材であり、後述するプレート59の下面と当接可能である。
前延出部54cには、後述する当接面54fが形成される。当接面54fは、本発明に係る被当接部の実施の一形態である。
【0036】
プレート59は、前後方向に長い板状の部材であり、円筒部59a、ワイヤー軸59b、及びガイド孔59cを有する。円筒部59aは、回動軸66に嵌装される。ワイヤー軸59bは、プレート59の上部の右側面から右側方に向かって突出する軸であり、後述するワイヤー15の後端部が連結される(図2参照)。
【0037】
このような構成の主クラッチレバー54及びプレート59は、回動軸66を中心として回動可能にベースプレート63に支持される。より詳細には、左側板63aと右側板63bの間に、主クラッチレバー54及びプレート59が左右に隣接するように配置され、孔64dと、円筒部54dと、円筒部59aと、孔63eと、に回動軸66が貫装される。
【0038】
ここで、プレート59は、その下面が主クラッチレバー54の突出片54eの上面に当接することにより、主クラッチレバー54に対する相対的な回動が制限されている(主クラッチレバー54に対して僅かにしか回動しない)。よって、主クラッチレバー54は、プレート59と概ね一体的に回動する。
【0039】
このような構成により、主クラッチレバー54を、回動軸66を中心として所定の範囲内において回動できるようにしている。以下では、グリップ54gが最も上方に到達する位置まで回動したときの主クラッチレバー54の位置を「切位置」(図5参照)と規定する。一方、グリップ54gが最も下方に到達する位置まで傾倒したときの主クラッチレバー54の位置を「入位置」(図7及び図8参照)と規定する。
【0040】
図2に示す主クラッチ14dは、エンジン12の出力軸12aからミッションケース20の入力軸21への動力の伝達及びその停止を切り替える(入切操作する)ものである。主クラッチ14dはベルトテンション式のクラッチであり、ベルト14cの張力を変動させることにより出力軸12aから入力軸21への動力の伝達及びその停止を切り替えることが可能である。主クラッチ14dは、テンションアーム14e及びテンションプーリ14f等を有する。
【0041】
テンションアーム14eは棒状の部材であり、その中途部はミッションケース20に回動可能に支持される。テンションアーム14eの一端部(前端部)には、テンションプーリ14fが回転可能に支持される。テンションアーム14eの他端部(後端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー15等を介して、プレート59のワイヤー軸59bに連結される。ここで、プレート59は主クラッチレバー54と概ね一体的に回動することから、上記を換言すると、テンションアーム14eの他端部(後端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー15等を介して、主クラッチレバー54の中途部54bに連結されている、といえる。
【0042】
管理機1の作業者が主クラッチレバー54から手を離している場合には、プレート59のガイド孔59cに遊嵌されるピン83と、ベースプレート63の右側板63bの後上部と、を連結するように介装される捩りバネ84(図4参照)によって、主クラッチレバー54の回動位置が所定の位置に保持されている。すなわち、主クラッチレバー54の位置は、捩りバネ84の付勢力を受けることにより、切位置または入位置のいずれか一方に選択的に保持されている。
【0043】
作業者がグリップ54gを下方に傾倒することにより、主クラッチレバー54が入位置まで回動された場合、ワイヤー15の後端部が後方に引っ張られ、テンションアーム14eが左側面視で時計回りに回動する。これに伴って、テンションプーリ14fがベルト14cの外周面に押し付けられ、ベルト14cの張力が増大する。したがって、プーリ14aの回転動力がベルト14cを介してプーリ14bに伝達可能な状態となる。その結果、主クラッチ14dは「入(出力軸12aから取り出した動力が入力軸21に伝達され得る状態)」となる。換言すれば、管理機1の走行及び耕耘作業が可能な状態となる。
【0044】
作業者がグリップ54gを上方に傾倒することにより、主クラッチレバー54が切位置まで回動された場合、ワイヤー15の後端部が入位置のときよりも前方に移動し、テンションアーム14eが左側面視で反時計回りに回動する。これに伴って、テンションプーリ14aがベルト14cの外周面から離間し、ベルト14cの張力が減少する。したがって、プーリ14aの回転動力がプーリ14bに伝達不能な状態となる。その結果、主クラッチ14dは「切(出力軸12aから取り出した動力が入力軸21に伝達されない状態)」となる。換言すれば、出力軸12aから入力軸21への動力の伝達が停止され、管理機1の走行及び耕耘作業ができない状態となる。
【0045】
以下では、駐車ブレーキレバー57、ブレーキ装置18、及びこれらを連係する機構について、図2〜図5を参照して詳細に説明する。
【0046】
駐車ブレーキレバー57は、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に人為的に切り替える(切替操作する)ための操作具である。
【0047】
図3に示すように、駐車ブレーキレバー57は、側面視において概ねL字型の板状の部材であり、長辺部57a、短辺部57b、及び角部57cを有する。長辺部57aの先端部(上端部)には、操作時に作業者が手で触れて力を加える部分であるグリップ57gが形成される。長辺部57aは上カバー65の上面に形成されたガイド溝(不図示)に貫装され、短辺部57b及び角部57cはベースプレート63の内側に収容される。
【0048】
角部57cは、長辺部57aと短辺部57bとが接続される部分であり、円筒部57dが形成される。円筒部57dは、角部57cの側面から左右両側方に向かって突出する円筒形状の部材であり、回動軸69に嵌装される。
短辺部57bには、ワイヤー軸57e及び後述する突出軸57fが形成される。突出軸57fは、本発明に係る当接部の実施の一形態である。
ワイヤー軸57eは、短辺部57bの左側面から左側方に向かって突出する軸であり、後述するワイヤー19の後端部が連結される(図2参照)。
【0049】
このような構成の駐車ブレーキレバー57は、回動軸69を中心として回動可能にステー64に支持される。より詳細には、孔64f及び円筒部57dに回動軸69が貫装されるとともに、ワイヤー軸57eが左側面視において孔67に収容された状態で、駐車ブレーキレバー57が操作ボックス53(ベースプレート63及びステー64)に取り付けられる。
ここで、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として回動できる範囲は、ワイヤー軸57eが孔67内を移動できる範囲により制限されている。
【0050】
このような構成により、駐車ブレーキレバー57を、回動軸69を中心として所定の範囲内において回動できるようにしている。
ワイヤー軸57eが孔67の前上方の外周面に当接したとき(図8参照)、駐車ブレーキレバー57のグリップ57gが最も前方に到達する。以下では、係る場合の駐車ブレーキレバー57の位置を「解除位置」と規定する。
一方、ワイヤー軸57eが孔67の下方の外周面に当接したとき(図5参照)、駐車ブレーキレバー57のグリップ57gが最も後方に到達する。以下では、係る場合の駐車ブレーキレバー57の位置を「作動位置」と規定する。
【0051】
図2に示すブレーキ装置18は、走行車輪30・30の回転に抵抗を付与するものである。走行車輪30・30(厳密には変速機構に備えられるブレーキ軸28)の回転に付与する抵抗の大きさを変動させることにより、走行車輪30・30が回転可能な状態と、走行車輪30・30の回転を停止する状態と、に切り替えることが可能である。ブレーキ装置18は、ブレーキアーム18a、シュー18b・18b、及びブレーキドラム18c等を有する。
【0052】
ブレーキアーム18aは棒状の部材であり、ミッションケース20に回動可能に支持される。ブレーキアーム18aの一端部(後端部)は、カム機構等を介してミッションケース20の内部に設けられたシュー18b・18bに連結される。ブレーキアーム18aの他端部(前端部)は、アウタワイヤー及びワイヤー19等を介して、駐車ブレーキレバー57のワイヤー軸57eに連結される。ブレーキドラム18cはブレーキ軸28の左端部に固定(嵌設)される。
なお、ブレーキアーム18aの回動位置は、ブレーキアーム18aとミッションケース20とを連結するように介装された付勢部材(不図示)からの付勢力を受けることにより、ブレーキ装置18が「解除」となるときの位置(解除位置)に保持されている。
【0053】
管理機1の作業者が駐車ブレーキレバー57から手を離している場合には、前記付勢部材によりワイヤー19の前端部(ブレーキ装置18に連結される側の端部)が前方に常に引っ張られている。これにより、駐車ブレーキレバー57の位置は、解除位置または作動位置のいずれか一方に選択的に保持されている。詳述すると、前記付勢部材は、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置までの途中の所定の回動位置に到達したときに、支点越えが生じるように設定されているから、駐車ブレーキレバー57の回動位置を解除位置または作動位置に安定的に保持することができる。
【0054】
作業者がグリップ57gを後方に傾倒することにより、駐車ブレーキレバー57が作動位置まで回動された場合、ワイヤー19の後端部が後方に引っ張られ、ブレーキアーム18aが左側面視で反時計回りに回動する。これに伴って、シュー18b・18bがブレーキドラム18cに押し付けられ、ブレーキ軸28の回転に抵抗が付与される。したがって、ブレーキ軸28の回転が停止され、ひいては走行車輪30・30の回転が停止(制動)される。その結果、管理機1は走行を停止した状態を保持することが可能となる。
【0055】
作業者が駐車ブレーキレバー57のグリップ57gを前方に傾倒することにより、その回動位置が解除位置まで回動された場合、ワイヤー19の後端部が作動位置のときよりも前方に移動し、テンションアーム14eが左側面視で時計回りに回動する。これに伴って、シュー18b・18bがブレーキドラム18cから離間し、ブレーキ軸28の回転に付与されていた抵抗が解除される。したがって、ブレーキ軸28が回転可能な状態となり、ひいては走行車輪30・30が回転可能な状態となる。その結果、管理機1が走行可能な状態となる。
【0056】
以下では、連係機構70の構成について、図3〜図9を参照して詳細に説明する。
連係機構70は、(1)駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構と、(2)主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構と、を有する。
【0057】
本実施形態の連係機構70は、突出軸57f及び当接面54f等により構成される(図3及び図4参照)。
【0058】
突出軸57fは、本発明に係る当接部の実施の一形態である。
突出軸57fは、駐車ブレーキレバー57の短辺部57bに形成されるものであり、短辺部57bの右側面から主クラッチレバー54が配置される側に向かって突出する円柱形状の部材である。突出軸57fの軸線は、回動軸69の軸線と平行である。
【0059】
当接面54fは、本発明に係る被当接部の実施の一形態である。
当接面54fは、主クラッチレバー54の前延出部54cの上面に形成されるものであり、前延出部54cの板面の厚みにより形成される面である。
【0060】
次に、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構について、図5〜図7を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー54が切位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある状態を、初期の状態(図5参照)と想定して説明を行う。
【0061】
初期の状態のとき、突出軸57fは、側面視において主クラッチレバー54の当接面54fの前方に配置されている。ここで、主クラッチレバー54を切位置から入位置側に向かって回動すると、入位置に向かう途中の所定の回動位置Xに到達したとき(作用時)に、当接面54fが突出軸57fに当接する(図6参照)。
当接面54fが突出軸57fに当接したとき、突出軸57fは当接面54fにより前上方に押される。詳述すると、突出軸57fの当接面54fとの接触部(作用点)には、当接面54fに対して概ね垂直な方向の外力Fが働く。ここで図6に示すように、外力Fの作用線(外力Fが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸69の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸69(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Fが加えられることにより、駐車ブレーキレバー57の突出軸57fには、回動軸69に関する右側面視反時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り、すなわち解除位置側へ向かう回動方向)とは反対方向である。
【0062】
したがって、突出軸57fが当接面54fにより前上方に押されても、これに伴って駐車ブレーキレバー57が解除位置まで回動されることはない(作動位置に保持される)。
【0063】
なお、右側面視における当接面54fと突出軸57fとが当接する地点(作用点)は、回動軸69の中心が配置される地点よりも下方となるように設定される。また、当接面54fと突出軸57fとの作用時には、駐車ブレーキレバー57が回動軸69を中心として作動位置側へ向かう方向に押されるように、当接面54f及び突出軸57fの位置が調整されている。
【0064】
このように、連係機構70では、当接面54fが突出軸57fに当接することにより、それ以上の主クラッチレバー54の入位置側への回動を規制している。
【0065】
さらに図5及び図6に右側面視にて示すように、駐車ブレーキレバー57が作動位置にあるときの突出軸57fが配置される位置は、主クラッチレバー54の当接面54fが配置される位置よりも常に前方となるように設定されている。したがって、当接面54fと突出軸57fとの物理的な配置の制限(駐車ブレーキレバー57が作動位置にある状態では、当接面54fは突出軸57fを越えて前方に移動することができないという制限)があるため、主クラッチレバー54を入位置とし、かつ、駐車ブレーキレバー57を作動位置とすることはできない(図7参照)。
このように構成することにより、作業者が誤操作により、主クラッチ14dが「入」、かつ、ブレーキ装置18が「作動」となる状態にしようとしても、主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57の傾倒位置を係る状態に設定することができない。したがって、管理機1の走行を停止(駐車)しているにも関わらず、耕耘装置40を駆動してしまう、といった異常な状況の発生を回避することができる。よって、管理機1の主クラッチレバー54及び駐車ブレーキレバー57の誤操作を防止することができ、ひいては安全性が向上する。
【0066】
次に、主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構について、図5、図8及び図9を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー54が入位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が解除位置にある状態を、初期の状態(図8参照)と想定して説明を行う。
【0067】
初期の状態のとき、突出軸57fは、側面視において主クラッチレバー54の当接面54fの上方に配置されている。ここで、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に向かって回動すると、作動位置に向かう途中の所定の回動位置Yに到達したとき(作用時)に、突出軸57fが当接面54fに当接する(図9参照)。
突出軸57fが当接面54fに当接したとき、当接面54fは突出軸57fにより後下方に押される。詳述すると、当接面54fの突出軸57fとの接触部(作用点)には、当接面54fの面に対して概ね垂直な方向の外力Rが働く。ここで図9に示すように、外力Rの作用線(外力Rが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸66の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸66(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Rが加えられることにより、主クラッチレバー54の当接面54fには、回動軸66に関する右側面視時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り)と同じ方向である。
したがって、当接面54fが突出軸57fにより後下方に押されることによって(図9参照)、主クラッチレバー54が切位置まで回動される(図5参照)。
【0068】
なお、右側面視における突出軸57fと当接面54fとが当接する地点(作用点)は、回動軸66の中心が配置される地点よりも上方となるように設定される。また、突出軸57fと当接面54fとの作用時には、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として切位置側へ向かう方向に押されるように、突出軸57f及び当接面54fの位置が調整されている。
【0069】
このように、連係機構70では、突出軸57fが当接面54fに当接することにより、駐車ブレーキレバー57の作動位置側への回動と、主クラッチレバー54の切位置側への回動と、が連動するようにしている。
【0070】
以上の如く、本実施形態に係る管理機1は、エンジン12からミッションケース20の入力軸21への動力の伝達を入切する主クラッチ14dと、走行車輪30・30の回転に抵抗を付与するブレーキ装置18と、主クラッチ14dと連係されるとともに、主クラッチ14dが「入」となる入位置から主クラッチ14dが「切」となる切位置までの範囲内において、回動軸66を中心として回動可能である主クラッチレバー54と、ブレーキ装置18と連係されるとともに、ブレーキ装置18が「作動」となる作動位置からブレーキ装置18が「解除」となる解除位置までの範囲内において、その軸線方向が回動軸66の軸線方向と平行であり、かつ、その軸線方向が回動軸66の軸線方向と一直線ではない回動軸69を中心として回動可能である駐車ブレーキレバー57と、を具備する歩行型管理機において、駐車ブレーキレバー57には突出軸57fが形成され、主クラッチレバー54には突出軸57fと当接可能な当接面54fが形成され、駐車ブレーキレバー57が作動位置にあり、かつ、主クラッチレバー54が切位置から入位置に向かう途中の所定の回動位置Xにあるときに、当接面54fが突出軸57fに当接することにより、主クラッチレバー54のそれ以上の入位置側への回動が規制される、ものである。
したがって、駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合には、主クラッチレバー54を切位置から入位置まで回動することができない。
【0071】
このように構成することにより、作業者が誤操作により、ブレーキ装置18を「作動」の状態にしたまま主クラッチ14dを「入」の状態にしようとしても、主クラッチレバー54を入位置まで回動することができない。このため作業者は、駐車ブレーキレバー57を操作してブレーキ装置18を「解除」の状態に切り替える必要があることに容易に気づくことができる。よって、作業者による主クラッチレバー54の誤操作を防止することができ、管理機1の操作性及び安全性が向上する。
【0072】
また、本実施形態に係る管理機1は、回動位置Xにおいて当接面54fが突出軸57fを押すことにより突出軸57fに付与される回動軸69に関するモーメントの方向は、駐車ブレーキレバー57の回動軸69を中心とする解除位置側への回動に伴って突出軸57fが移動する方向とは反対の方向である、ものである。
したがって、当接面54fが突出軸57fを押す力は、駐車ブレーキレバー57の解除位置側への回動に寄与しない。
【0073】
このように構成することにより、主クラッチレバー54の切位置から入位置までの回動を確実に規制することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る管理機1は、主クラッチレバー54が入位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置に向かう途中の所定の回動位置Yにあるときに、突出軸57fが当接面54fに当接することにより、主クラッチレバー54が切位置側に回動される、ものである。
したがって、主クラッチレバー54が入位置にある場合に、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に回動すると、これに連動して主クラッチレバー54が切位置側に回動される。
【0075】
このように構成することにより、作業者が主クラッチ14dを「入」の状態にしたままブレーキ装置18を「作動」の状態にしようとしても、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に回動する操作に連動して主クラッチレバー54が切位置側に回動されて、主クラッチ14dが「切」となる。したがって、管理機1を駐車する(走行を停止し、かつ、耕耘作業を停止した状態を保持する)際には、駐車ブレーキレバー57を操作することにより、ブレーキ装置18が「作動」、かつ、主クラッチ14dが「入」の状態にすることができる。よって管理機1の操作が簡潔となり、管理機1の操作性が向上する。
【0076】
さらに、本実施形態に係る管理機1は、回動位置Yにおいて突出軸57fが当接面54fを押すことにより当接面54fに付与される回動軸66に関するモーメントの方向は、主クラッチレバー54の回動軸66を中心とする切位置側への回動に伴って当接面54fが移動する方向と同じ方向である、ものである。
したがって、突出軸57fが当接面54fを押す力は、主クラッチレバー54の切位置側への回動に寄与する。
【0077】
このように構成することにより、駐車ブレーキレバー57を解除位置から作動位置側に回動する操作に連動して、主クラッチレバー54を円滑に切位置側に回動することができる。
【0078】
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、上記の実施形態に代えて以下の構成とすることも可能である。
【0079】
上記の実施形態の突出軸57fは、駐車ブレーキレバー57(短辺部57b)の右側面から主クラッチレバー54が配置される側に突出する円柱形状の部材とした。しかしながら、本発明に係る「当接部」は係る構成のものに限らない。例えば、駐車ブレーキレバーの下面を左右方向にある程度の幅を有する形状に構成し、この下面を本発明に係る当接部とすることも可能である。
【0080】
上記の実施形態の当接面54fは、主クラッチレバー54における前延出部54cの板面の厚みにより形成される面とした。しかしながら、本発明に係る「被当接部」は係る構成のものに限らない。例えば、主クラッチレバーの板面の一部を駐車ブレーキが配置される側に折り曲げて突出片を形成し、この突出片を本発明に係る被当接部とすることも可能である。
【0081】
上記の実施形態においては、「駐車ブレーキレバー57が作動位置にある場合において、主クラッチレバー54が切位置から入位置まで回動することを規制する機構」において突出軸57fと当接する被当接部と、「主クラッチレバー54が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー57が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー54を切位置側に回動する機構」において突出軸57fと当接する被当接部と、は、当接面54f上に面一に形成されるものとした。しかしながら、当該二つの機構において突出軸57fと当接する被当接部を、別個の被当接部(例えば、面一ではない二つの面)として構成してもよい。
【0082】
以下では、管理機2の構成について、図10及び図11を参照して説明する。
管理機2は、連係機構70に代えて、連係機構90を具備する点で、管理機1と相違する。
なお、以下の説明においては、管理機1に具備される部材と、形状、材質及び機能の点において同様の部材に関しては、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0083】
主クラッチレバー94は、主クラッチ14dを「入」または「切」に人為的に切り替えるための操作具である。
図10に示すように、主クラッチレバー94は前後方向に長い板状の部材であり、後延出部94a、中途部94b、及び前延出部94cを有する。後延出部94aの先端部(後端部)には、グリップ94gが形成される。中途部94bには、回動軸66を貫装するための円筒部(不図示)、及び、プレート59の下面と当接する突出片54e、が形成される。前延出部94cには当接面94fが形成される。
主クラッチレバー94は、「切位置」から「入位置」までの範囲内において、回動軸66を中心として回動可能である。
【0084】
駐車ブレーキレバー97は、ブレーキ装置18を「作動」または「解除」に人為的に切り替えるための操作具である。
図10に示すように、駐車ブレーキレバー97は、側面視において概ねL字型の板状の部材であり、長辺部97a、短辺部97b、及び角部97cを有する。長辺部97aの先端部(後端部)には、グリップ97gが形成される。角部97cには、回動軸69を貫装するための円筒部(不図示)が形成される。短辺部97bには、ワイヤー軸57e及び突出軸97fが形成される。
駐車ブレーキレバー97は、「作動位置」から「解除位置」までの範囲内において、回動軸69を中心として回動可能である。
【0085】
ここで、右側面視において、回動軸69の中心が配置される地点は、回動軸66の中心が配置される地点の前方に配置されている。このように、回動軸69と回動軸66とは、相互に平行であり、かつ、軸線方向が一直線とならないように配置されている。
【0086】
以下では、連係機構90の構成について、図10及び図11を参照して詳細に説明する。
連係機構90は、(1)駐車ブレーキレバー97が作動位置にある場合において、主クラッチレバー94が切位置から入位置側に回動されると、これに連動して駐車ブレーキレバー97を解除位置側に回動する機構と、(2)主クラッチレバー94が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー97が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー94を切位置側に回動する機構と、を有する。
【0087】
連係機構90は、突出軸97f及び当接面94f等により構成される。
【0088】
突出軸97fは、駐車ブレーキレバー97の短辺部97bに形成されるものであり、短辺部97bの右側面から主クラッチレバー94が配置される側に向かって突出する円柱形状の部材である。突出軸97fの軸線は、回動軸69の軸線と平行である。
側面視における突出軸97fの位置は、管理機1に係る突出軸57fの位置よりもワイヤー軸57eに近づけた位置に配置される。
【0089】
当接面94fは、主クラッチレバー94の前延出部94cの上面に形成されるものであり、前延出部94cの板面の厚みにより形成される面である。
当接面94fの水平面に対する傾斜角度は、管理機1に係る主クラッチレバー54の当接面54fの傾斜角度よりも若干緩やかである(水平面に対する傾きが相対的に小さい)。
【0090】
次に、駐車ブレーキレバー97が作動位置にある場合において、主クラッチレバー94が切位置から入位置側に回動されると、これに連動して駐車ブレーキレバー97を解除位置側に回動する機構について、図10を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー94が切位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー97が作動位置にある状態を、初期の状態と想定して説明を行う。
【0091】
初期の状態のとき、突出軸97fは、側面視において主クラッチレバー94の当接面94fの前方に配置されている。ここで、主クラッチレバー94を切位置から入位置側に向かって回動すると、入位置に向かう途中の所定の回動位置Vに到達したときに、当接面94fが突出軸97fに当接する(図10参照)。
当接面94fが突出軸97fに当接したとき、突出軸97fは当接面94fにより前上方に押される。詳述すると、突出軸97fの当接面94fとの接触部(作用点)には、当接面94fに対して概ね垂直な方向の外力Tが働く。ここで、図10に示すように、外力Tの作用線(外力Tが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸69の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸69(の中心)の上方を通過する直線を成している。このため、外力Tが加えられることにより、駐車ブレーキレバー97の突出軸97fには、回動軸69に関する右側面視時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、駐車ブレーキレバー97が回動軸69を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り、すなわち解除位置側へ向かう回動方向)と同じ方向である。
したがって、突出軸97fが当接面94fにより前上方に押されることによって(図10参照)、駐車ブレーキレバー97が解除位置まで回動される。
【0092】
次に、主クラッチレバー94が入位置にある場合において、駐車ブレーキレバー97が解除位置から作動位置側に回動されると、これに連動して主クラッチレバー94を切位置側に回動する機構について、図11を参照して詳細に説明する。
以下では、主クラッチレバー94が入位置にあり、かつ、駐車ブレーキレバー97が解除位置にある状態を、初期の状態と想定して説明を行う。
【0093】
初期の状態のとき、突出軸97fは、側面視において主クラッチレバー94の当接面94fの上方に配置されている。ここで、駐車ブレーキレバー97を作動置側に向かって回動すると、作動位置に向かう途中の所定の回動位置Wに到達したときに、突出軸97fが当接面94fに当接する(図11参照)。
突出軸97fが当接面94fに当接したとき、当接面94fは突出軸97fにより後下方に押される。詳述すると、当接面94fの突出軸97fとの接触部(作用点)には、当接面94fに対して概ね垂直な方向の外力Uが働く。ここで、図11に示すように、外力Uの作用線(外力Uが働く方向に延びる直線)は、右側面視において、回動軸66の中心と、前記作用点と、を結ぶ直線に対して傾いており(平行ではなく)、かつ、回動軸66(の中心)の下方を通過する直線を成している。このため、外力Uが加えられることにより、主クラッチレバー94の当接面94fには、回動軸66に関する右側面視時計回りのモーメントが付与される。係るモーメントの方向は、主クラッチレバー54が回動軸66を中心として回動可能な方向(右側面視時計回り、すなわち切位置側へ向かう回動方向)と同じ方向である。
したがって、当接面94fが突出軸97fにより下方に押されることによって(図11参照)、主クラッチレバー94が切位置まで回動される。
【0094】
このように、「当接部」を形成する位置を変更したり、「当接部」と「被当接部」とが当接する面の傾斜角度を変更したりすることにより、主クラッチレバー及び駐車ブレーキレバーが連動する態様を適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 管理機(歩行型管理機)
14d 主クラッチ
18 ブレーキ装置
54 主クラッチレバー
54g グリップ
66 回動軸(主クラッチレバーの回動軸)
57 駐車ブレーキレバー
69 回動軸(駐車ブレーキレバーの回動軸)
54f 当接面(当接部)
57f 突出軸(被当接部)
58 ハンドル
52 把持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記当接部と前記被当接部との当接により、前記主クラッチレバー及び前記駐車ブレーキレバーの相互の位置関係が制限されるとともに、前記駐車ブレーキレバーが作動位置にある場合には、前記主クラッチレバーが切位置に保持されることとした、歩行型管理機。
【請求項2】
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記駐車ブレーキレバーが作動位置にあり、かつ、前記主クラッチレバーが前記切位置から入位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記被当接部が前記当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーのそれ以上の入位置側への回動が規制される、歩行型管理機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行型管理機であって、
前記主クラッチレバーが入位置にあり、かつ、前記駐車ブレーキレバーが解除位置から作動位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記当接部が前記被当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーが切位置側に回動される、歩行型管理機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の歩行型管理機であって、
前記主クラッチレバーのグリップは、作業者が操作時に握るハンドルの把持部から手を離さなくても親指が届く範囲内に配置される、歩行型管理機。
【請求項1】
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記当接部と前記被当接部との当接により、前記主クラッチレバー及び前記駐車ブレーキレバーの相互の位置関係が制限されるとともに、前記駐車ブレーキレバーが作動位置にある場合には、前記主クラッチレバーが切位置に保持されることとした、歩行型管理機。
【請求項2】
主クラッチを「入」または「切」に切替操作する主クラッチレバーと、
ブレーキ装置を「作動」または「解除」に切替操作する駐車ブレーキレバーと、を具備する歩行型管理機において、
前記駐車ブレーキレバーには当接部が形成され、
前記主クラッチレバーには前記当接部と当接可能な被当接部が形成され、
前記駐車ブレーキレバーが作動位置にあり、かつ、前記主クラッチレバーが前記切位置から入位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記被当接部が前記当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーのそれ以上の入位置側への回動が規制される、歩行型管理機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行型管理機であって、
前記主クラッチレバーが入位置にあり、かつ、前記駐車ブレーキレバーが解除位置から作動位置に向かう途中の所定の回動位置にあるときに、前記当接部が前記被当接部に当接することにより、前記主クラッチレバーが切位置側に回動される、歩行型管理機。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の歩行型管理機であって、
前記主クラッチレバーのグリップは、作業者が操作時に握るハンドルの把持部から手を離さなくても親指が届く範囲内に配置される、歩行型管理機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−182758(P2011−182758A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54479(P2010−54479)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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