説明

歩行型耕耘機

【課題】泥除け板への泥の付着を抑制することのできる歩行型耕耘機を提供する。
【解決手段】歩行型耕耘機1は、下方に突出する伝動軸19を有するエンジン3と、エンジン3に取付けられて下方に伸び伝動軸19から伝達される回転を伝動軸19の軸方向と略垂直方向に延びる耕耘軸5から出力するギヤケース2と、ギヤケース2にフレーム4とハンドルブラケットを介して取付けられる操縦ハンドルと、耕耘軸5の回転動力により駆動される耕耘刃6と、エンジン3と耕耘刃6との間に設けられ、耕耘刃6に対向する面にフッ素を含有する樹脂が塗布されたフッ素樹脂コーティング面23を有する、耕耘刃6を覆う泥除け板7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を耕耘するための歩行型耕耘機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行型耕耘機には耕耘刃の上方を覆う泥除け板が設けられ、回転する耕耘刃が跳ね上げる土や泥が泥除け板上方に設けられたエンジンや作業者に向かって飛散することを防止している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−240750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、耕耘刃から飛散した泥が泥除け板に付着して堆積すると、耕耘機の重量が増加して操縦性が低下するうえ、泥を取り除くための清掃作業が必要になるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、泥除け板への泥の付着を抑制することのできる歩行型耕耘機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る歩行型耕耘機は、
下方に突出する出力軸を有するエンジンと、
前記出力軸を囲むように前記エンジンの下部に設けられて下方に伸び、前記出力軸から伝達される回転を前記出力軸の軸方向と略垂直方向に延びる駆動軸から出力するギヤケースと、
該ギヤケースから斜め上方に延びる操縦ハンドルと、
前記駆動軸の回転動力により駆動される耕耘刃と、
前記エンジンと前記耕耘刃との間に設けられ、前記耕耘刃に対向する面にフッ素を含有する樹脂が塗布されたフッ素樹脂コーティング面を有する、前記耕耘刃を覆う泥除け板と、を備える、ことを特徴とする。
【0007】
また、前記泥除け板と前記エンジンとの間に設けられ、前記出力軸に取付けられるファンにより前記泥除け板に向かって送風する送風機と、
該送風機の下方に位置し、前記泥除け板を貫通する、第1の貫通孔と、を備えてもよい。
【0008】
さらに、前記泥除け板は、前記駆動軸の延びる方向と略直角方向に前記耕耘刃側に突出するように延び、前記第1の貫通孔が接続されるとともに突出側の側面に第2の貫通孔が形成され、長手方向の端部が閉じられる中空形状の中空突出部を有してもよい。
【0009】
また、前記中空突出部は、前記中空突出部の長手方向と垂直な断面において、底辺に前記第1の貫通孔が形成され、他の辺に前記第2の貫通孔が形成される、略三角形状の中空断面を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フレームと耕耘刃との間に耕耘刃に対向する面にフッ素を含有する樹脂が塗布された耕耘刃を覆う泥除け板が設けられるので、泥除け板への泥土等の付着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る歩行型耕耘機の斜視図である。
【図2】図1の要部の側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る歩行型耕耘機の要部の側面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3の歩行型耕耘機の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の第1実施形態を添付の図1、図2に沿って説明する。図1に示すように、歩行型耕耘機(以下、耕耘機)1は、下方に伸びるギヤケース2が取付けられたエンジン3と、ギヤケース2に取付けられるフレーム4と、ギヤケース2の下端近傍から伸びる耕耘軸(駆動軸)5に固定された4枚の耕耘刃6と、フレーム4の下方(耕耘刃6側)でギヤケース2に取付けられて耕耘刃6を部分的に覆う泥除け板7と、フレーム4にハンドルブラケット8を介して取付けられた右側ハンドル9aと左側ハンドル9bから成るハンドル(操縦ハンドル)9と、ギヤケース2から後方斜め下方(図の右下方)に伸びる抵抗棒10とを備えている。
【0013】
エンジン3はクランク軸(図示せず)がギヤケース2の伸びる方向と同方向(図1の上下方向)を向くようにギヤケース2の上端に設けられる。エンジン3の側部には、燃料タンク11、エアクリーナ12が取付けられ、エンジン3の上部にはスタータハンドル13を備えたリコイルスタータ14が取付けられている。右側ハンドル9aの端部近傍にはスロットルケーブル15の一方の端部が接続されたスロットルレバー16が取付けられている。スロットルケーブル15の他方の端部はキャブレター(図示せず)に接続され、スロットルレバー16の操作に応じてエンジン3の回転が調整される。抵抗棒10は長孔部17が形成され、抵抗棒10には長孔部17内を移動可能に車輪18が取付けられている。
【0014】
図2に示すように、ギヤケース2の内部には、エンジン3のクランク軸(図示せず)の回転を遠心クラッチ(図示せず)を介して伝達する伝動軸(出力軸)19が設けられている。伝動軸19の下部には円筒ウォーム20が形成される。円筒ウォーム20はギヤケース2の内部で耕耘軸5に固定されたウォームホイール21に噛み合い、円筒ウォーム20とウォームホイール21はウォームギヤ22を構成する。エンジン3の出力は、伝動軸19からウォームギヤ22を介して耕耘軸5に伝達され、耕耘刃6を回転駆動する。また、泥除け板7は、耕耘刃6側の面(下面)に、フッ素を含有した樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、が塗布されたフッ素樹脂コーティング面23を有している。
【0015】
このように構成された耕耘機1によれば、エンジン3作動中に作業者がスロットルレバー16を握ると、エンジン3の回転が上昇して遠心クラッチ(図示せず)が接続し伝動軸19が回転する。伝動軸19の回転はウォームギヤ22、耕耘軸5を経て耕耘刃6に伝達される。そして、耕耘刃6が回転することで圃場が掘り起こされる。このとき、掘り起こされた泥土等が耕耘刃6の回転により跳ね上がり、泥除け板7のフッ素樹脂コーティング面23にぶつかることになる。しかし、フッ素樹脂コーティング面23は非粘着性、低摩擦性を有しているので、泥除け板7にぶつかった泥土等がフッ素樹脂コーティング面23に付着することを大幅に抑制することができる。また、泥土等がフッ素樹脂コーティング面23に付着した場合であっても、フッ素樹脂コーティング面23は非粘着性、低摩擦性を有しているので、エンジン3の振動および耕耘機1による耕耘作業による振動により、付着した泥土等をフッ素樹脂コーティング面23から容易に剥離し落下させることができる。したがって、泥除け板7への泥土等の付着による耕耘機1の重量の増加を抑えることができ、操縦性の変化が抑制されて作業性を良好に維持することができる。また、泥除け板7への泥土等の付着が抑えられるので、頻繁に清掃する必要がなくなるうえ、付着した泥土等を落とす清掃作業を容易に行うことができる。
【0016】
次に、本発明の第2実施形態に係る歩行型耕耘機(以下、耕耘機)101について、図3乃至図5に沿って説明する。本実施形態における耕耘機101では、第1実施形態の耕耘機1に対して、エンジン3と泥よけ板107の間に送風機124を設け、送風機124から送られる空気を泥除け板107の耕耘刃6側に設けた中空突出部(突出部)125の空気吹出孔(第2の貫通孔)126から噴出するように変更している。なお、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付することでその詳細な説明は省略する。
【0017】
図3、図4に示すように、エンジン3と泥除け板107との間には送風機124が設けられている。送風機124の側部には、空気導入孔127が形成され、送風機124の内部には伝動軸19に固定されたファン128が設けられ、ファン128は図の下方に向かって送風する。また、送風機124は下部で泥除け板107に接し、送風機124の下方の下流に位置する泥除け板107には空気流通孔(第1の貫通孔)129が複数設けられている。なお、送風機124はギヤケース102と一体に構成され、ギヤケース102の送風機124部分の側部において送風機124部分を挟むようにフレーム4が取付けられている。また、ギヤケース102の送風機124部分の上方には、伝動軸19にエンジン3の出力を伝達する遠心クラッチ130が設けられている。泥除け板107の下側(耕耘刃6側)には、頂点が下向きの略三角形の中空断面を持ち、泥除け板107の前端(図3の左端)から後端(図3の右端)まで伸び、前端と後端が閉じた、2つの中空突出部125がギヤケース102を挟んで略平行に設けられている。図4に示すように、中空突出部125の中空部分は泥除け板107に形成された空気流通孔129を介して送風機124のファン128が収められた内部空間と接続されている。また、中空突出部125の泥除け板107から突出する2つの側面にはそれぞれ複数の空気吹出孔126が形成されている。そして、泥除け板107と中空突出部125の下側(耕耘刃6側)の面には、フッ素を含有した樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、が塗布されたフッ素樹脂コーティング面123が設けられている。
【0018】
このように構成された耕耘機101によれば、エンジン3作動中に作業者がスロットルレバー(図示せず)を握ると、エンジン3の回転が上昇して遠心クラッチ(図示せず)が接続し伝動軸19が回転する。伝動軸19の回転はウォームギヤ22、耕耘軸5を経て耕耘刃6に伝達され、耕耘刃6が回転することで図5に示すように圃場140が掘り起こされる。その一方、伝動軸19が回転することで送風機124内のファン128が回転し、図4に矢印で示すように、空気は、空気導入孔127から送風機124内に取り込まれ、空気流通孔129を通って中空突出部125の空気吹出孔126から噴出する。
【0019】
作業中、掘り起こされた泥土等が耕耘刃6の回転により跳ね上がり、泥除け板107にぶつかることになる。しかし、泥除け板107には斜め下向き(図4参照)に空気を噴出する空気吹出孔126が形成された中空突出部125が設けられているので、空気吹出孔126から噴出した空気により耕耘刃6により跳ね上げられた泥土等は泥除け板107に付着することなく落下させることができる。また、図5に示すように、泥土等141が泥よけ板107に付着した場合であっても、空気吹出孔126から噴出する空気が付着した泥土等141を泥よけ板107表面より浮き上がらせ、泥土等を矢印で示すように落下させることができる。また、中空突出部125は頂点が下向きの略三角形の断面を有するので、耕耘刃6に対向する面積を半円やその他の形状と比べて小さくすることができ、泥土等141の付着を抑制し、落下しやすくすることができる。また、泥土等141が飛散する方向に対して表面が傾斜することで、泥土等の付着を抑制することができる。さらに、中空突出部125は泥除け板107の前端から後端まで延びることで泥除け板107を補強することもできる。さらに、泥除け板107の耕耘刃6側には非粘着性、低摩擦性を有するフッ素樹脂コーティング面123が設けられているので、泥除け板7にぶつかった泥土等がフッ素樹脂コーティング面123に付着することを大幅に抑制することができる。また、泥土等がフッ素樹脂コーティング面123に付着した場合であっても、フッ素樹脂コーティング面123は非粘着性、低摩擦性を有しているので、上述の空気吹出孔126から噴出する空気による泥土等を浮き上がらせて落下させる作用をより効果的に達成できるうえ、エンジン3の振動および耕耘機101による耕耘作業による振動により、付着した泥土等をフッ素樹脂コーティング面123から容易に剥離し落下させることができる。したがって、泥除け板107への泥土等の付着による耕耘機101の重量の増加をより抑制することが可能となり、操縦性の変化がより抑制されて作業性を良好に維持することができる。また、泥除け板107への泥土等の付着が一層抑えられるので、頻繁に清掃する必要がなくなるうえ、付着した泥土等を落とす清掃作業がより容易になる。
【0020】
なお、上述の第1実施形態では、泥除け板7は湾曲した板状に形成されているが、この泥除け板7の下面に第2実施形態で示した中空突出部125のように、頂点が下向きの略三角形断面を持ち、泥除け板7の前端から後端まで伸びギヤケース2を挟んで略平行に設けられる突出部を設けても良い。また、上述の第2実施形態では、泥除け板107には中空突出部125が設けられているが、中空突出部125を取除き、泥除け板107に設けた空気流通孔129から直接下方に向かって空気を噴出するように構成してもよい。この場合でも、空気の噴出により泥土等の付着を抑制しすることができるうえ、部品点数が少なくなるので製造コストや製品コストを抑えることができるという更なる利点がある。なお、この場合の空気流通孔129の位置は第2実施形態の場合と同じ位置に限られるものでは無い。なお、上述の第2実施形態、第1実施形態の変形例では、中空突出部125、突出部の断面形状は略三角形であったが、断面形状は略三角形に限られるものでは無く、例えば、略半円、略半楕円、略四角等の断面形状を有していてもよい。
【符号の説明】
【0021】
1、101 歩行型耕耘機
2、102 ギヤケース
3 エンジン
4 フレーム
5 耕耘軸
6 耕耘刃
7、107 泥除け板
19 伝動軸
22 ウォームギヤ
23、123 フッ素樹脂コーティング面
124 送風機
125 中空突出部
126 空気吹出孔
127 空気導入孔
128 ファン
129 空気流通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に突出する出力軸を有するエンジンと、
前記出力軸を囲むように前記エンジンの下部に設けられて下方に伸び、前記出力軸から伝達される回転を前記出力軸の軸方向と略垂直方向に延びる駆動軸から出力するギヤケースと、
該ギヤケースから斜め上方に延びる操縦ハンドルと、
前記駆動軸の回転動力により駆動される耕耘刃と、
前記エンジンと前記耕耘刃との間に設けられ、前記耕耘刃に対向する面にフッ素を含有する樹脂が塗布されたフッ素樹脂コーティング面を有する、前記耕耘刃を覆う泥除け板と、を備える、
ことを特徴とする歩行型耕耘機。
【請求項2】
前記泥除け板と前記エンジンとの間に設けられ、前記出力軸に取付けられるファンにより前記泥除け板に向かって送風する送風機と、
該送風機の下方に位置し、前記泥除け板を貫通する、第1の貫通孔と、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行型耕耘機。
【請求項3】
前記泥除け板は、前記駆動軸の延びる方向と略直角方向に前記耕耘刃側に突出するように延び、前記第1の貫通孔が接続されるとともに突出側の側面に第2の貫通孔が形成され、長手方向の端部が閉じられる中空形状の中空突出部を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の歩行型耕耘機。
【請求項4】
前記中空突出部は、前記中空突出部の長手方向と垂直な断面において、底辺に前記第1の貫通孔が形成され、他の辺に前記第2の貫通孔が形成される、略三角形状の中空断面を有する、
ことを特徴とする請求項3に記載の歩行型耕耘機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−177053(P2011−177053A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42266(P2010−42266)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】