説明

歩行型草刈機

【課題】主カッターを有する草刈機本体の走行方向において片側に側部カッターを並設している歩行型草刈機であって、走行時の直進安定性に優れており、作業時に側部カッターに対し草を切断することによる大きな負荷がかかったときにも、直進安定性を維持できる歩行型草刈機を提供する。
【解決手段】歩行型草刈機(A1)は、前輪(4)と後部に設けられたクローラ(5)を備えており、クローラ(5)は、前部側の駆動輪(50)と後部側の従動輪(51)にクローラベルト(52)を回し掛けた構成を有し、従動輪(51)は駆動輪(50)の回転軸と同軸となるように基端部が軸支され、軸支部を中心として所要の範囲で回動が自在であるクローラフレーム(53)の先端部に軸支されており、クローラフレーム(53)を下回動方向へ付勢するダンパー(55)を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型草刈機の改良に関するものである。更に詳しくは、草刈機本体の中央部に主カッターを備え、進行方向に対して草刈機本体の左側又は右側に側部カッターを並設している歩行型草刈機において、直進安定性の向上を図り、また、前部側に掛かる荷重を小さくして比較的小さな力で前部側を持ち上げることができ、その状態でも安定して走行できる歩行型草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行型草刈機には、駆動輪等の走行装置と主カッターを備えた草刈機本体の走行方向の左側又は右側の何れか一方側に、上下方向へ揺動自在な可動フレームを設け、この可動フレームに側部カッターを備えたものがある(例えば特許文献1参照)。
この歩行型草刈機は、面積が比較的広い平地又は傾斜地用としてではなく、主に水平部と傾斜部の二面の草刈りを同時に行う畦用として使用されている。
【0003】
前記歩行型草刈機で畦の水平部と傾斜部の二面の草刈りを行う場合、側部カッターに対し草の切断時に大きな負荷がかかると、草刈機の前部が側部カッター側、即ち畦の傾斜部側へ振れる等して直進安定性が確保しにくい。このため、草刈作業中に度々その向きを修正する必要が生じ、草刈作業効率の低下を招来する。
草刈機の走行時における直進安定性をよくする方法のひとつとして、駆動輪等の走行装置を車輪ではなくクローラ装置にする方法がある。
【0004】
このようなクローラ装置を備えた草刈機としては、例えば特許文献2に記載の「ゴムクローラ型草刈機」がある。この草刈機は、左右一対のゴムクローラ<1>を備えた機体<A>と、機体<A>の前部に装着された草刈ユニット<U>とから成る草刈機において、草刈ユニット<U>は、垂直回転軸<46>を中心に刈刃<41>が回転するロータリー式の構成を有しており、特に軟弱傾斜地盤において、機体が低い側にずれ落ちる傾向を可能な限り抑制して、等高線に沿って草木類を支障なく刈り取ることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−183170
【0006】
【特許文献2】特開2006−25676
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2記載の草刈機は、機体の下側に左右一対のゴムクローラを備え、一般のクローラ式作業機のクローラ装置と同じように、クローラベルトの接地部を複数の同じ高さに並設した転輪で押さえる構造である。
【0008】
このような構造のクローラ装置を特許文献1記載の歩行型草刈機に転用した場合、次のような課題を生じる。
すなわち、クローラベルトの接地部を押さえている複数の転輪は、同じ高さに並設されているために、クローラベルトの接地部は直線的で前後のスパンも比較的長くなり、なおかつ機体のフレームに対しては、その位置が固定的である。
【0009】
このため、畦の水平部等の走行面に、クローラベルトの設置面積を減少させるような凹凸部があると、クローラベルト下面に、走行面に対し接地しない部分が多く生じてしまい、クローラベルトの接地面積が小さくなる。このため、草刈作業時に側部カッターに対し草の切断時に大きな負荷がかかると、草刈機の前部が畦の傾斜部側へ振れ、直進性を維持することが難しくなり、草刈作業中に度々草刈機の向きを修正する必要が生じ、草刈作業効率の低下を招来する。
【0010】
また、草刈作業中には、例えば畦近くのコンクリート製の用水溝を乗り越えて移動するような場合も生じる。このような場合には、後部の操作ハンドルを押さえて前部側を持ち上げ(リフトアップし)、用水溝を乗り越えて移動することになるが、前記クローラ装置は、前記のように接地部が直線的で前後のスパンが長く、機体の略全長に亘っているために大型化し、その分車体の前部側に掛かる荷重も大きく、前部側は簡単には持ち上がらない。このため、用水溝を乗り越えて移動するような場合に、不自由を来す。
【0011】
また、前部側を持ち上げる場合は最後部の転輪を支点とすることになるが、最後部の転輪の位置におけるクローラベルトは、走行面に接地する部分がごく僅かであるため安定性に欠け、その状態で用水溝を乗り越えて移動するような走行は、危険を伴う。
【0012】
(本発明の目的)
本発明の目的は、草刈機本体の中央部に主カッターを備え、進行方向に対して草刈機本体の左側又は右側に側部カッターを並設している歩行型草刈機において、直進安定性の向上を図った歩行型草刈機を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、走行装置としてクローラ装置を使用した草刈機において、草刈機の前部側に掛かる荷重を小さくして比較的小さな力で前部側を持ち上げることができ、その状態でも安定して走行できる歩行型草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明は、
前側と後側に走行要素を備えている草刈機本体と、
該草刈機本体に設けられている主カッターと、
前記草刈機本体の左側又は右側に設けられている側部カッターと、
前記草刈機本体に設けられているハンドルと、
を備えている歩行型草刈機であって、
前記草刈機本体の後側に備えられている走行要素は、前記草刈機本体の後部から延設されているクローラ装置であり、
当該クローラ装置は、
クローラフレームと、
当該クローラフレームの草刈機本体側に設けられている駆動輪と、
前記クローラフレームの後端側に設けられている従動輪と、
前記駆動輪と従動輪に回し掛けられているクローラベルトと、
を備え、
前記クローラ装置(5)は、前記従動輪(51)側が上下に動くよう設けられており、前記クローラ装置と前記草刈機本体の間に付勢体を介在させて、前記クローラー装置を接地面側に付勢するようにしている、
歩行型草刈機である。
【0015】
(2)本発明は、
側部カッターが、草刈機本体の左側又は右側に設けられている上下方向へ揺動自在な可動フレームに設けられている、
前記(1)の歩行型草刈機である。
【0016】
(3)本発明は、
草刈機本体の前側に備えられている走行要素として車輪を使用し、該車輪がクローラ装置と共に駆動される構造である、
前記(1)又は(2)の歩行型草刈機である。
【0017】
(4)本発明は、
クローラ装置のクローラベルトに付着する泥や砂を取り除く泥砂除去手段を備えている、
前記(1)、(2)又は(3)記載の歩行型草刈機である。
【0018】
(作用)
本発明に係る歩行型草刈機の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0019】
歩行型草刈機は、クローラ装置(5)の後部の従動輪(51)側が付勢手段(55)の付勢力を利用しながら駆動輪(50)の回転軸(500)を中心として草刈機本体(1)に対し相対的に上下方向へ動く。したがって、走行面に凹凸があっても、少なくともクローラ装置(5)の後部の従動輪(51)側は、走行面の凹凸部の変化に追従するように上下方向に動き、クローラベルト(52)と走行面との接地状態を保ちながら走行することができるので、走行の際の直進安定性を図ることが出来る。
【0020】
また、歩行型草刈機のクローラ装置(5)は、前記したように後部の従動輪(51)側が草刈機本体(1)に対し相対的に上方向へ回動することができ、駆動輪(50)は草刈機本体(1)の後端部に回転軸(500)が軸支されているので、歩行型草刈機は、操作ハンドル(10)を下方向に操作することによって、駆動輪(50)が押さえているクローラベルト(52)の接地部分を支点とし、又は駆動輪(50)の回転軸(500)を中心として、歩行型草刈機の前部側を比較的小さな力で容易に持ち上げることができる。歩行型草刈機の前部側を持ち上げた状態では、前側の走行要素(4)と両カッター(6,8)が上昇して走行面との間に大きなクリアランスが生じる。
【0021】
歩行型草刈機は、前部側を持ち上げた状態でも、走行時においてクローラ装置(5)が走行に伴う凹凸部の変化に追従するように全体的に接地状態を保ちながら安定して走行することができるので、例えば畦近くのコンクリート製の用水溝を乗り越えて移動するような場合に、前輪(4)を用水溝に落としたり、用水溝にカッター(6,8)が接触することによりカッター(6,8)が損傷すること等を防止しながら乗り越えることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、クローラ装置の後部側が付勢体の付勢力によって接地できるようにしているので、走行時の直進安定性に優れる歩行型草刈機が提供できる。
【0023】
本発明によれば、草刈機の前部側を比較的小さな力で容易に持ち上げることができ、その状態でも安定した走行ができる歩行型草刈機が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る歩行型草刈機の一実施の形態を示すクローラ装置側から視た後方斜視図。
【図2】歩行型草刈機を図1とは反対側の可動フレーム側から視た前方斜視図。
【図3】歩行型草刈機の底面図。
【図4】歩行型草刈機の右側面図。
【図5】クローラ装置を駆動する運動伝達機構を示す分解説明図。
【図6】図4に示す歩行型草刈機の前部側を持ち上げた状態の側面図。
【図7】本発明に係る歩行型草刈機の他の実施の形態を示す左側面図。
【図8】歩行型草刈機の可動フレーム側から視た右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔実施の形態1〕
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図6を参照する。なお、以下の説明において、クローラ装置5を除く他の構成部分については、例えば特許文献1に示す公知の構造であるため簡単な説明に止め、詳細な説明は省略する。
【0026】
歩行型草刈機A1は、草刈機本体1を備えている。草刈機本体1は、主フレーム2を備えており、主フレーム2の上には原動機3が搭載されている。草刈機本体1の前側には走行要素であり、それ自身が駆動力を有する前輪4が、また、後側にはクローラ装置5がそれぞれ設けられている。
前輪4は、シャフトドライブ機構20を介してクローラ装置5と共に原動機3の動力によって駆動されるようになっている。
【0027】
図3に示すように、主フレーム2の下面側には、前輪4とクローラ装置5の間に、二枚のブレードが水平回転する構造の主カッター6が設けられている。符号60は、主カッター6の外方の一部を覆うように設けられたカッターカバーである。また、草刈機本体1の後部には操作ハンドル10が設けられている。
【0028】
歩行型草刈機A1の走行方向において、主フレーム2の左側には、軸支部9を中心として上下方向に揺動する可動フレーム7を備えている。可動フレーム7の下面側には、側部カッター8が設けられている。可動フレーム7の外周部には、側部カッター8の外方の一部を覆うように設けられたカッターカバー(符号省略)を形成している。側部カッター8は、動力伝達系である自在接手構造の動力伝達軸80を介し原動機3の動力により駆動される。
【0029】
符号70は、側部カッター8の刈高の調節ができると共に、刈高を所要高さで安定して保つための車輪である。また、符号40は、草刈機本体1の前輪4の高さを段階的に調節して主カッター6による刈高を調節するための刈高調節レバーである。
前記前輪4、クローラ装置5、主カッター6は、側部カッター8のように前記原動機3の動力を動力伝達系(符号省略:クローラ装置5の動力伝達系については後述する)を介してそれぞれに伝達して駆動される。
【0030】
次に、草刈機本体1の後部から延設されている走行要素であるクローラ装置5は、クローラフレーム53と、クローラフレーム53の草刈機本体1側に設けられている駆動輪50と、クローラフレーム53の後端側に設けられている従動輪51と、駆動輪50と従動輪51に回し掛けられているクローラベルト52とを備えている。そうして、クローラ装置5は、駆動輪50の回転軸500を中心として上下に動くよう設けられており、クローラ装置5と草刈機本体1の間に付勢体であるダンパー55を介在させて、クローラー装置5を接地面側に付勢するようにしている。
【0031】
クローラ装置5について詳しく説明する。
クローラ装置5は、前部側の径大な駆動輪50と、後部側の径小な従動輪51(いずれも図4、図6に図示)にゴム製のクローラベルト52を回し掛けた構成を有している。駆動輪50の回転軸500(図5参照)は、主フレーム2の後端部に位置するよう軸線方向を左右方向にして軸支されている。駆動輪50の回転軸500は、前記原動機3の動力を主フレーム2の後端部に設けられたミッションケース56及びそれにつながるチェーンケース59等に内蔵されている動力伝達機構を介して伝達することにより駆動される。
【0032】
ミッションケース56の中継軸57には、プーリー58が取り付けられており、原動機3側の駆動軸(図示省略)からベルト駆動により動力が伝達されるようになっている。
プーリー58は、図5に示すようにプーリー58を両側から挟み中継軸57と一体に回転するように取り付ける取付具580により中継軸57に取り付けられている。取付具580は複数種類の部品で構成され、プーリー58の表裏両側に当接する円環状の摩擦板582、583と、摩擦板582、583に対しプーリー58方向へ一定の圧力を付与する皿バネ581を含んでいる。
【0033】
前記クローラ装置5は、車輪よりも接地面積が広いために、原動機3からの動力を受けて強い駆動力を発揮する。このことはクローラ装置5に強い負荷が作用したときは、原動機3に与える影響は、車輪の場合よりも大きいことを意味する。
したがって、前記プーリー58の取付構造によれば、例えば歩行型草刈機A1の走行中にクローラ装置5にクローラベルト52の回転方向の大きな負荷がかかって止まってしまい、プーリー58に対して、プーリー58と摩擦板582、583の間に作用する摩擦力の限界を超える力が作用したときには、プーリー58が摩擦板582、583に対して滑り、空転するようになっている。これにより、前記のような場合でも、原動機3側に原動機3自体或いは動力伝達系等に破損を伴うような過大な負荷がかかることは防止される。
【0034】
クローラフレーム53は、側面視の外形がいわゆる涙滴形様の側板531、531aで構成されている。クローラフレーム53の径大な円弧部の中心部は、駆動輪50の回転軸500を貫通させて回転軸に対し回転自在に嵌装されており、後端部の径小な円弧部の中心には、前記従動輪51が回転軸510の軸線方向を左右方向にして軸支されている。駆動輪50及び従動輪51は、それぞれクローラフレーム53の円弧部よりやや径大に形成されている。符号54は、従動輪51の回転軸510を移動させてクローラベルト52の張りを調節する調節具である。
【0035】
クローラフレーム53において、従動輪51の回転軸510と駆動輪50の回転軸500の中間部には、前記ダンパー55を取り付ける取付ピン530が走行方向に対して左右方向となるように直角に突設して固定されている。また、前記チェーンケース59の上部寄りの走行方向後端縁部には、ブラケット590が固定されて設けられて(固設されて)いる。ブラケット590には、取付ピン591が走行方向に対して左右方向となるように突出して固定されている。そして、取付ピン530と取付ピン591の間には、付勢体であるダンパー55が、先端部を取付ピン530に、基端部を取付ピン591に、それぞれ回動自在となるように取り付けられている。
【0036】
ダンパー55は、所要の伸縮長を有し、クローラフレーム53を下向き方向(クローラ装置5を接地させる方向)へ付勢する。なお、ダンパー55は、他の付勢手段又は緩衝手段、例えばスプリングや各種ショックアブソーバ等で代替することもできる。
前記クローラ装置5の構造によれば、駆動輪50に巻き掛けられている部分のクローラベルト52を除き、他の部分のクローラベルト52は駆動輪50の回転軸500を中心として上下方向に動く。特に後部の従動輪51側のクローラベルト52が、草刈機本体1に対し相対的に上下方向へ動く(揺動又は回動する)ことができる。
これによって、歩行型草刈機A1が凹凸のある走行面を走行する際には、草刈機本体1が不安定に上下動しても、クローラ装置5の後部側は、ダンパー55の付勢力で走行面との接地状態を保ちながら走行面を走行することができる。
【0037】
また、歩行型草刈機A1の前部側を持ち上げるときは、操作ハンドルを押し下げれば容易に持ち上げられる。
即ち、草刈機本体1の荷重は、基本的には前輪4とクローラ装置5とで受けており、クローラ装置5が受ける荷重のうちの多くは、駆動輪50側で受けている。
クローラ装置5全体は、駆動輪50の回転軸500を中心として上下方向に動くようになっているので、操作ハンドル10を押し下げることによって、駆動輪50が押さえているクローラベルト52の接地部分が支点となり、駆動輪50の回転軸500を中心として、
歩行型草刈機A1は回動する。このような梃子の応用により、歩行型草刈機A1の前部側は持ち上げることができる。その際にダンパー55は縮み、クローラ装置5は接地面側に付勢され、クローラベルト52の接地部分は通常の走行の場合と同様の接地状態にある。
従って、クローラベルト52に駆動力をかけて走行する場合でも、安定した走行が確保できる。要するに、不安定なウイリー状態でも、車輪の場合と比較して、安定して走行できる。
【0038】
(作用)
歩行型草刈機A1によって畦の草刈作業を行う場合においては、前輪4とクローラ装置5が畦の上面を走行して主カッター6は畦の上面の草を刈り、側部カッター8は畦の斜面の草を刈るようにして使用する。
また、クローラ装置5は、前記したように後部の従動輪51側がダンパー55の付勢力を利用しながら駆動輪50の回転軸を中心として草刈機本体1に対し相対的に上下方向へ動く。
【0039】
これにより、クローラ装置5の後部の従動輪51側は、走行に伴う走行面の凹凸部の変化に追従するように上下方向に動き(揺動又は回動し)、クローラベルト52と走行面との接地状態を保ちながら走行することができる。したがって、歩行型草刈機A1は、走行面に凹凸があっても、走行中にクローラ装置5の接地圧を安定に維持できる。
また、クローラ装置5の前端部側にある駆動輪50及びその回転軸500は、草刈機本体1の後端部に位置しており、従って、クローラ装置5は、草刈機本体1から後方に延設されている。このため、クローラ装置5後端と前輪4との間の距離は、後部が車輪である場合と比較して長くなる。したがって、前記接地圧を安定に維持できることと相俟って凹凸のある走行面における走行において直進安定性に優れる。
【0040】
また、クローラ装置5は、前記したように後部の従動輪51側が主フレーム2に対し相対的に上方向へ動き、しかも、駆動輪50及びその回転軸は主フレーム2の後端部に位置している。これにより、歩行型草刈機A1は、作業者が後部側に設けられている操作ハンドル10に体重をかけて押し下げることによって、駆動輪50が押さえているクローラベルト52の接地部分を支点とし、又は駆動輪50の回転軸500を中心として草刈機の前部側を比較的小さな力で容易に持ち上げることができる(図6参照)。このとき、クローラ装置5も主フレーム2も持ち上げる際の邪魔にならない。
【0041】
歩行型草刈機A1の前部側を持ち上げた状態では、前輪4と両カッター6、8が上昇して走行面との間に比較的大きなクリアランスが生じる。歩行型草刈機A1は、このように前部側を持ち上げた状態でも、走行時においてクローラ装置5が走行に伴う走行面の凹凸部の変化に追従するようにクローラベルト52の接地状態を保ちながら安定して走行することができる。したがって、例えば畦近くのコンクリート製の用水溝を乗り越えて移動するような場合に、前輪4を用水溝に落としたり、用水溝に各カッター6、8が接触することにより各カッター6、8が損傷すること等を防止しながら乗り越えることが可能になる。
【0042】
〔実施の形態2〕
図7及び図8を参照する。
なお、図7、図8において、前記歩行型草刈機A1と同一または同等箇所には同一の符号を付して示し、構造について重複する説明は省略する。
歩行型草刈機A2は、クローラ装置5aが前記歩行型草刈機A1のクローラ装置5と異なる構造を有しており、他の部分の構造は同様である。
【0043】
クローラ装置5aのクローラフレーム53aは、可動フレーム7側の側板531と、前記クローラ装置5の側板531aの代替でありダンパー55側の腕部材532で構成されている。ダンパー55は、腕部材532とチェーンケース59に対して、前記歩行型草刈機A1のクローラ装置5における取付構造と同様にして取り付けられている。
【0044】
側板531は、歩行型草刈機A1のクローラ装置5の側板531と同様の形状であり、外形がクローラベルト52の軌道に沿うように形成されている。また、腕部材532は、側板531と異なり、その外形は側板531より細く、かつ全長にわたり同じ幅で形成されており、外形縁部は側板531と比較してクローラベルト52と大きく離れている。
【0045】
また、クローラ装置5aの後部側には、従動輪51の上部側に位置するクローラベルト52を跨ぐようにして、泥砂除去手段であるスクレーパ501が取り付けられている。スクレーパ501は丸棒を曲げて形成されており、両端部は側板531と腕部材532に固定されている。スクレーパ501のクローラベルト52を跨ぐ部分は、クローラベルト52の外面と所要の間隔をもって設けられている。なお、泥砂除去手段としては、本実施の形態のスクレーパの他、各パイプを同様に曲げ形成したもの、或いは板状のもの等、他の公知手段を採用することもできる。
【0046】
(作用)
歩行型草刈機A2は、クローラ装置5aの後部側をダンパー55を介し回動できるようにすることでクローラ装置5aの接地圧を安定に維持でき、走行時の直進安定性に優れている点や、草刈機の前部側を比較的小さな力で容易に持ち上げて、その状態で安定して走行することができる点については、前記歩行型草刈機A1と同様の作用を有しており、さらに次のような作用を有している。
【0047】
歩行型草刈機A2は、クローラ装置5aのクローラフレーム53aが側板531と腕部材532で構成され、腕部材532の外形縁部がクローラベルト52と大きく離れていることによって、走行時においてクローラフレーム53aとクローラベルト52の間に泥砂が詰まりにくく、清掃等のメンテナンスも比較的容易にできる。また、スクレーパ501によってクローラベルト52の外面に付着する泥砂の大部分を掻き落とすことができるので、泥砂が走行の邪魔にならず、草刈機の走行安定性が向上する。
【0048】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
A1 歩行型草刈機
1 草刈機本体
10 操作ハンドル
2 主フレーム
3 原動機
4 前輪
40 刈高調節レバー
5 クローラ装置
50 駆動輪
500 回転軸
51 従動輪
510 回転軸
52 クローラベルト
53 クローラフレーム
530 取付ピン
531、531a 側板
54 調節具
55 ダンパー
56 ミッションケース
57 中継軸
58 プーリー
580 取付具
582、583 摩擦板
581 皿バネ
59 チェーンケース
590 ブラケット
591 取付ピン
6 主カッター
60 カッターカバー
7 可動フレーム
70 車輪
8 側部カッター
80 動力伝達軸
9 軸支部
A2 歩行型草刈機
5a クローラ装置
53a クローラフレーム
501 スクレーパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側と後側に走行要素を備えている草刈機本体(1)と、
該草刈機本体(1)に設けられている主カッター(6)と、
前記草刈機本体(1)の左側又は右側に設けられている側部カッター(8)と、
前記草刈機本体(1)に設けられているハンドル(10)と、
を備えている歩行型草刈機であって、
前記草刈機本体(1)の後側に備えられている走行要素は、前記草刈機本体(1)の後部から延設されているクローラ装置(5)であり、
当該クローラ装置(5)は、
クローラフレーム(53)と、
当該クローラフレーム(53)の草刈機本体(1)側に設けられている駆動輪(50)と、
前記クローラフレーム(53)の後端側に設けられている従動輪(51)と、
前記駆動輪(50)と従動輪(51)に回し掛けられているクローラベルト(52)と、
を備え、
前記クローラ装置(5)は、前記従動輪(51)側が上下に動くよう設けられており、前記クローラ装置(5)と前記草刈機本体(1)の間に付勢体(55)を介在させて、前記クローラー装置(5)を接地面側に付勢するようにしている、
歩行型草刈機。
【請求項2】
側部カッター(8)が、草刈機本体(1)の左側又は右側に設けられている上下方向へ揺動自在な可動フレーム(7)に設けられている、
請求項1記載の歩行型草刈機。
【請求項3】
草刈機本体(1)の前側に備えられている走行要素として車輪(4)を使用し、該車輪(4)がクローラ装置(5)と共に駆動される構造である、
請求項1又は2記載の歩行型草刈機。
【請求項4】
クローラ装置(5)のクローラベルト(52)に付着する泥や砂を取り除く泥砂除去手段(501)を備えている、
請求項1、2又は3記載の歩行型草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−115200(P2012−115200A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267132(P2010−267132)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(393000984)株式会社オーレック (19)
【Fターム(参考)】