歩行波形処理方法及び歩行波形処理装置
【課題】歩行検出を精度よく行い得る歩行波形処理方法及び歩行波形処理装置を実現できるようにする。
【解決手段】人体周囲に形成される20[Hz]以下の周波数帯での電界変位から、直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、当該探索された振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、その振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出する。
【解決手段】人体周囲に形成される20[Hz]以下の周波数帯での電界変位から、直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、当該探索された振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、その振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行波形処理方法及び歩行波形処理装置に関し、例えば歩数を検出する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の歩行に伴って当該人体に形成される電界の変位(歩行波形)のうち、特異的に出現する振幅のピークを指標として、歩行の1歩に相当する1歩波形を特定する手法が本出願人により既に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる特異的な振幅のピークは、爪先が完全に離地した直後に出現する。右足(左足)の爪先が完全に離地した直後には、歩行態様の差異に係わらず左足(右足)は完全着地状態となることから、このときに対応する振幅のピークは、左右足相互間に帯電干渉が起こらないことにより、歩行波形のうち最も大きい振幅のピークとして8[Hz]±2[Hz]の帯域内にほぼ一律に出現する(図6中(2)及び(4))。
【0004】
歩行波形から、この8Hz±2Hzの帯域に出現する振幅のピークを検出し、これを1歩に相当する1歩波形の基準とすることによって的確に1歩波形を抽出可能となる。
【特許文献1】特開2004−147793公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、その後の実験の結果、右足(左足)の爪先が離地するタイミングと、左足(右足)の踵が接地するタイミングが近いため、当該爪先の離地に対応する振幅のピークは、踵の接地に対応する振幅のピークと干渉することにより現れない場合があるということが分かった。
【0006】
したがって、8Hz±2Hzの帯域内に出現する振幅のピークを1歩に相当する1歩波形の基準とすると、歩行における1歩を的確に特定することができないという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、歩行検出を精度よく行い得る歩行波形処理方法及び歩行波形処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明は、歩数波形処理方法であって、人体周囲に形成される20[Hz]以下の周波数帯での電界変位から、直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、探索された振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出するようにした。
【0009】
また本発明は、歩行波形処理装置であって、電界を検出する検出部と、検出部により検出される電界から、20[Hz]以下の周波数帯における信号成分を抽出する抽出部と、抽出部により抽出される信号成分から、遊脚期に生ずる振幅ピークを検出するピーク検出部とを設け、ピーク検出部では、信号成分から、該信号成分における直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、探索した振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出するようにした。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、1歩につき1つ出現し、かつ、一方の足が路面から最も離間し、他方の足の立脚が安定した状態となるときに対応して出現するもの、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の影響が最小となるピークを、1歩の基準とすることができ、この結果、例えば歩数をより一段と正確にカウントすることができる。
【0011】
また、探索した振幅ピークを直ちに遊脚期の振幅ピークとせず、該振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを遊脚期の振幅ピークとしていることから、歩行に対応しない電位変化(ノイズ)に起因する振幅ピークを排除することができ、この結果、例えば歩数をより一段と正確にカウントすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)歩行による人体の帯電と、人体周囲の電界との関係
歩行によって人体が帯電することはよく知られている。この人体帯電圧は、文献([作成者]木村裕和、[表題]繊維・高分子材料の帯電性とその評価方法、[媒体のタイプ]online、[発行日]平成10年6月29日、[作成元]評価技術部産業用繊維グループ、[情報源アドレス]http://www.tri.pref.osaka.jp/group/sense/sangyoseni/static.ele.pdf)によれば、敷物(床表面の材料)と、履物の種類に強く依存し、当該敷物と、履物の組み合わせで最も人体帯電圧の絶対値が低いのは、およそ480[V]とある。
【0013】
床を基準電位0[V]とし、人体が480[V]に帯電した場合の人体周囲における電界をシミュレーションし、当該シミュレーションより得られた電界強度の分布パターンを図1に示す。なおこのシミュレーションの条件としては、壁と天井がなく床のみが存在する空間に、図2に示す生体組織の誘電率でなる直立姿勢の人体モデルが存在することとした。ちなみに、シミュレーションのソフトウェアはポアソン方程式で3次元空間の電界を計算するものである。
【0014】
この図1からも明らかなように、人体周囲をまとうようにして電界が分布していることが分かる。この電界のベクトルは人体表面の法線方向となるものであることから、人体表面と、その人体表面から法線方向に離間した電極とを配置し、これら一対の電極間の電位差を検出すれば、歩行による人体の帯電圧の変化を得ることが可能となる。この電位差は、一般に、人体の帯電圧に比例するものであり、該帯電圧に対しておよそ0.02倍となる。
【0015】
一対の電極の配置対象を例えば手首とした場合、当該手首での電界強度はおよそ1000[V/m]となるが、電極間距離が1[cm]の電極を手首に配置したとすれば、その電極間の電位差はおよそ10[V]となる。この場合の理論上のノイズフロアは、電極面積を1[cm]×1[cm]、雑音係数を10、歩行波形の周波数帯域を10[Hz]と仮定すると、-154[dB]であるので、電界に換算すると、およそ6×10-9[V/m]となる。よって、かかる条件下では、歩行による人体の電位変化が6×10-9[V/m]以上であれば、該変化を検出することができる。
【0016】
(2)歩行態様と、歩行波形との関係
右足における歩行態様としては、図3に示すように、踵が離地(路面から離れることをいう。以下同じ)した直後から爪先が離地する直前までの離地プロセス(図3(A))と、爪先が離地した直後から踵が着地する直前までの蹴出プロセス(図3(B))と、踵が着地した直後から足底面全体が路面に対して着地(以下、これを完全着地と呼ぶ)するまでの着地プロセス(図3(C))との大きく3種類のプロセスが順次繰り返されている。
【0017】
また左足における人体歩行態様としては、右足と同様に3種類のプロセスが順次繰り返されるが、当該左足の各プロセスの開始時期については右足とは異なっており、右足の離地プロセスの途中で着床プロセスを開始し(図3(A)において矢印で示す)、当該右足における着地プロセスの途中で左足における離地プロセスを開始する(図3(C)において矢印で示す)。
【0018】
このように人体の歩行は、右足の着地プロセスに相反する左足の離地プロセスと、右足の離地プロセスに相反する左足の着地プロセスとがおよそ半周期ずれながら、当該右足及び左足の各プロセスが交互に繰り返されている。
【0019】
一方、歩行により人体周囲に形成される電位変化(歩行波形)は、該人体の導電率及び誘電率が高いので、等電位となり、主に、足底面における帯電量(即ち人体の帯電量)と、足底面と路面との間における静電容量との変化に対応する。
【0020】
ここで、人体の電位を「V」、人体の帯電量を「Q」、人体の静電容量を「C」とすると、該人体の電位は、「V=Q/C」と表すことができる。この人体の帯電量Qは、路面と、靴底(足底)との材質に起因する帯電系列の関係によって、正になる場合、負になる場合の双方の場合がある。
【0021】
例えば、路面の材質が軟質塩ビであり、足底が皮膚であるという条件では、人体の帯電量Qは正になる。この条件下において、片足に起因する電位変化(歩行波形)を図4に示す。
【0022】
この図4からも分かるように、片足の1歩(1step)に起因する歩行波形には、いくつかの特徴的な振幅ピークがある。まず、踵が離地した時点(図3(A)における左から2番目に相当)では、路面に対する踵の急速な剥離に伴って帯電量Qが増加し(剥離帯電)、かつ静電容量Cが減少することにより、負の振幅ピーク(以下、これをH波と呼ぶ)が現れる。
【0023】
その後、路面に対して足底面が徐々に離れ、爪先が離地した時点(図3(A)における右端に相当)でも、H波の発生の場合と同様に、路面に対する爪先の急速な剥離に伴って帯電量Qが増加し(剥離帯電)、かつ静電容量Cが減少することにより、負の振幅ピーク(以下、これをI波と呼ぶ)が現れる。
【0024】
やがて、路面から離れた足が加速し始め、その足の加速が最速となる時点(図3(B)における左から2番目に相当(加速期と呼ばれる))では、路面に対する足の位置が最も離れ、路面及び足間の静電容量が最小となるため、正の振幅ピーク(以下、これをJ波と呼ぶ)が現れる。
【0025】
その後、足を進行方向にスイングし、そのスイングした足が減速し始める時点には緩やかな正の振幅ピーク(以下、これをK波と呼ぶ)が現れ、当該減速し終わる時点にも緩やかな正の振幅ピーク(以下、これをL波と呼ぶ)が現れる。
【0026】
やがて、減速した足の踵が路面に接地した時点(図3(C)における左端に相当)では、路面に対する踵の離地に伴って帯電量Qが減少し(足底から電荷が放電)、かつ静電容量Cが増加することにより正の振幅ピーク(以下、これをM波と呼ぶ)が現れ、また、当該足底が路面に対して完全に接地した時点(図3(C)における右端に相当)では、路面に対する足底面の離地面積がなくなるため、正の振幅ピーク(以下、これをN波と呼ぶ)が現れる。
【0027】
なお、I波からM波までの期間は、足が路面から完全に浮いていることから遊脚期(swing phase)と呼ばれ、またM波から次のI波までの期間は、足が路面に着いていることから立脚期(stance phase)と呼ばれている。
【0028】
一方、図4と同じ条件下において、両足に起因する電位変化(歩行波形)を図5(A)に示す。この両足に基づく歩行波形は、右足及び左足の歩行プロセスが半周期ずれることに起因して片足に基づく歩行波形(図4)とは大きく異なるが、歩行の基本的な動作となる離地及び接地のときには、特徴的なピーク(図5(A)における実線で示す部分(J波に相当)と、破線で示す部分(I波及びM波に相当))が出現する。ちなみに、片足の歩行波形(図4)では、J波よりもM波(N波)が高いものとなっていたが、両足の歩行波形では、M波(N波)はI波との干渉等によりJ波よりも低いものとなる。
【0029】
これら特徴的なピークのうち、既に本出願人により開示した特開2004−147793では、右足(左足)の爪先が完全に離地した時点に左足(右足)が完全着地状態となるため、当該時点に対応して現れる負の振幅ピーク(I波)は、およそ半周期ずれながら交互に両足が動作していたとしても、およそ8[Hz]±2[Hz]に現れることから、1歩の検出指標とされた。
【0030】
しかしながら、一方の足における爪先の離地に対応する振幅ピーク(I波)は、図5(B)に示す両足に起因する電位変化(歩行波形)からも明らかなように、その振幅が低い状態で(図5(B)における破線で示す部分(I波及びM波に相当))出現する場合があることがわかった。これは、主に、右足(左足)の爪先が離地するタイミングと、左足(右足)の踵が接地するタイミングが近いため、双方の振幅ピークが干渉するということが考えられる。ちなみに、図5(B)に示した歩行波形も、図4と同じ条件下である。
【0031】
そこで、一方の足が路面から完全に浮いており、他方の足で立脚している遊脚期(I波からM波までの期間)のうち、加速期(図3(B)における左から2番目に相当)に現れるJ波を、1歩の検出指標として採用することにした。
【0032】
このJ波を採用した理由は、加速期は、一方の足が路面から最も離間するときであるが、このときには、他方の足の立脚が特に安定した状態となるため、このときの波形成分は、遊脚している足に起因する成分が主である、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の程度が最も小さいからである。
【0033】
したがって、本発明では、人体の2足運動に伴って当該人体に形成される電界の変位のうち、一方の足が路面から最も離間するとき、つまり遊脚期に生ずる振幅ピークが指標とされることになる。
【0034】
なお、図4及び図5では、J波は正の振幅ピークとして出現し、I波は負の振幅ピークとして出現する場合を図示したが、上述したように、路面と、靴底(足底)における帯電系列の関係により振幅の正負の極性が逆になることがあるため、J波が負の振幅ピークとして出現し、I波が正の振幅ピークとして出現する場合もある。
【0035】
(3)実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0036】
(3−1)歩数計の全体構成
本実施の形態による歩数計の全体構成を図6に示す。この歩数計1は、矩形状の本体2に対してリストバンド3を連結することにより構成される。この本体2の筐体うち、図7に示すように、人体表面に対向される面(以下、これを表皮対向面と呼ぶ)KTaには、該表皮対向面と人体との距離を一定に保つための導電性パッドPDが設けられており、これにより、振動等を要因とする距離の変化に基づく、歩数計側の誤差を未然に回避し得るようになされている。
【0037】
またこの本体2には、表皮対向面KTaの裏面に第1の電極(以下、これを人体側電極と呼ぶ)E1が設けられ、その表皮対向面KTaに対向する面の裏面に第2の電極(以下、これを外側電極と呼ぶ)E2が設けられている。
【0038】
この歩数計1では、リストバンド3により本体2が手首に装着されている場合、本体2は、人体側電極E1と、外側電極E2との電位差を人体の電位変化として取り込み、該電位変化に基づいて歩数を計数するようになされている。
【0039】
(3−2)人体と歩数計との電気的な等価回路
次に、人体の手首に本体2が装着された場合における人体と本体2との電気的な等価回路を図8に示す。
【0040】
この場合、人体は、路面(グランド)と結合(C1)するとともに、外側電極E2と結合(C2)する。また、外側電極E2は、床や壁等のグランドと結合(C3)するので、仮想的なグランドとなる。
【0041】
この等価回路からも分かるように、人体容量(C4)と、導電性パッドPDにおける内部抵抗(R2)と、本体2における内部抵抗(R3)とはおおよそ固定であることから、人体側電極E1及び外側電極E2との間に生じる電位差は、人体の電位変化とみることができる。
【0042】
(3−3)本体の回路構成
次に、本体2の回路構成について説明する。この本体2は、図9に示すように、外側電極E2と、人体側電極E1との電位差をアンプ11で増幅し、当該増幅結果を人体電位信号としてBPF(Band Pass Filter)12に送出する。
【0043】
BPF12は、この人体電位信号のうち、直流成分を基準として20[Hz]の範囲を、人体の歩行に応じて人体周囲に形成される電界に相当する成分として抽出し、当該抽出した信号(以下、これを歩行波形信号と呼ぶ)をA/D(Analog/Digital)コンバータ13に送出する。A/Dコンバータ13は、この歩行波形信号に対してA/D変換処理を施し、この処理結果として得られる人体電位データD1をプロセッサ14に送出する。
【0044】
このプロセッサ14は、CPU(Central Processing Unit)、各種プログラムが格納されるROM(Read Only Memory)、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)、カウンタ及びタイマーとを含むコンピュータ構成でなり、該ROMに格納されたプログラムに基づいて、歩数計数処理を実行する。このプロセッサ14の歩数計数処理は、具体的には図10に示すフローチャートにしたがって行われる。
【0045】
すなわちプロセッサ14は、計数の開始要求を表す信号が操作部(図示せず)から与えられると、内部のカウンタを初期値に設定した後にこの歩数計数処理手順RTを開始し、ステップSP1において、直流成分を基準とする正負の極性のうち、一方の極性を振幅ピークの探索対象として初期設定する。
【0046】
次いで、プロセッサ14は、ステップSP2において、A/Dコンバータ13から供給される人体電位データの歩行波形(例えば図5(A))から、初期設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、該探索した振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピーク(J波)の候補とする。
【0047】
そしてプロセッサ14は、ステップSP3において、探索した振幅ピークを中心として、その前後に所定時間幅のウインドウを設定し、続くステップSP4において、そのウインドウ内で、初期設定された一方の極性と同極性となる最大の振幅ピークをJ波として検出する。
【0048】
またプロセッサ14は、ステップSP5に進んで、現検出対象のJ波(以下、これを現J波と呼ぶ)における出現時刻をデータとしてメモリ15に記憶した後、次のステップSP6において、該現J波と、その現J波の1つ前に現検出対象として検出されたJ波(以下、これを直前J波と呼ぶ)との間に、初期設定された一方の極性とは逆極性となる他方の極性の振幅ピークの出現数が1以下であるか否かを判定する。
【0049】
ここで、現J波と、直前J波との間にこれらJ波の振幅ピークと逆極性の振幅ピークが2以上出現していた場合、このことは、ステップSP4においてJ波として検出した振幅ピークがI波である可能性が高い、つまりI波を計測している可能性が高いことを意味している。これは、図5(A)におけるグラフの上下を逆に見れば理解し易いであろう。
【0050】
この場合、プロセッサ14は、ステップSP7に進んで、メモリ15に記憶されたデータに基づいて、現J波以前に検出された各J波のJ波間における平均時間と、現J波から直前J波までの期間とを求めた後、続くステップSP8において、当該期間及び平均時間の差が、予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する。
【0051】
ここで、この差が許容範囲外となる場合、このことは、現J波と、直前J波との間隔が不規則であることから、右足(左足)の爪先が離地するタイミングと、左足(右足)の踵が接地するタイミングが近いことに起因して出現しない又は出現したとしても低振幅状態となる傾向にあるI波を計測している可能性がある(図5(B))ことを意味している。
【0052】
そうすると、ステップSP6及びステップSP8の双方において否定結果が得られた場合には、歩行者の路面と、靴底(足底)における帯電系列の関係により、ステップSP1で初期設定した一方の極性とは逆極性となる他方の極性にJ波が出現している可能性が極めて高いということになる。
【0053】
この場合、プロセッサ14は、ステップSP9に進んで、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を、他方の極性に切り換え、続くステップSP10において、歩数カウンタを「1」だけ繰り上げた後、ステップSP2に戻って、その後にA/Dコンバータ13から供給される人体電位データの歩行波形(例えば図5(A))から、該切り換えられた他方の極性の振幅ピークを探索する。
【0054】
一方、ステップSP6及びステップSP8のいずれか一方又は双方において肯定結果が得られた場合、このことは、ステップSP1で初期設定した一方の極性にJ波が出現している、つまり、正しくJ波が検出されている可能性が高いことを意味する。
【0055】
この場合、プロセッサ14は、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を切り換えることなく、ステップSP10において、歩数カウンタを「1」だけ繰り上げた後、ステップSP2に戻って、その後にA/Dコンバータ13から供給される人体電位データの歩行波形(例えば図5(A))から、初期設定された一方の極性の振幅ピークを探索するようになされている。
【0056】
このようにしてプロセッサ14は、歩数計数処理を実行することができるようになされている。
【0057】
なお、この実施の形態の場合、ステップSP3で設定されるウインドウの時間幅として、0.2[sec]以上0.3[sec]未満までのいずれかが選定される。これは、この時間幅に選定すれば、例えば日本工業規格における機械式歩数計での基準(誤差±3[%])を満たすなど、ある一定以上の精度を見込めることが実験結果により確認されたからである。
【0058】
なお、この実験結果を図11及び図12に示す。この図11は、J波に対するウインドウの時間幅と、1歩として誤カウントした回数(図中ではerror1)及び実際の歩数をカウントできなかった回数(図中ではerror2)との関係を示し、また図12は、I波に対するウインドウの時間幅と、1歩として誤カウントした回数(図中ではerror1)及び実際の歩数をカウントできなかった回数(図中ではerror2)との関係を示したものである。ちなみに、これら実験での被験者は、4〜5歳の幼児が3名(男性1名、女性2名)、20〜40歳の成人が6名(男性6名)、60歳の成人が1名(男性)を対象とした。
【0059】
この実験結果からも明らかなように、ウインドウの時間幅としては、J波及びI波いずれについても、0.2[sec]以上0.3[sec]未満までのいずれかであれば、少なくとも日本工業規格における機械式歩数計での基準を満たすこととなる。
【0060】
(4)動作及び効果
以上の構成において、この歩数計1は、人体の歩行に伴って当該人体に形成される電界の変位(歩行波形)のうち、直流成分を基準として一方の極性における振幅ピークを探索し、探索された振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして、歩数カウンタを1だけ繰り上げる(1歩にカウントする)。
【0061】
したがって、この歩数計1は、図4において上述したように、1歩につき1つ出現し、かつ、一方の足が路面から最も離間し、他方の足の立脚が安定した状態となるときに対応して出現するもの、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の影響が最小となるJ波を、1歩の基準として検出することができるため、歩数を正確にカウントすることができる。
【0062】
また、この歩数計1は、探索した振幅ピークを1歩として直ちにカウントするのではなく、その振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとする。
【0063】
したがって、この歩数計1は、歩行に対応しない電位変化(ノイズ)に起因する振幅ピークを排除することができるため、歩数をより一段と正確にカウントすることができる。
【0064】
さらに、この歩数計1は、検出対象のJ波が正負のいずれに出現しているかを自動で推測し(ステップSP6及びステップSP8)、探索対象とすべき振幅のピークの極性として初期設定された一方の極性にJ波が出現していないと判定した場合には、当該設定を他方の極性に切り換える。
【0065】
したがって、この歩数計1は、J波の誤検出を自動修正することができるので、歩数計測する際の路面と、靴底(足底)における帯電系列にかかわらず、J波を指標として歩数をカウントすることができる。
【0066】
以上の構成によれば、1歩につき1つ出現し、かつ、一方の足が路面から最も離間し、他方の足の立脚が安定した状態となるときに対応して出現するもの、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の影響が最小となる振幅ピーク(J波)を、1歩の基準とすることができるようにしたことにより、歩数を正確にカウントすることができ、かくして歩行検出を精度よく行い得る歩数計1を実現することができる。
【0067】
(5)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、電界を検出する検出部として、平行平板電極E1、E2を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば微小ダイポールや電気光学結晶等、電界を検出することができるものであれば、この他種々のものを適用することができる。
【0068】
また上述の実施の形態においては、20[Hz]以下の周波数帯における信号成分を抽出するBPF12を、A/Dコンバータ13の前段に設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、A/Dコンバータ13の後段に設けるようにしてもよい。
【0069】
さらに上述の実施の形態においては、検出対象のJ波が正負のいずれに出現しているかを自動で推測し(ステップSP6及びステップSP8)、探索対象とすべき振幅のピークの極性として初期設定された一方の極性にJ波が出現していないと判定した場合には、当該設定を他方の極性に切り換えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、靴底(足底)と路面との材質と、J波の出現する極性との対応付けをデータベースとしてメモリに保持し、入力される靴底(足底)と路面との材質に基づいて探索対象とすべき振幅ピークの極性を設定するようにしてもよい。
【0070】
なお、設定の切り換える際の条件(以下、これを設定切換条件と呼ぶ)としては、上述の実施の形態では、現J波と直前J波との間に、初期設定された一方の極性とは逆極性となる他方の極性の振幅ピークの出現数が2以上であり、かつ、現J波以前に検出された各J波のJ波間における平均時間と、現J波から直前J波までの期間との差が所定の許容範囲外にある場合としたが、本発明はこれに限らず、いずれか一方を満たす場合とするようにしてもよい。
【0071】
また、上述の実施の形態では、設定切換条件を1回でも満たさない場合に、設定を切り換えるようにしたが、本発明はこれに限らず、設定切換条件を連続して所定回数満たさなかった場合に、設定を切り換えるようにしてもよい。
【0072】
さらに上述の実施の形態においては、J波を1歩として計数するようにした場合について述べたが、本発明はこれに加えて又はこれに代えて、J波間の歩行波形を、当該人体の識別するための情報として抽出し、これを登録データとしてメモリ15に保存するようにしてもよい。このようにすれば、メモリ15に保存された登録データを、認証用として、種々の認証システムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、歩数計や、歩行波形を人体の識別情報として登録する装置などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】電界分布パターンを示す略線図である。
【図2】シミュレーションに用いた人体の生体組織における誘電率を示す略線図である。
【図3】歩行の態様を示す略線図である。
【図4】片足歩行に伴って人体に形成される電界の電位変化(歩行波形)を示す略線図である。
【図5】両足歩行に伴って人体に形成される電界の電位変化(歩行波形)を示す略線図である。
【図6】本実施の形態による歩数計の全体構成を示す略線図である。
【図7】A−A´断面を示す略線図である。
【図8】等価回路を示す略線図である。
【図9】本体の回路構成を示す略線図である。
【図10】歩数計数処理手順を示すフローチャートである。
【図11】J波に対するウインドウの時間幅と、エラー率の関係を示す略線図である。
【図12】I波に対するウインドウの時間幅と、エラー率の関係を示す略線図である。
【符号の説明】
【0075】
1……歩数計、2……本体、3……リストバンド、11……アンプ、12……BPF、13……A/Dコンバータ、14……プロセッサ、15……メモリ、E1……人体側電極、E2……外側電極、PD……導電性パッド。
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行波形処理方法及び歩行波形処理装置に関し、例えば歩数を検出する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人体の歩行に伴って当該人体に形成される電界の変位(歩行波形)のうち、特異的に出現する振幅のピークを指標として、歩行の1歩に相当する1歩波形を特定する手法が本出願人により既に提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる特異的な振幅のピークは、爪先が完全に離地した直後に出現する。右足(左足)の爪先が完全に離地した直後には、歩行態様の差異に係わらず左足(右足)は完全着地状態となることから、このときに対応する振幅のピークは、左右足相互間に帯電干渉が起こらないことにより、歩行波形のうち最も大きい振幅のピークとして8[Hz]±2[Hz]の帯域内にほぼ一律に出現する(図6中(2)及び(4))。
【0004】
歩行波形から、この8Hz±2Hzの帯域に出現する振幅のピークを検出し、これを1歩に相当する1歩波形の基準とすることによって的確に1歩波形を抽出可能となる。
【特許文献1】特開2004−147793公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、その後の実験の結果、右足(左足)の爪先が離地するタイミングと、左足(右足)の踵が接地するタイミングが近いため、当該爪先の離地に対応する振幅のピークは、踵の接地に対応する振幅のピークと干渉することにより現れない場合があるということが分かった。
【0006】
したがって、8Hz±2Hzの帯域内に出現する振幅のピークを1歩に相当する1歩波形の基準とすると、歩行における1歩を的確に特定することができないという問題があった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、歩行検出を精度よく行い得る歩行波形処理方法及び歩行波形処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明は、歩数波形処理方法であって、人体周囲に形成される20[Hz]以下の周波数帯での電界変位から、直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、探索された振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出するようにした。
【0009】
また本発明は、歩行波形処理装置であって、電界を検出する検出部と、検出部により検出される電界から、20[Hz]以下の周波数帯における信号成分を抽出する抽出部と、抽出部により抽出される信号成分から、遊脚期に生ずる振幅ピークを検出するピーク検出部とを設け、ピーク検出部では、信号成分から、該信号成分における直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、探索した振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出するようにした。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、1歩につき1つ出現し、かつ、一方の足が路面から最も離間し、他方の足の立脚が安定した状態となるときに対応して出現するもの、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の影響が最小となるピークを、1歩の基準とすることができ、この結果、例えば歩数をより一段と正確にカウントすることができる。
【0011】
また、探索した振幅ピークを直ちに遊脚期の振幅ピークとせず、該振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを遊脚期の振幅ピークとしていることから、歩行に対応しない電位変化(ノイズ)に起因する振幅ピークを排除することができ、この結果、例えば歩数をより一段と正確にカウントすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(1)歩行による人体の帯電と、人体周囲の電界との関係
歩行によって人体が帯電することはよく知られている。この人体帯電圧は、文献([作成者]木村裕和、[表題]繊維・高分子材料の帯電性とその評価方法、[媒体のタイプ]online、[発行日]平成10年6月29日、[作成元]評価技術部産業用繊維グループ、[情報源アドレス]http://www.tri.pref.osaka.jp/group/sense/sangyoseni/static.ele.pdf)によれば、敷物(床表面の材料)と、履物の種類に強く依存し、当該敷物と、履物の組み合わせで最も人体帯電圧の絶対値が低いのは、およそ480[V]とある。
【0013】
床を基準電位0[V]とし、人体が480[V]に帯電した場合の人体周囲における電界をシミュレーションし、当該シミュレーションより得られた電界強度の分布パターンを図1に示す。なおこのシミュレーションの条件としては、壁と天井がなく床のみが存在する空間に、図2に示す生体組織の誘電率でなる直立姿勢の人体モデルが存在することとした。ちなみに、シミュレーションのソフトウェアはポアソン方程式で3次元空間の電界を計算するものである。
【0014】
この図1からも明らかなように、人体周囲をまとうようにして電界が分布していることが分かる。この電界のベクトルは人体表面の法線方向となるものであることから、人体表面と、その人体表面から法線方向に離間した電極とを配置し、これら一対の電極間の電位差を検出すれば、歩行による人体の帯電圧の変化を得ることが可能となる。この電位差は、一般に、人体の帯電圧に比例するものであり、該帯電圧に対しておよそ0.02倍となる。
【0015】
一対の電極の配置対象を例えば手首とした場合、当該手首での電界強度はおよそ1000[V/m]となるが、電極間距離が1[cm]の電極を手首に配置したとすれば、その電極間の電位差はおよそ10[V]となる。この場合の理論上のノイズフロアは、電極面積を1[cm]×1[cm]、雑音係数を10、歩行波形の周波数帯域を10[Hz]と仮定すると、-154[dB]であるので、電界に換算すると、およそ6×10-9[V/m]となる。よって、かかる条件下では、歩行による人体の電位変化が6×10-9[V/m]以上であれば、該変化を検出することができる。
【0016】
(2)歩行態様と、歩行波形との関係
右足における歩行態様としては、図3に示すように、踵が離地(路面から離れることをいう。以下同じ)した直後から爪先が離地する直前までの離地プロセス(図3(A))と、爪先が離地した直後から踵が着地する直前までの蹴出プロセス(図3(B))と、踵が着地した直後から足底面全体が路面に対して着地(以下、これを完全着地と呼ぶ)するまでの着地プロセス(図3(C))との大きく3種類のプロセスが順次繰り返されている。
【0017】
また左足における人体歩行態様としては、右足と同様に3種類のプロセスが順次繰り返されるが、当該左足の各プロセスの開始時期については右足とは異なっており、右足の離地プロセスの途中で着床プロセスを開始し(図3(A)において矢印で示す)、当該右足における着地プロセスの途中で左足における離地プロセスを開始する(図3(C)において矢印で示す)。
【0018】
このように人体の歩行は、右足の着地プロセスに相反する左足の離地プロセスと、右足の離地プロセスに相反する左足の着地プロセスとがおよそ半周期ずれながら、当該右足及び左足の各プロセスが交互に繰り返されている。
【0019】
一方、歩行により人体周囲に形成される電位変化(歩行波形)は、該人体の導電率及び誘電率が高いので、等電位となり、主に、足底面における帯電量(即ち人体の帯電量)と、足底面と路面との間における静電容量との変化に対応する。
【0020】
ここで、人体の電位を「V」、人体の帯電量を「Q」、人体の静電容量を「C」とすると、該人体の電位は、「V=Q/C」と表すことができる。この人体の帯電量Qは、路面と、靴底(足底)との材質に起因する帯電系列の関係によって、正になる場合、負になる場合の双方の場合がある。
【0021】
例えば、路面の材質が軟質塩ビであり、足底が皮膚であるという条件では、人体の帯電量Qは正になる。この条件下において、片足に起因する電位変化(歩行波形)を図4に示す。
【0022】
この図4からも分かるように、片足の1歩(1step)に起因する歩行波形には、いくつかの特徴的な振幅ピークがある。まず、踵が離地した時点(図3(A)における左から2番目に相当)では、路面に対する踵の急速な剥離に伴って帯電量Qが増加し(剥離帯電)、かつ静電容量Cが減少することにより、負の振幅ピーク(以下、これをH波と呼ぶ)が現れる。
【0023】
その後、路面に対して足底面が徐々に離れ、爪先が離地した時点(図3(A)における右端に相当)でも、H波の発生の場合と同様に、路面に対する爪先の急速な剥離に伴って帯電量Qが増加し(剥離帯電)、かつ静電容量Cが減少することにより、負の振幅ピーク(以下、これをI波と呼ぶ)が現れる。
【0024】
やがて、路面から離れた足が加速し始め、その足の加速が最速となる時点(図3(B)における左から2番目に相当(加速期と呼ばれる))では、路面に対する足の位置が最も離れ、路面及び足間の静電容量が最小となるため、正の振幅ピーク(以下、これをJ波と呼ぶ)が現れる。
【0025】
その後、足を進行方向にスイングし、そのスイングした足が減速し始める時点には緩やかな正の振幅ピーク(以下、これをK波と呼ぶ)が現れ、当該減速し終わる時点にも緩やかな正の振幅ピーク(以下、これをL波と呼ぶ)が現れる。
【0026】
やがて、減速した足の踵が路面に接地した時点(図3(C)における左端に相当)では、路面に対する踵の離地に伴って帯電量Qが減少し(足底から電荷が放電)、かつ静電容量Cが増加することにより正の振幅ピーク(以下、これをM波と呼ぶ)が現れ、また、当該足底が路面に対して完全に接地した時点(図3(C)における右端に相当)では、路面に対する足底面の離地面積がなくなるため、正の振幅ピーク(以下、これをN波と呼ぶ)が現れる。
【0027】
なお、I波からM波までの期間は、足が路面から完全に浮いていることから遊脚期(swing phase)と呼ばれ、またM波から次のI波までの期間は、足が路面に着いていることから立脚期(stance phase)と呼ばれている。
【0028】
一方、図4と同じ条件下において、両足に起因する電位変化(歩行波形)を図5(A)に示す。この両足に基づく歩行波形は、右足及び左足の歩行プロセスが半周期ずれることに起因して片足に基づく歩行波形(図4)とは大きく異なるが、歩行の基本的な動作となる離地及び接地のときには、特徴的なピーク(図5(A)における実線で示す部分(J波に相当)と、破線で示す部分(I波及びM波に相当))が出現する。ちなみに、片足の歩行波形(図4)では、J波よりもM波(N波)が高いものとなっていたが、両足の歩行波形では、M波(N波)はI波との干渉等によりJ波よりも低いものとなる。
【0029】
これら特徴的なピークのうち、既に本出願人により開示した特開2004−147793では、右足(左足)の爪先が完全に離地した時点に左足(右足)が完全着地状態となるため、当該時点に対応して現れる負の振幅ピーク(I波)は、およそ半周期ずれながら交互に両足が動作していたとしても、およそ8[Hz]±2[Hz]に現れることから、1歩の検出指標とされた。
【0030】
しかしながら、一方の足における爪先の離地に対応する振幅ピーク(I波)は、図5(B)に示す両足に起因する電位変化(歩行波形)からも明らかなように、その振幅が低い状態で(図5(B)における破線で示す部分(I波及びM波に相当))出現する場合があることがわかった。これは、主に、右足(左足)の爪先が離地するタイミングと、左足(右足)の踵が接地するタイミングが近いため、双方の振幅ピークが干渉するということが考えられる。ちなみに、図5(B)に示した歩行波形も、図4と同じ条件下である。
【0031】
そこで、一方の足が路面から完全に浮いており、他方の足で立脚している遊脚期(I波からM波までの期間)のうち、加速期(図3(B)における左から2番目に相当)に現れるJ波を、1歩の検出指標として採用することにした。
【0032】
このJ波を採用した理由は、加速期は、一方の足が路面から最も離間するときであるが、このときには、他方の足の立脚が特に安定した状態となるため、このときの波形成分は、遊脚している足に起因する成分が主である、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の程度が最も小さいからである。
【0033】
したがって、本発明では、人体の2足運動に伴って当該人体に形成される電界の変位のうち、一方の足が路面から最も離間するとき、つまり遊脚期に生ずる振幅ピークが指標とされることになる。
【0034】
なお、図4及び図5では、J波は正の振幅ピークとして出現し、I波は負の振幅ピークとして出現する場合を図示したが、上述したように、路面と、靴底(足底)における帯電系列の関係により振幅の正負の極性が逆になることがあるため、J波が負の振幅ピークとして出現し、I波が正の振幅ピークとして出現する場合もある。
【0035】
(3)実施の形態
以下、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0036】
(3−1)歩数計の全体構成
本実施の形態による歩数計の全体構成を図6に示す。この歩数計1は、矩形状の本体2に対してリストバンド3を連結することにより構成される。この本体2の筐体うち、図7に示すように、人体表面に対向される面(以下、これを表皮対向面と呼ぶ)KTaには、該表皮対向面と人体との距離を一定に保つための導電性パッドPDが設けられており、これにより、振動等を要因とする距離の変化に基づく、歩数計側の誤差を未然に回避し得るようになされている。
【0037】
またこの本体2には、表皮対向面KTaの裏面に第1の電極(以下、これを人体側電極と呼ぶ)E1が設けられ、その表皮対向面KTaに対向する面の裏面に第2の電極(以下、これを外側電極と呼ぶ)E2が設けられている。
【0038】
この歩数計1では、リストバンド3により本体2が手首に装着されている場合、本体2は、人体側電極E1と、外側電極E2との電位差を人体の電位変化として取り込み、該電位変化に基づいて歩数を計数するようになされている。
【0039】
(3−2)人体と歩数計との電気的な等価回路
次に、人体の手首に本体2が装着された場合における人体と本体2との電気的な等価回路を図8に示す。
【0040】
この場合、人体は、路面(グランド)と結合(C1)するとともに、外側電極E2と結合(C2)する。また、外側電極E2は、床や壁等のグランドと結合(C3)するので、仮想的なグランドとなる。
【0041】
この等価回路からも分かるように、人体容量(C4)と、導電性パッドPDにおける内部抵抗(R2)と、本体2における内部抵抗(R3)とはおおよそ固定であることから、人体側電極E1及び外側電極E2との間に生じる電位差は、人体の電位変化とみることができる。
【0042】
(3−3)本体の回路構成
次に、本体2の回路構成について説明する。この本体2は、図9に示すように、外側電極E2と、人体側電極E1との電位差をアンプ11で増幅し、当該増幅結果を人体電位信号としてBPF(Band Pass Filter)12に送出する。
【0043】
BPF12は、この人体電位信号のうち、直流成分を基準として20[Hz]の範囲を、人体の歩行に応じて人体周囲に形成される電界に相当する成分として抽出し、当該抽出した信号(以下、これを歩行波形信号と呼ぶ)をA/D(Analog/Digital)コンバータ13に送出する。A/Dコンバータ13は、この歩行波形信号に対してA/D変換処理を施し、この処理結果として得られる人体電位データD1をプロセッサ14に送出する。
【0044】
このプロセッサ14は、CPU(Central Processing Unit)、各種プログラムが格納されるROM(Read Only Memory)、ワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)、カウンタ及びタイマーとを含むコンピュータ構成でなり、該ROMに格納されたプログラムに基づいて、歩数計数処理を実行する。このプロセッサ14の歩数計数処理は、具体的には図10に示すフローチャートにしたがって行われる。
【0045】
すなわちプロセッサ14は、計数の開始要求を表す信号が操作部(図示せず)から与えられると、内部のカウンタを初期値に設定した後にこの歩数計数処理手順RTを開始し、ステップSP1において、直流成分を基準とする正負の極性のうち、一方の極性を振幅ピークの探索対象として初期設定する。
【0046】
次いで、プロセッサ14は、ステップSP2において、A/Dコンバータ13から供給される人体電位データの歩行波形(例えば図5(A))から、初期設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、該探索した振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピーク(J波)の候補とする。
【0047】
そしてプロセッサ14は、ステップSP3において、探索した振幅ピークを中心として、その前後に所定時間幅のウインドウを設定し、続くステップSP4において、そのウインドウ内で、初期設定された一方の極性と同極性となる最大の振幅ピークをJ波として検出する。
【0048】
またプロセッサ14は、ステップSP5に進んで、現検出対象のJ波(以下、これを現J波と呼ぶ)における出現時刻をデータとしてメモリ15に記憶した後、次のステップSP6において、該現J波と、その現J波の1つ前に現検出対象として検出されたJ波(以下、これを直前J波と呼ぶ)との間に、初期設定された一方の極性とは逆極性となる他方の極性の振幅ピークの出現数が1以下であるか否かを判定する。
【0049】
ここで、現J波と、直前J波との間にこれらJ波の振幅ピークと逆極性の振幅ピークが2以上出現していた場合、このことは、ステップSP4においてJ波として検出した振幅ピークがI波である可能性が高い、つまりI波を計測している可能性が高いことを意味している。これは、図5(A)におけるグラフの上下を逆に見れば理解し易いであろう。
【0050】
この場合、プロセッサ14は、ステップSP7に進んで、メモリ15に記憶されたデータに基づいて、現J波以前に検出された各J波のJ波間における平均時間と、現J波から直前J波までの期間とを求めた後、続くステップSP8において、当該期間及び平均時間の差が、予め設定された許容範囲にあるか否かを判定する。
【0051】
ここで、この差が許容範囲外となる場合、このことは、現J波と、直前J波との間隔が不規則であることから、右足(左足)の爪先が離地するタイミングと、左足(右足)の踵が接地するタイミングが近いことに起因して出現しない又は出現したとしても低振幅状態となる傾向にあるI波を計測している可能性がある(図5(B))ことを意味している。
【0052】
そうすると、ステップSP6及びステップSP8の双方において否定結果が得られた場合には、歩行者の路面と、靴底(足底)における帯電系列の関係により、ステップSP1で初期設定した一方の極性とは逆極性となる他方の極性にJ波が出現している可能性が極めて高いということになる。
【0053】
この場合、プロセッサ14は、ステップSP9に進んで、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を、他方の極性に切り換え、続くステップSP10において、歩数カウンタを「1」だけ繰り上げた後、ステップSP2に戻って、その後にA/Dコンバータ13から供給される人体電位データの歩行波形(例えば図5(A))から、該切り換えられた他方の極性の振幅ピークを探索する。
【0054】
一方、ステップSP6及びステップSP8のいずれか一方又は双方において肯定結果が得られた場合、このことは、ステップSP1で初期設定した一方の極性にJ波が出現している、つまり、正しくJ波が検出されている可能性が高いことを意味する。
【0055】
この場合、プロセッサ14は、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を切り換えることなく、ステップSP10において、歩数カウンタを「1」だけ繰り上げた後、ステップSP2に戻って、その後にA/Dコンバータ13から供給される人体電位データの歩行波形(例えば図5(A))から、初期設定された一方の極性の振幅ピークを探索するようになされている。
【0056】
このようにしてプロセッサ14は、歩数計数処理を実行することができるようになされている。
【0057】
なお、この実施の形態の場合、ステップSP3で設定されるウインドウの時間幅として、0.2[sec]以上0.3[sec]未満までのいずれかが選定される。これは、この時間幅に選定すれば、例えば日本工業規格における機械式歩数計での基準(誤差±3[%])を満たすなど、ある一定以上の精度を見込めることが実験結果により確認されたからである。
【0058】
なお、この実験結果を図11及び図12に示す。この図11は、J波に対するウインドウの時間幅と、1歩として誤カウントした回数(図中ではerror1)及び実際の歩数をカウントできなかった回数(図中ではerror2)との関係を示し、また図12は、I波に対するウインドウの時間幅と、1歩として誤カウントした回数(図中ではerror1)及び実際の歩数をカウントできなかった回数(図中ではerror2)との関係を示したものである。ちなみに、これら実験での被験者は、4〜5歳の幼児が3名(男性1名、女性2名)、20〜40歳の成人が6名(男性6名)、60歳の成人が1名(男性)を対象とした。
【0059】
この実験結果からも明らかなように、ウインドウの時間幅としては、J波及びI波いずれについても、0.2[sec]以上0.3[sec]未満までのいずれかであれば、少なくとも日本工業規格における機械式歩数計での基準を満たすこととなる。
【0060】
(4)動作及び効果
以上の構成において、この歩数計1は、人体の歩行に伴って当該人体に形成される電界の変位(歩行波形)のうち、直流成分を基準として一方の極性における振幅ピークを探索し、探索された振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして、歩数カウンタを1だけ繰り上げる(1歩にカウントする)。
【0061】
したがって、この歩数計1は、図4において上述したように、1歩につき1つ出現し、かつ、一方の足が路面から最も離間し、他方の足の立脚が安定した状態となるときに対応して出現するもの、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の影響が最小となるJ波を、1歩の基準として検出することができるため、歩数を正確にカウントすることができる。
【0062】
また、この歩数計1は、探索した振幅ピークを1歩として直ちにカウントするのではなく、その振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとする。
【0063】
したがって、この歩数計1は、歩行に対応しない電位変化(ノイズ)に起因する振幅ピークを排除することができるため、歩数をより一段と正確にカウントすることができる。
【0064】
さらに、この歩数計1は、検出対象のJ波が正負のいずれに出現しているかを自動で推測し(ステップSP6及びステップSP8)、探索対象とすべき振幅のピークの極性として初期設定された一方の極性にJ波が出現していないと判定した場合には、当該設定を他方の極性に切り換える。
【0065】
したがって、この歩数計1は、J波の誤検出を自動修正することができるので、歩数計測する際の路面と、靴底(足底)における帯電系列にかかわらず、J波を指標として歩数をカウントすることができる。
【0066】
以上の構成によれば、1歩につき1つ出現し、かつ、一方の足が路面から最も離間し、他方の足の立脚が安定した状態となるときに対応して出現するもの、つまり遊脚している足に起因する成分と、立脚している足に起因する成分の干渉の影響が最小となる振幅ピーク(J波)を、1歩の基準とすることができるようにしたことにより、歩数を正確にカウントすることができ、かくして歩行検出を精度よく行い得る歩数計1を実現することができる。
【0067】
(5)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、電界を検出する検出部として、平行平板電極E1、E2を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば微小ダイポールや電気光学結晶等、電界を検出することができるものであれば、この他種々のものを適用することができる。
【0068】
また上述の実施の形態においては、20[Hz]以下の周波数帯における信号成分を抽出するBPF12を、A/Dコンバータ13の前段に設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、A/Dコンバータ13の後段に設けるようにしてもよい。
【0069】
さらに上述の実施の形態においては、検出対象のJ波が正負のいずれに出現しているかを自動で推測し(ステップSP6及びステップSP8)、探索対象とすべき振幅のピークの極性として初期設定された一方の極性にJ波が出現していないと判定した場合には、当該設定を他方の極性に切り換えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、靴底(足底)と路面との材質と、J波の出現する極性との対応付けをデータベースとしてメモリに保持し、入力される靴底(足底)と路面との材質に基づいて探索対象とすべき振幅ピークの極性を設定するようにしてもよい。
【0070】
なお、設定の切り換える際の条件(以下、これを設定切換条件と呼ぶ)としては、上述の実施の形態では、現J波と直前J波との間に、初期設定された一方の極性とは逆極性となる他方の極性の振幅ピークの出現数が2以上であり、かつ、現J波以前に検出された各J波のJ波間における平均時間と、現J波から直前J波までの期間との差が所定の許容範囲外にある場合としたが、本発明はこれに限らず、いずれか一方を満たす場合とするようにしてもよい。
【0071】
また、上述の実施の形態では、設定切換条件を1回でも満たさない場合に、設定を切り換えるようにしたが、本発明はこれに限らず、設定切換条件を連続して所定回数満たさなかった場合に、設定を切り換えるようにしてもよい。
【0072】
さらに上述の実施の形態においては、J波を1歩として計数するようにした場合について述べたが、本発明はこれに加えて又はこれに代えて、J波間の歩行波形を、当該人体の識別するための情報として抽出し、これを登録データとしてメモリ15に保存するようにしてもよい。このようにすれば、メモリ15に保存された登録データを、認証用として、種々の認証システムに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、歩数計や、歩行波形を人体の識別情報として登録する装置などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】電界分布パターンを示す略線図である。
【図2】シミュレーションに用いた人体の生体組織における誘電率を示す略線図である。
【図3】歩行の態様を示す略線図である。
【図4】片足歩行に伴って人体に形成される電界の電位変化(歩行波形)を示す略線図である。
【図5】両足歩行に伴って人体に形成される電界の電位変化(歩行波形)を示す略線図である。
【図6】本実施の形態による歩数計の全体構成を示す略線図である。
【図7】A−A´断面を示す略線図である。
【図8】等価回路を示す略線図である。
【図9】本体の回路構成を示す略線図である。
【図10】歩数計数処理手順を示すフローチャートである。
【図11】J波に対するウインドウの時間幅と、エラー率の関係を示す略線図である。
【図12】I波に対するウインドウの時間幅と、エラー率の関係を示す略線図である。
【符号の説明】
【0075】
1……歩数計、2……本体、3……リストバンド、11……アンプ、12……BPF、13……A/Dコンバータ、14……プロセッサ、15……メモリ、E1……人体側電極、E2……外側電極、PD……導電性パッド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体周囲に形成される20[Hz]以下の周波数帯での電界変位から、直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索する第1のステップと、
探索された上記振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出する第2のステップと
を具えることを特徴とする歩行波形処理方法。
【請求項2】
上記時間幅は、0.2[sec]以上0.3[sec]未満のいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行波形処理方法。
【請求項3】
現検出対象として検出された最大の振幅ピークと、1つ前に現検出対象として検出された最大の振幅ピークとの間に、上記極性に対して逆極性となる振幅ピークの出現数が2以上となる場合には、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を、他方の極性に切り換える第3のステップ
を具えることを特徴とする請求項1に記載の歩行波形処理方法。
【請求項4】
現検出対象として検出された最大の振幅ピークと、1つ前に現検出対象として検出された最大の振幅ピークとの間に、上記極性に対して逆極性となる振幅ピーク出現数が2以上となる場合、かつ、現検出対象以前に検出された各上記最大の振幅ピークにおけるピーク間の平均時間と、現検出対象として検出された最大の振幅ピークから、1つ前に現検出対象として検出された最大の振幅ピークまでの期間との差が所定の許容範囲外となる場合には、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を、他方の極性に切り換える第3のステップ
を具えることを特徴とする請求項1に記載の歩行波形処理方法。
【請求項5】
電界を検出する検出部と、
上記検出部により検出される電界から、20[Hz]以下の周波数帯における信号成分を抽出する抽出部と、
上記抽出部により抽出される信号成分から、遊脚期に生ずる振幅ピークを検出するピーク検出部と
を具え、
上記ピーク検出部は、
上記信号成分から、該信号成分における直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、該探索した振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、上記振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、上記遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出する
ことを特徴とする歩行波形処理装置。
【請求項1】
人体周囲に形成される20[Hz]以下の周波数帯での電界変位から、直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索する第1のステップと、
探索された上記振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、該振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出する第2のステップと
を具えることを特徴とする歩行波形処理方法。
【請求項2】
上記時間幅は、0.2[sec]以上0.3[sec]未満のいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の歩行波形処理方法。
【請求項3】
現検出対象として検出された最大の振幅ピークと、1つ前に現検出対象として検出された最大の振幅ピークとの間に、上記極性に対して逆極性となる振幅ピークの出現数が2以上となる場合には、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を、他方の極性に切り換える第3のステップ
を具えることを特徴とする請求項1に記載の歩行波形処理方法。
【請求項4】
現検出対象として検出された最大の振幅ピークと、1つ前に現検出対象として検出された最大の振幅ピークとの間に、上記極性に対して逆極性となる振幅ピーク出現数が2以上となる場合、かつ、現検出対象以前に検出された各上記最大の振幅ピークにおけるピーク間の平均時間と、現検出対象として検出された最大の振幅ピークから、1つ前に現検出対象として検出された最大の振幅ピークまでの期間との差が所定の許容範囲外となる場合には、探索対象とすべき振幅のピークの極性の設定を、他方の極性に切り換える第3のステップ
を具えることを特徴とする請求項1に記載の歩行波形処理方法。
【請求項5】
電界を検出する検出部と、
上記検出部により検出される電界から、20[Hz]以下の周波数帯における信号成分を抽出する抽出部と、
上記抽出部により抽出される信号成分から、遊脚期に生ずる振幅ピークを検出するピーク検出部と
を具え、
上記ピーク検出部は、
上記信号成分から、該信号成分における直流成分を基準とする正負の極性のうち、設定された一方の極性の振幅ピークを探索し、該探索した振幅ピークを中心とする所定の時間幅のなかで、上記振幅ピークの極性と同極性となる最大の振幅ピークを、上記遊脚期に生ずる振幅ピークとして検出する
ことを特徴とする歩行波形処理装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【公開番号】特開2008−154733(P2008−154733A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345861(P2006−345861)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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