説明

歩行者保護装置に対するトリガ信号を生成するための方法

センサデータが求められかつ評価される、歩行者保護装置に対するトリガ信号(AS)の生成方法において、少なくとも2つのセンサ(20,30,40)のデータが評価されかつ、予め定めた数の配置されているセンサ(20,30,40)のデータが物体との衝突を指示するとき肯定的な合理性検査(200)が指示されることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の技術
本発明は、独立請求項の上位概念に記載の歩行者保護装置に対するトリガ信号を生成するための方法から出発している。
【0002】
歩行者保護と車両が衝突した際に歩行者の負傷を軽減するためのEU法の導入の予告により、新しい車両は、衝突時の歩行者の負傷がこのEU法において要求される範囲内にとどまるような構造になっていなければならない。
【0003】
歩行者の負傷を軽減するための第1のストラテジーは、バンパーおよび車両デザインの変更により歩行者に対する衝撃吸収部をつくって、こうして受動的な解決策により負傷する危険性が低減されることを狙うものである。
【0004】
第2のストラテジーは適当なセンソトロニークにより歩行者の衝突を識別しかつ引き続き、例えばAピラーにある外部エアバックのような歩行者保護装置の能動的なドライブ制御および/またはボンネットの持ち上げにより必要な衝撃吸収部をつくろうとするものである。能動的な解決策において、加速度、圧力、ノック、圧電センサから光学式センサ等に及ぶまでの極めて種々の原理のセンサを利用することができる。
【0005】
発明の利点
従来技術のものに比して独立請求項の特徴部分に記載の構成を有する歩行者保護装置に対するトリガ信号を生成するための本発明の方法は、歩行者保護装置の、欠陥のあるセンサにより引き起こされる所望しないトリガが少なくとも2つのセンサおよびセンサ信号の付加的な合理性検査によりほぼ妨げられるという利点を有している。合理性検査の際に、少なくとも2つのセンサのデータが評価されかつ肯定的な合理性検査が有利な仕方で、予め定めた数の評価されたセンサのデータが物体との衝突を指示するときにだけ指示される。こうして例えば、肯定的な合理性検査のために少なくとも2つの評価されたセンサのデータが物体との衝突を指示していなければならない、または多数の評価されたセンサのデータが物体との衝突を指示していることを予め定めることができる。
【0006】
トリガ信号を生成するための本発明の方法により有利な仕方で確実にしてかつロバストな、歩行者保護装置のドライブ制御が可能になり、これにより歩行者の最適な保護が同時にコストを最小化して保証され、欠陥のあるセンサにより引き起こされる、歩行者保護装置の所望しないトリガにより生じる可能性がある誤った保護も妨げられる。更に、例えばボンネットが開いたことで歩行者保護装置が所望せずにトリガされて運転者の操舵特性が邪魔されることが妨げられる。
【0007】
従属請求項に記載の手段および発展形態により、独立請求項に記載の、歩行者保護装置に対するトリガ信号を生成するための方法の有利な改良形態が可能である。
【0008】
データ評価の結果が歩行者との衝突ありとなったときに肯定的な暫定的なトリガ決定を行うようにしている、歩行者を識別するためのトリガ検査が実施されると特別有利であり、その際データ評価は少なくとも2つのセンサのセンサデータの評価を含み、かつトリガ検査の際に歩行者との衝突が識別されかつセンサデータの合理性検査が肯定的であるときに、歩行者保護装置に対するトリガ信号が生成される。任意選択的に、トリガ検査の際に車両固有速度および/または相対速度を考慮することができる。これにより歩行者保護装置の所望しないトリガに対する保護が一段と高められる。
【0009】
有利な実施形態において例えば、走行方向に負の加速度が検出されるときに正の信号を生成する2つのセンサがバンパーに車両長手軸線に対して対称的に配置されている。合理性検査のために第1の比較過程において第1のセンサ信号が第1のしきい値と比較されかつ第1のセンサ信号が第1のしきい値より大きいかまたはそれに等しいとき、第1の比較結果が予め定めた第1の持続時間の間保持され、その際第2の比較過程において第2のセンサ信号が第2のしきい値と比較されかつ第2のセンサ信号が第2のしきい値より大きいかまたはそれに等しいとき、第2の比較結果が予め定めた第2の持続時間の間保持され、その際第1の比較結果および第2の比較結果が合理性結果を生成するために相互に論理結合され、その際第1の比較結果および第2の比較結果が予め定めたレベルを有しているとき肯定的な合理性検査が指示される。2つの比較結果の論理結合は例えばAND論理結合として実現されている。
【0010】
車両長手軸線に対する少なくとも2つのセンサの対称配置により、2つのセンサのそれぞれのしきい値および2つのセンサのそれぞれの保持持続時間はそれぞれのセンサ信号の検査のために同じ大きさに調整設定することができる。
【0011】
更に、センサ信号の合理性の検査のためのしきい値および/または保持持続時間を車両固有速度および/または相対速度および/または例えば温度のような別のパラメータに依存して変えることができ、こうして種々の環境条件に最適に整合することができることは有利である。
【0012】
本発明の方法の別の有利な実施形態において、バンパーに配置されている3つのセンサが評価され、その際第1のセンサはバンパーの左部分に配置され、第2のセンサはバンパーの右部分に配置されかつ第3のセンサはバンパーの中央に配置され、その際少なくとも第1または第2のセンサが物体との衝突を指示するときにだけ肯定的な合理性検査が指示される。3つのセンサのこのような配置により比較的短い信号伝搬遅延時間に基づいて、2つのセンサの配置の場合よりも迅速に合理性検査の結果を使用することができる。
【0013】
付加的に、センサデータからの合理性検査および/またはトリガ検査に対して、第1の積分値および/または第2の積分値および/または種々の持続時間のウィンドウ積分値および/または減速度および/または加速度の最大値および/または最小値を含んでいる特徴を抽出および/または計算することができる。これにより歩行者保護装置の所望しないトリガに対する保護を一段と改善することができる。
【0014】
更に、合理性検査のために、乗員保護手段をドライブ制御するために使用されかついずれにせよ車両に存在しているセンサのセンサデータを評価すると有利であり、これにより合理性検査は一段と改善される。
【0015】
図面
本発明の有利な実施例が図面に示されておりかつ以下の説明において詳細に説明される。
【0016】
その際
図1は2つのセンサを有する歩行者保護装置に対するトリガ信号の生成のための方法をブロック線図にて示し、
図2は3つのセンサを有する歩行者保護装置に対するトリガ信号の生成のための方法をブロック線図にて示している。
【0017】
説明
図1には、2つの加速度センサ20,30のデータを合理性検査および/またはトリガ検査のために評価することができる、本発明の方法の実施例が図示されている。任意選択的に、CANバスシステム10から使用されるデータおよび信号も評価の際に使用することができる。方法は加速度センサとの関連において説明するが、例えばノックセンサのような別のセンサにも使用することができる。更に、2つのセンサ20,30より多くのセンサを評価することができる。図2には例えば、3つのセンサ20,30,40が評価される実施例が示されている。
【0018】
本発明は、車両フロント領域、例えばバンパーに種々異なっている個所に物体との衝突を識別するために配置されている複数の、有利には2つの加速度センサが例えば僅か数ミリ秒である非常に短い時間間隔内で、車両が物体と当たるときその都度衝突を検出確認することに基づいている。衝突のこの確認は物体の衝突場所に無関係である。この効果は、トリガ検査100と並列に実施される、センサ信号の合理性検査に対して有利な仕方で使用される。トリガ検査100の際に2つのセンサ20,30およびCANバスシステム10から使用することができる、例えば車両固有速度および/またはプリクラッシュセンサによって求められる相対速度のような別の付加情報に基づいて、データ評価110の際に特徴が抽出され、これを用いて歩行者保護手段のトリガが必要である状況が識別されるとき、暫定的なトリガ決定120を下すことができる。
【0019】
トリガ検査100と並列に、合理性検査が実施される。説明を簡単にするために、負の加速度、すなわちx方向、すなわち走行方向に減速が生じるとき、センサが正の信号を生成するようにセンサが組み込まれているものと仮定する。センサ信号の合理性検査のために、第1のセンサ20の信号がブロック210において第1のしきい値と比較される。信号がこの第1のしきい値に達するおよび/またはこれを上回ると、比較的大きな減速度が生じかつ相応の第1のフラグがセットされ、これはブロック220において保持素子によって所定の第1の時間間隔の間保持される。相応に、第2のセンサ30の信号がブロック212において第2のしきい値と比較される。第2のセンサ30のセンサ信号がこの第2のしきい値に達するおよび/またはこれを上回ると、相応の第2のフラグがセットされかつブロック222において保持素子によって所定の第2の時間間隔の間保持される。それぞれの比較結果を表しているこれら2つのフラグはブロック230において相互に、例えば論理AND結合により論理結合される。これによりブロック230において、合理性検査200の結果を表している合理性フラグが生成される。合理性フラグ査は例えば、2つのセンサ20,30のセンサ信号が相互に無関係にそれぞれ必要なしきい値を上回り、これにより著しい減速を確認するときにセットされる。2つのセンサ20,30により確認される著しい減速は肯定的な合理性検査200のために予め定めた第1および第2の時間間隔より長く続いてはならない。2つのセンサ20,30の一方が欠陥に基づいて非常に高い信号を送出し、このために誤って著しい減速が推定されると、この欠陥は、2つのセンサ20,30のうちの他方が相応の減速を確認していないことによって識別される。このことは、この場合には合理性フラグがセットされないことを意味する。というのは、トリガが合理的ではないからである。最終的なトリガ決定はブロック400において、入力として、例えばトリガフラグとしてのトリガ決定、および例えば合理性フラグとしての合理性決定が受信されるときに下される。トリガ信号ASの生成のために、ブロック400において例えばトリガフラグと合理性フラグとのAND論理結合が実施される。欠陥のあるセンサの場合、歩行者保護装置のトリガが行われないことは容易に分かる。というのは、トリガ検査100に無関係に、セットされない合理性フラグがトリガを阻止するからである。これにより有利にも、欠陥のあるセンサの場合の所望しないトリガを信頼性を以て妨げることができる。2つのセンサ20,30が車両長手軸線に対して対称的に配置されていれば、しきい値はブロック210および212において同じ値にセットされかつ時間間隔はブロック220および222において同様に同じ値にセットされる。
【0020】
加速度もしくは減速度信号を直接しきい値と比較する代わりに、この信号から、これらはその後相応にしきい値と比較されるのだが、例えば加速度もしくは減速度の第1の積分値および/または第2の積分値および/またはウィンドウ積分値等のような別の量を生成することができる。付加的に、例えば車両固有速度および/または相対速度のような別の量を合理性検査200において使用することもできる。
【0021】
択一的な、図示されていない実施例において、合理性検査200のために、例えばエアバックのような乗員保護手段のドライブ制御のためにクラッシュ時に利用される、車両に存在している別のセンサのセンサデータも使用することができる。殊に、このためにエアバック制御装置における中央の加速センサの信号が適している。この種の実施例においてこれらの信号を同様に相応のしきい値と比較しかつこうして生成されたフラグ信号を所定の持続時間の間保持しかつ論理結合を用いて合理性決定に組み入れることができる。
【0022】
図2には、3つの加速度センサ20,30,40のデータを合理性検査200および/またはトリガ検査100のために評価することができる、本発明の方法の実施例が示されている。図示の実施例において第1のセンサ20および第2のセンサ30はここでも車両長手軸線に対して対称的に配置されておりかつ第3のセンサ40は車両長手軸線に配置されている。図1の実施例とは異なって、合理性検査200は付加的なブロック214を含んでいる。ここで第3のセンサ40の信号は第3のしきい値と比較される。第3のセンサ40のセンサ信号が第3のしきい値に達するおよび/またはこれを上回ると、相応の第3のフラグがセットされかつブロック224において保持素子により所定の第3の時間間隔の間保持される。ブロック230においてこの実施例において、それぞれの比較結果を表している3つのフラグが相互に論理結合されて、合理性検査200の結果を表している合理性フラグが生成される。図2の実施例においては合理性フラグは、第3のセンサ40および少なくとも1つの別のセンサ20または30が著しい減速度を確認したときにだけセットされる。このために第1のセンサ20の信号は第3のセンサ40の信号とともに論理AND結合を用いて別の第4のフラグ信号に論理結合される。同様に第2のセンサ30の信号は第3のセンサ40の信号とともに別の第5のフラグ信号に論理結合される。合理性検査200の結果としての合理性フラグを生成するために、第4のフラグ信号および第5のフラグ信号がOR論理結合を介して相互に論理結合される。3つのセンサを用いる方法は、合理性が第3の、車両長手軸線に配置されているセンサ40の比較的短い信号伝搬時間に基づいてより早期に決定され、これにより保護手段の一層迅速なドライブ制御が可能であるという利点を有している。更に、一層確実な合理性検査のために3つすべてのセンサ20,30,40が衝突を指示しなければならないように設定することができる。その場合評価のためにセンサ信号の種々異なっている論理結合を使用することができ、つまり例えばnオウトオブmの決定を下すことができる。すなわちm個存在するセンサのうちのn個が衝突を指示して、合理性検査200の肯定的な結果が得られるようにしなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】2つのセンサを有する歩行者保護装置に対するトリガ信号の生成のための方法のブロック線図
【図2】3つのセンサを有する歩行者保護装置に対するトリガ信号の生成のための方法のブロック線図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサデータが求められかつ評価される、歩行者保護装置に対するトリガ信号(AS)の生成方法において、
少なくとも2つのセンサ(20,30,40)のデータが評価されかつ、予め定めた数の配置されているセンサ(20,30,40)のデータが物体との衝突を指示するとき肯定的な合理性検査(200)が指示される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
データ評価の結果が歩行者との衝突あり(110)となったときに肯定的な暫定的なトリガ決定を行うようにしている、歩行者との衝突を識別するためのトリガ検査(100)が実施され、その際データ評価(110)は少なくとも2つのセンサ(20,30)のセンサデータの評価および/または車両固有速度および/または相対速度の評価を含み、かつトリガ検査の際(100)に歩行者との衝突が識別されかつセンサデータの合理性検査が肯定的であるときに、歩行者保護装置に対するトリガ信号(AS)が生成される
請求項1記載の方法。
【請求項3】
走行方向に負の加速度が検出されるときに少なくとも2つのセンサ(20,30)は正の信号を生成する
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
合理性検査(200)のために第1の比較過程(210)において第1のセンサ信号が第1のしきい値と比較されかつ第1のセンサ信号が第1のしきい値より大きいかまたはそれに等しいとき、第1の比較結果が予め定めた第1の持続時間の間(220)保持され、その際第2の比較過程(212)において第2のセンサ信号が第2のしきい値と比較されかつ第2のセンサ信号が第2のしきい値より大きいかまたはそれに等しいとき、第2の比較結果が予め定めた第2の持続時間(222)の間保持され、その際第1の比較結果および第2の比較結果が合理性結果を生成するために相互に論理結合され、その際第1の比較結果および第2の比較結果が予め定めたレベルを有しているとき肯定的な合理性検査(200)が指示される
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
2つの比較結果の論理結合(230)はAND論理結合である
請求項4記載の方法。
【請求項6】
しきい値および/または保持持続時間は車両固有速度および/または相対速度および/または別のパラメータに依存している
請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
バンパーにおいて車両長手軸線に対して少なくとも2つのセンサ(20,30,40)が対称配置されている場合、しきい値および保持持続時間はそれぞれのセンサ信号の検査のために同じ大きさである
請求項4から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
バンパーに配置されている3つのセンサ(20,30,40)が評価され、その際第1のセンサ(20)はバンパーの左部分に配置され、第2のセンサ(30)はバンパーの右部分に配置されかつ第3のセンサ(40)はバンパーの中央に配置され、その際第3のセンサ(40)および少なくとも第1または第2のセンサ(20,30)が物体との衝突を指示するとき、肯定的な合理性検査(200)が指示される
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
センサデータからの合理性検査(200)および/またはトリガ検査(100)に対して、第1の積分値および/または第2の積分値および/または異なった持続時間のウィンドウ積分値および/または減速度および/または加速度の最大値および/または最小値を含んでいる特徴が抽出および/または計算される
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
合理性検査(200)のために付加的に、乗員保護手段をドライブ制御するために使用されるセンサのセンサデータが評価される
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−511493(P2008−511493A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528802(P2007−528802)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053232
【国際公開番号】WO2006/024570
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany