説明

歩行解析装置及び歩行解析方法

【課題】使用者に過度の負担をかけることなく、使用者の歩行能力を普遍的に推定することができる歩行解析装置及び歩行解析方法を提供する。
【解決手段】使用者の腰部に装着される加速度計10の前後加速度検出部12、左右加速度検出部14及び上下加速度検出部16により、使用者の腰部における前後加速度、左右加速度、上下加速度が検出される。ROM26には、予め求められた特定期間における推定指標と歩行能力との関係が記憶されている。加速度計10により検出された各加速度の時間変化及びROM26に記憶されている歩行能力に関する関係とから、CPU24により使用者の歩行能力が導出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の歩行能力を解析する歩行解析装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような歩行解析装置あるいは歩行解析方法としては、たとえば以下のようなものがある。まず、下記特許文献1に開示されている技術は、使用者の腰部の加速度を加速度センサで検出して、該加速度センサからの出力信号を微分することで加速度のピークを検出し、そのピーク値が所定の閾値を超えた場合に異常歩行(つまづき)と判定するものである。
【0003】
また、下記特許文献2に開示されている技術は、使用者の腰部に加速度センサを装着して、該加速度センサにより検出される左右水平軸周りの角加速度から、使用者の歩行状態が摺り足歩行状態であるかどうかを判別することができる歩行解析装置である。具体的には、センサからの角加速度出力信号を周波数解析し、歩行周波数の2倍の周波数に現れるピークレベルの値によって、摺り足歩行かどうかを判別している。これは、通常の歩行では、「踏み出し」動作と「後ろへの蹴り上げ」動作にともない、腰部左右水平軸周りに同レベルの回転が生じるため、角加速度出力信号を周波数解析した歩行周波数特性は、歩行周波数(一歩分)の2倍の周波数(半歩分)に大きなピークを示すが、摺り足歩行をすると、「後ろへの蹴り上げ」動作が弱くなるため、歩行周波数の2倍の周波数のピークレベルが低下してしまうことを利用している。
【0004】
また、下記特許文献3に開示されている技術は、腰部に加速度センサを取り付け、鉛直方向加速度成分のピークと谷ピークの差分と進行方向加速度成分の山ピークと谷ピークの差分を算出し、予め用意した差分と歩行速度との関係式により歩行能力として歩行速度や歩幅を推定するものである。身体にマーカーを取り付け、カメラによりそのマーカーの軌跡を計測する。そして予め、測定空間に座標軸を設定しておき、マーカーの移動位置、移動時間を用いて、歩行速度や歩幅を推定するものである。
【特許文献1】特開平10−165395号公報
【特許文献2】特開2000−006608号公報
【特許文献3】特開2005−114537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術によれば、加速度のピークを検出し、そのピークをつまづきと判別するまではよいが、使用者の歩行能力そのものを検出あるいは推定するものではない。
【0006】
また、特許文献2の技術においては、腰の回転は下肢だけではなく上肢の動きにも左右されるため、歩行周波数の2倍の周波数のピークレベルが相対的に低くなっているとしても、それが歩行能力に直接関係があるとは言い難い。また、摺り足歩行を検出することで、下肢全体の衰えを検知することはできるが、引用文献1と同様に歩行能力そのものを検出あるいは推定するものではない。
【0007】
また、特許文献3に開示されている技術によれば、歩行能力として歩行速度あるいは歩幅を推定することができる。しかしながら、特許文献3の明細書段落番号[0025]、[0026]に各加速度成分の山ピークと谷ピークの差分と歩行速度とに相関関係があると記載されているが、その図8に示されているように、特定の被験者(2人)に対して測定を行った結果であり、万人に適用できるとはいえない。また、単に鉛直方向加速度あるいは進行方向加速度のピークを検出しているこの方法では、各足の歩行能力を個別に判別することはできない。左右の歩行能力差を明確にできなければ、歩行能力の定量化としては不十分である。
【0008】
本発明は、上記のような現状を鑑みてなされたものであって、より普遍的に歩行能力を推定することができる歩行解析装置及び歩行解析方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが、鋭意検討した結果、使用者が特定の歩行動作を行っている期間においては、その期間における腰部の上下方向、前後方向、左右方向の各加速度の時間変化と歩行能力との間に相関関係があることを見出した。
【0010】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明の歩行解析装置は、歩行時における腰部の上下方向における加速度である上下加速度と、歩行時における腰部の前後方向における加速度である前後加速度と、歩行時における腰部の左右方向における加速度である左右加速度とそれぞれを検出し、それらの時間変化を計測する加速度計測手段と、前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、歩行時における特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出手段と、前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、歩行時の歩行能力に関連する推定指標を算出する推定指標算出手段と、前記推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した推定指標と歩行能力との関係を用いて歩行能力を推定する歩行能力推定手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の歩行解析方法は、歩行時における腰部の上下方向における加速度である上下加速度と、歩行時における腰部の前後方向における加速度である前後加速度と、歩行時における腰部の左右方向における加速度である左右加速度とをそれぞれ検出し、それらの時間変化を計測する加速度計測ステップと、前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、歩行時における特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出ステップと、前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、歩行時の歩行能力に関連する推定指標を算出する推定指標算出ステップと、前記推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した前記推定指標と前記歩行能力との関係を用いて歩行能力を推定する歩行能力推定ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
腰部の各加速度を検出する手段としては、使用者の腰部に加速度計測手段としての加速度計を取り付ける形態を例示することができる。この場合、特に簡便に歩行能力を推定することができる。
【0013】
また、本発明の歩行解析装置あるいは歩行解析方法においては、前記期間抽出手段は、前記加速度の時間変化に基づいて、特定の歩行動作が行われる時点の中から二つの時点を抽出し、これら二つの時点間を前記特定期間として抽出するのがよい。
【0014】
さらに、前記期間抽出手段は、左右の各足において特定の歩行動作が行われる前記特定期間をそれぞれ抽出するものであり、前記歩行能力推定手段は、左右各足における歩行能力を推定するのがよい。
【0015】
なお、本発明の歩行解析装置の一形態として、歩行能力を特定の識別記号に変換する手段を備え、その識別記号を表示する表示部を設けるようにしてもよい。識別記号としては、歩行能力を示す数値、歩行能力の程度を段階的に示すもの(大中小、レベルなど)、一定水準の歩行能力をクリアしているかどうかを示すもの(合あるいは否、セーフあるいはアウトなど)、あるいはこれらの組み合わせを例示することができる。また、推定された歩行能力の強さが基準以下であるかどうかを判定する手段を備え、基準以下であれば、歩行能力の向上につながる対策を教示する手段を備えるようにしてもよい。
【0016】
ここで、歩行能力としては、背屈力、膝伸展力、歩行速度及び歩幅から選ばれる少なくともひとつを例示することができる。さらに、歩行能力としては、上記以外に、歩隔(左右方向における左右の足の距離)、各関節(股関節、膝関節、足関節)の可動範囲角度、各関節のトルク、各関節の伸展・屈伸筋力、床反力等を例示することができる。さらに、各歩行能力の左右バランスや下肢骨格の歪等を数値化したものを例示することができる。
【0017】
加えて、上記歩行解析装置を用いて3次元加速度に依拠して判定される歩行能力の情報が記憶される情報記憶手段と、歩行能力の情報に基づいてポイントを演算するポイント演算手段とを有する健康維持増進システムを構成しても良い。
【発明の効果】
【0018】
上記のような本発明の歩行解析装置あるいは歩行解析方法によれば、特定期間における腰部の加速度の時間変化が歩行能力と相関があることから、腰部の加速度を検出するだけで、歩行能力を推定することができる。また、歩行動作に基づき出力される腰部の各加速度の時間変化に基づいて特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出し、その特定期間中の各加速度の時間変化に基づく推定指標から歩行能力を推定しているので、使用者によって特定の歩行動作が行われるタイミングにばらつきがあっても、特定期間を確実に抽出することができ、ひいてはより普遍的に歩行能力を推定することができる。
【0019】
さらに、特定の歩行動作がおこなわれる時点を少なくとも二つ検出し、その時点間を特定期間と抽出することで、特定の歩行動作が行われる特定期間を容易に抽出することができる。さらに、左右の各足において特定の歩行動作が行われる前記特定期間をそれぞれ抽出し、左右各足における歩行速度を推定することで、リハビリ等の目的に使用する場合、リハビリの効果、リハビリの必要部位等を明確にし、効率的な治療を行うことが出来る。
【0020】
また3次元加速度に依拠して判定される歩行能力は、当該能力を測定する機器を手で振って改ざんできないので、かような情報が記憶される情報記憶手段と、前記情報に基づいてポイントを演算するポイント演算手段とを有する健康維持増進システムの信頼性はすこぶる高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の歩行解析装置の一例を示すブロック図である。図1に示す装置100は、歩行時における使用者の腰部の加速度を検出し、その加速度に対応する信号(以下、加速度信号とする)を出力する加速度計測手段としての加速度計10と、加速度計10からの加速度信号を受けて、使用者の歩行能力を推定する演算部20と、を有する。さらに、歩行時間などを計測する時間計測部30と、歩行能力を推定した結果等の情報や使用者の情報等を表示することができる表示部40と、歩行能力の強さを判別した結果等の情報や使用者の情報等を記憶することができる記録部50とを有するものである。なお、これら加速度計10、演算部20、時間計測部30、表示部40、記録部50は一体化することができ、例えば、人体の腰部に一体的に装着することができるようになっている。例えば、万歩計のようにベルト、ズボン、スカート等に懸架できるフックを備えたものを例示することができる。
【0022】
加速度計10は、使用者の歩行時において腰部の前後加速度を検出する前後加速度検出部としてのX方向加速度検出部12と、腰部の左右加速度を検出する左右加速度検出部としてのY方向加速度検出部14と、腰部の上下加速度を検出する上下加速度検出部としてのZ方向加速度検出部16とにより構成されている。それぞれの検出部は、一体化されて加速度計10とされており、該加速度計10を使用者の腰部に装着すれば、前後加速度、左右加速度、上下加速度のすべてを検出することができるようになっている。これらそれぞれの検出部により検出されたそれぞれの方向における加速度は、それぞれの加速度に対応する電気信号(それぞれ、前後加速度信号、左右加速度信号、上下加速度信号とする)とされて、それぞれ独立に演算部20に出力されるようになっている。
【0023】
なお、加速度計10としては、一般的に知られている加速度センサを使用することができる。例えば、圧電素子を用いた3軸の加速度センサや、静電容量型の3軸加速度センサ等を使用することができる。3軸加速度センサの場合、上記前後加速度検出部12、左右加速度検出部14、上下加速度検出部16は、一つの検出素子とすることができる。または、加速度計10として、1軸あるいは2軸の加速度センサを組み合わせて使用してもよい。
【0024】
演算部20は、A/D変換器22と、演算装置としてのCPU24と、記憶装置としてのROM26と、RAM28とから構成されている。A/D変換器22は、加速度計10からの信号をデジタル信号に変換するものであり、該A/D変換器22からデジタル化された加速度信号がCPU24、ROM26、RAM28にそれぞれ送信されるようになっている。デジタル化された信号(前後加速度信号、左右加速度信号及び上下加速度信号)は、RAM28に一旦記憶され、CPU24により所定の処理がされるようになっている。例えば、RAM28には、腰部の加速度信号の時間変化波形が時間計測部30からの時間情報とともに記憶されるようになっている。加速度信号の時間変化波形は、例えば歩行動作の数周期分がRAM28に記憶されるようにすることができる。
【0025】
また、ROM26には、RAM28に記憶される前後加速度信号、左右加速度信号及び上下加速度信号から、特定の歩行動作を行うタイミングやその期間(特定期間)を抽出するためのプログラムが格納されている。特定の歩行動作とは、図7に示すように、踵接地動作や、足底接地動作や、足尖離地動作、立脚中期等をいうものである。ここで、踵接地動作は、一方の足の踵が接地する動作であり、足底接地動作は、一方の足の底全体が接地する動作であり、足尖離地動作は、他方の足の足尖が離地する動作である。
【0026】
このプログラムはCPU24により実行されるようになっており、このプログラムと、該プログラムを格納するROM26と、CPU24とが本実施形態における期間抽出手段を構成する。また、ROM26には、RAM28に記憶される加速度信号の時間変化から、期間抽出手段により特定期間であると判定された期間内における各加速度に基づいて、推定指標を算出するプログラムが格納されている。期間抽出手段と同様に、該プログラムとCPU24とが本実施形態における推定指標算出手段を構成する。また、ROM26には、予め用意された推定指標と歩行能力との関係(例えば関係式)が格納されている。このROM26には、この関係と該推定指標算出手段にて算出された各推定指標とから歩行能力を推定するプログラムが格納されている。該プログラムとCPU24とが本実施形態における歩行能力推定手段を構成する。
【0027】
また、本実施形態の歩行解析装置は、外部とのデータのやりとりをできる入出力インターフェースを有するようにしてもよい。また、本実施形態の歩行解析装置は、使用者の情報等を入力する入力部を備えるようにしてもよい。また使用者に結果を出力する出力部を備えるようにしてもよい。
【0028】
(第1実施形態) 続いて、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明する。以下の実施形態において歩行解析装置の説明をするが合わせて歩行解析方法の説明も兼ねる。まず、第1実施形態として、歩行能力として背屈力を推定する実施形態について説明する。
【0029】
本発明者らが、鋭意検討した結果、歩行時において特定の歩行動作が行われる特定期間において、腰部の加速度の時間変化に基づいて算出される特定の推定指標と背屈力の強さとの間には、相関関係があることが見出された。すなわち、本第1実施形態に係る歩行解析装置100は、歩行時の腰部における上下方向、前後方向、左右方向の各加速度を検出する加速度計測手段(加速度計10)と、該加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、背屈力の強さと関連のある特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出手段(ROM26、CPU24)と、加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、背屈力の強さと関連する推定指標を算出する推定指標算出手段(ROM26、CPU24)とを、有する。さらに、推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した推定指標と背屈力の強さとの関係を用いて背屈力を推定する歩行能力推定手段(ROM26、CPU24)を有する。ここで、歩行能力推定手段は、予め用意された前記推定指標と背屈力の強さとの関係が記憶された記憶手段(記憶装置、RAM28、ROM26)を有するものとすることができる。
【0030】
本第1実施形態のさらに具体的な構成においては、前記推定指標は、特定期間における平均前後加速度とすることができる。この場合、該平均前後加速度と背屈力の強さとの関係を予め求めておくことで、背屈力の強さを推定することができる。ここで加速度の平均とはその期間における加速度の時間変化を時間で積分し、その値を期間で割った値をいうものとする。
【0031】
上記のような本第1実施形態の歩行解析装置によれば、歩行時における腰部の加速度と人体の背屈力の強さとの関係(以下、加速度−背屈力関係とする)が、予め記憶装置に記憶されているので、加速度計測手段により歩行時の腰部の加速度を検出すれば、前記加速度−背屈力関係とから、演算装置により使用者の背屈力の強さを判別することができる。
【0032】
背屈力の強さと腰部の加速度との間に相関関係があるのは、以下の理由によるものと考えられる。つまり、背屈は、脛の筋肉(前脛骨筋)により行うとともに、後方への蹴り出し力によって生まれた加速力も利用している。蹴り出し力が弱い場合、背屈力が低下し、つま先が垂れやすくなる。この蹴り出しという動作は、背屈動作の補助という働きとともに、歩行の推進力を生み出す働きをも有することは自明である。そのため、歩行の推進力に関係する腰部の加速度と背屈力の強さとの間には相関関係があると考えられ、腰部の加速度を検出すれば、背屈力の強さを導出することが可能である。
【0033】
また、蹴り出し動作によれば、腰部の加速度は主に前後方向に向かうことになるので、腰部の前後加速度と背屈力の強さとの間には、より一層の相関関係がある。そのため、腰部の前後加速度と背屈力の強さとの関係を予め加速度−背屈力関係として求めておき、腰部の前後加速度を検出し、特定期間における平均前後加速度を推定指標として、前記加速度−背屈力関係から使用者の背屈力の強さをより精度よく判別することができる。
【0034】
本第1実施形態においては、背屈力の強さを推定することができるので、たとえば転倒の主要因である「つまづき」を誘発する下肢の衰えを検出することができる。これは、以下の理由による。
【0035】
まず歩行とは、交互に左右の足を前に振り出すものである。地面に接して体重を支持している足を立脚といい、地面から離れて前に振り出される足を遊脚という。歩行において、左右の両足それぞれにおいて、地面に足が着いた状態の立脚期と、地面から足が離れた遊脚期とがある。また歩行中は、左右の足が同時に立脚期となっている期間が両脚支持の期間となり、一方の足だけが立脚期となっている期間が単脚支持の期間となる。
【0036】
立脚期は、まず遊脚となった足の踵が地面に接触する状態(踵接地)で開始し、爪先側も地面に接地することで足の底が略床面に沿って接触する状態(足底接地)、足の底が床面に接触した状態から踵の部分が床面から離れる状態(踵離地)を経て、爪先(足尖)が床面から離れることにより、足が床面から離れる状態(足尖離地)で終了する。従って各足において踵接地から足尖離地までが立脚期となり、足尖離地から踵接地までが遊脚期となる。
【0037】
背屈力が低下すると1周期の歩行動作(左右一歩分)のうち遊脚期(足を前方に振り出している期間)につま先が垂れるため、地面とつま先との間隔を十分に確保することができない。そのため、つまづきやすく転倒しやすい。そこで、背屈力の強さを推定することにより、転倒のしやすさに直接影響する「つまづきやすさ」を検出することができる。これにより、転倒を早期に予防することができる。また、つまづきが転倒の要因である以上、つまづき自体を検出していたのでは、実際問題として転倒を予防しているとはいえないが、本発明の歩行解析装置によれば、要は「つまづきやすさ」を判別しているのであり、転倒予防につながる対策をより効果的に行うことができる。
【0038】
なお、本第1実施形態の歩行解析装置においては、背屈力の強さを特定の識別記号に変換する手段を備え、その識別記号を表示する表示部を設けるようにしてもよい。識別記号としては、背屈力を示す数値、背屈力の程度を段階的に示すもの(大中小、レベルなど)、一定水準の背屈力をクリアしているかどうかを示すもの(合あるいは否、セーフあるいはアウトなど)、あるいはこれらの組み合わせを例示することができる。また、判別された背屈力の強さが基準以下であるかどうかを判定する手段を備え、基準以下であれば、転倒予防につながる対策を教示する手段を備えるようにしてもよい。
【0039】
さらに、本第1実施形態の歩行解析装置によれば、背屈力の低下という具体的な下肢の衰えを検出することができるため、背屈力の強さに関係のある筋力(例えば、前脛骨筋など)が衰えていることを具体的に知見することができる。そのため、転倒予防につながる対策を使用者に教示するに際しても、下肢全体に係るような運動ではなく、背屈力に直接関係する筋肉を増加させるための運動を、より具体的に使用者に教示することができる。したがって、転倒を予防するのにより効果的である。
【0040】
また、理学療法士等の専門家への相談や、モーションキャプチャ等による歩行解析により背屈力の低下を把握することは可能ではあるが、これらの方法では、専門家への相談が面倒であったり、大掛かりな設備を必要としたりする。本発明では、腰部の加速度を検出するだけでよいので、例えば、腰部に装着し歩行するだけでよく、簡易に背屈力の低下を検出することができる。
【0041】
本第1実施形態のさらに具体的な構成においては、前記特定期間としては、一方の足で蹴り出す蹴り出し動作が行われる時点から他方の足のみで立脚する立脚中期が行われる時点までの期間を例示できる。歩行において蹴り出し動作により発生する推進力は、一方の足で蹴り出す蹴り出し動作から他方の足のみで立脚する立脚中期までの間における腰部の前後加速度に最も現れる。そのため、この歩行動作が行われる期間を特定期間とすれば、この特定期間における腰部の前後加速度と背屈力の強さとの間には、より一層の相関関係がある。したがって、この特定期間における腰部の前後加速度と背屈力の強さとの関係を予め求めておけば、推定指標として該特定期間における平均前後加速度を算出することで背屈力を推定することができる。
【0042】
さらに特定期間として、一方の足の踵が接地する踵接地動作が行われる時点から、該一方の足の足底全体が接地する足底接地動作が行われる時点までの期間を例示することもできる。さらに特定期間として、一方の足の踵が接地する踵接地動作が行われる時点から、他方の足の足尖が離地する足尖離地動作が行われる時点までの期間を例示することもできる。
【0043】
また前記背屈力の強さとしては、前記特定期間中における足首の背屈角の変化の割合として表されるものを指標とすることもできる。この場合、特定期間における前記推定指標と、背屈角との変化の割合との関係を予め求めておくことで、背屈力の強さを推定することができる。なお、背屈角とは足首の関節から脛に向かう方向と、足首の関節からつま先に向かう方向との成す角をいうものとする。
【0044】
図3に示すように、一方の足(以下右足として説明する)に関して、該右足の背屈角は、歩行動作のうち右足と左足との両方が地面に接する両脚支持期において最小となる。具体的には、右足の背屈角は左足の底全体が地面に接する左足底接地における歩行動作の期間において最小となるのが通常である。さらに具体的には、左足の底全体が地面に接する左足底接地においては、左足踵側からつま先側に順次体重が移動していくが、右足の背屈角はこの前方への体重移動の中間時点から、つま先が地面から離れるつま先離地までのある時点(O時点)において最小となる。
【0045】
また、右足の背屈角は、歩行動作のうち、図3に示す右つま先離地動作の直後の時点において最大となるのが通常である。具体的には、右足の背屈角は、右足で蹴り出し動作をして該右足が地面から離間した後、右足を前方に振り出す動作の前後の時点(A時点)において最大となるのが通常である。そして、図6に示すように、蹴り出し動作の後において、背屈力が低下している場合(60代被験者)は、つま先が垂れて背屈角が大きいままであり、一方、背屈力が十分に維持されている場合は(20代被験者)、背屈して再び背屈角が小さくなる。
【0046】
したがって、背屈力が強い場合は、O時点における背屈角(以下α とする)とA時点における背屈角(以下β とする)との差(β−α)に対する、A地点における背屈角(β)と、蹴り出し後から右踵接地(図3参照)までにいたる期間における背屈角(以下、γ とする)との差(β−γ)の比は、相対的に大きくなる。つまり、背屈力が強い場合は、(β−γ)/(β−α)であらわされる値は大きなものとなる。一方、背屈力が低下している場合は、β−α に対する、β−γ の比は、相対的に小さなものとなり、(β−γ)/(β−α)であらわされる値は小さなものとなる。
【0047】
つまり、(β−γ)/(β−α)・・・(式1)の大小により背屈力の強さを評価することができる。したがって、加速度−背屈力関係は、腰部の加速度と式1にて表される背屈力の強さとの関係を予め求めることで得ることができる。具体的には、複数の被験者に対して、歩行時における腰部の加速度(特に蹴り出し動作から立脚中期までの間における前後加速度)と歩行時における背屈角とを測定して、得られる背屈角から式1で規定される背屈力の強さを算出し、その背屈力の強さと腰部の加速度との関係を、例えば関数として取得することで、上記加速度−背屈力関係を得ることができる。
【0048】
本第1実施形態においては、ROM26には、予め求められる加速度−背屈力関係が記憶されている。ROM26に記憶されている加速度−背屈力関係は、例えば図2に示すようなものとされている。図2に示されているグラフ1〜3の直線で表されているのが加速度−背屈力関係である。
【0049】
すべての加速度−背屈力関係は、蹴り出し動作から左立脚中期(図3参照)までの特定期間における前後加速度の平均加速度(以下、単に平均前後加速度とする)と、背屈力の強さとの関係を規定するものである。本実施形態において背屈力の強さは、前述した(β−γ)/(β−α)・・・(式1)で規定している。具体的には、図4に示すように、背屈角が最低となるO時点(図3の両脚支持期における左足底接地付近に対応する)の背屈角をα として、背屈角が最大となるA時点(図3の振り出し動作前後に対応する)の背屈角をβ とし、蹴り出し後の遊脚期以降(図3に示す右足遊脚期から右踵接地までの動作に略対応する)の背屈角をγ としている。背屈角γ としては、後述するB時点、C時点、D時点における背屈角γ1、γ2、γ3をそれぞれ採用することができる。図2のそれぞれのグラフにおいて縦軸が上記式1であらわされる背屈力の強さであり、横軸が前記平均加速度である。
【0050】
また、図2のグラフ1は、蹴り出し動作直後における立脚中期背屈力の強さと前記平均加速度との関係を示すものである。ここで、立脚中期背屈力の強さとは図3に示す左立脚中期(B時点:蹴り出し動作が左足の場合は右立脚中期)における背屈力の強さであり、式1において背屈角γ として図4に示すB時点(図3の左立脚中期に対応する)の背屈角γ1を採用した場合に対応する。つまり、この図2のグラフ1に示される加速度−背屈力関係を用いると、前記平均加速度から立脚中期背屈力の強さについて判別することができる。
【0051】
一方、図2のグラフ2は、蹴り出し動作から右踵接地までの動作において、背屈角が極小となる際の極小点背屈力の強さと前記平均加速度との関係を示すものである。ここで、極小点背屈力の強さは、図3に示す右足遊脚期において、背屈角が極小となる時点での背屈力の強さであり、式1において図4に示すC時点での背屈角γ2を採用した場合に相当する。つまり、この加速度−背屈力関係を用いると、検出した平均加速度から、右足遊脚期と右踵接地とにわたる動作における極小点背屈力の強さを推定することができる。
【0052】
また、図2のグラフ3は、極大点背屈力の強さと前記平均加速度との関係を示すものである。ここで、極大点背屈力の強さとは、図3に示す歩行動作のうちのA時点以降、右踵接地までを含む右足遊脚期において、背屈角が再度最大となる時点(あるいは右踵接地の時点)での背屈力の強さを示すものであり、式1において背屈角γ として図4に示すD時点の背屈角γ3を採用した場合に対応する。つまり、この図2のグラフ3に示される加速度−背屈力関係を用いると、前記平均加速度から極大点背屈力の強さについて推定することができる。
【0053】
これらの加速度−背屈力関係は、複数の被験者に対して、歩行時における腰部の加速度を測定すると同時に、図4に示すような背屈角の変化を測定して式1により規定される背屈力の強さを算出して、これら加速度と背屈力の強さとの対となる複数のデータ(図2のドットに対応する)から加速度と背屈力の強さとの関係(図2の直線に対応する)を、例えば、最小二乗法等により導出することにより得ることができる。
【0054】
図2において、極大点背屈力の強さと平均加速度との間の関係が最も明瞭であると思われる。したがって、本実施形態における加速度−背屈力関係においては、極大点背屈力の強さを蹴り出し動作後における背屈力の強さとして、代表的に取り扱うこともできる。なお、背屈力の強さとして本実施形態以外の指標(式1で表される以外の指標)を採用する場合は、背屈角が極大となるD時点以外の時点における背屈力のほうが、平均加速度との間で最も関係がある場合も想定される。その場合は、他の時点における背屈力の強さを代表的な指標として採用することができる。
【0055】
以下、第1実施形態の歩行解析装置100の作用・動作について説明する。まず、本実施形態の歩行解析装置100を腰部に装着して、歩行を開始すると、歩行解析装置100の加速度計10により、腰部の前後加速度、左右加速度、上下加速度の時間変化が計測される。加速度計10は、検出した加速度の時間変化を電気信号の波形(加速度信号)として出力する。加速度計10から出力された加速度信号は、A/D変換器22によりデジタル化されて一旦RAM28に記憶される。図5は加速度計10で検出される加速度信号(前後加速度信号、左右加速度信号、上下加速度信号)の時間変化の一例を示すものである。時間によってそれぞれの加速度が変化しているのがわかる。図5において、前後加速度は前方に向かう側を正として、左右加速度は右に向かう側を正として、上下加速度は上方に向かう側を正として示されている。これらそれぞれの加速度の時間変化は、歩行動作の特定歩行動作に対応している。
【0056】
RAM28に歩行動作の一周期分に相当する加速度信号(前後加速度、左右加速度、上下加速度)が記憶されると、CPU24とROM26により構成される期間抽出手段によって、該加速度信号の時間変化から特定の歩行動作が行われるタイミングや期間(特定期間)が抽出される。具体的には、加速度信号を時間微分することにより、該加速度信号のピークを検出し、該ピーク時に特定の歩行動作が開始あるいは終了すると判定することができる。例えば、図5において、前後加速度が極小となるとともに、上下加速度及び左右加速度が極大となる時点(X時点)において、図3の蹴り出し動作が行われると判定することができる。そして、蹴り出し動作後において、上下加速度及び左右加速度が極小となる時点(Z時点)を、図3の右つま先離地(蹴り出し動作が右足の場合)と判定することができる。さらに、つま先離地の動作の後、前後加速度および左右加速度は緩やかに上昇するが、上下加速度は緩やかに減少し、その後極小となる。この上下加速度の極小となる時点(Y時点)を右立脚中期(蹴り出し動作が右足の場合)と判定することができる。
【0057】
上記のように、特定の歩行動作を行っている時点が把握できれば、これらのうち少なくとも2つの時点により特定の歩行動作が行われる特定期間が抽出される。そして、この特定期間中における加速度の時間変化にもとづいて平均前後加速度をCPU24により演算する。具体的には、蹴り出し動作と判定された時点と立脚中期と判定された時点との間の特定期間において、前後加速度の時間変化から、推定指標として前後方向の平均加速度を演算する。
【0058】
このように演算された平均加速度を推定指標として、加速度−背屈力関係から背屈力の強さを推定する。具体的には、CPU24により、ROM26に記憶されている図2に示すような加速度−背屈力関係に、演算された平均加速度を当てはめて、当該平均加速度に対応する背屈力の強さを導出することができる。ここで、背屈力の強さは式1で表されるものである。さらに、背屈力の強さとして、図2に示される立脚中期背屈力の強さ、極小点背屈力の強さ、極大点背屈力の強さをそれぞれこの時点で演算しておき、RAM28に記憶させておく。あるいは、記録部50に演算結果をデータとして自動的に保存するようにしてもよい。
【0059】
さらに、推定された背屈力の強さから、使用者の現時点での歩行年齢を演算することもできる。具体的には、ROM26に、背屈力の強さと歩行年齢との関係を予め記憶させておき、演算された背屈力の強さを、前記背屈力の強さと歩行年齢との関係に当てはめることにより、歩行年齢を演算することができる。演算された歩行年齢は、RAM28に一時的に記憶される。あるいは、記録部50に歩行年齢の判別結果を自動的に保存するようにしてもよい。
【0060】
上記のように、CPU24により式1にて表される背屈力の強さが導出された場合、その結果を表示部40に表示することができる。この場合、使用者が立脚中期背屈力の強さや極小点背屈力の強さや極大点背屈力の強さなどから、表示したい項目を選択して、選択された項目の推定結果を表示することができる。あるいは、すべての推定結果を自動的に表示するようにしてもよい。
【0061】
さらに、推定された背屈力の強さに基づいた歩行年齢を表示することができる。さらに、歩行年齢に応じて、転倒予防のための運動方法を表示することにより、使用者に運動の指針を教示することもできる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の歩行解析装置100によれば、歩行能力として使用者の背屈力の強さを推定することができるため、転倒の主要因である「つまづき」を誘発する下肢の衰えをより簡便に検出することができる。さらに、つまづき自体を検出するのではなく、つまづきを誘発する背屈力の低下を直接検出することができるため、より早期に転倒予防にかかわる対策を講じることができる。
【0063】
(第2実施形態) 次に、第2実施形態にかかる歩行解析装置100について説明する。第2実施形態にかかる歩行解析装置100は、歩行能力として下肢筋力を推定するものである。本発明者らが、鋭意検討した結果、歩行時において特定の歩行動作が行われる特定期間において、腰部の加速度の時間変化に基づいて算出される特定の推定指標と下肢筋力との間には、相関関係があることが見出された。すなわち、本第2実施形態に係る歩行解析装置100は、歩行時の腰部における上下方向、前後方向、左右方向の各加速度を検出する加速度計測手段(加速度計10)と、該加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、下肢筋力と関連のある特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出手段(ROM26、CPU24)と、加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、下肢筋力に関連する推定指標を算出する推定指標算出手段(ROM26、CPU24)とを、有する。さらに、推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した推定指標と下肢筋力との関係を用いて下肢筋力を推定する歩行能力推定手段(ROM26、CPU24)を有する。ここで、歩行能力推定手段は、予め用意された前記推定指標と下肢筋力との関係が記憶された記憶手段(記憶装置、RAM28、ROM26)を有するものとすることができる。
【0064】
第2実施形態においてさらに具体的な構成は、前記推定指標は、特定期間における平均前後加速度とすることができる。この場合、該平均前後加速度と下肢筋力との関係を予め求めておくことで、下肢筋力を推定することができる。
【0065】
歩行時における腰部の加速度の時間変化を計測することで下肢筋力を推定できるのは以下の理由による。つまり、歩行時における腰部の前後加速度は、下肢筋力により得られる前後方向の推進力・制動力に対応する。したがって、腰部の前後加速度と下肢筋力との間には、より一層の相関関係がある。そのため、腰部の前後加速度と下肢筋力との関係を予め加速度−下肢筋力関係として求めておき、特定期間における平均前後加速度を推定指標として、該加速度−下肢筋力関係とから使用者の下肢筋力を測定することができる。
【0066】
一方、歩行時は脚を蹴り出して前方向に進む。この脚の蹴り出し力は、前後方向に向かうとともに上下方向にむかう。したがって、例えば蹴り出し力に対応する下肢筋力の強さは、歩行時における腰部の上下加速度と相関関係がある。そのため、腰部の上下加速度と下肢筋力との関係を予め加速度−下肢筋力関係として求めておき、特定期間における平均上下加速度を推定指標として、該加速度−下肢筋力関係とから使用者の下肢筋力を推定することができる。
【0067】
さらに、前記前後加速度あるいは前記上下加速度から下肢筋力を測定する場合、前記特定期間は、一方の足の踵が接地する踵接地動作が行われる時点から該一方の足の足底全体が接地する足底接地動作が行われる時点までの期間とすることができる。踵接地時には、足関節まわりに発生する底屈モーメント(地面からの作用により爪先が地面に触れる方向に足関節を回転させるモーメント)に対抗する下肢筋力(例えば下肢筋力)が必要である。
【0068】
この底屈モーメントは、踵接地時における歩行速度が大きいほど、より大きくなる。したがって、下肢筋力が小さい場合には、この底屈モーメントを許容できる大きさにするため、踵接地時における歩行速度が低下すると考えられる。一方、下肢筋力が大きい場合には、大きな底屈モーメントを許容できるため、踵接地時における歩行速度が大きくなると考えられる。上記より、踵接地時における腰部の前後加速度を推定指標とすることにより下肢筋力を推定することができると考えられる。
【0069】
また、踵接地時には、膝関節まわりに発生する屈曲モーメント(地面からの作用により膝が曲がる方向に膝関節を回転させるモーメント)に対抗する下肢筋力が必要である。この屈曲モーメントは、踵接地時における歩行速度が大きいほど大きい。したがって、下肢筋力が小さい場合には、この屈曲モーメントを許容できる大きさにするため、踵接地時における歩行速度が低下すると考えられる。一方、下肢筋力が大きい場合には、大きな屈曲モーメントを許容できるため、踵接地時における歩行速度が大きくなると考えられる。したがって、踵接地時における腰部の前後加速度を推定指標とすることにより下肢筋力を推定することができる。
【0070】
また、下肢筋力が低いと踵接地時に発生する屈曲モーメントに対抗できないため、膝の屈曲が起こらないように膝関節を突っ張った状態で踵接地動作を行う傾向が強いと考えられる。膝関節を突っ張った状態で踵接地動作を行うと、踵接地時における地面からの衝撃が、膝関節の屈曲によって吸収されなくなる。このときの衝撃は、腰部における上下加速度に影響を与える。つまり、衝撃が大きい場合には、上方向を正とした場合に上下加速度が大きくなり、言い換えると、下肢筋力が低い場合には、踵接地時における上下加速度が大きくなると考えられる。一方、下肢筋力が高い場合には、屈曲モーメントに対抗することができるため、踵接地時には膝関節を屈曲させて衝撃を吸収しようとする傾向が強いと考えられる。そのため、下肢筋力が高い場合には、踵接地時に地面から受ける衝撃が小さくなり、言い換えると、踵接地時における上下加速度が小さくなると考えられる。以上のように、踵接地動作における腰部の加速度を検出することで、下肢筋力の推定が可能である。
【0071】
上記と同様に、前記前後加速度あるいは前記上下加速度から下肢筋力を測定する場合、前記特定期間は、一方の足の足底全体が接地する足底接地動作が行われる時点から他方の足の足尖が離地する足尖離地動作が行われる時点までの動作とすることができる。この特定期間の腰部の加速度は歩行動作における制動能力に関係する。下肢筋力が低いと当然制動能力も低下することから、この特定期間における腰部の加速度を検出することで下肢筋力を測定することができる。なお、より具体的には、この特定期間において腰部の前後加速度は、減速を表わす負の加速度となり、この負の前後加速度の絶対値が大きいほど制動能力が大きい、つまり下肢筋力が大きいと判断できる。逆に、負の前後加速度の絶対値が小さいほど制動能力が小さい、つまり下肢筋力が小さいと判断できる。
【0072】
さらに、上記と同様に、前記前後加速度あるいは前記上下加速度から下肢筋力を推定する場合、前記特定期間は、一方の足の踵が接地する踵接地動作が行われる時点から他方の足の足尖が離地する足尖離地動作が行われる時点までの期間とすることができる。この特定期間においては、全体として制動力により歩行速度が減少する。したがって上記と同様の理由により、下肢筋力を測定することができる。
【0073】
以上の本第2実施形態の構成において、前記下肢筋力は背屈力とすることができる。背屈力は、歩行時の腰部における加速度と相関関係があり、本実施形態の装置により容易に測定することができる。背屈力と腰部の加速度との間に相関関係があるのは、以下の理由によるものと考えられる。歩行動作は、加速と減速を繰り返して行われるが、減速をする際に使われる筋力の一つに背屈力がある。したがって、歩行動作のうち制動期にあたる特定歩行動作中の腰部の加速度は制動力に影響されるため、腰部の加速度と背屈力との間には相関関係があると考えられる。そのため、特定期間における腰部の加速度を推定指標とすることにより、背屈力を推定することが可能である。
【0074】
あるいは、前記下肢筋力は膝伸展力とすることができる。膝伸展力は、歩行動作における制動力を発揮する筋力の一つである。したがって、歩行動作時のうち制動期に対応する特定期間中の腰部の加速度は制動力に影響されるため、腰部の加速度と膝伸展力との間には相関関係があると考えられる。そのため、特定期間における、腰部の加速度を推定指標とすることにより、膝伸展力を推定することが可能である。この場合、特定期間における各加速度の時間変化に基づく推定指標と膝伸展力との関係を予め求めておくことで、推定指標を算出することにより膝伸展力を推定することができる。
【0075】
さらに、下肢筋力として背屈力や膝伸展力を採用する場合、前記特定期間は、一方の足の踵が接地する踵接地動作が行われる時点から該一方の足の足底全体が接地する足底接地動作が行われる時点までの期間とし、推定指標は、該特定期間における平均前後加速度とすることができる。また、前記特定期間は、一方の足の足底全体が接地する足底接地動作が行われる時点から他方の足の足尖が離地する足尖離地動作が行われる時点までの期間として、推定指標は、該特定期間における平均前後加速度とすることができる。また、特定期間は、一方の足の踵が接地する踵接地動作が行われる時点から該一方の足の足底全体が接地する足底接地動作が行われる時点までの期間とし、推定指標は、前記期間における平均上下加速度とすることができる。さらに、背屈力・膝伸展力に関しては、これら複数の加速度と下肢筋力との関係を組合わせることにより、より精密に下肢筋力の推定を行うことが可能である。
【0076】
本第2実施形態においては、ROM26には、予め求められる加速度−下肢筋力関係が記憶されている。このROM26に記憶されている加速度−下肢筋力関係は、本実施形態の場合、前後加速度と下肢筋力の強さとの関係をあらわすものである。ROM26に記憶されている加速度−下肢筋力関係は、例えば図8〜13に示すようなものとされている。
【0077】
図8〜13に直線で表されているのが加速度−下肢筋力関係である。さらに具体的には、これらの加速度−下肢筋力関係は、下肢筋力のうちの背屈力や膝伸展力と歩行時における腰部の加速度との関係を示したものである。これらの加速度−下肢筋力関係は、それぞれの特定歩行動作における前後加速度や上下加速度と、背屈力や膝伸展力等の下肢筋力との関係を予め求めておくことにより得ることができる。具体的には、複数の被験者に対して、歩行時における腰部の加速度(前後加速度、上下加速度等)を測定すると同時に、背屈力や膝伸展力等の下肢筋力を測定し、これら加速度と下肢筋力との対となる複数のデータ(図8〜13のドットに対応する)から加速度と下肢筋力との関係(図8〜13の直線に対応する)を、例えば、最小二乗法等により導出することにより得ることができる。
【0078】
次に、図8〜13に示される加速度−下肢筋力関係について個別に説明する。まず、図8の加速度−下肢筋力関係は、図7に示すAの特定期間(踵接地動作から足底接地動作が行われる期間)における平均前後加速度と背屈力との関係を示すものである。この図8に示す加速度−下肢筋力関係を用いる場合、Aの期間における平均前後加速度を算出することにより、使用者の背屈力を測定することができる。
【0079】
図9の加速度−下肢筋力関係は、図7に示すAの特定期間(踵接地動作から足底接地動作が行われる期間)における平均前後加速度と膝伸展力との関係を示すものである。この図9に示す加速度−下肢筋力関係を用いる場合、Aの期間における平均前後加速度を算出することにより、使用者の膝伸展力を測定することができる。
【0080】
図10の加速度−下肢筋力関係は、図7に示すBの特定期間(足底接地動作から足尖離地動作が行われる期間)における平均前後加速度と膝伸展力との関係を示すものである。この図10に示す加速度−下肢筋力関係を用いる場合、Bの期間における平均前後加速度を算出することにより、使用者の膝伸展力を測定することができる。
【0081】
図11の加速度−下肢筋力関係は、図7に示すCの特定期間(踵接地動作から足尖離地動作が行われる期間)における平均前後加速度と背屈力との関係を示すものである。この図11に示す加速度−下肢筋力関係を用いる場合、Cの期間における平均前後加速度を算出することにより、使用者の背屈力を測定することができる。
【0082】
図12の加速度−下肢筋力関係は、図7に示すCの特定期間(踵接地動作から足尖離地動作が行われる期間)における平均前後加速度と膝伸展力との関係を示すものである。この図12に示す加速度−下肢筋力関係を用いる場合、Cの期間における平均前後加速度を算出することにより、使用者の膝伸展力を測定することができる。
【0083】
図13の加速度−下肢筋力関係は、図7に示すAの特定期間(踵接地動作から足底接地動作が行われる期間)における平均上下加速度と膝伸展力との関係を示すものである。この図13に示す加速度−下肢筋力関係を用いる場合、Aの期間における平均上下加速度を算出することにより、使用者の膝伸展力を測定することができる。
【0084】
また、加速度−下肢筋力関係としては、Aの期間における平均前後加速度(Xa)と、Bの期間における平均前後加速度(Xb)と、Aの期間における平均上下加速度(Xc)との3つの変数と背屈力との関係を重回帰分析することにより得られた加速度−下肢筋力関係を用いることができる。これら(Xa)、(Xb)、(Xc)がそれぞれ推定指標にあたる。具体的にこの場合の加速度−下肢筋力関係は、背屈力(Y1)=A1Xa+B1Xb+C1Xc+D1(式a)により表わされる。さらに、前述したように複数の被験者からデータを集めて上記の重回帰分析を行った結果、この場合のさらに具体的な加速度−下肢筋力関係は、背屈力(Y1)=−0.53Xa−0.59Xb+0.1Xc+0.35(式b)により表わされる。この加速度−下肢筋力関係における重相関係数は約0.6と大きい。したがって、上記(式a,b)の加速度−下肢筋力関係を用いることで、それぞれ(Xa)、(Xb)、(Xc)の変数を算出することにより、使用者の背屈力をより一層精密に測定することができる。
【0085】
また、加速度−下肢筋力関係としては、Aの期間における平均前後加速度(Xa)と、Bの期間における平均前後加速度(Xb)と、Aの期間における平均上下加速度(Xc)との3つの変数と膝伸展力との関係を重回帰分析することにより得られた加速度−下肢筋力関係を用いることができる。具体的にこの場合の加速度−下肢筋力関係は、膝伸展力(Y2)=A2Xa+B2Xb+C2Xc+D2(式c)により表わされる。さらに、前述したように複数の被験者からデータを集めて上記の重回帰分析を行った結果、さらに具体的な加速度−下肢筋力関係は、膝伸展力(Y2)=−2.29Xa−3.34Xb−0.52Xc−0.5(式d)により表わされる。この加速度−下肢筋力関係における重相関係数は約0.74と大きい。したがって、上記(式c,d)の加速度−下肢筋力関係を用いることで、それぞれ(Xa)、(Xb)、(Xc)の変数を算出することにより、使用者の膝伸展力をより一層精密に測定することができる。
【0086】
以下、第2実施形態に係る歩行解析装置100の作用・動作について説明する。まず、本実施形態の歩行解析装置100を腰部に装着して、歩行を開始すると、歩行解析装置100の加速度計10により、腰部の前後加速度、左右加速度、上下加速度が検出される。加速度計10は、検出した加速度の時間変化を電気信号の波形(加速度信号)として出力する。加速度計10から出力された加速度信号は、A/D変換器22によりデジタル化されて一旦RAM28に記憶される。図7には加速度計10で検出される加速度信号(前後加速度信号、左右加速度信号、上下加速度信号)の時間変化の一例が示されている。時間によってそれぞれの加速度が変化しているのがわかる。図7において、前後加速度は前方に向かう側を正として、左右加速度は右に向かう側を正として、上下加速度は上方に向かう側を正として示されている。これらそれぞれの加速度の時間変化は、図7に示すように、歩行動作の特定歩行動作に対応している。
【0087】
RAM28に歩行動作の一周期分(数周期分でもよい)に相当する加速度信号(前後加速度、左右加速度、上下加速度)が記憶されると、CPU24とROM26により構成される歩行動作判定手段によって、該加速度信号の時間変化から特定の歩行動作が行われるタイミングや期間(特定期間)が抽出される。具体的には、加速度信号を時間微分することにより、該加速度信号のピークを検出し、該ピーク時に特定の歩行動作が開始あるいは終了すると判定することができる。あるいは、前後加速度、上下加速度、左右加速度から選択される一つの加速度に着目し、該加速度が正から負あるいは負から正に変化する時点において、特定の歩行動作が開始あるいは終了すると判定することができる。あるいは、加速度信号のピーク時における加速度に対してある所定割合の加速度となるタイミングを歩行動作の開始時、終了時と判定することができる。さらに、ここで述べた全ての期間抽出方法のうち、最も適切なものを随時選択するようにしてもよいし、これらの期間抽出方法が適宜組合わされた方法を採用することもできる。
【0088】
例えば本実施形態においては、以下のような判定方法を採用して、図7のように特定歩行動作を判定している。まず、図7の(右)踵接地の判定方法は次のように行うことができる。(1)前後加速度の大きな負のピーク(P1)を検出し、その大きな負のピーク(P1)の直前の前後加速度の極小点(P2)を検出する。(2)負のピーク(P1)と極小点(P2)との間に左右加速度が正から負に変化する点(P3)があるか判定する。(3)左右加速度が正から負に変化する点(P3)が上記範囲内にある場合は、該P3の時点を(右)踵接地動作の時点と判定する。(4)左右加速度が正から負に変化する点(P3)が上記範囲内にない場合は、極小点(P2)を(右)踵接地動作の時点と判定する。なお、上記の例は(右)踵接地における判定であり、(左)踵接地を判定する場合には、上記(2)のステップにおいて、負のピーク(P1)と極小点(P2)との間に左右加速度が負から正に変化する点(P4)があるかどうかを判定すればよい。
【0089】
次に、足底接地は、上記のように踵接地が判定された後に、該踵接地以降において上下加速度が最初に正から負に変化する点として判定することができる。さらに、足尖離地は、足底接地以降にある上下加速度が負から正にかわる最初の点、あるいは、最初に現れる極大点のうちいずれか早い方とすることができる。
【0090】
上記のように、特定の歩行動作を行っている時点が把握できれば、特定の歩行動作が行われる特定期間中における平均加速度をCPU24により演算する。具体的には、推定指標としてのA期間における平均前後加速度は、踵接地動作と判定された時点と足底接地動作と判定された時点との間における前後加速度信号から、前後加速度の平均加速度を演算することにより得ることができる。その他の期間における前後加速度あるいは上下加速度についても同様である。
【0091】
このように演算された平均加速度を推定指標として採用し、加速度−下肢筋力関係から下肢筋力を測定することができる。具体的には、CPU24により、ROM26に記憶されている図8〜13に示すような加速度−下肢筋力関係に、演算された平均加速度(該加速度−下肢筋力関係に対応する特定期間における前後加速後あるいは上下加速度)を当てはめて、当該平均加速度に対応する下肢筋力を導出することにより、下肢筋力を測定することができる。このとき導出された下肢筋力は、RAM28に一旦記憶させておくことができ、自動的あるいは使用者の操作により記録部50に記憶させるようにすることができる。さらに、導出された下肢筋力あるいは記録部50に記録されている過去の測定結果は、例えば記録部50に記憶されている使用者の情報や日付等の情報とともに、表示部40に表示させるようにしてもよい。
【0092】
また、図8〜図13に示す加速度−下肢筋力関係あるいは前述した重回帰分析の結果から得られた加速度−下肢筋力関係のうち、背屈力と膝伸展力とをそれぞれ導出できる2つ以上の加速度−下肢筋力関係を選択して、背屈力と膝伸展力とをそれぞれ導出することも可能である。導出された背屈力及び膝伸展力はRAM28に一旦記憶させておき、自動的あるいは使用者の操作により記録部50に記憶させるようにすることができる。また、記録部50に記憶させる際に、使用者や日付等の情報や、それぞれ使用した加速度−下肢筋力関係の情報とともに記憶させるようにしてもよい。
【0093】
さらに、導出された下肢筋力の強さから、使用者の現時点での歩行年齢を演算することもできる。具体的には、ROM26に、下肢筋力の強さと歩行年齢との関係を予め記憶させておき、演算された下肢筋力を、前記下肢筋力と歩行年齢との関係に当てはめることにより、歩行年齢を演算することができる。また、歩行年齢を算出する際に用いられる下肢筋力としては、背屈力及び膝伸展力の少なくとも一つを採用することができる。演算された歩行年齢は、RAM28に一時的に記憶される。さらに、自動的あるいは使用者の操作により記録部50に歩行年齢の判別結果を保存するようにしてもよい。
【0094】
上記のように、CPU24により下肢筋力の強さが導出された場合、その結果を表示部40に表示することができる。この場合、使用者が背屈力や膝伸展力や歩行年齢等から、表示したい項目を選択して、選択された項目の判別結果を表示することができる。あるいは、すべての判別結果を自動的に表示するようにしてもよい。さらに、推定された下肢筋力や歩行年齢から、下肢筋力向上に効果的な運動方法を表示部に表示することにより、使用者に運動の指針を教示することができる。
【0095】
以上説明したように、本実施形態の歩行解析装置100によれば、使用者の下肢筋力を、大掛かりな装置を用いずに測定することができる。また、使用者は本実施形態の歩行解析装置100を腰部に取り付けて歩行するだけでよいため、使用者に過度の負担をかけることがない。さらに、本実施形態の歩行解析装置100においては、歩行動作のみで背屈力と膝伸展力の2種類の下肢筋力を測定することができるため、これらの下肢筋力を測定するために別々の測定方法を行う必要がない。さらに、本実施形態の歩行解析装置100を、下肢の衰えを改善するために使用する場合には、背屈力や膝伸展力等のより具体的な下肢筋力についての情報が得られるため、使用者は下肢のどの部分が衰えているのかを具体的に知ることができる。そのため、下肢の衰えを改善するために具体的にどのような手段を行えばよいのか、比較的容易に判断することができる。
【0096】
(第3実施形態) 次に、歩行能力として歩行速度を推定する第3実施形態について説明する。本発明者らが鋭意検討した結果、歩行時において特定の歩行動作が行われる特定期間において、腰部の加速度の時間変化に基づいて算出される特定の推定指標と歩行速度との間には、相関関係があることが見出された。
【0097】
すなわち、本第3実施形態に係る歩行解析装置100は、歩行時の腰部における上下方向、前後方向、左右方向の各加速度を検出する加速度計測手段(加速度計10)と、該加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、歩行速度と関連のある特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出手段(ROM26、CPU24)と、加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、歩行速度と関連する推定指標を算出する推定指標算出手段(ROM26、CPU24)とを、有する。さらに、推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した推定指標と歩行速度との関係を用いて歩行速度を推定する歩行能力推定手段(ROM26、CPU24)を有する。ここで、歩行能力推定手段は、予め用意された前記推定指標と歩行速度との関係が記憶された記憶手段(記憶装置、RAM28、ROM26)を有するものとすることができる。
【0098】
ROM26に記憶されている推定指標と歩行速度との関係(関係式)について以下に説明する。まず各推定指標と、各推定指標と歩行速度との関係(関係式)について詳細に説明する。
【0099】
(推定指標V1) 前後加速度を積分することにより前進速度、つまり歩行速度をある程度算出することはできるが、積分誤差の影響が大きく、推定精度の面で問題がある。そこで以下のように考えた。歩行動作は、加速動作と減速動作の繰り返しであり、加速動作にかける時間(加速時間)と減速動作にかける時間(減速時間)の比率を見た場合に、加速にかける時間が大きいほうが速い歩行速度となる傾向がある、したがって、一歩時間における減速時間の比率が推定指標として使用できると考えた。
【0100】
図14に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、一歩時間と減速時間を図示した説明図を示す。この場合、減速時間とは、前後方向において最大速度となる点(前後の最大速度位置と称す)から前後方向の最低速度になる点(前後の最低速度位置と称す)までの時間にあたる。ここで、以下の式を推定指標V1とした。
【0101】
推定指標V1=前後の最大速度位置から前後の最低速度位置までの時間/一歩時間。
【0102】
加速度は、速度の微分である。そのため、図14において前後の速度が最大になる点は加速度が時間軸を正から負に横切るところであり、前後の速度が最小になる点は加速度が時間軸を負から正に横切るところである。よって、"最大速度位置から最低速度位置までの時間“とは、”前後加速度が負から正になる時間“−”正から負になる時間“である。
【0103】
この図14の説明図を用い、減速時間などを算出し、図15のグラフを作成した。図15のグラフは、X軸に推定指標V1(減速時間/一歩時間)(%)、Y軸に歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフである。Y軸での歩行速度は、実測歩行速度を用いた。実測歩行速度は三次元動作分析システムを利用して求めた。より個人差をなくし規格化するために、Y軸に置いて歩行速度を身長で割ったものを用いた。図15に示すように、一歩時間における減速時間の割合が小さいほど、歩行速度を身長で割った値が大きいことが見て取れた。図15に示されるように、指標V1と実測頬工速度を身長で割った値とは、負の相関が見られた。
【0104】
(推定指標V2) 大きな正の加速度が起こると、大きな負の加速度が起こる。歩行速度が速い場合、加速度変化は大きいと考えられる。そのため一歩期間における減速を示す負の前後加速度は歩行速度を反映していると考えた。
【0105】
加速度変化が大きい場合、消費エネルギーは大きくなる。上記のように推定指標V1と歩行速度とが相関が取れていることから、歩行速度が速い場合には一歩時間において加速動作に費やす時間が長くなることが分かる。つまり大きな制動(負の加速度)が起こった場合、それは加速時間が長かったと考えられる。これは消費エネルギーが極力大きくならないような歩行を行っていると考えられ、通常歩行は最小限の消費エネルギーで行う運動であるという仮定に則していると考えられる。以下に推定指標V2を示す。
【0106】
推定指標V2=前後加速度が正から負に変わる点から負から正へ変わる点までの前後加速度の積分値/積分期間時間。
【0107】
"前後加速度が正から負に変わる点から負から正へ変わる点までの前後加速度の積分値"とは、推定指標V1の"最大速度位置から最低速度位置までの時間"を表す期間の前後加速度を時間積分した値である。つまり推定指標V2は、その積分値を積分期間時間で割った値で、減速動作時における平均減速度を意味する。図16に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、前後加速度が正から負に変わる点から負から正へ変わる点までの前後加速度の積分値を図示した説明図を示す。
【0108】
また図17に、X軸に推定指標V2(m/sec/sec)を、Y軸に歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図17に示されるように、推定指標V2と歩行速度/身長とは、負の相関がみられた。
【0109】
(推定指標V3) 歩行中の身体重心は、上下動を繰り返す。身体重心位置は、踵接地時に最も低くなり、身体が直立した状態にある時(立脚中期)に最も高くなる。立脚中期後、足が身体前方へ振り出されることにより、身体重心が下方へ移動し、踵接地時に最下点となる。
【0110】
従って重心が上方へ移動する際に発生する上方加速度、上方への移動速度の減速の際に発生する上方減速加速度、重心が下方へ移動する際に発生する下方加速度も歩行速度を反映していると考えられる。上方加速度は、踵接地時の衝撃による振動が入っていると考えられるため、外力による振動の影響が少ないと考えられる上方減速加速度と下方加速度に着目した。
【0111】
立脚中期は足尖離地後に現れる。そのため足尖離地後の上下加速度における負の加速度は、立脚中期直前での上下減速加速度と足を前に振り出すことによる身体重心の下方加速度を示していると考えた。踵接地直前の正の上下加速度は、踵接地時の衝撃力を緩和するための下方速度を減速させるための加速度であると考えた。この衝撃緩和という動作は、踵接地時(制動期)の筋負荷を低減することができ、消費エネルギーを抑えるという仮定に準じていると言える。歩行速度を反映していると考えられる両積分値の絶対値の和を推定指標V3とした。
【0112】
推定指標V3=|上方速度の減速量/期間時間|+|下方速度の減速量/期間速度|。
【0113】
"上方速度の減速量"とは、足尖離地から上下加速度が負から正に変わる点までを期間とした上下加速度の時間積分値を示す。よって、|上方速度の減速量/期間時間|は、この特定期間での上下方向平均減速度の絶対値を意味する。また"下方速度の減速量"とは、上下加速度が負から正に変わる点から踵接地までを特定期間とした上下加速度の時間積分値を示す。よって、|下方速度の減速量/期間時間|は、この特定期間での上下方向平均加速度の絶対値を意味する。
【0114】
図18に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、制動期、加速期、立脚後期を図示した説明図を示す。上方速度の減速量及び下方速度の減速量部分を矢印で表す。また図19に、X軸に推定指標V3(m/sec/sec)を、Y軸に歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図19に示されるように、推定指標V3と歩行速度/身長とは、正の相関がみられた。
【0115】
(推定指標V4) 推定指標V4=(右[左]踵接地から左[右]踵接地までの前後加速度を積分し、最大速度と最低速度の差)/(前後の最大速度位置から前後の最低速度位置までの時間/一歩時間)。
【0116】
図20に、一歩時間における最大速度になる点と最低速度になる点を説明した図を示す。また図21に、X軸に推定指標V4(m/sec/sec)を、Y軸に歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図21に示されるように、推定指標V4と歩行速度/身長とは、正の相関がみられた。
【0117】
(推定指標V5) 次に、加速前期にあたる右足尖離地から右立脚後期(足尖離地以降の上下加速度が負から正に変わる点)までの前後加速度を積分し、右立脚後期時の前後速度を歩行速度の推定指標V5とした。(同様に左立脚後期時の前後速度も用いることが出来る)推定指標V5=右[左]足尖離地から右[左]立脚後期までの前後加速度の積分値。
【0118】
図22に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、制動期、加速期、立脚後期を図示した説明図を示す。斜線部が推定指標V5の値となる。この図22の説明図を用いて上記推定指標V5を算出し、図23のグラフを作成した。図23は、X軸に推定指標V5(m/sec)を、Y軸に歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図23に示されるように、推定指標V5と、歩行速度/身長とには正の相関がみられた。
【0119】
(推定指標V6) 次に立脚初期(足尖離地以降、上下加速度が正から負へ変わる最初の点)から立脚後期までの上下加速度を積分し算出される速度と立脚後期から他方の足の踵接地までの上下加速度を積分し算出される速度の和の大きさを推定指標V6とした。
【0120】
推定指標V6=|一方の足の立脚初期から立脚後期までの上下加速度の積分値|と|一方の足の立脚後期から他方の足の踵接地直前までの上下加速度の積分値|の和。
【0121】
図24に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、制動期、加速期、立脚初期及び立脚後期を図示した説明図を示す。この図24の説明図を用いて上記推定指標V6を算出し、図25のグラフを作成した。図25は、X軸に推定指標V6(m/sec)を、Y軸に歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図25に示されるように、推定指標V6と、歩行速度/身長とには正の相関がみられた。
【0122】
(推定指標V7) 推定指標V7=推定指標V6/推定指標V1。
【0123】
上記推定指標V7を算出し、図26のグラフを作成した。図26は、X軸に推定指標V7(m/sec/sec)を、Y軸に歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図26に示されるように、推定指標V7と歩行速度/身長とには、正の相関がみられた。
【0124】
(歩行速度推定式=推定指標Vと歩行速度との関係式) 歩行速度を推定する関係式を上記推定指標V1〜7を用いて求めることとした。各推定指標V1〜7は、単独で係数を用いても歩行速度を求めることが出来る。この場合図15、17、19、21、23、25、26に示される直線で表される関係式を用いることが出来る。また、より精度を上げるために、複数の推定指標を用い重回帰分析を行い関係式を得ることが出来る。推定指標V1〜3を用いた推定式の例を以下に示す。
【0125】
歩行速度=0.249×推定指標V1−0.091×推定指標V2+0.049×推定指標V3+0.269。
【0126】
上記の関係式に各計測データから算出した値を代入して推定歩行速度を算出し、実測した歩行速度との相関を見た。図27に、X軸に推定歩行速度/身長(m/sec/m)を、Y軸に実測歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図27に示されるように、正の高い相関がみられた。実測歩行速度は、上記図15、16等で用いた歩行速度と同じものである。また例えば推定指標V4〜7を用いた関係式を以下に示す。
【0127】
歩行速度=0.18×推定指標V4+0.56×推定指標V5+0.69×推定指標V6−0.15×推定指標V7+0.38。
【0128】
上記の関係式に各計測データから算出した値を代入して推定歩行速度を算出し、実測した歩行速度との相関を見た。図28に、X軸に推定歩行速度/身長(m/sec/m)を、Y軸に実測歩行速度/身長(m/sec/m)を取ったグラフを示す。図28に示されるように、正の高い相関がみられた。実測歩行速度は、上記図15、16等で用いた歩行速度と同じものである。
【0129】
以下、第3実施形態に係る歩行解析装置100の作用・動作について説明する。まず、本実施形態の歩行解析装置100を腰部に装着して、歩行を開始すると、歩行解析装置100の加速度計10により、腰部の前後加速度、左右加速度、上下加速度が検出される。加速度計10は、検出した加速度の時間変化を電気信号の波形(加速度信号)として出力する。加速度計10から出力された加速度信号は、A/D変換器22によりデジタル化されて一旦RAM28に記憶される。
【0130】
RAM28に歩行動作の一周期分(数周期分でもよい)に相当する加速度信号(前後加速度、左右加速度、上下加速度)が記憶されると、CPU24とROM26により構成される歩行動作判定手段によって、該加速度信号の時間変化から特定の歩行動作が行われるタイミングや期間(特定期間)が抽出される。具体的には、加速度信号を時間微分することにより、該加速度信号のピークを検出し、該ピーク時に特定の歩行動作が開始あるいは終了すると判定することができる。あるいは、前後加速度、上下加速度、左右加速度から選択される一つの加速度に着目し、該加速度が正から負あるいは負から正に変化する時点において、特定の歩行動作が開始あるいは終了すると判定することができる。あるいは、加速度信号のピーク時における加速度に対してある所定割合の加速度となるタイミングを歩行動作の開始時、終了時と判定することができる。さらに、ここで述べた全ての期間抽出方法のうち、最も適切なものを随時選択するようにしてもよいし、これらの期間抽出方法が適宜組合わされた方法を採用することもできる。
【0131】
上記のように、特定の歩行動作を行っている時点が把握できれば、特定の歩行動作が行われる特定期間中における歩行速度に関する推定指標をCPU24により演算する。具体的には、CPU24により、ROM26に記憶されている推定指標−歩行速度関係に、演算された各推定指標データを当てはめて、歩行速度を測定することができる。このとき導出された歩行速度は、RAM28に一旦記憶させておくことができ、自動的あるいは使用者の操作により記録部50に記憶させるようにすることができる。さらに、導出された歩行速度あるいは記録部50に記録されている過去の測定結果は、例えば記録部50に記憶されている使用者の情報や日付等の情報とともに、表示部40に表示させるようにしてもよい。
【0132】
(第4実施形態) 次に歩行能力として歩幅を推定する場合の実施形態について説明する。本発明者らが鋭意検討した結果、歩行時において特定の歩行動作が行われる特定期間において、腰部の加速度の時間変化に基づいて算出される特定の推定指標と歩幅との間には、相関関係があることが見出された。
【0133】
すなわち、本第4実施形態に係る歩行解析装置100は、歩行時の腰部における上下方向、前後方向、左右方向の各加速度を検出する加速度計測手段(加速度計10)と、該加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、歩幅と関連のある特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出手段(ROM26、CPU24)と、加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、歩幅と関連する推定指標を算出する推定指標算出手段(ROM26、CPU24)とを、有する。さらに、推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した推定指標と歩幅との関係を用いて歩幅を推定する歩行能力推定手段(ROM26、CPU24)を有する。ここで、歩行能力推定手段は、予め用意された前記推定指標と歩幅との関係が記憶された記憶手段(記憶装置、RAM28、ROM26)を有するものとすることができる。
【0134】
ROM26に記憶されている推定指標と歩幅との関係(関係式)について以下に説明する。歩幅を推定するにあたっても、第3実施形態と同様に、通常歩行は最小限のエネルギーで行う運動であると仮定した。
【0135】
(推定指標S1) 踵接地時から次の踵接地時点に速度変化がない定常歩行を考える。歩行速度と歩幅には正の相関があり、歩行速度が速ければ歩幅も大きく、歩行速度が遅ければ歩幅も小さい。歩行速度が速ければ、大きな加速度が起こり、それと対になる大きな減速加速度も起こる。そのため一歩期間における減速加速度量は歩幅を反映しているといえる。また歩行には小股で歩行速度が速い、大股で歩行速度が遅いという歩行もあるため、一歩期間における減速加速度量においても、足を前に振り出す直前となる足尖離地時までの減速量の大きさが歩幅をより反映した減速量であると考えた。つまり減速した速度を初速度まで加速するためには、下腿三頭筋の働きにより身体を前方へ進める。身体が前方へ進めるためには当然のことながら、足を前に振り出す必要がある。減速量が大きければ、その分前方への大きな加速、大きな足の振り出しが必要であると考えた。そこで足底接地から足尖離地までの前後加速度を積分し、その積分値を期間時間で割った値を推定指標S1とした。
【0136】
推定指標S1= 右[左]足底接地から左[右]足尖離地までの前後加速度の時間積分値/期間時間。
【0137】
右[もしくは左]足底接地から左[もしくは右]足尖離地までの前後加速度の時間積分値/期間時間は、その期間での平均減速度を表す。
【0138】
図29に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、足底接地、足尖離地を図示した説明図を示す。この図29の説明図を用いて上記推定指標S1を算出し、図30のグラフを作成した。図30は、X軸に推定指標S1(m/sec/sec)を、Y軸に歩幅/身長(m/m)を取ったグラフを示す。この場合の歩幅は、三次元動作分析システムと床反力計を用いて実測したものである。図30に示されるように、推定指標S1と、歩幅/身長とには負の相関がみられた。
【0139】
(推定指標S2) 歩行中の身体重心は、上下動を繰り返す。身体重心位置は、踵接地時に最も低くなり、身体が直立した状態にある時(立脚中期)に最も高くなる。立脚中期後、足が身体前方へ振り出されることにより、身体重心が下方へ移動し、踵接地時に最下点となる。歩行速度と歩幅には正の相関があるため、歩幅が大きければ、踵接地から立脚中期までの時間も短くなり、重心が上方へ移動する際に発生する上方加速度、上方への移動速度の減速の際に発生する上方減速加速度も大きい。また、足を前に振り出す量が大きければ、重心が下方へ移動する際に発生する下方加速度も大きくなる。従って、上方加速度、上方減速加速度、下方加速度は、歩幅を反映していると考えられる。ここで上方加速度は、踵接地時の衝撃による振動が入っていると考えられるため、外力による振動の影響が少ないと考えられる上方減速加速度と下方加速度に着目した。
【0140】
立脚中期は足尖離地後に現れる。そのため足尖離地後の上下加速度の変位にみられる負の加速度は、立脚中期直前での上下減速加速度と足を前に振り出すことによる身体重心の下方加速度を示していると考えた。踵接地直前の正の上下加速度は、踵接地時の衝撃力を緩和するための下方速度を減速させるための加速度であると考えた。歩幅を反映していると考えられる両積分値の絶対値の和を推定指標S2とした。推定指標S2は推定指標V3と同じものにあたる。
【0141】
推定指標S2=|上方速度の減速量/期間時間|+|下方速度の減速量/期間速度|。
【0142】
"上方速度の減速量"とは、足尖離地から上下加速度が負から正に変わる点までを期間とした上下加速度の時間積分値を示す。よって、|上方速度の減速量/期間時間|は、この期間での上下方向平均減速度の絶対値を意味する。また"下方速度の減速量"とは、上下加速度が負から正に変わる点から踵接地までを期間とした上下加速度の時間積分値を示す。よって、|下方速度の減速量/期間時間|は、この期間での上下方向平均加速度の絶対値を意味する。
【0143】
図18に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、制動期、加速期、立脚後期を図示した説明図を示す。上方速度の減速量及び下方速度の減速量部分を矢印で表す。また図31に、X軸に推定指標S2(m/sec/sec)を、Y軸に歩幅/身長(m/m)を取ったグラフを示す。図31に示されるように、推定指標S2と歩幅/身長とは、正の相関がみられた。
【0144】
(推定指標S3) 一歩期間(踵接地から他方の踵接地までの期間)の動作には、踵接地から他方の足尖離地(爪先が地面から離れる)までの期間(両脚支持期)の減速動作と足尖離地後の単脚支持期における前方への加速動作がある。前方への加速動作は、遊脚側の足を前方へ振り出すとともに、下腿三頭筋の働きにより前方への加速をつくり出す。歩幅が小さい場合、足を前に振り出す量が小さい。また単脚支持期は、片足で身体の安定性を保つ必要があり下肢筋肉の負担も大きい。そのため、足を前に振り出す量が小さい場合は、その振り出す時間も短いと考えられる。上記仮定に基づくと、短い時間で大きな加速量をつくり出すことは考え難い。そのため、歩幅が小さい、つまり遊脚期の時間が短い場合、単脚支持期につくり出す加速量が低下することが考えられる。この加速量の低下を補うため、両脚支持期における減速量を低下させるのではないかと考えた。これにより、歩行時における速度起伏が小さくなると考え、踵接地から他方の踵接地までの前後加速度を積分して速度へ変換し、最大速度と最低速度の差を推定指標S3とした。
【0145】
推定指標S3= 右[左]踵接地から左踵[右]接地までの最大速度と最低速度の差。
【0146】
"右[左]踵接地から左[右]踵接地までの最大速度と最低速度の差"とは、推定指標V4における"右[左]踵接地から左[右]踵接地までの前後加速度を積分し、最大速度と最低速度の差"と同じことを指し、踵接地から前後加速度が正から負になるところまでの期間で前後加速度を時間積分した値(最大速度)から、踵接地から前後加速度が負から正になるところまでの期間で前後加速度を時間積分した値(最小速度)を引いた値である。
【0147】
図32は、X軸に推定指標S3(m/sec/sec)を、Y軸に歩幅/身長(m/m)を取ったグラフを示す。図32に示されるように、推定指標S3と、歩幅/身長とには正の相関がみられた。
【0148】
(推定指標S4) 歩幅が小さい場合、足を前に振り出す量が小さくなる。足を前に振り出す期間(遊脚期)は、単脚にて身体の安定性を保つ必要があり、下肢筋肉の負担も大きいと考えられる。上記仮定を基に考えると、足を前に振り出す量が小さければ、遊脚期の期間も短いと考えられる。そこで一歩時間における遊脚期の時間比率は歩幅を反映していると考え、歩幅の推定指標S4とした。
【0149】
推定指標S4=1歩時間に対する踵接地から足尖離地までの時間比率。図33に上記図7のグラフと同様のグラフを用い、踵接地、足尖離地を図示した説明図を示す。
【0150】
(歩幅推定式=歩幅と推定指標Sとの関係式) 歩行速度が速い人は、歩幅も広くなる傾向がある。従って歩幅を推定する関係式を上記推定指標S1〜S4又推定指標V1〜V7を用いて求めることとした。各推定指標S1〜S4また推定指標V1〜V7は、単独で用いても歩行速度を求めることが出来る。この場合図30、31、32に示される直線で表される関係式を用いることが出来る。またより精度を上げるために、複数の推定指標を用い重回帰分析を行い以下のような係数を持つ関係式を見いだした。例えば推定指標S1〜S4を用いた関係式を以下に示す。
【0151】
歩幅=0.163×推定指標S1−0.023×推定指標S2+0.286×推定指標S3+0.027×推定指標S4−0.236。
【0152】
上記の関係式に各計測データから算出した値を代入して推定歩幅を算出し、実測した歩幅との相関を見た。図34に、X軸に推定歩幅/身長(m/m)を、Y軸に実測歩幅/身長(m/m)を取ったグラフを示す。図34に示されるように、正の高い相関がみられた。また例えば推定指標V4、V6、V7を用いた関係式を以下に示す。
【0153】
歩幅=0.11×推定指標V4+0.27×推定指標V6−0.06×推定指標V7+0.24。
【0154】
上記の関係式に各計測データから算出した値を代入して推定歩幅を算出し、実測した歩幅との相関を見た。図35に、X軸に推定歩幅/身長(m/m)を、Y軸に実測歩幅/身長(m/m)を取ったグラフを示す。図24に示されるように、正の高い相関がみられた。
【0155】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、腰部の加速度を計測するだけであるので、専門的な知識も必要としないで簡便に計測することが出来る。また被験者の負担も特にない。また特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出し、その特定期間における加速度の時間変化に基づいて、歩行速度又は歩幅に関連する推定指標を算出することで、より普遍的な歩行速度又は歩幅の推定を行うことが出来る。
【0156】
以下、第4実施形態に係る歩行解析装置100の作用・動作について説明する。まず、本実施形態の歩行解析装置100を腰部に装着して、歩行を開始すると、歩行解析装置100の加速度計10により、腰部の前後加速度、左右加速度、上下加速度が検出される。加速度計10は、検出した加速度の時間変化を電気信号の波形(加速度信号)として出力する。加速度計10から出力された加速度信号は、A/D変換器22によりデジタル化されて一旦RAM28に記憶される。
【0157】
RAM28に歩行動作の一周期分(数周期分でもよい)に相当する加速度信号(前後加速度、左右加速度、上下加速度)が記憶されると、CPU24とROM26により構成される歩行動作判定手段によって、該加速度信号の時間変化から特定の歩行動作が行われるタイミングや期間(特定期間)が抽出される。具体的には、加速度信号を時間微分することにより、該加速度信号のピークを検出し、該ピーク時に特定の歩行動作が開始あるいは終了すると判定することができる。あるいは、前後加速度、上下加速度、左右加速度から選択される一つの加速度に着目し、該加速度が正から負あるいは負から正に変化する時点において、特定の歩行動作が開始あるいは終了すると判定することができる。あるいは、加速度信号のピーク時における加速度に対してある所定割合の加速度となるタイミングを歩行動作の開始時、終了時と判定することができる。さらに、ここで述べた全ての期間抽出方法のうち、最も適切なものを随時選択するようにしてもよいし、これらの期間抽出方法が適宜組合わされた方法を採用することもできる。
【0158】
上記のように、特定の歩行動作を行っている時点が把握できれば、特定の歩行動作が行われる特定期間中における歩幅に関する推定指標をCPU24により演算する。具体的には、CPU24により、ROM26に記憶されている推定指標−歩幅関係に、演算された各推定指標データを当てはめて、歩幅を測定することができる。このとき導出された歩幅は、RAM28に一旦記憶させておくことができ、自動的あるいは使用者の操作により記録部50に記憶させるようにすることができる。さらに、導出された歩幅あるいは記録部50に記録されている過去の測定結果は、例えば記録部50に記憶されている使用者の情報や日付等の情報とともに、表示部40に表示させるようにしてもよい。
【0159】
またさらに、実施形態3及び実施形態4で導出された歩行速度及び歩幅から、使用者の転倒リスクの判定を行うことが出来る。導出される歩行速度(m/sec)及び歩幅(m)から歩調(step/min)を計算する。歩調は、歩調(step/min)=歩行速度(m/sec)÷歩幅(m)×60より求められる。求められた歩行速度、歩幅及び歩調の値の組み合わせにより使用者の転倒リスクが判定出来る。
【0160】
例えば、図36及び図37に例示的に示されるように、歩行速度を0.69(m/sec)以下、1.5(m/sec)以上及びその間を多数段階に分ける。また歩幅を0.49(m)以下、0.8(m)以上及びその間を多数段階に分ける。歩調は90(step/min)以下、91(step/min)以上の2段階に分ける。この歩行速度、歩幅、歩調の組み合わせにより転倒リスクを例えば4段階(転倒危険、転倒注意、躓き注意、問題なし)に分けることが出来る。例として歩行速度0.69(m/sec)以下、歩幅0.49(m)以下、歩調90(step/min)以下の場合は“転倒危険がある”と判定する。例としてあげた数値は、使用者の体格、年齢、性別、歩行状態(通常歩行、全力歩行等)等に合わせて適宜設定できる。この時通常歩行は普段通りの歩き方をさし、全力歩行は出来る限り早く歩くことをさす。
【0161】
また具体的には、ROM26に、転倒リスクと歩行速度、歩幅及び歩調との関係を予め記憶させておき、演算された歩行速度、歩幅及び歩調を、前記転倒リスクと歩行速度、歩幅及び歩調との関係に当てはめることにより、転倒リスクを判定することができる。判定された転倒リスクは、RAM28に一時的に記憶される。さらに、自動的あるいは使用者の操作により記録部50に転倒リスクの判定結果を保存するようにしてもよい。
【0162】
上記のように、CPU24により歩行速度、歩幅、歩調及び転倒リスクが導出された場合、その結果を表示部40に表示することができる。この場合、使用者が歩行速度、歩幅、歩調及び転倒リスク等から、表示したい項目を選択して、選択された項目の結果を表示することができる。あるいは、すべての結果を自動的に表示するようにしてもよい。さらに、判定された転倒リスクから、向上に効果的な運動方法を表示部に表示することにより、使用者に運動の指針を教示することができる。
【0163】
例えば運動指針として効果的な運動メニューを表示することが出来る。運動メニューの例として、下肢筋力強化のための片足椅子起立運動の例を示す。これは運動の説明図を表示し、説明を文章でもわかりやすく表示するものである。説明として「手すりを持たずに、足の裏に充分に体重をかけながら、すわった椅子から片足で立ちましょう。慣れてきたら、低めの椅子でやってみましょう。注意:立ち上がりに不安のある場合は、膝に手をおいて立ち上がりましょう。」等が挙げられる。
【0164】
さらに、本発明の実施形態(第1、2、3、4実施形態)においては、歩行時における特定期間を抽出する際に、左右の各足における特定期間をそれぞれ抽出して、左右の各足においてそれぞれ推定指標を算出し、それぞれ算出された推定指標を基に、左右各足の歩行能力をそれぞれ推定することができる。この場合、左右のどちらの足の歩行動作が行われている特定期間であるか判断するためには、左右加速度を時間変化において、その加速度の時間変化が正負いずれであるかを検出することにより判断することができる。加速度の正負が左右いずれの足に対応するかは、適宜設定することができる。
【0165】
このように、左右の各足の背屈力、下肢筋力、歩行速度及び歩幅が推定できることによって、リハビリ等の目的に使用する場合、リハビリの効果、リハビリの必要部位等を明確にし効率的な治療を行うことが出来る。
【0166】
さらに、本発明は、上記の実施形態に限らず、その他の歩行能力についても推定するものを含む。たとえば、歩行能力としては、歩隔(左右方向における左右の足の距離)、各間接(股関節、膝関節、足関節)の可動範囲角度、各関節のトルク、各関節の伸展・屈伸筋力、床反力等を例示することができる。さらに、各歩行能力の左右バランスや下肢骨格の歪等を数値化したものを別途歩行能力として推定するようにしてもよい。
【0167】
さらに、本発明においては、前述したような方法により歩行能力を推定した結果を使用者に教示するとともに、歩行能力向上のための指針(運動指針等)を使用者に教示するようにしてもよい。例えば、歩行能力の程度を段階的にレベル分けし、そのレベルに応じた運動指針を予め用意しておき、推定された歩行能力からレベル分けをし、そのレベルに応じた運動指針を表示部40に表示するようにしてもよい。歩行能力向上のための指針を教示する手段としてはこれ以外の手段を採用することもできる。
【0168】
また上記した歩行解析装置の結果を活用したシステムを構築することも出来る。例えば3次元加速度に依拠して判定される歩行能力情報が記憶される情報記憶手段と、前記歩行能力情報に基づいてポイントを演算するポイント演算手段とを有する健康維持増進システムを、構成することが出来る。
【0169】
次に歩行解析装置100の解析結果を活用した健康維持増進システムについて説明する。歩行解析装置100は、3次元加速度に依拠して被験者の歩行能力の一つである転倒リスクの判別をすることが出来る。この転倒リスクは、例えば次の5段階に層別され情報として記憶される。
(1)転倒危険
(2)転倒注意
(3)躓き注意
(4)現段階では問題なし(歩幅減少気味)
(5)全く問題なし
【0170】
この転倒リスクは、CPU24の内部で、次のように、ポイントに換算される。
(1)転倒危険: −2点
(2)転倒注意: −1点
(3)躓き注意: 0点
(4)現段階では問題なし(歩幅減少気味):+1点
(5)全く問題なし: +2点
【0171】
図38に示されるように、歩行解析装置100は、パソコン200に周知のUSBにて接続される。そして、パソコン200には、図39に示されるような入力画面が表示され、被験者の氏名、保険者番号、電話番号が入力できるようになっている。全項目が入力された後、OKボタンがクリックされると、歩行解析装置100は、この入力された情報及び転倒リスクポイントを、インターネット300を通じて、健康保険組合のホストコンピュータ400に送る。ホストコンピュータ400は、今回転送されて来た被験者の転倒リスクポイントを用いて、すでに作成されている管理台帳を更新する。
【0172】
ネットを通じて送信されて来た情報が、例えば、「林 喜久子」の転倒リスクポイント(今回:+1点)であれば、図40に示される転倒ポイントが、図41に示されるように、「+2」に更新される。転倒リスクポイントの累計が+10点に達した段階で、保険組合は「林 喜久子」に景品を授与するという様な設定にすると、被験者に更なる健康維持、健康増進の動機付けを与えることができる。
【0173】
この場合前記したように、歩行能力たる転倒リスクは、歩行解析装置100に作用する3次元加速度に依拠して判定されるので、歩行解析装置100を手に持って振っても、3次元加速度が作用しないので、データ改ざんが防止される。
【0174】
つまり、利用者毎に3次元加速度に依拠して判定される歩行能力の情報が記憶される情報記憶手段と、前記歩行能力の情報に基づいてポイントを演算するポイント演算手段とを有する健康維持増進システムを構成することで、ポイント付与の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の歩行解析装置の一例を示すブロック図。
【図2】加速度−背屈力関係の一例を示す図。
【図3】歩行動作について説明する図。
【図4】第1実施形態において、背屈力の強さの規定の仕方について説明する図。
【図5】第1実施形態において、加速度信号の時間変化波形を示す図。
【図6】第1実施形態において、背屈力が異なる場合の歩行時における背屈角度の違いを説明する図。
【図7】実施形態における加速度信号の時間変化波形及び対応する歩行動作を示す図。
【図8】第2実施形態において、加速度−下肢筋力関係の一例を示す図。
【図9】第2実施形態において、加速度−下肢筋力関係の一例を示す図。
【図10】第2実施形態において、加速度−下肢筋力関係の一例を示す図。
【図11】第2実施形態において、加速度−下肢筋力関係の一例を示す図。
【図12】第2実施形態において、加速度−下肢筋力関係の一例を示す図。
【図13】第2実施形態において、加速度−下肢筋力関係の一例を示す図。
【図14】第3実施形態において、一歩時間と減速時間とを図示した説明図。
【図15】第3実施形態において、推定指標V1と歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図16】第3実施形態において、前後加速度が正から負に変わる点から負から正へ変わる点までの前後加速度の積分値を図示した説明図。
【図17】第3実施形態において、推定指標V2と歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図18】第3実施形態において、制動期、加速期、立脚後期を図示した説明図。
【図19】第3実施形態において、推定指標V3と歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図20】第3実施形態において、一歩時間における最大速度になる点と最低速度になる点を説明した図。
【図21】第3実施形態において、推定指標V4と歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図22】第3実施形態において、制動期、加速期、立脚後期、推定指標V5が示す範囲を図示した説明図。
【図23】第3実施形態において、推定指標V5と歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図24】第3実施形態において、制動期、加速期、立脚初期、立脚後期、推定指標V6が示す範囲を図示した説明図。
【図25】第3実施形態において、推定指標V6と歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図26】第3実施形態において、推定指標V7と歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図27】推定歩行速度/身長と実測歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図28】推定歩行速度/身長と実測歩行速度/身長との関係の一例を示す図。
【図29】足底接地、足尖離地を図示した説明図。
【図30】推定指標S1と歩幅/身長との関係の一例を示す図。
【図31】推定指標S2と歩幅/身長との関係の一例を示す図。
【図32】推定指標S3と歩幅/身長との関係の一例を示す図。
【図33】踵接地、足尖離地を図示した説明図。
【図34】推定歩幅/身長と実測歩幅/身長との関係の一例を示す図。
【図35】推定歩幅/身長と実測歩幅/身長との関係の一例を示す図。
【図36】転倒リスクの段階の一例を示す表。
【図37】転倒リスクの段階の他の例を示す表。
【図38】図1に示す歩行解析装置を用いた健康維持増進システムの一例のブロック図。
【図39】図38に示すパソコンの入力画面の一例を示す図。
【図40】更新前の管理台帳の一部を示す図。
【図41】更新後の管理台帳の一部を示す図。
【符号の説明】
【0176】
10 加速度計(加速度計測手段)
20 演算部
24 CPU(特定期間抽出手段、推定指標算出手段、歩行能力推定手段)
26 ROM(特定期間抽出手段、推定指標算出手段、歩行能力推定手段)
100 歩行解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行時における腰部の上下方向における加速度である上下加速度と、歩行時における腰部の前後方向における加速度である前後加速度と、歩行時における腰部の左右方向における加速度である左右加速度とをそれぞれ検出し、それらの時間変化を計測する加速度計測手段と、
前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、歩行時における特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出手段と、
前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、歩行時の歩行能力に関連する推定指標を算出する推定指標算出手段と、
前記推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した推定指標と歩行能力との関係を用いて歩行能力を推定する歩行能力推定手段と、
を有することを特徴とする歩行解析装置。
【請求項2】
前記期間抽出手段は、前記加速度の時間変化に基づいて、特定の歩行動作が行われる時点の中から二つの時点を抽出し、これら二つの時点間を前記特定期間として抽出するものであることを特徴とする請求項1に記載の歩行解析装置。
【請求項3】
前記期間抽出手段は、左右の各足において特定の歩行動作が行われる前記特定期間をそれぞれ抽出するものであり、前記歩行能力推定手段は、左右各足における歩行能力を推定するものであることを特徴とする請求項1又は2項に記載の歩行解析装置。
【請求項4】
歩行時における腰部の上下方向における加速度である上下加速度と、歩行時における腰部の前後方向における加速度である前後加速度と、歩行時における腰部の左右方向における加速度である左右加速度とをそれぞれ検出し、それらの時間変化を計測する加速度計測ステップと、
前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の時間変化に基づいて、歩行時における特定の歩行動作が行われる特定期間を抽出する期間抽出ステップと、
前記加速度のうち少なくとも一つの加速度の前記特定期間における時間変化に基づいて、歩行時の歩行能力に関連する推定指標を算出する推定指標算出ステップと、
前記推定指標算出手段により算出された推定指標及び予め用意した前記推定指標と前記歩行能力との関係を用いて歩行能力を推定する歩行能力推定ステップと、
を有することを特徴とする歩行解析方法。
【請求項5】
前記期間抽出ステップは、前記加速度の時間変化に基づいて、特定の歩行動作が行われる時点の中から二つの時点を抽出し、これら二つの時点間を前記特定期間として抽出するものであることを特徴とする請求項4に記載の歩行解析方法。
【請求項6】
前記期間抽出ステップは、左右の各足において特定の歩行動作が行われる前記特定期間をそれぞれ抽出するものであり、前記歩行能力推定ステップは、左右各足における歩行能力を推定するものであることを特徴とする請求項4又は5項に記載の歩行解析方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の歩行解析装置を用いて3次元加速度に依拠して判定される前記歩行能力の情報が記憶される情報記憶手段と、前記情報に基づいてポイントを演算するポイント演算手段とを有する健康維持増進システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2007−125368(P2007−125368A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258975(P2006−258975)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.万歩計
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】