説明

歩行運動器具

【課題】比較的安価・簡易な構造で実際の歩行中に足上げ運動効果を得ることのできる歩行運動器具を提供する。
【解決手段】歩行運動をする際に使用者の足に本歩行運動器具を取り付けるための左右一対の足接続部、同じく左右一対の回転自在な回動部、そして左右の前記回動部をつなぐリンク部とから構成される、歩行運動器具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的安価・簡易な構造で実際の歩行中に足上げ運動効果を得ることのできる歩行運動器具に関する。
【背景技術】
【0002】
健康増進について歩行運動が重要であることはよく知られている。
歩行運動で期待される効果には心肺機能の向上などいろいろあるが、ここでは日常生活動作の遂行という観点から、足をより高く上げる運動に着目する。
【0003】
高齢者は、日頃健康であっても家庭内で転倒し、死亡につながることがある。
死亡に至らなくても、長期臥床による廃用性症候群と、それに伴う認知症の発症により、以後の日常生活の質が低下する危険性がある。
したがって、転倒しないためには、足先が身の回りの段差を越えられる、いわゆる「トウ・クリアランス」が重要になり、歩行においてその訓練を行える歩行運動器具が望まれる。
【0004】
歩行訓練装置としては、無限軌道ベルトを設けた歩行路を有する「トレッドミル」がよく知られている。
また、足踏み式(ステップ式)の運動器具も知られている。
【0005】
その他、障害者・傷病者・高齢者らの歩行訓練を目的とする装置・機器は既に多数提案されている。(特許文献1〜10)
【0006】
【特許文献1】 特開平10−55131号公報
【0007】
【特許文献2】 特開2000−210392号公報
【0008】
【特許文献3】 特開2002−159592号公報
【0009】
【特許文献4】 特開2002−325860号公報
【0010】
【特許文献5】 特開2003−79762号公報
【0011】
【特許文献6】 特開2003−245375号公報
【0012】
【特許文献7】 特開2004−181195号公報
【0013】
【特許文献8】 特開2004−201755号公報
【0014】
【特許文献9】 特開2004−337275号公報
【0015】
【特許文献10】 特開2005−40286号公報
【0016】
特許文献7、9に示された装置は、水平面上で左右の足部を交互に前後に動かすものであり、足先を持ち上げる訓練の効果はない。
特許文献3〜6、8に示された装置は、足を持ち上げる力あるいは上下運動を考慮しているが、使用者が実際に歩行・移動するものではない。
特許文献1、10に示された装置は、足の上下運動も行えるものだが、構造が非常に複雑である。
特許文献2に示された装置は、運動がガイドレールで制限され、自由な歩行を促すものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
既に述べてきた歩行運動装置で行う運動は、身体の運動が伴わない模擬歩行である。
これは例えば重心移動が通常の歩行とは異なり、厳密な意味での歩行の訓練とはなりえない可能性がある。
【0018】
あるいは、それらの装置は歩行運動を模擬・実現するために複雑な構造を必要とし、多くの高齢者が頻繁・気軽に用いられるように機器を普及させることは容易ではない。
【0019】
これらの点を考慮すれば、自らの力で歩行するような器具を、比較的簡易な構造で実現することが望まれる。
【0020】
そこで、本発明の目的は、比較的安価・簡易な構造で実際の歩行中に足上げ運動効果を得ることのできる歩行運動器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明に係る歩行運動器具は、左右一対の足接続部、同じく左右一対の回転自在な回動部、左右の回動部をつなぐリンク部とから構成される。
【0022】
左右一対の足接続部は、歩行運動をする際に、使用者の足に本歩行運動器具を取り付けるためのものである。
【0023】
足接続部は、それ自体を使用者が履けるように係止具を付けたりできる。
または、靴の形状とすることもできる。
または、履物の形状ではなく、使用者の足首などに取り付けられるように、帯やひも等を巻きつけて固定するような形状にもできる。
【0024】
回動部は、回転自在な部品である。
【0025】
回動部を発電機で構成することもできる。
発電機のシャフトの回転量は、発生した起電圧と概ね対応することが知られている。
よって、回動部の回転、すなわち歩行運動の状態を、電気信号として観測可能である。
【0026】
また、回動部を磁気式または光式のロータリエンコーダで構成することもできる。
これによっても、回動部の回転、すなわち歩行運動の状態を、観測可能である。
【0027】
回動部を発電機として構成する場合、発電機の出力端子に負荷抵抗を接続すると、発電機から得られた電気エネルギーが消費される。
負荷抵抗の抵抗値を変えることで消費エネルギーを調節できる。
ここで消費される電気エネルギーは、そもそも使用者の歩行運動に伴う回動部の回転のエネルギーを変換したものである。
そこで、同じ回転であっても消費エネルギーを大きくとるように設定すれば、使用者はより大きい力で運動しなければならない。
したがって、発電機の出力端子に負荷インピーダンス(抵抗)を接続することで、歩行運動の運動負荷を簡単に与えられる。
【0028】
ところで、電気工学的には発電機と電動機(モータ)は機構としては同一であることが知られている。
すなわち、発電機の出力端子に相当する部分に外部から電圧を印加すると、発電機は電動機として作用し、回転トルクが生じる。
したがって、使用者の歩行運動によって生じるシャフトの回転方向と、電動機の回転方向とが同じ向きであれば、歩行運動に対するアシスト機能として作用する。
一方、それらの回転方向が逆向きであれば、歩行運動に対してより大きい負荷を加えることと等価である。
電動機の回転方向と回転量は、電動機に加える電圧の極性と電圧で容易に調整可能であり、それにより、使用者の歩行運動の運動量を外部から実時間で変更することもできる。
したがって、発電機に外部から電圧を加えることで電動機として作用させ、使用者の歩行運動での負荷を調整できる。
【0029】
リンク部は、左右一対の回動部をつなぐ。
【0030】
この歩行運動器具を使用する場合、ステップ長(1歩の歩幅)は、リンク部の長さと対応する。
したがって、使用者の自然なステップ長に応じてリンク部の長さを変えられるようにすることが望ましい。
【0031】
また、この歩行運動器具を使用する場合、歩隔(左右それぞれの足の進行線の間隔)は、回動部の長さ、及び回動部とリンク部の取り付け位置によって変わる。
したがって、使用者の自然な歩隔に応じて、例えば回動部とリンク部の取り付け位置を変えるなどして、左右の足接続部の間隔を変えられるようにすることが望ましい。
【0032】
さらに後述するように、遊脚期(足が床面から離れている状態)の足の回動部の運動軌跡は、矢状面(下腿・足部の主軸を通る平面)内で、立脚期(足が床面に接している状態)の足の回動部を中心とし、リンク部の長さを半径とする円弧を描く。
このことは、遊脚期では床から概ねリンク部の長さの分だけ、言い換えればステップ長の分だけ足を持ち上げることを意味する。
使用者によっては、そこまで足を持ち上げられないことも予想される。
この問題は、リンク部を伸縮自在の構造としておくことで解消される。
さらに、伸縮自在なリンク部に粘弾性体を設置することで、伸縮運動についての負荷を使用者に与えることもできる。
【0033】
この歩行運動器具を装着して歩行する際には、ステップ長や歩隔が器具の寸法で制限されるために、転倒の可能性がある。
そこで、この歩行運動器具を構成する各部の一部分、または各部を連結する部分を、大きい力が掛かった場合に外れやすくしておく。
これにより、歩行中に無理な力が掛かると本歩行運動器具による拘束が解け、転倒の可能性を低減できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、以下のような効果を奏する。
【0035】
この歩行運動器具を用いて高齢者が歩行運動を行うことにより、足先が段差を越えられる程度まで足上げをする習慣が身に付き、転倒予防効果が期待できる。
【0036】
この歩行運動器具での運動負荷を調整することにより、歩行時の動的なバランス能力の評価を行うことも期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の実施の形態を説明する。
【0038】
図1は、本発明に係る歩行運動器具の斜視図である。
ここで、奥側が歩行運動の進行方向となる。
【0039】
本発明に係る歩行運動器具は、左右一対の足接続部1L、1R、回転自在な回動部2L、2R、そして左右の回動部2L、2Rをつなぐリンク部3とから構成される。
【0040】
左右一対の足接続部1L、1Rは、歩行運動をする際に、使用者の足に本歩行運動器具を取り付けるためのものである。
【0041】
回動部2L、2Rは、回転自在な部品で、足接続部1Lまたは1Rとリンク部3とをつなぎ、進行方向に向かって足接続部1L、1Rが任意の仰角・俯角をとることができる働きをする。
【0042】
図2は、回動部2Lの詳細な斜視図である。
ここで回動部2Lは、穴の空いた円筒部21Lと、その円筒部21Lの穴を貫くピン部22Lとから構成される。
円筒部21Lは、リンク部3に固定される。
ピン部22Lは、円筒部21Lの穴を貫き、足接続部1Lに固定される。
円筒部21Lがピン部22Lを軸として滑らかに回転することにより、回動部21Lは回転自在となる。
【0043】
これは回動構造の一例であり、他の構造でも実現可能となる。
【0044】
以上は回動部2Lについての説明であるが、回動部2Rについても同様の構成となる。
【0045】
リンク部3は、左右一対の、足接続部1L・回動部2Lと、1R・2Rとをつなぐ。
【0046】
本発明に係る歩行運動器具を使用する方法は以下の通りである。
【0047】
まず使用者は、左足を足接続部1Lの係止具11Lに、右足を足固定具1Rの係止具11Rに引っ掛けることで、一対の足接続部1L、1Rを身に付ける。
そして、使用者は、歩行運動をする。
【0048】
例えば、足接続部1Lが進行方向の後ろ側に、1Rが前側になって、使用者が立っていたとする。
使用者は、足接続部1Lを取り付けた足を持ち上げ、前方に踏み出す。
それにより一歩進み、足接続部1Lが前側に、1Rが後ろ側になる。
同様の動作を繰り返すことにより、使用者は本発明に係る歩行運動器具を用いて歩行運動する。
【0049】
この歩行運動器具を使用する場合、ステップ長は、リンク部3の長さと対応する。
したがって、使用者の自然なステップ長に応じてリンク部3の長さを調節できるようにしておく。
【0050】
また、この歩行運動器具を使用する場合、歩隔は、回動部2L、2Rの長さ、及びリンク部3の回動部2L、2R上の取り付け位置によって変わる。
したがって、使用者の自然な歩隔に応じてリンク部3の回動部2L、2R上の取り付け位置を変えられるようにしておき、左右の足接続部1L、1Rの間隔を調整可能とする。
【0051】
図3は、使用者がこの歩行運動器具により歩行運動する際の、進行方向側面から見た場合の回動部2L、2Rの運動軌跡である。
ここで4は床面であり、図の右側が進行方向となる。
そして回動部2Lが取り付けられている足が遊脚期、2Rが取り付けられている足が立脚期とする。
図中の▲1▼は、遊脚期開始直前、すなわち足を動かし始める時点での回動部2Lの位置である。
▲2▼は、遊脚期の中間で、足が最も高い位置に上がっている状態での回動部2Lの位置である。
▲3▼は、遊脚期終了直後、すなわち足を動かし終わった時点での回動部2Lの位置である。
以降の時間経過では逆に、回動部2Lが取り付けられている足が立脚期、2Rが取り付けられている足が遊脚期となるが、その軌跡は同様に推移する。
【0052】
図3のように、遊脚期の足の回動部2Lの運動軌跡は、矢状面内で、立脚期の足の回動部2Rを中心とし、リンク部3の長さを半径とする円弧を描く。
【0053】
特に遊脚期の足の回動部2Lは最も高い場合、床面4から概ねリンク部3の長さ分だけ持ち上がる。
これにより、歩行運動時において、使用者が足を高く持ち上げるという目的が果たされる。
【実施例1】
【0054】
図1では、足接続部1L、1Rは、それ自体を使用者が履けるように、サンダル状のベルトのような係止具11L、11Rを付けていた。
実施例1として、足接続部1L、1Rの係止具11L、11Rを鼻緒のような形状とすることもできる。
【実施例2】
【0055】
図1では、足接続部1L、1Rは、それ自体を使用者が履けるように、サンダル状のベルトのような係止具11L、11Rを付けていた。
実施例2として、足接続部の係止具11L、11Rを設けることなく、足接続部1L、1R自体を靴の形状とすることもできる。
【実施例3】
【0056】
図1の例、あるいは実施例1、2では、足接続部1L、1Rは、それ自体を使用者が履くことを想定していた。
例えば、裸足での歩行運動を想定するならば、本歩行運動器具を「履く」構造に限定するのは好ましくない。
そこで、実施例3として、本歩行運動器具を使用者の足首などに取り付けられるように、足接続部1L、1Rを、履物の形状ではなく、帯やひも等を巻きつけて固定するような形状とすることもできる。
【実施例4】
【0057】
回動部2L、2Rは、リンク部3に対して足接続部1L、1Rが自由に回転するための回転自在な部品である。
この回動部2L、2Rの部品として、発電機で構成することもできる。
発電機のシャフトの回転数は、発生した起電圧と概ね比例することが知られている。
よって、回動部の回転、すなわち歩行運動の状態を、電気信号として観測可能である。
【0058】
図4は、回動部2L、2Rの発電機の起電力VR、VLから、歩行運動の状態を推定する方法の模式図である。
ここで、図3と同様に、図の右側が進行方向となる。
そして回動部2Lが取り付けられている足が遊脚期、2Rが取り付けられている足が立脚期とする。
【0059】
立脚期の足の回動部2Rの回転角度θRの変化は、立脚期の足の足接続部1R(すなわち床面4)から見た遊脚期の足の回動部2Lの相対運動を意味する。
回動部の発電機のシャフトの回転数は回転角度の時間微分に比例するので、理論的にはθRを時間微分した量に比例した値が回動部2Rの発電機の起電力VRとして得られる。
したがって、例えばVRを時間積分することにより、θRに対応した量が求められる。
【0060】
一方、遊脚期の足の回動部2Lの回転角度θLの変化は、遊脚期の足の足接続部1Lから見た立脚期の足の回動部2Rの相対運動を意味する。
遊脚期の足の足接続部1Lが立脚期の足の足接続部1Rと平行であるならば、遊脚期の足の回動部2Lの回転角度θLは、立脚期の足の回動部2Rの回転角度θRと等しくなる。
但し、それぞれの回動部2L、2Rに用いる発電機の取り付け方向は逆向きとなり、それぞれの発電機の特性が同じだとしても、回転角度θL、θRの推移が同一であっても、得られる起電力VL、VRは、絶対値は等しいが極性が反対になる。
したがって、VL=−VRであれば、遊脚期の足の足接続部1Lが立脚期の足の足接続部1Rと平行であると推定される。
そして、VRと−VLとの偏差から、遊脚期の足の足接続部1Lの、床面4との角度のずれが近似的に求められる。
【0061】
特に床面4が水平な場合の歩行であれば、VRと−VLとの偏差から、遊脚期の足の足接続部1Lの、水平からの角度のずれが近似的に求められる。
【実施例5】
【0062】
実施例4では、回動部2L、2Rとして発電機で構成した。
発電機の出力端子に負荷抵抗を接続すると、発電機から得られた電気エネルギーが消費される。
発電機の起電力をV、負荷抵抗の抵抗値をrとすると、負荷抵抗rにおける消費電力Pは、P=V^2/rとなる(「^2」は2乗を表す)。
Pはrに反比例することから、rを変えることで消費電力を調節できる。負荷抵抗で消費される電気エネルギーは、そもそも使用者の歩行運動に伴う回動部の回転のエネルギーを変換したものである。
そこで、rを小さくしておくと消費エネルギーは大きくなる設定となり、同じ回転量であっても使用者はより大きい力で運動しなければならない。
したがって、発電機の出力端子に接続する負荷インピーダンス(抵抗)の値rを変えることで、歩行運動の運動負荷を簡単に変えられる。
【0063】
特に、回動部2L、2Rの発電機に接続する負荷抵抗の抵抗値rL、rRを異なる値とすることで、左右の運動負荷を変えることができる。
これにより、例えば左右の身体状況が極端に異なる使用者に対応できる。
あるいは、歩行運動中に左右の負荷を変えることで使用者に外乱を与え、そこからの復帰過程によって動的なバランス能力を評価できる。
【実施例6】
【0064】
実施例4、5では、回動部2L、2Rとして発電機で構成した。
ところで、電気工学的には発電機と電動機(モータ)は機構としては同一であることが知られている。
すなわち、発電機の出力端子に相当する部分に外部から電圧を印加すると、発電機は電動機として作用し、そのシャフトに回転(トルク)が生じる。
また印加電圧の極性により、回転方向が変わる。
【0065】
例えば、使用者の歩行運動によって生じる回動部2L、2Rのシャフトの回転方向と、電動機の回転方向とが同じ向きであれば、同じ運動を生じるために使用者が与える力が小さくて済み、歩行運動に対するアシスト機能として作用する。
一方、それらの回転方向が逆向きであれば、同じ運動を生じるためには使用者はより多くの力を与える必要があり、歩行運動に対してより大きい負荷を加えることと等価である。
電動機の回転方向と回転量は、電動機に加える電圧の極性と電圧で容易に調整可能であり、それにより、使用者の歩行運動の運動量を外部から実時間で変更することもできる。
したがって、発電機に外部から電圧を加えることで電動機として作用させ、使用者の歩行運動での負荷を調整できる。
【実施例7】
【0066】
リンク部3は、左右一対の、足接続部1L・回動部2Lと1R・2Rとをつなぐ働きを有する。
そして、歩行運動のステップ長はリンク部3の長さと対応し、遊脚期の足の回動部2Lは、床から概ねリンク部3の長さ分だけ持ち上がる。
このことは、遊脚期では床から概ねステップ長の分だけ足を持ち上げることを意味する。
使用者によっては、そこまで足を持ち上げられないことも予想される。
この問題は、リンク部3をコイルバネ、ロッドアンテナやスライド機構のような伸縮自在の構造としておくことで解消される。
【実施例8】
【0067】
実施例7では、リンク部3は伸縮自在の構造となる。
その伸縮自在なリンク部3に、バネやダッシュポットのような粘弾性体を設置することもできる。
バネのような弾性体は、伸ばしたり縮めたりするのに力を必要とする。
ダッシュポットのような粘性体は、素早く動かそうとするためにより大きい力を必要とする。
よって、使用者が歩行運動中にリンク部3を伸縮させるには、何らかの力を要することから、適切な粘弾性体を設置することにより、伸縮運動についての負荷を使用者に与えることができる。
【実施例9】
【0068】
この歩行運動器具を装着して歩行する際には、ステップ長は前述のようにリンク部3の長さで制限される。
また、歩隔は、回動部2L、2Rの長さ、及びリンク部3の回動部2L、2R上の取り付け位置で制限される。
したがって、使用者の歩行様態は器具の寸法で制限されるために、通常の歩行様態と大きく異なる場合には、転倒の可能性がある。
そこで、本歩行運動器具の構成要素である一部分(例えば、足接続部1L、1Rの一部分、または回動部2L、2Rの一部分、またはリンク部3の一部分、または係止具11L、11Rの一部分)、または各部を連結する部分(例えば、係止具11Lと足接続部1Lの連結部分、または足接続部1Lと回動部2Lの連結部分、または回動部2Lとリンク部3の連結部分、またはリンク部3と回動部2Rの連結部分、または回動部2Rと足接続部1Rの連結部分、または足接続部1Rと係止具11Rの連結部分)において、大きい力が掛かった場合に外れるような構造にしておく。
例えば、磁石による連結としておく。
これにより、歩行中に無理な力が掛かると、磁石で連結した部分が外れることで、器具による拘束が解け、不自然な歩行様態が解消することによって、転倒の可能性を低減できる。
その他、磁石ではなく、嵌合構造にしたり、面ファスナーを活用したり、粘着作用を活用したりすることでも、同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る歩行運動器具の斜視図である。
【図2】本発明に係る歩行運動器具の、回動部の詳細な斜視図である。
【図3】本発明に係る歩行運動器具の、使用者が歩行運動する際の、進行方向側面から見た場合の回動部の運動軌跡の説明図である。
【図4】本発明に係る歩行運動器具により、歩行運動の状態を推定する方法の模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1L 本発明に係る歩行運動器具の左右一対の足接続部のうちの一方
1R 本発明に係る歩行運動器具の左右一対の足接続部のうちの他方
2L 本発明に係る歩行運動器具の足接続部1Lと(後述の)リンク部3とをつなぐ回動部
2R 本発明に係る歩行運動器具の足接続部1Rと(後述の)リンク部3とをつなぐ回動部
3 本発明に係る歩行運動器具のリンク部
21L 本説明に係る歩行運動器具の回動部2Lの円筒部
22L 本説明に係る歩行運動器具の回動部2Lのピン部
11L 本発明に係る歩行運動器具の足接続部1Lの係止具
11R 本発明に係る歩行運動器具の足接続部1Rの係止具
4 床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行運動をする際に使用者の足に本歩行運動器具を取り付けるための左右一対の足接続部、同じく左右一対の回転自在な回動部、そして左右の前記回動部をつなぐリンク部とから構成される、歩行運動器具。
【請求項2】
前記足接続部自体を使用者が履けるように、前記足接続部に係止具を付けるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項3】
前記足接続部自体を使用者が履けるように、前記足接続部を靴の形状としたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項4】
前記足接続部を使用者の足首などに取り付けられるように、前記足接続部を帯やひも等を巻きつけて固定するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項5】
前記回動部の回転を観測可能であるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項6】
前記回動部を発電機として構成し、その発電機の出力端子に負荷インピーダンスを接続して、歩行運動の運動負荷を与えられるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項7】
前記回動部を電動機として構成し、外部から電圧を加えることで歩行運動の負荷を調整できるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項8】
前記リンク部の長さを変えられるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項9】
前記左右の足接続部の間隔を変えられるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項10】
前記リンク部を伸縮自在の構造としたことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。
【請求項11】
伸縮自在な前記リンク部に粘弾性体を設置することで、伸縮運動についての負荷を使用者に与えられるようにしたことを特徴とする、請求項10に記載の歩行運動器具。
【請求項12】
本発明に係る歩行運動器具を構成する前記足接続部、前記回動部、前記リンク部、前記係止具の一部分、または各々を連結する部分を、大きい力が掛かった場合に外れやすくしておくことを特徴とする、請求項1に記載の歩行運動器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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