歩行音分析装置、方法、およびプログラム
【課題】歩行音に基づいて人の特徴を判定する。
【解決手段】歩行音処理部15Aで、歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出し、パラメータ算出部15Bで、各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出し、区分判定部15Cで、対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する。
【解決手段】歩行音処理部15Aで、歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出し、パラメータ算出部15Bで、各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出し、区分判定部15Cで、対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行に伴って発生する種々の音を分析することにより、対象者が持つ特徴の推定や、対象者の個人の識別・認証を行うための歩行音分析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロホンアレーで検出した歩行音を分析して、足音が発生した音発生位置や音発生時刻を抽出する技術が提案されている(例えば、非特許文献1や非特許文献2等参照)。これは、マイクロホンペアに対する音の到達時間差を利用して音源位置を推定する技術に基づいている。これにより、歩行者の歩幅や歩行速度などを算出することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Masanari Shoji, 「Passive Acoustic Sensing of Walking」,In Proceedings of the International Conference on Intelligent Sensors, Sensor Networks and Information Processing (ISSNIP '09), pp. 219-224, 2009.
【非特許文献2】庄司,「マイクロホンアレーによる足音位置推定、追跡の検討」,日本音響学会2010年春季研究発表会, 予稿集 pp.727-730,2010.
【非特許文献3】野村他,「近接音場型マイクロホンアレー」,日本音響学会誌53巻2号,pp.110-116,1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、人の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音には、歩き方の癖に起因する歩行音の差異、各人の服装や持ち物などの付帯物に関する特徴など、各人固有の特徴が含まれていることは、日常経験上知られている。また、人の足音を聞いて、その人が誰かを直感的に判別できる場合もある。
しかしながら、前述した従来技術では、歩行者の歩幅や歩行速度については定量的に評価できるものの、例えば身長、体重、性別、年齢などの身体的特徴、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴、あるいは歩き方における各人固有の特徴など、歩行音から人が持つ特徴を判定することはできない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、歩行音に基づいて人の特徴を判定することができる歩行音分析技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明にかかる歩行音分析装置は、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理部と、歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出部と、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶する確率分布データベースと、パラメータ算出部で得られた対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する区分判定部とを備えている。
【0007】
この際、歩行音処理部で、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部で、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、区分判定部で、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0008】
また、歩行音処理部で、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部で、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースをさらに備え、履物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する履物種別判定部をさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定部で、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部で得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0009】
また、歩行音処理部で、歩行音信号を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部で、歩行音処理部で得られた各観測点特徴値に関する統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の観測点信号から得た各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースをさらに備え、付帯物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定部をさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定部で、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0010】
また、パラメータ算出部で、歩行状態パラメータ値として、少なくとも対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出するようにしてもよい。
【0011】
また、区分判定部で、分類区分ごとに算出した評価値のうち、分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値としきい値との差または比が最も大きい分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明にかかる歩行音分析方法は、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を分析して、対象者の特徴を判定する歩行音分析装置で用いられる歩行音分析方法であって、歩行音処理部が、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理ステップと、パラメータ算出部が、歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出ステップと、記憶部が、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を確率分布データベースとして記憶するステップと、区分判定部が、パラメータ算出部で得られた対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する区分判定ステップとを備えている。
【0013】
この際、歩行音処理ステップで、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出ステップで、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、区分判定ステップで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0014】
また、歩行音処理ステップで、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出ステップは、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、記憶部が、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、履物種別判定部が、履物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する履物種別判定ステップをさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定ステップで、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部で得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0015】
また、歩行音処理ステップで、歩行音信号を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出ステップで、歩行音処理部で得られた各観測点特徴値に関する統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、記憶部が、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の観測点信号から得た各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、付帯物種別判定部が、付帯物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定ステップをさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定ステップで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0016】
また、パラメータ算出ステップで、歩行状態パラメータ値として、少なくとも対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出するようにしてもよい。
【0017】
また、区分判定ステップで、分類区分ごとに算出した評価値のうち、分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値としきい値との差または比が最も大きい分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明にかかるプログラムは、コンピュータを、前述したいずれか1つに記載の歩行音分析装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、歩行に伴う足音を含む歩行音に基づいて、対象者が持つ特徴、例えば身長、体重、体重、性別、年齢などの身体的特徴や、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴について、これら特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】歩行の歩幅および歩行速度を示す説明図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図4】歩幅と身長に関する確率分布特性例である。
【図5】評価値の算出例である。
【図6】歩幅と登録者に関する確率分布特性例である。
【図7】第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図8】評価値の算出例である。
【図9】足音信号の切り出しを示す説明図である。
【図10A】足音信号の振幅波形図である。
【図10B】足音信号のスペクトログラムである。
【図11】第3の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図12】第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図である。
【図13】第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図14】第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図である。
【図15】対象者の観測領域を示す説明図である。
【図16】第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
この歩行音分析装置10は、全体としてパーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号22を入力として、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分のうちから、対象者が属する分類区分を判定する機能を有している。
図1において、集音装置20は、マイクロホンアレーを構成する複数のマイクロホン21からの出力信号を集めてA/D変換処理し、歩行音信号22として歩行音分析装置10へ出力する機能を有している。
【0023】
本実施の形態は、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出し、得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出し、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶しておき、得られた対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしたものである。
【0024】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10の構成について詳細に説明する。
歩行音分析装置10には、主な機能部として、信号入力部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
【0025】
信号入力部11は、専用の入出力インターフェース回路からなり、集音装置20からの歩行音信号22を取得して演算処理部15へ出力する機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、演算処理部15から出力された操作メニューや分析結果などの各種データを画面表示する機能を有している。
【0026】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15での各種処理動作に用いる処理情報やプログラム14Pを記憶する機能を有している。プログラムについては、記録媒体に記録することも、ネットワークを通じて提供することも可能である。
記憶部14で記憶する主な処理情報として、確率分布データベース(以下、確率分布DBという)14Aがある。確率分布DB14Aには、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た、当該歩行の特徴を示す任意のパラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。
【0027】
例えば、身長の分類区分の1つとして160cm−180cmという分類区分を設定した場合、この分類区分に属する複数の人の足音から、それぞれパラメータ値を抽出できる。このパラメータ値の具体例としては、例えば歩幅や歩行速度など、それぞれの人に固有の値である。したがって、同一分類区分に属する人であっても、歩幅や歩行速度は異なるが、両者はある程度の相関を持つ。例えば、身長の高い人は比較的歩幅も大きい。したがって、同一分類区分に属する複数の人の足音から抽出したパラメータ値は、あるピークをもって分布する。
【0028】
このような頻度分布を正規化して、パラメータ値に設定した区間ごとに積分することにより、同一分類区分に属する全人数のうち、パラメータ値が当該区間に属する人の割合、すなわち確率値として表現できる。したがって、対象者の足音から算出したパラメータ値の確率値を分類区分ごとに取得して比較すれば、対象者が属する尤もらしい分類区分を判定することができる。本実施の形態では、複数のパラメータ値に関する確率値を統合して、対象者の部類区分を判定している。これら処理の詳細について後述する。
【0029】
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14のプログラム14Pを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部15で実現される主な機能部として、歩行音処理部15A、パラメータ算出部15B、および区分判定部15Cがある。
【0030】
歩行音処理部15Aは、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する機能を有している。この歩行音処理部15Aで用いる音発生位置および音発生時刻の抽出技術については、公知の技術を用いればよい(例えば、非特許文献1や非特許文献2等参照)。
【0031】
また、音響信号処理において、前述の音発生位置および音発生時刻を基に歩行音信号22を収音処理/強調処理することにより、歩行音信号22のうちから足音に関する足音信号を抽出してもよい。これら収音処理/強調処理については、公知の技術を用いればよい(例えば、非特許文献3等参照)。
なお、これら音響信号処理や収音処理/強調処理については、原理的に、歩行者の人数によらず適用可能である。
【0032】
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出する機能を有している。
本実施の形態では、歩行状態パラメータ値として、歩幅L、歩行速度V、移動中心線から左右方向への開き幅B、および1歩の時間間隔Tに関する統計値を用いている。
【0033】
図2は、歩行の歩幅および歩行速度を示す説明図である。ここでは、時刻T0に右足をステップ(接地)して、その後の時刻T1に左足をステップした例が示されている。このうち、右足と左足の距離間隔が歩幅Lとなり、この歩幅Lを右足と左足の時間間隔T(=T1−T0)で除算したものが歩行速度V(=L/T)となる。また、移動方向に沿った右足と左足の移動中心線から左右の足の中心までの距離を開き幅Bとして定義している。
【0034】
これら歩幅L、歩行速度V、開き幅B、および時間間隔Tは、左右のステップごとに得られるため、本実施の形態では、歩行音信号22のうちから切り出した所定長の観測区間に含まれる複数のステップに対して得られる値の平均値を、実際の歩幅L、歩行速度V、開き幅B、および時間間隔Tとして算出している。また、この平均値に対するステップごとに得られた値のばらつきを示す標準偏差、すなわち歩幅標準偏差Lsd、歩行速度標準偏差Vsd、開き幅標準偏差Bsd、および時間間隔標準偏差Tsdについても歩行状態パラメータとして算出している。
【0035】
歩行に関する歩幅L、歩行速度V、開き幅B、および時間間隔Tについては、歩行状態の特徴が最もよく現れる値である。本実施の形態では、これら4種類の値に関する合計8個の統計量を歩行状態パラメータとして組み合わせて用いる場合を例として説明する。なお、歩行状態パラメータについては、これら8個すべてを用いる必要はなく、これらのうち少なくとも1つまたは複数の歩行状態パラメータを組み合わせて用いればよい。なお、歩行状態に関するこれら4種類以外の値を歩行状態パラメータとして用いてもよい。
【0036】
区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した各確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出する機能と、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する機能とを有している。
【0037】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図3を参照して、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図3は、第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図3の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0038】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
【0039】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0040】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、取得した各確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出する(ステップ104)。
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定し(ステップ105)、判定した分類区分を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0041】
図4は、歩幅と身長に関する確率分布特性例であり、横軸が平均歩幅Lを示し、縦軸が平均歩幅Lに対する確率値P(L)を示している。ここでは、身長についてH1〜H9までの分類区分が設定されており、確率分布DB14Aには、これら分類区分H1〜H9ごとに確率分布特性が予め登録されている。
【0042】
分類区分の具体例としては、H1=「80cm以下」、H2=「80−100cm」、H3=「100−120cm」、H4=「120−140cm」、H5=「140−160cm」、H6=「160−180cm」、H7=「180−200cm」、H8=「200−220cm」、H9=「220cm以上」である。例えば、平均歩幅L=50cmの場合、H3が最も高い確率値を示している。ここでは、各分類区分に関する確率分布が、正規分布に類似する釣り鐘型の特性例で示されているが、これはあくまでも模式図であり、確率分布特性が常にこのような形状となる訳ではない。
【0043】
図5は、評価値の算出例である。パラメータ算出部15Bで対象者の歩行状態パラメータ値として、平均歩幅Lが算出された場合、図4に示した確率分布特性から、分類区分H1〜H9ごとに確率値P(L)が得られる。図5の例では、H4登録者で「1.2%」、H5で「15.8%」、H6で「25.6%」、H7で「0.6%」、これら以外のH1,H2,H3,H8,H9はすべて「0%」という確率値がそれぞれ得られている。このようにして、分類区分ごとに、歩行状態パラメータに対応する確率値が得られ、これら確率値が分類区分ごとに統合されて評価値Eが算出される。
【0044】
評価値Eを算出する際、歩行状態パラメータに対する重み付けが行われる。一般的に数式で表記すると、分類区分hにおける、歩行状態パラメータiの値jに関する確率値をPi(j,h)とし、歩行状態パラメータiに対する重みをw(i)とすると、分類区分hに関する評価値E(h)は、次の式(1)で求められる。
E(h)=Σiw(i)Pi(j,h) …(1)
【0045】
このようにして、各分類区分hに関する評価値E(h)が算出される。図5の例では、E(H4)が「0.4」、E(H5)が「13.2」、E(H6)が「26.1」、E(H7)が「0.1」、これら以外のE(H1),E(H2),E(H3),E(H8),E(H9)はすべて「0」である。したがって、これら評価値のうち最も高いものはE(H6)であるから、対象者の身長に関する分類区分は、H6、すなわち160−180cmであると判定される。
【0046】
これら図4および図5では、人が持つ特徴として身長を例に説明したが、体重、体重、性別、年齢などの身体的特徴、さらには、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴についても同様にして適用することができる。このうち、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴については、予め設定したしきい値と評価値とを比較することにより、障害や疾病の有無を判定して、画面表示するようにしてもよい。
また、分析結果については、判定した分類区分のみを画面表示するのではなく、各分類区分の評価値を画面表示してもよい。特に、評価値を正規化することにより、評価結果を確率値分布として画面表示することも可能である。
【0047】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aで、歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出し、パラメータ算出部15Bで、各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出し、区分判定部15Cで、対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしたものである。
【0048】
これにより、歩行に伴う足音を含む歩行音に基づいて、対象者が持つ特徴、例えば身長、体重、体重、性別、年齢などの身体的特徴や、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴について、これら特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、対象者の歩行状態パラメータ値として、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のいずれかを用いるようにしたので、極めて正確に歩行の特徴をパラメータとして捉えることができる。これにより、高い精度で分類区分を判定することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、人が持つ1つの特徴に関する分類区分を判定する際、複数の歩行状態パラメータに関する確率値を統合して評価値を算出するようにしたので、1つの歩行状態パラメータのみで評価値を算出する場合と比較して、大きな偏りを生じることなく、分類区分を判定することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、対象者が1人の場合を例として説明したが、原理的には対象者の人数に制限はない。このため、大型の店舗や展示会などの設備で、多くの人の1次元的あるいは2次元的な流れや、各位置における滞留状況を、各人の特徴情報を含めて評価することができる。これにより、設備内の店舗、会場、通路の配置・形状や商品自体の配置についての適正化を行う際、極めて有効な情報を提供することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、図3のステップ105において、区分判定部15Cが、分類区分ごとに算出した評価値に基づいて対象者の分類区分を判定する際、これら分類区分ごとに算出した評価値と分類区分ごとに予め設定されているしきい値とを比較し、これら評価値のうち、しきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値としきい値との差や比が最も大きい分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。また、しきい値を越える評価値がない場合には、該当なしあるいは評価不能と判定してもよい。これにより、対象者の分類区分判定について、より高い判定精度を得ることができる。
【0053】
また、評価値に基づいて分類区分を判定する場合、最も高い評価値とその次に高い2番目の評価値との差分や比を、予め設定されている相対しきい値(動的しきい値)と比較し、差分や比が相対しきい値を越えた場合には、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。また、差分や比が相対しきい値を越えない場合には、該当なしあるいは評価不能と判定してもよい。これにより、最も高い評価値とその次に高い2番目の評価値とにあまり差がない場合でも、対象者の分類区分判定について、より高い判定精度を得ることができる。
【0054】
なお、上記相対しきい値は、必ずしも定数である必要はなく、最も高い評価値、次に高い評価値、これらの差や比の関数として定義される動的なしきい値であってもよい。
また、評価値に基づく分類区分判定処理において、しきい値あるいは相対しきい値を導入する構成については、本実施の形態に限定されるものではなく、これ以降で説明する他の実施の形態にも同様に適用可能である。
【0055】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。
第1の実施の形態では、分類区分が人の身体的特徴あるいは運動機能的特徴である場合を例として説明した。本実施の形態では、分類区分が個人である場合、すなわち対象者が誰かを認識する場合を例として説明する。
【0056】
本実施の形態において、記憶部14の確率分布DB14Aは、予め分類対象として登録した登録者と対応する分類区分ごとに、当該分類区分の登録者の足音から得た各歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶する。
【0057】
図6は、歩幅と登録者に関する確率分布特性例であり、横軸が平均歩幅Lを示し、縦軸が平均歩幅Lに対する確率値P(L)を示している。ここでは、登録者としてM1〜M5の分類区分が設定されており、確率分布DB14Aには、これら分類区分M1〜M5ごとに確率分布特性が予め登録されている。
【0058】
分類区分の具体例としては、M1=「Aさん」、M2=「Bさん」、M3=「Cさん」、M4=「Dさん」、M5=「Eさん」である。例えば、平均歩幅L=80cmの場合、M5の「Eさん」が最も高い確率値を示している。ここでは、各分類区分に関する確率分布が、正規分布に類似する釣り鐘型の特性例で示されているが、これはあくまでも模式図であり、確率分布特性が常にこのような形状となる訳ではない。
なお、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0059】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図7は、第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図3と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図7の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0060】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
【0061】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0062】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごと、ここでは登録者ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ200)、取得した各確率値を登録者ごとに統合することにより、登録者ごとの評価値を算出する(ステップ201)。
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0063】
図8は、評価値の算出例である。パラメータ算出部15Bで対象者の歩行状態パラメータ値として、平均歩幅Lが算出された場合、図6に示した確率分布特性から、分類区分M1〜M5ごとに確率値P(L)が得られる。図8の例では、M2で「4.9%」、M3で「13.8%」、M4で「26.2%」、これら以外のM1,M5はすべて「0%」という確率値がそれぞれ得られている。このようにして、分類区分ごとに、歩行状態パラメータに対応する確率値が得られ、これら確率値が分類区分ごとに統合されて評価値Eが算出される。
【0064】
この際、評価値Eについては、歩行状態パラメータiに対する重みをw(i)を考慮して、前述した式(1)を用いて算出すればよい。
このようにして、各分類区分hに関する評価値E(h)が算出される。図8の例では、E(M1)が「1.6」、E(M2)が「5.9」、E(M3)が「13.8」、E(M4)が「25.9」、E(M5)が「3.4」である。したがって、これら評価値のうち最も高いものはE(M4)であるから、対象者はM4のDさんであると判定される。
【0065】
なお、分析結果については、判定した分類区分のみを画面表示するのではなく、各分類区分の評価値を画面表示してもよい。特に、評価値を正規化することにより、評価結果を確率値分布として画面表示することも可能である。
【0066】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、記憶部14の確率分布DB14Aで、予め分類対象として登録した登録者と対応する分類区分ごとに、当該分類区分の登録者の足音から得た各歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶するようにしたので、対象者が登録者のうちのいずれであるかを判定することができ、結果として、対象者に対する個人識別や認証を行うことが可能となる。
【0067】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。
第1の実施の形態では、歩行音信号22を音響信号処理して得られた各足音の音発生位置および音発生時刻から、歩行状態パラメータ値として、平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを算出する場合を例として説明した。
本実施の形態では、歩行音信号22を周波数スペクトル分析することにより、歩行状態パラメータ値に加え、足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値として足音パラメータ値を算出し、これら歩行状態パラメータ値および足音パラメータ値により、対象者の分類区分を判定する場合について説明する。
【0068】
本実施の形態において、歩行音処理部15Aは、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムをそれぞれ算出する機能を有している。
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値、すなわちスペクトログラムから、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出する機能を有している。
【0069】
確率分布DB14Aには、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。
区分判定部15Cは、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した確率値を対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合する機能とを有している。
なお、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0070】
図9は、足音信号の切り出しを示す説明図である。人の足音は、通常、100〜300ms程度の継続時間を有しており、歩行音信号22には、足音だけでなくその前後の区間も含まれている。このため、足音に関する音響的特徴を取得するために、歩行音信号22から、その振幅などに基づいて、足音の継続時間Taの全範囲、あるいは継続時間Taの中で必要な一部の範囲だけを足音信号として切り出せばよい。
【0071】
本実施の形態では、足音信号に関する音響的特徴として、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する統計量を用いる。したがって、まず、足音信号を例えば50ms程度の時間長Tfの複数のフレーム信号を、例えば10ms程度の時間長Tsだけ順に開始時刻をシフトさせながら切り出し、これらフレーム信号ごとに短時間フーリエ変換することにより、周波数スペクトル分析を行う。これにより、足音信号の特徴値として、フレーム信号ごとの周波数スペクトル分布とその時間変化、すなわちスペクトログラムが得られる。
【0072】
図10Aは、足音信号の振幅波形図であり、横軸は歩行における経過時間(単位は[sec])を示し、縦軸は足音信号の振幅値(任意単位[a.u.])を示している。ここでは、5歩分の足音信号が示されており、各足音は約0.54[sec]程度の間隔で連続している。
【0073】
図10Bは、足音信号のスペクトログラムであり、横軸は歩行における経過時間(単位は[sec])を示し、縦軸は周波数(単位は[kHz])を示し、色の濃淡が周波数成分におけるスペクトル強度(単位は[dB])を示している。ここでは、図10Aの足音信号と時間的に対応して、5歩分のそれぞれの足音信号から得られた周波数スペクトル分布が示されており、足音には20kH程度までの周波数成分の音が、ある程度のスペクトル強度で含まれていることがわかる。
【0074】
このようにして得られた各フレーム信号のスペクトログラムから、必要に応じて例えば歩行音の存在しない時間のデータから評価したノイズ成分スペクトルを除去した後、予め設定しておいた特定周波数fにおけるスペクトル強度値をフレーム信号ごとに取得する。そして、これらスペクトル強度値の平均値、すなわち平均スペクトル強度値S(f)を足音パラメータ値として算出すればよい。また、この平均値に対するフレーム信号ごとのスペクトル強度値のばらつきを示す標準偏差、すなわちスペクトル強度値標準偏差Ssd(f)を足音パラメータ値として算出すればよい。
【0075】
また、足音一歩の中での特定周波数fのスペクトル強度を、各フレーム信号の値について平均して評価するばかりではなく、更に詳細には足音一歩の時間範囲における時間変化St(f、t)を抽出し、これを足音パラメータとして用いることもできる。また、足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報、すなわち平均スペクトル強度値S(f)、スペクトル強度値標準偏差Ssd(f)、時間変化St(f,t)を任意に組み合わせて1つの足音パラメータとして用いるようにしてもよい。また、この時間変化St(f,t)については、他の実施の形態において、平均スペクトル強度値S(f)やスペクトル強度値標準偏差Ssd(f)と同様に、足音パラメータ値として用いるようにしてもよく、これらを任意に組み合わせて1つの足音パラメータとして用いるようにしてもよい。
【0076】
これら、平均スペクトル強度値S(f)、スペクトル強度値標準偏差Ssd(f)、およびスペクトル強度の時間変化St(f、t)については、必要に応じて足音が発生した音発生位置の変化分に起因する音の強度の変動分を補正してデータを正規化した後に、足音信号ごとに求めたものを複数の足音信号でさらに平均値を求め、この平均値に対する標準偏差を求めてもよい。あるいは、各足音信号のデータを正規化した後に、各足音信号に含まれるフレーム信号のすべてについて、一括して平均スペクトル強度値S(f)およびスペクトル強度値標準偏差Ssd(f)を算出してもよい。
また、特定周波数fとして複数の周波数を設定し、これら特定周波数ごとに、平均スペクトル強度値S(f)、スペクトル強度値標準偏差Ssd(f)、およびスペクトル強度の時間変化St(f、t)を算出して、それぞれ独立した足音パラメータ値として用いてもよく、さらにはこれらの足音パラメータを任意に組合せたものを1つの足音パラメータ値として用いてもよい。また、このことは他の実施の形態においても同様に適用できる。
【0077】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図11を参照して、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図11は、第3の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図3と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図7の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0078】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
また、歩行音処理部15Aは、前述のようにして、歩行音信号22から各足音を示す足音信号をそれぞれ抽出して周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムを算出する(ステップ300)。
【0079】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0080】
また、パラメータ算出部15Bは、前述のようにして、歩行音処理部15Aで得られたスペクトログラムに基づいて、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdを、足音パラメータ値として算出する(ステップ102)。
【0081】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値と、各足音パラメータ値に対応する確率値とを、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出するとともに、各足音パラメータ値に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する(ステップ104)。
この後、区分判定部15Cは、これら評価値が登録者ごとに事前に設定されたしきい値を越えた場合に、当該登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。この際、評価値が登録者ごとに事前に設定されたしきい値を越える登録者、あるいは、しきい値と評価値との差や比が最も高い値となる登録者が、複数存在する場合には、その中で最も高い評価値が得られた登録者を対象者と判定すればよい。また、しきい値を越える登録者がいない場合には、該当なしあるいは評価不能と判定すればよい。
【0082】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aで、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部15Bにより、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、区分判定部15Cで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしたものである。
【0083】
これにより、対象者が持つ特徴が、その特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定する際、対象者の歩行状態パラメータ値だけでなく、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値をも考慮することができ、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0084】
[第4の実施の形態]
次に、図12を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。図12は、第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図であり、前述の図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0085】
第3の実施の形態では、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値を考慮して、対象者の分類区分を判定する場合について説明した。ここで、足音パラメータ値には、対象者の身体的特徴あるいは運動機能的特徴だけでなく、対象者が履く履物の種類が反映されている。本実施の形態では、このことに着目して、足音パラメータ値から対象者が履いている履物の履物種別、例えば革靴、ハイヒール、サンダル、スニーカー、草履などの履物種別を判定し、この履物種別を考慮して、対象者の分類区分を判定するようにしたものである。
【0086】
本実施の形態において、歩行音処理部15Aは、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムをそれぞれ算出する機能を有している。
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値、すなわちスペクトログラムから、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出する機能を有している。
【0087】
また、記憶部14には、図12に示すように、新たな処理情報として、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベース(以下、履物種別DBという)14Bが記憶されている。
また、記憶部14の確率分布DB14Aには、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。この履物種別に関する確率分布特性については、例えば、前述した図4のように連続性のある特性ではなく、分類区分と履物種別との組合せごとにそれぞれ個別の確率値が登録されている。
【0088】
また、演算処理部15には、図12に示すように、新たな処理部として、記憶部14の履物種別DB14Bを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する履物種別判定部15Dが設けられている。
区分判定部15Cは、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部15Dで得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した確率値を対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合する機能とを有している。
【0089】
なお、前述した歩行音処理部15A、パラメータ算出部15B、確率分布DB14Aの詳細については、第3の実施の形態と同様である。また、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0090】
[第4の実施の形態の動作]
次に、図13を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図13は、第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図11と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図13の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0091】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
また、歩行音処理部15Aは、前述のようにして、歩行音信号22から各足音を示す足音信号をそれぞれ抽出して周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムを算出する(ステップ300)。
【0092】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0093】
また、パラメータ算出部15Bは、前述のようにして、歩行音処理部15Aで得られたスペクトログラムに基づいて、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdを、足音パラメータ値として算出する(ステップ102)。
この後、履物種別判定部15Dは、記憶部14の履物種別DB14Bを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する(ステップ400)。
【0094】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値と、履物種別判定部15Dで判定された対象者の履物種別に対応する確率値とを、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出するとともに、履物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する(ステップ104)。
【0095】
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0096】
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aで、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部15Bにより、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、履物種別判定部15Dで、履物種別DB14Bを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定し、区分判定部15Cで、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部15Dで得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしたものである。
【0097】
これにより、対象者が持つ特徴が、その特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定する際、対象者の歩行状態パラメータ値だけでなく、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値から判定した対象者の履物種別をも考慮することができ、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0098】
また、本実施の形態において、履物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する際、実際には、前述した式(1)で説明したような、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値および履物種別に対応する確率値と、これら歩行状態パラメータ値および履物種別ごとに予め設定しておいた重みとの積和計算を行うことになる。この場合、履物種別に対応する重みとして共通する1つの重みを用いてもよいが、履物種別の判定結果に応じて異なる重みを用いてもよい。
【0099】
例えば、履物種別の判定結果が「ハイヒール」の場合、対象者の性別に対する分類区分については、女性である確率が極めて高い。一方、履物種別の判定結果が「運動靴」の場合、男性/女性の確率にあまり差は見られない。このため、このような場合には、予め履物種別DB14Bに登録しておいた、履物種別の判定結果に応じた重みを用いて評価値を算出すればよい。これにより、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0100】
[第5の実施の形態]
次に、図14を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。図14は、第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図であり、前述の図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0101】
第4の実施の形態では、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値から判定した対象者の履物種別を考慮して、対象者の分類区分を判定する場合について説明した。ここで、対象者の歩行に伴って発生する歩行音は、対象者の足音だけでなく、対象者が身につけている衣服や鞄等の付帯物からも発生している。本実施の形態では、このことに着目し、対象者の周囲に設けた観測点で発生した音に関する音響的特徴を示す観測点パラメータ値から判定した対象者の付帯物を考慮して、対象者の分類区分を判定するようにしたものである。
【0102】
本実施の形態において、歩行音処理部15Aは、歩行音信号22を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成する機能と、これら観測点信号ごとに周波数スペクトル分析することにより、当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値としてスペクトログラムをそれぞれ算出する機能とを有している。
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各観測点特徴値、すなわちスペクトログラムから、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出する機能を有している。
【0103】
図15は、対象者の観測領域を示す説明図である。ここでは、対象者を囲む観測領域として、前後左右の方向にそれぞれ0.6mの幅を持ち、高さ方向に床面から2.0mの高さを持つ領域が設定されている。実際には、この観測領域を0.2m間隔で格子状に区切って、176個の観測点を設定し、これら観測点で発生した音を示す観測点信号を生成する。これにより、対象者の服装や所持品などの付帯物から発生する歩行音を示す観測点信号を得ることができ、その音響的特徴を示す観測点特徴値から得られる観測点パラメータ値に基づき付帯物を判定することができる。
【0104】
各観測点における観測点信号については、前述した公知の収音処理/強調処理を用いればよい(例えば、非特許文献3等参照)。これにより、対象者の体の前後左右、足の各部分、腰付近、腕付近、頭付近など、各部分で発生した、衣服の摩擦音や所持品のゆれや体にぶつかるときに発生する音などの歩行音をそれぞれ個別に得ることができる。
なお、観測領域については、連続する足音の音発生位置および音発生時刻から歩行速度を求めることにより、各時刻における対象者の体の中心位置を推定できるので、この中心位置に対して観測領域を設定すればよい。また、これら観測領域や観測点の間隔の寸法については、これに限定されるものではない。
【0105】
また、記憶部14には、図14に示すように、新たな処理情報として、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の観測点信号から得た各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベース(以下、付帯物種別DBという)14Cが記憶されている。付帯物種別としては、ズボン、スカート、コートなどの衣服やその生地素材、バッグ、鞄などの所持品、さらにはその形状や大きさなどがある。
【0106】
また、記憶部14の確率分布DB14Aには、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。この付帯物種別に関する確率分布特性については、例えば、前述した図4のように連続性のある特性ではなく、分類区分と付帯物種別との組合せごとにそれぞれ個別の確率値が登録されている。
【0107】
また、演算処理部15には、図12に示すように、新たな処理部として、付帯物種別DB14Cを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定部15Eが設けられている。
区分判定部15Cは、分類区分ごとに評価値を算出する際、付帯物種別判定部15Eで得られた対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した確率値を対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合する機能とを有している。
【0108】
[第5の実施の形態の動作]
次に、図16を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図16は、第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図7と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図16の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0109】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
また、歩行音処理部15Aは、前述のようにして、歩行音信号22から各観測点における観測点信号をそれぞれ生成して周波数スペクトル分析することにより、これら観測点信号ごとに、当該観測点信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムを算出する(ステップ500)。
【0110】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0111】
また、パラメータ算出部15Bは、前述のようにして、歩行音処理部15Aで得られたスペクトログラムに基づいて、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdを、観測点パラメータ値として算出する(ステップ102)。
この後、付帯物種別判定部15Eは、記憶部14の付帯物種別DB14Cを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する(ステップ501)。
【0112】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値と、付帯物種別判定部15Eで判定された対象者の付帯物種別に対応する確率値とを、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出するとともに、付帯物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する(ステップ104)。
【0113】
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0114】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aでは、歩行音信号22を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部15Bにより、歩行音処理部15Aで得られた各観測点特徴値に関する統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、付帯物種別判定部15Eで、付帯物種別DB14Cを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定し、区分判定部15Cで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしたものである。
【0115】
これにより、対象者が持つ特徴が、その特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定する際、対象者の歩行状態パラメータ値だけでなく、対象者の周囲で発生した歩行音に含まれる音響的特徴を示す観測点パラメータ値から判定した対象者の付帯物種別をも考慮することができ、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0116】
また、本実施の形態では、観測点パラメータ値として、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を用いる場合について説明したが、当該観測点の位置を示す観測位置も観測点パラメータ値に含めてもよい。これにより、付帯物種別判定部15Eにおいて付帯物種別を判定する際、対象者の観測領域のうち、それぞれの付帯物が存在する位置を考慮することができ、より詳細に付帯物の種別を判定することができる。
【0117】
また、本実施の形態において、付帯物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する際、実際には、前述した式(1)で説明したような、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値および付帯物種別に対応する確率値と、これら歩行状態パラメータ値および付帯物種別ごとに予め設定しておいた重みとの積和計算を行うことになる。この場合、付帯物種別に対応する重みとして共通する1つの重みを用いてもよいが、付帯物種別の判定結果に応じて異なる重みを用いてもよい。
【0118】
例えば、付帯物種別の判定結果が「ハンドバック」の場合、対象者の性別に対する分類区分については、女性である確率が極めて高い。一方、付帯物種別の判定結果が「リュックサック」の場合、男性/女性の確率にあまり差は見られない。このため、このような場合には、予め付帯物種別DB14Cに登録しておいた、付帯物種別の判定結果に応じた重みを用いて評価値を算出すればよい。これにより、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0119】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施の形態は、それぞれ任意に組合せて実施してもよい。
【符号の説明】
【0120】
10…歩行音分析装置、11…信号入力部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…確率分布DB、14B…履物種別DB、14C…付帯物種別DB、15…演算処理部、15A…歩行音処理部、15B…パラメータ算出部、15C…区分判定部、15D…履物種別判定部、15E…付帯物種別判定部、20…集音装置、21…マイクロホン、22…歩行音信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行に伴って発生する種々の音を分析することにより、対象者が持つ特徴の推定や、対象者の個人の識別・認証を行うための歩行音分析技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロホンアレーで検出した歩行音を分析して、足音が発生した音発生位置や音発生時刻を抽出する技術が提案されている(例えば、非特許文献1や非特許文献2等参照)。これは、マイクロホンペアに対する音の到達時間差を利用して音源位置を推定する技術に基づいている。これにより、歩行者の歩幅や歩行速度などを算出することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Masanari Shoji, 「Passive Acoustic Sensing of Walking」,In Proceedings of the International Conference on Intelligent Sensors, Sensor Networks and Information Processing (ISSNIP '09), pp. 219-224, 2009.
【非特許文献2】庄司,「マイクロホンアレーによる足音位置推定、追跡の検討」,日本音響学会2010年春季研究発表会, 予稿集 pp.727-730,2010.
【非特許文献3】野村他,「近接音場型マイクロホンアレー」,日本音響学会誌53巻2号,pp.110-116,1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、人の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音には、歩き方の癖に起因する歩行音の差異、各人の服装や持ち物などの付帯物に関する特徴など、各人固有の特徴が含まれていることは、日常経験上知られている。また、人の足音を聞いて、その人が誰かを直感的に判別できる場合もある。
しかしながら、前述した従来技術では、歩行者の歩幅や歩行速度については定量的に評価できるものの、例えば身長、体重、性別、年齢などの身体的特徴、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴、あるいは歩き方における各人固有の特徴など、歩行音から人が持つ特徴を判定することはできない。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、歩行音に基づいて人の特徴を判定することができる歩行音分析技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために、本発明にかかる歩行音分析装置は、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理部と、歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出部と、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶する確率分布データベースと、パラメータ算出部で得られた対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する区分判定部とを備えている。
【0007】
この際、歩行音処理部で、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部で、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、区分判定部で、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0008】
また、歩行音処理部で、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部で、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースをさらに備え、履物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する履物種別判定部をさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定部で、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部で得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0009】
また、歩行音処理部で、歩行音信号を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部で、歩行音処理部で得られた各観測点特徴値に関する統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の観測点信号から得た各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースをさらに備え、付帯物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定部をさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定部で、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0010】
また、パラメータ算出部で、歩行状態パラメータ値として、少なくとも対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出するようにしてもよい。
【0011】
また、区分判定部で、分類区分ごとに算出した評価値のうち、分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値としきい値との差または比が最も大きい分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明にかかる歩行音分析方法は、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を分析して、対象者の特徴を判定する歩行音分析装置で用いられる歩行音分析方法であって、歩行音処理部が、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理ステップと、パラメータ算出部が、歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出ステップと、記憶部が、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を確率分布データベースとして記憶するステップと、区分判定部が、パラメータ算出部で得られた対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する区分判定ステップとを備えている。
【0013】
この際、歩行音処理ステップで、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出ステップで、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、区分判定ステップで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0014】
また、歩行音処理ステップで、歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出ステップは、歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、記憶部が、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、履物種別判定部が、履物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する履物種別判定ステップをさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定ステップで、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部で得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0015】
また、歩行音処理ステップで、歩行音信号を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出ステップで、歩行音処理部で得られた各観測点特徴値に関する統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、記憶部が、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の観測点信号から得た各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、付帯物種別判定部が、付帯物種別データベースを参照して、パラメータ算出部で得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定ステップをさらに備え、確率分布データベースで、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、区分判定ステップで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしてもよい。
【0016】
また、パラメータ算出ステップで、歩行状態パラメータ値として、少なくとも対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出するようにしてもよい。
【0017】
また、区分判定ステップで、分類区分ごとに算出した評価値のうち、分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値としきい値との差または比が最も大きい分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。
【0018】
また、本発明にかかるプログラムは、コンピュータを、前述したいずれか1つに記載の歩行音分析装置を構成する各部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、歩行に伴う足音を含む歩行音に基づいて、対象者が持つ特徴、例えば身長、体重、体重、性別、年齢などの身体的特徴や、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴について、これら特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の構成を示すブロック図である。
【図2】歩行の歩幅および歩行速度を示す説明図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図4】歩幅と身長に関する確率分布特性例である。
【図5】評価値の算出例である。
【図6】歩幅と登録者に関する確率分布特性例である。
【図7】第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図8】評価値の算出例である。
【図9】足音信号の切り出しを示す説明図である。
【図10A】足音信号の振幅波形図である。
【図10B】足音信号のスペクトログラムである。
【図11】第3の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図12】第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図である。
【図13】第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【図14】第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図である。
【図15】対象者の観測領域を示す説明図である。
【図16】第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
この歩行音分析装置10は、全体としてパーソナルコンピュータやサーバ装置などの情報処理装置からなり、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号22を入力として、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分のうちから、対象者が属する分類区分を判定する機能を有している。
図1において、集音装置20は、マイクロホンアレーを構成する複数のマイクロホン21からの出力信号を集めてA/D変換処理し、歩行音信号22として歩行音分析装置10へ出力する機能を有している。
【0023】
本実施の形態は、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出し、得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出し、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶しておき、得られた対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布データベースから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしたものである。
【0024】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10の構成について詳細に説明する。
歩行音分析装置10には、主な機能部として、信号入力部11、操作入力部12、画面表示部13、記憶部14、および演算処理部15が設けられている。
【0025】
信号入力部11は、専用の入出力インターフェース回路からなり、集音装置20からの歩行音信号22を取得して演算処理部15へ出力する機能を有している。
操作入力部12は、キーボードやマウスなどの操作入力装置からなり、オペレータの操作を検出して演算処理部15へ出力する機能を有している。
画面表示部13は、LCDなどの画面表示装置からなり、演算処理部15から出力された操作メニューや分析結果などの各種データを画面表示する機能を有している。
【0026】
記憶部14は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、演算処理部15での各種処理動作に用いる処理情報やプログラム14Pを記憶する機能を有している。プログラムについては、記録媒体に記録することも、ネットワークを通じて提供することも可能である。
記憶部14で記憶する主な処理情報として、確率分布データベース(以下、確率分布DBという)14Aがある。確率分布DB14Aには、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た、当該歩行の特徴を示す任意のパラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。
【0027】
例えば、身長の分類区分の1つとして160cm−180cmという分類区分を設定した場合、この分類区分に属する複数の人の足音から、それぞれパラメータ値を抽出できる。このパラメータ値の具体例としては、例えば歩幅や歩行速度など、それぞれの人に固有の値である。したがって、同一分類区分に属する人であっても、歩幅や歩行速度は異なるが、両者はある程度の相関を持つ。例えば、身長の高い人は比較的歩幅も大きい。したがって、同一分類区分に属する複数の人の足音から抽出したパラメータ値は、あるピークをもって分布する。
【0028】
このような頻度分布を正規化して、パラメータ値に設定した区間ごとに積分することにより、同一分類区分に属する全人数のうち、パラメータ値が当該区間に属する人の割合、すなわち確率値として表現できる。したがって、対象者の足音から算出したパラメータ値の確率値を分類区分ごとに取得して比較すれば、対象者が属する尤もらしい分類区分を判定することができる。本実施の形態では、複数のパラメータ値に関する確率値を統合して、対象者の部類区分を判定している。これら処理の詳細について後述する。
【0029】
演算処理部15は、CPUなどのマイクロプロセッサとその周辺回路を有し、記憶部14のプログラム14Pを読み込んで実行することにより、各種処理部を実現する機能を有している。
演算処理部15で実現される主な機能部として、歩行音処理部15A、パラメータ算出部15B、および区分判定部15Cがある。
【0030】
歩行音処理部15Aは、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する機能を有している。この歩行音処理部15Aで用いる音発生位置および音発生時刻の抽出技術については、公知の技術を用いればよい(例えば、非特許文献1や非特許文献2等参照)。
【0031】
また、音響信号処理において、前述の音発生位置および音発生時刻を基に歩行音信号22を収音処理/強調処理することにより、歩行音信号22のうちから足音に関する足音信号を抽出してもよい。これら収音処理/強調処理については、公知の技術を用いればよい(例えば、非特許文献3等参照)。
なお、これら音響信号処理や収音処理/強調処理については、原理的に、歩行者の人数によらず適用可能である。
【0032】
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出する機能を有している。
本実施の形態では、歩行状態パラメータ値として、歩幅L、歩行速度V、移動中心線から左右方向への開き幅B、および1歩の時間間隔Tに関する統計値を用いている。
【0033】
図2は、歩行の歩幅および歩行速度を示す説明図である。ここでは、時刻T0に右足をステップ(接地)して、その後の時刻T1に左足をステップした例が示されている。このうち、右足と左足の距離間隔が歩幅Lとなり、この歩幅Lを右足と左足の時間間隔T(=T1−T0)で除算したものが歩行速度V(=L/T)となる。また、移動方向に沿った右足と左足の移動中心線から左右の足の中心までの距離を開き幅Bとして定義している。
【0034】
これら歩幅L、歩行速度V、開き幅B、および時間間隔Tは、左右のステップごとに得られるため、本実施の形態では、歩行音信号22のうちから切り出した所定長の観測区間に含まれる複数のステップに対して得られる値の平均値を、実際の歩幅L、歩行速度V、開き幅B、および時間間隔Tとして算出している。また、この平均値に対するステップごとに得られた値のばらつきを示す標準偏差、すなわち歩幅標準偏差Lsd、歩行速度標準偏差Vsd、開き幅標準偏差Bsd、および時間間隔標準偏差Tsdについても歩行状態パラメータとして算出している。
【0035】
歩行に関する歩幅L、歩行速度V、開き幅B、および時間間隔Tについては、歩行状態の特徴が最もよく現れる値である。本実施の形態では、これら4種類の値に関する合計8個の統計量を歩行状態パラメータとして組み合わせて用いる場合を例として説明する。なお、歩行状態パラメータについては、これら8個すべてを用いる必要はなく、これらのうち少なくとも1つまたは複数の歩行状態パラメータを組み合わせて用いればよい。なお、歩行状態に関するこれら4種類以外の値を歩行状態パラメータとして用いてもよい。
【0036】
区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した各確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出する機能と、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定する機能とを有している。
【0037】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図3を参照して、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図3は、第1の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートである。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図3の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0038】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
【0039】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0040】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、取得した各確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出する(ステップ104)。
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定し(ステップ105)、判定した分類区分を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0041】
図4は、歩幅と身長に関する確率分布特性例であり、横軸が平均歩幅Lを示し、縦軸が平均歩幅Lに対する確率値P(L)を示している。ここでは、身長についてH1〜H9までの分類区分が設定されており、確率分布DB14Aには、これら分類区分H1〜H9ごとに確率分布特性が予め登録されている。
【0042】
分類区分の具体例としては、H1=「80cm以下」、H2=「80−100cm」、H3=「100−120cm」、H4=「120−140cm」、H5=「140−160cm」、H6=「160−180cm」、H7=「180−200cm」、H8=「200−220cm」、H9=「220cm以上」である。例えば、平均歩幅L=50cmの場合、H3が最も高い確率値を示している。ここでは、各分類区分に関する確率分布が、正規分布に類似する釣り鐘型の特性例で示されているが、これはあくまでも模式図であり、確率分布特性が常にこのような形状となる訳ではない。
【0043】
図5は、評価値の算出例である。パラメータ算出部15Bで対象者の歩行状態パラメータ値として、平均歩幅Lが算出された場合、図4に示した確率分布特性から、分類区分H1〜H9ごとに確率値P(L)が得られる。図5の例では、H4登録者で「1.2%」、H5で「15.8%」、H6で「25.6%」、H7で「0.6%」、これら以外のH1,H2,H3,H8,H9はすべて「0%」という確率値がそれぞれ得られている。このようにして、分類区分ごとに、歩行状態パラメータに対応する確率値が得られ、これら確率値が分類区分ごとに統合されて評価値Eが算出される。
【0044】
評価値Eを算出する際、歩行状態パラメータに対する重み付けが行われる。一般的に数式で表記すると、分類区分hにおける、歩行状態パラメータiの値jに関する確率値をPi(j,h)とし、歩行状態パラメータiに対する重みをw(i)とすると、分類区分hに関する評価値E(h)は、次の式(1)で求められる。
E(h)=Σiw(i)Pi(j,h) …(1)
【0045】
このようにして、各分類区分hに関する評価値E(h)が算出される。図5の例では、E(H4)が「0.4」、E(H5)が「13.2」、E(H6)が「26.1」、E(H7)が「0.1」、これら以外のE(H1),E(H2),E(H3),E(H8),E(H9)はすべて「0」である。したがって、これら評価値のうち最も高いものはE(H6)であるから、対象者の身長に関する分類区分は、H6、すなわち160−180cmであると判定される。
【0046】
これら図4および図5では、人が持つ特徴として身長を例に説明したが、体重、体重、性別、年齢などの身体的特徴、さらには、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴についても同様にして適用することができる。このうち、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴については、予め設定したしきい値と評価値とを比較することにより、障害や疾病の有無を判定して、画面表示するようにしてもよい。
また、分析結果については、判定した分類区分のみを画面表示するのではなく、各分類区分の評価値を画面表示してもよい。特に、評価値を正規化することにより、評価結果を確率値分布として画面表示することも可能である。
【0047】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aで、歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出し、パラメータ算出部15Bで、各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出し、区分判定部15Cで、対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して統合することにより、分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしたものである。
【0048】
これにより、歩行に伴う足音を含む歩行音に基づいて、対象者が持つ特徴、例えば身長、体重、体重、性別、年齢などの身体的特徴や、歩行障害や特定の疾病などの運動機能的特徴について、これら特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定することができる。
【0049】
また、本実施の形態では、対象者の歩行状態パラメータ値として、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のいずれかを用いるようにしたので、極めて正確に歩行の特徴をパラメータとして捉えることができる。これにより、高い精度で分類区分を判定することができる。
【0050】
また、本実施の形態では、人が持つ1つの特徴に関する分類区分を判定する際、複数の歩行状態パラメータに関する確率値を統合して評価値を算出するようにしたので、1つの歩行状態パラメータのみで評価値を算出する場合と比較して、大きな偏りを生じることなく、分類区分を判定することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、対象者が1人の場合を例として説明したが、原理的には対象者の人数に制限はない。このため、大型の店舗や展示会などの設備で、多くの人の1次元的あるいは2次元的な流れや、各位置における滞留状況を、各人の特徴情報を含めて評価することができる。これにより、設備内の店舗、会場、通路の配置・形状や商品自体の配置についての適正化を行う際、極めて有効な情報を提供することが可能となる。
【0052】
また、本実施の形態では、図3のステップ105において、区分判定部15Cが、分類区分ごとに算出した評価値に基づいて対象者の分類区分を判定する際、これら分類区分ごとに算出した評価値と分類区分ごとに予め設定されているしきい値とを比較し、これら評価値のうち、しきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値としきい値との差や比が最も大きい分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。また、しきい値を越える評価値がない場合には、該当なしあるいは評価不能と判定してもよい。これにより、対象者の分類区分判定について、より高い判定精度を得ることができる。
【0053】
また、評価値に基づいて分類区分を判定する場合、最も高い評価値とその次に高い2番目の評価値との差分や比を、予め設定されている相対しきい値(動的しきい値)と比較し、差分や比が相対しきい値を越えた場合には、最も高い評価値が得られた分類区分を対象者に関する分類区分として判定するようにしてもよい。また、差分や比が相対しきい値を越えない場合には、該当なしあるいは評価不能と判定してもよい。これにより、最も高い評価値とその次に高い2番目の評価値とにあまり差がない場合でも、対象者の分類区分判定について、より高い判定精度を得ることができる。
【0054】
なお、上記相対しきい値は、必ずしも定数である必要はなく、最も高い評価値、次に高い評価値、これらの差や比の関数として定義される動的なしきい値であってもよい。
また、評価値に基づく分類区分判定処理において、しきい値あるいは相対しきい値を導入する構成については、本実施の形態に限定されるものではなく、これ以降で説明する他の実施の形態にも同様に適用可能である。
【0055】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。
第1の実施の形態では、分類区分が人の身体的特徴あるいは運動機能的特徴である場合を例として説明した。本実施の形態では、分類区分が個人である場合、すなわち対象者が誰かを認識する場合を例として説明する。
【0056】
本実施の形態において、記憶部14の確率分布DB14Aは、予め分類対象として登録した登録者と対応する分類区分ごとに、当該分類区分の登録者の足音から得た各歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶する。
【0057】
図6は、歩幅と登録者に関する確率分布特性例であり、横軸が平均歩幅Lを示し、縦軸が平均歩幅Lに対する確率値P(L)を示している。ここでは、登録者としてM1〜M5の分類区分が設定されており、確率分布DB14Aには、これら分類区分M1〜M5ごとに確率分布特性が予め登録されている。
【0058】
分類区分の具体例としては、M1=「Aさん」、M2=「Bさん」、M3=「Cさん」、M4=「Dさん」、M5=「Eさん」である。例えば、平均歩幅L=80cmの場合、M5の「Eさん」が最も高い確率値を示している。ここでは、各分類区分に関する確率分布が、正規分布に類似する釣り鐘型の特性例で示されているが、これはあくまでも模式図であり、確率分布特性が常にこのような形状となる訳ではない。
なお、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0059】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図7は、第2の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図3と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図7の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0060】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
【0061】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0062】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごと、ここでは登録者ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ200)、取得した各確率値を登録者ごとに統合することにより、登録者ごとの評価値を算出する(ステップ201)。
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0063】
図8は、評価値の算出例である。パラメータ算出部15Bで対象者の歩行状態パラメータ値として、平均歩幅Lが算出された場合、図6に示した確率分布特性から、分類区分M1〜M5ごとに確率値P(L)が得られる。図8の例では、M2で「4.9%」、M3で「13.8%」、M4で「26.2%」、これら以外のM1,M5はすべて「0%」という確率値がそれぞれ得られている。このようにして、分類区分ごとに、歩行状態パラメータに対応する確率値が得られ、これら確率値が分類区分ごとに統合されて評価値Eが算出される。
【0064】
この際、評価値Eについては、歩行状態パラメータiに対する重みをw(i)を考慮して、前述した式(1)を用いて算出すればよい。
このようにして、各分類区分hに関する評価値E(h)が算出される。図8の例では、E(M1)が「1.6」、E(M2)が「5.9」、E(M3)が「13.8」、E(M4)が「25.9」、E(M5)が「3.4」である。したがって、これら評価値のうち最も高いものはE(M4)であるから、対象者はM4のDさんであると判定される。
【0065】
なお、分析結果については、判定した分類区分のみを画面表示するのではなく、各分類区分の評価値を画面表示してもよい。特に、評価値を正規化することにより、評価結果を確率値分布として画面表示することも可能である。
【0066】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、記憶部14の確率分布DB14Aで、予め分類対象として登録した登録者と対応する分類区分ごとに、当該分類区分の登録者の足音から得た各歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶するようにしたので、対象者が登録者のうちのいずれであるかを判定することができ、結果として、対象者に対する個人識別や認証を行うことが可能となる。
【0067】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。
第1の実施の形態では、歩行音信号22を音響信号処理して得られた各足音の音発生位置および音発生時刻から、歩行状態パラメータ値として、平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを算出する場合を例として説明した。
本実施の形態では、歩行音信号22を周波数スペクトル分析することにより、歩行状態パラメータ値に加え、足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値として足音パラメータ値を算出し、これら歩行状態パラメータ値および足音パラメータ値により、対象者の分類区分を判定する場合について説明する。
【0068】
本実施の形態において、歩行音処理部15Aは、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムをそれぞれ算出する機能を有している。
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値、すなわちスペクトログラムから、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出する機能を有している。
【0069】
確率分布DB14Aには、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。
区分判定部15Cは、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した確率値を対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合する機能とを有している。
なお、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0070】
図9は、足音信号の切り出しを示す説明図である。人の足音は、通常、100〜300ms程度の継続時間を有しており、歩行音信号22には、足音だけでなくその前後の区間も含まれている。このため、足音に関する音響的特徴を取得するために、歩行音信号22から、その振幅などに基づいて、足音の継続時間Taの全範囲、あるいは継続時間Taの中で必要な一部の範囲だけを足音信号として切り出せばよい。
【0071】
本実施の形態では、足音信号に関する音響的特徴として、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する統計量を用いる。したがって、まず、足音信号を例えば50ms程度の時間長Tfの複数のフレーム信号を、例えば10ms程度の時間長Tsだけ順に開始時刻をシフトさせながら切り出し、これらフレーム信号ごとに短時間フーリエ変換することにより、周波数スペクトル分析を行う。これにより、足音信号の特徴値として、フレーム信号ごとの周波数スペクトル分布とその時間変化、すなわちスペクトログラムが得られる。
【0072】
図10Aは、足音信号の振幅波形図であり、横軸は歩行における経過時間(単位は[sec])を示し、縦軸は足音信号の振幅値(任意単位[a.u.])を示している。ここでは、5歩分の足音信号が示されており、各足音は約0.54[sec]程度の間隔で連続している。
【0073】
図10Bは、足音信号のスペクトログラムであり、横軸は歩行における経過時間(単位は[sec])を示し、縦軸は周波数(単位は[kHz])を示し、色の濃淡が周波数成分におけるスペクトル強度(単位は[dB])を示している。ここでは、図10Aの足音信号と時間的に対応して、5歩分のそれぞれの足音信号から得られた周波数スペクトル分布が示されており、足音には20kH程度までの周波数成分の音が、ある程度のスペクトル強度で含まれていることがわかる。
【0074】
このようにして得られた各フレーム信号のスペクトログラムから、必要に応じて例えば歩行音の存在しない時間のデータから評価したノイズ成分スペクトルを除去した後、予め設定しておいた特定周波数fにおけるスペクトル強度値をフレーム信号ごとに取得する。そして、これらスペクトル強度値の平均値、すなわち平均スペクトル強度値S(f)を足音パラメータ値として算出すればよい。また、この平均値に対するフレーム信号ごとのスペクトル強度値のばらつきを示す標準偏差、すなわちスペクトル強度値標準偏差Ssd(f)を足音パラメータ値として算出すればよい。
【0075】
また、足音一歩の中での特定周波数fのスペクトル強度を、各フレーム信号の値について平均して評価するばかりではなく、更に詳細には足音一歩の時間範囲における時間変化St(f、t)を抽出し、これを足音パラメータとして用いることもできる。また、足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報、すなわち平均スペクトル強度値S(f)、スペクトル強度値標準偏差Ssd(f)、時間変化St(f,t)を任意に組み合わせて1つの足音パラメータとして用いるようにしてもよい。また、この時間変化St(f,t)については、他の実施の形態において、平均スペクトル強度値S(f)やスペクトル強度値標準偏差Ssd(f)と同様に、足音パラメータ値として用いるようにしてもよく、これらを任意に組み合わせて1つの足音パラメータとして用いるようにしてもよい。
【0076】
これら、平均スペクトル強度値S(f)、スペクトル強度値標準偏差Ssd(f)、およびスペクトル強度の時間変化St(f、t)については、必要に応じて足音が発生した音発生位置の変化分に起因する音の強度の変動分を補正してデータを正規化した後に、足音信号ごとに求めたものを複数の足音信号でさらに平均値を求め、この平均値に対する標準偏差を求めてもよい。あるいは、各足音信号のデータを正規化した後に、各足音信号に含まれるフレーム信号のすべてについて、一括して平均スペクトル強度値S(f)およびスペクトル強度値標準偏差Ssd(f)を算出してもよい。
また、特定周波数fとして複数の周波数を設定し、これら特定周波数ごとに、平均スペクトル強度値S(f)、スペクトル強度値標準偏差Ssd(f)、およびスペクトル強度の時間変化St(f、t)を算出して、それぞれ独立した足音パラメータ値として用いてもよく、さらにはこれらの足音パラメータを任意に組合せたものを1つの足音パラメータ値として用いてもよい。また、このことは他の実施の形態においても同様に適用できる。
【0077】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図11を参照して、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図11は、第3の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図3と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図7の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0078】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
また、歩行音処理部15Aは、前述のようにして、歩行音信号22から各足音を示す足音信号をそれぞれ抽出して周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムを算出する(ステップ300)。
【0079】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0080】
また、パラメータ算出部15Bは、前述のようにして、歩行音処理部15Aで得られたスペクトログラムに基づいて、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdを、足音パラメータ値として算出する(ステップ102)。
【0081】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値と、各足音パラメータ値に対応する確率値とを、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出するとともに、各足音パラメータ値に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する(ステップ104)。
この後、区分判定部15Cは、これら評価値が登録者ごとに事前に設定されたしきい値を越えた場合に、当該登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。この際、評価値が登録者ごとに事前に設定されたしきい値を越える登録者、あるいは、しきい値と評価値との差や比が最も高い値となる登録者が、複数存在する場合には、その中で最も高い評価値が得られた登録者を対象者と判定すればよい。また、しきい値を越える登録者がいない場合には、該当なしあるいは評価不能と判定すればよい。
【0082】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aで、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部15Bにより、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、区分判定部15Cで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしたものである。
【0083】
これにより、対象者が持つ特徴が、その特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定する際、対象者の歩行状態パラメータ値だけでなく、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値をも考慮することができ、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0084】
[第4の実施の形態]
次に、図12を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。図12は、第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図であり、前述の図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0085】
第3の実施の形態では、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値を考慮して、対象者の分類区分を判定する場合について説明した。ここで、足音パラメータ値には、対象者の身体的特徴あるいは運動機能的特徴だけでなく、対象者が履く履物の種類が反映されている。本実施の形態では、このことに着目して、足音パラメータ値から対象者が履いている履物の履物種別、例えば革靴、ハイヒール、サンダル、スニーカー、草履などの履物種別を判定し、この履物種別を考慮して、対象者の分類区分を判定するようにしたものである。
【0086】
本実施の形態において、歩行音処理部15Aは、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムをそれぞれ算出する機能を有している。
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値、すなわちスペクトログラムから、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出する機能を有している。
【0087】
また、記憶部14には、図12に示すように、新たな処理情報として、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベース(以下、履物種別DBという)14Bが記憶されている。
また、記憶部14の確率分布DB14Aには、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。この履物種別に関する確率分布特性については、例えば、前述した図4のように連続性のある特性ではなく、分類区分と履物種別との組合せごとにそれぞれ個別の確率値が登録されている。
【0088】
また、演算処理部15には、図12に示すように、新たな処理部として、記憶部14の履物種別DB14Bを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する履物種別判定部15Dが設けられている。
区分判定部15Cは、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部15Dで得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した確率値を対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合する機能とを有している。
【0089】
なお、前述した歩行音処理部15A、パラメータ算出部15B、確率分布DB14Aの詳細については、第3の実施の形態と同様である。また、本実施の形態にかかる歩行音分析装置10におけるその他の構成については、第1の実施の形態と同様であり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0090】
[第4の実施の形態の動作]
次に、図13を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図13は、第4の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図11と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図13の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0091】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
また、歩行音処理部15Aは、前述のようにして、歩行音信号22から各足音を示す足音信号をそれぞれ抽出して周波数スペクトル分析することにより、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムを算出する(ステップ300)。
【0092】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0093】
また、パラメータ算出部15Bは、前述のようにして、歩行音処理部15Aで得られたスペクトログラムに基づいて、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdを、足音パラメータ値として算出する(ステップ102)。
この後、履物種別判定部15Dは、記憶部14の履物種別DB14Bを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定する(ステップ400)。
【0094】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値と、履物種別判定部15Dで判定された対象者の履物種別に対応する確率値とを、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出するとともに、履物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する(ステップ104)。
【0095】
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0096】
[第4の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aで、歩行音信号22から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部15Bにより、歩行音処理部15Aで得られた各特徴値に関する統計値を、対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、履物種別判定部15Dで、履物種別DB14Bを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を対象者の履物種別として判定し、区分判定部15Cで、分類区分ごとに評価値を算出する際、履物種別判定部15Dで得られた対象者の履物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしたものである。
【0097】
これにより、対象者が持つ特徴が、その特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定する際、対象者の歩行状態パラメータ値だけでなく、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値から判定した対象者の履物種別をも考慮することができ、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0098】
また、本実施の形態において、履物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する際、実際には、前述した式(1)で説明したような、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値および履物種別に対応する確率値と、これら歩行状態パラメータ値および履物種別ごとに予め設定しておいた重みとの積和計算を行うことになる。この場合、履物種別に対応する重みとして共通する1つの重みを用いてもよいが、履物種別の判定結果に応じて異なる重みを用いてもよい。
【0099】
例えば、履物種別の判定結果が「ハイヒール」の場合、対象者の性別に対する分類区分については、女性である確率が極めて高い。一方、履物種別の判定結果が「運動靴」の場合、男性/女性の確率にあまり差は見られない。このため、このような場合には、予め履物種別DB14Bに登録しておいた、履物種別の判定結果に応じた重みを用いて評価値を算出すればよい。これにより、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0100】
[第5の実施の形態]
次に、図14を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置10について説明する。図14は、第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置を示すブロック図であり、前述の図1と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
【0101】
第4の実施の形態では、対象者の足音に含まれる音響的特徴を示す足音パラメータ値から判定した対象者の履物種別を考慮して、対象者の分類区分を判定する場合について説明した。ここで、対象者の歩行に伴って発生する歩行音は、対象者の足音だけでなく、対象者が身につけている衣服や鞄等の付帯物からも発生している。本実施の形態では、このことに着目し、対象者の周囲に設けた観測点で発生した音に関する音響的特徴を示す観測点パラメータ値から判定した対象者の付帯物を考慮して、対象者の分類区分を判定するようにしたものである。
【0102】
本実施の形態において、歩行音処理部15Aは、歩行音信号22を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成する機能と、これら観測点信号ごとに周波数スペクトル分析することにより、当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値としてスペクトログラムをそれぞれ算出する機能とを有している。
パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各観測点特徴値、すなわちスペクトログラムから、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出する機能を有している。
【0103】
図15は、対象者の観測領域を示す説明図である。ここでは、対象者を囲む観測領域として、前後左右の方向にそれぞれ0.6mの幅を持ち、高さ方向に床面から2.0mの高さを持つ領域が設定されている。実際には、この観測領域を0.2m間隔で格子状に区切って、176個の観測点を設定し、これら観測点で発生した音を示す観測点信号を生成する。これにより、対象者の服装や所持品などの付帯物から発生する歩行音を示す観測点信号を得ることができ、その音響的特徴を示す観測点特徴値から得られる観測点パラメータ値に基づき付帯物を判定することができる。
【0104】
各観測点における観測点信号については、前述した公知の収音処理/強調処理を用いればよい(例えば、非特許文献3等参照)。これにより、対象者の体の前後左右、足の各部分、腰付近、腕付近、頭付近など、各部分で発生した、衣服の摩擦音や所持品のゆれや体にぶつかるときに発生する音などの歩行音をそれぞれ個別に得ることができる。
なお、観測領域については、連続する足音の音発生位置および音発生時刻から歩行速度を求めることにより、各時刻における対象者の体の中心位置を推定できるので、この中心位置に対して観測領域を設定すればよい。また、これら観測領域や観測点の間隔の寸法については、これに限定されるものではない。
【0105】
また、記憶部14には、図14に示すように、新たな処理情報として、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の観測点信号から得た各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベース(以下、付帯物種別DBという)14Cが記憶されている。付帯物種別としては、ズボン、スカート、コートなどの衣服やその生地素材、バッグ、鞄などの所持品、さらにはその形状や大きさなどがある。
【0106】
また、記憶部14の確率分布DB14Aには、分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性が登録されている。この付帯物種別に関する確率分布特性については、例えば、前述した図4のように連続性のある特性ではなく、分類区分と付帯物種別との組合せごとにそれぞれ個別の確率値が登録されている。
【0107】
また、演算処理部15には、図12に示すように、新たな処理部として、付帯物種別DB14Cを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定部15Eが設けられている。
区分判定部15Cは、分類区分ごとに評価値を算出する際、付帯物種別判定部15Eで得られた対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得する機能と、取得した確率値を対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合する機能とを有している。
【0108】
[第5の実施の形態の動作]
次に、図16を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置10の動作について説明する。図16は、第5の実施の形態にかかる歩行音分析装置の歩行音分析処理を示すフローチャートであり、前述の図7と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。
演算処理部15は、操作入力部12で検出されたオペレータによる実行開始指示に応じて、図16の歩行音分析処理の実行を開始する。
【0109】
まず、歩行音処理部15Aは、信号入力部11を介して歩行音信号22を取得し(ステップ100)、この歩行音信号22を音響信号処理することにより、各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する(ステップ101)。
また、歩行音処理部15Aは、前述のようにして、歩行音信号22から各観測点における観測点信号をそれぞれ生成して周波数スペクトル分析することにより、これら観測点信号ごとに、当該観測点信号に関する音響的特徴を示す特徴値としてスペクトログラムを算出する(ステップ500)。
【0110】
続いて、パラメータ算出部15Bは、歩行音処理部15Aで得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔に関する統計量、すなわち平均歩幅L、歩幅標準偏差Lsd、平均歩行速度V、歩行速度標準偏差Vsd、平均開き幅B、開き幅標準偏差Bsd、平均時間間隔T、および時間間隔標準偏差Tsdを、対象者の歩行状態パラメータ値としてそれぞれ算出する(ステップ102)。
【0111】
また、パラメータ算出部15Bは、前述のようにして、歩行音処理部15Aで得られたスペクトログラムに基づいて、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdを、観測点パラメータ値として算出する(ステップ102)。
この後、付帯物種別判定部15Eは、記憶部14の付帯物種別DB14Cを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定する(ステップ501)。
【0112】
次に、区分判定部15Cは、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の各歩行状態パラメータ値に対応する確率値と、付帯物種別判定部15Eで判定された対象者の付帯物種別に対応する確率値とを、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得し(ステップ103)、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値を分類区分ごとに統合することにより、分類区分ごとの評価値を算出するとともに、付帯物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する(ステップ104)。
【0113】
この後、区分判定部15Cは、これら評価値のうち最も高い評価値が得られた登録者が対象者であると判定し(ステップ105)、判定した登録者を、入力された歩行音信号22の分析結果として、画面表示部13で画面表示し、一連の歩行音分析処理を終了する。
【0114】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、歩行音処理部15Aでは、歩行音信号22を収音処理することにより、対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、パラメータ算出部15Bにより、歩行音処理部15Aで得られた各観測点特徴値に関する統計値を、観測点ごとに対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、付帯物種別判定部15Eで、付帯物種別DB14Cを参照して、パラメータ算出部15Bで得られた対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を対象者の付帯物種別として判定し、区分判定部15Cで、分類区分ごとに評価値を算出する際、対象者の付帯物種別に対応する確率値を、分類区分ごとに確率分布DB14Aから取得して、対応する分類区分の評価値へそれぞれ統合するようにしたものである。
【0115】
これにより、対象者が持つ特徴が、その特徴に対して予め設定した分類区分のいずれに属するかを判定する際、対象者の歩行状態パラメータ値だけでなく、対象者の周囲で発生した歩行音に含まれる音響的特徴を示す観測点パラメータ値から判定した対象者の付帯物種別をも考慮することができ、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0116】
また、本実施の形態では、観測点パラメータ値として、特定周波数におけるスペクトル強度値に関する平均スペクトル強度値Sおよびスペクトル強度値標準偏差Ssdからなる統計値を用いる場合について説明したが、当該観測点の位置を示す観測位置も観測点パラメータ値に含めてもよい。これにより、付帯物種別判定部15Eにおいて付帯物種別を判定する際、対象者の観測領域のうち、それぞれの付帯物が存在する位置を考慮することができ、より詳細に付帯物の種別を判定することができる。
【0117】
また、本実施の形態において、付帯物種別に対応する確率値を、対応する分類区分の評価値に統合する際、実際には、前述した式(1)で説明したような、各歩行状態パラメータ値に対応する確率値および付帯物種別に対応する確率値と、これら歩行状態パラメータ値および付帯物種別ごとに予め設定しておいた重みとの積和計算を行うことになる。この場合、付帯物種別に対応する重みとして共通する1つの重みを用いてもよいが、付帯物種別の判定結果に応じて異なる重みを用いてもよい。
【0118】
例えば、付帯物種別の判定結果が「ハンドバック」の場合、対象者の性別に対する分類区分については、女性である確率が極めて高い。一方、付帯物種別の判定結果が「リュックサック」の場合、男性/女性の確率にあまり差は見られない。このため、このような場合には、予め付帯物種別DB14Cに登録しておいた、付帯物種別の判定結果に応じた重みを用いて評価値を算出すればよい。これにより、より詳細に対象者の分類区分を判定することができる。
【0119】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施の形態は、それぞれ任意に組合せて実施してもよい。
【符号の説明】
【0120】
10…歩行音分析装置、11…信号入力部、12…操作入力部、13…画面表示部、14…記憶部、14A…確率分布DB、14B…履物種別DB、14C…付帯物種別DB、15…演算処理部、15A…歩行音処理部、15B…パラメータ算出部、15C…区分判定部、15D…履物種別判定部、15E…付帯物種別判定部、20…集音装置、21…マイクロホン、22…歩行音信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、前記各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理部と、
前記歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、前記対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出部と、
人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶する確率分布データベースと、
前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して統合することにより、前記分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定する区分判定部と
を備えることを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行音分析装置において、
前記歩行音処理部は、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出部は、前記歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行音分析装置において、
前記歩行音処理部は、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出部は、前記歩行音処理部で得られた前記各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た前記各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースをさらに備え、
前記履物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を前記対象者の履物種別として判定する履物種別判定部をさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、前記履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記履物種別判定部で得られた前記対象者の履物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の歩行音分析装置において、
前記歩行音処理部は、前記歩行音信号を収音処理することにより、前記対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出部は、前記歩行音処理部で得られた前記各観測点特徴値に関する統計値を、前記観測点ごとに前記対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、
人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の前記観測点信号から得た前記各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースをさらに備え、
前記付帯物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を前記対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定部をさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、前記付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の付帯物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の歩行音分析装置において、
前記パラメータ算出部は、前記歩行状態パラメータ値として、少なくとも前記対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは前記足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出することを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の歩行音分析装置において、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに算出した前記評価値のうち、前記分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値と前記しきい値との差または比が最も大きい分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定することを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項7】
対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を分析して、対象者の特徴を判定する歩行音分析装置で用いられる歩行音分析方法であって、
歩行音処理部が、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、前記各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理ステップと、
パラメータ算出部が、前記歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、前記対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出ステップと、
記憶部が、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を確率分布データベースとして記憶するステップと、
区分判定部が、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して統合することにより、前記分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定する区分判定ステップと
を備えることを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項8】
請求項7に記載の歩行音分析方法において、
前記歩行音処理ステップは、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の歩行音分析方法において、
前記歩行音処理ステップは、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行音処理部で得られた前記各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記記憶部が、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た前記各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、
履物種別判定部が、前記履物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を前記対象者の履物種別として判定する履物種別判定ステップをさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、前記履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記履物種別判定部で得られた前記対象者の履物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれか1つに記載の歩行音分析方法において、
前記歩行音処理ステップは、前記歩行音信号を収音処理することにより、前記対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行音処理部で得られた前記各観測点特徴値に関する統計値を、前記観測点ごとに前記対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記記憶部が、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の前記観測点信号から得た前記各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、
付帯物種別判定部が、前記付帯物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を前記対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定ステップをさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、前記付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の付帯物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項11】
請求項7〜請求項10のいずれか1つに記載の歩行音分析方法において、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行状態パラメータ値として、少なくとも前記対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは前記足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出することを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項12】
請求項7〜請求項11のいずれか1つに記載の歩行音分析方法において、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに算出した前記評価値のうち、前記分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値と前記しきい値との差または比が最も大きい分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定することを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の歩行音分析装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、前記各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理部と、
前記歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、前記対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出部と、
人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶する確率分布データベースと、
前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して統合することにより、前記分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定する区分判定部と
を備えることを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行音分析装置において、
前記歩行音処理部は、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出部は、前記歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歩行音分析装置において、
前記歩行音処理部は、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出部は、前記歩行音処理部で得られた前記各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た前記各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースをさらに備え、
前記履物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を前記対象者の履物種別として判定する履物種別判定部をさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、前記履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記履物種別判定部で得られた前記対象者の履物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の歩行音分析装置において、
前記歩行音処理部は、前記歩行音信号を収音処理することにより、前記対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出部は、前記歩行音処理部で得られた前記各観測点特徴値に関する統計値を、前記観測点ごとに前記対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、
人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の前記観測点信号から得た前記各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースをさらに備え、
前記付帯物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を前記対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定部をさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、前記付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の付帯物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の歩行音分析装置において、
前記パラメータ算出部は、前記歩行状態パラメータ値として、少なくとも前記対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは前記足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出することを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の歩行音分析装置において、
前記区分判定部は、前記分類区分ごとに算出した前記評価値のうち、前記分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値と前記しきい値との差または比が最も大きい分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定することを特徴とする歩行音分析装置。
【請求項7】
対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を分析して、対象者の特徴を判定する歩行音分析装置で用いられる歩行音分析方法であって、
歩行音処理部が、対象者の歩行に伴って生じる足音を含む歩行音信号を音響信号処理することにより、前記各足音が発生した音発生位置および音発生時刻をそれぞれ抽出する歩行音処理ステップと、
パラメータ算出部が、前記歩行音処理部で得られた各足音の音発生位置および音発生時刻に基づいて、前記対象者の歩行状態に関する特徴を示す歩行状態パラメータ値を算出するパラメータ算出ステップと、
記憶部が、人が持つ特徴に応じて予め設定した人の分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記歩行状態パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を確率分布データベースとして記憶するステップと、
区分判定部が、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の歩行状態パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して統合することにより、前記分類区分ごとに評価値を算出し、最も高い評価値が得られた分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定する区分判定ステップと
を備えることを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項8】
請求項7に記載の歩行音分析方法において、
前記歩行音処理ステップは、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行音処理部で得られた各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人の足音から得た前記各足音パラメータ値の頻度分布を示す確率分布特性を記憶し、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の各足音パラメータ値に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の歩行音分析方法において、
前記歩行音処理ステップは、前記歩行音信号から抽出した足音を示す足音信号について、当該足音信号に関する音響的特徴を示す特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行音処理部で得られた前記各特徴値に関する統計値を、前記対象者の足音パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記記憶部が、人が履く履物に関する履物種別と、当該履物種別の履物を履いた人の足音から得た前記各足音パラメータ値との対応関係を示す履物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、
履物種別判定部が、前記履物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の足音パラメータ値に対応する履物種別を前記対象者の履物種別として判定する履物種別判定ステップをさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が履く履物に関する、前記履物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記履物種別判定部で得られた前記対象者の履物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれか1つに記載の歩行音分析方法において、
前記歩行音処理ステップは、前記歩行音信号を収音処理することにより、前記対象者の周囲に設けた観測点ごとに、当該観測点で発生した音を示す観測点信号を生成して、これら観測点信号ごとに当該観測点信号に関する音響的特徴を示す観測点特徴値をそれぞれ算出し、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行音処理部で得られた前記各観測点特徴値に関する統計値を、前記観測点ごとに前記対象者の観測点パラメータ値としてそれぞれ算出し、
前記記憶部が、人に付帯する付帯物に関する付帯物種別と、当該付帯物種別の付帯物を付帯した人の前記観測点信号から得た前記各観測点パラメータ値との対応関係を示す付帯物種別データベースを記憶するステップをさらに備え、
付帯物種別判定部が、前記付帯物種別データベースを参照して、前記パラメータ算出部で得られた前記対象者の観測点パラメータ値に対応する付帯物種別を前記対象者の付帯物種別として判定する付帯物種別判定ステップをさらに備え、
前記確率分布データベースは、前記分類区分ごとに、当該分類区分に属する人が付帯する付帯物に関する、前記付帯物種別ごとの頻度分布を示す確率分布特性をさらに記憶し、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに前記評価値を算出する際、前記対象者の付帯物種別に対応する確率値を、前記分類区分ごとに前記確率分布データベースから取得して、対応する分類区分の前記評価値へそれぞれ統合する
ことを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項11】
請求項7〜請求項10のいずれか1つに記載の歩行音分析方法において、
前記パラメータ算出ステップは、前記歩行状態パラメータ値として、少なくとも前記対象者の歩幅、歩行速度、移動中心線から左右方向への開き幅、および1歩の時間間隔のうちのいずれか1つまたは複数に関する統計量、あるいは前記足音信号のスペクトログラムから抽出した当該足音信号の音響的特徴を示す特徴情報を算出することを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項12】
請求項7〜請求項11のいずれか1つに記載の歩行音分析方法において、
前記区分判定ステップは、前記分類区分ごとに算出した前記評価値のうち、前記分類区分ごとに予め設定されているしきい値を越える評価値のうちから、最も高い評価値が得られた分類区分、あるいは当該評価値と前記しきい値との差または比が最も大きい分類区分を前記対象者に関する分類区分として判定することを特徴とする歩行音分析方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の歩行音分析装置を構成する各部として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−168647(P2012−168647A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27660(P2011−27660)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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