説明

歯ブラシ用モノフィラメント及びそれが用いられてなる歯ブラシ

【課題】歯の内部組織に効率良くFイオンやCa2+イオンを取り込むことができ、且つ、優れた洗浄効果を有する歯ブラシ用モノフィラメント及びそれが用いられてなる歯ブラシを提供する。
【解決手段】モノフィラメント構造を有し、樹脂材料からなる歯ブラシ用モノフィラメントであり、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各水溶性金属イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有するか、あるいは、さらに、Zn2+、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各水溶性金属イオンの内の少なくとも1種以上を含有し、前記水溶性金属イオンの各々の合計含有量が0.1〜10質量%の範囲とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノフィラメント構造を有し、樹脂材料からなる歯ブラシ用モノフィラメント及びそれが用いられてなる歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ペースト等の歯磨剤を用いて、歯ブラシで口腔内の歯牙の洗浄を行う際、口腔内に存在するFイオンやCa2+イオンを歯の内部組織へ取り込むため、口腔内においてZn2+イオンやSn2+イオン等の金属イオンを共存させながら洗浄処理(歯磨き)を行なう方法が知られている。歯の内部組織にFイオンやCa2+イオンを取り込むことにより、歯に再石灰化作用が生じ、口腔内の健康増進に役立つというものである。
【0003】
また、口腔内を洗浄するための歯ブラシにおいて、用毛を構成するフィラメントとして、アルミナ、ジルコニア、マグネシアの群から選ばれる無機化合物からなり、遠赤外線放射特性を有する粒子が含有されてなる芯部を用いたものが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の歯ブラシによれば、用毛から遠赤外線が放射されることにより、口腔内の歯肉が加温され、毛血行を良好にできるというものである。
【0004】
また、歯ブラシの用毛を構成するフィラメントとして、亜鉛化合物とアルミニウム硫酸塩との混合物からなる抗菌剤を含有するものが用いられてなる歯ブラシが提案されている(例えば、特許文献2)。特許文献2に記載の歯ブラシによれば、フィラメントに含有される抗菌剤の作用により、歯ブラシの植毛部における細菌の繁殖を抑制できるというものである。
【0005】
また、用毛を構成するフィラメントとして、表層部に銀イオンを溶出させることが可能な銀イオン含有溶解性ガラスを含有してなるものが用いられてなるブラシが提案されている(例えば、特許文献3)。特許文献3に記載のブラシによれば、用毛の表層に銀イオンが溶出するので、ブラシに雑菌等が繁殖するのを防止できるというものである。
【0006】
また、用毛を構成するフィラメントとして、表層部に、銀、銅、亜鉛の重金属からなる無機抗菌性物質を含有したものが用いられてなるブラシが提案されている(例えば、特許文献4)。特許文献4に記載のブラシによれば、フィラメントの表層部に上記重金属からなる無機抗菌性物質が含有されているので、ブラシに雑菌等が繁殖するのを防止できるというものである。
【特許文献1】特開昭63−150011号公報
【特許文献2】特開平4−38904号公報
【特許文献3】特開平4−361702号公報
【特許文献4】特開平3−87323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述のように、口腔内にZn2+イオンやSn2+イオンを供給する手段としては、例えば、これら各イオンを歯磨剤や口腔洗浄液等に配合することが考えられ、各種研究が行なわれている。しかしながら、Zn2+イオンやSn2+イオンは反応性が高いため、これら各イオンを歯磨剤や口腔洗浄液等に配合した場合、製剤の安定化が困難なことから、上述のような、歯の内部にFイオンやCa2+イオンを取り込む効果が得られ難いという問題がある。
このため、口腔内において、歯磨剤を用いて歯ブラシで歯の洗浄を行う際、歯の洗浄を効率良く行うとともに、歯の内部組織に効率良くFイオンやCa2+イオンを取り込むことが切に求められていた。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、歯の内部組織に効率良くFイオンやCa2+イオンを取り込むことができ、且つ、優れた洗浄効果を有する歯ブラシ用モノフィラメント及びそれが用いられてなる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願人は、上記問題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に示す構成の発明を完成させた。
本発明は、モノフィラメント構造を有し、樹脂材料からなる歯ブラシ用モノフィラメントであって、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各水溶性金属イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有するか、あるいは、さらに、Zn2+、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各水溶性金属イオンの内の少なくとも1種以上を含有し、前記水溶性金属イオンの各々の合計含有量が0.1〜10質量%の範囲とされていることを特徴とする歯ブラシ用モノフィラメントを提供する。
また、本発明の歯ブラシ用モノフィラメントは、前記水溶性金属イオンの合計含有量が0.5〜5質量%の範囲とされた構成とすることができる。
【0010】
上記構成の歯ブラシ用モノフィラメントによれば、例えば、歯ブラシの用毛に用いて口腔内の洗浄処理を行なうことにより、フィラメント表面から溶出する各種水溶性金属イオンが、口腔内に存在するFイオンやCa2+イオンの歯の内部組織への取込み量を増量させるので、FイオンやCa2+イオンの単独での再石灰化作用に比べ、極めて高い再石灰化作用が得られる。
【0011】
また、本発明は、上記本発明の歯ブラシ用モノフィラメントが用毛として用いられてなることを特徴とする歯ブラシを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の歯ブラシ用モノフィラメントによれば、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各水溶性金属イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有するか、あるいは、さらに、Zn2+、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各水溶性金属イオンの内の少なくとも1種以上を含有し、前記水溶性金属イオンの各々の合計含有量が0.1〜10質量%の範囲とされた構成なので、口腔内のFイオンやCa2+イオンを効率良く歯の内部組織へ取込むことができる。これにより、極めて高い歯の再石灰化作用が得られ、口腔内の健康増進が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態である歯ブラシ用モノフィラメント及びそれが用いられてなる歯ブラシの一例について、図1〜5を適宜参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す歯ブラシ用モノフィラメントの平面図、図2は、図1に示す歯ブラシ用モノフィラメントの横断面図、図3は、本実施形態の歯ブラシ用モノフィラメントが用いられてなる歯ブラシを示す平面図、図4及び図5は、図3に示す歯ブラシの要部拡大図である。
【0014】
[歯ブラシ用モノフィラメント]
本実施形態の歯ブラシ用モノフィラメント(以下、フィラメントと略称することがある)1は、モノフィラメント構造を有し、樹脂材料からなり、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各水溶性金属イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有するか、あるいは、さらに、Zn2+、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各水溶性金属イオンの内の少なくとも1種以上を含有し、前記水溶性金属イオンの各々の合計含有量が0.1〜10質量%の範囲とされ、概略構成される。
また、本実施形態のフィラメント1は、口腔内において歯牙や歯茎の洗浄及びブラッシングを行うための歯ブラシに用いられるものであり、例えば、図3に示すような、ハンドル11と、首部12と、フィラメント1が複数束ねられて毛束15とされ、植毛面13aに植毛されてなるヘッド部13とからなる歯ブラシ10に用いられる。
【0015】
本実施形態のフィラメント1は、図1に示す例の模式図のような細長のモノフィラメント構造を有した構成とされ、樹脂材料からなるとともに、詳細を後述する各種水溶性金属イオンが含有されてなる。
【0016】
フィラメント1を構成する樹脂材料としては、従来から歯ブラシ用の用毛として用いられている公知の樹脂材料を、何ら制限無く用いることができ、例えば、ポリアミド樹脂(例:ナイロン66、ナイロン6−12、ナイロン6−10、ナイロン12等)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン(PE)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、エラストマー樹脂、天然材質等の他、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)やポリフッ化ビニリデン等のポリハロゲン化ビニル等、溶融紡糸できる素材を使用することができる。また、これらの素材を単独又は混合して使用する他、各材質からなる糸を組み合わせた複合糸であっても良い。
【0017】
また、フィラメント1の横断面形状としては、例えば、図2に示すような円形状が主流となっているが、これには限定さない。例えば、フィラメントの横断面形状は、三角形状、矩形状、六角形状や花びら状等の他、これら各種形状を組み合わせた多角形状であっても良い。また、本実施形態のフィラメントを、詳細を後述する歯ブラシ10の毛束15として用いる際、上記各種形状を有するフィラメントを複数組み合わせた構成としても良い。
また、フィラメント1の平面視形状としては、図1に示す一般的なストレート形状の他、例えば、波形状やツイスト形状、ギザギザ形状等、各種加工を施した形状とすることもでき、また、これら各形状を複数組み合わせた平面視形状としても良い。
【0018】
フィラメント1の径寸法としては、一般的な歯ブラシの用毛として用いられる場合、例えば、3〜12mil(0.076〜0.305mm、1mil=1/1000inch)の範囲とすることができる。また、フィラメント1が用いられる歯ブラシを、刷掃実感の高いものとする場合には、例えば、8〜12mil(0.203〜0.305mm)の範囲の径寸法とすることが好ましく、一方、マッサージ感に優れ、歯茎への当たり心地の良いものとする場合には、3〜8mil(0.076〜0.203mm)の範囲とすることが好ましい。
【0019】
また、フィラメント1の径寸法としては、一般的には、図1に示す例のように、毛先1aが丸みを帯びたR形状とされている他、1本のフィラメント内においてはほぼ同径とされているが、これには限定されない。例えば、本実施形態のフィラメントを用いて詳細を後述する毛束を構成した際、毛束根元付近では通常の太さとされ、フィラメントの先端に向かうに従って徐々に径が細くなるような、高度テーパ形状に構成しても良い。
また、フィラメント1の先端形状としては、上述のようなR形状やテーパ形状の他、例えば、ヘラ状や先薄幅広形状、球状等であっても良く、適宜採用することが可能である。
【0020】
上述したように、本実施形態のフィラメント1は、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各水溶性金属イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有するか、あるいは、さらに、Zn2+、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各水溶性金属イオンの内の少なくとも1種以上を含有した構成とされている。
口腔内に存在するFイオンやCa2+イオンの各々を歯の内部組織へ取り込むことにより、FイオンやCa2+イオンの単独での作用を超える再石灰化作用を発現させるためには、フィラメント1に、上記条件で水溶性金属イオンが含有された構成とすることが好ましい。
【0021】
本実施形態のフィラメント1は、Ca2+イオン、Mg2+イオン、Sr2+イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有することにより、FイオンやCa2+イオンの単独の場合に比べ、効率良く歯の内部組織に取り込むことができ、極めて高い再石灰化作用が発現される。
また、本実施形態では、上記Ca2+、Mg2+、Sr2+に加え、さらに、上記したZn2+イオン、Cu2+イオン、Sn2+イオン、Ti4+イオンの少なくとも1種以上を含有させた構成とする場合には、Ca2+、Mg2+及びSr2+の3種とZn2+との組み合わせとすることが、F及びCa2+の両方のイオンを、歯の内部組織へ増量して取り込むことが可能になることから好ましい。
また、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各々に関しては、上記Ca2+、Mg2+、Sr2+の少なくとも何れかと組み合わせて配合した場合、F及びCa2+の内の何れか一方のみ、歯の内部組織への取り込み量が増加する効果がある。このため、上記Zn2+を配合した場合に比べ、F及びCa2+の歯の内部組織への取り込み量の増加、ひいては再石灰化作用の発現の効果は若干低下するものの、FイオンやCa2+イオンの単独の場合に比べ、再石灰化作用の一定の向上効果がある。
ここで、Zn2+イオン、Cu2+イオン、Sn2+イオン、Ti4+イオンの各々については、それぞれの単独で配合した場合、FイオンやCa2+イオンの、歯の内部組織への取り込み量を増量させることは困難である。
【0022】
本実施形態のフィラメント1は、上記各水溶性金属イオンの合計含有量が、モノフィラメント全体で0.1〜10質量%の範囲とされている必要がある。上記各水溶性金属イオンの合計含有量がこの範囲であれば、上述のような、F及びCa2+の歯の内部組織への取り込み量増加、ひいては再石灰化作用の発現の効果が確実に得られる。
上記各水溶性金属イオンの合計含有量が0.1質量%未満だと、モノフィラメントからの水溶性金属イオンの溶出量が充分な量とならず、FやCa2+が単独の場合と比較して、再石灰化作用が向上する効果が認められない。また、上記各水溶性金属イオンの合計含有量が10質量%超だと、フィラメントの物性に影響を与え、例えば、フィラメント自体の切れや折れ等が生じる虞があるため、好ましくない。
また、上記各水溶性金属イオンの合計含有量は、0.5〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0023】
本実施形態では、上記樹脂材料からなるモノフィラメントに上記水溶性金属イオンを配合するのに際し、水溶性の金属塩を用いることが好ましい。この場合の対イオンの種類としては、特に限定されないが、塩化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物塩、炭酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン等を用いることが好ましい。なお、酸化物や窒化物等、不溶性の金属塩を用いた場合は、上述のような効果が得られない。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の歯ブラシ用モノフィラメント1によれば、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各水溶性金属イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有するか、あるいは、さらに、Zn2+、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各水溶性金属イオンの内の少なくとも1種以上を含有し、前記水溶性金属イオンの各々の合計含有量が0.1〜10質量%の範囲とされた構成なので、口腔内のFイオンやCa2+イオンを効率良く歯の内部組織へ取込むくとができる。これにより、極めて高い歯の再石灰化作用が得られ、口腔内の健康増進が可能となる。
【0025】
なお、本実施形態の歯ブラシ用モノフィラメント1によって得られる効果は、図1に示す例のようなモノフィラメント構造のものに限らず、例えば、樹脂材料からなる芯材の表面に、本実施形態のフィラメントと同様の成分組成を有する鞘部を設けた芯鞘構造のフィラメントとして構成した場合であっても、上記同様の効果を得ることが可能である。
【0026】
[歯ブラシ]
本実施形態の歯ブラシは、上述したような、本実施形態の歯ブラシ用モノフィラメント1が用毛として用いられてなるものであり、図3に示す例のように、使用者が把持して操作を行うためのハンドル11と、首部12と、フィラメント1が複数束ねられて毛束15とされ、植毛面13aに植毛されてなるヘッド部13とから概略構成される。
【0027】
ハンドル11は、図示例では、使用者が把持し易いように細長に形成されており、例えば、樹脂材料等から構成される。また、ハンドル11の長手方向一端側には、首部12が連なって形成されており、この首部12に連なるように、詳細を後述するヘッド部13が形成されている。
図3に示す例では、ハンドル11は細長で直線状に形成されているが、ハンドル11は、歯ブラシ10を使用して口腔内の洗浄を行う際に手で把持しやすい形状であれば特に限定されず、適宜決定すれば良い。
【0028】
ハンドル11の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)、セルロースプロピオネート樹脂(CP)、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、エラストマー樹脂等の樹脂材料を単独又は複数混合して用いることができ、適宜採用することが可能である。
【0029】
首部12は、上述したように、ハンドル11の長手方向一端側に連通して形成され、他端側にヘッド部13が連通して形成される。首部12を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、ハンドル11と同一の樹脂材料を用いて一体成形することが可能である。
【0030】
ヘッド部13は、図4及び図5に示すように、植毛面13aが設けられた細長のヘッド本体14と、上述した本実施形態のフィラメント1からなる用毛が束ねられてなり、植毛面13aに形成された植毛穴13bに固定される毛束15とを有してなる。
ヘッド本体14を構成する材料としては、特に限定されず、上述したようなハンドル11及び首部12と同一の樹脂材料を用いて一体成形しても良いし、適宜選択して採用することができる。
ヘッド部13は、ヘッド本体14の上面側(図3及び図4において下側)が植毛面13aとされており、この植毛面13aに複数の植毛穴13bが形成されている。
【0031】
植毛穴13bは、一般に平面視円形状の穴とされ、例えば、植毛面13a上において格子状や千鳥状に複数配列される。また、植毛穴13bの形状としては、特に限定されず、ヘッド部13全体の仕様を考慮しながら適宜採用することができ、上述の円形状の他、例えば、三角形や矩形状等の多角形の他、直線もしくは曲線を組み合わせた不定形な穴形状とすることもできる。
また、植毛穴13bの縦断面形状としては、穴長さ方向で径の変化がない円柱形状の穴としても良いが、植毛穴の下方に向かって穴径が縮径するテーパ状の穴や、段差を設けた穴、テーパと段差の両方を設けた穴としても良く、適宜採用することができる。
また、植毛穴13bは、上記穴形状とすることに加え、穴の底部に0.3mm程度の面取り加工を施した構成とすることもできる。
【0032】
毛束15は、用毛として上述した本実施形態の歯ブラシ用モノフィラメント1が用いられ、このフィラメント1が二つ折りにされて複数束ねられ、植毛面13aに設けられる複数の植毛穴13bの内部に、抜け止め部材15aによって保持、固定されてなる。
【0033】
毛束15の形状としては、特に制限されず、例えば、各フィラメント1が一定長さにカットされて束ねられてなる一般的なハンク状の他、リール状に巻き取られたスプール状等、適宜採用することができる。
また、毛束15を構成する各フィラメント1の長さは、毛先が揃うように全て同じ長さとしても良いが、毛先が不揃いとなるような長さであっても良く、毛束15の毛切り形状は特に限定されない。毛束15の毛切り形状としては、一般的なフラット形状の他、歯茎への当たり心地をよりソフトにするため、例えば、ヘッド13の長手方向における毛束15の端部形状を1〜10R程度にカットしたドーム形状や、山形形状、凹凸段差形状とすることもでき、適宜採用すれば良い。
【0034】
抜け止め部材15aは、フィラメント1を毛束15としてヘッド部13の植毛穴13bに埋め込んだ際に、毛束15が植毛穴13bから抜けないように固定する部材である。
抜け止め部材15aの材料としては、一般的に、生産性やコストの点から真鍮又はアルミニウム等からなる平線材料が用いられるが、物理的に任意の植毛穴内に用毛又は毛束を打ち込んで固定することが可能なものであれば、特に限定されない。例えば、抜け止め部材15aとしては、上記以外の金属材料の他、樹脂材料や天然材料等から適宜選択して用いることができ、また、寸法や形状についても任意に選択して採用することが可能であり、例えば、特開2000−325145号公報に記載の抜け止め部材(平線)を使用することも可能である。
【0035】
抜け止め部材15aの長さとしては、特に限定されないが、毛束15を確実に植毛穴13b内に保持して固定できる長さであるとともに、樹脂材料からなるヘッド部13の割れや白化等が生じない程度の長さとすることが好ましい。具体的には、植毛穴13bの深さ方向の長さ寸法よりも、0.3〜0.5mm程度、長い寸法とすることが好ましい。
また、抜け止め部材15aの植毛穴13bへの打ち込み角度としては、毛束の分量等を勘案しながら適宜決定することができるが、樹脂材料からなるヘッド部13の割れや白化等が生じるのを防止するため、植毛面13aの垂直方向に対して5〜80°の範囲とすることが好ましく、15〜30°の範囲とすることがより好ましい。また、抜け止め部材15aの打ち込み角度は、植毛面13aに形成される全ての植毛穴13bで同一である必要はなく、各植毛穴13bにおいて各々異なる打ち込み角度としても良い。
【0036】
ここで、図4及び図5に示すようなヘッド部13の植毛面13aにおいて、1つの植毛穴13bの断面積から、抜け止め部材15aの断面積を差し引くことで得られる実植毛横断面積{A}中の用毛総断面積{B}の割合は、パッキングファクター{P=(B/A×100%)}と呼ばれる。本実施形態では、パッキングファクター{P}の数値については、特に限定されないが、60〜100%の範囲であることが好ましく、70〜95%の範囲であることがより好ましい。
【0037】
以上説明したような、本実施形態の歯ブラシ1によれば、上記本実施形態の歯ブラシ用モノフィラメント1が用いられてなるものなので、口腔内のFイオンやCa2+イオンを効率良く歯の内部組織へ取込むことができ、極めて高い歯の再石灰化作用が得られ、口腔内の健康増進が可能となる。
【実施例】
【0038】
以下に、本発明の歯ブラシ用モノフィラメントを実証するための実施例について説明するが、本発明は本実施例によって限定されるものではない。
【0039】
[実施例1:金属イオンの溶出確認試験]
実施例1として、樹脂材料サンプルからの金属イオンの溶出状態を確認するため、以下の各手順でサンプルプレートを作製し、各々評価試験を行った。
【0040】
「溶出確認用サンプルプレートの作製」
まず、ナイロン6−12の粉末(デュポン社製)約10gと、酢酸カルシウム(1水和物:関東化学社製・特級・Ca2+用)約1gを乳鉢に測り取り、充分にすり潰して混和させた。次いで、混和した粉体をステンレス製ビーカーに移し、ドラフト内に設置したオイルバス上で250〜260℃に加温して溶解させ、スリーワンモータで静かに混和した。そして、混和後に自然冷却して直径約40mm、厚さ約4mmプレート形状とし、溶出確認用のサンプルプレート1とした。また、上記酢酸カルシウムに替わり、酢酸マグネシウム(4水和物:関東化学社製・特級・Mg2+用)約1gを用いた点を除き、上記同様の手順でプレートを作製してサンプルプレート2とし、さらに同様に、酢酸ストロンチウム(0.5水和物:関東化学社製・特級・Sr2+用)約1gを用いてプレートを作製し、サンプルプレート3とした。また、上記酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウムの各々を添加せず、ナイロン6−12のみでプレートを作製し、サンプルプレート4とした。
上記各手順により、各々ナイロン6−12からなり、Ca2+を2.1質量%含有するサンプルプレート1、Mg2+を1.0質量%含有するサンプルプレート2、Sr2+を3.7質量%含有するサンプルプレート3、Ca2+、Mg2+、Sr2+の何れも含有しないサンプルプレート4を各々作製した。
【0041】
また、上述と同様の方法を用いて、ナイロン6−12の粉末約10gに混和させる酢酸カルシウムの量を適宜調整することにより、Ca2+の含有量が0.05質量%とされたサンプルプレート11、0.2質量%とされたサンプルプレート12、9質量%とされたサンプルプレート13、11質量%とされたサンプルプレート14を各々作製した。
またさらに、上記同様、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウムの混和量を適宜調整することにより、Mg2+、Sr2+の各々の含有量が0.05質量%、0.2質量%、9質量%、11質量%とされたサンプルプレート21、22、23、24(以上、Mg2+含有)、サンプルプレート31、32、33、34(以上、Sr2+含有)をそれぞれ作製した。
【0042】
「サンプルプレートの強度の確認」
上記手順で作製したナイロン6−12からなり、各水溶性金属イオン(Ca2+、Mg2+、Sr2+)を含有する各サンプルプレートの強度を、以下に説明する方法で確認し、下記表1に示した。なお、サンプルプレート23、24については、混合する酢酸マグネシウムの量が多く、サンプルを作製することができなかった。
【0043】
サンプルプレートの強度確認においては、まず、上記手順で作製した、ナイロン6−12からなり、水溶性金属イオン(Ca2+、Mg2+、Sr2+)を各々含有する各サンプルプレート(直径約40mm、厚さ約4mm)の一端側から2cmの所を万力で挟んだ。そして、他端側に荷重100gの重りをつるした際の、プレートの折れの状態を確認した。
表1に、各サンプルプレートの強度確認結果を示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1に示すように、各水溶性金属イオン含有量が9質量%以上のサンプルプレート(サンプルプレート13、14、33、34)において、9質量%のサンプルプレート(サンプルプレート13、33)では、折れ曲がるのみで破断することがなく、11質量%のサンプルプレート(サンプルプレート14、34)では、折れて破断している状態が確認された。この結果より、用毛として用いる樹脂においては、破断することは禁忌であることから、各水溶性金属イオンの含有量は10質量%以下であることが好ましいことが明らかとなった。
【0046】
「サンプルプレートからの溶出の確認」
上記手順で作製したナイロン6−12からなり、各水溶性金属イオン(Ca2+、Mg2+、Sr2+)を含有する各サンプルプレートからの、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各々の溶出状態を確認するため、以下に示すような方法で試験を行った。
まず、上記各サンプルプレートを約35mm×35mmの正方形に切り出し、それぞれビーカー中で約60MLの蒸留水に浸しながら30分間振とうした後、サンプルを取り出し、この際の溶液を試験溶液1(計12液)とした。
また、上記試験溶液1から取り出した各サンプルプレートをそれぞれ別のビーカーに入れ、このビーカーに、37℃に加温した蒸留水約60MLを加え、時計皿でビーカーに蓋をした状態で、37℃とされた恒温槽内に設置した振とう機で30分間振とうした後、サンプルプレートを取り出し、この際の溶液を試験溶液2(計12液)とした。
【0047】
そして、上記各サンプルプレートが浸された試験溶液1、2について、以下に説明するような定性試験を行い、結果を下記表2〜4に示した。なお、この定性試験で用いた試液類は、何れも関東化学社製試薬特級品とし、日本薬局方(日局)に準じて調整した。
【0048】
{カルシウム定性試験(サンプルプレート1、11、12、13、4を使用)}
(1) 炎色反応試験として、上記各試験溶液に、直径約0.8mmの白金線を先端約5mmの位置まで浸し、これを静かに引き上げた後、ブンゼンバーナーの無色炎中に水平を保った状態で入れ、炎の色(黄赤色)を観察し、結果を表2の結果1の欄に示した。
(2) 試験溶液2MLに炭酸アンモニウム試液(日局)を2ML加え、液状(白色沈殿)を観察し、結果を表2の結果2の欄に示した。
(3) 試験溶液2MLにシュウ酸アンモニウム試液(日局)を2ML加え、液状(白色沈殿)を観察し、結果を表2の結果3の欄に示した。次いで、沈殿物を採取し、これに希酢酸(日局)を2ML加え、液状(沈殿が溶けない)を観察し、結果を表2の結果4の欄に示した。そして、これに、さらに希塩酸(日局)を10ML加え、液状(沈殿が生じない)を観察し、結果を表2の結果5の欄に示した。
(4) 試験溶液2MLにクロム酸カリウム溶液(日局)を10滴加えて加熱し、液状(沈殿が生じない)を観察し、結果を表2の結果6の欄に示した。
【0049】
{マグネシウム定性試験(サンプルプレート2、21、22、4を使用)}
(1) 試験溶液2MLに炭酸アンモニウム試液(日局)を2ML加えて加温し、液状(白色沈殿)を観察し、結果を表3の結果7の欄に示した。次いで、これに塩化アンモニウム試液(日局)を2ML加え、液状(沈殿が溶ける)を観察し、結果を表3の結果8の欄に示した。そして、さらに、リン酸水素二ナトリウム溶液(日局)を2ML加え、液状(白色結晶性沈殿)を観察し、結果を表3の結果9の欄に示した。
(2) 試験溶液2MLに水酸化ナトリウム溶液(日局)を2ML加え、液状(白色ゲル状沈殿)を観察し、結果を表3の結果10の欄に示した。次いで、この溶液2MLを分取し、ヨウ素試液(日局)を1ML加え、液状(沈殿が暗褐色に染まる)を観察し、結果を表3の結果11の欄に示した。また、分取した後に残った溶液2MLに、水酸化ナトリウム試液(日局)を4ML加え、液状(沈殿は溶けない)を観察し、結果を表3の結果12の欄に示した。
【0050】
{ストロンチウム定性試験(サンプルプレート3、31、32、33、4を使用)}
(1) 炎色反応試験として、上記各試験溶液に、直径約0.8mmの白金線を先端約5mmの位置まで浸し、これを静かに引き上げた後、ブンゼンバーナーの無色炎中に水平を保った状態で入れ、炎の色(赤色)を観察し、結果を表4の結果14の欄に示した。
【0051】
上記各試験における結果を下記表2〜4に示すとともに、これら表2〜4の結果に基づくサンプルプレートからの溶出確認評価結果を下記表5に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
【表4】

【0055】
【表5】

【0056】
「サンプルプレートからの溶出確認結果」
表2〜表5に示すように、試験溶液1においては、Ca2+、Mg2+、Sr2+の何れの存在も確認されなかったことから、各サンプルプレートには、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウムの何れについても表面吸着が無いことが確認できた。
また、試験溶液2においては、サンプルプレート1、12、13を浸けたものはCa2+の存在が確認でき、サンプルプレート2、22を浸けたものはMg2+の存在が確認でき、また、サンプルプート3、32、33を浸したものはSr2+の存在が確認できた。これにより、サンプルプレート1、12、13には酢酸カルシウムが、サンプルプレート2、22には酢酸マグネシウムが、また、サンプルプート3、32、33には酢酸ストロンチウムが各々練り込まれており、ナイロン6−12を基材とした各サンプルプレートから、Ca2+、Mg2+、Sr2+がそれぞれ溶出していることが確認できた。
また、サンプルプレート11、21、31(各水溶性イオン含有量0.05重量%)からは、Ca2+、Mg2+、Sr2+の各々の存在が確認されなかったことから、溶出量が極微量(定性試験の検出限界以下)であるか、溶出されていない事が確認できた。この結果により、各水溶性金属イオンの含有量は0.1重量%以上であることが好ましいことが明らかとなった。
【0057】
[実施例2:再石灰化効果の確認(その1)]
実施例2として、金属イオンによる再石灰化作用による効果確認のため、以下に示す手順でモデル歯牙を作製し、評価試験を行った。
【0058】
「モデル歯牙の作製」
直径7mm、高さ3.5mmの旭光学工業社製ハイドロキシアパタイト板(HA板)の上面側を鏡面に研磨し、この上面以外をマニキュアコートした。そして、これを37℃の脱灰液{乳酸(関東化学社製試薬特級)0.1N、pH4.0}に24時間浸し、上面を脱灰した。
【0059】
「薬剤処理」
上記手順で乳酸処理を施したモデル歯牙(HA板)をアクリル板に固定(n=3/群)してサンプルとし、下記表6に示す各処置液1〜8を用いて、各々3分間ずつの処置を行なった。この際、処置液の混合順序としては、人工唾液(Ca1.5mM、P5mM、AcOH100mM、NaCl100mM、pH7.0)〜蒸留水〜金属イオン溶液〜F(フッ素)溶液の順とした。そして、上記処置後、蒸留水中で洗浄し、エアブローで水分を除去した。なお、この際に用いた各処置液1〜8(8ML中)における各金属イオンの含有量は、下記表6に示す含有量(mg)とした。
【0060】
「評価項目」
(1)F取り込み量の評価
上記薬剤処理による各処置が施されたモデル歯牙のサンプル各々を、酸溶液(HCl:0.1N、NaCl:0.1N、pH1.0)に2分間浸漬(100μL/HA板)し、モデル歯牙表面に取り込まれたFを溶出させた。ぞして、酸溶液中に溶出したF濃度をイオン電極法によって測定した。
(2)Ca2+取り込み量の評価
上記薬剤処理による各処置が施されたモデル歯牙のサンプル各々を、再石灰化液(Ca1.5mM、P5mM、AcOH100mM、NaCl100mM、pH6.5)浸漬(1ML/HA板)し、5時間後の液中のCa2+減少量を原子吸光度法によって測定した。
【0061】
上記処置液1〜8の組成を下記表6に示し、また、上記F及びCa2+取り込み量の評価結果を下記表7に示す。
【0062】
【表6】

【0063】
【表7】

【0064】
「F及びCa2+取り込み量の評価結果」
表6に示すように、金属イオン溶液を配合せず、F950ppm単独とされた処置液1と比較して、Ca2+やSr2+が添加された処置液2、3においては、Fの取り込み量が増加し、Ca2+、Mg2+、Sr2+が添加された処置液2、3、5においては、Ca2+の取り込み量が増加していることが確認できた。
【0065】
[実施例3:再石灰化効果の確認(その2)]
上記した実施例2の結果より、Fの取り込み量が増加したCa2+及びSr2+について、複数の金属イオンが存在する系における再石灰化効果を確認した。本例では、上記Ca2+及びSr2+に組み合わせる金属イオンとして、F及びCa2+の取り込み量がCa2+、Sr2+に次いで多かったZn2+、Mg2+を用いた。
また、「モデル歯牙の作製」、「薬剤処理」及び「評価項目」の各々については、処置液として下記表8に示すような処置液9〜15を使用した点を除き、上記実施例2と同様の手順及び条件として評価した。
【0066】
上記処置液9〜15の組成を下記表8に示し、また、上記F及びCa2+取り込み量の評価結果を下記表9に示す。
【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【0069】
「F及びCa2+取り込み量の評価結果」
表8に示すように、金属イオン溶液を配合せず、F950ppm単独とされた処置液9と比較して、Sr2+及びZn2+が添加された処置液14を用いた場合を除き、F、Ca2+の取り込み量が増加していることが確認できた。
【0070】
[実施例4:再石灰化効果の確認(その3)]
本例では、上記実施例2において、Ca2+を含有する処置液2(処置液8ML中8.0mg)を用いた評価試験に基づき、さらに、以下に示す評価試験を行った。
まず、上記実施例1で作製したような、ナイロン6−12に酢酸カルシウムを混和させてなり、Ca2+の含有量が2.1質量%とされたサンプルプレート1、0.05質量%とされたサンプルプレート11、0.2質量%とされたサンプルプレート12、24質量%とされたサンプルプレート13の各々を準備した。次いで、これらの各サンプルプレートを、それぞれ別のビーカーに入れ、このビーカーに、37℃に加温した蒸留水約4MLを加え、時計皿でビーカーに蓋をした状態で、37℃とされた恒温槽内に設置した振とう機で30分間振とうした後、各サンプルプレートを取り出した。次いで、この際に得られた各金属イオン含有溶液2MLを用い、人工唾液(Ca1.5mM、P5mM、AcOH100mM、NaCl100mM、pH7.0)〜蒸留水〜金属イオン溶液〜F(フッ素)溶液の順で混合処置を行うことにより、下記表20に示すような処置液16〜20を調製した。なお、この際、各処置液16〜19(8ML中)におけるFイオンの含有量及び、サンプルプレート中のCaイオン含有量は、下記表10に示す含有量(mgまたは重量%)であった。
そして、各処置液の調整を上記方法で行なった点を除き、上記実施例2と同様の手順及び条件で再石灰化効果の評価を行なった。
【0071】
上記処置液16〜19及び処置液1の組成を下記表10に示し、また、上記F及びCa2+取り込み量の評価結果を下記表11に示す。
【0072】
【表10】

【0073】
【表11】

【0074】
「F及びCa2+取り込み量の評価結果」
表11に示すように、処置液の調整に用いたサンプルプレートのCa2+含有量が、本発明の歯ブラシ用モノフィラメントで規定する範囲内とされた処置液16、18、19による試験においては、金属イオン溶液を配合せず、F950ppm単独とされた処置液1による試験と比較し、F、Ca2+の取り込み量が増加していることが確認できた。
なお、処置液の調整に用いたサンプルプレートのCa2+含有量が、本発明の歯ブラシ用モノフィラメントの規定範囲外である処置液17による試験においては、処置液1による試験に比べて上記金属イオンの取り込み量が少なくなる結果となった。
【0075】
上記結果により、本発明に係る歯間ブラシ用モノフィラメントを用いて歯ブラシを構成した場合には、歯の内部組織に効率良くFイオンやCa2+イオンを取り込むことができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る歯ブラシ用モノフィラメントの一例を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る歯ブラシ用モノフィラメントの一例を説明するための模式図であり、図1に示す歯ブラシ用モノフィラメントの横断面Z−Zを示す概略図である。
【図3】本発明に係る歯ブラシの一例を説明するための模式図である。
【図4】本発明に係る歯ブラシの一例を説明するための模式図であり、図3に示す歯ブラシの要部を示す部分拡大図である。
【図5】本発明に係る歯ブラシの一例を説明するための模式図であり、図3に示す歯ブラシの要部を示す部分拡大図である。
【符号の説明】
【0077】
1…歯ブラシ用モノフィラメント(フィラメント、用毛)、10…歯ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノフィラメント構造を有し、樹脂材料からなる歯ブラシ用モノフィラメントであって、
Ca2+、Mg2+、Sr2+の各水溶性金属イオンの内の何れかを単独又は複数組み合わされて含有するか、あるいは、さらに、Zn2+、Cu2+、Sn2+、Ti4+の各水溶性金属イオンの内の少なくとも1種以上を含有し、
前記水溶性金属イオンの各々の合計含有量が0.1〜10質量%の範囲とされていることを特徴とする歯ブラシ用モノフィラメント。
【請求項2】
前記水溶性金属イオンの合計含有量が0.5〜5質量%の範囲とされていることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ用モノフィラメント。
【請求項3】
上記請求項1又は2に記載の歯ブラシ用モノフィラメントが用毛として用いられてなることを特徴とする歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−142363(P2009−142363A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320643(P2007−320643)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】