説明

歯ブラシ

【課題】狭い隙間への進入性に優れ、かつ刷掃性に優れた歯ブラシを提供する。
【解決手段】毛束を構成する用毛21は、芯部22と、この芯部22を取り巻く鞘部23とからなる多重芯構造である。そして、鞘部23の表面から芯部22の方向に設けられた多数の凹部24を有する。また、用毛21は先端に向かって太さが漸減されたテーパー部25が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関し、詳しくは歯ブラシの用毛に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内清掃具である歯ブラシにおいて、従来から、歯ブラシのヘッド部に植設された毛束を構成する用毛に関して様々な工夫がなされてきた。例えば、特許文献1や特許文献2には、共押出しによって形成した芯部とこれを取り巻く鞘部とからなる多重芯構造の用毛が記載されている。こうした多重芯構造の用毛を用いて、着色した鞘部の磨耗による芯部の露出によって交換時期を表示する歯ブラシも知られている(特許文献3)。
【0003】
一方、刷掃効果を高めるために、先端に向かって太さを漸減させた、いわゆるテーパー加工を施した用毛も知られている。例えば、特許文献4には、両端をテーパー加工した用毛が、また特許文献5、特許文献6にはテーパー加工部を施した芯部と鞘部とからなる多重芯構造の用毛がそれぞれ記載されている。
【特許文献1】特表2001−511379号公報
【特許文献2】特開2001−17854号公報
【特許文献3】特表平8−503145号公報
【特許文献4】特許第3145213号公報
【特許文献5】特開2001−178542号公報
【特許文献6】特開2003−169718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の歯ブラシでは、刷掃力を向上させるために用毛の表面にエンボス加工を施したものや用毛表面に研磨剤を練り込んだもの、あるいはツイスト毛やフェザー毛など歯牙に対する接触面積を向上させたものが知られているが、いずれも歯周ポケットや歯間部などの狭い隙間への進入性が低く、歯垢の刷掃能力に課題があった。また口腔疾患好発部位への用毛の進入性を向上させるため両端テーパー毛が知られているが、こうしたテーパー毛の表面は、主に薬剤処理によって形成されるため滑沢であり、歯周ポケットや歯間部などの狭い隙間への進入性は高いが歯垢、食物残渣等を掻き出す効果が不足しているという課題があった。
【0005】
用毛表面を粗面にする加工では、テーパー毛の表面を粗くすることは可能であるが、歯垢、食物残渣等を掻き出す効果は低い。また、テーパー毛にサイドエッジ加工を施した歯ブラシも知られているが、エッジの方向が用毛の伸長方向に形成されており、かつ表面が滑沢なため歯垢、食物残渣等を引っ掛けて掻き出す効果は少ない。更に、用毛の両端をテーパーにせずに片端をテーパーにすることにより、従来の歯ブラシと同等の機能を持たせつつ歯間進入性の効果を確保する歯ブラシも知られているが、歯垢、食物残渣等を掻き出す効果は依然として充分なレベルには達していない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、狭い隙間への進入性に優れ、かつ刷掃性に優れた歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、用毛を束ねた毛束を植毛面に植設した歯ブラシであって、前記用毛は、芯部と、この芯部を取り巻く少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を成し、前記芯部と前記鞘部とは分子量または化学構造が互いに異なる材料で形成され、最外層の前記鞘部の表面から前記芯部に向けて形成された多数の凹部を形成したことを特徴とする歯ブラシが提供される。ここでいう凹部とは、用毛の径が連続的、断続的に増減する凹凸、粗面などを構成する全ての凹みを含み、機械的加工により形成された凹部や、化学的処理(溶解処理)による凹部の形成など、凹部の形成方法は限定されない。また、部分的圧縮による弾性変形で用毛の径の一部が増加するような機械的凹凸加工により形成された凹部も含まれる。
【0008】
前記用毛の伸長方向に対して垂直な断面で、前記凹部が形成された位置での前記用毛の最小断面積は、前記用毛の凹部が形成されない位置での最大断面積の40%以上95%以下であればよい。ここでいう凹部が形成された位置とは、例えば図4に示す用毛21における凹部24の一端から他端までの間の任意の形成位置であり、この位置での最小断面積とは、凹部24の底面が最も深くなる位置における断面積S1を示す。また、用毛の凹部が形成されない位置とは、凹部24と隣接する凹部24との間における任意の位置であり、この位置での最大断面積とは、用毛21の径が極大になる位置における断面積S2を示す。
【0009】
前記用毛の少なくとも一端側は、先端に向かって太さが漸減されたテーパー部を形成し、前記テーパー部に形成される凹部は、前記テーパー部以外に形成された凹部よりも深さが浅くされればよい。前記用毛の伸長方向に対して垂直な断面の形状は不定形ないし多角形であればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の歯ブラシによれば、用毛に多数の凹部を形成しつつ、テーパー部を形成することで、凹部による刷掃能力の向上と、テーパー部による歯間への進入性を高めることが同時に可能になった。そして、用毛を芯部と鞘部のように多重芯構造にすることで、テーパー部に凹部が形成されていても、芯部と鞘部とは分子量または化学構造が互いに異なる材料で形成することで、用毛の耐久性低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は歯ブラシを示す外観斜視図である。植毛面12を有するヘッド部11と、このヘッド部11の後端から延びるハンドル部13とを備える。ハンドル部13は、歯ブラシ10を把持する部分であり、歯ブラシ10を用いた刷掃操作に最適な形状に形成されていればよい。ヘッド部11やハンドル部13は、例えば硬質樹脂による一体成形により形成されればよい。
ハンドル部13には、さらにエラストマーなどの柔軟な樹脂を部分的あるいは全体に形成し、把持性を向上させてもよい。
【0012】
ヘッド部11やハンドル部13の形成素材を例示すれば、熱可塑性樹脂として、曲げ弾性率500〜3000MPA(JIS K7203準拠)のものが好ましく、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート(ポリエステルとのブレンドを含む)、ポリアリレート(ポリエステルとのブレンドを含む)、ポリオキシメチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、セルロースプロピオネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン、PMMA樹脂などの材料を用いることができるが、価格や加工性の点からポリプロピレンが好ましい。
【0013】
また、透明性を重視する場合には、例えば、米国イーストマン社ポリエステルの一種であるPCTA樹脂がコストや耐歯磨剤性の点から好ましい。また、これらの樹脂同志や熱可塑性エラストマー(オレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、ウレタン系、ナイロン系など)、シリコン樹脂などと組み合わせ、ハンドル部13やヘッド部11を多色成形ハンドルとすることも好ましい。
【0014】
ヘッド部11の植毛面12には、用毛を束ねた毛束15が複数植設される。毛束15を植毛面12に植設するにあたっては、従来技術の方法でヘッド部11に固定することができ、例えば平線(真鍮、ステンレス、硬質樹脂などの抜け止め部材)で毛束を2つ折りにして植毛する平線植毛、毛束の一端を熱等の手段により結合し、結合部が金型内にある状態でヘッド部樹脂を充填し固定するインモールド植毛(例えば、特開昭61−268208、特表平9−512724などを参照)、毛束の一端とヘッド部を熱等の手段で溶融結合する熱融着植毛(例えば、特開昭60−241404を参照)等で行なうことができる。
【0015】
植毛される毛束または用毛の角度は、必ずしもヘッド部11の植毛面12に対して鉛直方向でなくても良く、例えば特定の方向のかき取り効果を高める目的で、毛束15が植毛されているヘッド部11の植毛面12に対して15°ないし20°程度まで傾斜して植毛されることもある。植毛部分の毛切り形状については、一般には均一平面状の平切り、頂部のある山切り、平面状高さの複数ある段切りなど適宜選択されればよく、カッター形状の工夫や複数回の毛切り工程や毛分け装置の使用などにより様々な形状の組合せとすることもでき、通常はそれぞれの毛先部分が毛先丸め処理されている。また、高度テーパー毛で毛切り工程を経ない場合もあり、その場合には、毛先丸め処理を行わなくても良い。
【0016】
歯ブラシ10の植毛面12の植毛穴の形状は、通常の円や角穴または略楕円形、略長円形、略長方形など長径と短径の異なる形状としてもよい。また植毛穴は通常は格子状や千鳥状に配列されるが、植毛穴形状の組合せや配列の組み合わせを目的機能に応じて適宜選択できる。また、歯ブラシ10のヘッド部11は、形状、大きさデザインとも何ら制限を受けない。ヘッド部11の厚みとしては最小厚みとして、平線を用いる植毛方法あるいは平線を用いない植毛方法によって若干違いが見られるが一般的に2mm程度〜6mm程度の厚みとされる。
【0017】
図2は毛束を構成する用毛を示した拡大断面図である。また、図3は用毛の拡大斜視図である。毛束15を構成する用毛21は、芯部22と、この芯部22を取り巻く鞘部23とからなる多重芯構造である。そして、鞘部23の表面から芯部22の方向に設けられた多数の凹部24を有する。また、用毛21は先端に向かって太さが漸減されたテーパー部25が形成される。
【0018】
こうした芯部22と鞘部23とからなる多重芯構造の用毛21は、通常の共押し出し用毛を製造する方法等を用い、凹部24は通常の延伸工程、アニーリング工程等の前後において、例えば表面に凹凸を形成したローラーを上下または左右またはこれらを組み合わせたものに用毛21を通過させ、用毛21の表面に凹部24を形成することによって実現できる。
【0019】
こうした凹部24を形成する手段は特に制限されるものではなく、用毛21に形成される凹部は用毛21の両側、片側あるいは全周に施しても良い。特に用毛21の全体に施すのが好ましいが、凹部24の大きさ、用毛の断面形状、用毛の直径、用毛の材質等により適宜選択されればよい。このため凹部24の形成ピッチ、形状、大きさ等は自由に設定すればよい。
【0020】
例えば、用毛21に凹部24を形成するためのローラーに設ける突起形状としては、半球状や略多角形(長方形、三角形)、略長円形等などが考えられる。具体的には、半球状としては半径40〜60μmで凹部24の形成ピッチが0.7〜0.8mmであればよい。ここでいう凹部の形成ピッチとは、図7に示すように、用毛21に形成された凹部24が例えば断面円形や断面三角形など、凹部の底面が傾斜している場合はその最深部どうしの間隔P、断面長方形など凹部の底面が平面の場合には凹部の中心どうしの間隔Pと定義されればよい。
【0021】
凹部24は用毛21の紡糸後に表面に付着させるほか、予めマスターバッチに無機物を入れ、これを用いて紡糸したものの表面析出分を溶解させ、表面形状にランダムの凹部を付与することも可能である。
【0022】
共押し出しにより形成する用毛21において、少なくとも最表層を成す鞘部23を構成する材料の分子量は、芯部22を構成する材料の分子量よりも小さいか、あるいは鞘部23と芯部22とは化学構造が互いに異なる材料を用いればよい。これにより、用毛21に凹部24を形成しても、強固な芯部によって耐久性や曲げ弾性等の物理的機能の変化を抑えることが可能になる。
【0023】
鞘部23と芯部22とは、互いに分子量(重合度)や化学構造の異なる材料を用いることによって、用毛21にテーパー部25を形成した際に一層、刷掃能力が発揮できる。即ち、用毛21に多数の凹部24を形成しつつ、先端部分にテーパー部25を形成した場合、芯部22に鞘部23よりも分子量が大きく強度に優れた材料を用いることで、凹部24やテーパー部25の形成による用毛21の耐久性低下を防止しつつ、凹部24による刷掃能力の向上と、テーパー部25による歯間への進入性を高めることが可能になった。
【0024】
用毛21を構成する芯部以外の鞘部23の少なくとも1層の厚さは5μm以上あることが好ましい。5μm未満のものは均一に紡糸することが困難である。
【0025】
図4に示すように、用毛21の伸長方向に対して垂直な断面Fにおいて、凹部24が形成された位置での用毛21の最小断面積S1は、用毛21に凹部24が形成されていない位置での最大断面積S2の40%以上95%以下が好ましい。最小断面積S1が40%未満であると凹部24が形成された部分の機械的強度が著しく低下し、用毛としての本来の強度が発揮できず曲げ強度が著しく低下してしまう。一方、最小断面積S1が95%を超えると、凹部24による歯垢などの掻き取り効果が期待できない。なお、用毛21のテーパー部25における凹部24の断面積の算出方法は、用毛21のテーパー部25に形成された凹部24の最外側を結んで得られる線を代用して用毛の断面積を算出すればよい。
【0026】
表面に凹部24をした用毛21は、酸またはアルカリ薬剤処理により片端及び両端にテーパー部25を形成した後、水洗して完成させ、滑沢な表面をもつ用毛が完成する。その他、あらかじめ製造した用毛21を歯ブラシの植毛面12に植毛した後、用毛21の先端を機械研磨によりテーパー処理し、テーパー部25を形成して完成させることも可能である。
【0027】
用毛21の表面に施す凹部24は、用毛21の伸長方向Lに対し略垂直が好ましい。これは、口腔疾患好発部位といわれる歯垢の付着が激しい部分は歯の隙間に多く、従来の用毛では表面構造が滑沢であり歯垢を掻き取る能力が弱かった。また用毛先端にテーパー部を形成すると歯間への進入性は向上するものの、曲げ強度が低下するため歯間部への挿入感が不十分でまた歯垢を掻き取るだけの強度が無いなどの課題が残されていたためである。
【0028】
また、用毛21のテーパー部25に施される凹部24の深さは、テーパー部25以外に形成される凹部24よりも深さが浅くなるように形成されればよい。これによって、テーパー部25に凹部24を形成しても、テーパー部25の弾性や強度が適切に保たれ、歯間への進入性が維持される。
【0029】
用毛21の材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−10、ナイロン6−12、ナイロン12などのポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、熱可塑性エラストマーおよび、ポリフッ化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニル等の溶融紡糸できる素材等が挙げられ、特に制限はないが、多重芯構造とするためお互いの材質は親和性に富むものを用いるのが好ましい。具体的にはポリエステル樹脂であるポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)やポリアミド樹脂の分子量、重合度の異なる材料を主成分として含む用毛が好ましい。
【0030】
多重芯構造の用毛21の芯部22と鞘部23とで材質を変える場合は、芯部22と鞘部23との間で剥離等の課題が発生する懸念があるため、例えば芯部22に鞘部23を構成する樹脂を混合することにより、樹脂間の親和性を向上させ用毛21の剥離を低減させることが可能である。この他、親和性の良い成分を添加することも可能である。
【0031】
用毛21を多重芯構造にする目的は、用毛21に凹部24を形成することにより低下する用毛21の耐久性や曲げ強度等の物性低下を抑える点にある。また、テーパー部25の形成後もテーパー部25の表面に凹部24が残るために、歯間部等の隙間に進入した用毛21がへたることなく効率良く歯垢を掻き出すことが可能となり、用毛21の耐久性も確保できる。従来は用毛を製造する上で、用毛の伸長方向に沿った凹部を形成することは、紡糸ノズルの形状を変更することで可能であった。しかし、用毛の伸長方向に対して略垂直な芯部に向かって設けられた凹部を形成することは困難であったが、本発明では、表面に凹凸を形成したローラで用毛を挟み込んで通過させることにより、用毛21の表面から芯部22に向かって設けられた凹部24を形成することが可能になる。
【0032】
用毛21の太さとしては、3〜10ミル(0.076〜0.254mm)、好ましくは5〜8ミル(0.125〜0.203mm)のものが好ましく、使用性、刷掃感、清掃効果、耐久性など考慮してこれらを組み合わせて利用することも好ましい。特に多数穴を配置した仕様は、外側の毛束より中央に向かう刷毛の強度を硬くまたは変化させる(太さ、材質、長さ、色、断面形状)事は使用感、外観差別状の上でも好ましい。
【0033】
用毛21の端部について、自由端部の毛切り(あるいはプロファイル)形状と用毛長さを任意に設定することにより、単一平面状としたり、山切り状としたり、凹凸形状とするなど、さらには、外側と内側、先端部と後端部などで異なった構成としても良い。
【0034】
用毛21の着色については、透明(ナチュラル)のまま用いてもよく、顔料や染料による透明系着色用毛あるいは、不透明着色(白を含む)用毛などが歯ブラシ外観の商品性を考慮して適宜選択される。必要に応じて、それらを2種あるいはそれ以上を、毛束単位や毛束内で組み合わせて使用しても良い。
【0035】
着色方法としては、一般に用いられるように、用毛21を紡糸する際の樹脂そのものを着色するか、紡糸後、あるいは紡糸工程に付随して、表面から着色することができる。また、歯ブラシへ植毛する前の毛束のカットピース状態(25〜35mm程度の用毛長さの束)や植毛後に、用毛の先端部分のみ、あるいは用毛全部を着色してもよい。さらには、用毛の特性を損なわない範囲内で、熱や光に対する安定化剤、難燃剤、フィラー、表面潤滑剤、帯電防止剤、殺菌素材(抗菌素材)など、さらには、他の硬質樹脂やエラストマーを適宜配合したり塗布しても良い。
【実施例】
【0036】
図5に、本発明の歯ブラシおよび毛束における用毛の形成例をいくつか提示する。なお、用毛断面積(用毛凹部)の項目は、図4に示す用毛21の凹部24が形成されていない部分の最大断面積S2に対する凹部24形成されている部分の最小断面積S1の割合を示したものである。
【0037】
本出願人は、本発明の歯ブラシの効果を検証した。検証にあたっては、図6に示す本発明例1〜6の歯ブラシと、従来の比較例1〜3の歯ブラシが用意された。材質はPP樹脂、1.6mm径の植毛穴を23穴設けた歯ブラシハンドルに毛束を植毛して実験に用いた。こうした本発明例と比較例の歯ブラシを用いて、モデル刷掃力試験を実施した。試験方法は、ニッシン社製の成人上顎模型の右側頬側第一大臼歯、第二大臼歯の歯間部および咬合面にモデル歯垢として赤色ペイントを塗布し、歯ブラシを歯に対して垂直に200gの荷重で押し当てて、ストローク20mmで20回刷掃した後、それぞれの歯垢除去率を測定した。
【0038】
歯垢除去率は、刷掃力試験前に第一大臼歯、第二大臼歯頬側の歯間部および第一大臼歯咬合面小窩裂凹部部のモデル歯垢占有面積を画像解析により測定し、清掃力試験後に再度同部位の歯垢占有面積を測定し、その差を試験前の歯垢占有面積で除して100倍し、パーセント表示したものである。
歯垢除去率(%)=((清掃力試験前の歯垢占有面積−清掃力試験後の歯垢占有面積)/清掃試験前の歯垢占有面積)×100
【0039】
このような本発明例1〜3の歯ブラシと従来の比較例1〜3の歯ブラシによる刷掃力試験の結果を表1に示す。なお、官能評価の項目は専門パネラー(n=20名)により、歯ブラシのブラッシングした時の歯肉への当たり心地、歯肉のマッサージ感について実施した。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示す結果によれば、本発明の歯ブラシは官能評価でいずれも「良い」との評価であった。一方、従来の比較例の歯ブラシは、官能評価で「どちらともいえない」ないし「良くない」という評価にとどまった。本発明の歯ブラシの効果が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の歯ブラシの一実施形態を示す側面平面図である。
【図2】図2は、本発明の歯ブラシの用毛を示す部分断面図である。
【図3】図3は、本発明の歯ブラシの用毛を示す拡大斜視図である。
【図4】図4は、本発明の歯ブラシの用毛の一断面を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の歯ブラシの実施例を示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の歯ブラシの検証サンプルを示す説明図である。
【図7】図7は、凹部のピッチ示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
10…歯ブラシ、11…ヘッド部、12…植毛面、15…毛束、21…用毛、22…芯部、23…鞘部、24…凹部、25…テーパー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用毛を束ねた毛束を植毛面に植設した歯ブラシであって、
前記用毛は、芯部と、この芯部を取り巻く少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を成し、前記芯部と前記鞘部とは分子量または化学構造が互いに異なる材料で形成され、最外層の前記鞘部の表面から前記芯部に向けて設けられた多数の凹部を形成したことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記用毛の伸長方向に対して垂直な断面で、前記凹部が形成された位置での前記用毛の最小断面積は、前記用毛の凹部が形成されない位置での最大断面積の40%以上95%以下であることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記用毛の少なくとも一端側は、先端に向かって太さが漸減されたテーパー部を形成し、前記テーパー部に形成される凹部は、前記テーパー部以外に形成された凹部よりも深さが浅くされることを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記用毛の伸長方向に対して垂直な断面の形状は不定形ないし多角形であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−195962(P2007−195962A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354464(P2006−354464)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】