説明

歯ブラシ

【課題】青色光の照射と歯周ポケットの清掃とを同時にかつ効率的に行うことができる歯ブラシを提供する。
【解決手段】歯ブラシ1では、支持体16の植毛面Pに植毛された毛材3において、植毛面Pから突出する部分の長さL3が各毛材3間で不均一となっている。このため、発光毛31と非発光毛32とを一度に様々な深さで歯周ポケットに入り込ませることができる。したがって、この歯ブラシ1では、歯周ポケットからプラークや食物残渣を除去しつつ、発光毛31の先端部3bから出射する青色光を歯周ポケット内全体に照射することができ、青色光による微生物の殺菌効果を十分に発揮させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌効果を有する発光機能付きの歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
歯周ポケットに存在するポルフィロモナス属などの微生物は、歯周病の進行に関連していることが知られている。歯周病の予防及び治療には、これらの微生物の殺菌が有効である。そこで、例えば特許文献1に記載の口腔器具では、ブラシを導光体として、波長400nm程度の青色光を歯肉に向けて照射している。これにより、微生物内部のポルフィリン環を有する物質が励起され、ラジカル種及び熱の発生による微生物の殺菌効果が奏するようになっている。
【特許文献1】特表2006−521875号公報
【特許文献2】特開2001−120358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した殺菌用の青色光は、血液中のヘモグロビンによって強く吸収を受ける性質を持っている。そのため、歯肉の上から青色光を照射しても、歯周ポケット内の微生物の殺菌効果が十分に発揮されない場合がある。一方、青色光は、口腔内のプラークや食物残渣によっても吸収を受ける。そのため、歯周ポケット内に青色光を直接照射する場合であっても、歯周ポケット内が十分に清掃された状態でないと、微生物の殺菌効果が十分に発揮されないおそれがある。したがって、ユーザの簡便さも考慮すると、青色光の照射と歯周ポケットの清掃とは、同時にかつ効率的に行えるようにすることが好ましい。
【0004】
ここで、歯周ポケットの清掃をするものとして、例えば特許文献2に記載の歯ブラシがある。この従来の歯ブラシでは、テーパ状の毛先が歯周ポケットの奥まで容易に届くようになっている。しかしながら、この従来の歯ブラシでは、毛先の長さが均一になっているため、これを特許文献1の口腔器具に組み合わせたとしても、毛先を歯周ポケットの底部まで入れると歯周ポケットの入口付近の照射が不十分となり易く、毛先を歯周ポケットの入口に留めると歯周ポケットの清掃が不十分となり易い、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、青色光の照射と歯周ポケットの清掃とを同時にかつ効率的に行うことができる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のため、本発明に係る歯ブラシは、支持体に支持され、一定の外径を有する基部と、先細りの先端部とを有する毛材と、波長350nm〜450nmの青色光を発生させる光源と、光源で発生した青色光を毛材に結合させる結合手段とを備え、毛材は、支持体から突出する部分の長さが不均一となる部分を有していることを特徴としている。
【0007】
この歯ブラシでは、支持体に支持された毛材において、支持体から突出する部分の長さが不均一になっている。毛材の長さが均一になっている場合、毛先を歯周ポケットの底部まで入れると歯周ポケットの入口付近の照射が不十分となり易く、毛先を歯周ポケットの入口に留めると歯周ポケットの清掃が不十分となり易い。したがって、毛材の長さを不均一とすることで、青色光の照射と歯周ポケットの清掃とを同時にかつ効率的に行うことができ、青色光による微生物の殺菌効果を十分に発揮させることが可能となる。
【0008】
また、毛材は、結合手段によって青色光が結合される発光毛と、結合手段によって青色光が結合されない非発光毛とを含み、非発光毛は、発光毛の周囲を囲むように配置されていることが好ましい。このように、発光毛を非発光毛の内側に集合させて配置することで、発光毛の基部から漏れた青色光が他の発光毛に再結合し易くなり、先端部への光伝達効率が高められる。このことは、微生物の殺菌効果の更なる強化を実現する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る歯ブラシによれば、青色光の照射と歯周ポケットの清掃とを同時にかつ効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る歯ブラシの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る歯ブラシを示す斜視図である。また、図2は、図1に示した歯ブラシの先端部分の構成を示す断面図である。図1及び図2に示すように、歯ブラシ1は、歯周ポケット内を殺菌するための発光機能を有する電動式歯ブラシであり、本体部2と、毛材3と、光源4と、光結合部5と、振動発生器6とを備えて構成されている。
【0012】
本体部2は、例えばAS樹脂(スチレンとアクリロニトリルとの共重合化合物)やポリプロピレン樹脂などのプラスチック樹脂によって略棒状に形成されている。本体部2の基端側は、ユーザが歯ブラシ1を把持するためのハンドル部11となっている。ハンドル部11の周面には、スイッチ12等が適宜設けられている他、例えば人体の指の形状に合わせたグリップ面が形成され、ユーザが歯ブラシ1をしっかりと把持できる設計となっている。また、ハンドル部11の内部には、乾電池或いは蓄電池をセットする電池ボックス(図示せず)が設けられている。
【0013】
本体部2の先端側は、毛材3の植毛面Pが一面側に設けられたヘッド部13となっている。ヘッド部13は、図2に示すように、基端側及び植毛面P側がそれぞれ開口する中空の骨格部材15と、骨格部材15の内側に配置される略板状の支持体16とを有し、全体として略直方体形状をなしている。毛材3の詳細については後述する。
【0014】
支持体16は、その基端側に位置する第1の平面部16aと、第1の平面部16aよりも先端側において段違いに位置し、上述の植毛面Pを構成する第2の平面部16bと、第1の平面部16a及び第2の平面部16bを連結する連結部16cとを有している。支持体16は、第1の平面部16aが骨格部材15における植毛面P側の内壁15cに沿い、かつ第2の平面部16bが骨格部材15における植毛面P側の開口端15aを塞ぐようにして配置されている。
【0015】
そして、支持体16は、第1の平面部16aの基端側に設けられた緩衝体17と、第2の平面部16bの周囲に設けられた緩衝体18とを介し、骨格部材15に対して振動可能に取り付けられている。緩衝体17,18としては、毛材3と同様に、ポリオレフィン或いはポリスチレンなどの透過率の高い材料が用いられる。なお、緩衝体17,18は、組成を調整することで、毛材3よりも屈折率を低くすることが望ましい。
【0016】
また、第1の平面部16aには、骨格部材15の基端側の開口15bから突出する1本或いは複数本の突起16dが設けられている。この突起16dが後述する振動体24の凹部24aに抜き差しされることにより、ヘッド部13は、ハンドル部11の先端部11aに対して着脱可能となっている。
【0017】
一方、光源4は、ハンドル部11の先端部11aに埋設されている。光源4は、例えば波長400nm〜430nmの青色光を出射するGeN系レーザダイオードである。青色光は、歯周病の進行に関連するポルフィロモナス属などの微生物の内部に存在するポルフィリン環を有する物質を励起し、ラジカル種及び熱の発生をさせる。したがって、青色光を歯周ポケット内の微生物に照射することにより、ラジカル種及び熱による微生物の殺菌効果が得られる。
【0018】
光源4としてGeN系レーザダイオードを用いることにより、ランプ等に比べて高いエネルギー変換効率が得られる。また、ハンドル部11内の電池との協働によってコードレス化を実現でき、歯ブラシ1の操作性が担保される。なお、光源4としては、同様の波長の青色光を出射するLEDを用いてもよい。
【0019】
光結合部5は、例えばアルミニウム等の金属コーティングにより、ヘッド部13の内部に設けられた反射壁21によって形成されている。より具体的には、反射壁21は、ヘッド部13の骨格部分の内壁に沿って形成された第1の部分21aと、支持体16における第1の平面部16aの内壁に沿って形成された第2の部分21bと、第2の平面部16bの内壁に対向するように形成された第3の部分21cとを含んで構成されている。第2の部分21bは、緩衝体17,18と同様の緩衝体22,23を介して第1の平面部16aに取り付けられている。また、第3の部分21cの中央部分には、略円形状の開口21dが設けられている。
【0020】
骨格部材15の基端側の開口15bから入射した青色光は、反射壁21の第1の部分21a及び第2の部分21bによって反射しながら第3の部分21cに向かって導かれ、この第3の部分21cの開口21dから略円形状に出射する。開口21dから出射した青色光は、開口21dに対面して配置された毛材3に結合する。
【0021】
これにより、図3に示すように、植毛面Pに植毛されている毛材3のうち、略中央部分の略円形の領域に配置された毛材3は、青色光が結合される発光毛31として機能し、発光毛31を取り囲む環状の領域に配置された毛材3は、青色光が結合されない非発光毛32として機能する。青色光は、発光毛31の内部を伝播し、発光毛31の先端部3dから外部に出射される。
【0022】
振動発生器6は、光源4と同様に、ハンドル部11の先端部11aに埋設されている。振動発生器6には、例えばクオーツやPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系セラミックからなる振動体24が接続されている。振動体24には、支持体16の突起16dを抜き差し可能な凹部24aが設けられている。突起16dを凹部24aに差し込んだ状態で振動発生器6が駆動すると、振動体24の振動が支持体16を経由して毛材3に伝達され、毛材3は、例えば毎分数万回程度、上下左右に微振動する。
【0023】
毛材3は、例えば波長350nm〜450nmにおいて十分な透過性を有するポリオレフィン或いはポリスチレンといった樹脂によって形成されている。毛材3のそれぞれは、一定の外径を有する基部3aと、先細りの先端部3bとを有している。
【0024】
基部3aの外径L1は、例えば直径0.15mm〜0.25mmの範囲に設定されており、先端部3bの長さL2は、例えば3mm〜10mmの範囲に設定されている。植毛面Pから突出する毛材3の長さL3は、例えば10mm〜13mmの範囲に設定されており、各毛材3間での長さL3は、ばらつき幅0.3mm〜3.0mmをもって不均一となっている。
【0025】
また、図4に示すように、発光毛31において、先端部3bの表面には、例えば球状の微細な凸部33が形成されている。これにより、先端部3bの中心線平均粗さRaは、0.2μm以上となっており、先端部3bの表面粗さは、基部3aの表面粗さの3倍以上となっている。
【0026】
以上のような構成を有する歯ブラシ1では、支持体16の植毛面Pに植毛された毛材3において、植毛面Pから突出する部分の長さL3が各毛材3間で不均一となっている。毛材3の長さL3が均一である場合、毛先を歯周ポケットの底部まで入れると歯周ポケットの入口付近の照射が不十分となり易く、毛先を歯周ポケットの入口に留めると歯周ポケットの清掃が不十分となり易いという問題が生じる。
【0027】
これに対し、毛材3の長さL3が不均一となっている場合、発光毛31と非発光毛32とを一度に様々な深さで歯周ポケットに入り込ませることができる。したがって、この歯ブラシ1では、歯周ポケットからプラークや食物残渣を除去しつつ、発光毛31の先端部3bから出射する青色光を歯周ポケット内全体に照射することができ、青色光による微生物の殺菌効果を十分に発揮させることができる。
【0028】
毛材3の長さL3のばらつき幅は、0.3mm〜3.0mmとなっている。炎症の進行を防止するという観点から、歯周病の初期段階において上述した青色光による微生物の殺菌を行うことが非常に有効であるが、この初期状態において、歯周ポケットの深さは3mm程度になることが知られている。したがって、毛材の長さL3のばらつき幅を上記範囲とすることで、毛材3を歯周ポケットに過不足なく入り込ませることが可能となる。
【0029】
また、歯ブラシ1では、非発光毛32が発光毛31の周囲を囲むように配置されている。このように、発光毛31を非発光毛32の内側に集合させて配置することで、発光毛31の基部3aから漏れた青色光が他の発光毛31に再結合し易くなり、先端部3bへの光伝達効率が高められる。このことは、微生物の殺菌効果の更なる強化を実現する。
【0030】
さらに、歯ブラシ1では、発光毛31における先端部3bの表面粗さが基部3aの表面粗さよりも大きくなるように調整されている。このような構成により、発光毛31の基部3aからの青色光の漏れ量を、先端部3bからの青色光の出射量に対して相対的に小さくすることができる。また、先端部3bから出射される青色光が十分に拡散し、歯周ポケットの隅々にまで青色光を照射することが可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
続いて、本発明の第2実施形態に係る歯ブラシについて説明する。図5は、本発明の第2実施形態に係る歯ブラシの先端部分の構成を示す断面図である。
【0032】
図5に示すように、第2実施形態に係る歯ブラシ40は、発光毛31の基部3aを延長し、この延長部分自体を青色光の結合手段としている点で、ヘッド部13内の反射壁21を結合手段としている第1実施形態と異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様である。
【0033】
すなわち、歯ブラシ40では、発光毛31のそれぞれは、ヘッド部13の内側に向かって伸びる延長部41を有している。延長部41は、ヘッド部13内で開口15b側に屈曲しており、延長部41の先端は、ハンドル部11の端面において光源4に直接接続されている。このような構成によっても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0034】
[第3実施形態]
続いて、本発明の第3実施形態に係る歯ブラシについて説明する。図6は、本発明の第3実施形態に係る歯ブラシの先端部分の構成を示す断面図である。
【0035】
図6に示すように、第3実施形態に係る歯ブラシ50は、光源4をヘッド部13の内部に配置している点で、光源4をハンドル部11の先端部11aに配置している第1実施形態と異なっている。その他の点については、第1実施形態と同様である。
【0036】
すなわち、歯ブラシ50では、光源4は、ヘッド部13の内部において骨格部材15に固定されており、発光毛31の基部3aは、植毛面Pの裏側で光源4に直接接続されている。このような構成によっても、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0037】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した各実施形態では、発光毛31と非発光毛32とのそれぞれについて、植毛面Pから突出する長さL3を不均一としているが、例えば非発光毛32の長さL3を均一とし、発光毛31の長さL3を、1mm〜3mm程度のばらつき幅をもって非発光毛32よりも短くしてもよい。
【0038】
また、毛材3同士の間隔が基部3a側よりも先端部3b側で小さくなるように、植毛面Pに対して毛材3を傾けるようにしてもよい。この場合、例えば植毛面Pの中心付近の毛材3を植毛面Pに対して略垂直とし、植毛面Pの中心から遠ざかるにつれて、毛材3が植毛面Pの中心に向かって0°〜5°程度の範囲で徐々に傾くようにする。このような構成により、歯周ポケット内での毛材3のパワー密度がより向上し、プラークや食物残渣をより確実に除去することができる。また、青色光の出射方向が分散され、歯周ポケットの隅々にまで青色光を照射することが一層容易になる。
【0039】
振動発生器6等による振動機構、及び突起16d等による着脱機構は、必ずしも設ける必要はない。この場合、構成の簡素化及び低コスト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係る歯ブラシを示す斜視図である。
【図2】図1に示した歯ブラシの先端部分の構成を示す断面図である。
【図3】発光毛及び非発光毛の配置の様子を示した図である。
【図4】発光毛の先端部を拡大して示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る歯ブラシの先端部分の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る歯ブラシの先端部分の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1,40,50…歯ブラシ、3…毛材、3a…基部、3b…先端部、4…光源、5…光結合部(結合手段)、16…支持体、21…反射壁、31…発光毛、32…非発光毛、41…延長部(結合手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体に支持され、一定の外径を有する基部と、先細りの先端部とを有する毛材と、
波長350nm〜450nmの青色光を発生させる光源と、
前記光源で発生した前記青色光を前記毛材に結合させる結合手段とを備え、
前記毛材は、前記支持体から突出する部分の長さが不均一となる部分を有していることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記毛材は、
前記結合手段によって前記青色光が結合される発光毛と、
前記結合手段によって前記青色光が結合されない非発光毛とを含み、
前記非発光毛は、前記発光毛の周囲を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−119118(P2009−119118A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298056(P2007−298056)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】