説明

歯付ベルト

【課題】ベルト幅を広げることなくベルト強力を向上させる為に、心線のフィラメント本数を増やすことを目的とする。
【解決手段】長手方向に沿って複数の歯部を有すると共に、長手方向に沿って並列した複数の心線5を有する歯付ベルト1において、前記歯部の歯ピッチ3が20mmであり、前記心線5の直径が1.5〜1.7mmであって、49本のフィラメント7よりなり、該スチールコードは7本のフィラメント7を束ねたストランド9の7本からなる歯付ベルト1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送用歯付ベルトであって、1tから2tの高荷重の搬送物を搬送する歯付ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歯付ベルトの心線として、特許文献1にあるように、直径0.04mmないし0.20mmの最多28本のフィラメントからなるスチールコードを使用していた。しかし、最多28本のフィラメントを使用しても、1t〜2tの重量を有する重量物を搬送するには、ベルト強度が不足していた。
【0003】
【特許文献1】特開平4−307146号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような問題点を改善するものであり、ベルト幅を広げることなくベルト強力を向上させるために、心線のフィラメント本数を増やすことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本願請求項1記載の発明は、長手方向に沿って複数の歯部を有すると共に、長手方向に沿って並列した複数の心線を有する歯付ベルトにおいて、前記歯部の歯ピッチが20mmであり、前記心線の直径が1.5〜1.7mmであって、49本のフィラメントよりなり、該スチールコードは7本のフィラメントを束ねたストランド7本からなる歯付ベルトである。
【発明の効果】
【0006】
本願請求項1記載の発明では、前記歯部の歯ピッチが20mmであり、前記心線の直径が1.5〜1.7mmであって、49本のフィラメントよりなり、該スチールコードは7本のフィラメントを束ねたストランド7本からなる歯付ベルトであることから、心線のフィラメント本数を多くすることによって、ベルト幅を広げること無しにさらに心線乱れの少なく強度の大きいベルトとすることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の歯付ベルト及び駆動プーリの全体図であり、図2は図1のA‐A断面図である。図3は歯付ベルト強化用のスチールコードの断面図である。
【0008】
図1及び図2で、本発明の歯付ベルト1のベルト歯形状は台形歯であり、歯ピッチ3は20mmとなっている。又、平面内に互いに沿って並んでいる数本のスチールコードで強化している。スチールコードは本質的に該歯付ベルト1の長手方向に沿って並んでおり、図3に示すように、心線5の直径が1.5〜1.7mmであって、7本のフィラメント7を束ねたストランド9が7本からなるスチールコードであって、合計49本のフィラメント7からなることが好ましい。
【0009】
上記歯付ベルト1がポリウレタンのようなポリマーより成るときは、スチールコードは亜鉛あるいは亜鉛合金例えば亜鉛‐アルミニウムあるいは亜鉛‐ニッケルのような耐腐食性コーティングで被覆される。
【0010】
上記歯付ベルトがゴムより成るときは、スチールコードは所望により、ゴムに接着する黄銅、銅、青銅、あるいは銅含有錯体(2成分あるいは3成分合金)のようなコーティングで被覆されるのが好ましい。
【0011】
ここで用いられる熱可塑性エラストマーは主として1分子中に2個以上の活性水素を有するポリエステルポリオール、ポリアミドポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等から選ばれたポリオールの1種又は2種以上の混合物と、多官能イソシアネートとを等モルに近い割合で反応させて得られる直線状の熱可塑性ポリウレタンである。具体的には、ポリエステル系(デュポン商標名:ハイトレル、東洋紡商標名:ペルプレン等)、ポリアミド系(ダイセル商標名:ダイアミド‐PAE)の各熱可塑性樹脂等であってもよい。又、エチレン‐α‐オレフィンであってもよい。
【0012】
又、熱可塑性エラストマー中には、滑剤、加水分解防止剤、酸化防止剤を添加しており、ベルトの品質向上が図られている。ここで使用される滑剤としては、脂肪族エステルタイプの潤滑油、(例えば、ジ(2‐エチルへキシル)アセレート(acelate)、ペンタエリスリトールテトラカプロン酸エステル)、動物及び植物油(例えば、アマニ油、ファット、獣脂、ラード、食用塊根油、たら肝油、ヒマシ油、パーム油、トウモロコシ油、綿実油)炭化水素材料(例えば、ガソリン、ミネラル油、燃料油、乾性油、切削液、ろう、樹脂及びゴム)、脂肪酸(例えば、石鹸)等である。
【0013】
又、酸化防止剤としては、通常、フェノール系化合物が用いられており、なかでもテトラキス‐[メチレン‐3‐(3´,5´‐ジ‐t‐ブチル‐4´‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール‐ビス‐[3‐(3‐t‐ブチル‐4´‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス‐(3,5‐ジ‐t‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート等のヒンダードフェノール化合物がよく用いられている。
【0014】
又、歯付ベルト1中の心線5としては、7本のフィラメント7を束ねたストランド9を7本、つまり49本のフィラメント7からなる直径1.5〜1.7mmのスチールコードを用いる。
【0015】
次に、本発明のベルトの第一の製造方法を図面に基づいて説明する。図4は、熱可塑樹脂製ベルトを製造する為の一連の装置の概略図である。本発明の歯付ベルトは、ベルトの長手方向に沿って所定ピッチで列設された複数の歯部2を有する歯付ベルト1である。図4において歯付ベルトの製造装置27は、成形部29と、心線繰り出し部31と巻取り部33とを有しており、成形金型ロール35に樹脂を流しながら、心線5を成形金型ロール35に巻き付け歯付ベルトを成形するようになっている。
【0016】
成形部29は、大径の成形金型ロール35と、4個のロール36〜39と、スチールバンド17とを有している。成形金型ロール35は、その外周に所定のピッチで歯形が形成されている。4個のロール36〜39は、成形金型ロール35の周りに配設され、各ロール36〜39間には、スチールバンド17が張設されており、成形金型ロール35と協働して共に回動するようになっている。これにより、成形部29は、成形金型ロール35とスチールバンド17の圧力により心線5を樹脂に沿わせながら回転し、歯付ベルトを成形するようになっている。
【0017】
心線5は、心線繰り出し部31から成形金型ロール35に繰り出され、成形金型ロール35上で、該ロール35の円周の略1/4以上載置され保持されるようにする。さらに溶融樹脂が押出機41から押し出されることで、心線5を内部に埋設し、歯付ベルト1の形状に成形される。
【0018】
次に、本発明のベルトの第二の製造方法を図面に基づいて説明する。図5、図6及び図7は熱可塑性エラストマー製無端歯付ベルトの製造方法の製造工程を示す概略側面図である。
【0019】
図5は予め成形したエンドレス状の熱可塑性無端歯付スリーブからなる予備成形体11を嵌め込んだ後で軸間距離を設定する第一工程である。ここで使用する成形装置で使用する一対の歯付モールド10、12は、80〜250°Cに加熱かつ回転可能で軸間距離を調節できるように配置され、図7に示すように各歯付モールド10、12の両端部にフランジ13を全周にわたって設け、該フランジ13と周面の周方向に所定のピッチで交互に形成した凹部14と凸部15とによって所定形状のキャビティ16を形成している。
【0020】
上記歯付モールド10は駆動軸に連結して固定され、他方歯付モールド12は従動側で移動可能であり、歯付モールド10との間の移動距離を調節できる。
【0021】
スチールバンド17は歯付モールド10と接するように案内ロールR2、緊張ロールR1、R3の移動によって歯付モールド10とを必要に応じて圧接して転動するように配置されている。
【0022】
予備成形体11は、熱可塑性エラストマーを押出機により押出されたもので、ノーズ高さに相当する厚みの歯底部19と歯部21とを具備し、所定長さにエンドレスされた熱可塑性無端歯付スリーブである。この予備成形体1が軸間距離の調節された一対の歯付モールド10、12に嵌め込まれると、歯付モールド10を移動して軸間距離を調節する。
【0023】
その後、該緊張ロールR1の上下方向への移動、及びR3の左右方向への移動によりスチールバンド17を1〜6kg/cmに加圧調節し、歯付モールド10、12に嵌め込まれた回転中の予備成形体11を該スチールバンド17の歯付モールド10との転動によって加圧する。
【0024】
上記の予備成形体11は、例えば図5に示す装置を使用して作製することができる。この作製方法では両側部にノーズ高さに相当するフランジ13を設けて形成したキャビティ16を有する歯付モールド10を約60〜150°Cに加熱し、この歯付モールド10に押出機のノズルから押出され約175〜195°Cに加熱された熱可塑性ウレタンを連続注型し、緊張ロールR1を移動してスチールバンド17に加圧しながら歯付シート体(図示せず)を作製し、所定長さに切断後、歯付シート体の端部を突合せ、加熱ヒータにてエンドレスジョイントを行うことにより、ノーズ高さに相当する厚みの歯底部19と歯部21とを備えた無端歯付スリーブの予備成形体11に仕上がることができる。
【0025】
図6は予備成形体11の表面にスチールコードからなる低伸度、高強力のロープからなる心線5をスピニングしている第2工程を示すものであり、前記第1工程で歯付モールド10、12に設置された予備成形体11の表面に心線5をスピニング装置(図示せず)のテンションロール23を介してスピニングテンションが心線切断強力の(1/25〜1/10)倍、スピニング速度が10〜600rpm、所定のスピニングピッチで螺旋状に巻き付けて心線付き歯付スリーブ25を形成する。
【0026】
続いて、図7は心線付歯付スリーブ25に背部を積層して一体化する第3工程であり、前記第2工程で形成された心線付歯付スリーブ25の背面に、背部厚に溶融代を加味した所定厚みの熱可塑性エラストマーシート27を押えロールR4を介して巻き付け、加熱ヒータ20で移動中の心線付歯付スリーブ5と熱可塑性エラストマーシート27の積層体を挟み込み、180〜200°Cの範囲で加湿しながら回転中の歯付モールド10とスチールバンド17との間に送り込み、加熱、溶融後に加圧して熱可塑性エラストマーシート27と心線付歯付スリーブ5とを一体化する。熱可塑性エラストマーシート27のジョイントは段差のないよう突合せで行うことが好ましい。
【0027】
その後、自然又は強制冷却固化して目的とする無端歯付ベルト1が得られる。尚、歯付モールド10、12の両側部には図5に示す如くノーズ高さと心線径と背厚高さより0.5〜2.0mm大きいフランジ13が設けられている。
【0028】
以上は、第3工程として心線付歯付スリーブ25に熱可塑性エラストマーシート27を積層一体化して無端歯付ベルト1を製造した実施例であるが、その他に心線付歯付スリーブ25上に押出機のノズルから175〜195°Cに加熱された熱可塑性エラストマーを直接注入し、1〜3kg/cmに加圧して背部を形成しながら心線付歯付スリーブ25と一体化した後、自然または強制冷却こかして目的とする無端歯付ベルト1を得る方法もある。
【実施例】
【0029】
次に、具体的実施例を記載する。上記の第一の製造方法にてベルトを製造した。実施例のベルトは、ベルト幅が25mm幅、ベルト周長が2500mm、歯形状が台形歯、歯ピッチが20mmであるATL20ベルトを使用した。心線は、7本のフィラメントを束ねたストランド7本からなり、49本のフィラメントからなる直径1.7mmのスチールコードを使用した。心線ピッチは2.0mmであった。このベルトを図8に示すような試験機に懸架し、35歯のプーリを80rpmで往復回転させ、従動プーリ側に5000Nの荷重を掛け、120時間走行後の残存強力保持率を測定した。その結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
次に、従来例として、同様の製造方法で製造し、同サイズのベルトで、心線のみ7本のフィラメントを束ねたストランド5本からなり、35本のフィラメントからなる直径1.2mmのスチールコードを使用した。心線ピッチも実施例と同じものであった。従来例のベルトを実施例の試験装置で同じ条件で往復回転させ120時間走行後の強力保持率を測定した。その結果を表1に示す。表1から、実施例のベルトは従来例に比べて、120時間走行後の強力保持率が高く、5000Nの荷重のものを往復搬送するのに十分な強力を長時間有することがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の歯付ベルト及び駆動プーリの全体図である。
【図2】図1の2-2断面図である。
【図3】歯付ベルト強化用のスチールコードの断面図である。
【図4】本発明の歯付ベルトの第一の製造方法に使用される一連の装置の概要を示す図である。
【図5】本発明の歯付ベルトの第二の製造方法の第1工程を示す概略側面図である。
【図6】本発明に係る歯付ベルトの第二の製造方法の第2工程を示す概略側面図である。
【図7】本発明に係る歯付ベルトの第二の製造方法の第3工程を示す概略側面図である。
【図8】図6のA‐A部分拡大断面図である。
【図9】強力保持率比較用の試験装置の概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1 歯付ベルト
2 歯部
3 歯ピッチ
5 心線
7 フィラメント
9 ストランド
10 歯付モールド
11 予備成形体
12 歯付モールド
13 フランジ
14 凹部
15 凸部
16 キャビティ
17 スチールバンド
19 歯底部
21 歯部
23 テンションロール
25 心線付歯付スリーブ
27 製造装置
29 成形部
31 心線繰り出し部
33 巻取り部
35 成形金型ロール
36〜39 ロール
41 押出機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って複数の歯部を有すると共に、長手方向に沿って並列した複数の心線を有する歯付ベルトにおいて、前記歯部の歯ピッチが20mmであり、前記心線の直径が1.5〜1.7mmであって、49本のフィラメントよりなり、該スチールコードは7本のフィラメントを束ねたストランド7本からなることを特徴とする歯付ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−120623(P2007−120623A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−313701(P2005−313701)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】