説明

歯周ポケット深度測定器および歯周ポケット深度測定システム

【課題】検査者の個人差による結果のばらつきを抑制するとともに安全性の高い歯周ポケット深度測定システムを実現する。また、現在主に手動で行われている歯周ポケット検査に近い感覚で使用でき、自動記録や画像の表示などにより使いやすいシステムとする。
【解決手段】ばねによるプローブの挿入力制御において、所定の最大値を超える力が発生しない構造にすることにより、力の加え方に個人差があっても確実に所定の挿入力を加えることができるとともに、患部に危険な力が加えられないようにすることができる。また、撮像系により得られる画像情報にセンサーおよびスイッチなどの付加情報を付加してコンピュータに転送することにより、検査に必要な画像を確実に選別でき、かつ、この画像を管理および表示できる機能を有することにより、治療経過の確認や患者への説明も行いやすいシステムとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯科医療分野において、歯周ポケット深度測定を実行するためのハードウェアおよびソフトウェアに関する。

【背景技術】
【0002】
最近、日本では高齢化社会の進行の影響もあり、歯周病の患者が増加している(非特許文献1(http://mhlab.jp/malab_calendar/2006/12/17_16566.html ))。また歯周病は、高齢者のみならず若年層でも患者数を増やしている傾向があり、一度患うと長期間にわたる治療が必要となることから、早期に検査を行い、病状を的確に把握することが必要である。

【0003】
歯周病の状態を把握するために重要な検査の一つとして、歯周ポケット深度測定がある。歯周ポケット深度測定は、歯と歯茎の間に生じる歯周ポケットの深度を専用の細いプローブで測定するものであり、各歯に対し2〜6か所の測定を実行する。この検査はプローブを持つ検査者の手の感覚に頼って実行されることが通常であるが、検査に求められるプローブの挿入力は20〜30g重程度と決して大きくはないため、専用のプローブで秤を押して一定の力を加えられるように訓練する必要がある。このように現在の検査方法は手先の感覚に頼っているために、同じ患部に対しても検査者によって検査結果や診断結果がばらつくことが報告されている(日本歯科医学教育学会雑誌Vol.15, No.2, pp.322-326)。

【0004】
このような感覚の個人差による歯周ポケット深度測定結果のばらつきを抑制するために開発および販売されている製品も数多く存在する。その一例としては、歯周ポケットに挿入するプローブにばねが被されたスリーブ構造となっており、このばねの収縮によってプローブの挿入力を検出し、その際のばねの変位を検出することで歯周ポケット深度を測定する方式のものがある。この製品の原理に関しては、次の特許文献に詳しく説明されている。
【0005】
上記の製品は検査結果の記録まで含めたシステムとなっているが、このように歯周ポケット内に潜り込む探針部と、それをカバーするスリーブ構造体との差異をもって歯周ポケット深度を測定するとともに、ばねによって力を調整するという機構単体では、これ以前にも特開平10−165425等で述べられている。

上記の製品は検査結果の記録まで含めたシステムとなっているが、このように歯周ポケット内に潜り込む探針部と、それをカバーするスリーブ構造体との差異をもって歯周ポケット深度を測定するとともに、ばねによって力を調整するという機構単体では、これ以前にも次の特許文献で述べられている。
【0006】
また、歯周ポケット深度測定は目視で行うものとして、検査結果のばらつきを抑制する目的に限定して工夫されているものも存在する。検査結果のばらつきの最大の要因は、プローブ挿入力の個人差によるものであるから、これを可能な限り抑制できればよい。例えば以下の特許文献によれば、プローブ基部の構造を工夫することにより、プローブに加えられる力が一定値に到達すると、それ以降はプローブを押し続けても一定値を超える力は加えられないようになっている。
しかしながら実際に上記の文献に従った方法で歯周ポケット測定器を製作すると、途中からばねによる反発力ではなくばね表面とプローブ末端部との摩擦力が支配的となるため、厳密に定められた力を加えることは難しい。また、プローブを一定以上押していくと、途中で外部ケースにぶつかるため、そのままではさらに大きな力が出力されることになるが、その解決策については明言されていない。
【0007】
このように一定の挿入力が検査部位に加えられるようにすることは容易ではないが、安全のために検査に必要な挿入力が加えられたことを検査者あるいはシステムが容易に感知できるように工夫されているものも存在する。例えば次の特許文献では、検査部位に接触するプローブの先端に弾性体を利用し、力が加えられた際の一定の変形による光学特性の変化を検出することにより、所定の力が加えられたことを認識できるようになっている。
また、より単純な構成で、一定の力が加えられたときに発生するプローブの変位により、機械的に接触音あるいは振動が発生し、これをもって検査者が必要な力を加えられたことを知ることができるように工夫されているものも存在する。例えば、次の特許文献にて開示されているものは、実際に製品として利用されている。
ただし、特許文献4(特開2007−152004)に開示されている方法を利用するためにはプローブを光伝導性に優れた透明体で形成しなければならず、目視では裏側の物体が見えるため測定しにくくなることが考えられる。また、特許文献5(特願平9−301178)に開示されている構成では、通知のための振動が非常に微弱であり、騒音も大きい歯科医院の環境では確実に通知できるとは限らない。
【0008】
これまで、歯周ポケット深度測定において、主に検査に必要とされるプローブ挿入力の制御法に関する技術について例を挙げてきたが、歯周ポケットの深度測定が最終的な目的である以上、測定の自動化あるいは高精度化を目的とした発明も多々存在する。前述のとおり、プローブの変位が機械的に発生するものであれば、その変位を読み取って深度を求めることはそれほど困難ではない。
【0009】
しかしながら、このように機械的な変位を利用してポケット深度を測定しようとすると、ポケットの底部に接触する部位と、ポケット深度の原点となる位置(例えば歯茎の上端)を確保する部位とが必要となることから、プローブを単純に目視で確認する方法と比べて小型化しにくい上に、プローブの先端部がスリーブ構造の中に隠れて見えなくなるなど、扱いやすさの点で問題がある。これを解決するために、機械的にポケット深度を読み取るのではなく、光学的に読み取る方式について述べられているものもある。比較的古いものでは、次の特許文献を挙げることができる。
【0010】
この文献では、ポケットプローブに光を伝導させ、プローブの計測部から放出される光量をフォトダイオードで検出する方式が開示されている。プローブの一部が歯周ポケット内に潜り込んでいる場合、その長さに応じてフォトダイオードで検出される光量が変化するため、この光量の変化をもって歯周ポケット深度を測定することができるというものである。この方式であれば、プローブには特別な形状を求められることがなく、極めて単純な構成で歯周ポケット深度の測定を行うことが可能になる。
【0011】
最近ではフォトダイオード素子を二次元的に配列させたフォトダイオードアレイ(イメージセンサー)が安価に利用できるようになったため、イメージセンサーとポケットプローブを一体化し、プローブを撮影して得られた画像を解析することにより、歯周ポケット内に潜り込んでいないプローブ部分の長さを求め、特許文献6(米国特許 第4,883,425号)に示されている原理と同様に歯周ポケット深度を測定できるという方式も見られるようになった。例えば以下の特許文献7(特開平11−226035)では、歯科用の治療器あるいは測定器の必要箇所を、一体化したカメラで撮影するシステムについて幅広く述べられているが、その一例として、歯周ポケットプローブを利用することも提案されている。さらに、以下の特許文献8(特開2001−170088)および特許文献9(特開2007−152004)では、具体的にプローブに目盛を付与し、これをカメラなどの撮像手段によって撮影し、画像解析を利用して目盛を読み取ることにより、自動的に歯周ポケット深度を測定できる構成について述べられている。
【非特許文献1】http://mhlab.jp/malab_calendar/2006/12/17_16566.html
【非特許文献2】日本歯科医学教育学会雑誌Vol.15, No.2, pp.322-326
【特許文献1】特開平10−165425
【特許文献2】特願平3−329737
【特許文献3】特開2007−82609
【特許文献4】特開2007−152004
【特許文献5】特願平9−301178
【特許文献6】米国特許 第4,883,425号(1989年)
【特許文献7】特開平11−226035
【特許文献8】特開2001−170088
【特許文献9】特開2007−152004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
既に述べたように、検査者の個人差によって測定結果がばらつくのでは検査としての意味をなさないことから、とくに練習の繰り返しや特別な技術を要することなく、均一な結果が得られる歯周ポケット深度測定器を実現させることが、本発明の第一の課題である。そのためには、プローブ挿入力が適切に加えられることを保証する手段とともに、必要な挿入力が加えられたことを検査者自身に通知し、安全に検査を終了させる手段が必要となる。
【0013】
第一の課題である結果の均一性および安全性は検査目的の測定器としては必然とされる要件であるが、これらの要件を満たした上で、可能な限り使用しやすい検査システムとすることが本発明の第二の課題である。具体的には、現在手動で行われている検査にできるだけ近い感覚で使用できるということである。プローブに挿入力を正確に加えることのみを考慮すれば、何らかの機械的駆動力を利用して一定の力を加えるようにする方法でもよいが、これでは従来の検査方法とは全く異なる使用方法となってしまうため、使用法に慣れるまで練習する必要がある。また、目視では問題ないと思われる部位には手早く力を加え、慎重に行うべきと思われる部位にはゆっくりと力を加えるというような感覚的な動作も、機械的に力を加える方式では難しい。特許文献を挙げて説明したように、挿入力の検出にスリーブ構造を用いれば手で加えた力が検出できるため、現在一般的な検査感覚に近い状態で使用できるが、先端部が見えず使いにくくなるなどの問題点がある。本発明の歯周ポケット深度測定器では、手で使用するプローブとほぼ同形の単純な構成で力の検出が実行できるようにする。さらに、市販されている歯周検査システムでは、プローブが適切に挿入されたことを検査者が自ら判断し、フットペダルを踏むことにより測定値が記録される方式となっているものも多いが、歯周ポケット深度測定では最大200箇所程度の検査スポットが存在するため、その全てに対してフットペダルを踏んで記録していくという作業は非常に煩わしいものである。このような問題点を考慮し、本発明の歯周ポケット深度測定システムでは、測定結果の記録も特別な操作を必要とせず、ほぼ自動的に実行されるようにすることを目標とする。
【0014】
さらに本発明の第三の課題として、画像を最大限に利用できるようにする。検査の様子がわかる動画を表示する機能や、それとともに現在検査すべき部位など検査の補助的な情報をわかりやすく表示する機能を有するシステムについては、先に紹介した特許文献7(特開平11−226035)において述べられているが、このような撮像から表示に至る機能自体は歯科検査システムに限らず、医用検査システムにおいて広く行われていることである。本発明の歯周ポケット深度測定システムにおいても、撮像手段によって得られた動画情報を表示する機能は基本機能として採用するが、動画情報を常に取得していることを利用して、動画情報を測定の手段としても活用する。特許文献7〜9では、画像情報を利用してプローブを解析することが述べられているものの、実用的には検査に必要な挿入力が加えられた瞬間の画像情報を解析しなければ正しい検査が行われていることが保証できない。そのために必要なプローブ挿入力の検出機構と画像情報との同期方法については特許文献7〜9では具体的に述べられていないため、実用に耐え得る構成を実現するには不十分である。
【0015】
さらに、歯周ポケット深度測定に必要な画像を得るためには、単純にポケットプローブとカメラを一体化させるだけでは不十分である。例えばプローブの計測部(歯周ポケットに潜る部分)を正面からカメラなどの撮像系で撮影する配置が最も単純であるが、歯周ポケットは最大で12mm程度まで測定する必要があり、奥歯で10mmを超える深さに達すると、プローブの計測部と撮像系との間に前歯や唇などの障害物が入り込むため、プローブが撮影できなくなってしまう。特許文献6〜9では、具体的なプローブと光学系(撮像系)との位置関係が明示されていないため、このような問題点が残されている。上記の単純な配置では、検査者が検査部位を目視する方向と、測定器に組み込まれた光学系が検査部位を捉える方向とが一致しないため、検査者が目視で適切に測定できたと考えていても、実際には適切な画像が得られないという場合が容易に発生しうるのである。本発明の歯周ポケット深度測定システムでは、これらの検査画像取得が困難な状況に対しても適切に対応し、実用性のあるシステムを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、本発明の歯周ポケット深度測定システムを用いて、前述した各課題を解決する手段について詳述する。
まず、第一の課題である結果の均一性および安全性の実現方法について説明する。同一の検査部位に対して検査結果がばらつく最大の要因は、検査時の力の加え方の個人差によるものであることから、検査者がプローブの挿入のために力を加えていく過程において、検査に必要な挿入力に到達した瞬間をできる限りわかりやすく検査者に通知することが重要である。所定の挿入力に到達した状態以降は、そのまま一定の力が加えられるようになっていてもよいが、これは特許文献3(特開2007−82609)を引用して述べたように、決して容易なことではない。検査者が手に持って使う測定器である以上、機構が複雑になることにより重量化や大型化を招いてしまうのでは意味がないため、本発明の歯周ポケット深度測定器では、比較的単純な構成で、所定の挿入力に到達した瞬間を通知する方式を採用するものとする。
【0017】
そのためにまず本発明の歯周ポケット深度測定器は、プローブの挿入力を最大値で一定に保つのではなく、最大(極大)時に所定の力が加えられるようにする。すなわち、検査部位に加えられるプローブの挿入力が、プローブの変位量が所定の値に到達した際に最大値または極大値となる構造を有する歯周ポケット深度測定器とする。この場合、最大値または極大値となる変位を超えた状態ではプローブを押し続けても検査部位に加えられる力は減少していくが、負の力(プローブを引き上げようとする力)が作用するわけではないため、挿入したプローブが抜けることはなく、検査は適切に実行される。このような機能を実現するための具体的な構成としては、プローブまたはプローブの固定具が回転機構を有するとともにばねと接触しており、プローブの回転変位に応じてばねが変形することによって検査部位に加えられるプローブの挿入力が制御されるようにしておく。ばねとしてはねじりばね、板ばねなどを使用することができる。このとき、プローブの回転変位に応じて、プローブまたはプローブの固定具とばねとの接触点が摺動することによって、ばねの変形量が変化するような構造にしておく。特許文献3(特開2007−82609)で開示されている方式もプローブの末端とばねが点接触している点では同じであるが、特許文献3(特開2007−82609)の方式ではプローブの変位方向とばねの変形方向(ばねの反発力の方向)が直交しているため、ばねの変形が最大量に到達した後は、ばねの反発力はプローブの変位を元に戻そうとする作用をもたず、ばねによるプローブ挿入力の制御ができなくなる。本発明では後述するように、プローブの変位方向とばねの変形方向は同一であり、ばねの反発力により確実にプローブ挿入力を制御することができる。
【0018】
さらに、プローブ固定具とばねとの接触点が摺動する過程において、ばねの変形量が最大値または極大値をとるような構成にしておけば、このときに最大の力が検査部位に加えられることになる。具体的に説明すると、まずポケットプローブの先端で検査部位を押していく過程でプローブに回転力が作用するため、接触しているばねが押されて変形する。このような回転機構を用いると、上記の接触点が摺動していく過程において、回転軸と接触点とを結ぶ線分と、ばねの接触点を含む面(線分)とが垂直となったときにばねの変位が最大となり、プローブ挿入力も最大化(または極大化)される。したがって、このときのプローブ挿入力の最大値または極大値が、歯周ポケット深度測定に適した値となっているように調整しておくことにより、とくに練習をせずとも一定量以上(挿入力が最大化または極大化される状態)までプローブを押しさえすれば、検査に最適の力が容易に加えられることになる。以上のような構成であれば、プローブ系に回転軸を設けることと、それと点接触するばねを設置すればよいだけであるから、極めて単純な構成で、所定の挿入力を確実に加えることができるとともに、患部を傷つけるような危険な力は加えられないようにすることができる。なお、歯周ポケット深度測定に適した力は20g重から30g重の間の値であるとされているので、このような力が最大値または極大値になるようにばねを選定もしくは調整すればよい。
【0019】
なお、センサーを利用してポケットプローブが一定量変位したこと、すなわち所定の挿入力が加えられたことを検出できる構成を利用することも可能であり、この場合には、プローブの挿入力の最大値または極大値は検査で定められている力ではなく、安全上許容できる最大値となるように調整されていてもよい。安全上許容できる最大値とは、例えば35g重から70g重の間の値として定めることができる。この場合には、プローブの変位量が所定の値に到達した際に、ブザーを鳴動させることにより使用者に通知を行うと便利である。上記のとおり、実際には通知を行わずとも安全上許容できる力の範囲を超える大きな力は加えられないようになっているが、歯科医院での大きな騒音にも妨害されない明確なブザー音で通知されれば、検査が問題なく実行されていることを検査者および患者も確認することができる。
【0020】
以上のように、物理的に加えられる最大の力が検査で定められている挿入力となるように調整されているか、または、所定の挿入力が加えられたことをプローブの一定量の変位としてセンサーで検出して通知することにより、検査者が所定の挿入力を適切に検査部位に加えることが容易になり、検査者の力の加え方の個人差による検査結果のばらつきが抑制されることになる。なお、ここまで説明した内容では、プローブから検査部位に加えられている挿入力はプローブの変位量(ばねの変形量)をセンサーで検出することにより求められることになっているが、例えばセンサーとして圧力センサーを用いれば、プローブ自体はほとんど変位せずとも力の大きさを検出することは可能である。このような構成も実用上は考えられ、圧力センサーとしては例えば圧縮率により導電性が変化する弾性体を利用した導電センサーや気圧センサーなどを挙げることができる。本発明でこちらの方式を利用しないのは、ゴムなどの弾性体は精度や耐久性および応答速度の面でやや不安があるためであり、状況によっては十分に実用に耐えうるものである。
【0021】
上記の構成のみの場合、所定の挿入力を確実に加えることはできるものの、歯周ポケット深度の測定は検査者が目視で行わなければならないため、プローブにも目盛が付与されている必要がある。歯周ポケット深度測定においては、3mmおよび6mmの深度を境界として治療の方針が変化することが一般的であるため、これらの位置には目盛線あるいは目盛パターンの境界線が存在することが好ましい。ただし後に述べるように、プローブの長さを目視ではなく画像解析で求められる場合には目盛は必要ない。
【0022】
実用的には、歯周ポケット深度測定器とコンピュータを組み合わせ、測定器により得られる情報を解析、表示、管理できる歯周ポケット深度測定システムとする方が利用価値は高くなる。本発明の歯周ポケット深度測定システムは主に、検査者が手に持って被検査者の口腔内の必要箇所を検査するための測定器と、測定器とケーブル接続されたコンピュータと、適宜必要な情報を表示するためのディスプレイと、測定器との情報通信を行うためにコンピュータにインストールされたソフトウェアで構成される。測定器には小型カメラと光源が組み込まれ、検査に必要な情報を動画または静止画として取得することが可能である。歯周ポケット深度測定器には、検査ツールとして歯周ポケットに挿入するための樹脂プローブが装着される。この樹脂プローブは被検査者の出血部位に接触する可能性が高いため、原則的に滅菌済みのディスポーザブルなものとし、検査者が簡単に着脱できるようにしておく。
【0023】
ここで、本発明の歯周ポケット深度測定システムの全体構成について、図1を用いて説明する。測定器101は検査者が手に握り、患者の必要箇所を検査するためのものであり、実際に検査箇所に接触させ力を加えるためのプローブ102が取り付けられている。測定器101には、検査箇所を撮影し画像データとして記録するためのカメラおよびレンズが内蔵されており、得られた画像データは通信ケーブル103を通じてコンピュータ104に送信される。通信ケーブル103としてはUSBケーブルを用いるのが好適であるが、無線通信機能を組み込むことでケーブルを使用せずにデータ通信を行う構成もありうる。コンピュータ104では、受信した画像データをディスプレイ105に表示する。実際には、現在検査中の歯番の表示や、既に検査が完了した箇所の情報なども合わせて表示することにより、検査を進めやすくする、あるいは誤診を防ぐといった機能も有する。なお、同じ目的の検査であっても、患者ごとに検査の内容は異なる(例えば、より症状の重い患者に対しては検査部位を多くするなど)ため、その患者に対して実行すべき検査の情報はコンピュータ104にインストールされたソフトウェア側が把握している。したがって、検査の終了音を鳴らす、あるいは撮影モードを変更するといった指示は、通信ケーブル103を通じてコンピュータ104から測定器101に送信される必要がある。また、一人の患者に対して歯周ポケット深度測定以外にもさまざまな検査を実施するのが通常であるため、システム(ソフトウェア)としてもさまざまな測定器および治療器を接続でき、患者データを一括管理できることが好ましい。複数の測定器に応じて使用者が対応するプログラムを起動するのは煩わしい作業であるため、測定器をコンピュータに接続すると同時に対応するプログラムが自動的に起動される必要がある。そのために、歯周ポケット深度測定器も含めて、システムに接続可能な複数の測定器がそれぞれ固有の識別コードを有し、システムに接続されると自動的に当該識別コードを送信することにより、当該測定器に対応する動作プログラムが自動的に起動される機能を有する歯周検査システムとすることが望ましい。
【0024】
なお、患者個人の情報や治療方針など、機器に関係なく検査者が手動で入力する必要のある情報は、一般的なキーボード106やマウス107といった入力デバイスを使用して入力される。実際に検査を行う場所では、このような大きな入力デバイスを設置するスペースがないことも多いため、検査中に数値を手入力したい場合や特定の操作を選択したい場合には、数字キーや方向キーのみを有するキーボードを利用してもよい。なお、最近の歯科用チェアには予めコンピュータ、ディスプレイ、マウスなどが付属してシステム化されているものも多いので、このようなシステムにソフトウェアをインストールし、測定器101を接続して使用することも可能である。
【0025】
前述のとおり、本発明の歯周ポケット深度測定器は、歯周ポケット深度を測定するためのプローブと、当該プローブを用いて検査を実行されている部位を撮影する機能を有する構成も採用しうる。撮影手段としては小型のCMOSカメラあるいはCCDカメラを使用し、測定器内部に組み込む。特許文献7〜9に示されているように、検査部位の画像情報が得られる場合には、これを解析することによって検査値を得ることが原理的には可能である。ただし、画像解析により検査を正確に実行するためには、所定の挿入力が加えられたときの画像を正確に取得できなければならない。取得した画像の中にプローブおよび検査部位が映っていても、そのときの挿入力をシステムが認識できなければ、検査部位にプローブを挿入している途中の画像や検査部位からプローブを引き抜こうとしている途中の画像である可能性もあるからである。既に説明したように、本発明の歯周ポケット深度測定器は、検査に必要な挿入力がプローブによって加えられたことをセンサーで検出する機能を有する構成も採りうる。したがって、検査部位に加えられるプローブの挿入力が所定の値に到達した際に、検査部位の撮影を自動的に実行する機能を有することは、センサー情報を利用すれば可能であり、これによって検査に使用できる適切な画像を取得することができる。
【0026】
なお、本発明の歯周ポケット深度測定器に組み込まれるCMOSカメラあるいはCCDカメラは、毎秒30回程度の画像取得を常に繰り返し、コンピュータに転送する機能を有している。これらの画像を受信したコンピュータは、ディスプレイに連続的に画像を表示することにより、検査の様子を動画情報として検査者あるいは患者に見せることができる。このように画像取得を高速で繰り返すカメラであるから、解析に用いる画像、すなわち所定の挿入力が加えられた瞬間の画像も、センサーと連動して瞬間的に撮影されるのではなく、常にセンサーの状態をモニターしておき、所定の値に到達した瞬間の画像を選別するという方法を利用した方が容易である。厳密に言えばセンサーが所定の値に達した瞬間の画像とはならないが、毎秒30回の画像取得を行っていれば33ミリ秒という短い間隔で画像を得られていることになるため、実用的には問題なく正確な画像を選別できる。具体的な処理方法としては、33ミリ秒間隔で歯周ポケット深度測定器からコンピュータへ画像情報を転送する際に、画像を選別するために必要なセンサー情報も画像情報に付与してコンピュータへ転送する。一般的には画像情報を一度にコンピュータへ転送するのではなく、画像情報を一行あるいは一列ごとに分割して転送する方式が採用されているので、最初または最後の転送に付加情報の転送を追加し、この付加情報にセンサー情報も含めておけばよい。受信するコンピュータ側にとっては追加分だけ画像情報のサイズが拡大された形式となるが、ひとまず画像として一連の受信動作を行い、それから本来の画像情報と付加情報とに分離する処理を行えばよい。付加情報は各画像と同期しているため、コンピュータ側で付加情報に含まれるセンサー情報をモニターしていれば、所定の値に到達したときの画像を選別することができる。
【0027】
これにより、検査で所定の力が加えられたときの画像をシステムとして正確に取得し、解析することができる。これまでの説明で明らかなように、付加情報は画像情報のうちの一行分の情報量をもっているので、センサー情報のみではなく、スイッチ情報なども付加情報の中に含めておけば、スイッチを押したときの画像を選別して保存するという任意撮影動作なども実現することができる。このように、撮影機能により得られた画像情報にセンサー情報および/またはスイッチ情報を含む付加情報を付加してコンピュータに転送することにより、検査に必要な動作を実現することが、本発明の歯周ポケット深度測定システムの特徴である。このような画像情報に付加情報を追加して管理できるシステムは、センサーとして温度センサーや音声センサー、赤外線センサーなどを利用すれば、歯科検査に限らず、安全管理システムや防犯システムなどにも応用できるものである。なお、画像情報にセンサー情報を付加して転送するのではなく、画像そのものに実質的にセンサー情報を組み込むことも可能である。例えば、所定の力に到達した瞬間に画像の特定位置に特定の発光シグナルが入る構成にしておけば、その位置のみを常にモニターしておき、特定のシグナルが入っている画像のみを選別するという処理も可能である。
【0028】
検査に必要な画像を選別できれば、次にこれをどのように解析するかが問題となる。本発明の歯周ポケット深度測定器では、プローブと撮像機能(カメラ)がともに測定器内部に組み込まれているため、これらの相対的な位置関係はほぼ一定であり、撮影した画像のほぼ中央に必ずプローブが映っている。したがって、この撮影機能により得られた画像に含まれるプローブの長さを検出することにより、歯周ポケット深度を求めることができる。すなわち、画像の中にプローブが映っており、しかも撮像系との位置関係がほぼ一定であることから、画像上でのプローブの長さは目盛がなくとも一定の比率をもって実際の長さに変換することができる。歯周ポケット内に潜り込んでいる部分は画像に映らないことから、画像から検出されるプローブの長さは歯周ポケットの深度の分だけ短くなっている。元のプローブの長さは予めわかっているから、これらの長さの差分として歯周ポケット深度を求めることができる。以上のような動作を行えば、検査者が歯周ポケット深度を目視で測定する必要はなく、通常の検査と同様の感覚で検査部位を順にプローブで押していくだけで、解析からデータの記録まで自動的に実行される。したがって、第二の課題として挙げていた、日常的に慣れた感覚で使用可能な扱いやすいシステムとする目的も達成される。なお、特許文献8〜9ではプローブに付与された目盛を画像として読み取ることでプローブの長さが求められるとしているが、既に述べたように、プローブと撮像系との位置関係が固定されており、かつ、プローブの色彩が口腔内に存在する他の色彩と異なっており、明確にプローブ領域のみを画像から抽出できるのであれば、このような目盛は不要である。本発明の歯周ポケット深度測定システムでは、検査者が目で確認できるようにするためにプローブに目盛を付与することはあっても、画像解析自体には目盛を使用しない。また、プローブは樹脂のように力の加え方によっては曲がる可能性があるものを使用するため、画像の中でプローブが部分的に斜めに映る場合もありうる。この場合には画像の中でプローブ長を検出する方向が曖昧になる可能性もあるため、プローブ長ではなくプローブ面積を求め、この面積からプローブの長さを計算する方が誤差は小さくなる。すなわち、プローブの長さの検出は、画像情報に含まれるプローブの色彩であると判定できる画素数をカウントし、この画素数に基づいて行われる方式を利用すればよい。
【0029】
また、第三の課題として挙げていた検査結果を画像として保存することも、上記までの機能の中で既に実現されている。すなわち、プローブの一部が歯周ポケット内に潜り込んでいる画像を用いて深度の解析を実行するため、この画像をそのまま保存しておけば、結果的に患部の検査画像を保存したことになる。実用的には、撮影機能により取得された画像を保存するとともに、使用者の指示に応じて当該画像をディスプレイ上に再生表示する機能も必要である。例えば、検査結果を歯のイラストとともにディスプレイに表示する機能を有し、特定の歯や検査部位をマウスでクリックするなどして指定した場合には、それに対応する検査画像を表示するといった機能である。また、検査は治療の方針を決定する目的以外に、治療の効果を確認する目的で行われることも多いため、この再生表示機能は、異なる検査日時において取得された複数の画像について同時に実行できることも必要となる。これにより、それぞれの検査結果を数値のみでなく画像としても容易に目で比較でき、治療の効果などを確認することができる。これらの画像情報によるサポートにより、患者への治療方針や治療効果の説明を行うことも容易となり、患者も適切な判断をすることが可能になる。
【0030】
付け加えれば、これらの画像は測定器を適切に用いて取得された検査画像であるため、検査を実際に実施した証拠となるものでもある。現状では、実際に検査を実施していないにも関わらず、検査を実施したことにして医療費を不正請求するといった行為も問題となっているが、検査時の画像を証拠として保存することにより、このような不正行為を抑制することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の歯周ポケット深度測定器では、ばねを利用してプローブ挿入力が最大値または極大値をとる構成とし、センサーによるプローブ変位の検出を組み合わせることにより、とくに練習をせずとも正確に検査部位に所定の挿入力を加えることができる。これにより、検査者の力の個人差による検査結果のばらつきを抑制することができる。また、通常手動で行われている検査と同じ操作で扱えるため、使用しやすい測定器となっている。歯周ポケット深度解析には画像情報を利用するが、画像情報にセンサー情報などの付加情報を付加して管理しているため、検査に必要な画像を正確に取得することができる。また、画像を解析に利用することから、患部の画像も必然的に得られ、これを管理かつ必要に応じて再表示できるようにすることで、治療経過の確認や患者への説明なども容易に実行できるようになっている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の歯周検査システムを実施するための具体的な形態について、図を用いて説明する。
本発明の歯周検査システムは前述のとおり、プローブから検査部位に加えられる挿入力が一定値を超えないような安全機構を備えつつ、騒音の多い歯科医院でも十分に通知が実行できる手段を実現できるようにした。図2はその外観の一例であるが、歯周ポケット測定器の筺体201には、実際に検査部位である歯肉に接触し、歯周ポケット内に挿入されるプローブ202を接続する。プローブは患者の血液に接触する可能性が高いため、感染のリスクを解消させるためにも、ディスポーザブルなものにすることが望ましい。そのためにはプローブを容易に着脱交換できる必要があるため、プローブ固定具203を備えておき、これにプローブ202を固定するのがよい。次に述べるように、プローブ固定具203は、プローブに加えられている力を測定する目的にも利用される。さらに、口腔内を室内照明のみで観察することは容易ではないため、白色発光ダイオードなどを利用した白色照明204も必要である。白色照明の光源としては白色発光ダイオードが好適であるが、プローブへの集光が必要であれば、光源の前に透明樹脂などで形成された導光部材を配置してもよい。プローブ202および検査部位をできるだけ均一に照明するためには、プローブ202の左右に白色照明204が配置されているとよい。なお、測定器の先端に近い部分は患者の口腔内に入り、場合によっては頬を押し広げることにも使われるため、プローブ202の固定部分に近い位置から測定器の筺体201にかけて、滅菌済みのカバー205をとりつけることが望ましい。カバー205はプローブ202とともに患者ごとに交換されるべきものであり、場合によってはプローブと一体成型で製作されていてもよいが、カバー205が患者の頬と測定器の間に挟まることでプローブ202が所定の力で動かなくなってしまう可能性もあるため、基本的にはポリエチレンなどの柔軟な素材で製作されている方が好ましい。このカバーについては、図7に示す測定器の例についても同様に利用することが好ましいものである。なお、図2の例では検査者の力の個人差による影響を解消することを主眼としているため、画像撮影機能は含んでいない。
【0033】
図3に、上記の歯周ポケット深度測定器の内部構成図を示す。測定器の筺体301にプローブ302を接続固定するためにプローブ固定具303が備えられているが、このプローブ固定具303にはプローブ固定用突起304が設けられており、この突起は円柱状あるいは半円状の形状を有している。一方、プローブ302の根元部分にも穴が設けられており、プローブ固定の際には、この穴とプローブ固定用突起304とが噛み合う状態となり、前後方向の力に対しては抜けないようになっている。プローブ303の断面は基本的に円形であるが、このプローブ固定用突起304と噛み合わせるための穴が設けられている部分に限っては半円などの断面を有する。この理由について図4を用いて説明する。プローブ401を通常使用する状態から180度回転させた状態でプローブ固定具402に挿入する場合には、プローブ401の根元部分は半円状の断面を有しているため、図4(a)のように、そこに設けられた固定穴403はプローブ固定具402のプローブ固定用突起404とは噛み合わず、滑らかにプローブを挿入することができる。この状態からプローブ401を180度回転させると、今度は固定穴403がプローブ固定用突起404と噛み合い、しっかりと固定されることになる。このような構造により、プローブを180度回転させるのみの操作で、簡単にプローブを着脱させることができる。
【0034】
再び図3を用いて説明する。プローブ固定具303は、回転軸305によって筐体301に固定されており、この軸を中心として上下に回転できる。また、プローブ固定具303の背後にはばね306が配置され、プローブ固定具303の後部であって、ばね306との接触する部分は、所定の角度をもって切り取られた状態となっており、後端307を形成している。後端307は、ばね306と点接触し、ばね306は、後端307をその復元力により押圧した状態となっている。
ばねとしては、ねじりばね、板ばね等を使用することができる。プローブ302の先端で検査部位を押していくとプローブが回転しようとする際、接触しているばね306を押すこととなるが、ばね306の復元力により、この押す力に対抗して、プローブ固定具303の移動を阻止し固定させる。
計測者が、歯周ポケットにプローブ302の先端を挿入し、更に力を加えると、ポケット底部またはポケット内壁がプローブ302を押し返す形となり、プローブ302と接続するプローブ固定具303は、回転軸305を中心に回動しようとし、ばね306を強く押すようになる。
ばね306は、その復元力により後端307が回転しようとする力を阻止する機能を果たし、後端307の回転量が大きくなるとともに、ばね306の復元力も大きくなっていくが、後端307の回転量が一定の値を超えると、後端307の回転によって復元力はむしろ減少していく状態となる。
更に筐体301からプローブへ力が加えられた場合、やがて後端307がばね306の末端306Mを越えた時点で、図5(c)で示すようにばね306の押圧力は、後端307との接触を行わず、プローブ固定具303の回転を促進する力となるような接触状態を形成し、プローブ302を上方向に押し上げる状態となって、歯周ポケットから、プローブ302の先端が離れ、歯周ポケットへの過剰な刺激が回避される。
このような回転機構および接触構造を用いると、所定以上の力が加わわったとしてもプローブの回動に伴うその後端307とばね306との接触点が、ばね306上を移動することでプローブ固定具303の後端307とばね306との接触点の位置を変化させ、筐体301からプローブ302へ加えられる力が一定を維持する。
プローブの回転に伴い回転軸305と接触点とを結ぶ線分と、ばね306の接触点を含む面(あるいは一端をなす直線部分)とが垂直となったときにばねの変位が最大となり、検査部位に加えられる力も最大化された状態となることとなる。

【0035】
上記の機構を、図5を用いて詳細に説明する。図5(a)はポケットプローブに全く力を加えられていない状態を示している。なお、図中の線分X−X’はねじりばねの一端をなす直線部分の方向を示し、線分Y−Y’はプローブ回転軸とばねとの接触点とを結ぶ線分の方向を示している。この状態からプローブ先端で検査部位を押していくと、やがて図5(b)のように線分X−X’と線分Y−Y’とが垂直となり、このときばね(の一端をなす直線部分)の変位は最大となっているため、検査部位には最大の挿入力が加えられている。さらにプローブを押していくと図5(c)のような状態となり、ばね(の一端をなす直線部分)の変位は(b)の状態よりも小さいことから、最大時よりも小さな挿入力が加えられていることになる。したがってこのような機構を利用することにより、検査部位に加えられる挿入力はある一定の最大値を超えることはなくなるので安全性を確保でき、さらに、この最大値を検査に必要な挿入力となるように調整しておけば、とくに練習を要することなく、検査部位へ容易に所定の挿入力を加えることが可能になる。
【0036】
実用上は、プローブの先端が1mm程度持ち上がった時に、検査に必要な25g重程度の挿入力が加えられるように、ばねの強度および接触点の位置を選定する。なお、ばね特性にも多少のばらつきが存在し、単純に配置しただけでは必要な特性が得られない場合もあるため、ばね306としてねじりばねを使用する場合、接触点を有する側と回転軸306Kを中心として反対側の一端には、ばね調整具308が接触するようにしておく。ばね調整具308も復元力を備えた弾力性をそなえながら回転軸308Kを中心として回動可能とし、ばね調整ねじ309を回転させて前後に移動調整することにより、ばね調整具308とばね306との接触位置を変更することができる。
例えば、ばね調整ねじ309を回すことで、ばね調整ねじ309がばね調整具308方向へ進行してこれを押す。
ばね調整具308は、その回転軸308Kを中心に弾力性を備えた回動をし、ばね306との接触部分を下方向に押し下げる。一端を押し下げられたばね306は、その反動で中心306Kを介した反対側を上方向へ押し上げることで、後端307をより強く押すこととなり、プローブの挿入力をより強くすることができる。
逆に、ばね調整ねじ309を反対方向へ回して、逆方向へ移動させると、ばね調整具308を押す力が弱まり、ばね調整具308は、回転軸308Kを中心とした弾力性に伴う復元力で元に戻ろうとし、ばね306を押す力が弱まることで、回転軸306Kを介した後端307を押す部分の力も弱まり、プローブの挿入力も弱まる。
これにより、ばね306の初期変位を調整できるため、ばね特性にばらつきがあっても、所定の特性が得られるように調整を行うことができる。
【0037】
上記のようにプローブの変位と力の関係を調整でき、かつ、検査に必要な挿入力を加えることが容易な構成であったとしても、実際の検査者にとっては、所定の挿入力を加えたことが把握できるような通知手段がある方がわかりやすい。必要以上の力を加えてしまう危険性は避けられる構成ではあっても、力がピークに到達する状態までプローブを押して力を加えなければ、十分な検査は実施できないからである。そこで図3のように、プローブ固定具303の背後に変位検出センサー310を配置し、プローブ固定具303が所定量だけ変位した(すなわち所定の力が加えられた)瞬間にセンサー310が反応するような機構を設けておく。具体的には、変位検出センサー310としてフォトインタラプタのような非接触型センサーを使用し、プローブ固定具303の後方に設けられたセンサー検出用突起311が、プローブ固定具303の所定量の変位(回転)によってフォトインタラプタのセンサー部を遮るといったセンサー310に対する変化を与えることにより、必要な変位が発生したこと(すなわち所定の挿入力が加えられたこと)を検出できるようにする。実際に使用できるセンサーとしては圧力センサーなどさまざまなものが考えられるが、患者一人に対して最大200箇所弱の検査を実行する必要があることから、やはりフォトインタラプタのように非接触型のセンサーを利用し、機械的な摩耗を避ける方が好ましい。ただし、耐久性に実績のあるマイクロスイッチなどであれば繰り返し使用に十分耐えうるので、プローブに所定の力が加えられたときにちょうどON状態となるようにプローブ固定具とスイッチを接触させることで、センサーの代用としてもよい。
【0038】
センサー310は測定器内に組み込まれた制御基板312に接続されており、常にセンサーの状態を把握できるようになっている。制御基板312の動作に必要な電力は、同じく測定器内部に組み込まれた乾電池などの電源313から供給される。後に述べるように測定器をコンピュータに接続する構成であれば、ケーブルを通じて外部から電力を得てもよい。所定の挿入力が加えられたことを制御基板312で感知すると、基板に接続されているブザー314を鳴動させ、使用者に音声通知を行うことができる。音声通知により検査者はプローブを検査部位から引き抜き、次の検査部位へ移行する。音声通知に対して検査者の反応が遅く、余分にプローブを押してしまった場合でも、既に述べたように所定の挿入力を超える力が加えられない構造になっているため、極めて安全かつ容易に使用できる検査装置となっている。また、口腔内を照明するための白色照明315が必要であることは、既に図2を用いて説明したとおりである。なお、制御基板など液体に弱い構成が測定器内に組み込まれているため、実際には図2に示したようなカバーを利用して液体が入らないように保護をし、さらに測定器内でも、ばねの中央部分から背後の部分(プローブに加えられる力に影響しない部分)はシリコンゴムなどで密閉するなど、ある程度の防水性を確保できる構成にしておく方がよい。図2および図3の構成では、本発明の特徴として述べた画像の取得や検査結果の自動記録はできないが、これでも十分便利な歯周ポケット深度測定器であるといえる。
【0039】
なお、制御基板312上に適切な記憶素子を備えていれば、検査結果を一時的に記憶しておくことは可能であるから、検査後にコンピュータに接続して記憶したデータを転送することにより、検査結果を自動記録する方法とほぼ同等の便利さを実現することは可能である。この場合には、検査中にどの歯のどの検査部位の検査を行っているのか、音声で読み上げる機能もあった方がよい。また、コンピュータ側で音声入力をサポートしていれば、検査者が測定結果を読み上げることで、やはり自動記録に近い動作を行うことが可能である。その他、測定器内に撮像機能が組み込まれていなくとも、検査者が頭部に撮影用カメラを装着して検査部位を映し、この画像情報がコンピュータに送信されるようになっていれば、所定の力を加えた際の歯周ポケット深度を画像解析から求めることは可能である。この場合、所定の力に到達した状態をセンサーやスイッチなどで検出し、プローブの先端を照明するような機能が測定器内に組み込まれていれば、画像の中にその特定の発光状態が確認されるものを検査画像として選定することにより、直接センサー情報をコンピュータへ転送せずとも、適切に検査画像を取得することができる。このような目的で用いられる検査者装着用のカメラは、目線追跡機能を有していると、検査者が検査部位を見ている限り確実に検査部位を撮影することができるので、都合がよい。
【0040】
図6は、図3の構成を上方向から見た水平断面図である。ここでは図3を用いて説明した内容を補足しておく。プローブ固定具601のセンサー検出用突起602はプローブの変位をセンサーで検出するための構造物であるが、図6ではセンサーとしてフォトインタラプタ603を使用しているため、センサー検出用突起602がフォトインタラプタ603の検出部を遮った時に所定の変位が発生していることになる。既に述べたように、センサーが反応した後もプローブを押し続けたとしても、必要以上に力が加えられない安全機構の実現を目的としているため、センサー検出用突起602とフォトインタラプタ603が接触しないように、図6のような配置となっている。また、図6ではばねとしてはねじりばね604を使用した例となっており、ねじりばね604のプローブ固定具601とは反対側の一端をばね調整具605が押さえており、これによってプローブの変位に対するばねの反発力が調整されている。
【0041】
上記のようにフォトインタラプタなどのセンサーを用いて変位を検出する場合には、プローブの挿入力が所定値に到達したことを、ブザーや発光素子を用いて検査者に通知する必要がある。発光素子のように光信号を用いて通知を行う場合には、実際にはセンサーが不要となる構成もありうる。例えば図7のようにプローブ701をプローブ固定具702に固定し、さらにその背後に光源703を配置する。プローブ701は透明樹脂などの光伝導性が高い材料で形成し、プローブ固定具702も同様に光伝導性が高い素材で形成するか、あるいは光源703からの光がプローブ701に到達できるように穴を開けておく。ただし、プローブ701に挿入力が加えられていない状態では、プローブ701の柄部(根元部分)の方向と光源703の方向は一致しておらず、プローブ701に到達かつ伝導する光量は少なくなるようにしておく。光源703としては白色発光ダイオードなどの指向性が比較的大きいものを使用する。このような構成でプローブ701に挿入力が作用すると、プローブ固定具702は軸を中心に回転していき、やがてプローブ701の柄部の方向と光源703の方向が一致し、このときにプローブ701を伝導する光量が最大となるので、プローブ701は最も明るく発光する。プローブ701は先端まで光伝導性の高い材料で形成されているため、プローブ全体が明るく発光する。したがって、プローブ701の柄部の方向と光源703の方向が一致するときに、検査で定められている挿入力となるようにばねを調整しておけば、とくにセンサーを使用せずとも、プローブ701の発光の強さを検査者が目視することで、所定の力を加えられたことを認識することができる。
【0042】
なお、図8に示すように、プローブ801には回転軸を設ける代わりに支点を利用して回転変位を生じさせることも可能である。例えばプローブには支点を受けるための窪み802を設けておき、測定器の筺体803の前方付近にプローブ回転支点804を形成しておく。また、これとは反対側にプローブ支持ばね805を備え、プローブ801をプローブ回転支点803に押さえつけるようにする。このような構成では、プローブ801を外部から測定器に挿入していくと、窪み802とプローブ回転支点804が噛み合う位置でプローブ801がしっかりと固定される感触があるため、固定が不十分になるような誤りを防ぎやすい。プローブ後方には図3を用いて説明した方式と同様に、プローブ挿入力を制御するための力制御ばね806が配置されている。また、力制御ばね806が押されていく際にプローブの変位検出センサー807を遮る(反応させる)ような構成にしておけば、プローブ801の後方をゴムなどで形成された防水部材808でカバーし、より故障の発生しにくい構造にすることが可能となる。このような構成も、本発明の歯周ポケット深度測定器で採用することは可能である。
【0043】
先に述べたように、本発明の歯周検査システムでは画像を表示することも特徴としているため、画像取得機能を有する歯周ポケット深度測定システムについて、次に説明する。図9は、そのような機能を有する構成の外観の一例である。筺体901にプローブ902を接続し、プローブ固定具903が回転することで力の制御や検出が可能となっていることは、図2の場合と同様である。このプローブ902の計測部904も含む検査に必要な範囲を撮影するために、撮像部905を測定器内に組み込む。撮像部905は主に、表面を保護するための透明窓、検査部位を拡大撮影するためのレンズ、実際に撮影を行うためのカメラから構成される。撮影のためには、観察の場合と同様に白色照明906が必要である。撮像部905によって取得された画像情報はケーブル907を介してコンピュータに転送され、表示や解析に用いられる。
【0044】
カメラを使用する場合にまず考慮しなければならないことは、プローブ902と撮像部905との位置関係である。最も単純には、プローブの下側に撮像部を配置してプローブの計測部904を正面から撮影する方法であり、特許文献6〜9においても、とくに撮像部の位置については明記されていないながらも、図面ではプローブの下側に撮像部を配置しているように描かれている。しかしながらこの場合、プローブが歯周ポケット内に深く潜り込むと、検査部位と撮像部の間に他の歯や唇などの障害物が入り込み、検査部位が撮影できなくなる可能性が高くなる。特許文献6(米国特許 第4,883,425号)の方式は厳密には撮像部ではなく光量検出型であるが、このような障害物の存在により正確に光量を測定できなくなるため、問題の本質は同じである。プローブの下側に撮像部を配置する場合には、障害物が存在してもその上から十分に撮影できるように撮像部の上下方向幅をかなり小さくする必要があり、具体的には6mm以下程度の幅に収めなければならない。ただし一般的には図10に示すように、プローブの計測部1001とプローブの作業部1002(口腔内に入る部分)とは直角に近い角度をなしており、さらに作業部1002は途中から30度程度曲がっているものが多い。この方が口腔外から手で操作しやすくなるが、作業部1002の折れ曲がり点があるためにカメラ1003にとっては死角が大きく、図10(a)のようにプローブから下側にやや離れてカメラ1003を設置しなければ(すなわちX−X’線以下にカメラの中心を設置しなければ)計測部1001を十分に撮影できない。これでは障害物が間に入りやすくなるため、カメラを小型化する意味が薄れてしまう。一方、図10(b)のように作業部1005を曲げずに直線状に形成すれば死角がなくなるため、カメラ1006をできるだけプローブ付近に配置すれば、計測部1004を十分に撮影することができる。この場合であれば、できるだけカメラ1006を小型化し、より上方から撮影できるようにしておけば、障害物は映りにくくなるので都合がよい。ただし、作業部1005と計測部1004は全領域において広角をなしているため、検査時に計測部を歯茎に対して垂直に保ちにくく、検査を正確に行うことがやや難しくなる。
【0045】
そこで、図11のように筺体1101の形状を変更し、歯周ポケット深度を測定するためのプローブと撮影を実行するための撮像部が水平方向に並べて配置されている構成を考える。プローブ1102の脇から撮像部1106によって撮影する方法であれば、カメラをそれほど小型化せずともカメラの位置を高くすることができ、より障害物に撮像を妨害されにくい構成となる。また、検査者の目線に近い位置に撮像部が配置されるため、検査者の感覚にも一致した画像が得られやすい。この場合、プローブ1102の形状も工夫を加えた方がよく、例えば図11では、撮像部1106の正面にプローブの計測部1103が位置するようにプローブの作業部1104が撮像部側に曲げられている構造にする。作業部1104を撮像系側に曲げることで平面性は失われ、パッケージングの上ではやや余分に容積をとることにはなるが、計測部1103全体が画像に映りやすくなるとともに、測定器の筺体幅をより小さくすることができるという利点の方が大きい。筺体幅に余裕があれば、プローブを従来のように平面的に形成し、撮像部の方向をプローブの計測部の方へ傾けてもよい。プローブをこのように撮像部側に曲げる場合、白色照明1105の構成にも工夫が必要である。白色照明1105は測定器の表面付近に直接発光ダイオードなどの光源を配置する構成でも照明は可能であるが、より多くの光量をプローブの計測部1103付近へ集めるためには、光源は測定器の内部へ収納し、光源からアクリルや光ファイバなどの導光性に優れた部材によって測定器表面へ光を伝搬させる方が指向性は高くなり、効率が良い。これについては図15を用いて後述する。なお、図11の例ではプローブ固定部材も表面に露出しておらず、防水性向上の目的でプローブ基部カバー1107が使用されている。これについても図15を用いて後述する。
【0046】
図12は、プローブを撮像部側へ曲げた形状の一例である。図12(a)はプローブを側面から見た状態であり、通常使用される場合には、このとき患者の側面(横顔)が見えていることになる。一般的に使用されている歯周ポケットプローブも、側面から見るとこれとほぼ同じ形状となっている。すなわち、プローブの柄部1201から作業部1202が同軸方向に伸び、作業部1202は途中から上方へ湾曲している。柄部1201の中心軸X−X’と作業部の湾曲部の中心軸Y−Y’とがなす角αは、30度程度となっているものが多い。これは、検査部位へプローブの計測部1203を挿入する際に、やや斜め方向から手で作業できる方が扱いやすく、視野も広くなるためである。なお、作業部の湾曲部の中心軸Y−Y’と計測部1203の中心軸Z−Z’とがなす角βは、ほぼ直角となっているものが多い。これは、計測部1203を歯軸に対して平行に挿入することが好ましいとされており、歯の上面に作業部の湾曲部を合わせればこのような挿入が容易に行えるようになるためである。プローブの素材が樹脂である場合には、補強のために梁1204が形成されている方がよい。本発明の歯周ポケット深度測定器(測定システム)で利用されるプローブも、側面は一般的な図12(a)のような形状となっているものが好ましい。なお既に述べたように、プローブをプローブ固定部材に回転固定するために、プローブの基部には固定用穴1205が設けられているのは、本発明における特徴である。
【0047】
一方、図12(b)は本発明の歯周ポケット深度測定器(測定システム)で利用されるプローブを上方から見た図であるが、こちらは一般的なプローブとは形状が大きく異なっている。すなわち、一般的な歯周ポケットプローブは上方から見るとほとんど直線状の平面的な形状となっているのに対し、図12(b)ではプローブの柄部1201から伸びる作業部1203は大きく湾曲している。これは視野の改善のために撮像部をプローブの水平横位置に配置するための工夫であり、プローブの作業部1203を水平方向にも湾曲させることによって、測定器自体を大型化せずとも、撮像部の正面にプローブの計測部を配置することが可能になる。プローブ柄部の中心軸X−X’と作業部の水平方向での中心軸A−A’とがなす角θは、5〜40度程度の範囲であることが好ましい。
図12(c)は、図12(a)を180℃反転した図(図12(a)を正面図とした場合、反転した裏面図)。図12(d)は、長軸(X−X’)方向で正面から見た図(図12(a)を正面図とした場合左側面図)、図12(e)は、長軸方向で後面から見た図(図12(a)を正面図とした場合、右側面図)、図12(f)は、下面方向から見た図である。
【0048】
以上の効果について図13を用いて説明する。図13(a)は単純にプローブ1301の下側にカメラ(撮像部)1302を配置した場合であるが、図のようにプローブ1301が歯肉1303に深く潜り込むと、検査部位1304をカメラ1302で撮影する際に、検査部位とは関係のない歯列1305や唇などがカメラの視界を遮る可能性が高くなる。歯周ポケットは必ずしも垂直に形成されるとは限らず、プローブを斜めにして挿入しなければ正確に測定できないことも多いため、そのような場合には検査部位を撮影することは非常に難しい。一方、図13(b)のようにプローブ1306の水平方向に並べてカメラ(撮像部)1307を配置すれば、カメラの視点が高くなるため歯列1309などの障害物の影響はほとんどなく、プローブ1306が深く潜った場合でも検査部位1308を撮影することは容易である。既に述べたように、プローブ1308がカメラ1307側に曲げられていると、なお撮影しやすくなる。
【0049】
なお、撮影のための視野の改善方法としては、図13(b)のように撮像部の位置を変更する以外に、内視鏡のような映像伝達部材を使用してもよい。すなわち、カメラの前にレンズを配置する代わりに、ガラスや光ファイバーで形成された映像伝達部材を配置し、検査部位から10〜20mmあたりまで映像伝達部材の撮像部を接近させることで、障害物が撮像の妨げにならないようにするのである。この方式では、レンズに比べて製造コストは高くなるものの、映像伝達部材が唇や舌などの障害物を排除する機能も有するため、扱いやすさは向上する。撮影用のカメラ自体を検査部位に接近させた構造も可能ではあるが、カメラを使い捨てにすることや高温滅菌することはコスト面で不可能であるため、優れた手段であるとはいえない。
【0050】
図14は、図11に立体図を示した歯周ポケット深度測定器を3方向から見た図である。図14(a)はプローブ側から見た正面図であり、プローブ1401の計測部1402が、撮像部1403の正面に配置されていることがわかる。なお、患者の口に近い位置に測定器を保持しても口腔内の様子がよく視認できる必要があるため、測定器の幅Wは30mm以下、測定器の厚さ(高さ)Dは26mm以下程度に収められることが望ましい。また、撮像部1403とプローブの計測部1402との距離は、撮像部が口腔内に入らない程度に確保することが好ましく、例えば65mm以上とする。なお、カメラ側に集中して設けられた光源1404も測定には必要である。図14(b)は測定器の上面図であり、既に述べたようにプローブ1401の作業部1405が撮像部側に曲げられている様子がわかる。また図14(c)は測定器の左側面図である。ハンドピースとしての扱いやすさの点から、測定器の長さLは150mm以下程度とする(ただし通信ケーブル1406を除く)ことが好ましい。なお、図14において(a)は(b)および(c)に対して2倍に拡大されている。
【0051】
図15に、撮像部も組み込まれた歯周ポケット深度測定器の内部構成を示す。なお、この図は図11の測定器をY方向(上方)から見た場合の断面図に相当する。測定器の筺体1501には、プローブ1502を接続固定するためのプローブ固定具1503が組み込まれ、プローブ固定具1503は回転軸1504によって回転できる。プローブの回転変位と力の大きさの関係はねじりばねなどのばね1505によって制御され、一定量の変位の検出はフォトインタラプタなどの変位検出センサー1506によって行われる。また、ばね1505の微調整はばね調整具1507およびばね調整ねじ1508で行われる。ここまでは図3を用いて説明した通りであるから、詳細については省略する。歯周ポケット深度測定器は患者の口腔という比較的液体に接触しやすい環境で使用されることを考えると、防水性についても配慮が必要である。本発明の歯周ポケット深度測定器では、プローブ1502の基部にプローブ基部カバー1509を備えることで、防水性を高める。これは薄いシリコンなどの素材で形成され、わずかな力に対しても容易に変形できるものとする。このカバーを測定器の筺体1501に取り付けることにより、検査に必要なプローブ挿入力には影響せず、防水性のみを高めることができる。また、測定には白色照明も必要であるが、白色発光ダイオードなどの光源を直接測定器の表面に配置しようとすると配線スペースも必要となり、測定器を小型化することが難しくなる。そこで図15のように、光源1511は測定器の内部に収納し、光源からアクリルや光ファイバ等で形成された導光体1512によって光源1511からの光を伝搬させ、測定器表面へ導く構成を利用する。伝搬中に光の指向性が高くなるため、測定器表面付近で導光体1512をプローブの計測部方向に曲げた形状にしておけば、効率よく計測部付近へ集光させることができる。光源1511は必要に応じて複数使用してもよく、導光体1512もこれに対応して複数使用してもよい。なお、光源1511への電力は、制御基板1510から供給されるものとするため、測定あるいは撮影を行わない状態では光源をオフにする制御も容易である。
【0052】
以上の歯周ポケット深度測定系と水平方向に並んで撮像部が配置されるが、これは主に筺体1501表面に設置された撮影窓1513と、その内側に配置された撮影用レンズ1514およびカメラ1515から構成されている。撮影窓1513は無色透明である必要があるため、基本的には筺体1501に後から組み込むことになるが、筺体1501自体が無色透明な樹脂で形成される場合には、筺体1501と撮影窓1513を一体化させて成型することも可能である。撮影用レンズ1514はガラスまたは樹脂によって形成され、大きさとしては直径10mm以下であることが望ましい。このような大きさであっても検査部位に近い位置に来ると見にくくなるため、プローブ1502の計測部に対して70〜100mm程度の距離で撮影できるものが好適である。検査部位をできるだけ拡大して撮像したいため、プローブ1502の計測部の位置に対して、直径15〜25mm程度の視野が得られるような特性のレンズとする。図11を用いて既に説明したように、撮像部をプローブ1502の水平方向に並べて配置する場合には、プローブ1502の作業部を撮像部側へ曲げた形状とする方が、筐体幅が小さくなり、使用時にも見やすくなる。作業部の曲げ角度θは、5〜40度の範囲とするのが一例である。カメラ1515は測定器内に組み込まれる必要があるため、小型かつ軽量であることが求められる。したがって、カメラとしてはCMOSイメージセンサーやCCDイメージセンサーを使用した小型カメラモジュールとなっていることが好ましく、サイズとしてはカメラ部分のみで6mm角程度に収まるものがよい。撮影用レンズ1514とカメラ1515との距離は厳密に定められる必要があるため、カメラレンズ固定具1516にそれぞれを固定することが好ましい。カメラ1515にはもともとレンズ接続用にタップ構造が形成されている場合も多いので、これに噛み合うようにカメラレンズ固定具側にもタップを設けておくのがよい。ただし筺体1501にそれぞれを確実に固定できる構造が設けられる場合や、撮影用レンズ1514をカメラ1515に直接固定できる構成にする場合には、カメラレンズ固定具1516は必要ない。
【0053】
カメラ1515によって得られる画像情報は、カメラを接続する制御基板1510へ転送される。既に述べたように、画像情報の転送は1秒あたり30回程度のペースで繰り返し実行され、これらの画像情報を連続的に表示すれば、動画情報としても利用できる。制御基板1510には変位検出センサー1506、発光ダイオードなどの光源1511、スイッチ1517、ブザーなども接続される。既に説明したように画像を用いた検査では、検査に必要な条件が成立した瞬間の画像情報を確保することが重要であり、そのための動作として、制御基板1510はカメラ1515によって所得された画像情報をコンピュータへ転送する際に、変位検出センサー1506のセンサー値やスイッチ1517のON/OFF状態も合わせて転送する。制御基板1510からコンピュータへのデータ転送はケーブル1518を通じて行われるが、ケーブル1518としてはUSBケーブルを用いると汎用性が高く、測定器の動作に必要な電力もケーブルを通じて得られることから好適である。なお、スイッチ1517は通常の検査中に頻繁に押すようなものではなく、例えば検査を行った部位に対して再び検査を行いたい場合や、検査に関係なく撮影のみを行いたい場合など、検査フローを変更するような特別操作の目的で使用される。
【0054】
ここで、上記の歯周ポケット深度測定器を使用して実際に歯周ポケット深度を測定するアルゴリズムについて、図16を用いて説明する。実際に歯周ポケット検査を行うためには、システム起動1601を行った後、患者情報入力1602を行う必要がある。既に検査を行ったことのある患者であれば、登録されている情報を呼び出してもよい。患者情報としては、氏名、年齢、性別、住所、保険情報、持病、過去の治療記録、人工歯や欠落の有無、その他注意事項などがある。さらにその患者に対して、測定点入力1603を行い、検査する部位を決定しておかなければならない。最も簡単なのは各歯の内側(舌側)と外側(唇頬側)で1点ずつ測定する方法であるが、症状に応じて4点あるいは6点の検査部位を測定する必要があるため、これを事前に決定しておくのである。これに続いて検査部位測定順序入力1604を行う。ここでいう順序とは、測定する歯の順序および各歯に対して複数存在する検査部位の順序である。以上について情報を入力または呼び出すことにより、システムは全ての検査部位を測定する順序を把握できるため、動作中にどの部位を検査すべきか表示したり音声で通知することができるようになる。なお、ここまでの入力は過去に実行したデータを呼び出すことにより、作業を省略することもできる。
【0055】
必要な情報入力の完了後、測定プログラム起動1605を行う。既に述べたように、本発明の歯周ポケット深度測定システムでは、歯周ポケット深度測定器以外の機器を接続して得られるデータも一括管理できるようにしておくため、システムで使用されうる各測定器はそれぞれ固有の識別コードを有しており、機器をコンピュータに接続するか、あるいはシステム起動時に接続されている機器を自動認識する際に、機器からコンピュータへ識別コードが転送され、自動的に対応する測定プログラムを起動するのがよい。プログラム起動時には照明も自動点灯し、ここでまずテスト撮影1606を行う。測定器に組み込まれた撮像機能に異常があれば、画像データが得られない、あるいは得られても明らかに異常な色彩となっている画像データが得られることになるため、これを検査者に通知する。また、撮像機能には異常がない場合でも、検査を行う上で必要なプローブが適切に接続されていなければ、やはり検査を実施することができない。したがってここではプローブ状態チェック1607を行い、プローブが画像の中に適切に映っているかを確認する必要がある。プローブの接続状態は画像情報から判定できるため、テスト撮影1606により得られた画像データを解析し、所定のプローブの色彩が検出できない場合や、検出されても適切な位置にプローブが存在していない場合には、プローブ再接続要請1608を行う。これは、プローブをもう一度適切に接続するようにメッセージを表示するなどして、検査者に注意を促す動作である。プローブが白色など口腔内に存在する色彩で形成されていても、輪郭抽出を行えばプローブの領域を認識することは可能であるが、検査の信頼性を高めるためには、プローブには口腔内に存在しない淡青色などの着色が施されていることが好ましい。プローブの位置が適切であると判定できた場合には、システムとしてのプローブ位置のキャリブレーション1609を行う。プローブを樹脂成型などで製造していれば、ある程度の形状のばらつきが存在することは避けようがなく、さらに検査者がプローブを接続する際の力によっても微小な変形や位置のずれは発生しうるが、検査を行う前の時点でプローブの位置を正確に認識しておけば、検査を正確に実施することができる。具体的には、画像情報に含まれるプローブの着色および/または特定の形状および/または特定のマークの位置を解析することにより、プローブの初期状態における位置を認識することでキャリブレーションを行う。なお、特許文献8〜9では、プローブに付された目盛を画像として読み取ることで測定を行うと説明されているが、撮像系とプローブとの位置関係が許容範囲内で固定されている場合には、プローブ領域を認識することさえ可能であれば目盛は必要ないものである。
【0056】
ここまでの準備が完了すれば、実際の測定動作へ移行する。各検査部位には既に測定番号が与えられているので、まず番号指定1610により測定番号nを1とし、1番目の検査部位から順に測定を行う。測定プログラムをn番目の検査部位測定モード1611とし、その部位が現在の測定対象であることがわかるようにイラストへの着色や点滅表示、文字や音声による指示を実行する。

測定でまず必要なことは、プローブが検査部位に接触した瞬間を認識すること(プローブ接触認識1612)である。先に述べたように、本発明の歯周ポケット深度測定システムでは1秒間に30回程度の画像取得を行うため、プローブが検査部位に接触してわずかに変位する瞬間も、画像上の変化として捉えることができる。
【0057】
この変化はプローブの特徴的な形状が存在する一部のみ、あるいは付与された特定のマークのみをモニタリングしていれば捉えられるため、画像取得の間隔内で十分に処理できる。前述したキャリブレーション動作においてプローブの位置をシステムとして認識した処理と同様に、画像情報に含まれるプローブの着色および/または特定の形状および/または特定のマークの位置の初期状態からの変化を検出することにより、プローブが患者に接触したことを認識することができる。患者側にも電極が接続されていれば、人体抵抗の検出によって患者への接触を物理的に認識することも可能ではあるが、特別なハードウェア構成を必要とせず、画像解析によって接触を認識できるのであれば、その方法が最善である。人体抵抗検出の場合、金属でプローブを形成すると高価なものとなり、樹脂でプローブを形成すると黒色のものが多く血液の付着がわかりにくくなるという欠点もある。なお、後の画像解析で利用するため、患者に接触した瞬間の画像は初期画像として保存しておく(初期画像取得1613)。
【0058】
患者への接触が認識され、そのまま検査者がプローブに力を加えていけば、いずれはプローブが一定量、すなわち検査に必要な挿入力が加えられる位置まで変位を続けていく。この過程において、プローブが初期位置(キャリブレーション時の位置)に戻っているかどうかを継続的にチェックし、プローブが初期位置に戻っていることが認識された場合には一旦状態をリセットし、再度プローブ接触認識1612から初期画像取得1613の動作を行わなければならない。これは例えば、誤って患者の検査部位ではなく他の歯などにプローブが接触してしまったことにより接触が認識されたため、検査者がプローブを患者から意図的に離し、再び検査部位への接触を試みるような動作を行う場合に該当する。接触検出時には短いブザー音などで通知を行えば、誤った接触があったことにも気付きやすくなる。プローブ接触時の認識は非常に重要な処理であるため、このようなプローブ位置確認1614は必要不可欠である。このようなリセット動作が発生せず、順調に検査部位へ挿入力を加えることができれば、プローブの一定変位検出1615が変位検出センサーなどを利用して行われ、所定の挿入力が加えられた瞬間が認識される。この瞬間に得られる画像は、検査に必要な完了状態の画像であるから、これを完了画像として取得かつ保存しておく(完了画像取得1616)。
【0059】
初期画像と完了画像が取得されれば、これらを解析して歯周ポケット深度を求めることができる。そのために必要な処理として、初期画像におけるプローブの前後判定1619を実行する。具体的にはまず初期画像におけるプローブ長を解析して求める(初期画像におけるプローブ長解析1617)。プローブと撮像系との距離がほぼ固定されていれば、画像上に映っているプローブ領域を色彩などから解析し、その長さあるいは面積を求めることにより、容易にプローブ長を求めることができる。同様にして、完了画像におけるプローブ長も求めておく(完了画像におけるプローブ長解析1618)。通常、プローブが検査部位に接触した瞬間の画像であれば、プローブの先端は歯周ポケット内に隠れることはなく、プローブの計測部全体が画像の中に映っているはずである。しかしながら、検査者(撮像系側)から見て歯の裏側にプローブが回った場合にはプローブの一部が歯に隠されてしまうため、プローブが全く歯周ポケット内に入っていない状態であってもプローブの計測部全体は画像の中に映らず、歯に隠れた分だけプローブ長は短い値となる。
【0060】
したがってまず、初期画像(プローブが検査部位に接触した瞬間の画像)におけるプローブ長を解析し、一定の基準を超える長さであればプローブは歯の前面(検査者にとっての手前)にあると判定し、一定の基準を超えない長さであればプローブは歯の背面(検査者にとっての奥)にあると判定する。プローブが歯の前面にあると判定された場合は、完了画像におけるプローブ長は本来のプローブ長から歯周ポケット内に潜り込んだ部分長が差し引かれた値となっており、本来のプローブ長は予めわかっているので、完了画像におけるプローブ長からの歯周ポケット深度計算1620が可能である。一方、プローブが歯の背面にあると判定された場合は、初期画像においてプローブが歯に隠されている部分と最終画像においてプローブが歯に隠されている部分が同一であると考えれば、これら2画像におけるプローブ長の差分からの歯周ポケット深度計算1621が可能である。すなわちこの差分が歯周ポケット内に潜り込んだ長さ(歯周ポケット深度)であるとしてよい。プローブが歯の背面に隠れるケースは容易に発生しうるため、このような判定処理は必須である。
【0061】
まとめておくと、本発明の歯周ポケット深度測定システムでは上記のように、まず、プローブが患者に接触した瞬間の画像を取得する手段を有し、当該画像から検出されるプローブ長に基づいて、プローブが対象歯の前後いずれにあるかを判定する機能を有することを特徴とする。さらに当該判定機能により、プローブが歯の後方にあると判定された場合には、プローブが患者に接触した瞬間の画像におけるプローブ長と、検査に必要な所定のプローブ挿入力が加えられた瞬間の画像におけるプローブ長をそれぞれ求め、これらのプローブ長の差分をもって歯周ポケット深度とすることを特徴とする。このようなアルゴリズムの工夫により、ただ単純にプローブに撮像機能を組み合わせただけでは求められない歯周ポケット深度を、正確に測定することができる。なお、図16のフローに示しているように、注意判定1622として、プローブが歯の背面にある状態で歯周ポケット深度として診断上注意を有する3mm以上の値となっているかどうかをチェックし、3mm以上である場合にはプローブが歯の前面に映る位置で再測定することを要求する(前面からの再測定要求1623)メッセージなどを表示する方がよい。
【0062】
これは、プローブの先端が直接画像に映らない場合にはやや信頼性で劣ることと、深い歯周ポケットに対してプローブが歯をまたぐような測定を行うと、プローブが歯の上面にあたるなどの原因で正確に測定できていない可能性が考えられるためである。なお、プローブが歯の背面に位置していても、ミラーなどにプローブの必要部分が映っており、それが撮像系の画像で捉えられている場合には、ミラーに映った画像を解析する機能を有していてもよい。
【0063】
なお実際には、プローブが検査部位に接触した瞬間のわずかな変位も、ごく小さな力がプローブに加えられていることによって生じるものであるから、厳密にいえばこれはゼロ点状態ではない。しかし、力が加えられていないときの画像から、プローブの形状あるいは特定のパターンのゼロ点状態における位置は求められるので、深度の計算結果に補正を加えることは可能である。ただし、検査部位の状態が非常に悪く、わずかなプローブの変位が発生する前に歯周ポケット内に深くプローブが挿入されてしまうような状況では、このような補正を行っても正確な歯周ポケット深度は求められない。このような状況に対応するためには、プローブの力を制御するばねを二種類使用し、接触直後は小さな力でもやや大きく変位し、途中から通常のばねに接触して変位するような二段階方式を採用してもよい。ばねを二種類用意するのではなく、ばねとプローブ固定具との間に、ばねよりも十分に小さい反発力を有するクッション材を挿入することで、このような二段階方式を実現することもできる。
【0064】
なお、上記のような画像センサー方式は、プローブが検査部位に接触した瞬間だけでなく、一定量だけ変位したこと(すなわち、一定の力が加えられたこと)の検出に利用することもできる。例えば、検査に必要な25g重の力が加えられたときにプローブが1mm上方に変位するとした場合、この変位も画像上のプローブ位置の変化として現れる。したがって、プローブの印刷パターンや付与されたマークが、所定の力が加えられたときに来るべき位置に色の監視領域を設けておけば、物理的なセンサーを用いずとも、所定の力が加えられたことを画像から検出できることになる。この方式であれば、既に述べたような変位検出センサーを使用する必要もなく、測定器はさらに小型化かつ軽量化される。接触検出と力検出の目的のために複数の監視領域を画像上に設定する必要はあるものの、いずれも限られた狭い領域であるから、画像処理は問題なく実行できる。本発明の歯周ポケット深度測定システムでは念のために変位検出用のセンサーを使用しているが、これは何らかの要因によりプローブの変位を画像で全く認識できなくなってしまった場合に、全てを画像処理で判定する方法では、ソフトウェアの動作が完全に停止してしまう可能性があるためである。
【0065】
上記のような処理により、正確に歯周ポケット深度が得られたら、測定値を音声通知1624で知らせることが好ましい。それとともに、検査部位の測定値及び画像の記録1625を実行し、後で表示確認できるようにしておく。完了画像は歯周ポケット深度を求めるために必要な画像であるだけではなく、患部の最も重要な情報でもある。治療を進めていく上で、同一患部の画像を比較できれば、治療効果を確認しやすくなることが期待される。ここまでの処理により、対象歯の対象検査部位の測定は完了するので、ここで全検査部位の測定完了確認1626を行い、まだ検査部位が残っていれば測定番号変更1627により次の検査部位へ移行する。全ての検査部位の測定が完了していれば測定結果の表示と保存1628を行い、検査を終了する。
【0066】
ここで、最も重要な歯周ポケット深度測定アルゴリズムについて、図を用いて詳述する。まず、図16の測定フローでの初期画像におけるプローブの前後判定1619を具体的に示しているのが図17である。図17で示すプローブの先端は、球状に形成されており、歯周ポケットへの刺激を緩和させる形状となっている。
【0067】
図17(a)(b)ともに検査部位へプローブが接触した瞬間の画像(初期画像)とする。図17(a)ではプローブ1701が検査対象歯1702の前方に映っているため、プローブ検出長1703は本来のプローブの計測部の長さそのものとなる。実際には僅かな挿入力でも先端の一部のみは歯周ポケット内に入ってしまう場合もありうるが、いずれにしてもほぼ計測部の長さに近い値となる。初期画像の取得は、画面においてプローブ1701が、歯肉に接触した際、受ける抵抗力により、プローブ1701が上方へ微動するタイミングを検出することにより行われることが好ましい。
当該タイミングは、プローブの特定の位置の動きが、プローブの挿入移動に対し、抵抗を受けた際の移動が遅くなるタイミングを検出することが例示される。
【0068】
一方、図17(b)ではプローブ1704が検査対象歯1705の後方に映っているため、プローブ検出長1706は本来のプローブの計測部の長さよりも、検査対象歯1705によって隠されている分だけ短くなる。奥歯のように、検査者が立ち位置を変えなければプローブを正面から挿入しにくいような場合では、このように歯をまたいだ状態でプローブを挿入する可能性が高くなる。図17(a)と(b)とでは明らかに初期画像におけるプローブ検出長が異なっているため、例えば初期画像におけるプローブ検出長が、本来のプローブ計測部の長さの80%以上であればプローブは検査対象歯の手前、80%未満であればプローブは検査対象歯の背後にあると判定することが可能である。プローブには薄青色など口腔内には存在しない着色がなされ、目視のための補助的な目盛パターンも濃青色などやはり口腔内には存在しない色彩で付されていれば、画像解析によってプローブ検出を行い、検出長を求めることは容易である。ただし、画像には計測部よりも上方の作業部なども併せて映り込むため、計測部の上限を示す目盛パターンや特徴的な形状を検出し、計測部のみを検出対象としなければならない。プローブに着色や目盛パターンがなされていない場合でも、画像の中心に近い範囲に限定して輪郭抽出処理を行うか、またはプローブに設けられた特徴的な形状を抽出する処理を行うことにより、プローブ検出を行ってもよい。いずれにしても、本発明の歯周ポケット深度測定システムでは、プローブが検査部位に接触した瞬間の画像を取得する手段を有し、当該画像からプローブ領域を検出する処理を行い、プローブが検査対象歯の前後いずれに位置しているかを判定するという特徴を有することにより、正確に歯周ポケット深度を求めるために必要な情報を確保することができる。
【0069】
プローブが検査対象歯の前後いずれにあるかを判定できていれば、あとは検査に必要なプローブ挿入力が加えられた瞬間の画像(完了画像)を取得し、この画像に映っているプローブを検出すればよい。これは図16の測定フローにおける歯周ポケット深度計算1620に該当する。プローブが検査対象歯の前方に映っている場合には、完了画像に対してプローブ検出長を求める画像処理を実行し、本来の計測部の長さからプローブ検出長を差し引いた長さが、歯肉内に潜り込んだプローブの長さ、すなわち歯周ポケット深度となる。 これに対し、プローブが検査対象歯の後方に映っている場合には、初期画像と完了画像をともに利用する必要がある。
【0070】
図18(a)は、プローブが後方に映っている場合の初期画像であり、まずこの画像に対してプローブ検出処理を行い、初期画像におけるプローブ検出長1801を求めておく。これはプローブの前後判定のために必ず行う処理であるから、特別な処理ではない。また、プローブの変位検出センサーなどを利用して得られる完了画像に対し、同様に完了画像におけるプローブ検出長1802を求める。これもプローブの前後判定結果に関係なく行われる処理である。相違点としては、プローブが検査対象歯の前方にあると判定された場合には、完了画像から求められたプローブ検出長1802のみを利用して歯周ポケット深度が求められるのに対して、プローブが検査対象歯の後方にあると判定された場合には、初期画像におけるプローブ検出長1801と完了画像におけるプローブ検出長1802の差分として、歯周ポケット深度が求められるということである。これらの画像において検査対象歯によって隠されているプローブの部分長は等しいとみなすことができるため、このような処理によって、プローブが検査対象歯の後方にある場合でも、正確に歯周ポケット深度を求めることができるのである。なお既に述べたように、本発明の歯周ポケット深度測定器(測定システム)では、プローブが回転軸によって回転変位を行い、この変位量をばねを利用して制御することにより正確に挿入力が加えられる機構になっているため、プローブを所定の挿入力で押した状態では、プローブに対して相対的にカメラ位置は低くなる。したがって、初期画像における検査対象歯の中心座標Y1よりも、完了画像における検査対象歯の中心座標Y2の方が高くなるが、歯に対するプローブの相対位置は歯周ポケット以外の要因では変化しないため、測定には影響しない。むしろ、検査対象歯の中心位置の変化を検出することにより、センサーを利用しなくともプローブに加えられている挿入力を画像から認識することも可能である。このような処理は予期しない理由によってプローブが全く画像に映らなくなった場合などでは完全に機能が停止する可能性があるため、本発明では積極的に採用していないが、測定器のさらなる小型軽量化には有効な手段である。
【0071】
なお実際には、歯周ポケットにプローブを挿入した後、小刻みにプローブを上下させながら歯周ポケット内を探る「ウォーキング」と呼ばれる操作も行われることがある。この場合、プローブを上方向に動かす際にプローブ位置はリセットされるが、そこから再度挿入力を加えることによってプローブが検査部位へ接触したとみなされる状態となったとき、既にプローブはある程度歯周ポケット内に潜り込んだ状態になっているため、初期画像におけるプローブ長が実際よりも短く判定されてしまう。プローブが歯の後方にあると判定される場合には、このような状況ではプローブ長を正しく判定することが全く不可能となるため、プローブを完全に引き抜いてから、再度測定するように要求するメッセージを表示する。
【0072】
プローブが歯の後方にあり、かつ既に歯周ポケット内に潜っている状態で初期画像が取得された場合には、プローブ長が本来の長さよりもかなり短く検出されることになるため、上記の要求メッセージは、初期画像におけるプローブ長判定において例えば本来のプローブ計測部の長さの30%未満となっている場合に表示するようにすればよい。この例ではすなわち、初期画像におけるプローブ長が本来の計測部の長さの90%以上であれば歯の前方、30%以上90%未満であれば歯の後方、30%未満であれば再測定を要求する、といった判定処理を行うことになる。ただしこれだけでは不十分であり、プローブが歯の前方にあってもウォーキング操作によって当初からプローブが歯周ポケット内に潜っている場合には、誤ってプローブが歯の後方にあると判定されてしまう。このような場合に対応するため、初期画像のプローブ長判定において、画像判定を追加してもよい。
【0073】
具体的には、まずプローブ長判定においてプローブの下限位置を決定できるので、この下限位置の左右(プローブの脇)の境界領域を求める。境界領域としては、歯と歯茎の境界または歯と頬などの空間との境界が考えられる。境界領域は画像の垂直方向の輝度変化を微分する処理によって容易に求められるが、歯と歯茎の境界では上方から下方に向かって輝度が小さくなる(すなわち微分係数は負になる)のに対して、歯と頬などの空間との境界では上方から下方に向かって輝度が大きくなる(すなわち微分係数は正になる)という違いがある。プローブ下限の左右の境界が歯と歯茎の境界であるということは、プローブが歯の前方にあることを示しているので、初期画像におけるプローブ長に関係なく、歯周ポケット深度測定では完了画像のみを用いて計算すればよいことになる。このように、初期画像におけるプローブ長判定と画像処理による境界判定を組み合わせることにより、ウォーキング操作が行われた場合でも、正しく歯周ポケット深度を求めることが可能になる。
【0074】
図19は、本発明の歯周ポケット深度測定システムで歯周ポケット深度測定を実行している際に、ディスプレイに表示される内容を示している。本システムの大きな特徴の一つとして、カメラによって取得される検査部位の動画像1901が表示される機能を有する。この動画は実際に目視するのに比べ、ディスプレイに拡大表示されているため、検査部位の状態が把握しやすくなっている。とくに問題のない部位であれば拡大表示を見ずとも直接プローブをあてればよいが、検査の必要性が高い症状の悪化した部位に対しては、拡大表示を見ながらプローブを挿入することにより、安全に検査を行うことが可能である。カメラとプローブ1902はともに測定器内に組み込まれているため、プローブ1902の計測部は常に画像の中心に映っており、確認も行いやすい。
【0075】
既に述べたように、プローブ1902には目盛がなくともプローブ長解析から歯周ポケット深度を求めることは可能であるが、検査者が目視で深度の確認ができること、後で画像のみを見ても深度がわかりやすくなることなどの効果が期待できるため、プローブには目盛パターン1903が付与されていてもよい。目盛パターン1903としては、先端から3mm、6mm(または7mm)の位置がとくにわかりやすくなるように、パターンの境界あるいは目盛線がこれらの位置に来るように形成することが好ましい。これは、歯周ポケット深度が3mmまたは6mm(または7mm)を超えた場合に、それぞれ治療方針が変わることが一般的であるためである。さらに、測定すべき深度の上限としては11mmまたは12mmとしたいため、この位置にもパターンの境界あるいは目盛線が存在することが好ましい。
【0076】
なお、画像解析上はこれらの境界を明確にするパターンの印刷だけでなく、プローブ1902の素材自体にも着色されている方が、よりプローブの認識がしやすく、確実に解析が実行できる。プローブ先端部に血液が付着するかどうかという情報も診断上は重要であるため、少なくとも先端から3mmの位置までは、血液の付着がわかりやすくなるような明色を用いる方がよい。プローブの着色やパターン印刷に用いる色彩としては、歯や歯茎など口腔内に通常存在する色彩とはできる限り異なっている方が識別しやすいので、例えばプローブ1902の素材色は淡い青色または淡い緑色とし、パターン1903の印刷色は濃い青色または濃い緑色、黒色などとするのが一例として考えられる。パターン印刷に用いるインクには生物学的安全性が求められるため、ブリルアントブルーFCF、カーボンブラックなどの色素と、シェラックなどの天然由来のバインダー剤およびこれを溶解させるための無水エタノールと混合させたものを利用するのがよい。
【0077】
なお、プローブの識別上の工夫としては、素材の着色と印刷の組み合わせではなく、二色印刷を行うような方法も利用しうる。また、印刷や着色の代わりに、形状の工夫を加えることも可能である。例えば測定すべき上限の位置から上の部分はプローブを太くする、とくに重要な位置には溝や窪みを形成するといったことにより、プローブに着色や印刷を施さなくとも、画像上あるいは目視によって歯周ポケット深度を計測することは可能になる。また、色彩を利用した自動認識を行う場合、ポケットプローブの計測部を安定的に照明する機構も必要であり、例えば歯周ポケット深度測定器に白色発光ダイオードを組み込んで照明する方法が考えられる。光源への電力供給もカメラを接続している制御基板から行えば、電流を制御することによって安定的な照明が可能である。
【0078】
実際に検査を実行する上では、検査者自身は現在検査を行っている歯がどれかを認識しているが、システムが認識している歯と一致しているかどうかという点では、何らかの表示がなければ確認できない。そこで本システムでは、動画情報を表示するとともに、現在検査を行っている検査部位を明確にする情報を併せて表示する機能を有する。すなわち図19に示しているように、検査中には歯のイラスト1904を表示しておく。さらに、現在検査している歯(システムが認識している歯)がどれであるかを把握しやすいように、歯のイラスト1904中で検査中の歯1905については着色や点滅による表示を行うとともに、イラスト中央部には拡大イラスト1906を表示し、さらに検査者が慣れている歯式表示1907も行う。通常、1本の歯に対して複数の検査部位が存在するため、拡大イラスト1906の周囲で既に検査が完了した部位については、測定数値1908を表示する。
【0079】
測定数値1908は、ポケットの深さに応じて色分けしたカラーマークでもよい。また、現在検査を行っている検査部位についてはカーソル1909を表示し、必要に応じて点滅させるなどして、やはり認識しやすくしておく。これらの表示上の工夫に加え、音声によって次に検査すべき検査部位を通知する機能などもあれば、検査者とシステムの検査部位についての不一致を防ぎ、誤診が発生しにくくなる。なお、患者によっては歯が欠損している場合や人工歯を利用している場合もあり、これらの情報を事前に入力しておけば、表示上でもこれらのイラストを表示することにより、認識しやすくすることは可能である。
【0080】
上記のように検査部位の把握についての表示上の工夫がなされていれば、通常の順序に従わないイレギュラーな操作を可能とする機能も積極的に導入することができる。例えば、カメラに映りにくい検査部位の測定数値を検査者が数字キーを押すことにより入力できる機能、スイッチやキーボードの特定キーを押すことにより検査の必要がない部位をスキップする機能、スイッチを押すかプローブで歯の上面を押すなどの特別操作により既に終了した部位の検査をやり直す機能、一か所の歯周ポケットにプローブを挿入したまま一定時間が経過するとその部位の隣接部位や同一の歯内の他の部位についても同じポケット深度となるものとみなしデータを自動入力する機能、などが考えられる。これらのイレギュラーな操作が可能となることにより、検査を効率的に進めることが可能になる。
【0081】
また、検査時には患者の状態や薬物使用など注意しておくべき事項が存在する場合もあるため、コメント欄1910も用意し、任意のコメント文を入力かつ表示できるようにしておく。なお、情報としては患者の氏名などの個人情報も表示されていることが望ましく、これらはコメント欄1910に限らず、画面の上部などに表示されていてもよい。
【0082】
最後に、付加的な機能および使用法について補足しておく。ソフトウェアでサポートされていると便利なその他の機能としては、出血のチェックが挙げられる。ポケットプローブの先端部は薄い青色や薄い緑色、白色など、血液とは明らかに異なる色彩を有するように作られているため、ここに血液が付着すれば画像上で容易に認識することが可能である。したがって、歯周ポケットからポケットプローブを引き抜いた際(所定の力が加えられていることを感知するセンサーが反応しなくなった際)に、自動的にプローブ先端部の画像解析を実行し、プローブに血液の色が検出された場合に、検査を行った検査部位には出血があることを記録するという機能が実現できる。この場合、出血が確認されれば音声で検査者に通知を行う機能もあれば、次の部位を検査する前に、付着した血液を拭き取る作業も確実に行うことができる。
【0083】
同様に、画像上の色彩を解析することで実現できる機能として、歯周プラーク検査機能も考えられる。この検査では、歯に対するプラーク付着度を調べるために専用の着色剤を使用するため、歯の画像の中で着色剤の色が占める割合を画像解析によって求めることは容易である。このように歯周プラーク検査機能も有することにより、さらに的確な判断が可能となるシステムとなる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の歯周ポケット深度測定器および歯周ポケット深度測定システムは主に歯科医院にて、患者の歯周病の病状を把握することを目的とした検査を行うために利用される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の歯周ポケット深度測定システムの全体構成を示す図
【図2】本発明の歯周ポケット深度測定器の一例を示す図
【図3】本発明の歯周ポケット深度測定器の内部構成の一例を示す図
【図4】本発明の歯周ポケット深度測定器におけるプローブの固定方法の一例を示す図
【図5】本発明の歯周ポケット深度測定器におけるプローブ挿入力制御方法の一例を示す図
【図6】本発明の歯周ポケット深度測定器の内部構成の一例を示す図
【図7】本発明の歯周ポケット深度測定器の内部構成の一例を示す図
【図8】本発明の歯周ポケット深度測定器の内部構成の一例を示す図
【図9】本発明の歯周ポケット深度測定器の撮像機能を有する構成の一例を示す図
【図10】歯周ポケット検査用プローブにカメラを組み合わせた場合の位置と視野の関係を示す図
【図11】本発明の歯周ポケット深度測定器の撮像機能を有する構成の一例を示す図
【図12】本発明の歯周ポケット深度測定器で使用されるプローブ形状の一例を示す図
【図13】本発明の歯周ポケット深度測定器による視野改善の効果を示す図
【図14】本発明の歯周ポケット深度測定器の形状の一例を示す図
【図15】本発明の歯周ポケット深度測定器の内部構成の一例を示す図
【図16】本発明の歯周ポケット深度測定システムの測定フローを示す図
【図17】本発明の歯周ポケット深度測定システムにおいて深度を求めるために必要な処理を示す図
【図18】本発明の歯周ポケット深度測定システムにおいて深度を求めるために必要な処理を示す図
【図19】本発明の歯周ポケット深度測定システムの表示画面の一例を示す図
【符号の説明】
【0086】
101 歯周ポケット深度測定器
102 プローブ
103 通信ケーブル
104 コンピュータ
105 ディスプレイ
106 キーボード
107 マウス
201 筺体
202 プローブ
203 プローブ固定具
204 白色照明
205 カバー
301 筺体
302 プローブ
303 プローブ固定具
304 プローブ固定用突起
305 回転軸
306 ばね
307 プローブ固定具の後端
308 ばね調整具
309 ばね調整ねじ
310 変位検出センサー
311 センサー検出用突起
312 制御基板
313 電源
314 ブザー
315 白色照明
401 プローブ
402 プローブ固定具
403 固定穴
404 プローブ固定用突起
601 プローブ固定具
602 センサー検出用突起
603 フォトインタラプタ
604 ねじりばね
605 ばね調整具
701 プローブ
702 プローブ固定具
703 光源
801 プローブ
802 窪み
803 筐体
804 プローブ回転支点
805 プローブ支持ばね
806 力制御ばね
807 変位検出センサー
808 防水部材
901 筺体
902 プローブ
903 プローブ固定具
904 計測部
905 撮像部
906 白色照明
907 ケーブル
1001 計測部
1002 作業部
1003 カメラ
1004 計測部
1005 作業部
1006 カメラ
1101 筺体
1102 プローブ
1103 計測部
1104 作業部
1105 白色照明
1106 撮像部
1107 プローブ基部カバー
1201 柄部
1202 作業部
1203 計測部
1204 梁
1205 固定用穴
1301 プローブ
1302 カメラ
1303 歯肉
1304 検査部位
1305 歯列
1306 プローブ
1307 カメラ
1308 プローブ
1309 歯列
1401 プローブ
1402 計測部
1403 撮像部
1404 光源
1405 作業部
1406 通信ケーブル
1501 筺体
1502 プローブ
1503 プローブ固定具
1504 回転軸
1505 ばね
1506 変位検出センサー
1507 ばね調整具
1508 ばね調整ねじ
1509 プローブ基部カバー
1510 制御基板
1511 光源
1512 導光体
1513 撮影窓
1514 撮影用レンズ
1515 カメラ
1516 カメラレンズ固定具
1517 スイッチ
1518 ケーブル
1601 システム起動
1602 患者情報入力
1603 測定点入力
1604 検査部位測定順序入力
1605 測定プログラム起動
1606 テスト撮影
1607 プローブ状態チェック
1608 プローブ再接続要請
1609 プローブ位置のキャリブレーション
1610 番号指定
1611 n番目の検査部位測定モード
1612 プローブ接触認識
1613 初期画像取得
1614 プローブ位置確認
1615 プローブの一定変位検出
1616 完了画像取得
1617 初期画像におけるプローブ長解析
1618 完了画像におけるプローブ長解析
1619 初期画像におけるプローブの前後判定
1620 完了画像におけるプローブ長からの歯周ポケット深度計算
1621 2画像におけるプローブ長の差分からの歯周ポケット深度計算
1622 注意判定
1623 前面からの再測定要求
1624 音声通知
1625 検査部位の測定値及び画像の記録
1626 全検査部位の測定完了確認
1627 測定番号変更
1628 測定結果の表示と保存
1701 プローブ
1702 検査対象歯
1703 プローブ検出長
1704 プローブ
1705 検査対象歯
1706 プローブ検出長
1801 初期画像におけるプローブ検出長
1802 完了画像におけるプローブ検出長
1901 動画像
1902 プローブ
1903 目盛パターン
1904 歯のイラスト
1905 検査中の歯
1906 拡大イラスト
1907 歯式表示
1908 測定数値
1909 カーソル
1910 コメント欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査部位に加えられるプローブの挿入力が、プローブの変位量が所定の値に到達した際に最大値または極大値となる構造を有する歯周ポケット深度測定器。
【請求項2】
プローブまたはプローブの固定具が回転機構を有するとともにばねと接触しており、プローブの回転変位に応じてばねが変形することによって検査部位に加えられるプローブの挿入力が制御されることを特徴とする歯周ポケット深度測定器。
【請求項3】
前記プローブの回転変位に応じて、プローブまたはプローブの固定具とばねとの接触点が摺動することによって、ばねの変形量が変化することを特徴とする請求項2記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項4】
前記プローブまたはプローブの固定具とばねとの接触点が摺動する過程において、ばねの変形量が最大値または極大値をとることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項5】
前記プローブの挿入力の最大値または極大値が、歯周ポケット深度測定に適した値となっている請求項1又は請求項4記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項6】
前記歯周ポケット深度測定に適した値とは、20g重から30g重の間の値である請求項5記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項7】
前記プローブの挿入力の最大値または極大値が、安全上許容できる最大値となっている請求項1又は請求項4記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項8】
前記安全上許容できる最大値とは、35g重から70g重の間の値である請求項7記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項9】
プローブの変位量が所定の値に到達した際に、ブザーを鳴動させることにより使用者に通知を行うことを特徴とする請求項1乃至8記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項10】
歯周ポケット深度を測定するためのプローブと、当該プローブを用いて検査が実行されている部位を撮影する機能を有する歯周ポケット深度測定システム。
【請求項11】
検査部位に加えられるプローブの挿入力が所定の値に到達した際に、検査部位の撮影を自動的に実行する機能を有する請求項10記載の歯周ポケット深度測定システム。
【請求項12】
前記撮影機能により得られた画像情報にセンサー情報および/またはスイッチ情報を含む付加情報を付加してコンピュータに転送することを特徴とする請求項10乃至11記載の歯周ポケット深度測定システム。
【請求項13】
前記撮影機能により得られた画像に含まれるプローブの長さを検出することにより、歯周ポケット深度を求める請求項10乃至12記載の歯周ポケット深度測定システム。
【請求項14】
前記プローブの長さの検出は、画像情報に含まれるプローブの色彩であると判定できる画素数をカウントし、この画素数に基づいて行われることを特徴とする請求項10乃至13記載の歯周ポケット深度測定システム。
【請求項15】
歯周ポケット深度を測定するためのプローブと撮影を実行するための撮像部が水平方向に並べて配置されている歯周ポケット深度測定器。
【請求項16】
前記撮像系の正面にプローブの計測部が位置するようにプローブの作業部が撮像部側に曲げられていることを特徴とする請求項15記載の歯周ポケット深度測定器。
【請求項17】
前記撮像機能により得られる画像情報に含まれるプローブの着色および/または特定の形状および/または特定のマークの位置の初期状態からの変化を検出することにより、プローブが患者に接触したことを認識することを特徴とする請求項10乃至16記載の歯周ポケット深度測定器および歯周ポケット深度測定システム。
【請求項18】
プローブが患者に接触した瞬間の画像を取得する手段を有し、当該画像から検出されるプローブ長に基づいて、プローブが検査対象歯の前後のいずれにあるかを判定する機能を有することを特徴とする請求項10乃至17記載の歯周ポケット深度測定器および歯周ポケット深度測定システム。
【請求項19】
前記の判定機能により、プローブが歯の後方にあると判定された場合には、プローブが患者に接触した瞬間の画像におけるプローブ長と、検査に必要な所定のプローブ挿入力が加えられた瞬間の画像におけるプローブ長をそれぞれ求め、これらのプローブ長の差分をもって歯周ポケット深度とすることを特徴とする請求項18記載の歯周ポケット深度測定器および歯周ポケット深度測定システム。
【請求項20】
システムに接続可能な複数の測定器がそれぞれ固有の識別コードを有し、システムに接続されると自動的に当該識別コードを送信することにより、当該測定器に対応する動作プログラムが自動的に起動される機能を有する歯周検査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−268614(P2009−268614A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120229(P2008−120229)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(000126757)株式会社アドバンス (60)
【Fターム(参考)】